小さなツナの缶詰。齧る。

小説・漫画・雑誌の感想が主です。

「東京グラフィティ 6月号」-2015年は当然のように「最近」の顔をする。-

 

 

 

 

2015年ってもう6年前なんだ、遠い昔なんだ。

 

 

 

 

「東京グラフィティ 6月号」(グラフィティ 2015年)の話をさせて下さい。

 

 

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【概要】

TOKYOいろいろガールズ大図鑑

個性いろいろオンナの子

総勢32人のスナップ&プロフィールを特集!

 

同棲の食卓

ふたりのゴハン、いつもの感じ

同棲カップルの食卓にフォーカス!

 

その他連載、タイムスリップ写真館」「結婚二世代物語」「VOICE」「スクープ!ギャル会話」「ひとり暮らしギャラリー」「東京ローカル」などなど。

 

【「東京グラフィティ」とは】

雑誌。2015年当時は毎月発行していたが現在は2月に1回。世知辛い。

スナップやインタビューがメインで構成されているのが特徴。

ラブドールと暮らすおじさんの日々」「ひとり暮らしの部屋」「カップルスナップ」等素人メインの特集が多い。

ちょっと上品な紙媒体の「月曜から夜ふかし」。

ヴィレッジヴァンガードべっちょべちょに癒着している。

 

【読むべき人】

・元CY8ER小犬丸ぽちちゃんのファン

・色んな個性の女の子が見たい人

・同棲したばかりで何作ったらいいのか分からない人

・2015年2016年にタイムスリップしたい人

 

 

 

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【感想】

東京グラフィティって、時代を記すための雑誌なんですね。

ページをめくった瞬間殺到する2015年に目が眩んだ。

 

色んな個性の女の子が見たくて、本書を手に取った・・・といっても2015年の雑誌である。正直に言うとメルでカリました。

というのも、本当は別の号の「東京グラフィティ」が欲しくて、毎日検索かけていたのだけれども、そこで目に留まったのが本号。「東京グラフィティ」の古書のなかでの最安価と、表紙の隅に書かれた「個性いろいろオンナの子」に惹かれて手に取った。

 

面白かった。

THE東京グラフィティって感じで。

簡単に第一特集特集、第二特集の感想と、主に印象に残った連載の感想を記しとく。

 

 

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まず第一特集「TOKYOいろいろガールズ大図鑑」

素人スナップの特集である。ただその被写体は「個性イロイロ女の子」、一筋縄ではいかないような女の子ばかり。

古着屋だったりフェミニンな恰好の女子大生だったりエロい格好をしたレイヤーだったりオリンピック目指す女子高生だったりDJだったりサイバーパンクだったりただただ地味な女の子だったり。個性イロイロ32色。

 

01.原宿ストリート類青文字属アメリカン科 瀬戸あゆみ

・格好がかわいい

赤毛

きゃりーぱみゅぱみゅに似ている

アメリカンな恰好でハンバーガーが好きってもうこれキャラクターじゃん。

02.渋谷原宿類ネオギャル族大胆露出科 所谷舞

ジーンズが破けていてもうジーンズじゃないじゃん

・「どこから見ても外国人!」と書いてあるけどーみたって横の瀬戸あゆみさんの方が外国人している

・ギャルかわいい

03.原宿古着類パンク族ガーリー科 mikki

・古着というか聖闘士星矢

・80年代の髪型が逆にクール

・バターチキンカレー好きなの滅茶苦茶わかる

・瀬戸さんも挙げていましたが、流行ってたよね。赤リップ。

04.原宿カラフル類プリンセス族ヤンチャボーイッシュ科 HANAHO♡EZAKI

・流行を意識していない格好のはずなのに、強烈に「2015年」を感じる

・NADIAってあったね~

・「一番使うSNS」でおしゃれ系がこぞってインスタ挙げるなかで、Twitter挙げてるの好感もてる

05.渋谷ストリート類DJ族ヤンキーMIX科 LISACHRIS

・一番かわいいと思った

・ファイルーズあい感がある

・好きな本でよしもとばなな「キッチン」を挙げているの本当可愛い

・太眉良い

06.高円寺バンド類80’Sネオロカ属キラキラNEWWAVE科 maikeeRIOT

・80年代の格好クール。2015年は奇異だったかもしれないけど今はお洒落。

・マストアイテム:シャネルの香水・・・100点

・「古い資生堂」通っているのは、内面まで徹底していて好感持てますね・・・!!

07.新大久保類オルチャン属シースルーバング科 寒澤貴子

・2015年に「オルチャン」「シースルーバング」という言葉がすでに存在していたことに驚きを隠せない

・でも彼女の前髪は今で言うと全然「普通」でシースルーしてない。6年経てあのスカスカに進化したんだなあ

・「日本の流行を気にしないで、」と書いてあるけど今真っ盛りなんだよなあ・・・

・韓国大好きらしいけど、今と比べて地味目なのも不思議。2015年の「オルチャン」と2021年の「オルチャン」は多分違う。「2010年代のオルチャン史」を追いたいですね。

08.ぽっちゃり類マシュマロ女子族モチモチ科 西木野

・この頃いたね・・・!ラブライブ無印好きって公言する女子。

・「西木野」というネームや髪型あたり、恐らくマキちゃん意識してるのかな?

・「ラ・ファーファ」のモデルを務めているだけあって太っているけど全く不潔感なくて可愛くてすごい

09.原宿竹下通り類アイドル属病んドル科 めんそ~れ愛菜

・彼女がプロデュースする「病んドル」というグループが2021年現在未だ存在しているという驚き

インラインスケート履いているの本当凄い

・格好可愛い

・2021年にいても違和感ない

10.ゴシック類男装属アキバ科 稔

・この人だけSNS検索しました。今も元気にゴシックしていて安心した

ヒプノシスマイクの銃兎好きそう(偏見)

・あの防止ってベネチアンハットっていうんだ

 

 

11.原宿アキバ類青文字DJ族アイドル科 POCHI

・CY8ER入る前の「小犬丸ぽち」ちゃんじゃん!!!!

はえ~やっぱり当時も可愛い!!!

・黒髪ボブ絶対主義

・「次に流行りそうなものは?」と聞かれて「もっと日常的な動画」と答えているあたり先見の明が本当ある。TikTokとかね。

 

 

12.高円寺瑠偉バンギャ大正ロマン科 まい

・職業:ピエロなの本当に気になる

楳図かずお?のTシャツがいい味だしている

・なんかわかんないけど、今は落着いた格好して普通に主婦してそう(偏見)

13.蒸気機関時代類スチームパンクDIY科 FIONA

・これ下に着ているのは野球のユニフォームか・・・?

・「告白した人数:1人」「告白された人数:1人」なのに「付き合った人数:13人」なの謎過ぎる

14.サンリオピューロランドマイメロ女子族リボン科 あゆみ

・もう2015年には「マイメロ女子」っていたんですね

・でも病んでる感じはあんまりない。リズリサのギャルって感じ

・自撮り棒ってもうあったんだ・・・逆に最近見ないよね

・「周りで流行りそうなもの」で「セーラームーン」を挙げているあたり、「将来の夢」聞かれて「ネイリストはもう叶えたから、次はサンリオショップ店員!」と言っているあたり本当はこの人めちゃくちゃやり手なんじゃないかな。

15.原宿ネイティブ類90’S属カルチャーMIX科 Maina

ドリームキャッチャー、めちゃ懐かしい

・「得意料理:ベイクドチーズタルト」本当に美味そう

・「天敵:行動しないで理想ばかりの口だけの人が苦手」

16.原宿明治通り甘ロリータ属ガテン科 なのちゃん

・彼女のロリータの格好を見て、この頃はまだV系元気あったな~とか思ったりする

・がっちがちのロリータなのに好みの男性は「Tシャツにジーンズみたいな、ラフな格好が好き」なんですね

・嫌いな食べ物:イクラって初めて見たかも。魚卵嫌いな人類っているんだ。

17.横浜バンド類ロックンロール属フルート科 こぐ

・ストリートアーティスト?でフルート系女子

・「好きな食べ物:お寿司」「好きな本:うさぎのくれたバレエシューズ」・・・そしてフルート・・・でストリートアーティストをやろうとする発想・・・多分相当なとこのお嬢様じゃないかな?

 18.渋谷クラブ類レゲエダンサー属ジャマイカン科 ami

・レゲエってジャマイカなんだ~

・「ふわふわのパープルヘアー」一番好きなヘアスタイルかも

・好きな食べ物は「ブレッドフルーツ」、ジャマイカのフルーツで聞いたこともないし食べたこともない・・・パンみたいらしい。でも今後食べることもないと思う。

19.河原公園類地味ガール族リア充科 菅原ななみ

・すごく普通で安心する

・「普通」がこの雑誌では強烈な個性になる

・2015年でも黒レギンスはなかなか目にかかれなかった記憶

・定期的に「パンが好き」と言う若い女の子が現れる現象、あれ何なんですかね。ブレッドフルーツでも食ってろ。

 

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20.乙女ロード腐女子属BL同人誌科 峯岸成江

・二次元を愛しながらクリエイティブを嗜みつつフリーターをする・・・僕の未来像か?この女・・・。

・ただし彼女程僕はクリエイティブ、出来てないなーと思う。小説だってカクカク言ってかけてないしブログの更新もうっかり滞ったり連日更新したりだし。ぷぎゃー!!!

・Tシャツに「火の車」と書かれている。

・僕も毎日火の車。

21.灯台赤門類美女族個性派ファッション科 原田美緒

・服装よりも好物の「オリーブオイルトースト」の方が気になる

・マイブーム:フライヤー集め がTHE大学生って感じで良い。美術館行っても金がないからフライヤーで我慢するという・・・。

・ドクターマーチン。

22.スポーツマン類陸上族男前科 山形今日子

PとJKって2015年にはもうあったのか・・・。

・付き合った人数が3人は意外と多い。隣の原田さんが2人で山形さんが3人んあのはちょっと解せない。

23.フェミニン類コンサバ赤文字属男ウケ良好科 下出ふぶき

・元欅坂のオダナナに似ている・・・!

・ハンカチにこだわっているあたり本物の「フェミニン」を感じる。ポーズだけじゃない。

24.アキバ萌え類ネオオカマ属美容オカマ科 青木航世

・2015年には「男の娘」という言葉はまだ浸透していなかったのかな。

・「告白した人数15人」「告白された人数0人」「付き合った人数0人」が悲しい・・・。

鈴木福君に熱をあげてるのは謎。

25.水陸両生類トライアスリート族女子高生科 内田江里子

・かわいい~~~~!!!

・16歳・スポーツ少女にして告白された人数7人・・・というのも頷ける。

・調べた感じオリンピックには出てないっぽい・・・?

