小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

平山夢明ほか『瞬殺怪談 鬼幽』-ちなみにまぐろどんハウスはワンルームのユニットバスなので心配ございません。-

 

 

みんな大好き瞬怪談最新刊イェア!!!

 

 

ヒィハァ!!!!!!!

 

 

 

 

 

平山夢明ほか『瞬殺怪談 鬼幽』(竹書房 2022年)の話をさせて下さい。

 

 

 

 

【概要】

眠れぬ暑い夜、移動の時や待ち時間ーーーそんな日常の隙間に読尾目る短い実話怪談を集めた人気シリーズ第9弾。ルポ会談の名手・吉田悠軌と新鋭・蛙坂須美が初参加。

いつも身近にいる人がけがをするのはなぜ「いらない才能」小田イ輔)、

肝試し先で起きたのは・・・「罠」黒史郎)、

取り壊しになる小学校に大人になった同級生が集まるが・・・「時効なし」神薫)、

シロアリ駆除の業者が床下を調べたら・・・「したにしたに」黒木あるじ)、

再会した友人の顔が・・・「予兆」我妻俊樹)ほか、

鷲羽大介、つくね乱蔵、平山夢明による書き下ろし149編を収録。

裏表紙より

 

【読むべき人】

・夏に手軽に怪談を読みたい人

・怪談本を読みたいけど怪談が苦手な人(つべこべ言ってる間に怖い目に遭うのでおススメです)

 

 

 

 

【感想】

まさかまさかの最新刊である。うれぴー。

と言うのもこのシリーズ、過去のを見る限り年1で出ているんですよ。で、2022年は既に8巻が出ているから9巻は来年だろうなぁと思ったらまさかの今月発売。うれぴー。

7月の朱雀門出「第七脳釘怪談」に引き続きそのまま、8月、本書を発売日に新品で買いました。

やべぇな。

思えば、実話怪談本を読もう!と思ったのは去年の夏。瞬殺怪談4,5巻から入り、まぁ夏だけにしようと思いながらももともとのおばけ好き・オカルト好きが祟ってずるずる竹書房怪談文庫買っては読んで買っては読んで早一年。とうとう発売日に新品に買うまでに立派に成長してしまったよ。

もともと実話怪談本は大好きだったんですけど、ほら、買っちゃうといつか捨てる時呪われそうじゃないですか。だからずっと買わなかったんですけど、なんなんですかね。28歳になってから全然なんか気になんなくなってきて。ホラー映画とかも絶対無理!だったんだけれども、「ミッドサマー」皮切りにバリバリ見たいし見れるし。これが大人の女ってやつなんでしょうか。

 

あとアマゾンで知ったんですが、10月か9月に我らが我妻俊樹大先生の実話怪談本が数年ぶりに出るんだってよ!!!めっちゃアツいまじでアツい!!!!発売日にジュンク堂に駆け込むのは無論もうね、もうその場で読んで売り場の前に立ってキャンペーンガールをしたい。スーパーの試食のお姉さんで培ったスキルを全ツッパしたい。輸入食材半版点で培ったPOP力全ツッパしたい。というかもう金払うから書かせてくれ!!5万円くらいまでなら竹書房に送金する!!最近よく分からん短歌・創作短編ばっか書いていたのでもう、実話怪談本シリーズくらいでしか書かないのかなぁ・・・って思っていた。我妻先生の独特な感性は実話という事実ベースだからこそキラリと独特な輝きを放つというのに・・・。竹書房怪談文庫、ありがとう・・・ありがとう・・・・!!!好き。ちょー好き。めっちゃ期待してる。

 

あと、最近じゃあ竹書房が出すアイドル雑誌「トップエールネオ」あれも推しの大園玲さんを最近2回取り扱ってくださってるから無論読んでいる訳で・・・あと守屋麗奈ことれなぁの写真集竹書房から出ますね!!欅・けやき・櫻おってきた身としては竹書房は初体験だったのでドキドキですがまぁ意外としっかり広告番宣ばちばちにやってくれてるっていうね!!!見習え白夜書房!!!TSUTAYA版の表紙が最高だったのでTSUTAYAで予約した。

あと僕的ナンバーワンロリ漫画、柚木涼太「お姉さんは女子小学生に興味があります」竹書房からだし・・・。

最近竹書房とめっちゃ・・・「密です♡」て感じ。

れなぁの写真集、タイトル表紙共に最高なのでめっちゃくちゃ頼むで・・・!!!

