小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

田口翔太郎『裏バイト 逃亡禁止2』-かけがえのない友達がいるということ。-

 

 

楽しい楽しいアルバイトォ!!!!

 

 

田口翔太郎『裏バイト 逃亡禁止2』(小学館 2021年)の話をさせて下さい。

 

 

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【あらすじ】

様々な裏バイトに参加し、毎回、命からがら報酬を得てきた黒嶺ユメ白浜和美

命とは、斯くも軽いものなのか。

尊厳とは、倫理の中でしか価値がないのか。

全てを擲ち(なげうち)掴んだ者に、想像を絶する絶望が寄り添う。

※本作品は心身に多大な影響を与える可能性がございます。閲覧は自己の責任において、充分に注意して行ってください。これによって所汁いあなる損傷について、一切の責任を負いかねます。

裏表紙より

太字にした二行は、何気なく2巻本書の本質をついてると思う。

 

【読むべき人】

・ホラー好き

・ホラー小説好き:多くのホラー漫画が絵でみせるのに対して、本作品はストーリーの方がやや重点的に大切に描かれているのかなと思うので。実際僕もどちらかというとホラー小説・実話怪談等文字媒体が基本なのですが、本作品は漫画好きじゃない、そういう文字媒体のみ愛する人にも自信をもって勧められます。

 

 

 

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【感想】

もともとおもしろいと聞いていた1巻読んで、「こいつぁ面白いと聞いていたが期待以上に面白れぇぜ!!最高だ!!!裏バイト、最高!!!裏バイト、最高!!!!!ユメちゃん、最高!!!ユメちゃん。最高!!!!!」と叫んで部屋中踊りまくった午前三時から数日後・・・さっそく読みました、2巻。

1-2巻駿河屋の通販サイトで購入したのですが、もうね、1巻読了後2巻読むのが楽しみ過ぎて、本当に、やばかった。家帰ったら何やろう2巻よもう!!ああでも家にある未読の裏バイトがなくなっちゃうよ~し!!1巻の感想書いたら読もうあああ~~~1巻の感想書くのめんどくせぇええええおじさんのヌードとかどうでもぃいいいなんでこのページだけ妙にエロいんだよ何なら女体よりエロいの何なんだよぁああああ!!!!(1巻収録第1話最後のページ参照)

発狂しそうだったね。僕の表バイト先のレンタルコミックのところに本作置いてなくて本当に良かった。置いてあったら返却作業する際に絶対本棚に隠れて読みはじめるので。

 

2巻は、巫女・神様・お人形・水族館と結構怪談スタンダードのものが多く取り上げられています。まぁ・・・水族館はちょっとちがうか。1巻の山中のリゾート・運び屋・ビル・心理実験の題材の方が変わり種感はある。

でも、面白さは1巻同様そのまま。めちゃくちゃ面白いし、怖い。

特に「絶望」、裏表紙にも書かれている熟語ですが、ここに関しては本書の方が間違いなく上をいく仕様になっています。最後のおまけ漫画をつけるところが最高に憎いですね。なんたる悪趣味。最高。

あとギャグ。筆者の自画像から、もともとギャグセンたけぇ人なんだろうとは思っていたのですが、本書になるとのそのセンスがだんだんと垣間見えてきます。僕が好きなギャグは、人形供養」のなんちゃって裏情報と、あと「カイロですわよ」ですね。あと帯。1巻2巻き同様「楽しんで行ってくれ」とおっさんが呼びかけてくれるのですが、絶妙な表情が良いですね。どういう感情で言ってんだよ。

で、げらげら笑った後に、絶望が来るんだから・・・より一層高低差がついてもうグラグラです。後半グラグラ。まじもうやめてほしいわぁ・・・いややっぱやめないでぇ・・・・。

 

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緩急極まれりの本書、各仕事ごとに感想を書いていく。特に好きなのは、人形供養・自然保護監視員・助勤巫女(4仕事中3つかい!!)

