小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

平山夢明ほか『瞬殺怪談 罰』-超個人的竹書房怪談文庫フェス前半②!!あの瞬間、彼女は。この瞬間、私は。-

 

ううーん。悪くはないけど、七巻よりは薄味かなぁ。

 

平山夢明ほか『瞬殺怪談 罰』(竹書房 2022年)の話をさせて下さい。

 

 

 

 

【概要】

あっという間に読めて怖い!どこから読んでも極怖の超短怪談を詰め込んだ人気シリーズ第8弾。平山夢明をはじめ、黒木あるじ、我妻俊樹、黒史郎、つくね乱蔵、神薫、小田イ輔、そして『八王子怪談』でも勢いを増す川奈まり子が参戦。新たな才能が煌めく鷲羽大介に、都市伝説系の鈴木呂亜も久方ぶりに登場する。総勢10名が様々な「恐怖」をこれでもかとばかり、惜しみなく綴る。怖い話が大好きなジャンキーたちに送る怒涛の144話、罰を恐れずに読み進めよ!

裏表紙より

 

【読むべき人】

・実話怪談初心者

竹書房が抱える数いる実話怪談筆者の中で、好きな筆者を見つけたい人:ちなみに僕はいっちばんはじめに読んだ4巻・5巻で我妻俊樹氏が大好きになって単著の竹書房怪談文庫この前とうとう全部揃いました。

 

 

 

 

【感想】

悪くはないけど、7巻より薄味かなぁと言った印象。

同じくらい印象に残った話はあるんだけど・・・うーん。なんだろうね。なんだろう。

あと鈴木呂亜氏を復活させていたのがいただけなかった。実話怪談本って「どれだけ手止めずに一気読みさせるか」一つの面白さだともうんんだけど、いきなり実話怪談の中に世界規模の都市伝説を入れられると、どうしても指がとまるんですよ。だってさ、ページめくってたらいきなりマクベスとかマンデラとか出てくるんだよ。やってられないよ。いきなり舞台が現代日本から世界にしかも場合によっては違う時代にまで飛ぶからさぁ・・・。

ロアとか世界の都市伝説とか僕も嫌いじゃないんで、お願いだからどうか単著で「瞬殺ロア」として出してほしかった・・・かなぁ。それなら安心して買うので。読むので。別に文章自体や話題に不満がある訳じゃないんだけど・・・。

 

執筆陣は・・、あと、小田イ輔氏も復活しましたね。良作をまぁまぁ書いてくれる作家の印象。

あと七巻で瞬殺怪談にまさかのエロスをもたらした鷲羽エロス・パイオニア大介氏が続投しているのに対して、七巻で初登場してバンバカ傑作を出した夜馬裕氏がいないのが残念。

川奈まり子は名前はよく聞きますね。Twitterもやってるよね。なんかボブで着物着ているイメージがある。確かに今まで執筆陣に名前なかったかも。神薫氏に続く二人目の瞬殺怪談書き手です・・・かね?多分。

 

あと、本書はなんとまぁ、2022年、今年刊行というわけで・・・実話怪談界においてもすっかり「コロナ禍」が定着しましたね。かの大先生平山夢明先生も「テレ飲み」(「マイホーム」p.19)を踏まえた怪談を本書で発表しております。

一方で、マスク全盛期迎えてるのに口裂け女は復活しませんね。今こそ頑張ってほしいんだけど・・・。

 

そして、裏表紙の概要の文中に久々に「ジャンキー」って単語が出てきました。ジャンキー。竹書房が長年「怪談ジャンキー」とか言って推してますが、おもしろいくらい定着しないんだ。これが。竹書房、カアイソウ・・・。なので久々に聞けて嬉しかったです。

 

 

 

 

以下簡単に印象に残った話の感想などを書いていく。ネタバレ辞さない。

そのなかでも特に良かったのは「痕跡本」「怨霊物件」「のりかえ」「古民家の解体」「村一番の霊能者」「大きな白い犬」

特にof特に、ベストはまぼろしの来客」。

 

 

鷲羽大介「痕跡本」p.28:

ユリコさんは、古本屋のワゴンセールで、三冊二〇〇円の漫画本を買った。p.28

僕も基本本買う時古本なので・・・、こういうことが起こったらたまらないなぁと思いました。メルカリでも結構古本買うからね。すると本名とかあいてにもろ分かりじゃないですか。結構ありうる話だと思う。いや、本編同様店頭で偶然買った本に書かれてても怖いんだけど、ヨシ!