文字の配置がおしゃれ。8巻からお?デザイン性もたせてきたな???とは思ってたよ。

 

そして年2という例外なる短いスパンにもかかわらず今回も気になる話いっぱいあったので簡単に各話感想を書いておく。なるべく本筋に関わるネタバレは避けているが、そこらへん気にせず書いていくので注意。

特に怖かったのは「机上の奈落」「薔薇のアーチ」「赤ちゃんを飼う」「ハイハイヨロシク~」「地獄絵」「ジャベリンの男」「一周忌」「金縛りの理由」「自宅の風呂にて」「神仏は大切に」「老人会」

ベスト3を決めるなら・・・「机上の奈落」「一周忌」「自宅の風呂にて」

 

 

 

小田イ輔「いらない才能」pp.14-15:

K氏は、同級生などによく怪我をさせる子供だった。p.14

裏表紙のあらすじにも書かれている表題作の一つですね。

終盤まではあーはいはいって感じなんだけれども、最後の一文はちょっとぞっとしたね。絶対地獄いきやん。何度も言ってますがこういう地獄系怪談が一番クる。

のを、2篇目にためらいなく持ってきちゃう潔さも良い。

 

 

平山夢明「アシさん」pp.24-25:有名マンガ作家のアシスタント時代、連続徹夜が当たり前だった。その中でも一人飄々としている先輩がいて・・・。

「おまえ干支は?」p.24

怖い、というよりかは非常に面白い・興味深い一篇。干支、特に外国の干支が絡む話。ていうかそもそも日本以外にも干支ある国があるんだ、っていうそこに驚き。で、その外国の干支が日本の現代社会にぬぅるりと絡むんだからなかなか面白い。

いいですね。外国人の方がどんどん増えつつある中で、いろんな種類の怪異が僕達の生活に絡んでいくんでしょうか。キリスト教の「悪魔」という概念、ピラミッド、UFO、あと東南アジアの独特の信仰・・・。なんかワクワクしてくる。ムーと実話怪談の世界は、50年後100年後には密接に絡まってもはや一体となっているのかもしれない。

今のうちに色んな映画見て予習しておいた方がいいかなぁ・・・。「へレディタリー」「オーメンとか。エクソシストとか。あー、あと、あれ「女神の継承」あれは絶対見に行く。

 

先輩「お前干支は?」

まぐろどん「酉年です・・・」

先輩「ファミチキでも食っとけ」

まぐろどん「ふぁい・・・」

 

 

 

鷲羽大介「机上の奈落」p.28:印鑑を朱肉につけようとしたら・・・。

素晴らしい一篇。これこそ瞬殺怪談って感じ。

前半の日常生活に近いぬるめの怪異現象からの、後半のバッサリ切るえっぐい展開の落差がいい。

 

 

吉田悠軌「ソフビ人形」pp.32-33:

「その家、少し前にお母さんが心を壊しちゃてね。泣いていやがる息子を道連れにして、無理やり自殺しちゃったんですよ」p.33

胸がきゅっとなる一篇。切ない。悲しい。

こういう話は昔からよく耳にするけれども・・・彼等の当時の気持ちを思うと胸が苦しい。ほら、子供時代って親≒唯一神だから・・・。

何故、彼等は子供を連れて行くんでしょうね。心理学的関心もちょっと傾く一篇。春日武彦先生オナシャス。

あとソフビはぼかぁ全然興味ないし一生手を出すこともないと思ってたんですが、LDD、入手して分かったんですが素材がソフビなんですよね。どうりで髪の毛うまくとかせない訳だよ。

 

 

蛙坂須美「薔薇のアーチ」p.35:

