小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

オフィスJ.B編『私たちが震えた少女ホラー漫画』-あんずちゃんの心の闇。-

 

 

読んで体調を崩した漫画っていうのが一冊だけある。

わたなべまさこ『聖ロザリンド』である。

ストーリーはまあ明快単純で外国の金髪碧眼の美少女が実は超絶サイコパスで息をするように周りの人々を殺していく・・・っていう話で、母親が買ってきた文庫版を読んだ当時中学生だった僕は「なんのこれしき」と鼻で笑っていたのですが、終盤辺りからなんか体調崩しました。原因は分かりませんがなんかめちゃくちゃ気持ち悪くなってしまい、それ以来トラウマです。3-4年前にヴィレッジヴァンガードがとち狂ったのか大判印刷したものをどの店舗も平積みしていた時期がありましたがまじであれなんだったの。なんかむかついてきたな。

 

 

 

オフィスJ.B編『私たちが震えた少女ホラー漫画』(辰巳出版 2020年)の話をさせて下さい。

 

 

 

【概要】

少女たちを恐怖のどん底に・・・

 

懐かしホラー大行進

わたなべまさこ

あしべゆうほ

イケスミチエコ

曽祢まさこ

高階良子

ささやななえ

関よしみ

篠原千絵

まつざきあけみ

吉川うたた

今市子

表紙より

 

●掲載読み切り

犬木加奈子「三途の川」

葉月シモン「一枚の絵」

石上愛実「シャボン玉幸子さん」

 

※「ホラーM」「なかよし」「ひばり書房」「ハロウィン」「花とゆめ」等

70年代~00年代が中心

 

【読むべき人】

・少女ホラー漫画、と聞いてビンビン来る人

・懐かしのホラー漫画が好きな人

・上記にかつて大好きだった漫画家がいる人

・夕刊に「あんずちゃん」が掲載されている新聞購読者、要するに静岡新聞などを読んでいる人

 

 

 

 

【感想】

ぶっちゃけよう。本書の存在はメルカリで知った。

メルカリって商品買うと「これもおすすめやで~」って勧めてくるじゃないですか。それで本書の存在を知り、「ホラー!!??」「少女漫画!!!???」と聞きビンビンにアンテナ建った僕は即座にメルカリで検索をかけて800円くらいで購入。

少女ホラー漫画、といったら僕(1993年生まれ、だから2000年代前半)の時代の少女漫画はどこもこぞって、年に一回夏になるとホラースペシャル号をだしていた。特に「ちゃお」は昔から掲載していた覚えがあって、1回か2回買って貰ったことがある。

単行本も持っていた。2冊。あらいきよこ他『今夜も一人で眠れない』あらいきよこ他『眠れぬ夜の物語』である。この頃ちゃおは「チャオホラーコミックス」というニッチなレーベルを作っていて、そこで年に一回様々な作家のアンソロジー+作者単著(ただし作者は毎年変わる)の計2冊のペースで刊行していた・・・と思う。今もあるのかな。そのなかの2冊である。

どちらも読んでどちらも怖くてうわぁ、部屋に置いておきたくないと思った僕は本棚の奥にしまったのだった。今も実家帰ればあるはずである。

ちなみにその中で一番好きなのは清水真澄「ラビリンス」

「私はもうすぐ15歳 本条紅美という名前らしい」

・・・だったと思う。当時の僕には衝撃的結末で、そのフレーズが今でも頭から離れない。結果、あらゆるバッドエンドの中で僕は【永遠】が一番怖い体質になってしまった。

例えば、怪談レストラン名作として名高い「リプレイ」とか。谷川流学校を出よう!の2巻の永遠にループするナイフであるとか。

でもまぁこの2つよりよっぽどこの「ラビリンス」のがトラウマですよ。トラウマ。

永遠に続くってのが怖い。

永遠は恐怖。

 

閑話休題

まぁそんなこんなでホラー好き+漫画好き+少女ホラー漫画てトラウマを受けた経験がある、のぼくにはびっしばしだったわけですな。

これが・・・序の口だった・・・。

 

 

よく見るとケーキもなかなか物騒なのが分かりますね。

 

おかげさまでこの本を読んでからホラー漫画に手を染めてしまっている。何ならこの本の編集に関わっている緑の五寸釘*1さんのTwitterを見て漫画を捜す始末である。いやぁ・・・ダメでしょ。アラサー童貞(メス)がホラーにハマったら。ましてやフリーターだし。色々限界である。誰か僕を救出してくれ。