 

 

つくね乱蔵「快楽殺人」p.29:若い女性を森の中で殺す夢に悩まされている。

お・・・おお・・・(ドン引き)という一篇。

でもさぁ、僕達みたいな人間ってさぁ、ずっとさぁ怒られて怒られて怒られてばっかなわけじゃん?こっちが怒ることとかって基本ないわけじゃん?卑屈の塊になるとやっぱこういう方が生きてる!って感じするのかなぁ。僕もこの夢・・・みたいかも、ヨシ!

 

 

鷲羽大介「犬の躾」p.30:散歩させてたポメラニアンがオッサンに向かって吠えてる。

おっさんの忌々しさと絶妙な間、からの最後の一行のオチのスピード感が見事。

またポメラニアンっていういかにも吠える種類を指定しているのが憎いね。噛む力も強そうだしね。ダックスフントとか「チワワ」だったら違う。絶妙なチョイス、ヨシ!

 

 

黒史郎マヨイガ」pp.34-35:高校生が遠い親戚の家に向かったはいいけれど・・・。

マヨイガ・・・P.Aワークス・・・うっ・・・頭が・・・っ!・・・のちに知ったんですが、「迷い家」という言葉は実在するんですってね。

あと初めて通る住宅街って独特の不安感ありません?住宅街の一軒一軒に人々の暮らしがあるのかと思うと不思議で不思議で、そしてなぜかちょっと怖くなってたまらなく、帰りたくなる。自分の暮らしに。あの感覚を想起させる一篇、ヨシ!

 

 

川奈まり子「怨霊物件」pp.36-37:風俗落ちして亡くなった、田舎出身の女子短大生は怨霊となり・・・。

北海道江別市、札幌、北海道の寒村出身等、この話は妙に場所が具体的なんですよね。ぶっちゃけ瞬殺怪談って、瞬殺「実話」怪談ではないんだよなぁ・・・っていう話が多いんですが・・・まぁそれはページ数の都合もあるし・・・、これは2ページいっぱい凄く生々しくてリアルで厭。ヨシ!

あと北海道の寒村、とありますが僕の父がオホーツクに面したまじのそういう田舎の出身なんですよ。道路がやたら広くて店は基本小規模、空気はいいけれど、冬とか特に殺伐。確かに、ああいうところから札幌にいきなり行っちゃたら風俗堕ちても仕方ないよなぁ・・・とか思ったり。ちなみに僕の父の母校は無事廃校になりました、ヨシ!

 

 

神薫「かえる」pp.38-39:アマガエルを殺して遊んでたら・・・。

カエルが冬眠する冬にはできなくなる遊びゆえ、彼はできるうちにと、よりいっそう殺戮に励んでいた。p.38

「よりいっそう殺戮に励んでいた」。積極的に使いたい日本語です。特に殺戮という物騒な熟語の後に、励むっていう超絶ポジティブな動詞が来ているのがいいなぁと思いました、ヨシ!

 

 

あ!あれは!!!

 

 

平山夢明「塩」pp.48-49:ベテランの万引きGメンの先輩は、仕事前に目元に塩を塗る。

その理由がなんとも哀切極まるもので・・・切ないですね。

平山夢明先生は小説になると時々昭和のすれたような短編・中編書かれることがあるんですけど、それと同じ匂いがする一篇。人情とかね。哀しみ、とかね。

今まで瞬殺怪談でそういう話はほとんど見なかったので、新鮮、ヨシ!

 

 

鷲羽大介「ふるさと」p.52:

尿意で目を覚ますと深夜二時だった。p.52

深夜のトイレ瞬殺怪談といったら、あの平山夢明氏「出会す」という最高傑作が出ているので、意外と題材にされることは無いんですが・・・これはこれで良作ですね。尿意で目が覚めること自体はあまりないですが。多分僕も気づかないと思う、でも幼稚園の年中まで住んでいた社宅のトイレが現れたら泣いちゃうな、和式だし、ナメクジいたので。ヨシ!

