小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

「団地ブック 合併号0・1」‐団地鑑賞のすすすすすめ。-

 

 

一つ一つの窓の向こうに、生活が営まれていると思うとたまらないよね~。

 

 

「団地ブック 合併号0・1」(チーム4.5畳 2018年)の話をさせて下さい。

 

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【概要】

団地、好きですか?

団地愛好家集団チーム 4.5畳がお送りする、

団地に並々ならぬ愛を注いだ一冊!

 

【チーム4.5畳とは】

団地愛好家集団。

公団住宅公営住宅をはじめとする団地などを撮影・収集・分類し、それらの中でさらに細かい区分(給水塔・ツインコリダー・市街地住宅・断面・アニマルライド)について研究・鑑賞し、その成果を発表することを目的としています。

また、団地に関連する音楽やアート作品(絵画・写真・模型等)を発表し、『団地』そのものを『アート』対象として、世の中に認知していきます。

裏表紙より

 

【読むべき人】

・団地好き

・団地が気になる人

・団地で興奮する人

・「団地妻」に興奮する人

 

【感想】

団地。

もともとうっすら興味があったものの、明確に興味があるなと思ったのは、新卒で就職した塾講師の時だった。

講師といっても1年目のペーペーなので、夏期講習・冬期講習前には一人でも多くの小中学生を塾に来て参加させるため、様々なアクションを起こさなければならない。

そのなかのひとつにあったのが、ポスティング。

講習の概要が書かれたチラシを、無造作に(どこの家に子供がいるかわからないから)とにかく一軒でも多くの家のポストに投函するのである。

 

そして、その務めた塾の区は、所謂「市営団地パーティ地区」であった。

「かもめ」「すずめ」「ひばり」「めじろ」・・・。

の名前からつけられた様々な団地が密集する地域であった。

団地はポストが密集している。

団地はポストが密集している。

団地に行けば早くたくさんチラシを分けられる。

夏期講習、冬期講習それらの団地を必ず一巡するようにしていた。

 

しかし、鳥の名前でそろっていても、団地の姿は多種多様だった。

例えば「めじろ」団地は大型の団地。治安は割と良い。中心の広場から伸びる遊歩道は駅へとつながっており、ショッピングセンターへ横断歩道を渡らずに行くことが出来る。編み物教室や英会話教室等の張り紙も貼られている。お年寄りも多かったが、若年層の夫婦も比較的多かった。

例えば「すずめ」団地は小型の団地。治安はかなり良い。小学校前に立っている。遊歩道、広場も全て手入れが行き届いている。名前こそ「団地」ではあるものの、ほとんど低層マンションといった印象。比較的綺麗。築10年程化。小学生がいる家族世帯が多いと見えて、高校のシールが貼られた自転車も多く目立った。

例えば「かもめ」団地は閑静な団地。建物も古くお年寄りが多い。ただ近くの不動産屋にはリフォーム済の部屋の案内が貼られていた。洒落たフローリングに白い壁。値段は3桁万円。築年数こそたっているものの、部屋を綺麗にすることで、比較的若い世代にも来てもらえるよう努めているようだった。

例えば「つばめ」団地は物騒な団地。15階建てで、ドアが10つも20つも並ぶ縦にも横にも大きい鉄筋の建築物が並行して密集して並ぶ。そのうちの何割が廃墟のようで、人の気配があまりしない。道路からも遠く離れていて、正直園団地の周りだけうっすら空気が暗い。そこはまわらなかった。「あの団地には投函しないでね。殺人事件や自殺が数件起きているから」

 

そういった個性様々な団地をひとつひとつ訪問し、ちらしをいれていく作業は大変ではあるが、なかなか面白かった。

目に映る一つ一つの窓に一つ一つの生活が営まれている。駐車場に並ぶ車も多種多様。軽自動車、ワゴン、外車、諸々。いったいどの部屋に住んでいる人がどの車に乗っているのだろうか。下駄箱の下に転がる汚れたサッカーボール。遊歩道を歩くベビーカーを押す夫婦。今は誰も乗っていないであろう子供用自転車。誰かが乗っているだろう一輪車。ベンチに座り呆けているお年寄り。掲示板にはさびれた色のチラシ。

ポスティングする前には必ずマップを見る。大抵の団地は5以上の棟で形成されている。1つの棟で最低でも50人住んでいるとすると、この敷地内で最低でも250人の生活が営まれているということになる。250の人々。250の人生。

それは、もしかしたら新婚後お金がないからと住んだ団地だったのかもしれない。それは、老後お金がなくて年金で細々暮らすため引っ越した団地だったのかもしれない。それは、子供を私立大学へ行かせるための節約として住み続けた結果の団地なのかもしれない。

そういった妄想をくるくる繰り広げながら、ポストに1枚1枚さっ、ささっと投函していくのだ。1枚2枚3枚4枚・・・。

 

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裏表紙。広告風なデザインがいいね

 

「団地ブック」。

だからネットショッピング(「はちみせ」)でこの文字を見たとき、その時の思い出が一気に蘇ってきた。

そして思わず、クリックをせずにはいられなかった・・・。

団地万歳。

 

以下簡単に各記事の感想を書いていく。

0号と1号の合併号である。

 

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そのため、まず0号の感想を順に述べていく。

 

わたしの一枚:お気に入りの団地の一枚を撮影

新潟県営石山第二団地p.7の写真が特に良い。

団地の前に置かれた自転車はなぜなんなに多弁に主人の生活を語ってくれるのだろうか。あとなんだかんだ、こじゃれた団地も好きだけれどもこういう王道の団地が、結局日本人の心象風景なんだよ。日本人はみんな団地へ還る。

 

日本級数党員養成ギプス:第一回給水塔を探そう

すみません。僕はこの記事で初めて「給水塔」を知りました。

てっきり、団地の上にあるあの謎の球体のことを「給水塔」というものかと思ってたら違うのですね。

じゃああれは何。給水玉?

 

私の団地修行:茨城初秋

関西から茨城に、一泊二日で団地を見る為に行った旅行の記録・・・団地好きが極まると新幹線に乗って宿泊してまで団地を見に行くらしい。やばい。凄い。

一軒一軒団地の窓をしっかり映しているのが良かった。そう。住民の生活を想像するに不可欠な要素それは窓。窓の作りで団地がどれくらいの年数のものなのか、もわかるし、その住民が果たしてどんな生活を送っているのか、もわかる気がする。とにかく知りたいこと全てがわかる気がする。この人とは「団地のツボ」が合いそうである。

最後の団地好き界隈では有名らしい、「茨木県営見和アパート」の写真は白黒ながらでも、圧巻。素晴らしい。これは是非見に行きたい。(多分いかない)

 

初心者のための団地講座:団地鑑賞において知っておきたいこと

同人誌である。だからまぁその書き手の文章力がいまいちということも考慮しなければならない。

進級団地容姿比較、団地運営に携わる運営が多種多様に分かれることが書かれている。だが、比較をする際のポイントや、運営が違えば一体団地の何が違うのか、といったところまでは言及されていない。

団地愛だけは十分に伝わるページである。

 

団地アイフォノグラフィーのススメ:三脚+カメラで団地を撮影していた筆者は、ある日それらを総て手放し、アイフォンで撮影することにした。そのきっかけ。

要するに、アイフォンの方が手軽にスナップ写真のようにとれるから、カメラを捨てたよ~のお話である。カメラガチ勢が読むとなかなか面白いのかもしれない。

団地をアイフォンで撮影する際の6つのポイント(「団地アイフォノグラフィーのストイシズム」)や、印刷する際の解像度についての解説まで書かれている。

団地写真家を目指す方は必読の記事ではなかろうか。

 

私の団地撮影用持ち物一覧:団地を撮影する時にもっていくショルダーバッグの中身だ!

これはシンプルに勉強になる。団地に行くときに一体何を気をつければいいのか何を持っていけばいいのか。

手ぬぐい、カメラ、帽子等は分かるものの、クリアファイルや名刺等も用意しなければならないというのは驚きだった。

そう、団地はあくまで「他人の敷地」なのである。そのことに敬意をしっかり払っていることが分かる持ち物一覧。さすが給水塔党首。

 

団地AtoZ:団地女子が「あ~わ」に沿って、各文字ごとに団地記事をフォーカス!

「ヨルダン」p.35というのは、夜各部屋に電気が灯った団地のことであるらしい。大学時代によく通った橋の川沿いにあったヨルダンのことを思い出し、ちょっと胸がきゅっとなった。周囲が真っ暗な中、電気が何百と灯る団地は非常に幻想的で美しく、ノスタルジーだった。綺麗だった。美しかった。あの頃も僕はひとりだった・・・・きゅっ。

ちなみに、この筆者は既婚者であるのにどうどう「団地女子です!」と名乗っている。そのオタサーの姫気取りの精神が気に食わない。

 

団地のグルメ:団地鑑賞の際に是非立ち寄りたい、団地の近くにあるグルメ

ラーメン屋が紹介されている。なかなか美味しそう。是非行ってみたい。(多分いかない。大阪なので)

 

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他にもこんな団地系の同人誌を同時購入した。右の写真集は記事として別に書きたい。

 

1号。

 

わたしの一枚:お気に入りの団地の一枚

UR稲沢団地p.47の写真が良い。取り壊しが決まったほとんど廃墟同然の団地の写真なんだけれども、こう・・・なんだろうね。どうしてこんなに廃墟は人を魅了するのか。

 

団地トラベラーの記録:台湾に高層団地を見に行こう!

台湾、中毒の団地は規模が半端ない。どこまでも続く家々、どこまでも続く窓々、どこまでも続く生活。なかなか圧巻である。

ただ、僕が惹かれるのはあくまで日本の団地。外国の団地の写真はどうしても「海外の写真」感が強すぎて、ちょっと違う。

でも面格子の写真p.53は結構興味深かった。私ならそこに何を置くだろう。猫を飼いたい。雑種。ベラ、雌猫、3歳。

 

日本給水党員養成ギブス:第2回 下を向いて歩こう

給水塔の下の部分にフォーカスしたコーナー。基本的にはフェンスで囲われている。法律によってそのようにしている場合が多いらしいが、正式には「フェンスで囲わなくても良い」らしい。というわけで、なかにトンネル状になっていたり展望台のようになっていたりするものもある。はえー。

なんかこのコーナーだけ、やたら真面目に「日本給水党員を養成したるぞ」という気概を感じる。現在、この団地ブック6号まで出ているが、そこまで読んだら僕は見習いくらいまではいけますでしょうか・・・!?UC師匠!?

 

PTA会長の憂鬱:「Protect Tile Association(タイル保護者の会)」会長の妄想ラノベ

この特集だけ圧倒的につまらなかった。

妄想のライトノベルがやりたいのなら別冊でやれ。

童貞キモオタの妄想が痛々しくて、文章も痛々しくて、読んでいるこっちが恥ずかしい。

というかタイル保護者の会会長を名乗るのであれば、一枚でも多くのタイルの者h審を掲載してその違いを説明するのが普通、ってもんじゃないのかい?え?

読んでいるこっちが憂鬱になるページだった。しかもその割に数も多いし。なんだよ。削って100円程安くしてほしいレベル。

 

団地間取り列伝 Vol.1:第1回 公団 55-$N-2K-2型

昭和三十年代初期の団地の間取りを解説したページである。非常に興味深く、面白かった。主婦の家事の負担の軽減を図り、風呂と台所は隣接している。バルコニーは広い。2室にも1室にも使える工夫・・・。

今は消えつつある間取りらしいが、なんだかほわほわと妄想が広がる。

当時の主婦は一体毎日何考えていたのかしら。「主婦」というのが一つの憧れの職業だた時代に彼女達は何を思って何に悩んで何を喜びにして暮らしていたのだろうか。キュートに美しくそしてクールに。

バルコニーは広い。

この連載は是非追っていきたい。

 

公団アパートの裏遊園地カタログVol.1:大阪市、神戸市の団地からピックアップ

ただただ撤去された団地の遊具の写真を紹介したページなのだけれども、これがなかなか面白い。

冒頭で、その設置するに至った日本住宅公団初代総裁加納久朗による文章が、ますますその遊具の写真一つ一つに深みをもたらす。

当時どういった気持ちでその遊具を設置するのに至ったのか、公園に設置された遊具に秘められた想い・・・。

この連載は是非追っていきたい。パート2。

 

団地AtoZ:団地女子が「あいうえお」に沿って、団地のあらゆる部分を紹介。

あ。から始まる、「アニマルライド」はなかなか可愛かった。

というのもこういう動物の遊具、見てるのめっちゃ好きなんですよね。なんか。

サビれてるとなおさらいい。特にリアルな「サイ」が良かったなぁ。

お。「沖田神社」。なんとその界隈では有名な団地神社らしい。そんな神社あるのか。すげぇな。団地にも神は宿る。八百万の神の国、日本・・・。

でもやっぱり既婚者なのに「団地女子」名乗っているのが気に食わない。

尚更団地サーの姫なのも気に食わない。

 

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届いた日。

 

以上である。

おおむね楽しめた。特に0号より1号の蛾なかなか興味深い生地が多いのも期待できる。ので、続刊2-3合併号もすでに入手している。

団地にこんなにときめいている人がたくさんいようとは。

続き何が書かれているだろう。ワクワクである。

 