すると一軒の家の前に、手の込んだ薔薇のアーチがかけられているのを見かけた。p.35

これが井戸だったり廃車だったり鏡台だったり、所謂「ひゅ~どろどろ」直結アイテムだったらこの一篇、僕は何とも思わなかったでしょう。

薔薇のアーチ。

怪異とはほとんど無関係のメルヘンの塊が、そこにあるというだけでなんか色んな感情がまざりにまざって胸がざわつく。怖い切ない怖い寂しい彼女は一体何を思って。

 

 

神薫「赤ちゃんを飼う」pp.36-37:エアコンのなかにいたものは・・・。

読むまでエアコンのあの隙間にいたら厭なモノ第一位は圧倒的Gだったんですけれども、これを読んでから考えを改めました。第一位は、赤ちゃんです。

・・・思わず部屋のエアコンを見る。

暗闇には虫の気配も人の気配も感じられない。

 

 

 

 

つくね乱蔵「つまずく部屋」pp.38-39:

痛えっ p.39

「ITEE]、この音を絶妙な3文字に落とし込む技量と、怪異現象を凌ぐヒトコワオチ、つくね氏かな?と思ったら、やっぱつくね氏だったでござるの巻。

 

 

我妻俊樹「テレビ塔」p.40:

「折れた首、折れた首、くちなわの寿命のようにつながる」p.40

ぬるぬると読める日本語にぽっかりと開く怪異の穴、何とも言えない後味、あーこれは平山教祖か我妻氏どっちかな?と思ったら我妻先生だったでござるの巻。

平山夢明教祖に並んだグロテスクを描写できる人は、他にもいると思う。綾辻行人先生とか。漫画になるけど「闇金ウシジマくん」の真鍋昌平先生とか。

でも、平山夢明に並んだ虚無を描ける人を、僕は我妻俊樹氏以外に知らない。

硬質な虚無。純文学の締めった虚無とはまた違う、あの、心に、正方形の、穴を、あけられた、ような・・・。

 

 

つくね乱蔵「うるさかった話」p.41:

「うるさい」p.41

多分めっちゃくちゃうるさかったんだと思う。そりゃそうなるわよ。

ちなこの前まぐろどんハウスの隣の部屋でセッが行われてて、うるせえし、まじの虚無だった。100夢明くらい。

 

 

蛙坂須美「鯛地蔵」pp.44-45:

白檀のようだった。p.44

鷲羽大介氏の「机上の奈落」と並んで、前半と後半の落差が楽しい一篇。

また、白檀(びゃくだん)とか、「閉口」の正しい意味を伴った使い方とか、日本語の勉強にもなるので、中学生の国語の教科書にぬるっと収録して度肝を抜かせたい一篇。国語の教科書、まぁ塾講師やってたんで4-5年前までは携わっていたんですけれども、春は井上ひさし「握手」瀬尾まいこ「花曇りの向こう」、秋は魯迅「故郷」ヘッセ「少年の日の思い出」インパクト残る短編が多いのに夏、なんか存在感薄いんですよね。なのであえての怪談を収録することで生徒たちの心にトラウマを植え付ける。そして将来の有望たる実話怪談作家を何人も育成することで誇るべき日本文学の一つとしてかつてJホラー映画がそうだったように世界を席巻させて「うるさい」p.41

 

 

黒木あるじ「いきさき」p.47:

どう思う?p.47

2行に満たない瞬殺怪談。幼児の可愛らしさ・愛らしさと、後味の悪さ・えぐさ。少ない文字数で落差をぎゅいんと急角度で付けていて良作。

どう思う?って聞かれても・・・そういうのは弱いって、何度も言ってるじゃあないですかぁ・・・。

 

 

神薫「結婚の挨拶」pp.48-49:

ちょっと出来過ぎかなぁ・・・嘘クサいというかなんというか。

神氏は傑作の数だけ駄作も多い、稀有なる蒐集家だと思います。

はよあらゆるアンソロジーに書いてきた「当たり」だけ集めた傑作選単著出して。

 

 

