小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

朱雀門出『第七脳釘怪談』-首吊り死体に群がるバナナフィッシュは、実在するか。-

 

 

 

脳内の雅紀さん(錦鯉)「竹書房怪談文庫を初めて新品でしかも発売日に、買った、よ!!!」

 

 

 

 

朱雀門出『第七脳釘怪談』(竹書房 2022年)の話をさせて下さい。

 



 

【概要】

怪異の断片から巻き込まれる悪意の数々ーーー朱雀門出の人気シリーズ第七弾!

幼い頃より鬼や例を見る男が、それ以外に見えるという奇妙なモノとは「車輪を回す」

居酒屋で耳鳴りt同時に見えたのは真っ黒な・・・「ブクブクブクブク」

子供の頃に遊んでいた神社には賽銭箱に座っているお爺さんがいた「死んだ神さま」

友達が死んだのは箱から飛び出た刃物で首を切ったからなのに・・・何が正しい記憶なのか「喉切り箱」

二階の部屋から見える学校のプール、ある冬の早朝の異変「プールにいっぱい浮いていた」など44篇を収録。

 

【読むべき人】

・不思議系怖い話が好きな人

・良質な実話怪談本の新刊が読みたい人

 

 

 

 

【感想】

めちゃくちゃ楽しみにしていました。第七脳釘怪談。発売が今月と知ってからもうウッキウキで、発売当日買いました。新静岡ジュンク堂で。

 

本シリーズ、まだ感想は書いていないのですが、竹書房(怪談)文庫から出版されているのはすべて読んでいるんですよ。1巻、2巻、5巻、6巻。特に1-2巻は入手が困難で、ブックオフオンラインを数日粘る必要があって大変でした。

本シリーズを知ったのは、おススメされたからです。Twitter上の知人で怪談に詳しい方がいて、その方にお勧めの作品・作家はいますか?と訊いたら挙がったのがこの作者のこの作品だったわけです。

それまで名前だけは聞いたことあったのですが、すざくもんいづる・・・いかにも中2病な名前格好いい名前に気後れして一切視界の外にあったのであります。

でもこの人、この人が勧めるなら面白いだろうと思って当時1、2、5、6一気に4冊購入したんだけれども・・・いやはや面白いです。

特に5巻、「第五脳釘怪談」が傑作。竹書房怪談文庫の中でも歴代屈指の一冊だと思います。

と思ったら、今年の夏の竹書房会談文庫のフェアで5巻推されるみたいですね。

これから書くのは今月出た7巻の感想なんだけれども、このシリーズ何巻から読めばいいですか?言われたらまあ5巻。絶対5巻。なんちゃって5巻。かーらーのー5巻。絶対第五脳釘怪談読んでから本書を読むんだぞ。まぁこの7巻も面白いけれども。でも5巻からだ。一気に引き込まれるぞ。おねえさんとの約束だ。

 

 

 

噂の五巻。竹書房怪談文庫の中でも屈指のレベルの高さ。

 

朱雀門氏の話は不思議系が多いんですけれども、ばっちり怖いのが最高なんですよね。普通どっちかに偏りがちなんですけど。

簡単に印象に残った話のあらすじ感想を残しておきます。

ベスト3は「一 チョキとグーでヤミクラさん」「三十三 そうよ」「三十七 テントが張られる」

 

 

「一 チョキとグーでヤミクラさん」pp.9-21:ぐーちょきぱーでぐーちょきぱーでなにつくろー?なにつくろー?