特に呪みちる先生の存在を思い出してしまい、単行本を今必死で集めている。ポストカードも買った。女の子がめっちゃこわかわいいんだよ・・・仕方がないんだ(おどろおどろ)呪みちる先生とは・・・、ほら。一時期黒髪から作るコーラの話がネットで出回っていたことあったじゃないですか。あれの作者である。宝島社が出したコンビニ本「このホラー漫画が怖い!」で改めて全部読んで知ったまま捨ててそれから長らく忘れてたんだけどね・・・人間の業って深いね・・・。

他にもすでに1-2巻きの感想を挙げているが「裏バイト」とか「僕が死ぬだけの百物語」とか諸々。読んだのもいっぱいあるし積んでいるのもいっぱいある。怖いかどうかはともかく、面白い漫画が多いのは助かる。

 

1冊目2冊目は本書で紹介されている。
2冊目は水曜文庫で購入。値札が付いておらず、言い値の300円で購入。

 

本書に触れたことで購入した、古い少女漫画群。

美内先生と言ったらガラスの仮面ガラスの仮面と言ったら美内先生なのですが、まさかホラー作品があったなんて・・・。

曽祢まさこ先生・・・これは本書で存在を知った先生なのですが、絵柄が性癖ピンズド。めっちゃ可愛い。

もともとアイドル・ドール・アニメ等々可愛い女の子大好きなので、もうダメですよね。大抵怖さとの落差をつけるため(だと思う)にホラー漫画のヒロインって可愛い女の子が多いから。そっからずぶずぶ入っていくとはね、思わなかったよね・・・影法師もさ表紙買いだしさ・・・。呪みちる先生のも要するに恐ろしいヒロインがばちくそ可愛くて買っている訳だしさ・・・裏バイトのユメちゃんも可愛いしいいキャラしてるしさ・・・僕が死ぬだけの百物語のショタだって・・・あー。

あー!!!!!

 

 

内容「聖ロザリンド」「海の闇、月の影等著名な作品を中心に紹介。作家自身のイラスト、名シーン、解説等々。

インタビュー自体はあまり充実していない。関よしみ先生の書き下ろしの表紙ではあるが彼女のインタビューは掲載されていない。

有田景先生、きもとのりこ先生、白井幸子先生のインタビューのみ。ミニ・インタビュー掲載分を加えても、かずはしとも先生、(漫画が掲載された)犬木加奈子先生、葉月シモン先生、石上愛実先生のみ。

作者自身への取材はあまりなされていない。

あくまで初心者向けの少女ホラー漫画入門書。

そこさえ注意すれば、非常に良い一冊だと思う。

良書。

 

 

 

ただまぁ、値段が高いのが難点か。新品だと1600円(税抜き)もする。カラーイラストを大きく掲載したいがためのお値段と鑑みるがいやいくらそれを踏まえても高い。と僕は思う。ここはイラストを削るかもしくはムック本にするかどうにかして値段を下げてほしい所ではあるかなぁ・・・どうなんだろ。って思って「Amazon」の評価見たら意外とそこはみんな寛容なんだ。金持ってんなぁ・・・。

それでも、名前だけは聞いたことあるような・・・的な漫画や、「少女ホラー漫画」を語るうえで欠かせない漫画などが、ぎゅっと簡潔に数多く紹介されているのはとても捗る。でも1600円かぁ・・・うーむ。

 

 

この短編集はブローニィ家の悲劇のヒロインが表紙。おかおがきゃわきゃわ。

 

多く紹介されている中で、僕が気になったのは以下の3作品。

 

●曽祢まさこ「ブローニィ家の悲劇」

女の子の顔面がめちゃくちゃ可愛い。すっごい可愛い。え!!??って思った。びっくりするくらい可愛い。数文字で昇華されているあらすじもいかにも昔の少女漫画のメルヘンチック、って感じでたまらない。

他のも曽根先生の作品は「曽祢まさこホラー漫画のキーワード」pp.74-77で紹介されているのですが、「わたしが死んだ夜」「七年目の数え歌」これまた表紙が可愛いんですよね。中身の絵もかわいい。うひゃ~ってなる。うひゃ~。残念ながら地元の古本屋では見つけられなかったけど・・・、「地獄でメスが光る」を読み終えたらいつか読んでみたい・・・かも。

篠原千絵海の闇、月の影

作者の名前は聞いたことあるけど作品の名前は初めて知った、かも。でも18巻も出てるんですね。

でもその内容が、いかにもホラーアクション!!って感じでこれまたなかなか面白そう。一方で、最後に2ページ紹介されているカラーイラストはこれまた不気味でいい味出していてなかなか良い。