26.後楽園ホール女子プロレスラー属二世美女科 赤井沙希

・好物で白子あげるのはなかなかいない。

・2015年この頃女子プロレスの文化が新しいものとして出て来たよね・・・2021年現在ではすっかり定着した印象。

・2021年現在も美しいプロレスラーしていて安心した。

・次に流行りそうなもの:タトゥーシール これも流行通り過ぎて定着したね

27.ビッグサイトコスプレイヤー族18禁どエロ科 あかねね

・こんなんもう現行犯逮捕で書見たいなっ格好してて草

・その割に付き合った人数「5人」は少なく感じる

Twitter検索したら「閃光のハサウェイ」におねつあげてる。意外とオタク趣味も男遊びも硬派なのか・・・?

・と思わせといて、普通に乳首Twitterであげてるの、草。

28.道玄坂類クラブガール族グラマラス科 リーア

・2015年のアムラー

・いくら嫌いな人2人目

・「コンプレックスを派手に出す!」と言いながらへそ出しではないのは、ダメや。隣のあかねね先輩を見習ってほしい。

29.神奈川野生類狩りガール族ジビエ料理人科 上野朱音

ジビエガチ勢

・「好きな男性のファッションは?」「何でもいいので、職業などの制服に弱いです」わかりみが深い

30.ガテン女子類ドライバー属トラック科 愛嘉

・めちゃかわいい~

・僕も運転に自信があればトラック運転手やりたかった・・・

・でも人殺すかもしれないという不安に常に晒されながら働くのは怖いんや・・・

・男前だけど可愛くてとても良い

31.歌舞伎町類ネオキャバクラ属原宿ファッション科 らぶたん

・自分の好きなファッション・アート×キャバクラ

・流行りそうなのに流行らなかったね・・・なんでや・・・

・今もキャバ嬢しているのだろうか。アート活動しながらしていてほしいなぁー・・・。ネオキャバクラ極めてほしい。

32.現役早稲田類AV女優属エスパー科 川原里奈

・慶応だと「本当か・・・?」だが早稲田だと「まぁ早稲田なら・・・」

・ちょっと日向坂の丹生ちゃんに似てる。丹生ちゃんは純粋無垢な子だから決してこういう目で見てはいけない。でも丹生ちゃんの丹生ちゃんが見たいという人はこの人の作品を漁ればいいんじゃなかろうか

・「特技:スプーン曲げ」。普通に気になる。

 

 

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コセイイロイロ・・・。

 

第二特集は「同棲の食卓」

だいたいどの食卓もテーブル一杯に料理が並んでいる。アヒージョ、ハンバーグ、アボカドを使ったサラダ、だしまき卵・・・本当か~?と思う。毎日お前ら本当に、本当にそれを食べているのか~?雑誌あるからって気合いれてやいないか~?

でもテーブルだったり彼氏の付けている眼鏡だったりビールか麦茶か・・・っであったり、その2人で築いてきた「文化」が透けて見えるのが面白いと思った。

2015年の2人の間にしか生じ得ない脆く儚い尊い一つの文化の記録・・・。

「お品書き」がそれぞれ書かれているのも良い。イラストが描かれていたり、筆圧が濃かったり、文字と文字の間がやたらとあいていたり、外国語だったり。文化を別の角度からとらえようとする試み。

 

 

 

 

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他の特集で気になるもの。

まずは、この本を読め!:廃墟マニアに聞く究極の廃墟写真集

「新・建築の黙示録」「廃墟ノスタルジア」「廃墟遊戯」が収録。

廃墟、興味あるんですよ~。

そこで人が暮らしていたんだ・・って思うとなんかこう、たまらなくないですか?誰かの人生がここにあったんだな・・・って思うとワクワクしてきませんか?

特に行ってみたいのは遊園地。子供たちの夢と希望とワクワクの残骸を搔き集めて、で、今の僕の辛い現実を思い出して、その落差に絶頂したい。

スクープ!!ギャル会話

リニアの話題が出ている。

2015年当時から6年たった2021年現在、残念ながらそのお話は行き詰まってる。静岡県民の僕からしたらそれは、まぁ当然だと思うし、知事同様反対。

ゆきづまってる感あるよね。

のだけれども、当時は前向きな話題だったんだなー・・・とも思ったり。しみじみ。

ネオ東京人

美少女小学生モデルで、中川愛由名ちゃんという子が出ている。格好はバッチバチギャル系。シャツの裾を手前で縛っている。見にスカート。ビーズのブレスレット。「nicola」や「JSガール」的雰囲気。2015年当時は小学生とは思えない小学生がいっぱい出てきていて、ビックリしたっけなぁ・・・。

この子今どうなってるんだろ。ギャル極まって、「ageha」とか「popteen」系になってんのかな。

と思って検索かけたら、清楚系美少女女優になっていておばさんはビックリしました。ギャルになるのも早すぎだしおちつくのも早すぎだろ。

タイムスリップ写真

・田島親子:母親がパート⇒会社経営になった経緯めちゃくちゃ気になる

・山田姉弟:姉ちゃん顔変わらなすぎだろ

・竹中兄弟:大学6年生の兄がめちゃくそイケメン。好み。好き。結婚してほしい。

・鈴木一家:オランダ王国在住の、自動車メーカー勤務の乳井親が、ワークショップ経営者になった経緯めちゃくちゃ気になる

 

 

 

 

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emmaは2015年も2021年も、変わらず、美しくて、かわいいね。

 

 

以上である。

ちょー2015年を感じて、最高の一冊だった。

2014-2016年あたりは「最近」の顔をして、全然最近じゃないからとても怖い。

年単位で「時代を記録する」東京グラフィティ、また関心のある話題があったらどんどん集めようと思う。

 

 

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POCHIがこの後所属したアイドルぐるーぷCY8ERのベストアルバム。アンナちゃん好きでした。HO6LAはわずらいちゃんが気になる。

 

***

 

LINKS

出てきた女の子が挙げていたよしもとばなな『キッチン』の感想。

 

tunabook03.hatenablog.com

 

他の東京グラフィティの感想。

 

tunabook03.hatenablog.com

tunabook03.hatenablog.com

 

清野とおる『ゾクッ東京怪奇酒』-僕だってあわよくば壇蜜と結婚したいよ!!!-

 

 

1巻と比べて神道要素が多いですね。

なんで「ゾクッ東京怪奇酒」よりかはヤオヨロズッ東京怪奇酒」の方がいいかもしれない。

 

清野とおる『ゾクッ東京怪奇酒』(KADOKAWA 2021年)の話をさせて下さい。

 

 

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【あらすじ】

心霊現象や怪奇現象が起こったとされる現場で、

感情を派手に揺さぶられながら飲酒するエクストリーム行為。

それが「怪奇酒」。

ドキドキわくわくビリビリざわざわ・・・

キュンキュンぞくぞくムラムラぽわぽわ・・・

え、怖くないかって?

そりゃもちろん怖いですよぉ~!!

 

カバー裏より

 

【読むべき人】

・1巻読んで面白かった人(ただし前述したように、結構神道的要素が今回は多いです。心霊スポット、自体に魅力を感じて読んでいる人にとってはちょっと物足りないかもしれない)

・神社の参拝の仕方に関心がある人

・現代の「陰陽師」に関心がある人

・狐に関心のある人

・実話系怪談に関心のある人

・熱海行きたい人(今巻初の県外・熱海編が収録。普段町商会のエッセイ漫画を描いている人なだけあって、読んでいてなかなか熱海、行きたくなってきます。スパ、したくなってきます。)

 

 

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【感想】

1巻が非常に面白かったので、2巻も買いました。

1巻と出会ったのは、丸善ジュンク堂 新静岡セノバ「スタッフおススメ本紹介フェア」である。もともとこの静岡駅マイ最大級の書店はオカルトコーナーだけやたらめったら力入ってることから、そういうのが大好き店員が在籍していることは知っていたので、そういうのが大好きな店員が何をおススメするかどれどれ・・・と見たのですが、多分そういうの大好きな店員が選んだのがこれの1巻。

そういうの大好きな店員がおススメするんだから、「こりゃあ面白いに違いないぜぇ・・・」安直にそのままレジに持っていったのですがこれまた大正解。めちゃくちゃ面白かった。そういうの大好きな店員さん、まじでありがとうございます。

そしてその1巻の感想を書いているときに知ったのが・・どうやら2巻となる本書が出ているということ。

もうこりゃあ買うしかないと思い、通院の帰りセノバに寄って購入した次第。

ちなみこの2巻も大判コミック棚に表紙をでかでかと表向けて数冊棚に置かれていました。そういうの大好きな店員さんに導かれた人達が勝っていくのでしょう。僕のようにな。

いつかあれですね。そういうの大好きな店員さんを崇める会をやりたい。名前すら知らんけど。

静岡駅前最大級書店のオカルトコーナーを常に充実させている。というのは、今現在静岡のオカルト文化を常に盛り上げている行為と同義だからね。静岡のオカルト文化第一人者と言っても過言じゃない。

男なのかな~女なのかな~。僕の予想では30代の女性だと思うんですが。まぁ本当はそりゃあね、イケメン書店員、できれば岡田将生のような書店員だったら嬉しいけど。でもお亜kると大好きな岡田将生は嫌だ。ちょっと譲歩して、オカルト大好き野田クリスタルくらいがいい。でもわざわざPOPを作る器用さと、エドワードゴーリー好きな感じは女性なような気もする。でも女性がこんな「東京怪奇酒」なんてお勧めするかね?というとやっぱり野田クリスタルなのかなあ・・・。

 

閑話休題

そして今巻もまぁ、面白かったです。

ただ、1巻と比べてその面白さはちょっと違うかなと言った印象。

というのも、2巻は神道的要素が強い。

例えば「1杯目」で出てくるスタジオを除霊するのは現代の陰陽師だし、生霊関連の話で出てくるのは「縁切榎」という所謂縁切りスポットの話。筆者の唯一の体験談も掲載されているのですが、それもがらみ。

これはこれでなかなか読んでいて面白かったのだけれども、1巻のノリを期待しすぎるとちょっと肩透かしを食らうかもしれない。注意。宗教上の理由で「神社とかちょっと・・・」という人も注意。

それさえ気にならなければ、この2巻も君を東京怪奇酒の世界に誘ってくれるはず。ゾクゾクビクビクキュンキュンギュインギュイン。ほら、一緒に夜に境目に飲もうやあ・・・え?僕・・・?僕はまあ・・・いいです・・・お酒弱いので・・・。

 

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以下簡単に各編のあらすじと感想を書いていく。

一番印象に残ったのは「縁切榎」かなぁ・・・。話自体の面白さ、よりかは非常に実践的な内容だったので。あと僕もこういう街の神様は信じちゃう人なので。

 

1杯目 東京都S区Y町幽霊スタジオ

清野「オバケ出るぅーん」p.5

ある出版社が保有するクッキングスタジオ(雑居ビルの一室)では不可解な現象が続くという。一度「陰陽師」にお祓いをしてもらったものの、再び起こるようになり、「陰陽師」をもう一度呼ぶことに。その場に清野も「目立たない」という約束で居合わせることを赦してもらうが・・・?

