小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

朱雀門出『第五脳釘怪談』-超個人的竹書房怪談文庫フェス前半④!!呪いは虫歯。-

 

 

「あなたのお勧めの、竹書房怪談文庫は何ですか?」と訊かれたら、僕も間違いなく本作の名前を挙げるでしょう。

 

 

 

朱雀門出『第五脳釘怪談』(竹書房 2020年)の話をさせて下さい。

 

 



 

 

【概要】

伝説の実話怪談〈脳釘怪談〉のシリーズ最新刊が満を持して登場!

キャンプ中に突如体験した戦慄の出来事とその顛末「呼ばれる」、

恐ろしい夢を見てしまう禁忌の部屋では過去何が・・・「食人の間」

関が原古戦場で不気味な風袋のものたちに出遭う「欠けた人」

怖い話を綴る業なのか、怪談作家や家族の身に起きたりある恐怖譚「ある怪談作家の家」

無人の部屋で勝手に憑いたモニター、映し出された恐怖とは・・・「窒息オーディション」などファン待望の恐怖満載、60話を収録。

裏表紙より

 

【読むべき人】

竹書房怪談文庫のフェアはじまったけど何読んだらいいのか分かんないぴえんの人:僕も20冊全部読んだわけではないですが、本書は間違いなく上位に来る良書です。断言してもいい。まじ。

・夏だし怖い本でも読むか~の人:実話怪談本は何巻から読んでも大丈夫!第六第七もいいけどとりあえず現在脳釘シリーズで最も手に入りやすいのは本書です。なぜならキャンペーンをやっているから。また、キャンペーンをやっていないような規模の本屋には第六、第七もある可能性が低い為。

・我妻俊樹氏の怪談が好きな人:系統は違いますが両者共に不思議要素が絡んでいるので。

 

 

 

 

【感想】

知人「すざくもんいづる先生の、のうてい怪談、ってやつおもろいですよ(関西弁)」

実話怪談等が好きでどうやら占い等も嗜んでいるらしいTwitterの知り合いの方がおススメしてくださったのが本シリーズである。そういう知り合いは絶対リアルでは出会えないからね。大切にしたい。

1-2巻も出ているのだが入手がなかなか困難で、5-6巻しか本屋で入手できないとのことだったので、とりあえず5巻がいいんでは?となり、数日間粘って、2巻と5巻と6巻の在庫が出揃うのを見計らってブックオフオンラインで購入した次第である。1巻はさらにメルカリにへばりついて後日入手した。

結論やっぱうわあこの人怪談好きとは聞いてたけどやっぱ同胞が勧めるのはおもしろいわね!!といった具合である。そういう知り合いは絶対リアルでは出会えないからね。大切にしたいね。「ところでさ、実話怪談とか好き?オバケとか好き?」聞いたらカルト疑惑まっしぐらだからね。あれ?もしかしてまぐろどん統一されてる?みたいな。リアルの知り合いも大切にしたいね。

閑話休題

とにかく一通り読んでの感想は、6巻は新刊で買えばよかった!!!もうこれに尽きる。

2022年7月末日現在は7巻まで出ているのだけれども実際僕はこのシリーズの7巻で、人生で初めて竹書房怪談文庫を新品で買う体験を致しました。

そして今私は竹書房文庫が今これでもか!!ってくらい頑張っているフェアで新品でこの後も複数冊買おうと思っている所存でございます・・・要するに一つの人生のきっかけを与えてくれたシリーズなのでございます。

 

そしてやはりこの本を面白い、と思ったのは僕だけではないみたいで、2022年7月末から始まった竹書房怪談文庫の「怪談作家推薦!ガチで恐い最恐タイトル10選!」選ばれたのでございますわーーーーーい!!!!わかるーーー!!!僕もおススメの竹書房文庫は?と言われたらこれ挙げるーーーーー!!!!

