世の中金稼いでナンボ!!!
田口翔太郎『裏バイト 逃亡禁止3』(小学館 2021年)の話をさせて下さい。
【概要】
黒嶺ユメと白浜和美の2人は、各々の目標のために今日も裏バイトに従事する。
行きつく先に、是が非でもてにしたいものがあるのなら、人は皆、命を賭することに躊躇はないのだろうか。
生命をもてあそぶもの達が垂涎する。
※本作品は心身に多大な影響を及ぼす可能性がございます。閲覧は自己の責任において、十分に注意して行ってください。
これによって生じるいかなる損害について、一切の責任を負いかねます。
裏表紙より
【読むべき人】
・ホラーが好きな人
・世にも奇妙な物語(怖い系)が好きな人
【感想】
やってきました裏バイト。僕が今唯一新品で買う漫画ですね。
意外と、僕が大好き丸善ジュンク堂新静岡セノバ店ではあんまり大きく展開してないです。そのまま背表紙で並んでます。反対でにでかでか並べられているのは「僕が死ぬだけの百物語」。さすがオカルト大好き丸善熟同新静岡店・・・尖っているぜ。
なので毎回買う時はあるかないかハラハラです。基本店頭に1冊しかないから。ハラハラハラミ。ひやひやおひや。
文芸コーナーには、オカルト大好き奇書を読む○○さんがいるのは把握しているのですが、恐らく漫画コーナーにはいないのかなぁ・・・。でもその割には「光が死んだ夏」でっかでかと展開しているしなぁ・・・。
あれ展開するなら裏バイトも展開してほしいや。多分数年以内には連続ドラマ化(※テレビ東京系のサブカル臭いあの枠)すると思うので・・・。
本巻は、多分本作品で一番有名な「学校用務員」が収録されています。出てくる怪異の姿がなかなかで一時期凄い騒がれていたやつです。
ただ、他「探偵助手」「温泉宿スタッフ」「ラジオ局AD」は比較的地味な印象。「学校用務員」があまりにもインパクトあったからというのもあるんですが・・・うーん、もうちょっとド派手なことやっててもいいのかなぁと思います。起きる現象も地味なイメージ。否、やっているんですよ。「探偵助手」で結構大々的に。作者的に予想を超える展開を読者にたたきつけたと思うんですけど、いや、結構なんか予想ついてたかな、といった印象。
正直2巻、4巻の方が面白いです。決して3巻、本書がつまらないということはないのですが・・・。
以下簡単に感想等述べていきます。言わずもがな一番好きな仕事は「学校用務員」ですね。実話怪談でも学校用務員モノは傑作が多いよね。
学校用務員(第25-27話)
勤務期間1週間 賃金630000円
和美「今回の仕事・・・今までと何か違う・・・」p.26
明里「・・・二人は・・・・辞めないよね?この学校・・・」p.27
安居さん「・・・でも・・・・・・もし、危ないと感じたら・・・いつでも辞めてくださって結構です」p.32
生徒「やめなよ。」p.46
怪異のビジュアルが圧倒的一作。これ何で描いているんだろう。コラージュ?「裏バイト」シリーズ怪物グランプリやったら間違いなくベスト3には入るでしょうね。
ただそれを取り巻く話が結構謎が多く、描写も足りていない部分がそこそこあるように思う。
謎。まぁ「いちょうさん」ですよね。謎が多い、と書きましたがもうそういうモノ。口裂け女、花子さん、いちょうさん。子供達の間でも、花子さん並みに噂になっているそういう存在。
だとしても、うーん・・・。なんか読んでて物足りない感じがすごいあるんですよね。痒いところに手が届かない、みたいな。
それは描写不足、必要な場面をページ数の都合でカットしたからだと思うんですよ。
