小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

平山夢明『瞬殺怪談 死地』-超個人的竹書房怪談文庫フェス前半①!!そのふりかけは、黒ゴマでもなく、海苔でもなく。-

 

 

暑いんで、今日からまぐろどん的竹書房怪談文庫フェスをやります。

といっても、今日から「実話怪談作家が選ぶ10選」「人気声優井澤詩織がガチで推す怪談」に入っていたもので、既読本の感想を連続してあげていくって感じです。フェスなのか。フェスです。28歳喪女の最後の夏のフェスなんてこんなもんです。

で、8月の終わりは、逆にその10選をみて買った本・積んでいたけど読んだ本の感想また連続してあげて終わろうと思います。

フェスその1みんな大好き「瞬殺怪談」7巻です。

 

***

 

2022年竹書房怪談文庫の、「人気声優井澤詩織がガチで推す怪談」に本書入ってましたね。

分かる。分かります。

僕も瞬殺怪談の中で結構上位に入るくらい好き。

なので、下書きでもう眠りに眠っていたこの記事を蔵出しです。

「瞬殺怪談」気になっている人は、まぁぶっちゃけ何巻からでもいけるので、この死地(しち、つまり七巻)から読んで、んな~~~~~をするのはどうでしょうか。

 

 

 

 

瞬殺怪談ワオ!!では免許が・・・。

 

 

 

 

平山夢明『瞬殺怪談 死地』(竹書房 2021年)の話をさせて下さい。

 

 

 

 

【概要】

すぐ読めて、怖い!1話2ページ以内の短編実話怪談を凝縮して詰め込んだ大人気シリーズ〈瞬殺怪談〉第7弾!ホラーの鬼才・平山夢明を筆頭に、我妻俊樹、黒木あるじ、黒史郎、神薫、田辺青蛙、つくね乱蔵ら名だたる書き手に加え、怪談DJの響洋平、せんだい文学塾会長の鷲羽大介、そして〈怪談最恐戦2020〉で怪談最恐位に輝いた夜馬裕が初参加。総勢10名が154話の恐怖をすべて書き下ろす!ノータイムで訪れる、ぶっ通しの旋律の果てに広がる荒涼とした死地を体感せよ!

裏表紙より

 

【読むべき人】

てのひら怪談など掌編怪談好きな人

・短い実話怪談好きな人

 

 

 

 

【感想】

今回も最高でしたね。最高です。

 

執筆陣もちょっと顔ぶれが今回違いますね。田辺青蛙氏、鷲羽大介氏、響洋平氏、夜馬裕氏が今のところ、僕の中で初登場かな。その代わり、よく名前を聞く伊計翼氏がいない。あと小田イ輔氏も。

 

あと表紙、すっごい力んででいいですね。

四巻五巻六巻と、どこか脱力系の顔が並ぶ中で、すっごい気合入ってていいと思う。

絶対クラスで委員長やってるタイプ。

あと絶対便秘だと思う。

 

 

「ちょっと男子!!!掃除まじめにやってよ!!!先生に言いつけるよ!!!!」

 

以下、印象に残った話を書いていく。数が多いので、早めに・・・。

特に好きなのは「ふりかけご飯」「うるさい」「電話女」「万能感」「「切」」「共通点」「親友が見る夢」「予金」「小さな鳥居」

 

 

夜馬裕「ノック音」p.13:

考えればこのマンションに、仲良しなど一人もいない。p.13

いっちばん初めの怪談を初登場の書き手が担うとは。いやはや。

怪異自体もまあまあなんだけれども、この一行が切なくて妙に印象に残った。

考えればこのマンションに、仲良しなど一人もいない。

声に出して読みたい日本語。

考えればこの地方都市に、仲良しなど一人もいない。

考えればこのインターネットに、仲良しなど一人もいない。

考えればこの現実に、仲良しなど一人もいない。

考えればこの人生に、仲良しなど一人もいない。

・・・ヨシ!

 

 

黒木あるじ「いまも」p.14:老人曰く、

「若い頃山で狐に化かされたことがある。」p.14

見事に瞬殺で落ちててこれぞ瞬殺怪談といった出来具合。素晴らしいです。

今までの黒木あるじ氏の集めた瞬殺怪談の中で一番好きかもしれない、ヨシ!