団地ブック・・・これを読んで極めれば、何気ない街歩きもちょっと楽しくなる・・・?のかもしれない。

 

小川洋子『偶然の祝福』-小児科のにおい。-

 

 

 

キリコ。

 

 

 

小川洋子『偶然の祝福』(角川書店 2004年)の話をさせて下さい。

 

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【あらすじ】

お手伝いのキリコさんは私のなくしものを取り戻す名人だった。

それも息も荒らげず、恩着せがましくもなくすっとー。

伯母は、実に従順で正統的な失踪者になった。前触れもなく理由もなくきっぱりとー。

リコーダー、万年筆、弟、伯母、そして恋人ー失ったものへの愛と祈りが、哀しみを貫き、偶然の幸せを連れてきた。

息子とアポロと暮らす私の孤独な日々に。

美しく、切なく運命のからくりが響き合う傑作連作小説。

 

裏表紙より

 

【読むべき人】

・「キリコさん」←この名前にピンとくる人

・喪失に対して打ちひしがれている人

 

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絵と文字と内容の世界観結構砕け散ってる。

 

【感想】

キリコさん。

この名前、読んだことある人は結構多いんじゃないだろうか。

何となく僕は知っていた。多分ちゅう工事代。もしくは塾講師時代教材あるいはもしか何かでこの名前を見た。「の失敗」まで見た。

けれど抜粋される部分には決まって彼女の失敗については触れられていないのであった。

そもそも彼女は、どのような失敗をしでかしたのか。

そもそもこの短編が、どのような短編なのか。

あとこの前読んだ雑誌でも小川洋子の作品としておススメされていたので気になって、読んだ。

 

けどまぁ・・・うん。

まぁ・・・正直ぶっちゃけ僕にとってはいまひとつだった。

理由は分からない。

 

 

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分からないので病院に行った。

 

医者「「薬指の標本」「まぶた」「完璧な病室」「刺繍する少女」・・・所詮貴女は小川洋子先生の初期作品しか好きじゃないのではありませんか?」

ワタクシ「いいえ、先生それは違いますわ。ワタクシこの方で一番好きな作品は「子羊たちの朗読会」です。それにこの前この作品の後に書かれた「最果てアーケード」という一冊も読みましたけれどそれも面白かったですわ。それに「夜明けの縁をさまよう人々」だって、あれはあれでハラハラして楽しく読めましたのよ。」

医者「それでは、作品の雰囲気が嫌いであったとか?」

ワタクシ「いいえ。小川洋子先生の作品のほとんどは薬品の匂いがします。この作品もそうでした。ワタクシ、その匂い大好きですのよ。この作品に漂う匂いは・・・小児科。小児科のどこか甘い匂いがしておりました。でもそれは決してワタクシにとって深いな匂いではなく、心地よい匂いでしたわ。先生」

医者「ふむ・・・それでは共感が出来なかったとか?この主人公は作家で息子がいて恋人と愛し合った過去があります」

ワタクシ「ええ先生。私はフリーターでピルを飲んでいて恋人と愛し合った過去もなく毎日を必死に呼吸するこの世の端女でございます。けれども、例えば「人質の朗読会」のように私は人質でもないし、「最果てアーケード」のように商店街の人々と交わって生きてきたわけではない。登場人物と境遇が被ることのが少ない。にもかかわらず「共感の欠如」に、本書への不満足の原因を求めるのは違うのでは?」

医者「なるほど・・・では、それではあなたの心が不健全であったということは?抗うつ剤を飲まれているようですね」

ワタクシ「いいえ。先生。確かにワタクシは抗うつ剤を、一日一粒のレモン・キャンディ代わりに舐めておりますけれども、別に読書に弊害はきたしておりませんわ。証拠?それはねえ見て・・・この「ツナの缶詰。齧る。」というブログの■月■日以降の記事を見て下さいませ・・・ほら、特に変なところはないでしょう?今までと、一緒でしょう?」

医者「ふむ・・・」

 

医者でも分からないようだった。

 

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以下簡単に各話感想を述べていく。

ただ先述したように、僕は本書に対して不満足である。

そこを踏まえたうえで、以下を目で追っていただきたい。

 

失踪者たちの王国:父方の伯母は、実に正当な失踪者となった。

この短編自体が「失踪」したかのように、読み終えてから本書を開くまで、この短編の存在を忘れていた。後半の激しい展開の前奏曲としてはあまりにも静かすぎるようにも思う。

それか、僕はあまりにも「失踪」と無縁だから、忘れていたのかもしれない。

僕は僕を常に自己嫌悪する程、自分の存在を意識している。

し、家族・職場の人々・友達・ウエルシアの店員、そしてそれをとりまく実家・職場のショッピングセンター・小学校から大学・ウエルシア総てが今も実在している。存在している。

そして私の肌にできたカサブタ群も・・・消えない。存在している。掻く。血が出る。生きてる。生きてる。

 

途中で、伯母さんが業者に売られゆくニシキゴイの名前を呼ぶシーンがある。

「あれはニコラス」

(中略)

「あれはマシューで、次のはユリアナ」p.22

 

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左から

「あれはテディ」

(中略)

「あれはダンテで、次のはジジ」

 

 

 

 

盗作:退院後リハビリで向かう電車の中でいつも会う女性が、ある日語ってくれた弟の話。

この話は唯一好きかもしれない。

文中に出てくる「背泳ぎ選手の弟の話」が非常に美しいというのもそうだけれども、オチが非常に明瞭で、明瞭な分、物語の余韻が後を引いたから。

きっと悲しむことが彼女自身の人格を形作ってるのだと思う。

彼女は健やかに病んでいる。

 

あと、主人公もここに登場する女性も「弟の死」を悲しんでいるが、これが「妹の死」だったら、多分ここまで純粋に悲しんでいないだろうと思った。

同性同士だと、血縁関係であろうともわずかながらの憎悪が含まれると思うから。

 

 

 

 

キリコさんの失敗:昔、キリコさんという名のお手伝いさんがいた。p.72

本編。

どこかで見た。

でも思い出せない。

多分文章題に出てきた。国語の「物語文」「小説」。

ただどこで出会った文章題だったかは曖昧。

中学高校の時の模試であったか。塾で出された国語の問題集であったか。センター試験の過去問題であったか。それとも大学卒業後新卒就職した塾講師時代にやった模試・問題集の問題であったか。神奈川県高等学校受験問題の過去問であったか。

分からない。思い出せない。

ただどこかで出会っているはずなのである。しかも多分2回は。

 

その文章の全般が読めるということで、「キリコさんの失敗」とはどういうものだったのかワクテカしながら読んだのだけど、まぁ・・・そんな失敗かと思った。

万年筆を取り返したという地点で、間接的に主人公の将来の道(小説家)を切り拓いた失敗ではあるのだけれども

もっと直接的に関わってくるような、一度読んだら忘れられないような、

失敗かと思っていた。

違った。残念。

 

じゃあどこが一番印象的であったかと言うと、

「ここのはね、フルーツが新鮮で美味しいの」

彼女は大きな桃を飲み込んだ。p.78

内緒で、歯医者の帰りに幼い主人公とお手伝いのキリコさんがパフェを食べている場面である。

どうもここに出てくるチョコレートパフェは、美味しそうだけではなく、なまなましくて艶っぽい。桃は絶対光を反射してとぅるんとなっていることだろう。とぅるん。

基本終始閑散として、乾燥して、かさついているような一冊のなかで、唯一の瑞々しきこの場面は生々しい。艶めかしい。

 

 

 

 

エーデルワイス:主人公の小説を全身のポケットに入れて身にまとう男が現れた

一番難解だと思った。

この男の正体は一体何だったのか。そもそも実在したのか。それとも主人公の幻か。

そしてこの男の存在と最後の恋人からの祝電の結びつきを見出すのも、不透明で繋がりそうで繋がらない。

「保管されている場所によって、同じ本でもただずまいが違ってくるのです。その場の空気、雑音、光、匂いを吸い込んで本は独自の発酵をするんです。だからこうしで何度でも、あなたの本を借りるんです」p.116

ただ男の言っていることは少し分かる。

だからといって同じ本を2冊3冊比較して味わうことはしないけれども。

 

 

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涙腺水晶結石症:飼い犬のアポロが突如体調を崩し、大雨の中息子とアポロを連れ隣町の動物病院を目指す主人公だったが・・・。

「るいせんすいしょうけっせきしょう」。なかなか口にしやすい言葉だなと思う。リズムがいい。

ネタバレをすると、この病気はカルシウムの摂りすぎや炎症によって涙の性質が変化し無機質が固まった結果涙腺の半透明の水晶が出来る。結果細菌の感染で発熱し、全身に症状が現れる病気である。p.149

涙が固まって結晶化し、そこから徐々に体調を崩していく病気。

それはまるで人間にも発症しうるような病気だと思った。

 

僕は昔から泣き虫だ。

幼少期転べば泣いたし、出来ないことがあれば悔しくて泣いた。

友達と喧嘩して泣いたし、親から怒られて泣いた。

メガネをかけたのは小学3年生の時だった。

視界の明晰度がぐっと上がった分、現実に泣く要因を無理やりにでも見出し、一人で泣くことを覚えた。

布団のなかで泣いた。帰り道、歩きながらもしくは自転車に乗りながら泣いた。

今では、誰かのちょっとした言葉ですぐに涙を流し、己の境遇・未来への不安を部屋いっぱいに充満させて泣く。泣いてしまう。

ある時は大々的に。ある時は静かに。

だから、多分僕の涙腺にも石が積もってしまったのだろう。

そしてその石が積もりに積もった結果が、

今の体調不良につながっているのだ。

 

医者「君は以下の薬をしっかり毎日読むように。鬱を根本的に良くする薬、気分を安定させる薬、頭の中が明瞭になる薬、排卵を抑えて卵巣に腫瘍が出来るのを避ける薬、皮膚に出来た無数のカサブタの痒みを抑える薬」

ワタクシ「ありがとうございます。先生。ワタクシはそれらを飲むことによって毎日「健康」を維持できております」

 

 

 

 

時計工場:旅行記を頼まれ行った南の島で出会ったのは、果物をいっぱいに背負った首に痣のある老人であった。

また今晩も、遠い森のどこかで、病んだ鳥が一羽枝から落ちる。p.182

どこにも行き場がないという哀しみ。を、「時計工場」という心象風景に合わせて書かれた一編である。

のでけれども、どうもその「哀しみ」と「時計工場」の関連性が僕には見いだせなかった。

哀しみの底に墜落した時、絶望した時、打ちひしがれた時、

その瞬間から己の時間が狂い、「時計工場」で作られる「時計」はうまく作動しない。

ということなのだろうか?

じゃあ僕は違う。

多分、哀しみや絶望の底に墜落した時、僕は狂った時計を無理矢理にでも進めようとはしない。

 止める方向で検討する。

それは例えば一日ずっとベッドの上にいること。

それは例えば日夜逆転生活を日々日々積み重ねていくこと。

それは例えば目をつぶって耳を塞いで「んんーーっ!!!」と叫んでみること。

それは例えば

 

医者「だから君は言うんだね。すぐに。「死にたい」と」。碌な自殺願望もないくせに」

ワタクシ「ええ、先生。だから私は生きるために「死にたい」を抱えているのかもしれませんね」

白い皿の上に乗った、病んだ鳥の死体。右にフォーク左にナイフ、テーブルクロス。

昨日の夕飯の情景をそこはかとなく浮かべながら、答えた。

ワタクシ「ああ、死にたい」

 

 

 

 

蘇生:背中にたまった水を取り除く手術をした後、私は声が出なくなっていた。

「アナスタシアとはどんな意味か、ご存じ?」

(中略)

「蘇生よ。蘇ること。私にこれ以上ふさわしい名前があるかしら」p.197

この二行で、本作が「蘇生」の物語と知る。

じゃあ、主人公は何から蘇生したのか。

弟の死の悲しみか。

入院し完治に何年もかかった怪我からか。

それとも恋人との別れから発生する絶望からか。

総じて正解だと思うのだけれども、じゃあ主人公は蘇生をしたからといって、ぴかぴか光って新しい恋人見つけて毎日幸せに暮らしましたという訳でもないようである。

蘇生というのは案外目に見えず、地味なものなのかもしれない。

そして僕達はそういった小さい蘇生を繰り返しながら生きているのかもしれない。

細胞が分裂して増殖して人間が維持されるように。

哀しみ絶望から何度でも僕達は蘇生して生きていく。

 

 

 

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以上である。

キリコさんの作品ということで期待したが、

どうも全般的に見ると正直言うと地味。

他の小川洋子作品と比べても、エンタメ性は非常に低いと思う。その分内面性は高いと思う。だからこの小説が一番好き、という人もいっぱいいるんだろうなと思う。

いやでももっと他に名作あるでしょ。

子羊たちの朗読会、あれやっぱ最高でしょ。最後にどっちにしろ「死」という結末が待っている中でのあの細々としたキラキラとした糸のような御伽噺最高でしょ。

と、その人とチョコレートパフェでも食べながら僕は議論を交わしたい。

 

 

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錠剤

 