今回はそのバケちゃんとの宴会よりかは、そのオバケちゃん達を取り払ってくれた現代の陰陽師を中心に描かれています。しゃーない。心霊スポットは数あれど陰陽師は多分そんないないから。

陰陽師」・・・といったらあれですよね。あのなんか長い帽子被ってオア内裏様みたいな恰好をしてそしてお札もって「やーっ!!!」としているあのイメージ・・・。でもあれって令和に通用するのか・・・?

と思ったら、凄いですね。

現代に順応してやはり実在するんですね。陰陽師」。

しかも除霊だけではなく、身体の不調を直したり開運するまじないをかけられたり・・・。読んでいて「え~~!!すご~~~い!!!」になります。え~~!!すご~~~い!!!僕もお会いしたい。

イメージとしては、「占い師×整体師×除霊師」といったところでしょうか。しかもその3つ総てが凄腕で、しかも3つ総てが本人の中で1つに繋がっている・・・というかなんというか。だから占い施術除霊どれをとってもうさん臭さがない。

陰陽師」って凄いんだなあ・・・某動画よろしくCG化して歌って踊るイメージしかなかったからびっくりだあ・・・。

ちなみに「陰陽師」と「」がついているのは、陰陽師という職業は明治政府によって廃止されたから。p.34だそうです。はえ~。ここで廃止しなかったらどうなっていただろう。絶対おもろい世の中になっていたと思うわ~。

ちなみになんですが、ここで清野さんが飲んでいるのは水曜日のネコ。清野さんも絶賛してますが、フルーティーで美味しいよね。コンビニビールサーの姫感はあるよね。

 

2杯目 東京都T区H町「ケガの多い居酒屋」

清野「・・・同じ店に居合わせた3人が24時間内に右手をケガする確率ってなかなかありえないよな・・・?」p.44

話は凄いシンプルで、マスターをはじめ来た人までもがケガをしちゃう居酒屋の話。マスターが良い人そうなのに、ケガのせいで休業がのびちゃったり、生傷が耐えない。

かわいそう。

え、でも多分店が続いてきた、ってことは初めからそういう訳じゃなかったということでしょ?多分「普通の居酒屋」が「ケガの多い居酒屋」に変わるきっかけが何らかったと思うんですよね。

そこをもう少し追究してほしかったかなぁー・・・。まぁ多分ほかのエピソードの追求具合見る限り分かんなかったんだろうなぁー・・・。

僕は土地、ではなくマスター自身に憑いているのではないかと予想!

 

3杯目 東京都板橋区本町「縁切榎」

清野「僕はこの参拝から半年後に壇蜜さんと結婚出来ちゃいました♥ ラッキ~」p.66

クソっ!!!!そのラッキーを呼び寄せる参拝の仕方を教えてくれ!!!!!

教えてくれてる!!!!めちゃくちゃ丁寧に教えてくれてる!!!ありがてえ!!縁切った後はそこ行けばいいのか!!ありがてえ!!!!ありがてえ!!!!

よ~し!!!!僕もこの本片手に東京行って参拝して野田クリスタルと結婚するぞ~~~~!!!!!!!

 

 

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4杯目 東京都T区K町「別れる家」

清野「・・・僕も「妻」とここの物件で暮らしたら別れることになるのかな・・・?」p.78

建売のなんことないこぎれいな小さな一軒家。ところがそこに既婚未婚問わずアベックが住むと次々別れる。

体験談がなかなか気味悪い。やっぱ「残穢」よろしくそいう場所ってあるのねとか思っちゃう。まぁ多分この家は歴史、よりかは一人の女、によって呪われている印象も受けますが・・・。

こういう不吉な場所って行くと「ちょっと暗い印象を受けた」とか言うじゃないですか。僕多分そういうの全然鈍くて。だから将来万が一結婚して否未婚でも、こういう物件知らず知らず住んでたら・・・って思うと怖いですね。

あと結婚直後にここで怪奇酒をする清野先生のガチ具合には素直にドン引きですね。

 

5杯目 静岡県熱海市A町「山道の怪音」

清野「おいしすぎて「ひゅ~どろどろ」とかどうでもよくなってきましたよ」p.91

山道でそのまままさしく「ひゅ~どろどろ」という音が聞こえたという体験談。

これは興味深い、「東京」怪奇酒ルールを破っても行くべきだと、清野先生が県境をまたいで熱海上陸した話。

なんとこの「ひゅ~どろどろ」、大辞林で調べると「幽霊の出る時の形容」「芝居の下座音楽の一。笛を高く吹き大太鼓を小刻みにうつ。それの出没の場に使う。」等に並んで「幽霊」という意味があるそうです。p.86 えこっわ。シンプルに怖い。

その「幽霊」が聞こえたという山道を検証しに行く・・・という話なのですが、なんですか、こう、銭湯とか三色丼とか釣り上げたものを出す居酒屋とか海と空の境目が見えない絶景嗜みながらの天然温泉とか・・・熱海滅茶苦茶行きたくなってきますね。何回か行ってはいるんですが、温泉に入りに行ったことないからな~・・・特に最後に出てきた「fuua」は滅茶苦茶気になる。僕も行ってみたい。あと駅前で食べられるという3色丼。

清野「「厨房に海あるっしょ?」ってくらい新鮮で旨かった」p.87

勿論そのひゅ~どろどろの現場に行って酒を飲む「怪奇酒」もやっております。その他にも怪奇現象に度々襲われているのですが・・・なんで熱海だけこんなに音がらみの怪奇現象が多いんだ。シャイなのかな。観光の人いっぱいきちゃうから・・・。

 

6杯目 東京都北区滝野川「白い美女と狐」

バーのお婆さん「あなたたちが今日ウチに来たのはお狐さまに導かれたのかもしれないねぇ」p.118

筆者の唯一ガチofガチの体験談の話です。

夜の住宅街に突如現れる白い着物を着た妙齢の美女(井川遥似)。道に迷った筆者達には道を教える親切な行為をみせたのに対し、地元のバーの息子へはまるで愚弄するかのような不気味な行為。ところがどっこい、白い着物どころか顔・年齢の特徴までしっかり合致していて恐らくは同じ人。

興味深い。ワンチャン生きている人なのかな~・・・?とも思いますが、でもまぁやっぱりお婆さんのように狐、というのが僕も一番しっくりくると思います。そうすれば人に対してくるくる変わる対応にも説明がつく。感じがする。悪戯が好きだから時々人間をからかって遊んでいるのだ。親切にする人、からかう人、どこで線引きしてるのかはすっかり謎ですが。

その後狐にあやかっていなり寿司をもって、歩き日本酒&墓場での飲酒はなかなか楽しそう。「怪奇酒-ズハイ」p.125があれば夜の墓場も怖くない!心霊写真も撮れちゃう!!それがカラーでカバー裏に収録されているのですが・・・マジの火の玉じゃん。まじじゃん。

 

7杯目「恐怖の303号室・・・・・・からの」

1巻1杯目で登場した某アパートの303号室。取り壊し直前に怪奇酒をしにいった清野だったが、そこで仏教の教本を見つける。それ挟まっていたのは、とある田舎の「村」で身体が不自由な老女が離れで焼死したという50年以上前の新聞記事で・・・?

その「村」に行った記録が、全2巻となる本シリーズの最後のエピソードになります。303号室に始まり303号室に終わる。

・・・いいですね。最後の最後に、死者より怖いのは生者ってか。

具体的にどこだか知りたいわね。

「つけび」の事件といい、まだまだ文明的には拓けていても「未開」の村っていっぱいあると思うんですよね。それぞれの土地にやっぱ文明・文化があって・・・・。全部知りたい。行きたい。まぁ行って何をするってわけでもないですが・・・。

 

東京都S区O町 再訪・幻の大仏

1巻で出てきたありがたい(?)心霊スポット、というかパワースポットに行ってきた話。

いいなぁ~。僕も最近お疲れ気味だからこういう露骨に効果ありそうなパワースポットに行きたい。そしてテラテラありがたいパワー浴びてちょー元気になりたい。ちょーげんきうーまんまぐろどん。

縁切峠と東京大神宮のコンボで野田クリスタルと結婚して「こらこら」とかいいながらハムハム*1を愛でつつちょー元気になりたい。

 

インタビュー・怖すぎる怪奇現場でお酒を飲むワケは・・・?

清野「なんなら僕は描きながら「読者に、洒落になる程度で怪異が起これ!」って強い念を込めてるので、そのせいもあるかもしれないです(笑)」p.157

こめなくていいです。

 

 

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あとがき

現時点での僕の結論は・・・

それがオバケなのかどうかはわからないけど、

この世には未知なる「なんか」がある。

この世には未知なる「なんか」がいる。pp.158-159

本編通じてずっと「幽霊みたぁ~い★」みたいなことを言ってきた清野さんですが、どうしてそんなに見たいのか。の理由が書かれています。

僕は凄いこれに納得がいった。

同時に、僕は幽霊信じる派ですが、この2ページ読んで、あ~だから自分信じてるんだなって思った。幽霊信じる派も信じない派も是非読んでもらいたい2ページ。多分このあとがき読む限り、漫画じゃなくて随筆でも、清野先生は面白いものが書けるんじゃなろうか。壇蜜さんとの夜の生活について書いてほしい。壇蜜さんのセッは全人類が気になっていることだと思う。僕も万が一野田クリスタルと結婚したら夜の生活について書くから・・・。

 

 

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御朱印帳を最近やっと買いました。

 

 

以上である。なかなか面白かった。

1巻と内容の傾向が違うため、多分肩透かしを食らう人も多いだろうが・・・まぁこれはこれでといったところか。逆に2巻のが良かった1!て人も多いと思う。

僕は・・・どっちも好きかな。1巻の心霊スポットものも好きだし、2巻の神社・占い系も好きだし。

にしても・・いや~、是非続きが読みたい。やっぱ結婚しちゃったから、不吉なこと呼び寄せそうなこんなスリリングな行為はもうしないのかな・・・。壇蜜の蜜の味知っちゃあもう怪奇酒なんてかすんでしまうもんなのかな・・・しらんけど・・・。

 

***

雑記

・この前パート先で「壇蜜と結婚できるという縁切りスポットと縁結びスポットのコンボをやりたい。いやだって壇蜜だよ!?壇蜜!!!!壇蜜っつたら日本の女性のセックスシンボルじゃないか!!!」と言ったら女子大学生の子に「まぐろどんさん、しーっ」って言われた。わかる。

・実際夏に実践しようと思ったけどスーツケース壊れてあきらめろんした。冬こそは!!!

