小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

田口翔太郎『裏バイト:逃亡禁止1』-クサい。クサいクサいクサいクサいクサいクサいクサいクサいクサいクサいクサい!!!!-

 

 

 

あなた(の命)を輝かせるヤバい仕事がたくさん!!!

 

 

 

 

田口翔太郎『裏バイト:逃亡禁止 1』(小学館 2020年)の話をさせて下さい。

 

 

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【あらすじ】

あなたを輝かせるヤバい仕事がたくさん!!!

90万円のために死ねますか?

 

裏バイト。

それは合法違法含むグレーゾーンの高額報酬アルバイト。

その金は、あなたの命の値段。

 

とある事情で大金を求める黒嶺ユメ白浜和美の2人は、

軽い気持ちで裏バイトに手を染めていく。

 

※本作品は心身に多大な影響を与える可能性がございます。

閲覧は自己の責任において、充分に注意して行ってください。

これによって生じるいかなる損害について、一切の責任を負いかねます。

 

帯・裏表紙より

 

【読むべき人】

・ホラーが好きな人

・実話怪談系が好きな人

・おもろい漫画読みたい人

 

 

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帯のコピーが最高。

 

 

【感想】

めちゃくちゃ、面白いですね。

冊単位でいえば2022年読んだ中で一番かもしれない。

 

本書自体は昔から名前だけは知っていた。なんとなく話題になっていることも知っていた。ただ「裏バイト」という題材がぴんとこず、ホラー?なのか?ミステリー?なのか?お仕事?漫画?なのか?いまいちどういう漫画なのかよく分からなくて手を出しづらくずっとスルーしていた。

Twitterで知り合った人が「めちゃくちゃ面白い。「僕が死ぬだけの百物語」と「裏バイト」と「フォビア」で令和のホラーが語れる」と豪語していたので、ほおん、と一気に興味がわいた。まだ令和はじまって5年もたってないのに。

ホラーか。裏バイトっていうから毎回死体を掃除したりなんか地下道を通って薬を運んだりそういう仕事をしている女の子達の話と思っていたが、どうやら普通にホラーらしい。

それはそれは、とオカルト大好きまぐろどん、重い腰、あがりました。

その同時期に、駿河屋の中古通販で買いたい物があって、1500円以上だと送料無料だと言うので、その帳尻合わせに1巻2巻買って読んだ次第。

 

結論めちゃくちゃ、面白いですね。

なんかもうぐいぐい読んじゃう。

多分作者相当ホラー好きですね。

キャラクターとストーリー、あと多分コマ割り?が凄いうまいのかなぁ、と思う。

 

 

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ユメちゃん♡

 

 

キャラクター。ユメちゃん(後ろの黒髪)白浜(金髪)である。

ユメちゃんがめちゃくちゃ良い。良い~。良い~。何が良いのかっていうと、なんか霊感感じちゃうと「くさい」と言い出すんですよ。でそっから一気に正気を失ってガンガンなんかやっべーことやっちゃう、所謂霊感体質の子なんですけど、その「正気を失う」ところが妙にグッとくるというか・・・。発狂する女の子とか、タガが外れちゃう女の子とか、そういうキャラが好きな人はハマるんじゃないかなぁ・・・。

あと僕が個人的に好きな三白眼キャラっていうのも最高です。正直容姿は美少女!!で描かれていないんですよ。若干面長だし、目付きは悪い、且つ服のセンスが洗練されているというわけでもない。

でもそういう大人しい子こそ、発狂してナンボではないですか?

トニカクカワイイという漫画がありましたけど本当ユメちゃんトニカクカワイイ

白浜。白浜は本作品のマジの主人公の方。ギャル。「ふたりはプリキュア」でいうとブラックポジションですね。ホワイトはユメちゃん♡まあまあいいキャラしてます。それ以上でもそれ以下でもない。

ユメちゃん、サイコう!!!!!!!!