冒頭、まず間違いなく生徒1人●される描写は必要だったと思います。おっさんの表情の変化に1ページ割くのであれば、そこで生徒の誰かが陰惨に死んでいる描写がないと、後編で出てくる噂の説得力がないんですよね。なんかよくわかんないうちにオッサン死んだけど、え?え?みたいな。描写不足を「考察要素」という言い訳でまかり通すな。
あと先生の描写。本作は先生が安居さん以外誰も出てきません。だから明里に「うちの学校の先生なんか変なんだよね・・・」とか打ち明けられても、ハァ・・・?と言った感じ。いきなり終盤変な格好して襲来されても、普段の顔を知らないからなんかいまいち怖さがぴんとこない。ただ
生徒が死ぬシーンと、先生たちの昼の顔のシーン。この2つは必須だったように思います。
間違いなく「先生」という設定を活かすのであれば、ギャップで恐怖感を煽るために必須だったのではないでしょうか。でもそれだと3話じゃあ足りないんですよね。絶対4話は必要だった。
あと本作は冬の中学校・・・東北や北海道の北国の雪積中学校の描写、雰囲気にこだわりたかったんだろうなぁ、とも思います。そこにスペースを割くならば、普段の中学校で働く先生の姿を見ておきたかったかなぁ・・・。
でもそういうぴーちくぱーちく垂れてる不満を全て「超えてくる」いちょうさんの存在・・・。
もう少し話がまとまってページ数があれば、もっともっと「超えられる」と思ったんですけどどうでしょうかね。創作と現実の境界とか、さ。
探偵助手(第28-30話)
賃金1000000円
緑澤「はあーあ、ほんと嫌になる・・・私、なんでこんななのって・・・うまれた時までさかのぼって考えたんです
きっと凶星の下に生まれついたんです。だってね、私が生まれた年、冥王星が・・・」p.57
緑澤「や・・・やっぱり甘くないですよねヤギさんは楽ショーなんて言ってたんですけど、わ、私なんかが才能なんてあるわけないし」p.72
白浜「裏バイトなんかしてる時点で、ここにいる人間皆どうしようもないから。仲間なんだよ。私達」p.78
結構ド派手な現象が起きているんですけどね・・・。特に多数の死者が出る数秒前のpp.92-93の描写なんかは圧巻。名シーンだと思います。
ただなんかやっぱ地味なんですよね。血しぶきシーンもあるし、競馬大好き八木さんの本格的登場回もあるんですけど・・・。
多分、多分なんですけど、緑澤由紀の死、ありきで作られた話だからかなあ、とも思ったり。
4巻まで読んでるんですが、彼女の死は白浜にとってかなりの衝撃で結構引きずるんですよね。恐らく「裏バイト」全体を見通した時に、彼女の死は不可欠な要素だった。
でも、正直登場した時から
僕「くっさ!!」
彼女からは死臭がぷんぷんしていた訳ですよ。キャラクター・ビジュアルがユメちゃんとちょっと似てるし、どんどん心開いていく様はまさしく死亡フラグだし。
だから死んでも正直驚きはなかった。
もっとドン引きする程グロテスクに残虐に死んでほしかったです。
読者に衝撃を与えるには、死にざまが綺麗すぎる。
吾妻史郎の存在は、彼女の死を引き起こすためのツールにしか見えなかったんですよね。
多分、1-2巻で彼の名前がメディアで取り上げられているような描写があれば、また印象は違ったと思うんですけど、うーん・・・というのが正直なところ。依頼がくる過程もなんか不自然だし。いやいや、普通競馬大好きクソ野郎の探偵事務所に依頼する前に本人のお宅訪問するでしょう。
それでもやっぱり先程の街中61名即死シーンや、吾妻史郎のお風呂場のシーン、苗字から名前呼びに変わるリアルな人間関係描写等見どころはあるんで、つまらなくはないです。ただまぁ物足りない。これに尽きる。
意味や意義なんてない・・・・ましてや意思なんて。そういったものは超越している。
難の話しって?名前の由来を聞いたり?