そう、今までの何倍もの「第五脳釘怪談」が新刊書店に流通するこのタイミング・・・!!是非よい子のみんなには・・・よい子のみんなには・・・!!!本作、買ってもらいたい・・・!!!ということで、他にもいろいろ感想残してない実話怪談本が山ほどあるのだけれどもこのタイミングで本書のことを残しておきたいと思った次第。

その・・・まぁ僕はブックオフオンラインで買ってしまいましたが・・・でもブックオフも中高大そして現在ずっと僕の心のオアシスであって絶対なくなってほしくない日本のチェーン店ベスト3には入るからね・・・ブックオフも大切にしたいからね・・・近くにブックオフが無い今ブックオフオンラインで買うしかないんだね・・・ブックオフ・・・中高時代わざわざ遠回りしてまで寄ってたなぁ・・・大学時代に読書の幅を広げてくれたのも立川駅北にあるブックオフと多摩センターのブックオフだった・・・多摩センターの今はないけど・・・ブックオフオンライン・・・たいせつに、したい・・・。

 

 

 

 

以下簡単に印象に残った話の大まかなあらすじと感想を書いておく。ネタバレ注意。

てかこんなチラシの裏の落書き読まないでとっととお前らの近くの大型書店で平積みされている本書を!!このタイミングで買え!!買え!!!買いなさい!!!

 

 

「二 ノイズ」pp.13-16:

が、座っているだんっ生徒は大きな声で、ガーピー言っている。しかし、会話は枻率している感じだった。p.13

え・・・!?ええ・・・!?になる一篇。

ガーピー言っている生徒と言うのが意味わかんなすぎて凄く印象に残ったし、そいつが死ぬんじゃないんかい!!!という予想外の呆気ない展開で、切れ味鋭く、ひらりと恐怖心が花開く。

なんとなく、日日日ちーちゃんは悠久の向こうを思い出した。ああいう世界の裏側って学校とか身近なところにマジで存在するのかもな。まぁ読んだのも高校時代だし買ったのもブックオフでしたが・・・。

類似するような現象はないんですかね。気になるけど、気にならない。気にしない。気にしたら死んでしまいそうなので。僕が。

 

 

「四 送り先」pp.21-25:知人の電話に起こされる。飲み会帰り、車で家まで送ってほしいとの旨。行くとそこは・・・。

「お前の家は墓なん?」p.24

シチュエーション的には、実話怪談読んだ者ならもう色々浮かぶ感じではある。

・知人が途中で消えており、シートがぐっしょりパターン

・知人は既に死んでいてそこの墓に埋葬されており「ありがとう・・・」と言ってくれるパターン

・墓と思ったら、実際は崖で九死に一生を得るパターン

・そもそもそんな知人などいなかったパターン 

等々・・・。

どれも違う!!!!

シーツは濡れてないし、知人は死んでないし、崖もなかったし、実在している。

それでも、あの一瞬・・・一瞬に思わずゾッとしたのと、上記のようなことが起こらなかった・・・ことがまさしく人智を越えた現象であって、実話性を高めている感じがして、とても怖かった。絶対創作じゃ思いつかないって。

 

 

「五 呼ばれる」pp.26-29:卒業間近。みんなでキャンプに行ったよ。

普段は空をちゃんと眺めていなかっただけで、家のそばでもこうなのかもしれないけど、その場の夜空に見とれていた。p.26

ええ・・・になる話。現れるモノ自体もええ・・・なんだけれども、更にその後の怪異の後遺症にもええええ・・・・となりそれに対処市内体験者たちにもええええええ・・・・になる。

普通の実話怪談だったら、もうここは絶対お祓い展開。寺神社、今回の場合は教会も絡んできそうな案件なんだけれども、それほど生活に差し支えないからかそのまんまにしておく、というのがとても生々しい。し、実際僕もそのメンバーの中にいたらそうしていたと思う。

でもその「後遺症」が今も延々続いている・・・っていうのがね。呪いと言う程でもないが・・・ないからか、そのままにしておいてしまう。でも絶対どうにかした方がいいんだけどね。

今の僕の両奥歯(上)の虫歯に似てますね・・・。

 

 

「六 心の神」pp.30-35:昼過ぎまで寝ていた休日の訪問者は、チャイムを鳴らさずドアをノックする。

「私にはあなたの”心の神”が聞こえます」p.32

中盤まさかのバトル展開からの、終盤のまさかの解決方法!!6ページにもわたり展開を裏切り続ける・・・!!