 

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1巻

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*1:ハムハムとは、野田クリスタルが飼っているキンクマハムスター(メス)。最近夫人家計の病気をやってしまってクリスタルを心配させた。

「キューガーデン 英国王室が愛した花々 シャーロット王妃とボタニカルアート」展-朽ちない花も美しい。-

 

 

 

 

花は美しい。

しかしその美しさは時がくれば朽ちてしまう。

花の絵は美しい。

そしてその美しさは、時を、越える。

 

 

 

 

 

「キューガーデン 英国王室が愛した花々 シャーロット王妃とボタニカルアート」展(静岡市美術館・巡回 2021年4月15日-6月6日)の話をさせて下さい。

 

 

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【概要】

ユネスコ世界遺産にも登録されている英国王立植物園「キューガーデン」は、18世紀半ばの開園以来、世界の植物学研究をリードし続け、植物標本のほか20万点以上のボタニカルアート(植物画)を収蔵していることでも知られています。本展は、18~19世紀に描かれたボタニカルアートのほか、キューガーデンの拡張に寄与した国王ジョージ3世の妃シャーロットが愛したウェッジウッドのクイーンズウェアなど約130点の作品を通して、啓蒙思想を背景とした英国における自然科学の発展やキューガーデンの歴史を紐解きます。
科学的視点で描かれた植物たちは、写真誕生以前、貴重な記録であり研究資料のひとつでしたが、植物学の歴史を培うなかで次第に芸術性を見出されるようになりました。観察に基づいた精緻な描写と美しさが融合するボタニカルアートの世界をどうぞお楽しみください。

 静岡市美術館公式HPより

 

とても簡単に言うと、

イギリスの植物が専門のなんだかすごい歴史ある研究所で、

近世のシャーロット王妃が集めた、

ボタニカルアートを中心に展覧会するやで~。

 

【行くべきだった人】

・庭園が好きな人

・植物が好きな人

ボタニカルアート好きな人

・花が好きな人

・理科の科目の「生物」が好きな人

 

※6月に書いたブログをやっと編集してあげました。ごめんね。

 

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フォトスポットある展覧会も増えてきましたね。

 

【感想】

ボタニカルアート、しかも近世イギリスのものに特化した展覧会という、なかなかフェチズム溢れる展覧会でしたね。いいぞ。

これを静岡でやると聞いた冬、「は?行かなくてはならないのだが?」になっていたのですが、まぁこれまたずるずると行かずだらけて気づけば5月も終わりに入り、「え!!??もうすぐ終わっちゃうじゃん!」と6月2日、慌てて行ってきた次第。

にしてもこう・・・展覧会末期になっても・・・平日というのもありますが・・・結構空いてるというのは・・・地方の美術館の特権ですね。東京だとラスト一週間とかもう死ですからね。死。3密どころじゃないです。壇蜜です。壇蜜

 

感想としては・・・「なかなか、面白かった」。

西洋美術大好きなんだけれども・・・まぁ・・・その思ったより、ボタニカルアートには(心の)チンチ●ピクピクしないんだなということが分かった。西洋美術の油絵とか見ると僕の心のチン●ンはバッキバキどっぴゅどぴゅになるんですが・・・思ったよりときめかなかったかなあ。対象となっている18世紀とか19世紀とかもうギンギンになる時代ではあるんですけれども。

ただ、西洋美術好き、よりかは、西洋文化史好き、としての血が騒ぐ展覧会ではありましたね。

 

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王妃の部屋だかが再現されてた。

例えば「カーティス・ボタニカル・マガジン」。ウィリアム・カーティスによって1787年に創刊された植物についた書かれた雑誌で、富裕層に園芸のブームをもたらした。なお今も現役で刊行され続けているんだそうだ。

そこに掲載された植物の原画が展示されていたのだが、これがなかなか面白い。花を丁寧緻密に描いている点でも面白いんだけれども・・・これはあくまで「実用書」。球根の形であるとか花全体の形であるとか。絵画ではなく図鑑の写真のよう。美術自体、よりかは、植物自体に関心がわく。当時の富裕層の読者のように。

また、今でこそカラー印刷であるが、当時は銅版画でなんと手採色していたらしい。原画と、その版画に彩色したものを並べて展示しているのが面白かった。

やっぱ、原画している人が色付けないとダメだね!職人とはいえど手採色でこんなに違ってくるのかとゲラゲラ笑った。

 

例えば「ウエッジウッド」。陶器に詳しくない僕ですら名前だけ知っている会社ではあるが、なんとその設立は1761年。生産過程を一部機械化することで、シンプルで品質が良い陶器を多くの一般家庭に流通させたらしい。シャーロット王妃も無論気に入り王室御用達にしたんだそうな。

その当時の陶器が来ているんだけれども・・これはなかなか興味深く見せてもらった。今でこそ見るとまぁ使いづらそうなでっかい分厚いただの皿。でもこれが1700年代後半に生産されていた、と思うとなかなか感慨深い。皿・カップ・ポットがもうこの年代にはここまで完成されていたのか。

特に面白かったのは、「ジャパン文様」の平皿・ティーカップ。これが生まれる過程、ついこの間ヘタリア産業革命篇」で見たばっかりだったから興奮した。日本の繊細な模様に感動した英国が、日本からそのプロを連れてきて技術を伝えた・・・んだけれどもどうも日本とデザインが違う??

日本「いや・・・でもこれは・・・素敵です!!(高橋広樹激美ヴォイス)」

と日本が言っていたのでへー見てみたいわーと思っていたがまさかここで見れるとは!!

たしかにめっちゃ美しかった。素敵。日本の技術使って日本の模様を真似しているはずなんですけれども、絶妙に欧州感があって、なかなか味があって、良いんですよねこれがまた。なかなか感動しちゃったよ。

 

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あと一番歴史的関心ビンビンだったのは、「カンパニー・スクール」

ここでいう「カンパニー」というのは東インド会社のこと。英国人がインドの画家たちを集めて描かせたボタニカルアート群のことである。

作品としては確かに、他のボタニカルアートと比べると平均的レベルは低い。ヴィシュヌブラサードという名前が判明している作者以外の作品群は「う~ん?」とちょっと首をかしげるものが多い。

けれどこれを、当時侵略してきた白人のもとインド人画家がいそいそ怯えながらしかし植物に愛着を持ちながら、完成させたのかな~?と思うとたちまちその花々は生々しく、僕に迫ってくる。

凄い興味深い、珍しいものを見せてもらった。お得な気分。

 

でも一番感動したのは、『フローラの神殿ーー輪廻の雌雄蕊分類法新図解』(1799-1807年)の原画群。ロバート・ジョン・ソーントンという医者が、遺産を手に入れたことで一念発起して企画した花を描いた作品群である。商業的には振るわず、この予算によってソーントンは破産し、貧困の内に生涯を閉じているらしい。草。

ただその原画が素晴らしく、最も僕をキュンキュンさせた。というのも、ここに出てくるボタニカルアートは総て背景が描かれている。総じて曇天で陰鬱な・・・。そこで咲く花々の存在感や美しさ。陰鬱な雰囲気と花。そのアンバランスな雰囲気がとてもたまらなかった。心のチンチ●バッキバキだった。

ミュージアムショップでこの「フローラの神殿」グッズないかな~?とワンチャン期待したのですがないみたいですね・・・。草枯れる。

 

最期は女性画家たちの作品で締められる。

18世紀のイギリスの女性達にとって、植物学や水彩画を学ぶことは教養のひとつであったらしい。裕福な家庭では女性の家庭教師から植物学を学び、採集した花々を押し花にして標本を作ったり、絵画教師を雇って絵画の描き方を身に着けたりしたらしい。優雅。

その流れの中で、「教師」「家政婦」とごく限られた女性の職業選択に、一つ「植物画家」が加えられたという。

本展では、王室で教鞭撮ったマーガレット・ミーンの作品が展示されている。他にも女性画家の作品がいくつか展示されていたが・・・やっぱりこの女性画家の作品があ圧倒的にうまかった。

特に赤い百合の色は鮮やかで美しく、200年以上の時を超え今僕の目の前にあることが非常に不思議でならなかった。こんなに美しくて色痣や赤で綺麗なのに描かれたのは200年以上前・・・?どういうことだぁ・・・?心のチンチ●も?の形になっている。

 

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以上である。

ボタニカルアート特化の美術展なんて初めて聞いたから、興味深い気持ちで行ったけれどもなかなか面白かった。

ただ美術的関心、よりかは歴史的関心、の方がビシビシくる展覧会ではあった。

でもこういう、静岡でやる少しでも興味持った展覧会は、どんどん行っておこうと思う。様々な作品を見ることが、美術を見る「目」をやしなうことになると思うから。

 

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図録。なんかしらんけど高かった。

 

***

ちょっと前に東京都庭園美術館に巡回してましたが、もう終わってましたね。

普通に開催中にあげときゃよかったぜ・・。

来年は、フェルメール(また来たんだ)と、あとメトロポリタン美術館展、ボストン美術館展(リベンジ)は絶対行こうと思ってます。

 

最近の静岡市美術館は「グランマ・モーゼス」展行こうと思ってましたが逃しちゃいましたね・・・。クソ。印象派展は絶対行くからな。覚えてろよ。

あと昔ばなしの絵を描く人展覧会は行きました、名前覚えてないけど。

 

LINKS

静岡市美術館で開催された他の美術展の感想。

 

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みうらじゅん『されど人生エロエロ』-結局のところ人類はエロ。-

 

 

 

 

人生の5分の1はいやらしいことを考えてきたーーーー。

(まぐろどん 28歳 フリーターの場合)

 

 

 

 

 

みうらじゅん『されど人生エロエロ』(文藝秋 2016年)の話をさせて下さい。

 

 

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【概要】

人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。

 

からはじまる、漫画家・みうらじゅんんおあれこれのエロエロな妄想・思い出・哲学・物語・漢字諸々・・・。

これを読めば、あなたの中の「エ・ロ」が変わるかもしれない。

 

【読むべき人】

いやらしいことが好きな人

おっぱいが好きな人

AVが好きな人

・そーいう下ネタが好きな人

みうらじゅんらー

 

 

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【感想】

外の木箱の中だった。

鷹匠古書店・水曜文庫の100円本は、外の木箱に入れて売られている。「100円をおいれください」と書かれた薬箱のようなものがあって、そこのぴょいぴょい100円を入れればもうその本は君のものだ!システムた。

100円きっかりだからブックオフよりも安いし、何より店の中に行かなくても外で気軽に本を見られるのがいい。ブックオフの100円コーナーではまず見つからないような本が、時々あるのも良い。掘り出し物ってやつだ。

そこに、ポロリとあったのが本書というわけである。

 

「親孝行プレイ」「「ない仕事」の作り方」、後は「はたらきたい。」とか雑誌の随筆とか、「ただ親孝行するだけではつまらないから、いとうせいこうと母親を交換して旅行をした」(母親がいちばんすきなみうらじゅんエピソード。僕も好き)というエピソードでもうみうらじゅんらーになった僕はもう即座に手に取り100円玉をいれた絶頂しそうだった。

だってあのみうらじゅん尊師が、エロについて語るんですよ!?