 

 

ストーリー。

本書は4つ、の仕事が描かれているんですけど、そのうち3つが「実は・・・」的結末に落ち着く話なんですよね。(ホールスタッフ、ビル警備員、治験)

最後のオチに僕達は戦慄するんですよ。は!?え!?こわっ!!って。

で、こういう展開って漫画より、小説より、実話怪談とかでかなり見るような気がする・・・んですよね。長めの。最後の最後で全部裏返すことで読者をゾッとさせる。

あと全部裏返す、という点では叙述ミステリに似ている部分があるかもしれない。

 

だから、実話怪談・叙述ミステリどちらも全く触れたことが無いと、いまいち良さが分からないかもしれない。

そのおススメしていた方は「解説のwiki見て毎回深く感心している」と言っていたんですが、どちらも読んでいる身からすると別に解説wiki見なくてもだいたい分かります。(マウント)

謎解きとか意味が分かると怖い話の感覚の延長線上で楽しめるのであれば、それらに触れたことが無くても十分に楽しめると思う。

ただそれらに触れたことが無い兼、謎解きだとかミステリだとかそういうのが全くダメという人はハマらないかもしれない。

逆に、実話怪談とか叙述ミステリとか大好きな人は絶対ハマるんじゃないでしょうか。

ちなみに本作ぶっ刺さった僕はその2つがめちゃくちゃ好き。ただ本格ミステリは好んで読まないタイプの人間です。

 

あとコマ割り。

僕は漫画を描かないのでよく分かんないのですが、本書結構すらすら読み易いんですよね。裏バイト、兼幽霊という結構ややこしい題材。且つ絵もめちゃくちゃ上手いというわけでもない。それでも、すごい読み易いんですよ。

それは多分、ネーム?がうまいのかなぁ?、と思う。

あとまぁ、ホラー漫画のメインディッシュ、そういうものが出てくるコマの描き方も秀逸です。

特に「ホールスタッフ」のpp.37-39の3ページにかけての流れは神だと思う。

 

作者自身の似顔絵もホラー仕様なことから、作者マジでこういう怖いのが好きなんだなぁ、と思います。

そして多分だけど、摂取しているのはホラー漫画だけではない。

「ホールスタッフ」で見事なシャイニングのパロディが出てきますが、多分洋画邦画問わずホラー映画、あと前述したように実話怪談・ホラー小説、無論ホラー漫画も相当読まれているんじゃないかと思います。特に句読点が台詞にしっかりついていることから、文章媒体は間違いなくたくさん摂取されている気がする。

作者のホラー愛が伝わる作品。

僕は映画、漫画、全然読んでないんですよ。何なら小説もそんな読んでない。この作品にそぐう読者になるために大いにホラーを摂取していかなければだな・・・。

 

 

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左からユメちゃん♡、白浜、???

 

以下簡単に、各派遣先の感想を書いていく。ネタバレ気にせず書いていくので、気になる人はまず買って読んでくれくれクレメンス。こんな雑文よりも本物に触れてくれ。

好きな話は「治験」

 

 

 

ホールスタッフ(第1話)

森のリゾートレストランのホールスタッフ。

時給15000円×6時間×10日 9000000円

ユメ「・・・よろしくお願いします」

白浜「どもでーす」p.2

マスター「そーか、そーか、そーか。まだ言ってなかったか。二階にはね、僕の妻がいるんだ」p.15

初回なので、まるまる一回でまるまる一派遣先。この話以外は複数話で一派遣先、となります。

平和にはじまってコメディがあって中盤からスピード上がりスリリングになりシャイニングになり最後のホラー的クライマックスpp.37^39にの3ページに戦慄。

でさぁ、まあここまでなら分かるよ。中盤のスリリングな【急】の展開に3ページたっぷりに見せる【緩】のクライマックス。緩急めちゃくちゃついてて読み易いなと思うよ。前半のほのぼのとしたやりとりも結構面白かったよ。

でもその最後の最後にさぁ、もうひとぶちかまししてくるとは思わなかったよね。ちょっとそこは予想してなかった。マスターのいう事めっちゃ信じちゃってたよ。あとちょっとエロいの何なんだよ。お前のサービスショットいらんわ。

ただ、ひとつ消化不良があって。

中盤。ユメちゃんの後ろにてけてけついてった少女・・・あれ誰なんですかね。解説wiki見ても掲載されてなくて。は?何が解説wikiじゃボケ。分かることしか書かねぇくせして解説名乗ってんじゃねーぞと思ったんですが、まぁそこは、よしとして。