長いから手を出すのにためらいがあるが、結構気になる作品ではある。

●池田悦子原作 あしべゆうほ作画「悪魔の花嫁」

これも17冊と長いので結構ためらいがあるのだが、でも内容がどうやらどろどろ男女人間悪魔関係をベースとしながらも、1話完結の形式、をとっているらしい。

小学校高学年はこれでも「×××Holic」の初期of初期のホラー読み切り形式に魅せられていたまぐろどん、俄然興味あるわね。猿の手という概念をあの作品で知った。

あとイラストがこれまたTHE少女漫画って感じでキラキラしていて、いいですね。でも長いんだよ。長いんだよなぁ・・・。長いんだよぉ・・・・。

 

 

 

簡単にその他の内容をば。

ホラー漫画愛好家「緑の五寸釘」さんによるコラム「おすすめだけど単行本未収録」の3作品が掲載されている。

コラムはなかなか面白い。はぇ~ってなる。てかシンプルに文章上手いな。導入と締めがジャンキーであるが、中盤とても分かりやすくホラー漫画史についてざっくりざっぱり書かれている。確かに、昔「ほんとにあった怖い話」とか「ホラーM」とは少女漫画コーナーに平積みされていたよな~なつかし~になった。やっぱホラー漫画マニアとか頭おかしい人って絶対脳内面白いはずだから文章も自然とこう、面白くなるんだろうな。

 

その狂人がセレクトした3作品、無論最高です。個人的には、29ちゃい女性の僕であるので、世代的にもイラスト的にもやはり3作目の石上愛実「シャボン玉幸子さん」がめちゃくちゃ好み。サブカルっぽいほっそい線の絵が、この世代には突き刺さる・・・。

ただ静岡県民として一番衝撃を受けたのは葉月シモン「一枚の絵」。ふぁ!!???になる。ふぁ!!???!!!

一番圧倒的に有名なはずの犬木加奈子先生の作品が一番かすむってどういう事やねん。(かすんでないけど)

 

犬木加奈子「三途の川」:私、死んじゃったよ~

犬木加奈子先生の漫画はトラウマである。まぁ世代で言えば僕より2010歳年上・・・多分アラフォーくらいが一番ぶっ刺さる作家なんじゃなかろうか。

でも、その所謂「世代じゃない」僕にも多大なトラウマを及ぼした。

一つは「なかよし」付録ホラー単行本。今は知らないが、当時のなかよし・りぼん・ちゃおは「とっておきホラーコミックス★」みたいなテンションで、3-4作品くらいのホラー読み切りを掲載した冊子を夏の号につける時があった。

そこに犬木加奈子先生の作品が一作収録されていたのである。

内容はごめん、全く思い出せないのだが、目玉ぎょろぎょろぶっとい線・グロテスクグログロッといった感じで強烈なインパクトを残した。一通りワクテカして読んだものの、その絵が怖すぎて、もう二度と触ろうとしなかったくらい。それくらい犬木加奈子先生の絵はインパクトがデカかった。

もう一つは「たたりちゃん」の存在。今見ると所謂「こわかわいい」で僕に琴線ブチブチに触れるんだけど、当時はめっちゃ怖かった。大きい本屋でこの漫画の表紙を見たときびっくびくで目をそらした。しばらくは「たたり」という言葉自体がトラウマだった。

そんな先生の読み切りであるが、掌編さながらの切れ味で、怖いというよりかはなんか、「さすが」

三途の川という概念自体をここまで恐ろしいものに落とし込めるのかとびっくりした。さすが。さすがの川。いや~わたりたくない三途の川ナンバーワンですねこれ。たまんねぇよ。やめてくれよ。こういう死後系に僕は一番弱いんだよ馬鹿。

 

 

●葉月シモン「一枚の絵」:貧乏な絵描きが浮気したら報復が半端ねぇよ~

THE昼ドラみたいな典型的な男女のどろどろした関係の上に、最後のおどろおどろしい怪奇現象・・・THE王道、されど王道、なかなかいい映画を見た・・・。

絵が上手い。女の子がめちゃくちゃ可愛い。のに比例して、最後の1ページがめちゃくちゃ怖い。というか現象が起きている最中の、ラスト3ページ目も見えないながらも逼迫した雰囲気がビシビシに伝わってきてとても漫画力を感じる。

なんだぁ・・・・こいつぁ・・・とんでもねぇ才能だぜぇ・・・今何してるんだぁ・・・?と思ったら、

田中しょう(葉月シモン)先生からメッセージが届きました!p.140

はああああああああ!!!!?????????になった。はあああああ?!?!!!田中しょうって、あの!!??あの田中しょう!!!???静岡新聞四コマ漫画「あんずちゃん」を長年連載している田中しょう!!???びっくりした。えこんな絵うまかったんかぁあああああい!!!!こんなすごい作品描いてた時期があったんかああああいいいいいいっ!!!!!!!!