静岡市■■区■■精神病連病室。

ワタクシ「で、先生、本題です。結局ワタクシは何故この本が好きではないのでしょうか?」

医者「分かりましたよ」

私「本当ですか?」

医者「ええ、それはきっとあなたが自意識過剰だからです。常にあなたがあなたの内面を向いているから、他人の内面を前面に押し出した作品はいまいち好きになれないんじゃないですか」

206号室。

私「・・・・世間というのは、君じゃないか」

医者「・・・何ですかその言葉は。」

ワタクシ「あら、先生、知らないんですか。太宰治の「人間失格」の言葉です。あれこそ人間の内面ぞろぞろ書いておりましたけれどワタクシ、楽しく読めましたのよ」

医者「ではそこには原因はないと」

真夜中。2時前。

ワタクシ「そうです・・・ふふ・・・ふふ、アハ、アハハハハハハ!!!!!」

医者「どうしま」

ノートパソコンの前。

ワタクシ「医者というのは、私じゃないか」

 

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大きな桃を飲み込む。

窒息。

 

おやすみ。

 

 

 

***

 

LINKS

 

これは僕が本作を知った雑誌。長濱ねると小川洋子の組み合わせは違うだろ~と思った。違うだろ~。三浦しおんとかでは。

tunabook03.hatenablog.com

 

 文中でも鳥下駄小川洋子先生の他の作品。どちらも結構面白かった。夜明けの方はもうろくに覚えてないですが。

 

tunabook03.hatenablog.com

 

tunabook03.hatenablog.com

 

2年たっても忘れられない一言というのは真の名言。 

 

tunabook03.hatenablog.com

 

奇書が読みたいアライさん『奇書が読みたいアライさんの空想図鑑文学ガイド』-奇書いアライグマ、かく語りき、凶暴につき。-

 

 

 

2021年の読書計画。

 

 

奇書が読みたいアライさん『奇書が読みたいアライさんの空想図鑑文学ガイド』(2020年)の話をさせて下さい。

 

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【概要】

 

はじめまして!ふたんはTwitterで変な本を紹介している、奇書が読みたいアライさんなのだ。

今回は「実在しない○○集」を集めてブックガイドを作ってみたのだ。架空の本、架空の生き物、架空の都市・・・・・・とびきり奇妙で、とびきり面白い空想図鑑を厳選27冊収録!

キーワードは「■■性」。メタフィクションの金字塔、ボイス・ルイス・ボルヘス『ハーバード・クエインの作品の検討』から幾星霜、彼の影響を受けて生まれた作品を軸に・・・・

 

P.3

 

2020年、このアライグマがアツい!第1位!!

 

奇妙な話・怖い話・不思議な話に精通する

アライグマ・ツイッタラー「奇書が読みたいアライさん」

その知識量・熱量は総人類顔負け!

 

ある日は新刊の外国人作家の書籍を紹介したかと思えば、

ある日はほとんど手に入らないドマイナーな古本まで!!

国境・時代縦横無尽に様々な本を紹介しているツイッター今やフォロワー1万人超!!!

 

そんな彼女(本屋勤務)(年末年始お休みがなくて目がしょぼしょぼしていた)(なんだか大変そう)(アライグマなのに偉い)がなんとこの度ブックガイドを刊行!

これはもう、買うっきゃない!!!

 

※と、考えている意図がどうやら日本には何万人といたらしく、この同人誌は売り切れとなっております。

 

【読むべきだった人】

・ホラー・オカルト・不思議な話が好きな人

・本好き

・結構、ガチな本好き(書店員とあって、読書の量がもう圧倒的に違うのだ~)(抜粋した「はじめに」にあたるページでぬるっとボルヘスの名前が出ている地点でなんかもう、やべえのだ~)

 

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表紙、裏表紙、背表紙から見るに恐らくボルヘス岩波文庫の著書をパロっていると思われる。

 

【感想】

今僕が最も熱をあげて追いかけているツイッタラーの一匹、

「奇書が読みたいアライさん」。

彼女はアライグマにも関わらず書店に勤務し、人間の言葉で書かれた奇書を日々むさぼっている凄いアライグマである。

その読書量といったらまぁまさに圧巻。僕みたいな「ライトな本好き」ではなく、「ガチの本好き」。

あらゆる時代・国境を越えて、「奇書」・・・奇妙な本・不思議な本・変な本・怖い本を紹介する彼女のツイッターは、1.6万人の熱狂的ファンを擁している。

 

そんな彼女がある日突然発表したのは、紙媒体でのブックガイドの刊行。

普段はTwitterでしているブックガイドを、なんとこの度紙媒体でしてくれるらしい。最高か。

TwitterTwitterで文字数少なくコンパクトでまとまっていて読み易くとても良いのだけれども、今日仕入れた情報を明日にはほとんど忘れていることが多いのも実情。

だからといって、noteは開くのめんどくさいし・・・(紹介した本を月ごとにnoteにまとめてくれているぞ!)

そんな僕にとってこれは、朗報だった。

しかも紙媒体でわざわざ出すことを宣伝するということは多分・・・、ここでしか紹介しない本も多数あるはず・・・・!!!!!

これはもう買うしかない。これはもう、買うしかない!!!

 

という訳で、買った。

同人誌なんてめえっっっったに買わないが、買った。買ってしまった。

 

感想を言えば、まぁ最高だった。

 

「空想図鑑文学ガイド」とあって、本・生物・植物・都市、から始まって、昆虫・作家・カレー(!?)まで、様々な「架空の■■」紹介する本を紹介している。

まず「架空の■■」を紹介する本、というもの自体をなかなか読んだことがなかったから新鮮だった。図鑑、図録、雑誌、歴史書、国・・実在する生物や絵画や町や本や人や歴史を紹介する本を手に取ったことは何度もある。

だがそれが個人の空想上のそれらを紹介する本を読んだことはまぁまずなかった。ボルヘス「幻獣図鑑」等一部を除く)

強いて言うなら、「架空の国」・・・中学の時に齧った時雨沢恵一キノの旅くらい。

だから全く知りもしなかった。

そういった本が、他に、こんなにも・・・少なくとも、27冊以上出ているとは!

己の空想をつらつらと恥ずかしげもなく語り、それを文学にまで昇華するど変態があとがき大好き時雨沢以外にもこんなに実在していたとは!!

同人誌の為薄く小さい「文学ガイド」ではあるものの、僕に与えた衝撃は熱く、大きいものだった。

キノの旅、新アニメがなかなか良かったので20冊以上出ている原作を「いつかは読んでみたいなぁ」と漠然と思ってはいたが、そんな・・・27冊も「いつかは読んでみたいなぁ」が足されると・・・そのん・・・んあ・・・あああぁんっ!!!

このアライグマ、凶暴である。

 

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そのなかでも特に「2021年に読んでみたいなぁ」と思った3冊を、列挙していき、簡単にその本を紹介するページの感想を記しておく。

 

4.佐藤将『本田かの子の本棚』(リイド社)p.9

このアライグマは凶暴なので、漫画にもかなり精通している。実際、彼女が紹介した漫画を僕も購入して読んだことがあるのだけれども(『ご飯は私を裏切らない』)、滅茶苦茶面白かった。2020年のナンバーワン漫画といってもいいくらい。

そんなアライグマがこのブックガイドでも・・・更にツイッターでも改めて紹介する程熱量を込めてプレゼンする漫画なのだから、間違いなく面白いはずなのである。

「思春期の娘鹿の子ちゃんの内面を知りたいお父さんが、部屋に侵入して本棚を物色。しかし並んでいたのは得体のしれない暗黒文学ばかりでーという1話完結コメディ」らしいのだけれども、

まず表紙にもなっている鹿の子ちゃん、絶対可愛い。セーラー服に三白眼、きゅっと結んだ唇そして「思春期」。こんなん嫌いな人おらんでしょ。

そして「1話完結コメディ」そう、結局ムヒョもホリックも1話完結していた頃が一番面白かった。1話完結の地獄少女」「絶叫学級も少女漫画雑誌で長く連載が続いた。アニメにおいても地獄少女は結局1話完結していた一期二期しか現在語り継がれていない。あと蟲師

暴論を唱えると、結局奇妙・ホラー系の二次元作品は、「1話完結」が一番面白いのである。長く続くと初めは傑作でも結局ダレて尻すぼみして終わる作品も多いし。

「続刊が刊行されるか瀬戸際だったりする」らしいので、是非買って読んでみたい一冊である。まだ買ってない。

 

 

 

5.ホルヘ・ルイス・ボルヘス  柳瀬尚己訳『幻獣辞典』(河出書房新社)p.10

まずボルヘスという地点で惹かれた。

最近この名前をよく目にする。耳にする。

どうやらホラー・奇妙な話系の大家であるらしいのだけれども、僕はこの人の本を未だ読んだことがない。というか、どれから読んだらいいかもわからない。

そんな僕にアライさんが紹介したのがこの一冊。

「収録生物は130.バハムートが魚だったり、ノームの名付け親が錬金術パラケルススだったりと、有名な生物の項目を見ていても発見がいっぱい。」とある。

UMA大好きまぐろどん、これは結構惹かれた。130も項目があるのであれば、1項目辺りもかなり短そうだし読み易そうである。

 

ので、

 

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買いました。

というのも、この書籍、新静岡の「丸善ジュンク堂でも表紙を見せて並べられていて、もともとちょっと気になってはいたのである。表紙もかわいいし。

少なくとも1人と1匹の書店員がおススメするのだから面白くないことはないだろうと思い、買いました。

 

余談だが、絶対新静岡の「丸善ジュンク堂」には、「奇書が読みたい■■さん」がいる。

明らかオカルト・ホラーの単行本棚にかける熱量がおかしい。選書もそうだし起き方もそう。エドワード・ゴーリーの絵本を表紙丸見せでどかどか並べるのはさすがにどうかと思う。

ちなみにネタバレになるから言えないが、本書でも紹介されている本で他にも2冊、この棚で表紙見せる形でディスプレイされているのを見たことがある。しかも結構お高めの。

 

 

 

17.■■■■・■■-■■「■■■■大陸の■■■■」(■■社)p.27

ネタバレになるので、名を伏せたが、所謂「架空の作家」を紹介した本である。

「■■■■大陸」「■■■■」の結びつきがいまいち見えない分興味をひかれたけれども、「全員が大なり小なり■■■■■■に関係していて、現実の暗闇にヒヤリとコネクト」するらしい。はえー。

その後にアライさんが例として並べる作家の遍歴も、ド派手でなかなか面白そう。

 

表紙、出版社から見るに恐らく2000円は超えるであろう高級書籍なんだろうが、この本は是非とも2021年中には読みたい。

本書の作家はチリ人とのこと。言われてみれば、「南米文学」って読んだことがない。まぁ僕自体が外国文学にあまり精通していないというのもあるが。

冗談抜きに、「南米」といったらブラジル・サッカー・マラドーナしか浮かばない。南無。あ、あとナスカの地上絵

あの大陸で読まれる文学というのはどのような文学なのだろう。

2021年はゆるやかに「南米」を主題に本を読み進められたらなぁと思う今日この頃、である。

 

 

 

 

100点満点のブックガイド・・・と言いたいところだが、強いて言うならば原著、もしくは書籍自体が刊行された年数を記述してほしかった。「2019年のチリ作家が書いた本」「1980年のチリ作家が書いた本」、年数だけでもかなりイメージが違ってくるので。

いやもしくは、あえて書かなかったのかもしれない。

調べてないが、「1970年のチリ作家」が遺した本と聞いたら、間違いなくそれは「2019年のチリ人作家」の書いた本より、とっつきにくいものにならざるを得ないだろうから。

 

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以上である。

なかなか楽しめた。そしてなかなか役に立った。

同人誌・・・だからこそズバズバ刺さる文学ガイドだった。

 

ちなみに本書は著アライグマの予想以上に求める人が多く、現在売り切れとのこと。

復刊も待たれるが、やはり続刊も待たれる。

一体次はどんな主題でどんな本を紹介してくれるのだろう。

なんて妄想しながら、2021年に出会う本・読む本にワクテカしつつ、

紅白の日向坂・櫻坂の出番をワクテカ待つまぐろどんであった。

 

あ、ちなみにこのアライさんは凶暴なので、アイドルにも精通している。

も・・・・もしかして・・・人間なのか・・・?お前。

い・・・いやまさか!!!!

アライさんだぞ!!!アライグマに決まっているじゃないか!!!!!!