「なん・・・だと・・・?」チャンスが何度もある実話怪談界のBLEACH!!!!アニメ化めでたいね!!!!

でもこの女、本当何なんでしょうね。実在しているのか生きて居るのか。

意外と普通の人なんじゃないかな。幽霊でもない。奇怪な存在でもな・・・コンコン!あれ・・・・?今ドアがノックされ以下略

 

 

「八 あゆいの男」pp.39-45:

この坂田くんは優しくて面白い子で、小山さんとは仲が良かった。ただ、残念なことに”めっちゃアホ”だった。小五なのに九九がわからない。七の段などは壊滅状態でありシチサンくらいから怪しかったそうだ。p.39

アホの坂田の話である。アホの坂田くん≠あゆいの男、なんだけれども彼のキャラクターが誌面越しにも「面白い子」で、とても印象に残っている。

後半はまさかの結末。実話怪談本では稀に聞く結末ではあるが、そこに「あゆいの男」のような人間もどきが絡んでいるケースは非常にレアなように思う。たいていが廃墟で置いてかれて・・・、みたいなパターンが多い中で、明らか「連れてかれて」というのは強い。

その強さとは裏腹に呆気なく現在その場所は・・・、というのも不思議な感じがしてああでもやっぱり、まぁそうだよなって思った。

 

 

「十 墓を指さす」pp.49-50:

墓石に裸の人が腰掛けているのを長男は必ず見る、というのだ。p.49

以前、つくね乱蔵氏の実話怪談の記事の副題にも書きましたが、「時代は全裸」。白ワンピに黒髪はもう擦られ過ぎてちょっと時代遅れです。令和は全裸。全裸がいっちばん怖い。

 

 

「十一 ギガ雛」pp.51-52:

船場家には不思議なひな人形が代々伝わっているのだという。お内裏様とお雛様が非常に大きい。幼児位の大きさがある。p.51

それくらい大きいお雛様イズシンプルに怖い。

けれど最後の一行が最高だった。

船場さんのお祖母さんの冗談だったのかもしれないしそうじゃないのかもしれない。その曖昧さが実話性せり上がって面白いのと、そこに「ギガ雛」というタイトルが組み合わさって絶妙にくすり、とくる。実話怪談本の幕間にちょうどいい、面白い一話。

 

 

「十二 奇祭 おさおさん」pp.53-54:

(言ったらあかんという言葉を尊重して、祭りの名前と内容は、着た時の不気味さを損なわない程度に少し変えて書いています。)p.54

ってことはこの話をした人は大丈夫なの!?え!?になる一話。

名前、内容ともに不気味なんだけれどもこの一行にクラクラしてくる。・・いや、こういう言葉で締めるのは一度は思いつく、と思う。実話怪談蒐集家ならば。でも一度使ったら、もう二度と同じ手法は使えないからか今まで避けられてきたこの技法を鮮やかに、中盤の2ページにも足らない実話怪談で使ってしまう潔さが良い。

ちなみにまとめサイトとか見るとそういう理解を越えたような奇祭って田舎ではまだまだやっているみたいなんですけど、どうなんですかね。地方都市にバリバリ育った僕には無縁の話なんですけれども・・・。

 

 

「十三 おそうしき」pp.55-57:徹夜で学校で研究している院生。夜、エナドリを買いに学内の自販機に向かうと・・・。

「葬式でふざけんな」p.56

こっわ!!!になった。葬式も何も関係ないようなところで葬式、と言う声を聞く。たまらなく怖い。思いあたりがないのにそういう不吉な言葉に、痺れたように動けなくなる。

いや。思い当たりがあっても突然そんな怒声が聞こえたら怖いか。

とキーボードで売っている現在でも不意に、そういう怒声が聞こえたらどうしよう、と思わずにはいられなくなる。

 

 