「あんずちゃん」って言うのは所謂「コボちゃん」みたいな漫画。静岡新聞の夕刊で長らく連載されていた。静岡新聞も朝は「コボちゃん」であるが、ただ僕はこう見えて朝激よわ、あと学校から帰ってくるとテーブルの上には当然夕刊がある日の方が圧倒的に多く、僕の中ではコボちゃんより圧倒的に存在感でかい小学生女児・それがあんずちゃんだった。だから僕の中で、実質コボちゃん

なのであのあんずちゃんの作者がこんな作品描いていたとは・・・ってところでもう全部吹っ飛んだね。というかこれ読むためだけでいいから静雄アッ県民はこの単行本を書いて日々「あんずちゃん」を描いてる田中しょう先生の本当は恐ろしい心の闇をとくと知るべきだと思ったね。どういう気持ちであんずちゃん描いてたんだよ一体!!!

でもどうやらインタビューを読むと、ホラー中心のこの「葉月シモン」活動、シモ活は初めは積極的ではなかったとのこと。本当はラブコメ描きたかったんだそうな。でもまぁまぁホラーも面白くなってきて・・・とのこと。本作品は40年くらい前の作品なんだそうな。

いやそれでも・・・このホラーはなかなか凄いよ。

そして改めて読むと昔の少女漫画の顔の向こうにわずかにあんずちゃんの輪郭が見えてくるの本当・・・本当・・・もう僕は純粋な気持ちであんずちゃんを見れないよ・・・。

ホラー漫画読み切り一作、とまでは言わないまでも、当時の画風で一枚絵描いたら今どんな感じなんだろ。おい、静岡新聞てめぇがやんだよ・・・。

ちなみに「あんずちゃん」、発端が「長野新聞」であることも本作品で初めて知りました。へぇ。

 

●石上愛実「シャボン玉幸子さん」:幸子さんが来る!!!!!

絵柄がぐう好み。多分葉月かなえ山川あいじ辺りが好きな人は絶対好きだと思う。マーガレットのサブカル枠にいてもおかしくない絵柄。多分ひよどり祥子先生から影響受けているのかな。

ところがどっこい展開はこれまたおどろおどろしく恐ろしい。幸子さん怖すぎるやろ。単体生殖万歳じゃねえんだぞ。

この人の単行本欲しいなぁと思って検索したけど、どうやら電子書籍しかないみたいだね・・・残念だよ僕ぁ・・・同人誌でもいいから出していただけないでしょうか・・・紙で・・それか誰か僕にipadをくれ。誰か僕にipadをくれ!!!!

 

 

 

以上である。

めっちゃ勉強になったし、めっちゃ面白かった。これに尽きる。

あと久々に漫画熱結構火がついた。

連続する形でラノベ熱にも久々に火が付いた。

それを継続させる、って意味でも末永く大切にしたいですね。

 

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LINKS

この単行本読んで熱がついて買ったホラー漫画の感想。

 

tunabook03.hatenablog.com

tunabook03.hatenablog.com

 

雪国の狂人・緑の五寸釘氏が同じくエッセイを寄せている同人誌の感想。

 

tunabook03.hatenablog.com

 

20221221

と、この記事を編集し終えたのは今日だけれども、本文書いたのは去年末。

この本読んで結構ホラー漫画買ったんだけど積んでいるのも多い。

ので、まぁちまちまでも消化していきながら、オカルト・ホラー漫画文化は今後も末永く嗜んでいきたい。

 

20230131

ようやっと写真を撮って、あげた。

かなり昔の文章である上に、加筆を繰り返しているため結構文章破綻気味だなぁと思わないこともないけれども、でもあげちゃう。本書は間違いなく良書。その気持ちは変わんないのと、ホラーブーム。まだ終わってない。「裏バイト」は引き続きスローペースながらも集めているし、「僕が死ぬだけの百物語」もバリバリ集めているし、「ようきなやつら」「死角」等も入手。熱心なコレクター、蒐集家とは言わずとも、めっちゃ読んでて楽しいし面白い。漫画好きでよかった~って思う。

ホラー熱のトリガーになった本書に感謝を。

*1:ついでに今はブロックされてしまった。女性アイドルに対する価値観の違いにより・・・まぁしゃーない。切り替えていけ。