 

 

平山夢明年賀メール」p.57:

『久しぶりだなあ。お前四月に死ぬかもしれないぞ、きをつけろよ』p.57

「塩」に対して、こちらはいつもの平山夢明氏のワードセンスで真っ向勝負の瞬殺怪談。ただ強いて言うならば、年賀メール」という文化自体がもう廃れに廃れて実感伴わないのがなぁ・・・LINEなら傑作!!って思えたんだけど・・・ヨシ!

 

 

鷲羽大介「はんぶんこ」p.58:

「いつもこうやって、勝と裕太にはんぶんこしてあげるの」p.58

草。そういう問題じゃねぇだろという一篇。

鷲羽・エロス・パイオニア・大介によるエロエロ瞬殺怪談第2弾。一冊に1-2篇あってもいいかも。不意なるエロスほど良いエロはないから。あと是非実話「官能」怪談みたいなのやってほしいけど、岩井志麻子氏がそこはもうやってるのかなぁ、彼女の実話怪談集読んだことないので何とも言えないですが、ヨシ!

 

 

小田イ輔「覚醒した日のこと」pp.66-67:

いうなれば彼女の死が、私にとってもの凄く自信になったんです、あ、やっぱりこれ合ってるんだって。p.67

えっげつねぇ~になった。えっげつねぇ~。友達の死が絶対的自信になるってもうそれやばいって。

あーでも、自身があることって他人と比べてこれは・・・っていうことが多いから僕達も大差ない。無意識に僕はみんなを殺してる。逆にみんなは僕を殺してる、はず。その地獄から外れるには白地になるしかない。彼女の場合は実際に殺しちゃっただけ。ヨシ!

 

 

黒木あるじ「ためらいがちな」pp.72-73:優柔不断な女性が丑の刻参りやってみた。

どうしようかなぁ・・・やめようかなぁ・・・の体験者の優柔不断ぶりが、ハッピーエンドかなぁ・・・バッドエンドかなぁ・・・とまんま読者の感覚に繋がっているのが面白い一篇。結末もちょっと笑ってしまった。ヨシ!

 

 

鷲羽大介「白い猫」p.74:猫かと思ったら白いビニール袋だったので蹴飛ばす。

猫かなぁ・・・ビニール袋かなぁ・・・となる点ではすぐ前に掲載されている「ためらいがちな」と似ているかもしれない。少ない文字数ながらもまさかの結末にちょっとぞっとした。大通りに転がっているビニール袋、に見えるモノ、とかももしかして・・・ヨシ!

 

 

黒史郎「ライトピンクの上履き」pp.76-77:DVに悩むママ友の家に行ったらピンクの上履きがあった。

家に上履き、ライトピンク、そして泥だらけ。辻褄あいそうであわない。繋がりそうで繋がらない。不吉なのは何となく分かる。そして被害者が無垢なる子供であることも・・・。

別に話自体は正直其処まで怖くはない。ただ、その上履きの存在感が圧倒的で、眩暈がするかのような一篇。

 

 

神薫「マーライオン」p.79:

山武さんの祖母の葬式に、見知らぬ老婆が紛れ込んでいた。p.79

こういうババアってなんかしなしなしおらしくしていて、後日葬式に出席していた親族をばたばた殺すってのが王道だろ!?ふざけんじゃねえよババア!!痛快な一篇ヨシ!

 

 

小田イ輔「形見の鏡」p.88:

「そんなお別れあるんですかね?すごく怖かったですよ、ほんとに」p.88

髪の毛が生えてくるのはまぁよくある話なんだけど、血しぶきまで出てくるのはサービス良いなぁ、と思った。をかし。よく「毛根までしっかりついていた」みたいなのは読みますが、抜いたら血しぶきが飛んだ、みたいなのはありそうでないんですよね。実際髪の毛抜いて血が出ることって滅多にないからだと思うんですけど。ヨシ!

 

 

神薫「屋敷霊」pp.94-95:ある日寝ててふと起きたら、豪勢な屋敷で寝ていたよ。

タイトルまんま。屋敷の霊の話である。

そういう霊もあるんだ~って思った。だとしたら今は現存しないお城の霊とかもありそうじゃない?知らんけどイギリスとかだったら家ごと幽霊とかよくありそうだよね、知らんけど。興味深い一篇、ヨシ!