つくね乱蔵「永遠の恋人」p.50:

そんな嫉妬深い所も大好きだそうだ。p.50

いい話や。こういうブラックジョーク的話も多く収録されるのが「瞬殺怪談」シリーズの特徴の一つなんだけれども、そのなかでも分かりやすく面白い、ブラックジョーク。ジャパニーズジョーク。HAHAHA。

 

 

吉田悠軌「ハイハイヨロシク~」pp.54-55:

父親が獣になった。p.54

お稲荷さん関係の話。

やっぱり神社って敬意持って参拝した方がいいねんなぁ、と思う一篇。

お稲荷さん、といえば4年くらい前、人と会う約束をしてたんだけどどうしても会いたくなくて、でも約束しちゃったからまぁ無理矢理行って、でも早くついちゃったから近くの神社行って、ついでにその近くにあったお稲荷さんに「今日が楽しい一日なりますように」と願掛けしようと心に決めながら賽銭箱に10円玉投げたら、入らなかったんですよね。

賽銭が入らないというのも初体験だったし、その日はやっぱり途中で気持ちがふさがって全然楽しくなかったし、その人と対面で会ったのもその日が最後ですね・・・。めっちゃくちゃ世話になった先輩なんだけれども・・・。本当世話になった先輩なんですけれども・・・でも・・・なんか会いたくないんですよね・・・。

 

 

蛙坂須美「地獄絵」pp.58-59:高校時代の友人のYが、描いたものというのが・・・。

ええ・・・になる一篇。うわぁ・・・になる一篇。

描かれている対象だけでなく、描いた本人も恐ろしい顛末を辿っているのが、なんともいえない余韻を残す。ドン引きというか・・・うわぁ・・・になる。

令和版「地獄変」といったところか。

地獄絵といったら、「てのひら怪談」のどれかの巻の最後に収録されている、女性が体液振り絞って絵を描く掌編もあるのですが、あれも傑作。作者もタイトルも収録されている巻がどの巻かも覚えていないのですが・・・。

 

 

黒史郎「ごはん」p.61:

「おかえり、ご飯いるー?」p.61

これ問いかけてくる側が・・・という話はよく読んできたのですが、その反対側が・・・っていうのは結構珍しいんじゃないでしょうか。

 

 

鷲羽大介「ジャベリンの男」p.64:

やり投げの選手が走ってきている。屈強な白人の男だった。p.64

怪異の多国籍化も楽しみだという話をしたのですが、まさしくそれ!な一篇。

白人のやり投げ選手が走って来るとかもうそれだけで怖いし今まで聞いたことないし結末陰惨だし。

キャラクター小説と言う言葉がありますが、本編はまさしくキャラクター実話怪談。

 

 

小田イ輔「ライト小僧とその友達」p.66:

「ピカーっって、ものすごく光っているんですよ、その子の顔、それだけは覚えてるんです」p.66

職場からの帰り道(夕暮れ前)、団地、そしてライト小僧・・・SF的存在。3つが緻密に組み合わさった見事な一篇。同時に・・・いつこういう存在に遭遇するか分からない。読者の現実に肉薄する団地と言う舞台設定が趣深い。僕の通勤路にもあります、団地。多分其処が「公園」だったらこんなに怖くなかった。

 

 

つくね乱蔵「過保護」p.68:過保護の父が死んだ後、常に真横に浮かぶようになり・・・。

やっぱ過保護な親にロクなのはいないなぁと思ってしまう一篇。

あーでも、28年間かれぴっぴなし童貞(メス)の僕にはやっぱりこれくらい過保護な存在あったほうが丁度いいのか!?逆に!?人生充実!?・・・いやいやふざけるなよ。僕もまだあきらめてない・・・です・・・。

ちなみに僕の父親は放任主義です。死んだら即成仏輪廻転生しちゃうと思うわ。

 

 