最初の怪談ということもあり、一番記憶に残っています。

冒頭にしては結構長いんですよ。だいたいの実話怪談は3-4ページの話が収録されていることが多い。入口として短い方が読み易いからだと思うんですけど・・・。

けれど本作は13ページもある。

長い。

どんな話だよ~・・・やれやれみたいなテンションで読んだら。油断しましたね。やられました。

まず誰もが一度はやったことがあるこの「ぐーちょきぱーで、ぐーちょきぱーで」から始まるっていうのがインパクト強い。「とおりゃんせ」「かごめかごめ」等に絡んだ怖い話は読んだことあるんですけど、この歌絡みでは初だったのでそこに意表を突かれた。

からのタイトルになっている「ヤミクラさん」の不気味さ。

名前からしてもう不気味度マックスなんですが、そのジェスチャーもすっごい不気味で、でも自由に動く右手と左手があれば安易にできるジェスチャーでその分凄く生々しく感じられてとにかく最悪でしたね。最悪。

途中DVDが出てくるんですけど・・・令和の「呪いのDVD」これでいいんじゃないですかね。下手なスプラッター映像より超絶怖いです。

 

 

「三 掘り当てた太歳のこと」pp.29-34:幼い頃、正月に、みんなで太歳を食べた記憶がある。

掘りだしたものを食べるまではまぁ分かるんですけど、その後半「太歳を食す」の考証からぞわぞわが止まらない。ぞわぞわ。

同時に、朱雀門氏の怪談はああそうだ・・・先程のヤミクラさん同様、怖い、と同時にこのぞわぞわがたまんないんだったわ・・・と思い直す。

また、所謂「昔の家の風習」的怪談なんだけれども、当事者の話してが心から怖がっていない、受け入れている。むしろ、無関係の聞き手(≒朱雀門氏≒我々)のが怖がっている、ていうのも、リアルで厭だった。

 

 

「十一 絶望→希望寺院」pp.62-68:怪談バラエティで紹介されていた怪しい建物(小学校?)に行ってきた。

すべてが教室なのだ。怪談者さんの本には、理科室、職員室などの表示があるとあっかれていたが、そんんあものはなく、全部教室である。p.65

施設がめちゃくちゃ不気味。元小学校、なのは分かるんだけれどもその全部が教室、っていうのがたまらなく怖かった。

また、その後に起きる事象もえ?は?なんで?え?はえ?ほ?・・・ぞわぞわ~

一昔前で言うと、怪談新耳袋の「山の牧場」案件でしょうね。

でも時は令和。2022年。向こうの技術も発達しているんでしょうね。向こうってどこだよ。

あとチラシが出てくる実話怪談は基本怖いね。どこからポスティングしてきてんねんと。どこで名簿入手してんねんと。考えたくない。

 

 

「十八 死んだらバナナが生えます」pp.92-95:首吊り死体を目撃した。バナナが生えてた、気がする。

興味深い話。中学生・首吊り死体・第一発見者という条件が重なって見える、のであればそれはもはやそういう幻覚に近いのでは?

いや、それとも特定の条件下でバナナが生える裏技とか?え?この世界って裏技あるの?いやでもバナナって。いやでもバナナは栄養が豊富だぞ。でも死んでたら意味ないよ。

 

 

「十九 コウモリごっこ」pp.96-99:深夜、飲んで帰りに道を歩いていると、出窓に足を引っかけてさかさまに下がっている第一村人発見。

伝染るというのが怖かった。

朱雀門氏は「十八 死んだらバナナが生えます」に宇宙人説を見出していたが、僕はこっちの話しの方が宇宙人絡んでいるんじゃないかなぁと思う。仲間をそうやって増やして増やして、ある日一斉にはばたくのではないか。母星を目指して夜の空を一斉に。知らない人々の顔に紛れてそこに知人の顔一つでもあれば僕は発狂してしまう自信がある。

 

 

「二十二 ねじれた天使の吹くラッパ」pp.106-109:

翅が生えた、真っ白い、手足がねじれた人が見えるのだ。そのねじれたてあしが、生理的に受け付けない。p.107

その天使がラッパを吹くと・・・という話である。

天使系の実話怪談は実は何回か読んだことがあるのだけれども、このケースは初だ。出現方法は小さいおじさんに近いか。あと、だいたいが、「天使」に目をつけられた人は倒れたりもしくは何も起こらなかったりする。けれど今回はそのどちらにも当てはまらないケースなので、やっぱりニュータイプ

ちなみに「ラッパ」。というのは音楽とは縁が薄い人が使う言葉である。吹奏楽部とかジャズとか多少音楽齧ってれば「トランペット」と言うはずである。差別云々ではなくて、本当にそれはラッパなのか、とも思う。トロンボーンかもしれない。ユーフォニアムかもしれない。ホルンかもしれない。角笛かもしれない。悪魔の角で作った笛なのかもしれない。なんて思うのは考えすぎ?