 

 

黒木あるじ「のりかえ」p.101:

誰もいないはずの室内から”おえい”って聞こえるんだよ。人間の真似して”おかえり”を頑張ってみました、って感じの声。多分女だと思う。p.101

「おえい」が「おかえり」に聴こえるわけないでしょ~って思って、自分で口に出してみたんですが、確かにイントネーション似ているんですよね。すると妙にその声がリアリティ持って再現できるという・・・妙に幼いような・・・腹から声出しているような・・・、怪談朗読最恐決定戦みたいなことを竹書房は去年やっていたと思うんですが、是非「おえい」最恐決定戦もやってもらいたいです、ヨシ!

 

 

小田イ輔「古民家の解体」pp.104-105:古民家を解体する度に、女の子が泣く夢を見る。

予想は出来ましたが、クライマックスの描き方が秀逸でゾッとしましたね。

ホカホカと湯気をあげるのみ。p.105

ファミチキか?みたいなライトな日本語で書かれているのですが、生々しく想像出来ちゃうっていうこのギャップ。実際湯気でることはないと思うんだけど・・・どうなんだか。ホカホカ。

小田イ輔氏の集めた実話怪談の中で一番好きかもしれない。ヨシ!

 

 

鷲羽大介「村一番の霊能者」pp.108-109:家に不幸が連続して起きたから、村一番の霊能者を呼んでみた。一見普通の中年女性だったが・・・。

うーわ、うわうわうーわ、となる一篇。一昔前にカラオケ機器のUGAのCMで「うーがうが♪」みたいな音楽に乗せて会社名言う、みたいなのあったと思うんですが、まさしくあんな感じで「うーわうわうわうーわ」となる一篇。最悪。

接続詞もなしに、さらっと最後の一行で事の顛末を書いているのが素晴らしい、ヨシ!

 

 

我妻俊樹「近況」p.111:前の職場の上司とすれ違う。

まぁ、ぐっすりだったらいいんじゃないかなぁ・・・。

僕も最近ぐっすりできなくて、ヤクルト1000飲んだりするんですけどそれでも目が覚める時ある。いったいヤクルトいくつあればぐっすり?ヨシ!

 

 

鷲羽大介「復讐の叫び」p.112:嫌な感じがする道を避けて散歩した夜見た夢は。

夢がまんま事件の再現ではなく「復讐」展開になっているのが良いですね。

多分何度も何度も何度も男は苦しんでいるんだろうなと。逆に女の復讐に燃える無念たる熱い感情にもちょっと揺さぶられて、妙な後味。ぐっすりなんてほど遠い。いくら絶叫しても止まらない、死ねよ!死ね死ね!!!何度でも、死ね!!!!!死ねよ!!!!!!!!!ヨシ!

 

 

川奈まり子入鹿池(後日)」p.120:

六人で肝試しに訪れた入鹿池で幽霊と思わしき集団に追い回されたあげく、仲間のうちひとりが実はその場にいなかったことが判明したーーーp.120

の後日談なんだけれども、肝試しに行った側に起きるならいいんだけど、行かなかった側に災いがばったばったと起きていて、その規模のデカさたるや、理不尽さたるや。なんか言葉がみつかんねぇ・・・って感じの後味。ヨシ!

 

 

神薫「喜びの家」pp.126-127:

一軒家を包み込む顔の表情は穏やかでうっすらと微笑みを浮かべており、実に満足そうであるという。p.127

憎悪にまみれたような顔だったら、まだよかったのに。人智を越えた何かなんでしょうね。厭だ。その後については書かれていないけれども、家どころか日本全体をゆったりと包み込むような大きさになったらどうなってしまうんだろう。てか、もしかしてコロナ禍現在こそ包まれた結果ってことか?ヨシ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鷲羽大介「まぼろしの来客」pp.128-129:

あの瞬間、もしかすると私の方が霊みたいなもになっていたのかもしれないですね。p.129

結末が見事。ぷつっ・・・と途切れるかのようなあっけなさ。切なさが漂うのは何故。10年前からもしかして、君は。

「幻の来客」ではなく「まぼろしの」と平仮名にしているあたりが憎いと思った。本書の中で一番好きな一篇、ヨシ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

言う程美術部骸骨スケッチしているかとか、野暮。

 

 

 

 

 

 

 

川奈まり子「髑髏の顛末」pp.130-131:文化祭に出品するために、写真部の面々は撮影をすることにしたが・・・。

展開としては同じ氏の「入鹿池(後日)」に似ているかもしれない。軽い気持ちで行ったことが大規模な禍を引き起こす。

でも今回は心霊スポット肝試しでもなんでもなく写真部の撮影、というごく当たり前の些細な日常の延長線上にあるっていうのが忌々しいと思った、ヨシ!

