小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

平山夢明ほか『瞬殺怪談 業』-短くとも業が深い。-

 

 

「ぴんぽーんぱーんぽーん↑

 

あーあ・・・えー・・・この度、ワタクシまぐろどんは、

2022年本年、ホラー極めてゆこうと思います。

えー・・・この度は皆さまのご協力、お願いいたします。

 

ぴーんぽーんぱーんぽーん↓」

 

 

平山夢明ほか『瞬殺怪談 業』(竹書房 2019年)の話をさせて下さい。

 

 

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【あらすじ】

人気シリーズ第5弾!1~2ページの怪談を詰め込んだ恐怖度MAXの一冊。

ホラーの鬼才・平山夢明を筆頭に、黒木あるじ、黒史郎、我妻俊樹、つくね乱蔵、神薫、小田イ輔、伊計翼、鈴木呂亜、小原猛ら実話怪談の名手が集い、全152話をすべて書き下ろした。瞬きする間もなく押し寄せる恐怖の濁流に呑まれるーー。

裏表紙より

 

【読むべき人】

・さくっと怖い思いしたい人

・実話怪談好きな人

 

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【感想】

いや~最高でしたね。だいたいが1-2ページで終わるので、サクッと怖くてサクッと終わるのがたまらなく素晴らしい。気負わず読めるしページをめくる手も止まらない。なかなか良い企画本だと思います。

 

本書と出会ったのはまぁぶっちゃけると今回も、メルカリです。

とりま実話怪談極めるぞ~!!と思いまず目についたのが本書のシリーズ。

実はこの2作目にあたる「刃」は新卒の年に盲腸で入院した時読んだんですよ。もう中身すっぽり抜け落ちてますが。

その時は表紙が怖いからという理由で、卒業生を送り出すビンゴ大会の景品として寄付したら他の講師からドン引きされたのはいい思い出です。でも今思うともったいなかったな~。面白いから手元に残しておけばよかった。

 

では簡単に感想を・・・といっても、超短編集だから感想もクソもないんですよね。なので特に印象に残った怪談を上げていき、そこで「僕の怖いと思う怪談」を分析し、より後々のホラー書籍の選書において活かしていこうと思います。

あらすじは概ね書きますが、全部わかっちゃうようなネタバレはしないよう努めます。

 

 

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黒史郎「警告」pp.12-13:バス停でおばさんが話しかけて来た

不気味な現象が線を結びそうで結ばないのがなかなか。

屋内から出てくるおじさんがなかかインパクトを残したので、ヨシ!

 

伊計翼「樹海にイン」p.26:元彼が「樹海にいってくる」と言ったきり蒸発した。

1ページながらの予想外の登場人物、そして結末が良い。主人公が直接体験していないという点でも珍しい。

でも僕も自殺したら絶対こういうことするタイプだと思う。

最後の一行の、悪夢感と絶望感が半端ないのでヨシ!

 

平山夢明「夜」p.30:階段を上る。

独り暮らしアパートで、なおかつ住んでいるのが2階なので僕も毎日階段上るんですよ。だからこういう体験はしたくないですね。絶対に。

物凄く身近で怖いのでヨシ!

 

黒木あるじ「宿」pp.32-33:やむをえない事情で泊った民宿には、子供の玩具が転がっていた。

中盤主役級の怪異もなかなかですが、この子供の玩具の存在がなかなかに気持ち悪い。

そして最後の「あ」p.33も。

玩具の存在によってただの宿ものホラーが一級品に。ヨシ!

 

伊計翼「モノクロのおんな」p.46

「ゆうれいって色がありませんよね。薄くぼんやりした白黒、モノクロなんです」p.46

モノクロのおんなというタイトルが怖い。

そして後半の発狂する様の台詞もなかなか不気味で記憶に残る。

「おんな」「ゆうれい」随所にひらがなカタカナの使い方のこだわりが見られる。ヨシ!

 

黒史郎「四と五」pp.64-65

由香さんの「四」と「五」のイントネーションは少しおかしい。pp.64-65

個々に出てくる遺言がめちゃくちゃ怖い。そしてなんとなく、すでに手遅れを感じさせる結末の余韻もなかなか。

僕は今日から「いちにさんよんご」ってなるべく数えるようにしようと思ったのでヨシ!

 

平山夢明「おねいちゃん」p.72:古いドアのきしむ音が、

「おねえちゃん」ではなく「おねいちゃん」なのがたまらなく厭だ。

因果関係分からないがあまりの不気味さ、あと文章読むだけで平山夢明やろなと思うこの感じ、ヨシ!

 

黒木あるじ「墓」pp.82-83:四半世紀ぶりに生家を訪れた。

墓、自体も不気味ですが、それに関すること様々なことがとても不気味で笑えない。

結末は「他人事じゃないねんぞ」という感じでしたが、うーん。ここは蛇足だったかな。

でも実話だから蛇足云々あるはずないよねヨシ!