こんなん絶対面白くない訳ないじゃないですか!!あー、考えるだけでイキそう。

ニッコニコでトートバッグに本書をいれて、てくてく病院にいったわけである。

 

 

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気に入ったところはページを折る癖がある。

 

結果まぁめちゃくちゃ面白かった。

雑誌の連載の単行本なのだろうか、3ページごとに一つのテーマのエッセイがかかれているのだけれども、まぁ一つ一つがさすが尊師といったところか。

主に前半はしょーも・・・素晴らしい着眼点や妄想を主題とした文章が多い。例えば昔のAVのパッケージのあの謎の文字についてとか。寺についてる金属のおっぱいとか。

後半は尊師の若き頃の思い出や哲学・概念の主題が多くなってくる。007とか、死後のこととか「あのプール」についてとか。

最後の、僕達が普段何気なく使っている日本語についてエロ的観点から論じる様はもうまさに、ブラボウである。ブラボウ。大学の講義をきいてるかのようだった。

一つ一つのその文章が、僕の心にしみて、全身にゆきとどき、そして大切なことに気付かせてくれる。

そう。

日常は、エロに溢れている。

僕達は、エロなかにある。

目を閉じれば僕達はいつでも童貞に戻ることができ、いつでも下半身をバッキバキ滾らせることが出来る。

・・・尊師っ!!!!(ぶるるんっ)

 

あー・・・僕の童貞(メス)、尊師にならぎりあげてもいいかもしれない。

それくらい素晴らしい文章であった。

かつて、ピースの又吉直樹西加奈子の書籍に「僕達には西加奈子がいる」みたいなコピーを書いていたと思うのだが、「僕達にはみうらじゅんもいる」。この神を忘れずにいたい。

聖書らしからぬ性書である。

 

 

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特に僕の心を穿った文章を、ランキング形式で発表しておく。

 

1位:「『金玉工場』には休みがない」pp.56-58

執筆当時56歳だったという工場長の哀愁が切ない。2021年現在恐らくもう工場長は63歳になられていると思うのだけれど・・・どうなのだろうか。週休2日制はうまくいってるのだろうか。それとも近年のワーク&ライフバランス尊重の煽りをうけて、週休3日4日もうあわよくば5日くらいになっているのだろうか。

ちなみに僕が知っているある工場長の、28歳の工場長に調子はどうだと聞いたところ、

「うーんまぁ、うちはさ、月に2度か3度動けばいいくらいかなぁ・・・」

と言っていた。

ワークライフバランスだかなんだかいうけど・・・でももうちょっと働きたい感じはあるけどね。今まで輸入輸出とかはやってこなかったから・・・そっちにも手を出して業務拡大したいところではあるんだけどね」

早急な国際化が求められる。

 

2位:「どんなペットをお捜しですか?」pp.138-140

ペットショップ訪問、とか、首輪考、とかそういうのではなく、恐らく尊師がかけられたであろう一声がタイトルなのが秀逸。

でもその「ペット」は見つからない。

一体何処に行ったのか。

 

3位:「後ろめたいエロ遠出」pp.168-170

自分の限界っていうを知っておくのも大切だ。

ちなみに僕の「限界」は・・・うーん・・・尊師かなぁ・・・。リリーンキーはギリダメ。唐沢寿明はギリ。でも西島秀俊はダメ。綺麗すぎる。

実践に及ばないと分かりませんが・・・。

 

4位:「ガビってんじゃねーよ!」pp.80-82

CV:菜々緒

 

5位:「ハロー!絵梨花です」pp108-110

尊師のオフィスには美人でおっぱいがでかい受付がいるとのこと。ニットセーターっていうのがこれまた分かっている。ニット越しのおっぱいが僕も一番エロいと思う。出来ればあのうっすい生地の安物だと尚良し。あの黄色だかベージュだかアースミュージックエコロジーくらいでしか見ないような、よくわっかんねぇ色のニットだとなおよし。まくりあげて見たくなるのが凄く分かる。ノーブラだと尚更そのポッチが見えてとてもエロいよね。いや、ブラの線が浮いている方がエロいかははは。

僕のワンルームにも受付(ニットセーター着用)雇おうかなぁ・・・。

 

 

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6位:「童貞喪失はいくつなの?」pp.44-46

(僕、黒板の前に立って教壇に両手をつきながら)

はい、一昨年のセンター試験のの現代文の過去問に引用された名エッセイですね。

最後の一行が隠されて「この後に続く文章をA~Dのうち一つ選びなさい」という問題は難問でしたね。引っ掛けと思わせるような選択肢が多かった。

正解はAの「それは僕の童貞を捨てさせてくれた彼女への感謝の気持ちでもあったのだ」p.46でしたが、Aでここまで露骨に設定や気持ちが細かく書かれているとあえての引っ掛けなんじゃないか?て思った人も多かったと思う。

でもよく読むと、Bの選択肢のムラムラが抑えられず」、Cの選択肢の「とにかく嘘を誤魔化したい」、ここでみんなには気づいてほしかったかな。

そう、現代文ではとにかく問題の前後を読め、と言ったよね?

今回最後の一文だから後はないわけだけど「いつもより前戯を長くした」p.46とあるわけじゃんか。

だったら、BやCのように必死感の漂う選択肢は、ありえないんだよね。

じゃあ最後にDの「罪悪感」、BとCじゃなくて、ここでみんなに悩んでほしかった。

でもはい、見て。見た?問題の■行目にある「ちらっと彼女の横顔を見たら、ラメ入りの口紅がぽってりしたにキラキラ輝いていた。あぁこんなつまらない嘘で彼女を失いたくはない。」p.46。はいここ線を引いて。引いた?

顔上げて。ここで主人公は「彼女を失いたくない」って断言している訳だ。ということは、罪悪感、よりかは、彼女を独占したい。彼女を大切にしたい。そういう邪な気持ちがあって然るべきなんだよね。

だからこの問題では、はい問題文もう一回見て。このAの「感謝の気持ち」、が正解になるんだよ。

・・・君達にはまだ、難しかったかな?

 

7位 「中出し感謝祭」pp.105-107

「中出し感謝祭」とは、「山崎春のパンッ祭り」「夏の麦の皿祭り」に並んで、主に12月末に行われるという日本三大祭りの一つである。

 

8位 「知らぬは息子ばかりなり」pp.83-86

立派な日本の父親像たるもの・・・の男の肖像画が描かれている。

本書の中で一番絵が好き。

 

9位 「セックスは国境を超える」pp.50-52

尊師が作られた言葉のひとつゆるキャラ」の真の意味について書かれた一篇である。感銘を受けた。

ただ薄汚い、安っぽい、なんか荒んでいる。それだけでゆるキャラ認定されてしまっては困る。実際に現地で本物に会ってふれあわないと、ゆるキャラかどうなのか分からないものなのである。

 

10位「イメクラで”社長”になる」pp.31-33

大人が全力で「ごっこ遊び」を出来る場所ってこういう所しかないと思うのだけれどどうだろう。

男ばっかり堂々と参加してズルい。女だってもっと普通に参加したい。

こここそ男女平等叫ばれて然るべしだと思うんだけど。

 

 

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ほっとんどスタバで読んだ。

 

表紙は星新一ショートショートの単行本のあのイラストレーターかなー?と思ったら違った。表紙も尊師だった。様々な画風を使い分けられていてすごい。

というか文章・絵両方できるの素直にすごい。

僕もいつか尊師に近い存在になりたいな・・・物がいっぱい詰まれた場所で、受付嬢侍らせて、一日中そこで座ってパソコンカタカタして、お金がそこそこ月に50万くらい入る生活をしたい。

そういった意味でも尊師まじ尊師。

 

ちなみに、一通り読んで冒頭からまたペラペラめくったら・・・

めっちゃサインっぽいブツ出てきた。

しかも判子押されてるし。これどうなんだ・・・?本物なのか・・・?

てかなんだこの再現度が無駄に高い判子・・・ほしい・・・。

 

 

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現物。

以上である。

人生のバイブルにしたい一冊であった。

ところでタイトルは「されど人生エロエロ。そう、「されど」。ということは、普通に「人生エロエロ」もあるのでは?と思いwikiで調べたらあった。「人生エロエロ」。本書から更に遡って2年前の2014年にだされているとの旨。

てかwiki見たけど普通に随の書籍多いな!?

・・・いや、もうここは尊師を尊師として言ってしまったみうらじゅんらーである以上、全部読破したいものですね。

 

でも、結婚はしたい。ふつーに家庭もちたい。

 

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他に読んだ尊師の本の感想。意外に1つしかなった。

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山下和美『不思議な少年 3』-ミクロでみる人生、マクロで見る人生。お前が死ぬ前に生き様を見せろよ。-

 

 

 

一話一話泣くんで読むのしんどいんですよ。

しんどいくらい、好き。

 

 

 

山下和美不思議な少年3』(講談社 2004年)の話をさせて下さい。

 

 

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【あらすじ】

人間て不思議だ。

 

変わらない日常に、感覚がマヒした現代のサラリーマン一家。

誰もが未踏の地に憧れた、探検家の活躍著しい時代に南極で遭難した二人の男。

今から約100年ほどの昔ーー、時代の変わり目を生きた、貴族エッシャー家の少女。

あらゆる時、あらゆる場所で、人間が放つ感情。

永遠の命を持った美しき少年は、その感情の行く末を見つめ続ける。

見据える先にはいつも、「人間」に秘められた真実があった。

「天才 柳沢教授の生活」の山下和美が、人間の光と闇おりなす

複雑な綾を描き出すシリーズ、第3巻!

裏表紙より

 

■■■「あなたが”なぜ”と問うのなら私も訊くわ なぜあなたは人間なんかに興味があるの?」p.5

 

【読むべき人】

・人生とは・・・とか考えちゃう人

・漫画好き

・日々の生活に感情・感覚マヒしている人(「末次家の三人」

・英国の南極探検史に関心のある人(「リチャード・ウィルソン卿とグラハム・ベッカー」

・自分の道を切り拓いて生きていく、とかそういうのに憧れがある人(「二人のレディ・エッシャー

 

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【感想】

貸漫画屋でおばあさんに存在を教えてもらい、行く度に借りている漫画である。3巻。第三弾。滅茶苦茶大好きなんだけど滅茶苦茶重たいから読むのにいつも覚悟が必要で毎回ついつい延滞しちゃうけどさすがに5日延滞はおばあさんにそろそろ殺されても以下略。

アンソロジー式なんですけど毎回毎回泣いちゃうんですよね。泣いちゃう。今回も3回チャンと泣いた。で、酷いと余韻引きずって翌日ふとした時に思い出して「ああ・・・」になっちゃう。

結構著名な作家のはずなんですけれどもまとめサイト「面白い漫画ある?」スレでなかなか名前が上がらない。みんな不思議な少年と一緒に時代も場所も縦横無尽に旅して自分の生きる意味を一緒に考えよーぜ!!!