 

 

鷲羽大介「モンキービジネス」p.134:

意味わかんねえ!!!平山夢明氏めざしてそれっぽくなんとなく書いてんじゃねぇぞ!!!ヨロシクナシ!!

 

 

神薫「少女追放」p.136:新築のデザイナーズマンションに少女の霊が出る。

神々しいタイトルとは裏腹に、しょーもない内容のギャップが最高です。そういやアルコ&ピースの平子も、おばけが怖い時はとんでもなくえろい言葉を口にすると言っていました。そんな彼の出身中学は小名浜(おなはま)第二中学校、略して以下略ヨシ!!

 

 

我妻俊樹「金髪」p.137:旅行先の台湾で事故に巻き込まれた。

出てくる少女が「金髪に染めている」なうい容貌の一方でもたらす災厄が昔ながらの、って感じで妙に印象に残っている。あとやっぱむやみやたらに外国語勉強するもんじゃねぇな。英語が苦手な僕を救済する一篇、ヨシ!

 

 

つくね乱蔵「肉塊」p.149:

ぶよぶよした肉の塊が這いずっている。異様なことに、和服を着ている。p.149

京極夏彦先生の短編「成人」を思い出した。あれもこんな感じのが日本家屋で出てきませんでしたっけ?

「くだん」を追うのもいいですが・・・ちょっとこっちも気になります。創作物、実話でこれほどまでに共通点があるということは何かしら絶対原作たる存在がいると思うんだよな。

「成人」を読んだのは京極夏彦先生の短編集で読んだんですけど、でも確か初収録されたのは「怪談実話系」とかじゃなかったっけ・・・ヨシ!

 

 

川奈まり子「事件霊」pp.160-161:

東京地方検察庁に派遣されたとき、明美さんは二〇台後半で、早くも警備員としてベテランの域に入っていた。p.160

場所、時間、あと体験者の経歴などがやたら細かく書かれていて、リアル感みっちりの怪談。

起きている事象は凄く地味で、印象にも残らないんですが・・・、あ、これは確実に川奈まり子氏が取材して入手した怪談を惜しみなくこの「瞬殺怪談」シリーズで披露してくれているんだな、ということが分かる。まぁ、川奈氏の怪談全部に同じこと言えるのですが・・・。

本書で初めて本格的にふれた蒐集家ですが、気になりますね。正直着物とボブで形だけ、女の階段蒐集家なのに美人でしょ?みたいななんちゃって蒐集家なのかな・・・と思っていましたが大変失礼致しました。

ごりっごりの実話怪談作家。

本当、執筆陣の中ではある種一番の「実話」怪談作家といっても差支えが無いです。

怪談界の「まりこ」といえば「小池真理子」なんですが、ちょっとこっちの「まりこ」も今年中に触れておきたい。積読死ぬほどあるんであれですが、単著買うかな。ヨシ!

 

 

神薫「大きな白い犬」pp.170-171:ある日、愛車の助手席に白い犬が乘っているねと知人から連絡が来て・・・?

狂気と悲劇とオバケが混ざり合ってカオスなる一作。ただそこには犬好きの彼女と、その彼女を心から愛していた青年がいて、その二人の真っ直ぐな気持ちがバラバラに散らばった要素をそっとまとめあげる。

一番怖いのは、車見ては連絡してくる知人なんだよな・・・気づいたのか着信拒否してたけど・・・意味が分かると「ヒトコワ」になる実話怪談、ヨシ!

 

 

黒木あるじ「罠」pp.174-175:

そんな予感を証明するがごとく、その日を境に不幸が続いている。p.174

これは実話怪談では定番の締めなんですよ。「不幸が続いている」という漠然とした定義にもかかわらずきちんと実話怪談が締まる。知ってる。ぶっちゃけどんな話でも最後にこういう一行おいとけばそれなり怖くなる。あと「死んだ」とか「狂ってしまった」とかね。

ただ今回その「不幸続いている」贔屓抜きにしても、これはちょっと怖かったですね。怪異自体も怖くないし実話感も薄いのに、まさかの角度から最後の一行が突き刺さって来たからそうきたか、となる。

幽霊に無駄に知恵ついてるところとか。いいよ~になりました、ヨシ!