恐ろしい話である。

 

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返し読みをすでに何回かしているので、表紙が結構汚い。

 

***

 

LINK

 

アライさんが紹介してくれた神漫画。

一人暮らし、インドア派には間違いなく刺さるはず。

 

tunabook03.hatenablog.com

 

 

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この漫画は壊滅的に朝が似合わない。



 

「ケトル VOl.09 2012年10月」-8年前の雑誌論。ピチレモンはもういなくなりました。-

 

 

 

本特集を組む雑誌は数あれど、

雑誌特集を組む雑誌はなかなかないから不思議だ。

 

 

 

 

「ケトル VOl.09 2012年10月」(太田出版 2012年)の話をさせて下さい。

 

 

 

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【概要】

雑誌「ケトル」が創刊以来目指しているのは

「最高に無駄の詰まった雑誌」。

 

検索で一直線に回答にたどり着くよりも

いろいろ回り道する間に見つけたものが

けっこう自分にとって大事なモノだったりする。

 

それがまさに「雑」が持つ魅力。

 

一見何のもない一つひとつの「雑」が

一つの視点によってまとめられていることで人は何かに気付く。

 

米「WIRED」編集長クリス・アンダーソンは言っています。

ある支店で変種されているからコンテンツは価値を持つと。

 

ネットはあらゆる情報をスライスして探しやすくした。

しかし今、人は情報に価値を見いだすのではなく、

視点に価値を見いだしている。

 

だから、今こそ言いたい、雑誌が大好き。

 

p.15

 

とあるが、その「視点」とやらも今はインスタグラムに吸収されてしまい、

出版業界・雑誌業界は引き続きサムイサムイなのだった。

 

【読むべき人】

・雑誌が好きな人

・おおよそ8年前の雑誌業界がどうだったか、知りたい人

(2012年の古本なので)

 

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2012年当時の剛力さんは「新鋭の若手女優」筆頭でしたね・・・。

 

【感想】

雑誌を読んでいる、と言うと「え!?すご!!」と言われる方が多かった。

僕(27歳)の世代では相変わらず、雑誌を読まない派の方が圧倒的に多く、皆もうその環境に慣れて違和感すら抱かない。

そして出版業界も相変わらず、「雑誌を読むこと」が日本人にとって当たり前のことではなく、個人の趣味の一つに成り下がっていることに対して自覚が足りていない。

今や雑誌は「雑誌・本が好きな人向け」、もしくは「取り扱うコンテンツが好きな人向け」に作らなければ生き残っていけない。

最近女性誌でいえば、withはそこに明確に気づいたように思う。この前「セーラームーン」のイラストが表紙を飾っているのを見たが、あれこそ漫画(本)が好きな人にはぐっとくる表紙だったんじゃないだろうか。本好きは百発百中オタクなので。

しかしMOREは一向に気づかない気配がある。OLのお仕事着等いくら特集しても、大半のOLが本屋にすら足を運ばないのである。もう本屋は行って当たり前の場所ではない。もう本は摂取して当たり前のものではない。

無策な訳ではない。最近ではジャニーズの表紙をたくさん起用することで、「ジャニーズが好きな人向け」に訴えている。MORE以外の女性ファッション誌でもその傾向が多くみられる。だがしかし、それが一体いつまでもつ?ジャニーズを専門に扱う雑誌は「MYOJO]「DUET」「ポポロ」等たくさんあるというのに・・・中身も100パーセントジャニーズ。1000円札が一枚あったらジャニオタはどっちの雑誌を買うだろうか?昔は「あのグループがあのファッション誌の表紙を!?」と新鮮味があったが、今はそれが当たり前。そもそも2020年現在「あのファッション誌」と言える程のブランド力があるのはせいぜいan・anくらいではないか。勝算がある策だとは到底思えない。

そんななかJJが月刊誌としての刊行を中断すること発表した。当たり前だと思う。大半の女子大生が本屋にすら足を運ばないのである(デジャヴ)。おしゃれな情報はインスタで間に合うのである。

そんななか、読者思想が被るものの圧倒的知名度はjjに劣るであろうRay が生き延びている様子。通ってきた雑誌ではないので詳しくないのだが、どうやら早期からネットのコンテンツにも力を入れていたらしい。

刊行元は主婦の友社

そう、僕はここずっと思っているのだけれども、次のファッション誌の天下をとる会社は、主婦の友社ではなかろうか。minaも本好きの読者前提に作られている印象があるし、arも有象無象の雑誌が多い中で個性を上手く打ち出しているように思う。(刊行部数推移は知りませんが・・・)

昔宝島社がふろくを武器にファッション誌に殴り込みにきたように、今度は主婦の友社編集外注を武器にファッション誌を蹴散らすのではないか。

 

閑話休題。てか似た話をこの前のminaの記事でもした。

でも二回ついつい書いちゃうくらい僕は雑誌が昔から大好きなのである。

この「ケトル」もまさしく「雑誌が大好き!」と堂々言っているから、古本屋にて購入した。2012年刊行の雑誌ではあるが、手にしたのは2018年頃ということになる。

それからすぐに読んだかと言うと・・・ごめん、積んだ。

2年間の熟成期間を経て、ようやく読了したという次第。

 

 

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というのも、2年前想像以上の文字数に圧倒されたのである。当時は僕は「MORE」をはじめとする女性誌しかメインに読んでいなかった。写真が挟まれているのが当然であるし、その美しさにキュンキュンして楽しむのがメインであった。

ところがどっこい、このケトルは大半が文字で埋められている。最近のは違いますが、この2012年のケトルは活字量ぱないよ。一体どこから読んだらいいか分からず、そっとじし、箪笥の上で2年間寝かせたのだった。

それからアイドルにハマり、アイドルのインタビューを山ほど読むようになってきた。アイドルにハマるとどうしても活字を追わなければならない。彼女達が何を言おうとしたのか文章から、くみ取らなければならない。何故ならアイドルは物語なので。

そしてこの前2020年刊行のケトルを読んだので、せっかくならこの勢いで、と、再び取り掛かったのである。雑誌で文字を読む経験を豊富に積んできたせいか、今度は自然に読むことができた。

なので、いくら雑誌が好きとはいえど「読むのが好き」ではなく「写真が好き」な人にはあまり薦められないかもしれない。篠原紀信先生のインタビューだけ読んでそっとじしておこう。

 

構造は、今のケトルより全然シンプル。

基本雑誌に関する情報を羅列するだけで、特別なコーナーやインタビューはその合間合間にしか挟まれていない。コーナー・インタビューだけで構成されている2020年のケトルとは違う構造。

 

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2020年のケトル。

 

以下簡単に、気になったコーナー、文章、インタビュー等を書いていく。

 

【人生で大切なことはすべて雑誌から学んだ 女の子篇 男の子篇】pp.20-23

10代20代30代40代、ギャル系・清楚系、チャラ系・オタク系・・・と、年齢と系統に分けで誰が何の雑誌を読むべきなのか書かれたチャート表である。

これはなかなか見ていて面白かった。今は廃刊された雑誌が掲載されていたり、たった8年前といえど想定された読者層が今と大幅に異なっていたりする。

一つ一つの雑誌につけたコピーも良い。

脱ぎはきしやすいのはやっぱりスリッポン。「リンネル」p.21

17畳のサロンにグランドピアノを置いて、お友達を呼んでミニコンサートを楽しみましょう(「家庭画報」p.20)

お礼状は相田みつを式が効く!(「プレジデント」p.22)

 

【日本で最も表紙を撮り続けた男 篠山紀信】pp.24-29

Q3.50年の歴史の中で「雑誌」の隆盛を感じますか?

あの時代はいい時代だったといえる時代はない。

時代はいつも不満だらけ。

何時の時代にも常に五感を研ぎ澄ませて時代と切り結んで行けばいい。

p.29

 

【写真:2009

逃げる川上未映子、追う篠山紀信】p.41

川上未映子は10年たっても川上未映子をしているから凄いと思う。

川村エミコも10年たっても川村エミコをしているから凄いと思う。

 

 

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【編集長一問一答】pp.56-59

「Hanako」「VERY」、「BRUTUS」「SPUR」の編集長がお互いに10問10答するコーナーである。ちなみに四誌とも2020年現在バリバリに現存しているので凄いなぁと思う。

特に印象的だったのは、「Hanako」「VERY」の編集長がいくら「仕事好き」といっても、蕁麻疹がでたり10円ハゲを作ったりしているところである。まさしく雑誌の編集者って、「好き」と「安定」両立している貴重な職業の一つだと思うんだけど、そういう人達でもそうなるんだ~~と思った。

人間ストレスと無縁で生きるって不可能なのかもしれない。

あとSPURのボツ企画「ぼくたちの老後」は27歳の僕も是非読みたい。老後に対する絶望的情報はミチミチあふれているけれども希望的情報は殆どない。僕達には少ない年金で囚人のように暮らす暗い老後しかないのだろうか。

 

【胸キュン必至!雑誌のふろくがスゴイ!】p.76

そうか・・・「1年生の科学」「2年生の科学」等学研の「科学」シリーズを読んでいた僕としては普通だったのだけれども、カブトエビのふろくって普通じゃないのか・・・。

 

 

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【40人のここが気になる】pp.80-126

寄藤文平は『調理場の戦場」に装丁のしごとの礎を見るp.83

ブラシの間にたまたごみを取り除くときにだけ心が穏やかになると書かれた部分に対して、寄藤さんは「僕の不安は、突き詰めれば、独りぼっちになることへの恐怖だった。(中略)そういえば自分も、そういう孤独を支えにやって気たのだった。今できることをやるほかにない。」と述べている。

こういう感覚って誰にでもあるんだなと思った。てっきり僕だけだと思っていた。

けれど自分の今の小さい掌で出来ることをやるしかない。そうだ、そこに尽きるのだ。

 

山崎まどかは『ここは退屈迎えにきて』を読者を虚無感から救う作品だという」p.88

嗅覚の良さ!

2020年現在、今やこの「ここは退屈迎えに来て」を書いた山内マリコは人気女性作家のひとりである。2011年、その作家のデビュー作を紹介している山崎さんの嗅覚の良さ!

そういえば山内マリコの作品はまだ一冊も読んでいない。この作品をはじめ「あの子は貴族」「アズミハルコは行方不明」等々色々読んでみたい作品はあるあるなのだけれども・・・。

 

「遠山正道は『脇坂克二のデザイン』の妻に宛てた1万枚の絵ハガキ所に大きな価値をみる」p.93

遠山さんが誰だかどうでもいい。脇坂さんが誰だかどうでもいい。

「自分を特定できる何かがあると、移ろいやすい世の中や気持ちの中で、Googleのピンが上から刺さるように世の中と自分を位置づけられる。脇坂氏は1万枚で図太いピンになった。我々はどうするか」

このブログは、僕と社会を繋げる細き細きピンである。

もっとたくさん書かなければならない。書いて書いて書いて、読んでもらうことに対して僕は最も社会とのつながりを感じ取れる、気がする。分かんないけど。

でも「何で自分と社会をつなぎとめるか」それは30までに考えなければならない問題なような気がするのだ。

 

「渡辺亨はシンガー・ソングライター おおたえみりの予測不能なポテンシャルが気になる」p.105

おおたえみり僕はこの名前をこの記事で初めて知ったのだけれど、YouTubeで見て秒で確信する。いい感じ。

でも渡辺さん、2020年現在おおたさんは長い長い産休育休に入っております。

その予測不能なポテンシャルは2010年初頭という時代に永遠に凍結されたのです。

 

宇野常寛は『ULTRAMAN』が現代の「巨大なもの」にいかに抗うのか今後の展開を期待する」p.108

ていうか2012年で「ULTRAMAN」もう始まってたんだ。

 

尾形真理子は8月15日放送の『NHKスペシャル』を観てコピーの持つ力について考えた」p.117

「戦争に敗れました」ではなく、「戦争は終わりました」。だから8月15日は「敗戦の日ではなく「終戦の日」なのだ」

敗戦の日」であれば、「自衛」隊は存在しなかったかもしれない。

9条などとうの昔に破り捨て、軍隊を所持し武力で、武力であらゆる問題解決を試みる世界線

 

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【ワセ女でいこう!~特別編~ 津田大輔×柚木麻子】pp.128-129

そういえばワセ女って聞かないねえ!!!

というか、2020年はなんかもうもはや「慶応・立教・青山学院・女子大の女子」「それ以外の大学女子」みたいな印象すら受ける。最近法政がいちぬけぴしようとしているイメージがある。させない。

 

【ITの話はビールを2杯飲んでから】pp.130-131

【今夜、二丁目のバーで】p.132

2012年の雑誌である。

ITの方が当時の最先端の話をしているはずなのに、二丁目の噺の方が2020年でも余裕で通じる。

どうなんだろう。

話が次々と移り変わるIT業界の方が健全なのだろうか。

それとも、何年も何年も同じ話を続けていく二丁目の方が健全なのだろうか。

いや、健全もクソもないのかもしれない。単純に人の好み。

 

【コウヨクヒューヒュー♪其の十四 80歳のおばあさんが仕上げた、秋の名画コラージュまつり】p.134

あのキリスト画も、出てきてもう10年たとうとしているの・・・まじ?

 

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以下、本文から気になった部分を抜粋。

 基本本文には日本に現存する、もしくはした雑誌のありとあらゆる知識が書かれている。その中から気になったものの感想を残す。

 

nicola」「ピチレモン

学校じゃ教えてくれない女の生き方、全部載ってます p.40

一冊を通じて、nicolaピチレモンの微妙な違いについてこだわっているのが良かった。

nicolaナチュラル、ピチレモンはギャル系なんだそうな。知らなかった・・・!