黒木あるじ「雛記」pp.73-75:ある母親の日記。

ううん・・・微妙。ひな人形って怖い、じゃないですか。そこに安易に付け込んだ3ページって感じ。自分の本ならまだしも瞬殺って程怖くもないしなぁ。

「日本で一番売れているハーフの小5の女の子の人形」とか、「惑星よりも大きいという飛んでも設定を持つメルヘンなキャラクター」とか、そういうギャップあるものが題材であればよかったのに。まぁ実話なんでしょうがないんですが。特に前者は3本脚で有名だし。

あとこういうタイプは凄くうさんくさいので、別の形で書いてほしかった。プロなら日記を安易に実話怪談に持ち込むなよ。一昔前のしょーもないレベルのネット怪談じゃないんだからさぁ・・・。

 

 

 

 

 

鷲羽大介「口コミの女」pp.76-77:隣の部屋が民泊として貸し出される。夜な夜な話し声が聞こえるが・・・。

あ~はいはいこれはもうあれね、その日は予約なしで無人のはずですがパターンね。はいはいはい。おっけーおっけー、からのガツンと予想外の角度からやられる。強い。

ただタイトルが惜しい。「の女」いらない。「口コミ」だけでよかったのではないか。

 

 

我妻俊樹「ワンピース」p.79:

夢に祖母が現れて「あたしはまだ死んでないよ」と言う。p.79

こちらは逆にタイトルが秀逸な一篇。

体験者がの気持ちがぐっと伝わる素晴らしいタイトルだと思う。

内容はまぁ普通ですが・・・タイトルが、まぁ「夢」「夢枕に立つ」とかだったら数分後には忘れていたと思う。タイトルの影響力の凄さを感じる一篇。

 

 

鷲羽大介「草野球の女」pp.86-87:

ポニーテールに、白いTシャツを着てグレーのショートパンツをはいた、いかにも快活そうな女の子である。p.87

これはまさしく「の女」つけて・・・正解。な一篇。

また、容貌の良さも思わせるような明るい女の子の生気溢れる姿とは真反対の、不穏な匂いを漂わせる結末も見事。どういうことだ・・・どういうことなの・・・。

 

 

神薫「誘蛾灯」pp.90-91:幼馴染が、歳の離れたある宗教の教祖と結婚した。

面白いですね。最後、恐怖を感じたのが相手ではなく自分自身、というのが特に。

あと思い出したのは、ジョジョの作者。あと谷原章介。あの2人って、もしかして・・・。

 

 

我妻俊樹「一周忌」p.93:

友人の一周忌で集まった仲間達と飲んでいたら、急に店内が真っ暗になって読経の音が十秒間くらい流れた。p.93

うへぇ・・・。お経フィーバータイムがなかった、までなら分かるんだけれども、その後続く何とも言えない怪異がたまらなく厭だ。怖い。

またその怪異が、創作ヨロシクド派手なものではなく、ちょっとした事象なのも怖い。まさしく「実話怪談」。 

 

 

黒木あるじ「投書」p.101:

【以下、原文ママ/掲載了承済み】p.101

「雛記」は変化球が祟って微妙な結果に終わりましたが、こちらは変化球が見事にダイレクトアタック。日記風の怖い話というのは「ナポリタン」「良栄丸事件」よろしく、結構何度も目にしてきましたが、多分ネットの投書という媒体が今まで読んだことなかったからでしょうね。既刊では会話だったりと、実話怪談の新しい伝達媒体を黒木氏は探している印象を受けるのですが、でもどうなんだろうね。他にあんのかな。

 

 

鷲羽大介「腹に一物」pp.108-109:真昼間に露出狂に遭遇したが・・・。

序盤の「お?ヒトコワか?」からの、中盤のグロテスクからの、終盤の「ええ・・・」と不穏な謎を残した結末。2ページと言う短さながら、序盤中盤終盤全て味わいが違う贅沢な一篇。あと本作が今回の鷲羽氏の「エロ実話怪談」枠でおk?