特に助勤巫女は、おまけ漫画がついていたり表紙になっていたりと作者も気に入っているようですね。確かにストーリーのバランスが良く、最たる絶望が描かれているのはこの仕事だと思います。一番万人受けするでしょう

でも人形供養のメンヘラ、自然保護監視委員の圧倒的者の力、この2つも捨てがたいんですよね・・・。

水族館も良作です。橙出てくるし。でもこの3つの仕事が名作がすぎる。

 

 

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人形供養(第13-15話)

勤務時間2日 賃金966666円(ユメちゃん)966667円(白浜)

白浜「この人形と、用意された民家で数日一緒に生活をする。人間と同じ扱いをする事で、人形に感謝を伝える・・・と」p.8

ユメちゃん「体調が悪くなったらすぐ出てきてね。人形よりも自分を大事にして・・・お願い・・・」p.30

シャーロット天ノ崎「人間は美しくない 老いるし 排泄するし 菌がいるし 嘘つくし 暴力をふるうし 私を虐めるし アナタ達は完璧。私もアナタ達みたいに永遠に美しくありたい。」p.15

めちゃくちゃ怖かったです。特にpp.18-19の2ページの見開きの部分。唐突に挟んでくるものだからめちゃくちゃビビった。

まさかまさかの、終わり方も怖かったですね。確かによく笑うな、って思ったんですよ。しかも笑顔でお礼まで言って・・・天ノ崎が本当はなりたかった自分をやすやすとこなしているのが末恐ろしい。

どのタイミングで入れ替わったんでしょうね?3人で4時間静止して並んで黒柳を騙そうとした時か。それとももう、4時間静止する前、人形が大きく口を開けたあの瞬間か。

黒柳。こいつも小物クサくて結構いいキャラしてましたね。特に途中の裏帳簿には笑ってしまった。帳簿に笑い声書いてるんじゃねぇよ。

ただよくよく読むと、

「人形様は一体。人形様の「中身」は複数タイプだったか」p.43

という記述がみられます。

ということは、今回の人形は単体だったから天ノ崎一人の犠牲だけですんだってことですよね。「中身」が二体以上の複数タイプだったら白浜とユメちゃん、静止している状態時にどちらか入れ替わっててもおかしくなかった、ってことですよね。

まぁ複数タイプでもユメちゃんの嗅覚でどうにかなったでしょうが・・・ちょっとゾッとしたね。また、こういったちょっとしたところに小技を仕掛けるところが素晴らしいね。

 

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自然保護監視委員(第16-18話)

勤務期間2日 賃金300000万円

馬岡「うん・・・もともとここは古くから神の棲む山だと言われていてね・・・地元の字住民からも、こう呼ばれて今も崇められているんだ・・・「しらかみ様」ってね。」pp.58-59

白浜「今までの調査って・・・今回みたいに裏バイトを雇ったんですか?その人らはどうなったんです?」p.75

真っ白で何もない空間は まるで神様みたいだp.79

崇め祀られている、しらかみ様、の圧倒的力に人間は無力。神にとっては、人間の対立なんてはなはだどうでもよく、ただ、ただ食べつくすのみ・・・・。

神、自然の人ならざるものの圧倒的スケールの力が非常に巧く描かれた一篇だと思います。最後の結末はバッドエンドなんですけど、あまりにも圧倒的で、むしろ爽快感すら感じるくらい。ただまぁテレビのアナウンサーとかは可哀相だなぁと思ったけど。でもそういうのも関係ない。神様だから。ただ、食べつくすのみ。

食べられている描写もいいですね。今まで体験したことのないような感覚、そして恐怖に陥りながら死んでいく・・・。雪の白さに全て塗りこめられていくかのように・・・。安易なグロテスクに走らないところが好きです。

途中に出てきた、ミカの存在が素晴らしいですね。絶対何かあると思ってた。絶対悪い子だと思ってた。ら、まさかの最後そうきたかっていう・・・。確かにユメちゃん彼女に関しては一切「クサい」と言っていないんですよね。