 

 

田辺青蛙「まるやけ」pp.20-21言葉の発達が遅い幼児が発した言葉。

「ボクは、まるやけになって、しぬ」p.20

まさかまさかのダジャレオチか~い!!と思って初読の時はけらけら笑ったが、今改めて読むと・・・本当に?感がぬぐえない。だじゃれですめばいいのだけれど。まるやけにならなければいいのだけれど。

多分読み手のテンションによって後味が変わる怪談だと思う。

要するに今はあかんってことだねヨシ!

 

 

夜馬裕「ふりかけご飯」p.25:

ある日悪戯心が働いて、台所にたくさん落ちてる死んだコバエを、ふりかけだよ、と言って、お義母さんの白飯の上に、パラパラかけてやったんです。p25

それを美味そうに食べる義母、の地点でもう結構瞬殺なんだけれども、それを凌ぐ現象が起きていてうわぁ・・・になった。

語り口調で終わるのかなと思ったらその現象が、瞬殺で「こっち」に来る、そのスピードが見事な一篇。

僕もこのおばさんからその話、きいてみたいなぁ・・・ヨシ!

 

 

我妻俊樹「うるさい」p.39三姉妹で三階建ての一軒家を借りていたが、上の階の音がうるさい。

騒音問題実話怪談である。

だいたいこういうのって、その騒音の原因側に、恐ろしいものがいるパターンが多いじゃないですか。

例えば鼠かハクビシンだろうと思っていた音が、実際天井裏覗くと祠があった、とか。

最上階だけど音が聞こえる、とか。

音出す側に問題があることが多いと思うんですよね。

だからその逆を突かれると、びっくりしちゃうよね。

何度も語り尽くされている騒音会談にまだこんなに新鮮な恐怖驚愕があったのか、と。本書で一番好きかもしれない。ヨシ!

 

 

黒木あるじ「きまり」p.47:バイト先の遊園地では奇妙な決まりごとがあった。着ぐるみを戻す時は、頭と体を4メートル以上離しておくこと・・・。

それを破った際の現象、までは予想がついた。最後の一行でさらにその上を行く現象であることが分かってぞっとした。こんなんたまったもんじゃない。まだ子供の笑い声とか、女のすすり泣き声とかだったら分かるけどさぁ・・・ヨシ!

 

 

神薫「電話女」pp.50-51:心霊スポットに行くと、電話が鳴り、慌てて出ると妹が事故ったというが・・・。

シンプルに滅茶苦茶怖い実話怪談です。怖い。

2頁いっぱいに畳みかけてくるように恐ろしいことがどんどん起きるんですよね。最後の最後で、タイトルの意味が解ってゾッとした。

今までの神薫氏の集めた怪談の中ではこれが圧倒的ですね。絶対間違いない。まさしくそのスポットは死地だったんだろうね。ヨシ!

 

 

つくね乱蔵「小さきもの」pp,52-53:電車内。なんとなく見ていた若者のサマーニット帽が・・・。

小さいおじさん系実話怪談である。ただ、そこで出てくるおじさんがまさしく「見える子ちゃん」のおじさんまんまでほっこりした。気持ち悪いと可愛いの間のぎりぎりを攻めるあのキャラクターはなかなか良かったよね。造形が一体一体違うのも良かった。ぬいぐるみ出してくれないかな。ぎりぎり気持ち悪いので買いませんが。

アンソロジー買わなきゃ。呪みちる先生が描いているので。ヨシ!

 

 

夜馬裕「カレンダーに丸」p.59:

「おい、美佐江。お茶が冷えたから、淹れ直してくれ」p.59

中盤からえ!?ええ?!になる実話怪談。そうくる!?いやはや、そうくる!?

素直に成仏させてたまるものか。ナチュラルに静かに日常的に家族による悪意が絡んでいるところが良い、ヨシ!

 

 

我妻俊樹「コーヒー」pp.62-63:友達からの電話。

「今から行くけど、なんか買ってきてほしいものある?」p.62

それで来た存在が・・・結構なかなか。あとそれを「コーヒー」と言い張る発想はなかったわ。確かに目は醒めそうだけれども。

でも夜更かしあけの朝日の中、ただきらきらと埃が大気中を舞うような・・・雰囲気含めて好き、ヨシ!

 

 

響洋平「壁から」p.169:

ーーーあれからずっと、消えないんです。p.169

所謂腕つかまれてその後、という話である。実話怪談界だと9割9分痣である。赤かったり黒かったり色は様々だかまぁ断言してもいいよ。9割9分痣だよ。

でも毎回実話怪談の書き手はそこを丁寧に丁寧に描くのである。それで恐怖心をぞわぞわせようってわけ。。

だが、この話はそこを一切書いていない。

想像力が掻き立てられる。

本当に・・・痣?

