小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

雨がっぱ少女群『ひとりかごめ』-ザリガニを捕まえに行った夏はもう遠い。-

 

雰囲気、怪異、画力、演出、総じて天才。

 

雨がっぱ少女群『ひとりかごめ』(竹書房 2019年)の話をさせて下さい。

 

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【あらすじ】

背後を気にしながら

生活する城陽菜(つきしろはるな)

 

人の気配を感じ

おびえるが、

そこには誰もい兄。

 

気にするあまり

奇行に走る彼女だがーーー

 

一体彼女の”うしろの正面”は

だあれ?

 

表題作を含む12編を収録。

 

裏表紙より

 

【読むべき人】

「不安の種」等ホラー漫画が好きな人

・ストレスを抱えている人

・かわいい女の子×ホラー ←たまんない人

 

【感想】

買ったのは1年前。

かなり昔にネット上で流行ったサイコパスクイズ漫画」の作者の作品である。

問題が出されて、その答え方によっては「お前サイコパスやで~」みたいな旨の漫画だったのだけれど、そこに描かれているシーンの凄惨さと、「雨がっぱ少女群」とペンネームにつけるそのセンスに打ちのめされて買ってしまった。

結果めちゃくちゃ好き。

何回読んでも結構打ちのめされる。

画力、ストーリー、雰囲気・・・けっこうどれも質が高いのだけれども、

なぜこの漫画は持て囃されない?

 

各短編を振り返る。

 

一周目 消費者の呻き:車でスーパーに寄った女は・・・

独特のエロスがある描きおろし短編。

読んだ当初はちょっとムラッときた覚えがある。

けど改めて読むと、そっちよりも身近にある物で人を×せることのが怖い。

あとブラジャーがとてもリアルなのが良い。

作者まさかの女なのか?

 

二周目 工場勤務:今日から工場で働くことになったけど・・・

あーやっぱ人が×んだときってこういう感じなのかなと思った覚えがある。

最後結構不憫。「転職しよっかな・・・」p.36じゃないんだよ。

あとどう見ても、表紙の女の子は「ひとりかごめ」の月城陽菜ではなく、

今日から「工場勤務」のこの子なんだよなぁ・・・。

 

三周目 ザリガニ:翔太くんと川辺に遊びに来たが・・・

この短編が一番好き。

終盤3コマの疾走感が良い。

というか、この作品に限らず最後の1こまにもっていく運びがこの作者は天才な気がする。

あとザリガニに怪異を見出すその観察眼も天才。

生活にホラーが組み込まれているのも天才。

もうとにかく好き。実はこの短編だけ何回も読んでる。

 

四周目 無数の孤独:「私は仲間内でいつも 軽く扱われる」p.51

非常に切ない一編。

だけどこの漫画をわざわざ買う人って、こういう経験一度はしていると思う。

最近毎日職場でも家でもどこでも僕は「しまらない笑み」を浮かべている気がする。

でも一番切ないシーンは「ラメのペン見たい」と言う序盤のシーンだと思う。

 

五周目 百円の眺望:麻雀まけっぱの主人公は展望台に来ていた

2009年の作品。一編だけ線が圧倒的に細いが、10年前からこんな絵うまいのかよ・・・。

麻雀雑誌に掲載されていたらしいけど、読者はぜってーこんな漫画求めてねぇよ・・・。

 

六周目 ペット:新しいペットを友達が自慢してきたが・・・

一番エロい一遍。

こんなページ数で濃厚なエロとホラーが楽しめるのは良いですね。

あとペットの愛らしさと終盤の惨劇さのギャップがたまらない。

「ザリガニ」の次に好き。

あとあと、ちょっと魔法少女まどかマギカに近いものがある。(ない)

 

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七周目 ひとりかごめ:月城陽菜には悩みがある。

表題作で一番長くて一番かわいくて一番ほっこりする短編。

まさかの表題作こういう系統とは思わないじゃん・・・。

とにかく月城さんが頭悪くてかわいいんですよ。

絶対180度回転のが楽なんですよ。

続きも結構読みたい一遍。ツイッターか何かで連載してくれ。

あと「消費者の呻き」「無数の孤独」に続いて本編も描きおろしとのことだけど・・・女の子がとんでもなく可愛いです。

ホラーとの対比効果もあるだろうけどそれ抜きにしてもかわいい。

ホラー漫画ヒロインフェチの人にもおすすめの一冊。

 

八周目 地図:男たちは山で道に迷い・・・

最後の絶望感がたまらない。

かわいい女の子がいないからあんま好きじゃない。

 

九周目 夢うつつ:幼馴染が学校休む理由は睡眠にあるという・・・

幼馴染がただただ可哀相な一編。

あとラスト2ページ目のパンチラが良い。

主人公のJKはこの後真相に気づくのだろうか。

気づかず、そのまま大学生になりそのまま先輩に言い寄られパコパコし・・・高校時代の幼馴染の怪死等忘れて普通に恵まれた普遍的人生を全うする気がする。 

 

十周目 轍は闇に呑み込まれ:バスを待っていると・・・

一番印象に残らなかった。

画が弱いというか、ほかの作品の画が強すぎる。

年寄りがつけた漬物に不快感見出した描写は良かった。

ある意味老後・死後に希望が持てる一編。

あと、作者はこの「黒髪ボブ×気弱」少女本当好きね。

 

十一周目 現象:街からぽつぽつと姿を消す人が出始めていて・・・

ある意味「はじまった」一編。

こういう怪奇現象が原因不明に突如襲う作品は続くと「うんざり・・・」するものだけど、正統派ホラーに一つ混ざるとなかなかこう・・・いいものですね。

というか一作品一作品雰囲気が違うその幅よ。

だいたいどっかに通ってくるものだけれど、この1冊は、

深夜のスーパー、工場、飲み会の帰り、渋谷、展望台、小学校、高校、山、家、バス、雨上がりの街・・・それに合わせて襲う怪異も変えてくる。

四六時中ホラーのことでも考えてなければ浮かばないでしょ。

やっぱ天才なんだよな。

 

十二周目:遺された調理法:くたびれた町の食堂に寄るが・・・

最後は町のくたびれた食堂。昼になっても閉まったシャッターが目立つ。外に置かれたゴミ箱の蓋の隙間からは異臭が漂う。

まさか最後は人妻の色気でしっぽりしめるとは思わないじゃん・・・。

てかロリも人妻も描けるの強いな。

 

おまけ

ページの合間合間にはさまれているイラストも、めちゃくちゃ良いものが多いのでお勧め。結構一枚一枚手が込んでいる。

特に好きなのはp.144の記念写真のイラストかな。こういう想像を掻き立てるような昔の心霊写真はとてもすこです。

 

以上である。

結構一編一編個性が強く、どれも満遍なく怖いのでかなりお勧め。

数ページしかない作品も多いのでさくっと読めちゃう。

 

ちなみにこの作者、寡作な方だとは思うんだけど、つい最近まで同じく竹書房の雑誌でかわいい女の子が出てくる作品を連載してたんですよね。

「麻衣と虫暮らし」だかなんだかというとにかく夏っぽいやつ。

一冊1000円近くするからためらってたけど・・・2巻完結だしもう6月だし夏っぽい虫漫画読みたいし買おっかなぁ・・・。

 

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