だから、意超さんって言うのさ。p.51
裏バイト全般に徹底されている矜持です。
現象に理由なんてない。
ただそこに現象はあるだけだ。
自然は世界は地球は幽霊は魂は僕達をありとあらゆる面で、超えている。
温泉宿スタッフ(第31話-第33話)
労働期間1ヵ月 賃金2500000円
武藤さん「頼みますよ。高いお金だって払ってるんですから。なんとか、あの温泉の謎を解き明かしてください」p.123
白浜「ああ、何度もこの宿に足を運んで会員になって、ようやくこの夢ノ湯に入れる。商売上手だよな。」p.116
八木「なんだい、まだ聞いてなかったのかい?「夢ノ湯」には若返りの効能があると言われてるんだ」p.134
若返る温泉宿編です。
これは真相は結構意外で面白かったですね。えそういう角度からくる?みたいな。
ただ、これもちょっと配分間違えているかなぁという印象。
八木さん出てきてるんですけどいらなかったんじゃないかな。白浜とユメちゃんで無理矢理真相に気付けたのではないか。結構八木さんにページを割いてますが・・・。
じゃあその八木さんに使っていたページで何を描いてほしかったか、というとまぁ・・・現在の武藤さんの息子さんですよね。
絶対いい息子なはずなんですよ。人格も完璧だし容姿も良い。武藤さんにも優しい。
息子の存在感が薄いので、この現象によってもたらされた悲劇の深刻さがあまり伝わってこない。
別に水自体が、意思があったって呪われてたって全く怖くないんですよ。悲しくもないしああそういう水なんだね、で終わる。すごい。Z世代の水って意思があってうg組んだ!で終わる。
その水によってもたらされた絶望後悔悲痛が恐怖へと変わるのであって、水自体が恐怖の対象ではない。
じゃあ、絶対息子を出すべきだったと思うんですよ。
台詞上だけで説明されても実感がわかないんです。小説じゃないんだから。
そこが非常に惜しく感じられた。
あと、現象の背景もほしかったですね。イチョウさんはルックスからもうそういう「モノ」、吾妻吾郎は人々が思い描く虚像イメージ、そしてこの後に続く地方ラジオ篇は女ストーカーの執着。
ただ本編は水がこぽこぽ動いているだけなんですよね・・・それが古来続く温泉由来なのか何なのか。現象自体が地味であるため、その分背景厚くしてほしかったな・・・。個人的には水型異星人説を推したい。
でも、この温泉宿篇の最後の炎燃え上がるクライマックスは、最高でしたね。
昂る。
震える。
あと、ユメちゃんのヌードがくっそエロかった。エッロ!!!!!!!
ラジオ局AD(第34-36話)
労働期間1ヵ月 賃金1000000円
三上「仕事だ、白浜。小竹の代わりにパーソナリティーやってこい。」p.174
三上「しィッ。その名を出すな!今もきいてるかもしれない。」p.183
繝ヲ繝。縺。繧?s「自分が、どうしようもない位孤独だって事。」p.194
感想を書く際に再読をするのですが・・・改めて読むと凄く良くまとまってて読み易い。いい作品だなと思います。一回目の時はなんか別に・・・だったんですが。
多分、僕がラジオを聞くようになったからでしょうね。
今「三四郎のオールナイトニッポン0」「マヂカルラブリーのオールナイトニッポン0」「アルコ&ピースのd.c.garage」「ハライチのターン!」「空気階段の踊り場」を聴いているんですよ。超聴いてんじゃん。
だから、この怪異自体が結構身近に感じられた・・・から怖くなった、っていうのも少なからずあると思います。