王道になりがちなところをスパッと抜くことで、恐怖を増幅させる、凄いテクニカルな一篇、ヨシ!

 

 

黒史郎「川辺の親子」pp.72-73:毎朝、登校班に入らず小学生の女の子は、カーリーヘアの女性の隣に座っている。

途中まではまぁ分かるよ。怪異が起きる余地があるとしたらまぁその女性自体がよろしくない存在だろうなって言うのは分かる。

でも最後の一行にちょっとぞっときちゃった。え、日中ずっと待ってたってコト・・・?何の為に・・・?暗いなか待たれてたら絶対嫌だし怖いわぁ・・・なんか死にはしないけど絶対よくないことが起こりそう。不穏な結末、ヨシ!

 

 

黒木あるじ「されど」p.77:

「祭りは産土神に贄を見逃してもらうための神事なのだ。止めれば大変なことになる」p.77

コロナ禍を反映した一篇。確かに祭りとかどんどん中止になっているけれど、その代わりとかって神社とか寺でやっているのだろうか。

今年ばかりは仕方ない、という風潮が主流の中、そこに風穴をあける。ヨシ!

 

 

田辺青蛙「牛女」pp.80-81:

生まれつきお化けじゃなくって、人間やったのにお化けになってしまうのってどんな気持ちなんでしょうね。p.81

歴史ある霊?的存在の話である。妖怪、といってもいいかもしれない。

最後の一行がなんともいえない情感たっぷり・・・なところなんだけれども、この話がこれまた兵庫の話なんですよね。

兵庫といったら神戸、淡路島、くだんじゃないですか。

起こった場所の縁みたいなものも感じられて・・・な一篇、ヨシ!

 

 

つくね乱蔵「万能感」pp.90-91:根暗な男いきなり明るくイメチェンした。山歩いていた時に石に座ってから気持ちが全部変わったというが・・・。

うわぁ・・・になる一篇。躁鬱極まれりって感じの一篇。

中盤のバッサリ切られたかのような展開も怖いし、それが起こったであろう所以が明らかになるんだけれどもそこでも更にうわぁ・・・になる。

僕も元気になりたい。自分に自信がつきたい。まことに「気持ちの良い男」p.90よろしく「気持ちの良い女」になりたいところではあるが、ちょっと代償が大きすぎる・・・やっぱり山は良くないね・・・怖いからね・・・おうちが一番・・・ヨシ!

 

気付けばここ1年くらいでこんなにも・・・。

 

黒史郎「お前は行くな」p.97:

「すげぇ気持ち悪い奴だった。お前は川に行くなよ。あいつがいるぞ」p.97

所謂河童系の実話怪談である。だいたい河童って鑑賞して終わりで、微笑ましい存在でしたねちゃんちゃんで終わると思うんだけど・・・この河童凶悪過ぎる。

もしや「すげぇ気持ち悪い奴」p.97というからそれは、河童を真似た何かだったのではないか。

河童モノと油断して読んでいたら瞬殺で不意を突かれた。ヨシ!

 

 

夜馬裕「鬼ごっこ」pp.98-99:

それ以来、学業でも、恋愛でも、仕事でも、欲しいものが手に入ったことが無い。

昭二さんは延々と、何かを追いかけ続ける感覚に囚われているそうだ。p.99

最後の二行が怖い。

でも僕もよく考えれば、学業でも、恋愛でも、仕事でも欲しいものがあまり手に入った記憶はない。第一志望だった国立大学は落ちたし、ひっどい片想いをした末での失恋やら何やらで28歳童貞(メス)であるし、新卒で就職した会社をやめてから3年以上同じ会社にいたことがないし今もフリーターですっくない賃金と貯金を崩してて預金残高の数字に怯えながら日々毎日細々と暮らしている。頑張っても全部手に入らなかった。

強いて言うならばこのブログだ。日々50アクセスを超えるブログになるなんて思わなかった。大変ありがたい。

だから僕はこうやって、日々逃げるために文字の羅列を深夜から明け方にかけて打ち続けるのである。誰か助けてくれ。ヨシ!