でもこれがトランペット・トロンボーン・サックスでジャズセッションやってたらちょっとかわいいな・・・。

 

 

 

 

「二十四 生まれ変わり」pp.114-116:幼い時に見殺しにしてしまった友達と似た子供を見かける。

生まれ変わり関連の実話怪談も読んだことあるんですが、多分、本当にあるんじゃないかと思うんですよね。スピリチュアルとされている世界にそろそろ科学のメスをいれてもいいんじゃないでしょうか。ましてやそれが死後という、全人類不可避絶叫フィールドであるなら、尚更。

 

 

「二十九 宵の街」pp.135-146:

話自体、よりかは

そもそも夢というものは、体験したことや見た映画や、本の内容を想像したようなそんな脳にたまった記憶を眠っている間に整理するのだけれど、そのときに意識に上がってくる断片的な記憶を無理につなげたものである、と現代医学では説明されている。p.139

ええ!!そうなんだって思った。めっちゃ勉強になった。

最近僕は面白い夢見てないですね。考えていることがダイレクトに頭に出てきます。なくしものとか、欲しいものとか。昔の先輩後輩とか。親族とか。芸能人とか。ブックオフとか。ブックオフじゃない中古屋とか。

デジャブ、とかも1-2回体験したことあるんだけど・・・忘れちゃったな。

とにかく、夢と言う脳のシステムを簡潔に分かりやすく説明していて勉強になった。話自体はまあまあ。

 

 

「三十一 プールの水は血」pp.150-152:幼い時に見た怪物と同じ顔をした職場の先輩は、死んだ。

顔はヒトであっても、ニンゲンではない。腐った蛇か魚の死体から皮をむいて露出させた肉のように、たるんで生白い皮膚をしていた。p.151

ぞわわ~となった。死を予知するにしてもだいぶ間隔あいているし。神々しいモノから予知されるならまだしもなんかちょっと気持ち悪いし。起きる現象も怖いし。

文中で筆者も述べているが、「三十 男の子だよ」に出てくるものと類似しているものが出てくる。じゃあもうそれは、そういうモノで実在しているのでは?と思う。現代妖怪というか、なんというか。

話も怖い、というのもあるが、この話自体今後忘れないようにしたい。他の蒐集家の実話怪談にいつ出てきてもいいように。まぁ存在に確信を得たからといって別にって感じなんですけれども。

 

 

「三十三 そうよ」pp.158-166:

「そうよ」p.160他

夢か・・・?と思ったらそう語り掛けてくれる存在の話。

多分ただ肯定してくれるような存在なんでしょうね。

1回目は「これは夢だよね」p.160、2回目はああ、これは夢なのだと気づいた。p.163の直後に、現れて、

「そうよ」p.160他

と口にしている。

3回目は「これは夢ではないのか」p.165、と「ないのか」否定の疑問形になっているため、「そうよ」夢ではなくなってしまったように思う。

あと、僕達に記憶がないだけで、こういう存在は案外身近に普通にいるのではないか。

例えば、遅刻した夢を見て起きたらまだ間に合う時間だった!

例えば、準備していたプレゼンで大失敗をしてしまう夢を見て起きたらその日の朝だった!