「十四 車を数える」pp.58-61:葬儀場で退屈している小学一年生は、外に出て車を眺めて時間を潰していたがそこでお姉さんと出会う。

そのお姉さんは千葉さんに駐車場の車を順に指さして、「何だいあるか数えてみたらいい。ちゃんと数えられないから」と言う。p.59

葬儀場に現れる謎のお姉さん(だけど優しげ)というキャラクターもなんか良いし、さらにはその行為自体が西洋のならわしと絡んでいるという行為なのもなんか良い。

あと、取材してそういう真相に辿り着く、アカデミックに実話怪談に取り組む作者の姿勢にも頭が下がる。

なんだろうな。

なんかそのお姉さんは、いる。いそうな気がする。けれども多分色んな葬儀場に現れるんじゃないかな。そこだけではない気がする。

 

 

「十五 誰かが乗っている」pp.62-64:

「でも、この前に読んだ中国の怪談で、飼っている老犬が夜な夜な人間の姿になって、飼っている馬に乗って遠くまで出かけているという話しがあったの。馬がげっそりと痩せてしまうので気付くのよね。似てない?」pp.62-65

「十四 車を数える」同様に様々な怪談を、学問として取り組んでいる作者のスタンス。凄い好きですね。蒐集する話自体も面白いのは無論、多分本書・脳釘シリーズが好きな人は、それらを蒐集する筆者の学者的姿勢も好きと言う人も多いんじゃないでしょうか。僕もそのタイプです。ということを確信させられる一話。

また、この話は猫チャーンが出てくるんですけれども、めちゃくちゃかわゆい。

 

 

「十六 臆病な小鬼」pp.66-67:彼女の部屋に泊っていると、小鬼を見つけた。

しかし本当に怖いのは小鬼ではなく・・・!?といった話。2ページと言う短さながらも鮮やかに軽やかにスパッとまとまっていて、非常に良質な掌編実話怪談だと思う。

序盤は小鬼の可愛さ。うちの実家の飼い犬も若い時はテレビ台に映る自分の姿にビビっていたっけ・・・。

からの、中盤におお!?となり、後半はいやぁ・・・となる後味。序破急、全部味わいが異なっている。

のと、「十一 ギガ雛」もとい、タイトルセンスが素晴らしい。多分僕だったらタイトルでネタバラシしちゃう。

 

 

「十七  巨人が黙って座っている」pp.68-71:

記憶にある、あの巨人に出遭ったことを話しても信じてもらえなかった。そもそエリアエリアにそんな変なものがでるという話は誰も聞いたことがなかった。また、未だにあんな大きな男の話は聞かない。p.71

タイトル通り、巨人が黙って座っている話である。でも巨人って意外とそんな聞かないし、黙って座っているって意味わかんないし、その目撃した後に起きた事象もさらに意味わかんなくて印象に残った。

ダイレクトメールの配達・・・ポスティングは、大学時代部活動の一環でよくやったけれども、凄く好き。知っていると思っていても一歩いつも違う道を歩けば、そこはもう知らない町。猫が横切り知らないおばさんが自転車で駆け抜けていく。初めて見るスーパーには沢山に人がにぎわっていて私の知らないスーパーで私の知らない誰かの生活が毎日営まれていることについて。そこに多少巨人が一人座っていてもまぁ、そういうものなのかもしれない。

また秋になったらポスティングのバイトはじめようかなぁ・・・。

 

 

「十八 ■■の怒り」pp.72-74:妖怪の「■■」という名前が入った土地の頭首である男性が、占い師のもとに来た。曰く、一族橙収めている者の短命である故、どうやったら長生きできるかという相談で・・・。

妖怪!?そんなことってある!?あるんだろうなぁ。

実話怪談界ではまぁまぁメジャーなジャンルであるが、その多くが微笑ましいものであったり時代が戦前戦後だったりするものが多い。今回は全然微笑ましくないし舞台は現代。

あとマンションとかこういう家でやってる占い師ってそれて経営が成り立っているのだから、結構な腕前だったりするんですよね。

その人が体験したっていうんだから・・・一層怖い。

 

 

「十九 五階の地下室」pp.76-79:鍵っこの少年のもとに訪れたのは。

屈まないと天井に顔が突くくらいに背の高い女と、子供ぐらいの身長をした小さな男の異様な二人組なのだ。p.77

子供が主人公。意味不明な展開が続く。カオスを越えるカオスが次々と起こる。怖い。現実じゃない。ありえない。夢だ。やっぱり現実じゃないと思っても想像以上の恐ろしいことが淡々と続いていく。