 

 

我妻俊樹「両側」p.115:

住み慣れた町なのに駅から自宅までの道に迷ってしまう。p.115

住宅街で道に迷う時のあの独特な不安感、何なんだろうね。怖いとも違うあの・・・なんともいえない・・・鳥肌が立つようなもう帰れなくなるんじゃないか、とも思うような、僕が日常生活を送っているのと並行してココで誰かの日常生活が営まれているんだということをふと思い出して、いや当たり前だろと思い直す、パラレルパラレル。あの感覚を実感できる一篇。まぁ、向こうは「そう」だろうと僕も思う。

 

 

神薫「金縛りの理由」pp.118-119:引っ越したワンルームのアパートで、毎晩金縛りにあう。

ありそうで今までなかった展開の実話怪談。なんで逆に今までこういう話がなかったんだろう?というくらい隙間をぬった怪異。これは絶対平山夢明教祖だわ・・・と思ったら神薫氏だったでござるの巻。

時々こういうホームランうつから侮れないんだよな・・・。今んところ本シリーズ1冊に1回は打ってる。

 

 

つくね乱蔵「七日の間」p.120:

「利美ぃ、あきらめて行けやぁ」p.120

ある約束事を体験者はするのだけれどもそれを破った際に起こる怪異が怖いですね。本当にありそうで。いやまあ実話怪談なんであるんですけれども。多分これはマジだと思う。いやまぁ実話怪談だから全部マジなんですけれども。

 

 

我妻俊樹「老婆」p.124:

まって。最後シュールすぎない???

 

 

黒木あるじ「腕神社」p.130:

まって。最後シュールすぎない??????

 

 

じじい枠はそういやなかったね!!



 

 

つくね乱蔵「薄情」pp.134-135:ドライブ中、休憩に寄った小屋。仲間2人が入って行ったが、出てこない。

SFか?と思ったら予想外のSFだった。スピード感がえげつない。

どうなんだろうね。でも残りの2人の存在が、この世から抹消されたとも思えない。多分普通に生きて居ると思うのだ。体験者同様に、なくして、そのまま。

 

 

鷲羽大介「緊急ボタン」pp.136-137:

私は返答に困り、「押しやすいんじゃないですかね」とだけ答えておいた。p.137

乳首みたいに言うなよ。

でも、面白いですね。ふつう安全のために着ける装置が、つけることでその逆になるというなんたる皮肉。哲学。シュレディンガーくりぃむナントカ(違う)

 

 

小田イ輔「自宅の風呂にて」pp.140-141:

「そしたらさぁ『追い焚きを始めます』って音声が流れるわけ」p.140

めちゃくちゃ怖い。小田イ輔氏の単著に今年中に手を染めることを決意したくらいには怖い。

パラレルワールドもの、だと僕は思う。

話はそれるが、僕が初めて「パラレルワールド」という概念に遭ったのは、小4の時だったと思う。筒井康隆時をかける少女に収録されている短編だった。タイトルは覚えていないが主人公のヒロインの名前は覚えている。信子。

些細なきっかけのいつまでもどこまでもパラレルワールドを異動し続ける、って話だったと思う。んだけれども、元の世界に帰ってこれないという結末が怖かったし、同時に僕が何万何億いて・・・という概念自体もとても怖かった。

その時の感覚を思い出した。

知らず知らずのうち僕達は、異動し続けているのかもしれない。というか、パラレルワールの異動をし続けること、それが生きると言う事なのかもしれない。

本当は人間が気づかないような仕組みで異動し続けているのだけれども今回はたまたまほころびが生じてしまった・・・ピカチュウの尻尾の恋部分は付け根か先端か?千と千尋のエンディングは?キットカットのロゴの合間にハイフンは存在したか?お前の風呂の呼びだし音は本当に電子音だったのか?

 

 

吉田悠軌「生き別れ」pp.144-145:

「うちのドーベルマンが散歩中、オタクの犬に襲い掛かり殺してしまいました」p.145

一番怖いのは、自分の家の犬が他人の家の犬を殺したにもかかわらず、菓子折り一つで解決しちゃおうとするおじさんのぶっといぶっとい神経ですね・・・。

 

 

黒木あるじ「殺す気か」p.146:祖父の家の仏壇ん位、従兄がそなえたものは・・・。

タイトル秀逸。タカアンドトシのトシの声で再現された。不謹慎すぎるだろ。まで頭の中のトシが言うてる。

てか死んでからもアレって効果持続するもんなの?