 

 

鷲羽大介「ふたりがかり」pp.102-103:

バツイチのヒトミさんと、妻を交通事故で亡くしたミチオさんは、知り合ってすぐに惹かれ合った。p.102

すんごいえっろい実話怪談。なにこれ。えっろ。え、めっちゃくちゃえんろいんだけどどういうことなのめちゃくちゃえろい。くっそえろい。え。え。こんなんずるいずるすぎる僕もなんだふたりがかりがいい。めっちゃえろい。とにかくクソえろい。実話怪談でこんなエロスがあることあるんだってくらいえろいっていうかもう実話エロスだよえっろ、ええ、ええっろ。にも拘わらず実話「怪談」、どこか品のある雰囲気もいいんだけれども・・・やっぱえっろいわ。めっちゃ抜ける。ヨシ!!!

 

 

黒史郎「「切」」pp.112-113:

その地名は従弟の名前の後に「切」の字が入っている。p.113

地名にはよく気を付けよう、と思った。え、こわ。

ちなみに「僕の本名の下の名前+切」で検索しけどそんな地名はないようです。良かった。あとこれ従弟の母親、叔母の気持ちを考えると計り知れないな・・・地名のこと知ったらもうこれ自殺もんだろ・・・ヨシ!

 

 

我妻俊樹「工事」pp.118-119:留守番をしていると、ある日作業服を着たおじさんがやってきて・・・。

渡されたチラシの意味不明さと、おじさんのまさかの進化オジモンにあっけにとられる一篇。でも小学校の時、というあやふやにな記憶に包まれているからか実話として成立しちゃうんだな、これが。

そしてこの話も「コーヒー」同様、悪意、よりかは不思議に満ち満ちている我妻先生特有の静寂が行き渡った雰囲気がとても良い。好き。ヨシ!

 

 

つくね乱蔵「木乃伊」pp.122-123:蔵を漁っていたら「木乃伊」と書かれた袋から粉が出てきて・・・。

木乃伊。ミイラを漢字表記である。飲むと病に効くという。

その実証結果、としてちょっと興味深かった。癌を患っている母親にも飲ませたいが、「その日以降、眠るのを恐れるようになった」p.123、睡眠をとること自体が恐ろしいまま生きる、っていうのはどういう感覚なんだろうか。ヨシ!

 

 

黒木あるじ「やかん」pp.130-131:

こういう演出はいらないです。テレワークを使って10分で考えた怪談、みたいな内容。これだけ圧倒的にワーストだったな。ヨロシクナシ!

 

 

我妻俊樹「罪悪感」p.135:

ただそんな記憶があるわけでもないのに、彼女はヒキガエルを殺したのは自分のような気がしてならないそうである。p.135

「コーヒー」「工事」が白我妻、だとしたらこちらは黒我妻。

千で繋がりそうで繋がらない事象と、起きる不穏な現象。読んでいて不安になる。

声の主はカエルってこと?いやそれはない気がする。そもそも罪悪感を感じるのは何で?

僕も夜道を歩くことが多い。週6で歩いてる。

そこに、十字で腹が引き裂かれたヒキガエルの死体がいつあっても、おかしくないな、と思う。ヨシ!

 

 

神薫「蛍光グリーンの蛇」pp.136-137:学校帰り友達と山で遊んでいると、栄光グリーンの蛇を発見し、友達はそれを、掴み・・・。

「電話女」に続いて神薫氏本気の実話怪談第二幕といったところでしょうか。2ページいっぱい畳みかけるように怪奇現象が起こる。

ネタバレすると、

①蛍光グリーンの蛇登場:蛍光グリーンの毛虫は見たことある。

②触った友達の変化:ここがグロテスクで怖い。漫画的。

③そもそも友達は一緒に遊んでいなかった疑惑:あるある。じゃああの子は一体?手鳴るんだろと思ったら。

④翌日学校でその友達が・・・といった具合。

で最後に不穏な一行で締めるもんだから・・・もぉう、になる。もぉう。

でも個人的な好みで言えば「電話女」のが好きかな、文章では分かりやすく見えるモノより見えないものを感じ取りたい派なので。グロテスクなものは漫画には勝てないところが媒体の特質上あるとも思うので。ヨシ!

 

 

つくね乱蔵「目撃者多数」p.138:同僚たちとハイキングに行くと、一人が松茸を撮ったと言うが・・・。

ええそれ本当にマツタケか?山の何かのアレではないのか・・・?と思ったけどどうなんだろう。

最後ピクミンよろしく、何かがその同僚の後をついていくのですが、その姿がシンプルながらもなかなか不気味。ヨシ!!