目が覚める。ああよかった夢だったんだ。

その後は特に何事もなく過ぎていくが、最後の最後にそれらは総て現実だったんだよニチャア・・・という顛末で終わる。

こういうの、僕は本当に弱い。後味が悪くなく、あっさりそのまま、ていうのが現実性があって厭だ。

我妻俊樹氏が蒐集する怪談にこの種類は多くてだから僕は我妻氏の怪談が好きなんだけれども、本作や「四 送り先」「十三 おそうしき」朱雀門氏の怪談にもこの類が多いので要するに朱雀門氏の怪談も、好きです。

新耳袋」シリーズほどあっさりしているのとはまたちょっと違うんだよな。こういうジャンルなんて言えばいいんだろ。きらら系?

 

 

一緒に暮らして2年くらいたつはずなのですが未だに見分けがつかない

 

「二十一 馬超さん」pp.83-85:吹奏楽部の演奏会に、馬の帽子をかぶったイケメンが客としてくるが・・・。

ただ、誰もその人が誰なのかは知らなかった。p.83

定期演奏会。僕も中学高校大学でオーケストラやっていたので分かるんですが、中規模のホールだと意外とお客さんの顔って見えるんですよ。

でもそこに、何かいても演奏はしなくてはならないし曲を止めることもできないしどうしようもない。要するに逃げ場はない。

・・・ステージの木製の床を照り付けるスポットライトの眩しさ。じりじりとうなじを照り付けて暑い。でも見てる。見てるよ。ほら。あんな凛々しい顔で。真剣に。なんであんな帽子かぶってるの。え。よく考えたら分かんない。怖い。うわじっと見てる。あ。もうすぐ出番だ・・・唇を舐め、マウスピースをそっとあてる。ひやりとする金属の冷たさと、また一筋、汗がうなじを伝っていく。

自身の個人的経験からあまりにも生々しく感じられた一篇。

 

 

「二十二 火の玉が飛び出す話」pp.86-88:

安土桃山時代の末期に成立したとされる会談奇談集『義残後覚』に、こんな面白い話がある。p.86

現代日本でもバチバチ起こっていますよという話である。

「十五 誰かが乗っている」でも書いたが、朱雀門氏は実話怪談を蒐集するにあたりアカデミック。けれど内容は難解ではなく、軽妙な語り口だからすらすら読めるし、分かりやすく書かれている。どれも興味深いものばかりである。

西洋美術について明るい文学者の中野京子ちゃんにそのスタンスは似ていると思う。専門家ではない・・・からこそ、面白く読めちゃう。朱雀門氏の専門知らんけど。

怪談自体、よりもそういう点において非常に興味深かった一篇。

 

 

「二十三 鶏妖」pp.89-90:五十年くらい前、男が鶏を捌いていると・・・。

面白いですね。これも民俗学的にほひがする一話。

ファミチキのあの手が汚れないように囲っている袋、あるじゃないですか。紙袋みたいな要領の、あれ。あそこに書いてほしい実話怪談ナンバーワンですね。値上げするならこれを書け!!値上げするならこれを書け!!売上爆上必至!!!

 

 

「二十六 箪笥から降りる人形の話」pp.96-97:

人形はギョッとした表情をしていた。その表情のまま、魂でもぬけたかのように動きを止め、人形はすとんと畳に落ちた。p.97

僕(ドールオーナー)「は?めちゃくちゃかわいいなおい。」

 

 

「二十八 ちょう、穴掘って」pp.101-102:

お祖父さん「子孫のためにお金を埋めておきたい」p.101

面白い。現代まで脈々と続いているということか。

今のところ母型の祖父からも父方の祖父からもそういったことは伺いませんねぇ・・・。

 

 

「二十九 食人の間」pp.103-105:その座敷で寝ると、ある夢を見る。

その夢がまぁ何ともリアルで禍々しくて怖い。

まぁ、タイトル通り人を食べる夢なんだけども。二回目はしっかりと料理されているって言うのが地味に厭でしたね。何らかの意思を感じるので。

あと、ALIPROJECT「人生美味礼賛」を思い出した。あとボカロの「悪食娘コンチータ」。中高時代にハマった曲は今でもサビからAメロBメロ克明に思い出せるのは、何なんだろうね。