でも、ラジオ×怪異・・・まぁ聴かない話ではない組み合わせだけれども、そこからここまで描けるかね!?ってくらいしっかり話が出来ていて凄く良かったです。特にクライマックスにかけての演出は本当にすごかった。そして結構ダイレクトに来るんだ、っていうね。
足立さんは、三上の行動を優しさと捉えていたようですが、あれどうなんですかね?僕は凄く卑怯な人間の行動だなと思いました。そもそも自分が原因なんだからパーソナリティとしてケリをつけるのが筋なんじゃないかと。
一方で、和美の過去にもぐっと迫っていく展開がありましたね。
絶対、ユメちゃんはなんか、隠してるんですよね。シックス・センス的展開・・・要するに存在しないもしくは死んでいるのではないか?とも思うんですけど、にしてはちゃんと人間として他者も知覚してる。ユメちゃんを。
でも、あの和美のピンチを嗅ぎ分ける能力は明らか人間離れしすぎているようにも思うんです。彼女は一体何なのか。
最後の方、不穏な形で終わるのも良かったです。彼女達は借金を返し終えた時、いったいどこへ向かうのか。
あと、うぃんた~ず。あれにはちょっと笑っちゃいました。一回目読んだ時は気づかなかったんですけど、さまぁ~ずのパロディコンビだったんですね。ああ確かに~って思った。ててかよく考えたらさまぁ~ずのさまぁ~ってサマーって意味だったんだね!ていう発見ね。これも縺輔∪縺?ス槭★で、よくよく考えたらそもそも繧ウ繝ウ繝灘錐縺ッ驕輔▲縺ヲ縺?◆險ウ縺ァえ、でも前縺ョ蜷榊燕菴輔□縺」縺托シ滓?昴>蜃コ縺帙↑縺?↑?縺ィ縺?≧縺九%縺ョ繧ウ繝槭?螟門?縺ォ縺ゅk譁?ュ怜喧縺代b螟画鋤縺励◆繧峨≠繧狗ィ句コヲ隱ュ繧√k譁?ォ?縺ォ縺ェ縺」縺ヲ縺?k縺ョ縺九↑縲譁?ュ怜喧縺代?荳?菴薙←縺?@縺ヲ縺薙s縺ェ縺ォ繧ゆココ髢薙?蠢?r諠ケ縺阪▽縺代k縺ョ縺九?∬ス「縺阪▽縺代k縺ョ縺狗吏謾」縲縺オ??スゑス悶§繧?>?具ス鯉ス?ス九s繧鯉ス?ス具ス厄ス鯉ス具ス奇ス具ス?s??°繧難ス奇ス?∪縺翫∴?奇ス鯉ス搾シ幢ス薙§繧?シ帙♂繧鯉ス?ス後l繧難ス具ス具ス後&繧難ス?°縺サ縺医o?具ス?ス茨ス奇ス?ス医$縺ッ縺オ縺?≧縺ゑス?ス?ス?§繧?ス具ス?s?奇ス?ス縺後∪縺壹∩。遘√r蠢倥l縺ェ縺?〒縲
ユメちゃん「ハマちゃんは昔からそうだったよ。
大丈夫だよ、ハマちゃん。
私はずっと側にいるから・・・
ずっと・・・」p.156
迢ャ繧翫↓縺励↑縺?縺昴?縺ォ縺?※
以上である。
なんだか結構不満をたらたら述べてしまったが、総じていえば今回も普通に滅茶苦茶面白かった。ぐいぐい読んだ。だからその分不満点が出てきた、といった具合。実際つまらない漫画だったら無理くりしていいところをとりあげることで自分を後悔させない、ようにするわけだし。面白いが故の減点方式。
ただまぁ、うーん。八木さん出てくるとつまんなくなっちゃうな。便利なキャラクターだろうし、キャラとしても悪くないんだけど・・・介入し過ぎちゃうというかなんというか。緑澤連れてごくたまに出てくるなんちゃってゲストキャラくらいがちょうどよかったんじゃないでしょうか。
そういった意味でも緑澤さんの死は悔やまれる。
で、うかうかしてたら9巻まで出ち繧?>縺セしたね。買縺?∪縺吶?ゅ◎縺励※隱ュ縺ソ
ます。
***
LINKS
この紹介本コラム書いている人が推してたことで知ったよのリンク。