 

 

響洋平「晩酌相手」pp.142-243:

「とてもおちつくし、心地よいですよ。その管を見ていると、全身を何かに包み込まれているような気持ちになるんです、たまに耳を当てると何か聞こえるし、楽しいですよ」p.143

離婚して実家に帰って来た女の話である。初読の時は、「晩酌相手が怪異とかワロタぁwww」とか思っていたが、今改めて読むと「絶対この後よくない事が起きるパターンやんけ・・・」と思った。自殺しそう。

恐らくこういう怪異って、人間の孤独につけ入るんだと思う。日々積もりに積もった寂しさ、心の隙間、そういうところを狙って姿を現して、そして認識されることで「sん在」し、相手をぐっと飲み込むのだ・・・。

自分も結構孤独になりがちな身(28歳 フリーター 地方都市在住 メス)なので、ちょっと身につまされる部分があった、ヨシ!

 

 

夜馬裕「事故のお礼」p.146:よそ見運転で相手にケガさせ一生車椅子が確定したのに、お礼を言われた。

うーん・・・・うーん?となる一篇。どうだろう。一生車いすかそれとも一生自分が轢いた女に憑かれるか。どっちがいい?と言われたら・・・うーん・・・うーん?まぁそりゃ車いすの方かな・・・自分がスポーツ選手とか青山大学の駅伝部のエースとかではない限り・・・ヨシ!

 

 

黒史郎「小道具」pp.156-157:家にある数あるイベント道具のなかに、人毛で作ったカツラがある。

だいたいこういうのって、ゴミに捨てた後でも追ってくるイメージがあるんですけど、この無は違うんですよね。普通に捨てられて終わりな訳です。そこにリアルを感じられた。

まさしくこれこそ「実話」怪談・・・と思う。ヨシ!

 

 

つくね乱蔵「共通点」p.158:実話怪談を聞き出そうと思った3人からドタキャンを食らう。3人とも同じ場所&現象の話をしたかったようだが・・・。

その後、3人に同じくして起こったことが、あっさり書かれている割に恐ろしい。結末、物騒が過ぎる。

前半「なんだよ~3人たまたま用事が入っただけだろ~」かrなお後半ギャップがあって怖いなと思ったヨシ!

 

 

響洋平「美容室にて」p.160:

入り口のドアが開く音がした。p.160

場所が美容院なので「美容院にて」となってますが、美容院以外でもいつ起きてもおかしくない実話怪談。現実か幻か分からない、そもそもその姿は何だ、3、と思う。気を抜くな。特に実家では。全人類の全父親にも起こりうる話だと思うので。ヨシ!

 

 

つくね乱蔵「何がいるのか」pp.166-167:病院で迷惑をかける女性が、ある日警備員である体験者の人生を言い当てて・・・。総合病院の警備員を辞職した理由。

占い師だったんか!?え!?僕も見てもらいたい!!と思ってからのこの結末は確かに気まずい。辞職せざるを得ないわ。

でも言葉の後・・・気になりますね。ご先祖とか守護霊とかそういうのだったら、多分この女性を■さないと思うんですよね。てことは、何か良からぬ存在だと思う訳ですよ。多分ご先祖とか守護霊とかそういうのの、フリをしている・・・ヨシ!

 

 

夜馬裕「親友が見る夢」pp.172-173:金融関係の仕事・趣味は登山・活力あふれる古くからの親友は、夢の話をする時だけ様子がおかしくなる。

「実話怪談」の、「怪談」要素が多くを占める一篇。怖い。

その夢、もそうなんだけれどもその夢から連想される恐ろしい真実・・・。

僕もまぁ間違いなく・・・そうだと思うよ。

一番好き、とか怖い、とかはともかく、一番記憶には残った一篇。ヨシ!

 

 

黒史郎「ヤとの友情」p.183:

きっと兄貴分に殴られ過ぎたんだな、と思った。p.183

妙にノスタルジーを掻き立てられる一遍。切ないというか。哀しいというか。

ヤとは893のことで、ああ二人は本当に互いを大切に想うガチのズットモだったんだなぁ・・・としみじみ思ったり。なんか、いいなぁ・・・・ヨシ!

 

 

黒史郎「今に至る」pp.184-185:

ーーという話をうかがった。p.185

自分の不思議な体験を話すと鼻血が出る、二度あることは三度あると言うからこれで話すのは三回目・・・という話である。その現象についても本作ではバッチリ描かれているのが、良い。逃げてないな、と思う。

上記の抜粋部分は最後の一行である。黒史郎氏はやはり最後の一行の締めが巧いなぁ、と思う。確かにこの話は直接聞いた、よりもさらに聞いた、要するに第三者を挟んで間接的に聞いた方が妙にリアリティがあって怖い。そしてその話を今僕が読んで・・・今に至る。ヨシ!