そして僕は当時ピチレモンを、数か月に一回買っていました。結構1冊1冊を読み古していた。高校の途中からセブンティーン毎月買うようになりましたが・・・。

でもまぁピチレモン休刊しちゃったからね。2020年現在ではギャルもナチュラルもオタクもみんな女子中学生はnicola一択ですよ涙。

(あー、でもセブンティーンも対象年齢下がりつつある気がするんだけどどうですかね)

この時期の雑誌って一番大切だと思うんだけどなぁ・・・。だって、中学生の時に雑誌を読まなかった女の子が大人になった時雑誌を読みますか?って、読まないでしょ。女性誌界隈は一番力を入れるべき年齢だと思うよJCJKは。

 

NHKラジオ基礎英語」ほか

雑誌好きが選ぶ!良いにおいのする雑誌ベスト3p.45

 分かる。基礎英語はめちゃくちゃいい匂いだった。

あの藁半紙感たまらないよね。

ちなみに僕は当時学校で無理矢理交わされていましたが一切読んでなかったし学校にもよく忘れて行ってた。てへ。

でも2020年にもなると、基礎英語も進化してますね。1年2年のとか普通にライトノベルみたいなイラストだもんね。

これだったら当時の僕も熱心に聞いてたかもしれないのに!

 

「雲のうえ」

読者はみんな下から目線ですp .72

まず地方にフォーカスした雑誌があって、且つそれがすごい人気というのが驚き。雑誌の同人誌まであるんだそうな。

静岡にも東部中心に「ヒュッゲ!」というローカル雑誌があるのですが、人気かと言われるとまぁ・・・うん。

でもこういうZINEのようなインディーズの雑誌分野が、日本の雑誌の未来を担っている気がする。そしてどんどんこれから10年20年ガラパゴス的に発展していくのではないか。

 

Cancam」「JJ」「with」「MORE」「LEE」「ESSE

女性被比較3本勝負!褒められたい派と知りたい派 p.68

似た年齢層がターゲットの雑誌2誌を比較する記事である。結構分析が細かくて面白い。

ただ2020年現在ではだいぶ様相が変わってしまったように思う。

ちょっと並べてみる。

 

CanCam」「Ray」

Cancamであれば、「JJ」の月刊化が止まってしまった今、ライバルは「Ray」であると思う。今一番系統が近いのはこの2誌ではないか。「VIVI」はもっとギャル感あるよね。

ただずっと思ってたんだけど、Cancamって、なんか中身のレイアウトも容姿も付録もいまひとつダサくないですか?

僕は「JJ」の次に休刊するファッション誌は「Cancam」だと思っています。小学館の唯一の大手女性ファッション誌という点で延命措置がとられるかもしれませんが・・・どうも時代についていけきれていない感じがする。かとしがモデルやっているので5年は生きてほしいですが。

 

「with」「MORE」

この2つは2020年も変わらず。

本誌では「with」が実用「MORE」がカジュアルと定めている。

その方式は2年くらい前までは定石だった。

ただ、多分3年後には完全逆転していると思う。「with」がカジュアル、「MORE」が実用。

どちらもしばらくは存在しているでしょう。講談社集英社とバックが大きいのと、知名度・歴史と、港区OLから地方公務員何ならフリーターまで、カバーしている女性の幅も広いと思う。ちなみにJJは光文社。いまいち弱いからね。ちかたないね。

 

「LEE」「BAILA

「LEE」ESSEが並べられていますが、ESSEは年齢層というよりかは全般的に「主婦」向けになったイメージ。あと「LEE」は30代向けのイメージだけれども、「ESSE」は40代メインな気がする。多分ここ数年でメインのターゲット年齢層上がってるよね?

じゃあその「LEE」の対抗馬は何かというとBAILA。簡単に言うと、「家庭に重きをおく30代」「仕事に重きを置く30代」で分けられるように思う。

ちなみに確かどっちも集英社・・・内紛がアツい!!!BAILAを光文社に売ったげて!!!

 

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「群像」ほか

女性上位時代に突入? p.74

201年当時の話なんだけれども、群像が表紙のデザインをリニューアルし、ざっくり言うとおしゃれになったんだそうだ。

確かに、文芸誌・・・は僕の不勉強でよく分からないけれども、ここ最近はユリイカをはじめこのサイズのニッチな雑誌ってちょっと「お洒落」な感じがする。

その種のひとつが、この「群像」のリニューアルなのならば非常に歴史的に価値のある記事な気がする。

 

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以上である。

雑誌好きというのもあって結構ずらずら長く書いてしまった。

本特集・本屋特集を見たことは数あれど、

雑誌特集を見たのはやっぱり本書が初めてで、それ以来なかなか見たことがないので。

雑誌好きとしてはアツくならざるをえない。ちかたない。

 

日本はかつて「雑誌大国」だったと聞いたことがある。

海外と比べると雑誌の種類が圧倒的に多いんだそうだ。

雑誌も「クールジャパン」の文化の一つになりえるのではないか。

もっと雑誌は雑誌特集してくれても、ええんやで・・・。

 

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 ***

 

LINKS

今年のケトルの感想。 

tunabook03.hatenablog.com

 

今年読んだ雑誌の感想の、一部。

tunabook03.hatenablog.com

 

 

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川勝徳重編『現代マンガ選集 恐怖と奇想』-昭和初期の漫画って、おもしろ。-

 

昭和初期の漫画ってこんな感じだったんだなぁ。

 

そこが一番面白かったので、他のもちょっとずつ集めようと思います。

 

川勝徳重編『現代マンガ選集 恐怖と奇想』(筑摩書房 2020年)の話をさせて下さい。

 

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【概要】

膨大な〈恐怖と奇想〉を扱ったマンガ作品の中から、

「街頭紙芝居」と「戦後をどうとらえるか」という観点から

新進気鋭の漫画家が精選したアンソロジー

 

収録作品

横尾忠則週刊少年マガジン」表紙

陽気幽平「ぬらり沼」

楠勝平「蛸」

岩波成芳「悪魔っ子」

山川惣治「指輪」

小松崎茂関東大震災

丸尾末広「無抵抗都市」

橋本将次「女を狙え」

凡天太郎「河童」

呪みちる「赤いトランク」

金風呂タロウ「訪問」

新谷成唯「voice/声の存在」

 

裏表紙より

 

【読むべき人】

・漫画好き

・昭和の漫画が読んでみたいが何から読んだらいいのか分からない人

・「恐怖と奇想」←この言葉にキュンとくる人

・創作に対するエネルギッシュさを感じたい人

 

【感想】

本書を知ったのはツイッターだった。

古書ドリスさんかゲンシシャさんのツイートで本書が世に出ることを知った。

もともと本シリーズの存在は本屋で見かけていたから知っていたが、今回のテーマはなんと「恐怖と奇想」

これはもう。これはもう、読むしかない。

実はかなりのオカルト大好きまぐろどん、このサブタイトルを見たときからもう絶対買おう発売日に買おうと心に決めておりました。

恐怖と奇想。素晴らしい。

もうこれざっくり言うとほんとうにあった怖い話世にも奇妙な物語のいいどこどりってことでしょ?最高やんな。

 

特にグッときたのは、昭和初期の漫画の熱さ。

画力だけで言えば、令和の方が圧倒的に優れている。

ただそれは画力「だけで」言えば。

話の主題は今と比べるとかなりシンプルである。先述したようにウナギ、タコ、兵隊、震災・・・タコってなんだよ!!!タコってなんだよ!!!!

だが主題がシンプルな分、作者のイマジネーションが直に伝わってきて、ビシビシする。ビシビシ感じる。

ウナギに全身ぬめりとられたおやじの、絶望しきったようなけれどどこか間の抜けたユニークな表情。

タコの、いちいちいちいちねっとりと読者に訴えかけてくる眼差し。

骨になった兵隊の、異様なほど密な描きこみと、容貌から感じられる恐怖・・・とそれ以上の寂寥。

震災についてただひたすらに描きつくした30ページは当時の恐ろしさをヒリヒリと伝える。画だからこそ伝わる震災の恐ろしさ悲惨さ。

決して画力は高くないけれども1ページ1ページに込められた熱量・強さ・力・・・。

複雑でない分、筆者のメッセージが読者の心を的確に穿つ。

今の漫画の方がそりゃあ絵も綺麗だしストーリーも綿密だしキャラクターも魅力的。

だけど昭和初期の漫画には、今の漫画にはない・・・熱、がある気がするのだ。

その根源がどこから来るのかは分からない。メディアが紙媒体頼りだからかもしれない。今ほど漫画周辺が複雑じゃなかったからかもしれない。出版業界全体が盛り上がっていたからかもしれない。昭和という時代自体が今と違ってエネルギッシュだったからかもしれない。

分からない。

分からないけれども、とにかく、

昭和の漫画には「熱さ」・・・この一点において、現代の漫画と同等程度の魅力・価値があるように感じられるのである。

現代の商業誌よりかは、同人誌に近いのかもしれない。

作者が読者に伝えたいことを最大限の熱量を高めて描く・・・。

そして読者は作品を読み、タコが考える恐ろしい計画に震え、布団の中で眠れない夜を過ごす・・・。

 

ちょっと今まで食わず嫌いしていたけれども、昭和の漫画はもっと読んでみたいと思った。

あと、やっぱ萩尾望都先生って偉大だったんだなぁ・・・って思った。この前「11人いる!」を読んだけど、こういう昭和漫画の世界において突如あんなに緻密な世界観の繊細な漫画を発表し始めたってわけでしょ?

今でこそ「ほおんまぁおもろいやん。両性具有の設定ええやん。男の娘ええやん」で終わるけれども、当時は「うおおおおおおおお!!!なんだこれはあああああ!!!!!両性具有ううう!!????」ってなったんだろうなぁ。

 

以下簡単に各編感想を書いていく。

ちなみに編者は解説において、「恐怖と奇想」を扱った作品は膨大で文庫一冊に扱いきれない・自身もそこまで精通しているとは自負していないとした上で、せれくしょんのとうちうかんをもたせるため2つのテーマを設けたという。

その2つは「街頭紙芝居」「戦後をどう捉えるか」p.340-341。

確かに呪みちる先生と金風呂タロウ先生以外の作品はそのテーマが共通している気がするし、確かに1冊まるまる読んだ直後は「昭和」「戦後初期」という時代を堪能したぞ、といった触感があった。

この企みは基本的に成功と言っていいと思う。

 

ただその縛りにとらわれ過ぎたせいか、最後の作品のセレクトはどうなんだろうと思う。どうなんだろう。

まぁいい。とりあえず順番に感想を。

一番好きなのは梵天太郎先生「河童」。

 

 

横尾忠則週刊少年マガジン表紙」

コラージュである。今じゃ絶対考えられない。

白人の、吸血鬼の男性と逃げる女性の写真がコラージュされているのだけれども・・一通り読んだ後に見直すと成程、この一冊のはじまりにふさわしい一枚だと分かる。

ちなみに僕も最近人生で初めて週刊少年マガジン、買いました。

 

 

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陽気幽平「ぬらり沼」:少年の父親は、沼にいる大鰻を食べてやろうと画策するが・・・。

1961年頃の作品と書かれている。60年前の漫画である。凄い。

まずキャラが凄い。一番初めに「福成幸造」という縁起が良い名前の縁起が悪そうな爺さんが出てくるのだが、その顔面がなんだか凄い。左右対称と見せかけて絶妙にアンバランスなところとかなんともいえない。

他にもにったりとした目元であるとか。あと「幸」と描かれた悪趣味極まりないネックレスであるとか、一言目の初めが「アハ・・・」から始まるところとか。

もう一度見たら忘れられない。なかなかインパクトのある爺なのである。

無論その他のキャラも凄い。まあ特に親父さん。表情はほとんど変わらないのだけれども、その表情にはなんともいえないウザさがあるのである。ギョロ目から感じられる鰻への熱意・・・そんなに鰻食いたいのかお前・・・。

かと思えば、寝顔は間抜けてなんとも愛らしいし、一見落着後のしゅんとした表情・反省した表情には可愛らしさすら感じられる。

あと、効果音も凄い。普通鰻に「ギュー」p.13とつけますかね。春が来たところを「春です」p.13堂々と書いて表現しますかね。そもそもペンネームに「陽気幽平」なんて名前使いますかね。なんだよその名前。

60年前の漫画家だけれども、まぁ非常に個性派寄りの方だったんだろうなぁ・・・。巻末に「連絡先が分からない」と不穏なことが書かれてましたが、まぁ分かる気がする。身内に隠して活動していたんじゃなかろうか。

「俺ア死ぬまで鰻はもう喰わねえ」p.40

 

 

楠勝平「蛸」:水族館で泳ぐ蛸の企みとは・・。

蛸(タコ)が自分の考えているたくらみを、読者に対して延々ねっとり語りかけてくるただそれだけの話である。

ただそのたくらみのなんとまぁ、難しいこと・・・。

だがしかし蛸は本気なのである。目を見りゃ分かる。

蛸は本当に自分の望みが叶うと信じて、日々祈りを捧げてきたのである。最大限の努力も積んできたのである。

からの、なんとまああっけない最後・・・。

そしてその最後の最後、作者から読者へのメッセージが書かれた1ページが印象的。

「人間っていったいなんだ!?」

私の追求はこの問いかけに尽きるのです

読者諸氏と共に考えて行きたいと思うのです p.62

この作者は30歳で早逝したとのことだけれども、その理由も、なんとなくわかる一編。

 

 

 