 

 

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小田イ輔「許可は得ている」p.86:N君の祖母は霊能者であり、幼いころ何度も言い含められてきたことがある。

物凄く綺麗にまとまった1ページ怪談。ええ・・・になる。ええ・・・お前になる。ええ・・・。

この一冊で一番印象に残った怪談かもしれないヨシ!

 

伊計翼「台所の人影」p.94:彼女いるんだろ?隠すなよ~。ダル絡みされた。

前半あるある怪談からの唐突な結末は、「不安の種」を想わせる。

あ~こうやって意表突く感じ!!!夢明ちゃんでしょ!!!もーうと思ったら違った二度意表突かれたヨシ!

 

小原猛「家守」p.96:西さんの家は家鳴りが酷い。

こっわ、と思った。敵、と思っていた物が実は味方だったということでしょ。

最後のあっけない一行怖い。

僕の家にもヤモリきてくれ!ヨシ!

 

黒木あるじ「奪」pp.98-99:ワイパーに挟まった封筒を開くと、「うばいます」の殴り書き。

滅茶苦茶怖い。封筒に入れた、ということは誰かがやったということでしょう?

相手は人かそれとも人あらざるものか。そこすらもあやふやなのも怖い。

最後細かく描写することで余韻を引き延ばすテクニック、ヨシ!

 

小田イ輔「修学旅行の思い出」pp.100-101:A君が小学校の修学旅行で体験したホテルの話

あー、こういう記憶の相違があるの僕ダメですね。一体何が真実で一体何が・・・え?え?ってなるパターン。

修学旅行といえば怪談!怪談といえば修学旅行!でしたが、コロナ禍においてホテルの幽霊達はどうしているのでしょう・・・ヨシ!

 

伊計翼「霊安室で一泊」p.105:ひとむかし前、男性看護師であるNさんは「出る」と噂の霊安室に器具をとりにいく。

え、そういうことー!?になる。タイトルそういうことー!?

一体何を見たんだ・・・系はまぁそんなに、なのですが、えそういうことー!?ヨシ!

 

黒史郎「四人目」pp.110-111:四人で同窓会をやるはずであったが、四人目が、分からない。

大抵こういうのは亡くなった友人がいると言うのがお約束ですが・・・え、いないの?

こういう「いないはずの人がいる」系で一番有名なのはやっぱりあの雪小屋で四隅でやるアレですよね、ヨシ!

 

つくね乱蔵「祖母の穴」p.117:祖母におんぶされるのは嫌だ。

得体のしれない感じがすごく怖い。まず穴の空いた高齢者なんて聞いたことないし。

しかもそれが大好きなお祖母ちゃんなんて・・・いやーなかなかきっつい。親族に怪異が降りかかる系は読んでて心抉られるものがありますね、ヨシ!

 

伊計翼「ワイン」p121:帰宅すると、部屋のテーブルに置かれたコップいっぱいに、入った赤ワイン。

ビジュアルが鮮烈ですね。一度読んだら忘れられない。家帰ってそんなんあったらたまんないよ。

そして現象の謎の繋がりも相まって・・・ヨシ!

 

小原猛「終わる前」p.134:離婚直前の家に現れたのは・・・。

タイトルの通り、確かに「終わる前」に現れそうななんともエキセントリックな怪異がたまらない。多分これはオカルトチックではあれど実在するのではないか。

絶対見たくない。ヨシ!

 

我妻俊樹「尋ね人」pp.146-147:エレベーターに乗ったら尋ね人のポスターが貼ってあった

あのポスターってなんであんなに怖いんでしょうね。それがましてやエレベーターの中、そしてましてや・・・・。部屋の中で起きた謎の怪異も不気味。

エレベーター、ある物件住んだことないけど、出来れば今後も住みたくないですね。マンションのエレベーターってなんでやっぱあんなに怖いんだろうねヨシ!

 

神薫「しゃべろく」p.151:前の座席の男二人の雑談がうるさい。

現代の妖怪なのかな?怖いけれどどこかユーモラスな後味がとても好き。

でもまぁうん・・・やっぱこういう形では会いたくないかな妖怪。小学校の自由研究で妖怪事典作るほど一時期ハマってましたが・・・すねこすりたんがナンバーワン・・・ヨシ!

 

我妻俊樹「声」p.154:残業を終えようとしたとき、死んだ上司の口癖が聞こえた。

ここまでならまぁよくある実話怪談であるが、声の正体が恐ろしい一篇。

「親しい誰かと見せかけて実は違う人ですよ」パターンはここ最近結構目にしますが、裏切られた絶望といやじゃあお前誰や年の謎が一騎に襲ってきて後味最悪、ヨシ!