 

 

黒木あるじ「予金」p.188:亡き祖母が開設した銀行口座には、2030円が入っていた。

怖いですね。でも僕だったらじゃんじゃん預けちゃうと思う。うーん。2100円にしたいから、あと70円くらい?でもそういうのって可能なのかな、1円単位で預金額を動かすのって。多分クレカの引き落としとか公共料金じゃないと一桁まで動かないと思うんだけど・・・意図的には難しくない?だから結局2030円に落ち着いちゃう気がするんだよね、ヨシ!

 

 

神薫「写真嫌い」pp.192-193:死んだ者の写真が嫌いだという友達を使って、卒業アルバムを使って実験をする。

これ他人事みたく自分の経験話してそうだけれども、一種の呪殺では?と思う。

その写真で死者を当てるという能力自体よりも、それを使って人を■していること、さらには体験者にその自覚が恐らくないであろうこと、の方が怖い。

あと、この実話怪談はいかにも「女子」という感じがする。女子。体験者もその友達も、更には被害者も全員女子だろうと何となく思う。女書き手ならではの実話怪談だとも思う、ヨシ!

 

 

夜馬裕「目を剥く男」pp.204-205:

しかし、聞けば聞くほど、どう考えてもそれは、篤さんが昔から知っている、友人の弟にしか思えない。pp.204-205

親しく知っている筈の人物をまるで他人事のように話す、という事象が怖いなと思った。ましてやその男がこの表紙よろしく目を剥いている・・・っていうのが。ありありとその表情が顔が浮かんでくる。まんまるにまんまるに極限まで眼は見開いている。

ただオチが、前述した同蒐集家の「親友が見た夢」と被っているのが残念。ページ数も展開も似ている。別の「瞬殺怪談」の巻に収録してほしかった。その頃には多分忘れているので。

「親友が見る夢」・「目を剥く男」、あなたはどっち派?どっちも嫌でSHOW・・・ヨシ!

 

 

黒木あるじ「一芸」pp.206-207:

あ、そういえば小学校の時、クラスに不思議な女の子が置いたんですけど。

眼力だけで風船を割るんです。p.206

うわぁ・・・って思った。その友達の家に行って・・・といった具合の話である。その女の子も可愛そうだし、そのまぁ・・・風船側もかわいそうだし・・・何と言うか何つうか。

そういえば、昔千里眼で有名になった女性も結局自殺で亡くなったのではなかったっけ?

眼に力を宿すには何か捧げる必要があるのかもしれない。

千里眼とか念力とかそういう本読んでみたいなーと思った。後絶対多分昭和の話。ヨシヨシ!

 

 

夜馬裕「小さな鳥居」pp.214-215:失職中、様子がおかしい祖父の様子を見てこいと言われる。すると彼の家には、小さな鳥居のようなものがあり・・・。

最後の惨たらしい光景が脳裏にこびりついて離れない一篇。

うわぁ、いろんな人のところに回って来たんだろうなぁその最後だったんだろうなぁ間違いなく地獄の業火に苦しんで亡くなられたんだろうなぁ・・・と物凄く後味が悪い。

老後、鳥居が渡されるようなことがあっても絶対に受け取らないようにしようと思った。ヨシ!

 

これはフェスのわきに置いてあった目録。ぼのぼのが可愛いね。

 

集計(敬称略)

夜馬裕:8篇

つくね乱蔵:6篇

黒史郎:6篇

黒木あるじ:6篇

我妻俊樹:4篇

神薫:3篇

響洋平:3篇

田辺青蛙:2篇

鷲羽大介:1篇

あ・・・あれ・・・?平山夢明せんせ・・・?

 

死地、ってよく思いついたよね。

以上である。

初登場ながらも「〈怪談最恐戦2020〉で怪談最恐位」という鳴り物入りで登場した分、やはり夜馬裕氏の怪談は比較的上質でそして怖いものが多かった。

「親友が見る夢」「小さな鳥居」等わかりやすく怖いものから、いっちばんはじめの「ノック音」ささやかに怖いものまで、ふり幅が広いなと思う。あと文章も巧い。

他の初登場の二人には大変申し訳ないが、夜馬裕氏初登場の巻!といっても過言ではないかも・・・。無論3人とも今後の活躍に、期待。

 

 

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LINKS

瞬殺怪談の他の記事。

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