 

 

つくね乱蔵「盆栽」p.149:

それもまた一興と楽しんでいるようだ。p.149

美人なら・・・まぁ・・・。

黒髪なら・・・まぁ・・・。

でも茶髪のソバージュとか、メイクが派手とかそういうのは嫌だな。

あと若い女の自殺程、コンテンツ化するのにうってつけの現実はない。

 

 

鷲羽大介「時間厳守」p.150:パスタゆでゆで。

面白いですね。こういう、実話怪談でとりあげるほどではない些細な怪異を描くのに、「瞬殺怪談」という媒体は丁度良い。

あと意外とパスタゆでゆでしている実話怪談は読んだことがないかもしれない。

 

 

黒史郎「四十二」pp.154-155:

彼とは年に一度か二度、高三の頃に自殺したクラスメートの女子の話になる。p.154

僕は、小中高12年間、自殺したクラスメートは僕はいませんでしたね。

(本当に?)

同じクラス、だけでなく同じ学年でもいなかった。

小2だか小3の時に「自殺してやる」宣言をして教室のベランダに出て行った少年はいましたが。でも隣のクラスだったし今思うとあれは一種のかまってちゃん行動だったんだと思う。

(本当に?)

事故や病気で亡くなった児童・生徒もいなかった。

(本当に?)

恵まれていた。

恵まれていたんだと・・・思う。

本当に?

 

 

鷲羽大介「神仏は大切に」pp.160-161:

木でできたお社は古く、誰も手入れしていないようでかなり汚れていた。p.160

あのさあ・・・いやいやいやいや・・・・あのさあ・・・あの・・・もうさぁほんとさぁ・・・こういう系いっちばん弱いんだよ。義務教育、いやもしかして義務教育に至る前から「神様仏様は素晴らしい存在なんだ」って刷り込まれちゃってるからさぁ・・・もうさぁ・・・勘弁してくれクレメンス。

 

 

小田イ輔「点滅」p.164:

空間そのものからショベルカーがまるごと一瞬消え、すぐにまた出てくる。p.164

ショベルカーだけじゃなく車でも建物でも人間でも動物でも家族でも自分自身の自我という存在でも何でも点滅しています。お前が知らないだけです。

 

 

蛙坂須美「火事のホテル」p.168:

「・・・えッ?」p.169

の最後の一行で終わるんですが読んだ僕自身もまさしく「えッ?」

実話怪談で既に読んだことのある「型」ではあるものの、大抵それは長編のパターンが多い。掌編の実話怪談ではまず見ない「型」である。のでその分強く印象に残った。

 

 

我妻俊樹「知らない女」p.176:新幹線で知らない女に声を掛けられる。

展開が予想外すぎてぎょえ~になる一篇。ぎょえ~。

ファミチキ食べたケンタッキー食べたとか鳥貴族だったとか実は僕と同じ酉年でしたこけっこーとかそうだろ?そうと言ってくれよ!!

 

まぐろどん「お前干支は?」

知らない女「うさぎです🐇」

まぐろどん「マ?うわ来年年女じゃん」

 

 

 

吉田悠軌「予防策」p.177:

「もう京子~。俺が帰ったら必要ないから破り捨ててね・・・・・って最初に言ったじゃ~ん」p.177

どうですかね。これ。僕だったらまぁ・・・いいかな・・・ってなるんですけど。なんかつよそーだし。だってなんか占いとかお祓いとかそういうの無料でやってくれそうだし。詳しそうだし。

でもアンチ占い派とかの人だったらやっぱきっついのかなぁ・・・。

 

 

つくね乱蔵「老人会」pp.184-185:

百メートルほど先にある山の中腹に、沢山の人がいる。p.184

ド・正統派ホラー。思わぬ最後にぞっとする。

あとなんとなく全員爺さんかなぁと思ったんですけど、どうですかね。

あと実話怪談って女性のお年寄りだと老婆という言い方をするから無意識に全部オスかなぁ、と思ってたことに再読して気付いた。

 