この子の存在がなければあまりにも物語はシンプルで、物足りなかったと思うんですよ。ただ神様が人間食べるだけだから。

凄いフックの使い方が巧みだなぁ・・・と思いました。

 

 

 

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助勤巫女(第19-21話)

勤務期間:8日間 80000000円

未帆「はーい皆。お茶とお菓子よ~ん。」p.109

真琴「私をあげる。だから私の願いを叶えて。」p.147

ユメちゃん「一番大事なのは自分とハマちゃんの命だから。どちらを奪われても死んだも同じなの。」p.147

福音(神主)「自らを殺し、神に仕える。ある種生贄のようなものです。毎年、神隠しに遭うのは一栄のみ。他の巫女は数百万の富を得て帰るのです」p.130

白浜「あ、未帆ちゃん。昨日はお疲れーちゃんと寝れた?」p.119

赤川「触んなっち!」p.102

表紙にもなってますね。表題作。

本当に怖い話、トラウマになるものって、気軽に読み返したり見返したりできないものですよね。

僕はこの話、結構それでした。

あまりにも惨い。惨すぎる。

2巻は人形、雪の神様、人をぱくぱくするお魚と、結構人間にとって不都合な意図をもった怪異が出てくる話が多いんですが、この話だけ人間の悪意が煮詰まっていて最悪。

本当に最悪、非道。

特に、飲み会の見開き2ページ(pp.114-115)はインパクトありましたね。ただ殺しただけじゃない。惨たらしく。人間の悪意によって。赦さない。

本当に、本当に赦せない。

なんでだよ。死んでくれよ。どうしてなんだよ。

なんで。どうして。

どうして未帆がこんな目に遭わなきゃいけないんだよ。

そこが煮詰まったクライマックスの、

真琴のアップ(pp.148-149)に、

息が止まる。

ここの台詞何度も何度も繰り返して繰り返して読みました。何なら口に出して読みました、

真琴「■■■て。未帆をこんな目に遭わせた奴ら・・・かかわった■■■■■■■■■■■に■■■て。」pp.148-149より

未帆ちゃんがあまりにも可哀相で、そしてここに出てくる人間たちの極悪非道っぷりがひどすぎて本当に赦せなくて、気軽に読み返せないですね。ただ、ここの2ページから終わりに掛けた最後の最後のシーンだけ結構結構何回も読んでる。

エグイ惨劇の跡に残るのは深い傷跡のような、余韻。

さようなら。さようなら。さようなら・・・・。

実写映画化してもそのまま映えるくらいの妙な生々しさが厭ですね。実写化してくれしないでくれしてくれ。

あと、赤川。新キャラ登場回ですね。気怠い白衣のお姉さんかぁ・・・と思ったら、白い粉に手をだそうとした途端「だっち!!!」という謎の語尾がつくところが最高にぶっ壊れていていいですね。魅力的な、壊れた女キャラを描くのが巧すぎる。

ちなみに、粉は最初のページで「coffee」と書かれた段ボールがあることからコーヒーシュガーと思われるのですがどうなんですかね?その白い粉本当にコーヒーシュガーなんですかね?

あ、あとこの回を読んで思ったのは、本当に霊感があるのは白浜ではないか、ということ。未帆の夢を見たのは、ユメちゃんではなく白浜なんですよね。ついでに、「治験」の時も扉の夢を見て、ぎり開かなかったのは白浜でした。何か彼女にも闇臭い(きな臭いと同義語)秘密がありそうですね。

 

 

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おわかりいただけただろうか・・・・。

 

 

水族館スタッフ(第22-24話)