「さあ。ご先祖様人間食ってた人がいるんじゃないの」p.105

頼む。その「ご先祖様」は女性であってくれ。可能なら美人であってくれ。

 

 

「三十 毒殺指南」pp.106-107:

「夢の中ですからね、殺人にはなりません」p.106

どっかの誰かが「他人の夢の話程面白くない話はない」と言いましたが、あれは嘘だ!!!

あと最後「今度はお前だ」とか「ばれたか」とか、まではいかなくても舌打ちくらいしてくれれば、怖くなかったのに。そんな・・・そんな風にしないでよ。

 

 

「三十一 修学旅行の夜」pp.108-111:

「お母さんの旧姓は?」

「三村」「中島」「山口」pp.109-110一部省略有

夢怪談なら「三十 毒殺指南」もとい色々読んだことがある。ネット怪談だと「猿夢」が有名か。

でも、寝言怪談は前代未聞。

寝言に答えると死ぬ、という言説もあるが、そう安直には人は死にませんねんな。

妙にSFチック、UFOチックなところもあって怖い一篇。

彼等はもともと、そういう存在だったのか。

それともその日、そういう存在になったのか。

 

 

「三十二 象さんみたいな子の青いマメ」pp.112-114:ある幼稚園で手段食中毒事件が起きた。それから逃れた子たちが言うには・・・。

タイトルど下ネタ。謎が多い一篇。似たような話も読んだことがない、意味がわからない。そいつが救ったということなのだろうか。それとも。姿も意味がわからなければ目的も意味がわからない。

可能であるならば、その豆を食べた子達の現在を知りたい。死んでいるのか生きているのか金持ちなのか貧しいのか共通点は何かないものか、それとも何もないのか。

 

 

「三十四 オンナの顔」pp.117-119:母の顔を楽しそうにケータイで撮影していると、一枚だけ奇妙な写真が撮れた。

そっちかい!!ぜってぇ父親の不貞が原因かと思っていたらそっちかい!!これは裏切られた気分ですわ。

そのオンナの顔が脳裏にはっきりと浮かんでくる・・・ような気がする1話。目付きの悪い細眉の免許写真に写った女を僕はイメージしました。その1枚だけ背景青。

 

 

待って。今見たら2巻ないんだけど。部屋の中にはあるはず・・・ま・・・まじかよ

 

 

「三十五 おじいさんとすれ違う」pp.120-123:

なぜあのお祖父さんを好ましく思ったり、見えない犬を気持ち悪く感じなかったのかと自分を訝しんだという。p.123

結構面白い一話。へえそういうのあるんだみたいな。

現れる怪異の容姿がなかなかファンキーなので、だいたいの蒐集家が目撃した地点でこの話は完結させると思うんですよ。

ところがどっこい今回は後日譚ががっつりついてくる。初めて聞くような話でこちらも興味深い。

前半は怪異のファンキー、後半は話の展開。それぞれ真新しさがあって新鮮なじじい実話怪談。

 

 

「三十六 ぬりかべ」pp.124-126:

「前に進めなくするものは全部ぬりかべちゃうんかいな」p.125

最後の一行が最悪です。その一行で終わるなよ、その一行で終わるなよ・・・本当に終わるんかよぉ!!て感じ。

あとまぁマーベル知らないけど、アベンジャーズあれを思い出しました。みんなでやってくる!!

 

 

「三十八 老火」pp.129-130:マンションの管理人が受けた電話。屋上で火を起こしている老人がいるという。

不思議な話。結局老人はいい奴だったのか悪い奴だったのか。悪い奴な気がする。にしても、え、なんでそこにそんなものを?いや、そもそも悪い奴という仮定が間違っている気がする。だって最終的には助かっている訳だし。にしても、え、なんでそこにそんなものを?なんでそこにそんなものを?