 

 

黒木あるじ「実家の鯖」pp.192-193:ベランダが生臭い。見ると、鯖がまるまる一尾。

筆者も冒頭で言っているように、まぁ「奇談」ですね。

中盤まではふんふん、だったんだけど、最後自分のドッペルゲンガー(ミッドサマー風)が現れるのは気味が悪いなと思った。どういうことやねん。ヨシ!

 

 

つくね乱蔵「予知」p.209:

「俺、今から一か月後に刺されて死ぬみたい」p.209

通り魔に刺された、彼女に刺された、切腹した、だったら印象に残らない。

まさかそういう形で刺されて死ぬとは。いやはやという一篇。

腹膜炎ってよく聞くけど危ない病気なの?って思って調べたら・・・腸に穴があくらしいですね。こわっ。でもよく考えれば僕も新卒一年目の時我慢して我慢して我慢して盲腸に穴あけるところだったんだわ。他人事じゃねぇなヨシ!

 

 

黒木あるじ「予印」pp.210-211:「ちょっと珍しい苗字」p.210の印鑑を拾ったよ~。

最後の一行でうわぁ・・・どんびきーにょすになる一篇。印鑑から始まる実話怪談って斬新だなぁと思った。

では、ここで本編では■■と隠されている「ちょっと珍しい苗字」予想ベスト10を発表します。

■■■■・■■・■・■■・■■・■■■・■■■・■■・■■・■

結構真面目に10個考えたんですが、なんかやっぱ不謹慎かなーって思って全部隠しました、ヨシ!

 

 

黒史郎「彼ら」pp.214-215:

また、この歌をうたうと、いつでもどこにでも、”彼等”がやってきて、うたった子供を攫っていくという怪談的な噂が子供たちの間で囁かれていた。p.214

その「彼等」上陸!という話であるが、その様子がまぁなんとも不気味で・・・うわぁになる。こっわ。絶対歌わないわそんな歌、いや知らないけれども。

意外と、宇宙人とかSFが絡んだ話じゃないかなぁとも思ったり。ヨシ!

 

 

平山夢明「挨拶」pp.218-219:義父母の実家(集落)に行った。

そこでは「孕み憑き」という風習があった。

実話怪談界において、嫁ぎ先の実家(田舎)に行くとまぁ百発百中碌なことが無い。でもなんかだいたいは聞いたことあるようなものだったり、想像つくようなものだったり、最近は意表を突くようにエロが絡んだ風習モノをよく目にする、気がする。

だが今回蒐集したのは平山夢明氏。この「風習」というのがなんとも気味悪く、そしてあっけない最後まで見事

多分ココまで起承転結描くのに普通の実話怪談作家だったら4ページは必要だと思うんですけど、1ページ半に収まっているのはさすがだと思った。ヨシ!

 

 

ねこちゃんかな!?

 

 

集計(敬称略)

鷲羽大介:9篇

神薫:6篇

黒木あるじ:5篇

川奈まり子:4編

つくね乱蔵:3篇

黒史郎:3篇

平山夢明:3篇

小田イ輔:3篇

我妻俊樹:2篇

 

 

 

 

以上である。

意外と鷲羽氏の蒐集した怪談がぶっ刺さった一冊となった。七巻ではそんな存在感ぶっちゃけなかったんですけどね・・・。

あと川奈まり子氏。彼女の実話怪談力を知れた意味でも、本書を手にした意味はあった。2ページでもずっしり、真実性が重い。実話感をここまで重視して書いている蒐集家は、怪談新耳袋の2人と彼女を除いて、もういないのではないか。

夜馬裕氏に続いて、今年中に実話怪談本単著を絶対読もうと思う。

 

残念!おばけちゃんでした

 

***

 

LINKS

フェス第一弾の前巻。

多分あれだけ強く詰め寄られちゃったから、泣いちゃってるんだね。カアイソウ・・・。

tunabook03.hatenablog.com

 

昔書いた4-5巻の感想

tunabook03.hatenablog.com

tunabook03.hatenablog.com