勤務期間:10日間 4000000円

橙「黒嶺先輩は白浜先輩とバディ組んで長いんスか!?詳しく知りたいッス。」p.159

ユメちゃん「私も同じよ。両親が借金だけ残して消えたの。」p.172

白浜「忘れてんじゃねーぞ橙ーッ 今日昼シフトだろーが!今すぐ来いオラーッ!!」p.195

なかなか面白い話ですね。魚は人間をどのように捉えてるのか。一切考えたことなかった。

でも確かに、僕達ホモサピエンスが魚に対して無双できるのは陸上だからで、水中だと立場がまるっと逆転するんですよね。そしたら溺れてただあばあば言っているだけの僕等はちょうどいい御馳走だぁ!!ってことですもんね。こわ。

でも、これ餌になる人間も人間で、すっごい幸せな気持ちのままで死ぬんだから、いいんじゃないかなぁ・・・。

魚はほら、まな板の上で跳ねたり油で揚げる時も最初の方は生きてるじゃないですか。人間の方がよっぽど残虐ですよね。

魚は優しい。

だから癒されるんだと思いますよ。アクアリウム

面白い、と言いましたが、赤川に続いて新キャラ出てきましたね。

今まで仕事の際に出てきた魅力的な女キャラは総じて生存率0%だったので彼女も死ぬのかなぁと思ったらバッチバチに生きててワロタ。でも3人になるのかぁ・・・どうなんだろうなぁ。私は白浜とユメちゃんの二人の尊い関係性が好き、っていうのもあるんだけど。

あと作品自体の大筋に関わる部分も出てきました。何故、裏バイトをする必要があるのか。特に白浜は父親と何かありそうですね。医療費かな。

思えば、1巻の同じく4件目に当たる「治験」も、白浜の父親など話の大筋に絡む話でした。単行本単位で4件目にあたる仕事が、話の大筋がだんだんとつまびらかになっていく形なのでしょうか。

霊感があるのがユメちゃんで、本当の闇を抱えているのは白浜、というこのバランス感覚、いいですね。2人で傷なめ合いながら裏バイトどんどんやってってくれ~。「俺も混ぜてよ」はぶっちゃけいらんのよ~。

あ、でも、右目左目全然別の方向向いている時の顔はちょっと可愛いなコイツと思いました。どうやったらそうなんねん。

 

おまけ漫画 しあわせな真琴ちゃん

未帆「主義に反することは出来ないんだよね~真琴。融通の利かなさは絶対、一生変わらないの~絶対、ウフフウフフフそこが好き。」p.207

未帆というかけがえのない親友がいるしあわせな真琴ちゃんの漫画です。

何故二人があれだけ仲良かったかが、且つ真琴が未帆をなぜあれだけ大事に思っていたのか、が簡潔に描かれていてとてもいい短編だと思います。

主義を曲げられない頑固な真琴、でも人の数だけ主義・考えがあるから必ずぶつかるじゃないですか、そこをやんわりと受け止める未帆の存在が真琴にとってどれだけ尊いものか・・・・。

書き下ろしこの2人の昔のフォーカスするの最高ですね。その分よりいっそう・・・うっ・・・助勤巫女の後味が・・・。

 

カバー裏:まじで誰だよおめぇ

 

 

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今回の帯。2枚目のおっさんオズワルドの畠中に似てる。

 

 

以上である。

2巻も1巻と引き続き、滅茶苦茶面白かった。むしろ好みの話は2巻の方が多かったかもしれない。

あと1巻と引き続き、やばいのも狂った人達もたくさん出てきてとても楽しかったです。赤川・橙と継続的に狂っている人達も出てきたのでこれからどうなるのか。うーん。橙入ってどうなるんだろ。僕的には2人でも十分な気がするんだけど・・・。

3巻4巻の入手を一刻も早くしたい。噂によると3巻の1話目が怖いらしいんですよね・・・言うな!!絶対言うなよ!!!

 

あとねー、タコピーも前後両方お取り置きしてもらっているんですよ一刻も早く本屋に、行かねば・・・!!

 

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求人雑誌に裏バイトは載ってねぇ!!!!!

 

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※途中で出てきた鳥居は静岡の浅間神社の鳥居です。