 

 

「三十九 エレベーターの乗客」pp.129-135:

だから、こんなにたくさんの人がエレベーターに乗っているのに住民がいないのはかなり違和感があった。p.132

マンションのエレベーターの話である。あるよね。マンションのエレベーターとかにモニター。ついつい見ちゃうのも分かるわぁ。そこでこんなの起きたらたまんないよ。

結局彼等は何だったのか。生きているのか死んでいるのかそもそも自殺は本当に起こったことだった?

リアリティーのある恐怖と、「三十八 老火」同様畳みかけてくる謎。

マンション怪談は、実話怪談まぁまぁ読んでると結構目にしてきたんですけれども、その数あるなかでもぶっちぎり一位。これを越えるマンション実話怪談ってもうない気がする。

 

 

「四十 お経を書いた服」pp.136-137:数いる参拝客の中に一人、お経を書いた服を着た人がいる。

うへえ、となる一話。

あとあれを思い出した。ネットで出回っている画像なんですけど、精神病蓮に入院している早杉さん、の画像。早杉さん自身まぁ目がイッちゃっていますが、まぁまぁなイケメンなんですよ。でも周りに結構物騒なものが映っているんですよ。多分あれニュース番組のフォトショだと思うんだけれども・・・。検索してみて。あれを思い出した。

 

 

「四十一 逆天冠のモノ」pp.138-141:林間学校のカレー作り中、3人の男子は抜け出して・・・。

なかなか味わい深い一話。まずこの話の主人公は朱雀門氏とタメ、1967年生まれ。今年・・・2022年で数え年で55歳である。その人が小学校の時の林間学校ってどんなんだったんだろう。今とは全然違うんだろうな、でもカレーづくりは1993年生まれの僕もやったな。飯盒炊爨で炊いた米はうまかった、覚えがある。・・・ああ、55と言うと丁度ちびまる子ちゃんさくらももこ氏の同世代くらいか。

後半、え、なんでそんなことが起きるんだろう。でも手を振っているお祖父さんは楽しそうだし何とも全てが和やかに感じられる。恐らく天候は晴天。

今もその能力は現存してるんですかね。してるんなら凄すぎない?

あと3人中2人が高熱を出し、1人が無事。というのは、僕の小学校時代のシチュー事件を思い出した。欠席した子が多くて、余ったシチューのおかわりメンバーを担任が募ると僕、男子①、男子②が手を上げた。3人は皿に並々に注がれたシチューにとりかかったが、②がリタイア。間食したのは男子①と僕のみ。しかし午後の授業、顔色真っ白の男子①はトイレに駆け込み嘔吐。結局生き残ったのは僕だけって言う・・・。「まぐろどんちゃん女子なのにすごい!!」照。まぁこれは小3の話で野外学習も幽霊もクソもない話ではあるのですが。なんかすっごい個人的にノスタルジーなところをくすぐられました。

ちなみにルー系で一番好きなのはハヤシライス、その次はバターチキンカレー。

 

 

「四十三 自己対局」pp.147-149:「四十二歳差の自分と将棋を指す」夢を見る。

面白い話ですね。だいたいこういうのは当たっていて、将来の自分が過去の自分と将棋を指す番になるところまでくるのがオチ(感動)と思っていたんですが、まぁ違ったね。

じゃあお前は誰やねんって言う。どういうことなんでしょうね。逆に興味あるわ。ある意味同一人物オチ、といったところか。

 

「四十四 アオカン」pp.150-151:山のなかで性交している若い男女を見かけた。

えええ!?という話。まじ!?まじであってくれよ!!!

よく読むと、「木に身体を預けているのは女性」p.151だから、後ろから、ってなわけでしっかり其処も辻褄合う。でもせっかくなら前からいけやとも思うけど、わかんないんだろうな。

 

 

「四十五 石塔」pp.152-157:

だいたい、僕は実話怪談の本の感想を書くときは、気になった話のページを折って一通り読む。まぁすぐ書けばいいんだろうけれども放置。そして書くときに改めて折ったところを読む。

実話怪談本は凄い好きなんだけれども一冊にたくさんの話が入っていて、また、好きだからついついハイスピードで読んでしまう。だからしばらくたつと話の内容を忘れがちで、それを思い出すために、また、忘れないためにこうやって、書いている。