作品全体にかかってくる謎なのかな。

初めマスターと奥さんの間の子供か?と思ったらそもそもいないし、奥さんちょっと蘇っちゃった系か?と思ったら奥さんの正体自体がアレだったからありえないんですよね。

何だったんだ・・・。

 

 

 

ビル警備員(第2-5話)

出ると噂の雑居ビルの夜間警備。

時給10000円×8時間×30日=2400000円

ユメ「ハマちゃんッ。経験者だからって、一人でドカドカ行かないで。ひとのペースも考えるべきだわ!」p.51

白浜(あれ?七階ってそういえば空きフロアじゃなかったか?)p.63

近くの食堂のおっちゃん「しまいにゃ、ビルの上から飛び降りた親友社員も出てよ。あん時ゃ大騒ぎだったなぁ。他にも首吊って死んだヤツも何人もいたとか・・・」p.76

ブラック企業の幽霊モノである。うわぁ・・・。人間の幽霊かな?と思わせといて、企業全体そこ一帯の幽霊、ていうのが性質悪すぎる。そして一番最後だけ、人間の顔めちゃくちゃリアルに描く作者も性質悪すぎる。お前(読者)もここの幽霊と何ら変わらないんじゃないのか?

森のレストランの話がリゾート地ということもありちょっと「身遠」の話なのに対して、この話は普段街中を行きかっているサラリーマン・ブラック企業と結構「身近」の話なのも工夫されてるなぁ、と思った。いやいや、他人事じゃねぇんだぞ、ということですよね。

あと終盤で食堂のおっちゃんが

「あの人達さぁ、毎日あわただしく行きかってるけどさぁ、何やってるのか分かんないよね」p.97

と言っていて、めちゃくちゃ共感した。会社で働いているサラリーマンたち、いまひとつスーツ着て何やってるのか分からないんですよね。雑誌「働くOL特集」みたいなのぱらぱら見るとタイムスケジュール書いてあるんだけど「会議」って何話すの?「デスクワーク」って何やるの?「メールチェック」ファンレターの?いまいち実感がわかなくて、一般的仕事に今まで就いてこなかった。そういう仕事場へスーツで毎日行き来している人を、僕は本当に心から尊敬している。煽り抜きで。

今まで漠然と思っていた疑問をおっちゃんが言語化してくれた、という点でこの話はめちゃくちゃ好きですね。

あと多分、だけど中盤ゾンビものやろうとしてた形跡がありますね・・・。7階の社員があうあう追ってくる感じで。あっても良かったとは思うけれども、カットした今の方が白浜とユメちゃんの仲直りにピントがぴたっと合って、メリハリがついて読み易いと思います。正解です。そもそもそんな企みあったのかどうか知らんけど。

 

 

 

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シャイニングの双子のドールはもってる。映画は見たことありませんが・・・。

 

 

個人向け配送業(第6-9話)

あけてはいけない鞄を時間内に配送。

勤務時間2日 賃金500000円

ユメちゃん「今回随分アヤシゲじゃない?大丈夫?その箱の中、麻薬とか入ってないよね?」p.102

女「ステキな鞄ですね」p.108

白浜「何なんだよ・・・この鞄・・・」p.136

一番話はシンプル

鞄。

中を開けてはいけません。絶対に。

となったらまぁ開けたくなるよね。極限状況ギリギリでその心理と抗う話。

最後の最後思ったより大惨事になってて笑った。2022年多分北のある大国の大統領が、この鞄開けちゃったという噂を聞きました。

中盤は、ユメちゃんと白浜の故郷を通るということで過去に触れられていますが、どうやらどちらも訳アリでどうやらどちらも大変なご様子。一体何があったんだか。こんな裏バイトに手を染めなければならないくらいお金がないなんて。

ユメちゃん「あの鞄の中身なんて・・・違う世界の話よ。誰かにとって重要でも、私達にはそうじゃない。」p.151

あと、途中出てきた口紅の女と、国木田先生って同一人物ですかね?目元超絶似ている。耳の生え際で判断しようと思ったら国木田先生が髪型で見えなくて、わかんなかったんですよね。まぁもう、ちょっと確かめる術はなさそうですが・・・。

あと、4つのバイトのなかでこれだけ圧倒的に時給安く感じた。桁一つ足りないだろ。あと絶対本業豆腐屋の人が関わるべき仕事じゃないだろ。

 

 

 

治験(第10-12話)

ボランティア期間7日 礼金3000000円

子供の頃、見た夢でさ・・・夜中にトイレ行って、二階の自分の部屋に戻ろうとすんじゃん。

二階には自分の部屋と、空き部屋が一つしかないんだけど・・・奥に・・・見覚えの無いドアがある・・・?