 

黒史郎「とまって~」pp.188-189:

■■■■の前を通った時のことだという。p.189

だいたいこういう現象が起きた場所って、匿名のことが多いんですけれども、本作は最後の一行でハッキリと書かれていたものですから嗚呼この話は本当なんだなぁ実話なんだなぁになった。

 

 

黒史郎「罠」pp.202-203:心霊スポットには思わぬ罠が・・・。

巧妙すぎんだろ!!幽霊にしては頭使いすぎだろこっわ!!何!?メンサ入ってる!?東大王の幽霊!?てかよく考えたらあらかじめ見られていた、ってこと!?

携帯電話、だったら怖くなかったですね。スマホ、のカタカナ3文字だから怖さ倍増。時代が移り変わるにつれて消えていく怪異を嘆く声が多いが、その分新しい怪異が続々と生まれ続けていることに僕は注目したいね。

 

 

吉田悠軌「ねじれ」pp.212-213:ドアが激しくノックされている。

これも多分誰かのまじの実話なんじゃないかなぁ・・・それを物語調に書いてる実話怪談。

物語調にすると文章長くなりがちだから、あまり瞬殺怪談では見られない語り口なんだけれども、今回は逆にその口調がとてもいい味出していると思う。

 

 

集計(敬称略)

つくね乱蔵:8篇

鷲羽大介:8篇

我妻俊樹:6篇

吉田悠軌:5篇

小田イ輔:4篇

蛙坂須美:4篇

黒木あるじ:4篇

黒史郎:4篇

神薫:3篇

平山夢明:1篇

 

 

 

 

 

 

以上である。

つくね氏、我妻氏に並んで、7巻から参戦の鷲羽氏が僕の中で存在感をバチバチはなちはじめた。調べると11月末に初の単著が出るらしい。おいおい・・・年に5冊もこの僕に新品で本を買わせる気か?献金か?5万じゃ足りないのか???さすが指定暴力団竹書房爆破不可避だぜ・・・。

いつもと比べてスパンが短かったからクオリティがちょっと心配だったけれどもまじ杞憂~。9巻なだけに。

 

ちなみに、これで1~9巻すべて読んできたわけだけれども、一番面白いのは・・・まぁ7巻かなぁ。ド派手で華やかなんですよね。

ただまぁどの巻も面白いです。強いて言うならば、黎明であった1巻、あとちょっと地味なリアル寄りの怪談ばかりが集まった6巻、が若干劣るかなぁと言った印象。ただまぁそこは個人の好みの範疇で考えていいと思います。

 

そして・・・次はついに10巻。

今回参加しなかった、丸山政也氏、川奈まり子氏、夜馬裕氏、あと松村進吉氏も欲しいし、小原猛氏で脇も固めたい。あと伊計翼氏も迎えて黎明期の雰囲気をも須古井振り返りたい。

執筆陣出来るだけ多く集めてほしい。

あと9巻も出てるということはそれなりに人気と言う事である。鈴木呂亜氏、小原猛氏を筆頭として妖怪・ロア中心のファンタジーや都市伝説中心の新シリーズとかもあってもいい。鈴木呂亜氏の蒐集する話は性質上どうしても実話怪談を集めた本書にそぐわないものが多いと僕は思うので・・・。でもロアのライトノベル作家っていないからなぁ。朝里樹氏はちょっと違うイメージだし。

 

あと実話怪談の小野Ⅾこと、小田イ輔氏。これは本当勉強しないとなと思った。

まっがーれ!!!!

 

****

 

LINKS

今まで書いてきた瞬殺怪談の感想記事。

1-3巻、6巻は書いてはいるのですが編集面倒でまだうpしてない。

 

tunabook03.hatenablog.com

tunabook03.hatenablog.com

tunabook03.hatenablog.com

tunabook03.hatenablog.com

 

竹書房が出している最高の百合漫画。といいながらまだ続き買ってない。

tunabook03.hatenablog.com