だいたい読み返すとああこんな話あったあった!!そう、ここが刺さったから、ここが怖かったから、ここが気に入ったから!!と思い出すのだけれども、この話については特段怖いとも思わなかったし別に気に入った訳でもないのに、でもページが折られている。それが一番怖かった。

 

 

「四十六 欠けた人」pp.158-161:異動先近所の、関ヶ原に現れる人々。

その男には、右腕がなかった。p.159

怖い、よりかは気持ち悪い一話。正直、舞台が「関ヶ原」と訊いた地点であーはいはい落ち武者ね、と期待薄だったのだけれども、そこを裏切るキモ実話。

特にそれが田んぼにいるp.149景色があまりにもキモい。まだ道路の片隅とかに立ってこっちを睨んでくれればよかったんだけれども、田んぼて。いやいや田んぼて。

その後に続く話も気持ちが悪い。

正体が分からない。意図も分からない。

落ち武者だったら、まだよかったのに。

 

 

「五十五 角の生えたお姉さん」pp.188-190:

「大丈夫。まだまだ晩御飯の時間じゃないでしょ」p.189(脳内音声:種崎敦美 ※「魔法使いの嫁」主演のさらにちょっと低くしたちょっとウェッティな声で)

エッッッ・・・!!!!!!

 

 

「五十七 やめろよぉ」pp.195-198:駅のホームで友達とふざけ合っている。軽い力で蹴ると友達がバランスを崩して・・・。

「次、おまえ、押したろか」p.198

こわぁ!てなる話である。現実かと思ったら夢でした!パターンはまぁあるにはあるんだけれども、この話のように主催者がドロン!っと出てくるのはなかなかレアですね。いや、主催者、じゃなく救世主(メ・シ・ア)なのか・・・?

 

 

「五十八 ナンダローネー」pp.199-202:出席した国際シンポジウムである日突然時間が止まる。そして現れたのは・・・。

それは、関節が一つたりないような、脚の短い馬に乗った、西洋の貴族風の衣装を着けた男だった。p.200

ビジュアルが鮮烈。時間が止まって現れるのがそれって・・・ええ・・・。ファンタジー?この現実にファンタジーを期待してもええんか・・・!?小人で馬に乗っている、となるなんとなく、ポケモンのバトレックスを思い出す。

からの、後遺症もとてもユニーク。日本語が分からないから、変なイントネーションp.202になったんでしょうね。

あとフランス語と僕は睨んでる。

 

 

「六十 有機臭」p.211-219:シンナーのような、有機臭が鼻をつく。

なぜそちらを見たのか覚えていないが、網棚を見上げた。

そこには山盛りの男茎が載っていた。pp.216-217

祟りの話である。祟りの話は、もれなく、怖い。

本作もその例外に漏れない。特に上記の部分は意味がわからな過ぎて怖かった。そんなものを電車の網棚に盛るんじゃない。

こういう話を聞くと、ああスピリチュアルとかって多少なりともあるんだなぁ、と不思議な気持ちになると同時にちょっと前向きにもなる。

だから本書のメインディッシュの一つとなる本編を、最後に収録したのは英断。

あと「第七脳釘怪談」の「ヤミクラさん」もとい、この作者の長尺の実話は当たり率高い。当然短い実話怪談も非情に面白いんだけれども。

 

 

 

以上である。

で60篇収録に対して、気に入った・刺さった怪談が30を超えた。

50%越えることなんて、まぁない、まずない。

多分本気で僕の脳に釘がぶっ刺さっちゃったんだと思うよ。

あと比較的掌編が多いのも嬉しかった。長尺のも好きには好きなんですが、短い方がやっぱ切れ味いいので・・・。

 

第九第十とはいわず第五十第百とまで続いてほしいシリーズである。

 

 

 

・・・あと、4冊も一気に記事あげたので、フェス前半終了!!!!

後半は逆に20冊の中で気になって読んだ本の感想を書こうと思うよ!!!!でも気力湧くかな!?!?

あったらいいね、後半!!!

 

***

 

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今年の7月に出た最新刊の感想。

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超個人的竹書房フェス、他の書籍。

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