 

今回帯によしもとばなな先生がコメントを寄せていますが・・・確かに吉本先生*1の小説と一部似ているなぁと思った。本質的なところ。

ばなな先生の作品にはよくが出てくる。川と言っても物理的なものではなく、もっとダイナミックな運命的なモノ。「流れ」とも言ったりする。で、その川を眺めて、あれこれ主人公が思ったり思わなかったり恋愛したりしなかったり人生辛かったり幸せだったり辛かったりうんしょうんしょ生きることで、物語は、進んでいく。日常生活でにひらめく、世界の大きいキラキラを映す小説である。小さい生活は大きい世界の一部であることについて。

本書もそれぞれの時代の人々が、少年を介して、時空や生死等人間が未だ知る事の出来ない何やら大きいものと接した時に物語が生じる。小さい邂逅と大きい運命。

小さいものと大きいものが上手く交錯する瞬間を描いているという点で、似ている。

そしてそういう物語に心惹かれるということは僕達は何かしら己の知り得ないような巨大な・・・なにかに憧憬する本能を持っているのかもしれない。だから、文学絵画音楽漫画アニメ等々・・・文化的創作物全てに心惹かれてしまうのではないか。だから、人間は「神」という存在を作ったのではないか。

と、まぁ途中から何言ってるかよく分からなくなったけれども。

 

本巻は3話収録されている。ただ正直言うと、1巻2巻と比べるとちょっと軽いかなぁ・・・。思うに、2話目(100ページ)と3話目(50ページ)の長さは逆だった方が良かった気がする。2話目は、例えば船が座礁するシーンとか、圧巻ではあるんだけれども小説でも出来ないこともないしなぁ・・・と思ったので。いやまぁ全話泣いたんですけど。

以下簡単に各話の感想を書いていく。

一番好きなのは3話目の「二人のレディ・エッシャーだけれども、一番心に刻みたいのは1話目の「末次家の三人」

 

 

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げきおこぷんぷん丸。

 

「末次家の三人」

永吉(少年)「大丈夫 5cmずれてたら頭を踏んず蹴られて死んでたけど久吉はちゃんと生き延びたよ だから今お父さんがいるんだ」p.24

銀行を人員整理で解雇されたサラリーマンの。彼には妻と息子がいるが、解雇の旨を切り出せずハローワークに通う日々。しかしある日妻が息子を連れて実家に帰り・・・

お父さん「ま・・・・・どうでもいいや・・・・・・」p.55

 

この話は恐らく今までの話で一番読者に近い話だと思う。出てくる主人公は現代を生きるリーマン・末次家のお父さん。バリバリの銀行員だったがその忙しさに摩耗したのか何なのか、息子のことにも無関心・猫のことにも無関心・・・を気取ってしまう。

ところがどっこい、他人(先祖)の人生になると全力で応援してしまう。

2004年、だけれども凄い現代っぽいなあと思った。

他人のことになると一生懸命応援するけれども、自分のことだと疲れちゃうから無関心の振りをしちゃう。そうすることで多くのことを失いつつあることも知らずに・・・。

もっと、ダメなことはダメ。いいことはいい。

行動に移すか否かはともかく、自分の感情に自分くらいは素直でいようと思った。

 

・・・とかいいつつ、実は僕はそういう感情には結構「素直」である自信がある。

と言うかそういう感情に素直じゃないとこんな長文ブログ書かないよ。

じゃあ僕の課題は何か、というと行動に移さないこと。だと思う。

例えば気になる人がいる。でも行動に移さずそれは恋とならずに終わる。

例えばやりたいことがある。でも面倒と行動に移さずに僕自身がそのことを忘れて行く。

行動に移さなければそれは無感情と実質、同義だというのに。

終盤、末次家のお父さんはようやっと息子と妻を家に呼び戻した(と思われる)。恐らくお母さんの愛子も、無関心気取りをやめて己の感情に素直になった夫の姿を見て戻ってきたのだろう。猫にも息子にも関心を示さなかった旦那がやっと行動に移してくれた。どんなに喜ばしいことか。

 

最後のシーン、末次家は海水浴に行く。

そこでお父さんはパラソルを刺す。

何気ないシーンだけれども、恐らく今までのお父さんならパラソルは刺すどころか、海水浴自体も避けていただろう。

でもそこでどっしり腰かけて眺めた海の水平線の美しさは・・・。

 

こういう「無関心気取り」の人は、確かにこの漫画のようにサラリーマンに多い気がする。気がするだけである。裏付けるデータはない。

ただ女性にも確実にいる。これは思い当たる人数人いる。

彼等は総じて優しくて無害で憎まれることはないが、総じて「つまんねーな」と思うことが多い。特に地方都市に戻るとそういう人の多さに辟易した。

ちゃんと素直になろうよ。ちゃんとぶつかろうよ。

ちゃんと喧嘩しよーよ。

この世にどうでもよくないことなんてない。ある程度未来が観測できたとしてもそこに僕達は生きている。生きている。確かに。

 

何百億の何十兆もの奇跡の末に・・・・・・

僕たちは

・・・・・・

食卓を囲んだんだ

・・・・・・

pp.82-85

 

いつもの日常が非常に尊くなる一話。

シンプルに見えて非常に難しい話でもあるけれども、僕はこの話金輪際・・・絶対忘れたくないよ。覚えておきたい。

 

 

僕がこの漫画を貸漫画屋で存在を知って3巻まで借りて読んで延滞してまでこうして感想を書いたブログを君がこうしてずらずら読んでいること自体が奇跡。

 

 

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まさかの裏も同じポーズかーいってなるよね。

 

「リチャード・ウィルソン卿とグラハム・ベッカー」

少年「僕が見えた問う事はあなたは死ぬ運命にあるということだよ」

リチャード「私は諦めない お前の姿を見て死ななかった最初人間になる」p.118

南極探検に乗り出した船は沈没し、生き残ったのは隊長・貴族のリチャードと、密航者のグラハムだった。なんとか無事生存したリチャードの元に白羽を生やした少年が現れ・・・

 

不思議な少年」で取り扱われる話自体が、結末に重きを置いて、その余韻を引きずるものが多いのだけれども今作は異色。結末、よりもその過程に読者は心奪われ余韻引きずるよう出来ている。

 

当時にイギリスは階級社会。貴族のリチャードからすれば、密航者のグラハムなど殺しても何も思わないような虫けらのような存在。むしろ殺した方が都合がいい。

けれども殺さなかった。

生まれつき社会的にも倫理的にも縛り付けていた階級社会の枠を飛び越えて、一人の人間としてグラハムと向き合えた。

それがリチャードが言う「自分に勝った」ということなのだろう。

 

僕はこの話は、「生きるか死ぬか」よりも「己に勝つか負けるか」の話であるように感じた。リチャードは約100ページにも及ぶ肉体的にも精神的にもギリギリななかで、己に勝つことができた。

その勝利の前では生死など意味をなさない。

己に勝つことなく、もしくはそういったことを考える間もなく死ぬ人・・・そう以前のリチャードのように・・・など幾戦にも幾万にもいる。

死ぬ前に、一つ成し遂げることが出来たという点でこの話はハッピーエンドだ。

二巻に収録された「タマラとドミトリ」を思い出す。あれも「一人の人間と出会う」(そして共に生きる)ことを成し遂げ、それを誇りに思った末に老女は亡くなったのではなかったか。

長寿を全うしたか否かしか違いはないだけであって・・・。

 

 

「ひとつのことを成し遂げて、達成感に打ち震えながら死ね。」

 

 

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毎回厚い。

 

「二人のレディ・エッシャー

プリシラ「大丈夫 今日から私はエッシャー家の当主ですから」p.219

遥か昔。一人のレディ・エッシャーは道中傷ついた少年を介抱した。

時は流れて百年ほど昔、11歳の貴族の少女は両親を亡くし・・・

プリシラ「わからないけど私は自分の未来がもっとあるような気がしてしょうがないの」p.221

 

一人の女性の生き様を描いた作品。二人のレディ・エッシャー、というタイトルですが、

プリシラ「でもロンドンに行ってよかったわ 人生にはいろんな選択肢があるってことがわかったから 

でもひとつだけ選択の余地のないものがあるわ

私がプリシラ・ジョン・エッシャーだってこと」p.235

ほとんどが約100年前の時を生きたプリシラという女性の物語になっています。

プリシラ心のままに生きるわ」p.249

名言を連発する彼女の生き方は、型にとらわれず奔放で格好いい。

貴族の家を出て大学を卒業、そして戦争では直接戦線に赴き、帰郷後己の道を切り拓いて生きていく・・・。

そりゃアメリカの銀行の跡取りと言う身分に甘んじて生きてきたジョージは、気になって気になって何年も待っちゃうわな。

 

この話で好きなキャラクターは、プリシラは勿論のこと、このプリシラの旦那となった(と思われる)ジョージという男。

初めは嫌なヤツで出てくるのですが、予想外のプリシラの行動に心惹かれ気になって、挙句の果てに何年も彼女の帰りを待っちゃうっていう・・・。そして待っているうちにどんどん想いが募っていくという・・・。女々しいケツアゴなのである。

ケツアゴといい目といい表情もチャーミングに描かれていて、なかなか良いキャラをしている。あくまでプリシラにしか興味のない少年に、冷たくあしらわれがちなのも良い。でもまぁ老後もプリシラといたということは、彼は夫として少年に認められたということなのでしょう。

確かにプリシラ程気が強くて主張持って自由に生きている女には、これくらい乙女チックな男がいいのかもしれない。

 

最後花が咲くシーンは本当に感動的。

人生とは生きるとは・・・とかいろいろいろいろ考えちゃう。

けど最終コマ、よく間みると少年がコンバースのハイカット履いているところは草。お前・・・どこで買ったんだよ・・・そのコンバース・・・ABCマートか???