岩波成芳「悪魔っ子」:宇宙船からの光線で妊娠してできた娘は・・・。

冒頭無駄にエロい。艶めかしい。

あと最後の母子の絆がもたらすハッピーエンドはちょっとうるっ・・とは来ませんでした。

というのも、どうもこの昭和初期のSFの雰囲気が僕は無理なんですよね。

今日泊亜蘭先生の作品集を買って読んでいたことがあったのですが、途中から吐き気を催す・体調がちょっと悪くなる・ダルくなる・・・で、珍しく途中で挫折したんですよ。100ページいくかいかないかで。そしてそのまま売りました。正直持っているだけでも嫌だった。

結構表紙も良くて、短編集で、読み易かろうと思ってたんですが・・・それでもどうやら無理だった。

なんかこう今のSF主流のディストピアものとかはまだ読めるんですが、チキュウに宇宙人がやって来て人間(特に日本人)を攻撃して去っていく、この流れのものがどうも生理的に受け付けない。

なので本作読んでいるときもずっと「ルミ死ね」と思ってました。

でも13ページとは思えないストーリーの壮大さ、最後に1ページ1コマ割くことで表す宇宙、ルミ子の「ぐわし」とでも言いそうな表情等々、本作が今こそ評価されるべき作品なのは分かる。

「ウウウおいしい・・・・・・」p.68

ファミチキ食べながらのルミの一言。

 

 

 

山川惣治「骨ノ兵隊さん 指輪」:拾ったダイヤの指輪をネコババしようとしたら・・・

一期に描きこみが増えて、ようやっと見覚えのある漫画感が出てきた一編。と言いつつも、その前の「悪魔っ子」と1年しか違わないのですが・・・。

本作でまず目を惹くのは骨の兵隊の恐ろしい容貌ですね。一回一回まぁ結構怖く描かれているんですよ。追ってくるし。最後の1コマは切ない姿で描かれていますが・・・。

あとヤクザ。今でこそヤクザってアウトレイジみたいなイメージが強いんですが、ここに出てくるのは普通の青年とおじさん。でもヤクザなんですね。はえ~と思う。多分今と昔じゃあ、組織構造も社会的地位も何もかもが全く違うんでしょうね。

そしてこの「兵隊の幽霊が出てくる」「昭和初期のヤクザ」が描かれている点で、本書の選択基準の一つ「戦後をどうとらえるか」に引っかかって選ばれたということでしょう。

ちなみにコマ割り自体が滅茶苦茶読みづらいので、話が全然頭に入ってこない。なので本書がすぐれている作品とは分かりつつもどれだけ優れているのかはちょっとまぁよく分からなかった部分がある。

でも扉絵の骸骨の恐ろしい容貌は結構インパクトがあって印象に残る。

あとあと、タイトルよく見ると骨ノ兵隊「さん」、ひらがなでさん付けなんですよね。そこから戦後まだ間もない時代の作品だということがなんとなく察せられますね。

ギックシャック

ギックシャック  p.84

兵隊の足音。

 

 

 

 小松崎茂関東大震災大正12年8月1日東京を襲ったのは・・・!!

体験者が「大震災ではこんなことが起るんだぞ!!!」「本当に大変だぞ!!!」をただただ32ページやる漫画である。やっぱ体験者な分だけあって、その分切羽詰まったものがある。

画力は今までの中で一番高い。紙芝居出身の方とのことだけれども、なるほど。絵で勝負してきた人なんだろうなぁと納得がいく。同時に画力が高い割に妙に動きが止まって見えるのにも納得がいく。

内容はそりゃぁただひたすら恐ろしかった。こんなことが起ったらたまらない、

でもこういう、「この時代は大変だったんだぞ!」漫画って、戦時モノはよく見た・覚えがあるけれども、関東大震災モノって初な気がする。

そのレア度に着目して選出されたのかなぁ・・・。

確かに戦争も起こったら怖いけど、震災も起こったら十分怖いものだし。

「これがボクの経験した関東大震災だ!!こわいだろうが、すべて事実なのだ!!今、こんな大地震が東京をおそったら、こんなものじゃすまないぜ!!大地震は明日にも起こるかもしれない!!」p.132

 

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丸尾末広「無抵抗都市」:1946年夫が兵役から帰ってこない女とその息子のもとに現れたのは奇妙な小男で・・・

丸尾末広名前は聞いたことがある。

けれど作品は読んでこなかったので、今作が初となる。

ええ・・・と思った。ええ・・・。

いや、それは悪い意味ではない。

ただ話の後味が悪すぎてええ・・・しか出ないのである。ええ・・・。

一体この小男は何がしたかったのか。醜く小さい自分が、一人の美しい女の人生を破滅させることで、コンプレックスの克服を図っているということなのだろうか。分からん。僕は過度に小さくもないし男でもない。

なんかもうとにかく後味悪い話が、熟練した画力と様々なモチーフを交えて描かれるものだから、その後味の悪さがねっとりと、後を引く感じ。ええ・・・。

後味が悪い作品、を求めている人にはうってつけの一作。

あ、あと「無抵抗都市」→「むていこうとし」→「無抵抗と死」とかかってんのかなぁ。

戦後の僕等は無抵抗だった。耐えるしかなかった。

「あなた!あなた!怒ったってだめよ 私達は負けたのだから」p.203

 

ちなみにこのタイミングでこの作品持ってきた編者は凄いと思う。

今までは昭和初期の10-30ページ程の漫画だった。確かに真新しい感じはしたものの、ストーリーだけで言えばちょっと物足りなかった・満腹まではいかなかったのも事実。

同じく戦後まもなく(描かれたのは1990年代だが)を舞台にしているものの、80ページ弱の刺すような後味の本作を持ってくることで、一気に満腹を超えて胃がもたれるような感覚。

そこから先はまた比較的短いページの作品が続くわけだけれども・・・この作品の後だとどの作品も一気に重みを増して見えてくる。

そして冒頭に戻るとまぁ何と可愛い、「ぬらり沼」おやっさんよ・・・。

とにかく、この絶妙な順番でこの作品を持ってきた編者万歳。編者万歳。そういうことなのである。

 

 

 

北見昭男「女を狙え」:ある日和歌山の奥さんが歩いていると車に乗った男から声を掛けられ・・・

1961年の作品である。編者によると「日本最初期のエロ劇画のひとつではないだろうか」とのこと。p.220

成程。確かにちょっとエロいかもしれない。

でも目に付くのは妙に淡々としたドライな話運び。

女に対して非情なヤクザにドン引きからの、同じく非情な旦那へのドン引き、そしてさらに上を行くやっぱりヤクザはヤクザだった!非常なヤクザにさらにドン引きするという、ドン引き三段活用の話である。

でもまぁ思えば、「ぬらり沼」「蛸」「悪魔っ子」「指輪」らへんは同じく淡々としていた部分はあったし、それが当時のスタンダードだったのかなぁ。

あとひたすらにドン引きすればさくさく読める話ではあるので、「無抵抗都市」のねっとりぬっぷりした後にサクッとこれが来るのは気持ちがいい。でっぷりとしたステーキの脂を赤ワインで流し込むような。

扱っている主題が、男が女を狙って×××して×そうとうするという点では共通しているわけだし。

「やめて よして あれーっ!」p.233

 

 

 

凡天太郎「河童」:ひき逃げにあった河童の死体を男は憐れんで土に埋めたが・・・

男が女を×する話が2つ続けて収録。

すると絶対そこに不満を抱く人々がいるのは当然のことである。ふぇみふぇみ!!ふぇみふぇみ!!

そこにこの作品を持ってくる編者の腕よ。令和だもの、しっかりとふぇみにも対応しておりますよ。

1968年の作品とのことだったけれども・・・この作品が一番僕は好きかもしれない。

まずこの時代にして、女が積極的っていうのがいいよね。

フェミ運動に感化された現代に描かれる積極的な女性と、奥方・奥さん・専業主婦が推奨される当時に描かれる積極的な女性って、根本が違う気がする。

現代でこそ「積極的に動く女≒幸せをつかむ女」みたいな価値観だけれども、当時の「一歩さがって夫を支える女≒幸せな女」みたいな価値観。そのなかで、積極的に活動する女って、凄いなぁと思う。幸せになりたいから積極的になるわけじゃない。自分がそうしたいから積極的に動くのよ、みたいな。

あとこの作品は最後まで結末が全く読めませんでした。僕はね。

そして結末がもたらす輪廻感スパイラル感悲劇はまた繰り返す・・・感含めて、やっぱりこの作品結構好きかなぁ。

「キュウリ下さい」p.259

 

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呪みちる「赤いトランク」:長い海外出張から帰ってきた旦那が持ってきたのは赤いトランク。ところがそれには全く触れさせてもらえない。また、帰宅後夫の様子は豹変し私に冷たくなり・・・。

呪先生の作品は4年前に出た宝島社のアンソロジーで読んだことがあるんですよね。黒いコーラの話だったかな・・・。すっごい良くって、単行本を調べたんだけれども全部売り切れててプレミア値ついてて絶望した記憶。漫画で1000円超すのはなかなか勇気がいりますよね。

そんな方の別作品がこれまた読めるとは眼福眼福。また、この作者の作品をしっかり入れる編者に感服感服。

この人の作品は、ストーリーもいいんですけど、ヒロインがとにかく可愛いんですよね。超かわいい。本当可愛い。ホラー漫画のヒロインは可愛いという鉄則があるんですけどその鉄則を破っても可愛い。本作も然り。

そしてその愛らしさに見とれているうちに突如現れる凄惨たるシーンのギャップよ。その高低差が何とも絶妙。心に残る。

あとこの作品は・・・まぁそうですね、ちょっぴり怖いローゼンメイデンといったところでしょうかな。おあとがよろしいようで。

「おまえは誰だ」p.273

 

 

 

金風呂タロウ「訪問」:ピンポーン・・・ドアを開けても誰もいない日が続いた。が・・・。

2015年デビューされた金風呂タロウ先生の作品である。僕は本書でこの作者の存在を知った。

平成後期-令和にかけて、よく見られる奇想・「謎のものが現れて不幸をもたらす」系の話である。その謎のものに関することは一切触れられず正体も明かさないで終わる。京極夏彦の『厭な小説』とかその典型だよね。本作もそう。

でも分からないと分かりつつも、推測しちゃうのが読者のサダメというものである。

僕は初め・・・、最初に現れた「謎のもの」はメスだと思っていた。だからぷーちゃんも、妻も様子が変わってきたのかと思っていた。二番目に現れた「謎のもの」は明確にオスである。だから今度は主人公の自律神経崩壊かと思っていた。

ただ2回目読むと違った。多分最初のもオスだったのだ。プーちゃんに呼応するブツをもっていたから見えなかっただけで。そして2回目やってきたのもオスで、人間に呼応するブツを持っていたにすぎない。初めに犯されて死んだのはぷーちゃん。だから次に犯されて死ぬのは妻。

といったことなのだろうか。

うーん。分からん。

でもこの作者の作品は、ストーリー・・・よりも独特な絵柄がもたらす独特な雰囲気に魅力があるのだと思う。単行本はまだ出ていないとのことだけれども、出たら是非買いたい。教えてほしい。

「プーちゃんは胎児と共に死にました。」p.293

 

 

 

新谷成唯「voice/声の存在」:ヤンが置いていった娘はある日黒い液体を吐いていた。

うーん。難しい。よく分からん。難しい。

これがいわゆるガロ系というやつなのだろうか。

編者は真珠湾攻撃の写真がモンタージュされたページ以降のカタストロフ」を感じたらしいけれども僕はあんまり感じなかった。p.298

もうこういう、「人がたくさんいるのに僕は孤独だ」みたいな作品は結構見てきた。死ぬほど見てきた。

根底に漂うそこに、斬新さも何も感じることがなかったから、こうも心に響かなかったのかもしれない。まぁ2000年の作品だし、当時は新しかったんでしょうけど。

正直この作品の選抜は、編者の思い出補正の部分も大きいのでは?

 

 

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来月発売のはなんと恩田陸先生が編者とのこと。アツいわね。

 

以上である。

昭和の作品は昭和の作品で当時の感触を生で読むことで楽しめたし、

(陽気幽平、楠勝平、岩浪成芳、山川惣治小松崎茂、橋本将次、梵天太郎)

平成の作品は平成の作品でその作者がもつ圧倒的表現力に舌を巻いた。

丸尾末広呪みちる、金風呂タロウ)

結構満足度が高かった一冊。

強いて言うなら最後にその一編持ってくるかね・・・?て感じかな。だったらもっと著名な作家の、マニアックな短編を持ってきてほしかったなぁ。もしくは女性作者のホラーを一編。

 

***

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 昔祥伝社文庫から出ていましたが、最近まともな表紙になって講談社かどっかから出ましたね。祥伝社文庫の表紙は本当に「厭」で手に取るのも「厭」でしたが、講談社文庫の奴ならまぁいいかな・・・ってくらい。でも好きなのは祥伝社文庫版の表紙。

 

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 萩尾望都先生の作品は漫画じゃなくて半分小説。

 

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 三浦春馬君が主演していた話が今でも覚えていて、今でもあの話を思い出すとちょっと前向きになれるんだ。僕の中での三浦春馬出演作はこれですね。あと佐久間由衣ちゃんはもっとハネると思ったんだがなぁ・・・。

 

 

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 今年も悪くなかったけど再放送多過ぎてちょっとなぁ・・・って感じだったな。上白石さんのも「怖い」と聞いてたけど見たらそんなだったし。佐藤健のも肩透かし食らったなぁ・・・。坂上忍のは最後ちょっとビビりました。神木隆之介君クンカクンカ!神木隆之介君クンカクンカ!!