中は想像もつかない位素晴らしいことが待っている気がする。けれど同時に恐ろしい、こことは違う世界に行ってしまう・・・よう・・・な・・・p.153 白浜の夢より

医者「第二十九回「Q治験」結果報告、お願いします」p,205

4つの仕事のなかで圧倒的のこの仕事が好きですね。

病院の無機質に蹲る不安感と不自由、対照的に無尽蔵に無限大広がる夢の自由と、そして最後の最後で明らかになる今回の実験の真相・・・。

最後の1ページはぞっとしましたね。「ありがとうございます。」本当に唖然とした。全然読めなかった。「ありがとうございます。」

確かに、食堂の席とか個室じゃないのに何で全員病室が違うのか、とか綿密に伏線貼られていたんですよ。「ありがとうございます。」でも僕達はその病院の雰囲気と、あとクロちゃんに完全に気をとら「ありがとうございます。」れていましたね。

扉を開いた後「ありがとうございます。」の、感想が書かれているのも良かった。「ありがとうございます。」鞄を開けた後の感想は書かれ「ありがとうございます。」ていなかったので・・・。本当は未知なるものを開ける、という点で実はアイデア被っているんですが、崎山さんのグッジョブリポート「ありがとうございます。」で全然違う話になったなぁ、という印象。

同じ夢、を「ありがとうございます。」題材にしたもので最近読んだものだと、清水玲子「秘密」の2巻。天地「ありがとうございます。」という若手女性研究員の夢、が出てくるんですけど、全く描き方が異なっていて「ありがとうぎいます。」そこも興味深かった「ありがとうございます。」です。いくつかの「ありがとうございます。」漫画で夢を描いた部分を「ありがとうございます。」比較「ありがとうございます。」するのも面白い「ありがとうございます。」かもし「ありがとうございます。」れない。

にしても「ありがとうございます。」・・・いやぁ、「ありがとうございます。」本当最後「ありがとうございます。」の1ページ「ありがとうございます。」にやら「ありがとうございます。」「ありがとうございます。」「ありがとうございます。」「ありがとうございます。」「ありがとうございます。」

 

 

 

「ありがとうございます。」

 

 

 

 

 

 

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あと、カバー裏がめちゃくちゃ楽しいことになってます。

裏バイトなだけに。

近年の漫画でも屈指の出来。

ギャグ漫画家がホラー描くとバチバチに怖いように、ホラー漫画家がギャグを描くとバチバチに面白いのはあれ何なんだろうね。あの現象の始祖としてでも、楳図かずおってやっぱすごいんだなって思う。

あとこの漫画で好きなのは、ですね。コピーもいいんですが、めくった時のおっさんが良い。なんでこんなに創意工夫凝らされているんだ・・・。

 

 

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いい表情だ。

 

 

以上である。

いやー、めちゃくちゃ面白いですね。大切なことなので3回言いました。

今まで読んでいなかったのが悔やまれる。

最近漫画熱がいきなり再燃したことがあってそういう作品が多いんだけれども、そのなかでもこの作品はもっと早く手に取っておけばよかった・・・・!!!のナンバー1。

3巻からは新刊で買おうと思う。

6-7冊出てますよね?夏までに絶対追いつきたいシリーズ。

 

 

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LINKS

文中で取り上げた「秘密」の2巻の感想。

これもこれでえぐくていいよね~。

 

tunabook03.hatenablog.com

 

同じく嗅覚に関する小説。前回の記事。

ちなみに僕は静岡県で一番花粉症が酷いのでここ2ヶ月くらい匂いを嗅いだ記憶がありません。助けて。

 

tunabook03.hatenablog.com