 

本作において、花はどういうタイミングで咲くんでしょうね。

僕は「他人に見返りを求めず己を差し出す」瞬間に咲くものだと考えます。自己犠牲をいとわない優しさに咲く。

姫が行倒れの少年にドレスが汚れるのを気にせず介抱した時に、花が咲いた。

同様にプリシラが、貴族としての生まれを捨て、他人に尽くして人生を生き抜いた時に、花は咲いた。

ドレス、貴族としての人生・・・いとわなかったその自己犠牲に比例して、咲く花の数は増える仕組みなのでしょう。

 

 

多分、他人のために生きることは自分のために生きることとほとんど同義である。

 

 

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「末次家の三人」では今日明日所謂単位の「人生」を考えさせられましたが、「二人のレディ・エッシャーでは何年何十年単位の「人生」を考えさせられました。ミクロな人生。幕緒な人生。

そして「リチャード・ウィルソン卿とグラハム・ベッカー」ではどのように死ぬか・・・。

そう考えるとこの巻は非常にバランスが良いのかもしれません。無理矢理ですが。

 

以上である。今回も涙なしでは読めない一冊であった。

特に「末次家の三人」「二人のレディ・エッシャーが収録されているという点においてこの3巻だけ買うの、アリだな・・・。

というかシリーズ全体を中古で買うのアリだな、と思うんだけど、でも買ったらもうおばあさんのとこでこれを借りれない、と思うとちょっと寂しいんですよね。別に他に読みたい漫画山程ある訳だから通う理由がなくなるとかそういうわけじゃないんですけどね。この感情は、むつかしいね。。

 

***

 

LINKS

1-2巻の感想。

半年に一回くらいの単位じゃないと読めない。毎日読んだら多分僕は体の水分全部涙に撮られて干からびて死ぬ。

 

tunabook03.hatenablog.com

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ちなみにこの感想を書いたのは8月の中旬である。

編集しようと開くついさっきまで、「末次家の三人」の話はきれいさっぱり忘れててわろてる。

*1:今は「よしもとばなな」から「吉本ばなな」に改名したので、漢字で書いた。でもこじんてきにはひらがなのほうが親しみある。

眉月じゅん『九龍ジェネリックロマンス3-4』-SFは侵食する。SFは侵食する。-

 

 

 

ジェネリックなのは、

ヒロインだけじゃなかった説。

 

 

 

 

眉月じゅん『九龍ジェネリックロマンス3-4』(集英社 2020-2021年)の話をさせて下さい。

 

 

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【あらすじ】

過去の自分を思い出せない。

ノスタルジー溢れるディストピア、九龍城塞で徐々に自分の謎に気づき始め、動揺する鯨井にはじまりの日である。と告げる楊明。

秘やかに紡がれていく友情とくどうへの恋愛感情・・・。

美容外科界の風雲児、蛇沼も登場しついに物語は動き出すーーー。

哀愁もまた愛おしく理想的なラヴロマンスを貴方にーーー。

 

3巻裏表紙より

 

グエン「まるで仲間との大切な思い出を 何処の誰ともわからない部外者に土足で踏み荒らされてる気分だ。」p.109

 

 

【読むべき人】

・台湾、九龍、中国のあの雰囲気が好きな人

・SF好き

ノイタミナ好き:ぜってーこの枠かネットフリックス下でアニメ化かドラマ化すると思うね。ぼかぁ

 

 

感想】

こだわりをいっぱいたくさんふんだんに、絡み合わせているにも関わらず、一回開くとすぐ読んじゃうでお馴染み「九龍ジェネリックロマンス」。

3-4巻も2冊まとめて近くの貸漫画屋で借りて、読みました。

物語は予想外の方向へどんどん進んでいく。

ラブロマンスに侵食するSFはもう止まらない。

 

そう、3-4巻読んで思ったのは想像以上に物語がSFSFしてきたということ。

鯨井・クローン説から始まるまさかの九龍全体★クローン説。

そこに絡みこむ蛇沼の悪巧み・・・。

 そう来るかと思った。

正直3-4巻は新キャラがどんどん増えて九龍でどったんばったんラブコメして、物語が進むのは中盤(巻数でいうなら7-8くらい)と思っていましたが・・・。想像以上のスピードで物語は進行し、SFは、侵食する。

うーん。どうなんでしょうね。

僕はもうちょっと九龍で平和でちゃらんぽらんな日々を見たかった気もするんですが・・・。でも序盤丁寧に丁寧にやってる漫画て完結しないことが多いからね。表現にこだわりつつも物語は常にアクセル全開の今の方が良いのかもしれない。

そしてこの物語が完結した後・・・21世紀後半22世紀23世紀・・恐らく連載中よりも長い未来のことを考えると、本書は絶対20巻そこそこでダラダラするよりも、10巻前後で完結した方が「名作」として名を残すことが出来ると思うんですよ。

でもなぁ・・・もうちょっと工藤と鯨井Bのいちゃいちゃ見たかった。スピンオフとかやってくれないかしら。

 

あと新キャラとかね、見たかったけど、多分安易に新キャラを出さないようにしていらっしゃるんでしょうね。そこは非常に評価できる。ANTIKBTIT..

キャラといえば・・・蛇沼。まさかのイケメンキャラへシフトチェンジ。おい!!!ってなった。おい!!!!なんだおめー、しかもナチュラルにBLしてんじゃねーぞ。

まさかさ、そのまあ・・・1-2巻まで読んで、蛇沼×グエンのアベック(アベックではない)が成立するとは思わないよね。しかもちょーラブラブだし。

そしてこの2人見てて思うのは・・・ノイタミナいや、BANANAFISH(アニメ)感パねえ!!!スタイリッシュなBL令和にぶちかましてんじゃねーぞこんちくしょう!!ちょっと萌えちまったじゃねぇか!!

 

 

 

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・・・各巻感想を書いていく。

名台詞が多いのと、素晴らしい演出は1-2巻そのままですね。好き。

あと思ったけど、もしかして「九龍(クーロン)」と「クローン」って、かかってる??

 

 

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3巻。

鯨井B「私が思うに”懐かしい”とは・・・「この胸に閉じ込めたい」ってことなんじゃないかしら

だから恋と同じなの」pp.16-18

この1冊において圧倒的に素晴らしかったのは、この1番目・2番目にあたる第18話と第19話の組み合わせ!!!鯨井Bの部屋と鯨井Aの部屋回を並べて比較することで2人の相違点と共通点を浮き彫りにする漫画力。

んんん~~~~!!!になった。んんん~~~!!!!!ほらよく、バラエティとかで女性アナウンサーがパフェとかに舌鼓うつと「んんん~~~~!!!!」になるじゃないですか。あれになりました。んんん~~~~~!!!んん!!!!!!!!

第18話は上記の台詞を言う鯨井Bが最高に格好いいんですよ。こりゃ好きになるわ工藤!!でもお前だけのもんじゃねーぞ!!!!

そして第19話は工藤「んじゃお疲れさん・・・」p.34から始まる、p.35の一瞬の、数秒の間の表現がたまらなく好き。

 

ここの配置が完璧すぎて3巻後半マジ覚えてない。

蛇沼がいきなり全裸になって美青年のケツ撫で始めたのは覚えている。

グエン「・・・みゆきちゃんは何を目指しているの?」

蛇沼「絶対であること。”完全”なんてこの世にないから絶対なんですよ」

pp.154-155 一部省略

この”完全”ではなく”絶対”は今後物語の根幹に関わってきそう。

 

鯨井Aは・・・、鯨井Bの”完全”ではないが、工藤への想いは”絶対”。

向日葵の花言葉

楊明「”あなただけを見つめてる”」p.57

一面に咲き乱れた向日葵。だけれども、”あなた”は誰だ。

鯨井Aが「工藤」だけを見つめてる、ように、

工藤は「鯨井B」だけを見つめてる・・・。

 

鯨井A「錯覚?

錯覚で人を目で追いますか?自分を認めて欲しいと思いますか?胸がつまったりしますか?

ただの錯覚で触れてほしいなんて思いますか・・・!?」

pp.128-134

 

ああ・・・・嘘。

 

初めの二話が一番好きみたいな事のたまいましたけれども、この絶対的片想いが交錯する第24話が一番好きかもしれないです。

 

 

 

 

 

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4巻。

鯨井B「「工藤君って年上に可愛がられるタイプよね」って私言ったの、覚えてる?」p.17

これから毎巻冒頭は鯨井B回掲載されるんでしょうか。この巻も鯨井Bから始まります。

鯨井Bもこれまたいい女なんですよね。地味に見えて地味じゃない。余裕がある。九龍を愛している。懐かしいが極まった女。鯨井令子・・・A。滅茶苦茶いい女、せやかて工藤・・・後半言っていたことは本当か?お前・・・。

 

蛇沼「クローンはホクロは再現されません。」p.22

せやかて蛇沼本当か?お前・・・じゃあ鯨井Bは「何」なのか。

 

工藤の下の名前は「発」と書いてはじめ、と読みます。

要するに工藤以外の存在は総て「はじめ」では、ない?

この九龍の存在自体がクローンもしくは誰かの走馬灯?

ねぇ、空に浮かぶ物体の正体は。

謎は深まり物語は加速し急進的速度で九龍を侵食するSF。

 

楊明「世の中には「フェイクは所詮フェイクだ」って言う人が沢山いるけど、私みたいに偽物の輝きに本物の輝きを感じる人間もいるってこと、忘れないでね」pp.35-37

アイデンティティ揺らがされっぱなしの鯨井Aの唯一の味方・・・楊明と、鯨井Bのアップで構成されたこの2ページは滅茶苦茶素晴らしいですね。大きく掲載されることで距離の近さも実感できる。眉月先生の表現力極まる演出とも言えるでしょう。

楊明「そんなのまるで・・・・鯨井Bに縛られてるみたいじゃん・・・」p.78

 

あとpp.74-75の鯨井Aと工藤の横顔が掲載されてる2ページも。ドア一枚で隔てられてる。近くて限りなく遠い。遠くて、限りなく近い。

鯨井Bの死後鯨井Aという女に惚れていることを工藤が認めればそれで済む話なんですけど、鯨井Bと鯨井Aが全く同じ姿だからこそどうしようもないんですよね。

いや、それだけじゃない。

工藤「鯨井令子は、俺が殺したんだよ」pp154-155

殺してしまった恋人なら尚更・・・。

はかりしれない。恋人を殺したことはおろか作ったこともないので・・・。

鯨井A「私だけが知っている工藤さんの顔ー・・・」p.172

そして狂気戸惑い困惑で泣きそうにすら見える工藤の顔を見て興奮する鯨井Aも狂っていていいですね。今まで少女漫画よろしく純粋無垢に駆動追いかけていた彼女の「僕(読者)だけが知っている鯨井Aの顔ー・・・」最高です。

良い恋愛は頭狂ってないとできないからね。

 

中盤の鯨井と工藤のシーンも素晴らしかった。

鯨井A「ジェネテラが輝いて見えるのは期待しているから。みんなジェネリックテラに期待してるから、きっと光り輝いて、魅力的に見えるんだと思います。」pp.114-115