 

借金玉『発達障害サバイバルガイド』-発達障害者が「健康で文化的な最低限度の生活」を送るためのガイドライン。-

 

 

 

午後2時。寝そべるベッド。

色々したいこと、しなければならにことが頭に浮かんでは消え浮かんでは消えていく。僕は起きなければならないが起きられない。

 

 

疲れているんだ。

疲れている。

 

動けないんだよ。

 

もう太陽も沈み始めていて小学生が帰路を急ぐ声・音が聞こえているしきっともう起きて労働してそれが終わってという人もいっぱいいるだろうにいるだろうにいるだろうに。

疲れている。

起きられない。

 

 

実学。 

 

 

借金玉『発達障害サバイバルガイド』(ダイヤモンド社 2020年)の話をさせて下さい。

 

 

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【概要】

普通じゃなくていい、生き抜こう。

お金・うつ・休息・在宅ワーク・服・食事・生活環境・習慣

発達障碍者の困りごとを全て網羅!

 

帯より

 

【読むべき人】

ADHDの人、もしくはその疑惑がある人

・で且つ、一人暮らしをしている人

・なくとも、生きづらい人

・自炊の仕方が分からない人

・休日だらけてしまう自分に罪悪感がする人

発達障害ではないけれども一人暮らしのサイクルを上手く回せない人

 

【感想】

発達障害者による発達障害者のための発達障害者の本である。

作者は、「借金玉」先生。早稲田大学卒業後大手金融機関に就職後、飲食業を営むも失敗、超絶借金を背負ったのちに非正規雇用の不動産の営業職に就職し、兼業で作家をしている。「借金だま」先生は「借金まだ」返せていないらしい。終わったら、ペンネームは「返済玉」になるのかもしれない。ならないと思う。

そんな方が書いた、発達障害者向けのライフハック・・・、この非常に生きづらくなった2020年現代で、発達障害者が「健康で文化的な最低限度の生活」日本国憲法25条)を送るための知識が詰まっている。

 

例えば、自炊。飲食経営者の経験もある作者が言うには「まずたらこのパスタのソースを、味の素やだし等を使ってのばす」ことから美味しいご飯を作ることは始まると言うが・・・!?(Hack32 pp.212-217)

身だしなみ。高いスーツを買うことよりも大切なこととは・・・!?時計マウンティングを回避する方法とは・・・!?(Hack26pp.176-179 Hack30pp.196-200)

生活。そもそも我々が棲む部屋において我々がまず買うべきものとは・・・!?(Hack1-3 pp.24-41)

暮らしにおけるライフハックから、

かと思えば、お金。多重責務生活を終わらせる唯一の方法とは・・・!?良い借金の方法とは・・・!?(Hack07pp.64-70 Hack10pp.80-85)

うつ。どん底から再起する」のにまず捨てるべきものとは・・・!?(Hackpp.278-284)

金銭感覚・個人の内面まで手広くカバー

 

結構ゴリゴリに具体的に書いてくる。そのため、まぁ結構「これ僕には関係ないな」と思うような部分もあるのだけれども(例えば、先述した「時計マウンティング」、ぼかぁおにゃのこなのであまりそこでマウンティングしません)がっちりハマるところはがっちりハマる。

まさしく、表紙だけでなく中身も「防災ガイドライン」。

地震が起きたら机の下にまず隠れましょう」「車での移動は避けましょう」「防災バッグ備品一覧」・・・等々、あれも役立つ知識が淡々と書かれているが、本書も同じ。

発達障害者がこの非常に生きづらい2020年現代において)「文化的で健康的な最低限度の生活を営むための防災ガイドライン」。文体は借金先生のユニークで軽い面白い筆致で書かれていて、軽くけらけら読めるけれども、その中身はゴリッゴリなのである。

 

今までの発達障碍者向けの本は、全体的傾向として、ふわっふわなものが多かった気がする。

「部屋が散らかっている自分を赦せるようにしましょう」「求めるハードルを低くしましょう」「あなたはあなたのままでいいのです」「アーメン」。

悪いことではない。

何故なら、発達障害」の本を手にする発達障害者なんて大抵が何かがうまくいっていない人だからだ。そもそもすべてがうまくいっていれば「障害」なんてないのであり、己がADHDASD・LDなど思いもしないのだろう。幸福。

うまくいかないこと・・・それは仕事かもしれない。「仕事でどうしてもミスしてしまう」「入社してもすぐにやめてしまう」・・・。家族かもしれない。「家族と上手く関係を築くことが出来ない」「どうしても相手につらく当たってしまう」・・・。

(キラキラ)「大丈夫ですよ、あなたはあなたのままでいいのです」(キラキラ)

そうやって悩んでいる人達へ向けた本は、そりゃあふわっふわに越したことはないのである。

 

ただその言葉には優しさはあるが、責任がない。

「休日を怠惰に潰した自分を赦すにはどうしたらいいのか?」「ハードルを低くするにはどうしたらいいのか?」「それでも自分が赦せません」「しにたい」。

本書はそこにも焦点を当てて解析度高く書いているのが良い。

 

「休日においてまず大切なことは何なのか」「変えるべきなのは自分自身ではない」「うつの底にいる時にまず僕達がすべきことは何なのか」「「死ねばいい」に頼るな」。

 

言語化・明文化しづらい人間の内面に至るところまで、ゴリッゴリに書こうとする試みが素晴らしいと思った。

 

この書籍には、責任はとれないしとりきれないけれども、少しでも取ろうとする姿勢が透けて見えていて、そこがとても良かった。

発達障害者が「健康電文化的で最低限度の生活」が送られる責任・・・。

今までの発達障害者向けへの本が「宗教」ならば、この本は「科学」だと思う。

 

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目を醒ませばもう午後4時。

いつのまにか寝ていた様で変な時間に起きてしまった。

自己嫌悪・・・どうして貴重な休日をこんなことに費やしてしまったのだろうと思っていたけれども、

「休日に必要なのは「休息」・・・」

 

朝から何も食べていないことに気づく。

1.5人前のたらこパスタでも食べてみようか。

 

 

以上である。

非常に実践的内容であり、帯の「普通じゃなくていい、生き抜こう」とするための要の部分はほとんど書かれていたように思う。

特に抗うつ剤を飲んでいる僕には「うつ」、そして休日を寝てスマホで潰してしまいがちな僕には「休日」の部分が響きましたね・・・。あと金銭感覚の部分も結構勉強になった。「習慣」とか、「生活」とかも。

と言いつつ、そのほとんどを未だに実践できていない。怠惰に潰した休日をちょっとは肯定出来るようになったことくらいか。

なので、「こんなことやりたくないけど、まあ、試してみるか」p.314感覚で少しずつやってみようと思う。

 

少なくともこの本を新刊で買ったことに間違いはなかった。

健康で文化的な最低限度の生活・・・を望む発達障害者必携のガイドラインである。

 

 

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ちなみに、基本一人暮らし用に書かれています。逆に言えば、発達障害でなくても、うまく独り暮らしが営めていないひとにもお勧めです。


***

 

 LINKS

 

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「mina12月号」-令和の雑誌は「ピンク文字系」「黄文字系」を提唱したい。-

 

 

 

黄文字系雑誌という概念を提唱したい。

 

 

 

mina 12月号」(主婦の友社 2020年)の話をさせて下さい。

 

 

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【概要】

mina12月号のテーマは「居心地のいいお部屋づくり」。センスのいい人のお部屋や、TOKYOのインテリアショップをたっぷりと特集しています。他にもファッションは、秋のご近所服というテーマで、今欲しいコートやジャケット、旬のブラウンコーデなどにフューチャー。

 

公式ホームページより

 

【読むべき人】

・お洒落な人の部屋のインテリアが気になる人

・スタンダードを愛する人

・だけれども、外国人モデルの雑誌はちょっとためらいがある人

 

【感想】

夏に買って結構良かったのと、「インテリア」というのは引っ越ししたばかりの僕にとってアツい話題だったので買った。

 

 

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早く整理してインテリアしたみ。

 

結構満足。

以下満足した理由を簡単に挙げる。

 

 ・追われない

熱狂的MORE読者だった私が最近離れた理由として、まずこれが挙げられる。今まで結構頭ほんわかぱっぱな内容が多かったのに、ここ1-2年で一気に「ワークライフ」「働く女子」「結婚」の文字が増えた。やめてほしい。そんなん普段から考えているし、そんなん真面目に取り組む人は「MORE」なんて買わずに「ゼクシィ」「月刊WOMAN」買うんじゃないのか。

このminaでは表紙を20代女子、本田翼や多部未華子(新婚)を起用してるにもかかわらず、内容では結婚の「け」の字も出さない。読んでいて疲れることがない。

あと、今は無縁の仕事についているので、ページの無駄だった「オフィスカジュアル」の特集もないのが嬉しい。「仕事でもお洒落で綺麗な私!」を強要されない。

休日と帰った後の時間、ここにフューチャーしているので、読んでいて肩の力が抜ける、リラックスして読める。

 

 ・勉強になる内容が多い

ブランドの歴史革靴の磨き方について特集していて、読んでいて結構勉強になる部分が多い。わざわざそういうコーナーを設けず、ファッションページにナチュラルに入っているのも好感度高い。

いや、聞いたこともない英国のブランドの服なんて多分一生買わないし、革靴も持っていないのだけれども、でもこういうのは読んでいて楽しいのだ。

且つ知っていたらなんか格好いいし。3万5万するスウェットはまぁ無理だけど、仕事着に着るスウェットはユニクロで次こんな色にしようとか思っちゃうし。ドクターマーチンやっぱ買ってみよっかなとか思っちゃうし。

ちなみに、夏に出ていた号で、本誌の読者は意外と正社員労働者が多いことが発覚している。正社員≒大卒。これを当てはめて考えると、もともと勉強好きな読者が多いのかも。

 

・表紙が良い

シンプルに。

雑誌の表紙は雑誌の顔。

今手元に前買った夏の号、この号、今月号3冊そろっているわけだけど、どの号も結構いい表紙だなぁと思う。どのモデルさんもいい表情をしている。やっぱファッション誌だから基本は女の子表紙がいいよね。MORE初め最近のファッション誌はジャニーズばっかでうんざりですよ神。

 

 

マイペース。

以上が最近minaminaしている理由である。あとまぁ、勉強になる内容で、表紙がいいとやっぱ捨てづらいしね。捨てづらい雑誌は良い雑誌。

 

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この号と今月号の表紙。どちらもいい表情をしている。

 

そして僕はこのmina「黄文字系」と呼称したいと思う。

 

まず聞いてほしい。

青文字系は、「zipper」「mer」「soup.」ほとんど死に絶えてしまった。唯一残っているのは「mini」くらいか。

メインストリームである赤文字系大手から発行されていることが多いものの結構瀕死。光文社の「JJ」月刊行をやめることを発表している。「with」「MORE」もこの系譜であるが、最近では毎号のようにアイドルの表紙が目立ち、「アイドルのファンという固定客を確実につかまないとヤバい」状況が伺える

なのでそそもそもそも、もう「赤文字系」「青文字系」が死語となりつつある令和。

 

その中で頭角を現し始めた雑誌を「ピンク文字系」と呼びたい。

「ar」「LARME「bis」等、自分の中で自分らしい女の子を突き詰めていくスタイルの雑誌である。特に「ar」は非常に幅広い年齢層をカバーしているのと、「雌ガール」という言葉を無理矢理作ったという点で、このくくりの代表的存在と言える。

ある意味では「an・an」このくくりに入れてもいいのかもしれない。毎週刊行される内容はコスメや手土産かと思えば、アニメコンテンツやアイドルまで。年に2回のセックス特集は続行。「週刊」という強みを生かして、様々な話題を手広くカバー。幅広い読者一人ひとりの、「理想の女」を決してこぼさない。

自分の中での最上級の理想の女の子・女を目指す。いわゆる「自分ウケ」万歳。これを「ピンク文字系」と呼称したいと思う。

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そしてそれに対抗するのが、minaをはじめとする「黄文字系」である。

mina」「FUDGE」、廃刊したが「ONKUL」「あお」等、等身大の自分をアップデートさせるスタイルの雑誌である。minaは「ar」同様幅広い年齢層のカバー・日本人女性の表紙・今も月刊誌(大事)という点で、このくくりの代表的存在と言える。

等身大の自分をアップデートさせる。というのは、例えば、ちょっといいセーターを買ったり、食べるものにこだわってみたり、「ご近所服」という言葉を使ったりと、普段からの実現可能範囲で、より良い自分に近づけていくこと。理想の自分になる!と目標が具体化しているよりかは、自分の周囲を整え続けることによって進化していく。

ピンク文字系がガツガツであれば、黄文字系はマイペース。扱う物もスタンダードが土台。また、「CLUEL」のように一部個性的なファッションも含まれる。

年齢層離れるが、「LEE」もこれに近いのかもしれない。配偶者有・もしくは子持ちの環境の中で、無印やユニクロ、GUを駆使することで低コストで周囲は常に素敵にしておく。

理想はないが、自身をアップデートし続けることで、チャーミングな女の子・女を目指す。理想を掲げずマイペースに手元のものから整えていく。これを「黄文字系」と呼称したいと思う。

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今や紙媒体の女性誌の王道を歩き始めている「ピンク文字系」にアンチするのが「黄文字系」。そしてその最前線に立つ勇敢な女戦士の名前こそ「ミーナ」なのである。

ちなみに、ピンク文字・黄文字それぞれ代表的存在として挙げた「ar」「mina共に主婦の友社刊行の雑誌である。編集は確かどちらも外注の編集プロダクションではあったはずだが・・・。

もしかして5年後10年後、女性誌を覇権しているのは、マガジンハウス・大手三社(小学館集英社講談社)でもなく、意外と主婦の友社なのかもしれない。

そして、雑誌の読者が減っていくにしたがって恐らくこの会社のように、雑誌の編集は出版社ではなく外部が請け負うケースが増えていく気がする。「LARME」の復刊がそうであったように。

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長くなってしまった。

思い付きの概念だから、荒い所は多々あると思う。

だが、概ね外れたことは言っていないように確信はしている。

 

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以下簡単に、本誌の特集の感想を述べていく。

 

Maison de mind:

エルエルビーンのワンショルダーはちょっと気になってしまった。

 

COSME CALENDER:

ここにも掲載されてる!!