とかそういう経験ないだろうか。僕はある。

それは、もしかしてこういう存在が、

「そうよ」

絡んだ糸をほぐすように、現実と夢を過去と未来を入れ替えているのではないか。

と希望を位だっくような神々しい姿だったらよかったんだけれども・・・。

別のTwitterのFFしている方も、本書を読んで印象に残った一篇としてこの話を挙げていました。本書のメインディッシュの一つであることは間違いない。

怖いよりぞわわ・・・よりなんだこの感覚は。

「そうよ」

 

 

 

 

「三十七 テントが張られる」pp.181-185:しかも家の玄関前に。

さらにしかも、ってな具合で、結構最悪な一篇。

テントたてるだけ、っていうのも罪深いですよね。うめき声が聞こえたり貞子っぽいモノが出てきたりそれ以上のことが起きてくれれば、う、うわあああああ!!!になるのに、深夜にテントだけ、というとまあいいか、となってしまう。つけいれられているな、と思いながらも下手に手を出したら怖いし放置しちゃう。

あと、深夜基本玄関って見ない訳じゃないですか。

特に本編同様一戸建てだと。

寝ている間にたっているんじゃないか?と思っちゃう辺りもぞわぞわして怖い。

バーベキューしないだけ、いいのかなぁ・・・・。匂いの心配がないので。あと多分こういうのが焼く肉って多分人間の肉なので。

 

 

「四十 血の滲む努力」pp.138-140:女子小学生の幽霊?と出会ってか部屋で怪奇現象が起きるようになった。

まさかの対処法。血がにじむってそっちかいという話である。

何見てたんだろうなぁ。やっぱ二次元のロリものかなぁ。

こういう性的なモノに弱い幽霊話は好きですね。ちらほら実話怪談本読んでると出てくる。

でも一方で、ラブホでも幽霊話多いじゃないですか。

やっぱ生者同様、死者の間でもえっちいのが好き好きど変態野郎もいればそういうのマジ無理潔癖野郎もいるんでしょうね。

あと気になったのはランドセルの色。だいたいさ、赤じゃん。でも今回はオレンジなんですよ。今僕は28歳なんですけれども、学年で1人か2人いたかいないかくらいの割合でした。でも今は普通にいっぱいいるじゃないですか。

あ~ランドセルの色の多様化の波があっちにも来てるんだなぁとしみじみ思った。というか最近死んだ子の幽霊ってことなのかな。

 

 

「四十一 頭の腫れた人魚」pp.201-203:

ある意味世界で一番有名な、人魚の話ですね。

有名な割にはこれに関する話は今まで読んだことがなかったので興味深かった。

でも、これは、その、一番有名なあの人魚とは、別の個体の気がするな。多分数体いるんじゃないかな。何なら、各地で増え続けているんじゃないかな。

 

 

「四十二 すごい毛」pp.204-210:アパートに男が訪ねてくる。男に持っている袋には何かが入っている。共に、食す。

意味不明な話。そんなことあるわけがないじゃないか。あるわけがない。そもそもあったらおかしいよ。おかしい。意味がわかんない。怪談でもないでしょ。夢見てたんだよ、夢。

脳に影響湧耐えるような薬物を摂取してもいない。そもそもが大変しっかりとした人だ。それだけに、その出来事だけが、異様で、どちらかというち恥に近い感覚を持っている。p.210

けれどこの数行が、実話なんだと知らしめる。

そうだよな。こんな意味わかんない出来事に巡り合ったら、恥ずかしいよな。

ましてやきっちりとした人なら尚更。

実話怪談体験者心理の再発見、が非常に印象深い一篇だった。

 

 

 

 

以上である。

流石に傑作、「第五脳釘怪談」と比較するとパンチはまぁちょっと・・・弱いけれども、それを差し引いてもなかなか面白い実話怪談本だった。一年に一度といわず毎月出てほしい。

 

ちなみに、竹書房怪談文庫のフェアに参加している声優の井澤詩織さんも本書を読んでいる旨をツイートしてました。彼女の選ぶ10選にはいまいち頷きかねる部分もあるので・・・そこに本書がランクインするかどうかが個人的な見どころですね。まぁもう10冊選定されてるんで変わることは無いんですけども。

 

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