変換できますね。

鯨井Aが輝いて見えるのは期待しているから。みんな鯨井Aに期待してるから、きっと光り輝いて、魅力的に見えるんだと思います。

クローンであろうが何であろうが鯨井Aは鯨井Aであり、

楊明も小黒も蛇沼もグエンも読者も眉月先生もそして・・・工藤も鯨井Aに期待しているから、こんなに彼女はキラキラしていて美しい。

そして謎と混沌極まる九龍に浮かぶ謎の物体・ジェネテラの正体・・・絶対意味あると思うんですよね。眉月先生が無意味に新キャラ出さないあたり、あれは無意味にある訳じゃない。雰囲気の演出だけじゃない。物語の中心に位置しているモノ…だと僕は推測するのですが。

 

グエン「この九龍はオレの知ってる九龍じゃない」p.84

グエンと蛇沼のアベックは警官よろしくこの物語の舞台九龍の真髄に迫っていく。蛇沼は天才外科医とのことですが、僕は本業は探偵なのではないかと思っております。

あとナチュラルに蛇沼の背景に配置される花は笑っちゃう。この2人は1999年台後半-2000年代初頭のBL感プンプンで、この2人の存在こそ僕の「懐かしい」を一番かき乱す。まぁBL読んだことないんですけど。

 

 

工藤「本当、この夏の九龍はどうかしてるぜ。」p.118

 

 

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以上である。

結構物語がぐいぐい進んでくれるから翻弄されてしまった感がある。

某アマゾンサイトを見ると、やっぱ賛否両論みたいですね。★5つ評価が多い中で、前作のようにもっと片想いしているラブ部分を見たかったという声も結構見られる。

後者の読者の声を拾うには、やっぱりスピンオフしかないと思うんですよね。

一旦本編打ち切って、まるまる一冊分いちゃいちゃスピンオフ挟めばみんな大満足すると思うのですが・・・どうでしょう。でもやっぱり掲載誌が週刊誌だから厳しいかな・・・。

 

いやはや。でも5巻は楽しみですね。スラスラ読めちゃうのと先気になって仕方ないからまた6巻出たら2冊単位で読もうかな。

 

***

 

LINKS

1-2巻の感想。

 

tunabook03.hatenablog.com

 

 

田島列島『水は海に向かって流れる1』-ゆるす、ということ。-

 

 

 

 

水は海に向かって流れるように、

過去は未来に向かって流れる。

 

 

 

 

 

 

田島列島『水は海に向かって流れる1』(講談社 2019年)の話をさせて下さい。

 

 

 

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【あらすじ】

「俺がいなければこの人の方が濡れることはなかったのに」

 

高校への進学を機に、おじさんの家に居候することになった直達

だが最寄りの駅に迎えに来たのは見知らぬ大人の女性の*1さん。

 

案内された家の住人は26歳OLの榊さんと

何故かマンガ家になっていたおじさんのほかに

女装の占い師、メガネの大学教授

いずれも曲者揃いの様子。

 

ここに高校1年生の直達を加えた男女5人での一つ屋根の下、奇妙な共同生活が始まったのだが、直達と榊さんとの間には思いも寄らぬ因縁がー。

 

ひさしぶりに始動した田島列島が自然体で描くのは

家族のもとを離れて始まる、

家族の物語。

 

裏表紙より

 

【読むべき人】

・漫画好き

・過去に赦せないことがある人

・癒されたい人

・思春期

 

【感想】

話題になっている(た)漫画である。

昨年のBRUTUSの漫画特集で存在を知った。その後平積されているのを何回か見たが僕は一人ぐらすぃフルィーターの身なので、要するにオクァネがないので、読むのは早くて、それはBOOKOFFに100円コーナーに山積みされるとき・・・10年後くらいか?と思っていたが、まさか近所の貸漫画屋が取り扱っているなんて思わなんだ~。

おばあさん「狭いからね、マニアックなものは置いてないのよ」

貸漫画屋のおばあさんの言葉だけど、いやはやありがたいです。十分です。てか多分この漫画結構「マニアック」な方だと思うのですが。

でもあの、外に置く電子看板の新作情報で青の祓魔師を、「青のふつまし」と表示するのはどうかと思っております・・・。絶対読んでないやん・・・。

 

 

 

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いい、背中だ。

 

 

一通り読んだ感想としては

あ、これは素晴らしい漫画ですね。

BRUTUSの感想を書いたとき、本作をあげた人をそれなりにけちょんけちょんに貶した覚えがあるのだけれどもいやぁ、謝ろう。

僕にこの漫画の存在を教えてくれてありがとう。

 

人間、誰しも、赦せない人っていると思う。

年取るとなると尚更。

榊さんは26歳だけれども、僕も28歳にしてそういう人はたくさんいる。

職場のお局クソババア・大学合格私立大2校ぶちかましてどちらか悩んで相談しようとした時に「いまそういう時じゃないから」と言ってきた担任・職場のお局のクソババア・僕の好きな人と知りながら付き合ったT君と付き合った今現在は横浜市役所に勤めているNちゃん・中学の時に僕を裏で笑っていたM先輩・職場のお局クソババア・職場のお局クソババア・・・等々。許せない。許せない。

でも多分、榊さんの「許せない」はそんな浅いところじゃない。

もっと、もっと深いところ。

 

けれども、「水は海に向かって流れる」ように、「過去は未来に向かって流れる」

いくら恨んで殺そうと思って起こって泣いて叫んで怒っても、その感情はやがて、凝固して心の底に沈んで行って、遠い遠い過去になる。自然と折り合いをつけるようになる。

多分人間そういう風に出来てる。

大学四年教育実習の時に久々に会った当時の担任とは会話が弾んだ。

僕「あ、いま中等部の方のクラス持ってるんですね!」

元担任「そうだよーまぐろどんは東京の大学、どうですか?」

僕「まぁまぁ、楽しいです」

でも榊さんは、流れに逆らう。

家族、ましてや母親に関わることだから、どうしても許せない。

そんな榊さんが大きな流れに逆らうのを諦め、身を任せるところまで・・・を描くのが本書の柱なのかな、と思った。

僕が知っている限り、そういう作品はほとんどない。

大抵の主人公が諦めず、逆らって逆らって逆らって、脂ぎって熱くなって、何かを得る・・・っていうのが多いと思う。というかそれがある種漫画の定石である。

けれど本作は、その真逆。

稀有な作品。

諦めるのは、悪いことじゃない。

折り合いをつけるのは悪いことじゃない。

だからこの作品は、多くの漫画好きの心に向かって、「水は海に向かって流れる」ように届いたんだろう。

 

でも僕も榊さんのように、身を任せることがどうしても嫌だと思う時がある。この人間の本能ともいうべき部分に非常に嫌気がさす。

だから時々呪うのだ。

「Nちゃんが離婚して永遠に孤独になりますように」

「M先輩が何らかによって仕事も恋愛も全てパーになりますように」

「クソババア死ね」

過去に許せず今でも許せない人達を、時々思い出しては心の中でくボッコボコにする時がある。

折り合いをつけたくない。

流れに身を任せたくない。

大人になんてなるものか。

でも多分、それは僕だけじゃない。

多くの人が経験してる全くもって凡なること。

心の中では許せない。思い出しても未だにむかむかしてくる。ふとした時に思い出す。その度に心の中で殴る蹴る殴る刺しまくる・・・・。

折り合いなんてつけてたまるものか。

流れに身を任せてたまるものか。

大人になんてなるものか。

そういう人が多分この社会には、いっぱいいる。

 

だから、田島先生はこの作品を世に出した・・・のではないか。

最後に「許せない」気持ちと、折り合いをつける瞬間を描いた本書を世に出した・・・のではなかろうか。

というのは考えすぎか。まだ1巻だけなんでなんともいえないんですけど。

 

 

 

 

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「・・・怒ってどうするの

怒ってもどうしょうもないことばっかりじゃないの」p.42

 

 

 

 

作品の直接的感想を言えば、表現技法・キャラ・語彙力が良かった。

表現技法。コマ割りが非常にうまい。からか、まさしく「流れる」ようにスラスラ読める。

あと、旨すぎる牛肉を食べた瞬間を、「UFOに連れ去られる牛」に照らし合わせたのは凄いと思った。p.12 

キャラ。皆個性的。女装占い師、その妹はすぐに闘争本能剝き出しにする。マンガ家の叔父は非常に心配症で異常なまでの非・自信家。そんな彼等を見守る大学教授は取り乱すことがなく終始のほほんとしている。からこそ、榊さんと直達のあまりの「普通さ」が、一つの魅力として際立つ。バランス感覚神。

あとどの登場人物も個性的だけど、どこか心が澄んでいる感じがするのは・・・高屋奈月フルーツバスケットの十二支を思い出した。みんないいヤツ。

語彙力。文中の会話の言葉に、田島先生の類まれなる語彙力を感じる。

「死ななくてよかったにゃー 君は幸せになるよ」p.42

(ちなみに翌朝布団の中にイワシの頭は入っていなかった)p.66

「おこづかいをあげるから黒く塗ってみようのコーナーだよ」p.74

「熊沢くんってさー自制心旺盛だよね」p.81

「いや~ギスギスしていいうどんになりそうだね!」p.137

「16っていうと どっかの部族なら村のシャーマンによってエライとこ連れていかれて死にかけて生きて戻れたら一人前っていう年齢よ」p.184

少女漫画家・葉月かなえ作家・入間人間を思い出した。少女漫画のように繊細なタッチで心理描写をしながらも鋭い語彙力で読者の心のチクリと刺激する。

これがまたシンプルな絵柄に合うんだな。

 

 

 

 

遥か昔、どっかで「シンプルに見えるものこそ裏では複雑な構造になっている」と聞いたことがある。

 

 

 

 

 

 

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「千紗ちゃんはいつまで16歳でいるつもり?」p.185

 

 

 

 

 

 

以上である。

そりゃ漫画好きがこぞって評価するのも頷ける!っちゅー作品だった。

後ほど調べたのだけれども田島列島先生は寡作な方なんですね。

それは多分、作品を最後まで考え切ってから描いているからなのかなぁ・・・とも思ったり。だって無駄があるようで、一切無駄なページ・エピソードがないんですよ。

映像化する作品もあるみたいですね。その原作も読んでみたい。

 

ちなみに、老若男女同棲ものといったら・・・僕らはみんな河合荘。あれもあれで大好きです。

けどどうしてこんなに似た設定なのにあっちはあんなにド下品なんだ・・・。

 

***

 

LINKS

存在を知ったBRUTUS

 

tunabook03.hatenablog.com

 

下品な同棲漫画。

 

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*1:本書をよく見ると「示」のところが「ネ」なのですが、僕のパソコンでは残念ながら「示」版しか出てこなかったので、ずっと榊と表示するようにしてます。田島先生ごめんなさい