色んな雑誌で白鳥の絵がパッケージの、赤口紅が5本のコフレがあるんだけど、そんなに赤いる?と思う。職場につける色でもないし、絶対余ると思うんだけど。

 

週末女子の冬支度:杉咲花

なんか一気にグッと大人っぽくなりましたね。セ・・・恋愛したのかな。

おちょやんってそうか・・・朝ドラのヒロインだっけか。どうも「朝ドラ出身の女優」のイメージがあって、これから主演を務めることに違和感。

 

秋のご近所服でいいモノ探し

1.ハンサムジャケット

3つのジャケットを扱っている。CPOジャケット。オイルドジャケット。モッズコート。ダブルジャケット。ジャケットがゲシュダルト崩壊。

チェックやら何やら色々扱っているけれど、どうやらCPOジャケット。これをアパレルは本気で今年流行らせたいようだ。ユニクロでも見た。

確かに見た感じ非常に気やすそうだしなんにでも合いそう。妙にミリタリーなところもたくましくていいですね。

次に扱うオイルドジャケット・・・これこそmina編集部の本命かな?手入れするのが大変そうなジャケット。でもこういうのを楽しんでこそ大人ってことなんだろうな。(笑)。

モッズコートは最近見ていないけど、ようやく一周廻って逆に「おしゃれ」になったのだろうか。MHLのはアメリカ海軍のパーカーがベースになっていてかっこいい。ドラゲナイ(死語)。

ダブルジャケットはボタンが2つ横に並んだジャケットのことですね。Pコートみたい。これはちょっと難しそうだなぁ。

2.4GIRALS AND 4BROWN

ブラウンはなんだかんだもう2年kる愛前からずっと流行ってますね。可愛いからね。仕方ないね。

ちなみに僕は今年ブラウンのコートをフリークスストアで買いました。20000円近くしてひえぇ・・・になったけど仕方ないね。可愛いからね。

3.HIGH GAUGE KNIT

ジョンスメドレーというブランドの存在を知る。はえー。ニットで3万円凄い。着たらどうなってしまうんだろう。乳首立ちそう。着てみたい。

ただこれは私が馬鹿なのか何なのか、「ハイゲージ」の言葉の意味が書かれていなかったのが残念。普通のニットと何が違うの。

4、SWEAT STYLE SNAP

言っちゃあ悪いが、minaスナップはあんまり質がよろしくないと思う。スタイリストさんの凄さを思い知る。

八頭司さんだけ結構良かった。けど他はなんか・・・ベストとは言えないしコーデが多い気がする。そこにその靴いるかね?そのパーカーの丈でいいのかね?その髪型でいくかね?みたいな…欠点が目に付く。

5.SHOE CARE

2ページ丸々革靴の手入れについて書かれていてびっくりした。この2ページがために、ちょっとこの1冊は捨てずにとっておこうと思った。

6. THE SNEAKER

ニューバランスのスタンダードは何故グレーなのか。番号の意味は何なのか。

ちょくちょく文字だけ見るブランドムーンスターが国産であること。

革靴ケアの話に続いて、ここのページも非常にタメになる。特にニューバランスの話なんて知ってるか知ってないか、買う行為ひとつとっても全然違ってくると思う。

 

週末女子の代官山ガイド

代官山。初めて行った時は結構普通の住宅街でそこに店が点在していて、所謂ショッピングセンターが乱立する「都会」を期待していた大学一年生の僕は絶望したものだった。でもそれ以来、関東にいた6年間はちょくちょく行った。蔦屋書店があったからね・・・ちかたないね・・・。

「ハリウッド ランチ マーケット」は行ったことこそないけれど、この前は何度も通ったことがある。スチームパンクの動物が飾られているんだよね。知ってる。あれ服屋だったんかい。

他にも色々な種類の古着屋さんがあっていいなぁ・・・と思う。静岡は所詮地方都市。choosyさんはうっかりすると全身で固められちゃうくらい行ってるけど、他はあんまり行ったことないなぁ・・・。富士に一軒、沼津に大きい古着屋があると聞いたけれど行ってみたいわね。

あと地味に気になったのが「ホロル・インターナショナル」。海外から仕入れたアンティークの時計を販売しているんだそうだ。気になる!!!アンティーク!?アンティーク!!西洋史学専攻卒業の僕はそのカタカナに弱いのです。

うわ~・・・5-6マンするんだろうなぁ・・・ほすぃー・・・。

 

カフェの彼女は「ハウディーマリー」が好き

マックハウスが手掛ける新ブランドだそうな。値段はアースミュージックエコロジーと同等くらい。見た感じもほとんどアース。アースで良くない?

 

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居心地のいい、お部屋づくり

そう!僕はこの特集が読みたくて買ったの!!というかせっかく引っ越したからには素敵なお部屋にしたいーんだと思ってるんですがまぁ・・・現実は厳しいですよね。

なのでこのクローゼットをちょっと前からほんの少しずつでも毎日毎日片づけているわけだけど・・・いつになるだあ。

掲載されているどの部屋も素敵でうっとり憧れる。特にやっぱ最初の稲垣夫妻の家は本が雑然と置かれているのにすっごくなんだかおしゃれなのだ。グリーンの配置も良いしアンティーク等が馴染んでいるのもとても素敵。絵が飾られているのも良い。これ目指したいですね・・・。

ただちょっとこの特集で残念だったのは、どの部屋も当たり前のように広かったこと。当たり前にソファーが置かれている。当たり前にトイレと風呂が別になっている。一つでもいいから8畳のワンルームいれてほしかったわね・・・。

 

TOKYO インテリアショップガイド

多種多様のショップが紹介されていて行けるか行けないか行けないわそらコロナだしなぁとかそういうの関係なしに読んでいて面白いページ。

特にmina世代を「住環境が変わる可能性が高い」としたうえで、注目する物品を「部屋に置いていてもいやじゃない日用品」「素敵なインテリア雑貨」p.77に絞っているのは素晴らしいと思った。

特に気になった店は「リカシツ」。フラスコ、試験管、植物。の世界観を極めたかのようなお店でこれは是非行ってみたい。

「PUEBCO」。店がこっちこそまさしく理科室のよう!戸棚一杯に揃えられたインテリアってはなんだか誌面越しに見ているだけでもわくわくしてくる。15坪に700品が並ぶそうな。凄くない?あとしっかり可愛くて値段も手に入りやすい値段なのが良いわね・・・。

そして「memo」。渋谷駅徒歩9分の、一足が途絶えない中古家具店。って行ったことない!どんな店なんだろう?どんなかわゆいものがあるかしら。

「POINT No.38」も気になる。というより、パソコンをやる机に置くライトがないんですよね・・・。欲しいんですよ。そこにこんなお洒落な照明があったらなぁ・・・なんて(照)

でもまぁまずは・・・。

 

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片付いてからですよね。分かる。

 

MASUDA LOVES CLOTHES

相対的に高感度爆上がりした男・増田特集。minaに連載持っているのは知っていましたが、もともと服好きななのですね。知らなんだ。そして妙にだぶついた服が多いなと思っていたけどそれにも理由があったのですね。知らなんだ。

奇抜な恰好が多いけど、なんか似合ってるに嫌じゃないのはジャニーズだから・・・よりかはやっぱ長年磨き続けたセンスによる賜物なんでしょうね。

 

スペシャルコフレで気分を上げて。

今年こそ、人生初コフレと思っていたけれど、買わずになんだか過ぎそうです。いざこの時期になると結局、衣替えだなんだといってそこに回すお金がないんですよね。あと本買っちゃう。買っちゃうよ~。

今月だけで20冊くらい買ってる。買っちゃう。買っちゃうよ~。

積読が恐ろしいくらいにたまっているので、今度実際に積んでみようと思う。

 

”短めヘア”にしてみない?

ボブ提案のページですね。しません。

前髪はちょっとまた眉上に切らなきゃな・・・。

 

Holiday mina December

mina女子に合う自転車探しに行ってみた:夏も自転車推してましたね。どうなんだろうね。コロナ流行ってから自転車業界ってやっぱり盛り上がっているのだろうか。そういった話耳にしたことないのだけれど。

わざわざ映画:十二単衣を着た悪魔」三吉彩花×伊藤健太郎黒木瞳自監督の邦画である。本当の悪魔は十二単衣着てなかったね・・・。

どこでなに聴く?:星野源のベストアルバムボックスが23000円らしい。すげえ。景気いいなおい。

でぃーーーーぷな韓国:レトロが流行ってるんだそうな。QBビールのクマさんかわE。

大人女子のマンガ道:和山やま『女の園の星』はとても良い一冊でしたよ。

全国お洒落なサロンはそはれな場所を知っている説:宇都宮編。行ったことない街に駅があり、人が住み、一定のおしゃれな街があることを不思議に思う。餃子。

のんべえ女子の週末ほろよい雑学:言葉の語源。「居酒屋」「お開き」「十八番」等の言葉の語源が乗っているが、結構参考文献丸写しで読みづらい文章なのが気になる。

数珠繋ぎ晩餐肉:ローストポークだって。うまそー。

わたしの偏愛!:家電をフューチャー。ホットクックは気になるんですよね。でも炊飯器でもいいっていうしね。でもニトリの炊飯器は耐えられるのか・・・?という葛藤をしているうちにやっぱり買わずに見逃すんだろうなあ。

 Interview

1.有村架純のん、武井咲千眼美子剛力彩芽西内まりや・・・僕と同年代。この世代の女優は結構穴が空いてしまったけれど、彼女だけは昔から変わらないですね。頼む。電撃結婚は30直前くらいで・・・頼む!!頼む!!!川栄や志田の結婚で結構もうこっちはギリギリなんだ・・・!!!!

2.瀬戸利樹またイケメンが出てきた・・・。なんだかんだ20代俳優で覇権をとっているのって菅田将暉だけですよね。伊藤君には期(ry 「35歳の少女」見てるんですが、竜星涼はもっと出ていい気がするんだけど、菅田将暉と同じ顔の系統っていうのがこれまたね・・・。

3 .宇垣美里:毎日コスプレするくらい、もっとオタクにこびてほしい。もうインターネットのマジョリティーが「オタク」なのだから。

 

mina総研「読書事情」:このmina自体が、読書好きの女子に向けて作られた雑誌感あるよね。その雑誌で読書に関するアンケートやっても資源の無駄。

SPBS:最近はめくるめく「新しい本屋」が出てきて困っている。改革改革改革。つまりそれだけ出版業界・本屋業界がヤヴァイということなのだろう。ロベスピエールは誰だ。

 

週末メンテ:冬のマスクケア。にんじんとブロッコリーが良いらしい。なるほど。大切なのはお風呂と睡眠。なるほど。

ムーン・リーのハッピーな1日ホロスコープ僕はこのコーナーの天秤座の「アウターは早めに手に入れて」表記で、フリークスストアのコートを買うふんぎりがつきました。

 

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裏表紙はが逆に外国人モデルが多い



 

以上である。

この号も良かったです。

 

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そしてすでに次の号(今月号)も買って、発売日から早3日、読了総量2割と僕の割にハイペースで読んでいるという・・・。

再来月号も買うことになったら本格的に定期購読について考え始めなければならない。

 

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LINKS

夏の号の感想。

 

tunabook03.hatenablog.com

 

これは既に読んでる。最近はこの作家さえ押さえとけばOK感すらあるよね。

 

tunabook03.hatenablog.com

 

唱えたい、「黄文字系雑誌」

 

tunabook03.hatenablog.com

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そういや「SPRiNG」はどうだろ。青文字系の生き残りにも見えるし、黄文字系にも見える。

 

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