 

黒史郎「雨音」p.166:油のはぜるような音の雨が気になって、ドアを開ける。

最悪だ。最悪。要するに開けさせるためにこういうことするわけでしょ最悪。

ぬるっと怪異が書かれていて、それがまた怖い、魅せ方が上手い。ヨシ!

 

我妻俊樹「赤い看板」p.175:小学校の遠き通っていた駄菓子屋を、再び見つける。

要するにちょっとした■■の悪戯・・・ってことでしょうか。

でもその場所自体が不気味ですね。奈良とか京都の話なのかな・・・ヨシ!

 

小田イ輔「初盆」pp.188-189:亡くなった祖父を指さす従妹が、送り火で倒れ・・・。

前半8割は所謂よく聞く話なんですよ。亡くなったお爺ちゃんが可愛がっていた孫を連れて行く。けれどその後半2割、残された叔父の怒りや当事者の感想が相まって強烈なインパクトを残した。

こすりにこすられた話だとは思うんですが、それに「実話」「リアリティ」というエッセンスを足すだけでこんなに化けるなんて・・・ヨシ!

 

つくね乱蔵「天井の女」p.192:火葬場の天井に、全裸の女が溜息をつく。

火葬場×全裸の女、というミスマッチもただでさえ怖いのに、加えてねえ、そうくるんだ・・・となる。不気味だ。日本のティンカーベルってえ、こんな感じなの?厭すぎる。ヨシ!

 

伊計翼「隣の御札」p.193:

出かけるとき、隣人が玄関前で脚立に乗り「良し!」と地面におりるのがみえた。p.193

怖いというかは、隣人含め何となく可愛らしさが漂う実話怪談。

いやだからといって僕の家に来られたら困りますが・・・ヨシ!

 

伊計翼「悪い霊じゃない」p.198:

霊が視えるという女性に「憑かれてるよ」といわれて怖くなった。p.198

ええ・・になる。ええ・・・。怖い。

なんじゃらほいな~からのあっけない最後の一行。激おこぷんぷん丸の幽霊程怖いものはない。ヨシ!

 

黒木あるじ「招」p.216:「おばけなんてないさ」を繰り返して歌う息子に、苛立ち、脅かす。

前半のほのぼの親子会話劇からの後半リアリティー怪奇現象のギャップがたまらなく良いですね。しかもそれが1ページ以内で落差ついているのもポイント高い、僕もう絶対この歌歌わないわ!ヨシ!

 

 

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集計。(敬称略)

伊計翼7話

黒史郎4話

黒木あるじ4話

小田イ輔3話

我妻俊樹3話

平山夢明2話

つくね乱蔵2話

小原猛2話

神薫1話

 

気になった作品は以上である。

ざっと振り返って、分かったことは・・・

・伊計翼氏の作品が圧倒的に多い。寄稿数がもともと多いというのもあるが、それを差し引いても多い。伊計氏の実話怪談を追えばいいのか・・・?

・家族関連が出てくる怪談に弱い。

・もともと星新一好きなのもあって、予想外の結末の怪談に弱い。

・ちなみに、このなかで特に怖かったのは黒史郎「四と五」「雨音」伊計翼「悪い霊じゃない」

・でも一番怖かったのは、ここに記しておかない。トラウマがより刻まれるので。黒木あるじ氏の怪談でしたが。

 

作者ごとに個性が見えるのもなかなか面白かったですね。神薫氏の怪談はなんとなく「ナウい」(死語)感じだったり、我妻俊樹氏の怪談は「得体のしれないもの」が主人公であることが多かったり、やっぱり沖縄人ということもあって、小原猛氏の怪談はしどこか神秘的ですらあったり。

でもそのなか、鈴木呂亜。こいつだけは僕許せないですね。まず「ロア」自体が浮いているのと、「私の話で良いですか」と言いながらその1からその3まで書いているのが気に食わない。「良いですか」と言っときながら、それ実はとっておきだから3つまで掲載したんだろ?

あとロア自体、いくらでも捏造創作が可能なんですよね。とするとまぁ他の実話怪談もそうなんですけど・・・でも一人だけ世界を舞台にした作品は物凄く浮いていたので、このシリーズには参加してほしくないなあというのが正直なところ。

せめて舞台が日本のロアにしてくれ。

 

 

以上である。非常に満足度高い一冊だった。

このシリーズ、まだ5冊くらいしか出てないんですよね。さくっと読めるし怖いし面白いし、読破、目指そうかなあ・・・。

 

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20220220  この記事の母体の文章は去年の夏に書いた。けれども、未だにコンプリートは出来ていないし、忘れないようにとメモした話の感想も、めちゃ短い分ほっとんど思い出せない・・・。でもワインの話と日本のティンカーベル()の話はうっすら覚えてる。

去年の夏から今に至るまで死ぬほど実話怪談本読んだので、スパン明けず記事あげられるようがんばるぞ。