午後2時。寝そべるベッド。
色々したいこと、しなければならにことが頭に浮かんでは消え浮かんでは消えていく。僕は起きなければならないが起きられない。
疲れているんだ。
疲れている。
動けないんだよ。
もう太陽も沈み始めていて小学生が帰路を急ぐ声・音が聞こえているしきっともう起きて労働してそれが終わってという人もいっぱいいるだろうにいるだろうにいるだろうに。
疲れている。
起きられない。
実学。
借金玉『発達障害サバイバルガイド』(ダイヤモンド社 2020年)の話をさせて下さい。
【概要】
普通じゃなくていい、生き抜こう。
お金・うつ・休息・在宅ワーク・服・食事・生活環境・習慣
発達障碍者の困りごとを全て網羅!
帯より
【読むべき人】
・ADHDの人、もしくはその疑惑がある人
・で且つ、一人暮らしをしている人
・なくとも、生きづらい人
・自炊の仕方が分からない人
・休日だらけてしまう自分に罪悪感がする人
・発達障害ではないけれども一人暮らしのサイクルを上手く回せない人
【感想】
作者は、「借金玉」先生。某早稲田大学卒業後大手金融機関に就職後、飲食業を営むも失敗、超絶借金を背負ったのちに非正規雇用の不動産の営業職に就職し、兼業で作家をしている。「借金だま」先生は「借金まだ」返せていないらしい。終わったら、ペンネームは「返済玉」になるのかもしれない。ならないと思う。
そんな方が書いた、発達障害者向けのライフハック・・・、この非常に生きづらくなった2020年現代で、発達障害者が「健康で文化的な最低限度の生活」(日本国憲法25条)を送るための知識が詰まっている。
例えば、自炊。飲食経営者の経験もある作者が言うには、「まずたらこのパスタのソースを、味の素やだし等を使ってのばす」ことから美味しいご飯を作ることは始まると言うが・・・!?(Hack32 pp.212-217)
身だしなみ。高いスーツを買うことよりも大切なこととは・・・!?時計マウンティングを回避する方法とは・・・!?(Hack26pp.176-179 Hack30pp.196-200)
生活。そもそも我々が棲む部屋において我々がまず買うべきものとは・・・!?(Hack1-3 pp.24-41)
等暮らしにおけるライフハックから、
かと思えば、お金。多重責務生活を終わらせる唯一の方法とは・・・!?良い借金の方法とは・・・!?(Hack07pp.64-70 Hack10pp.80-85)
うつ。「どん底から再起する」のにまず捨てるべきものとは・・・!?(Hackpp.278-284)
金銭感覚・個人の内面まで手広くカバー。
結構ゴリゴリに具体的に書いてくる。そのため、まぁ結構「これ僕には関係ないな」と思うような部分もあるのだけれども(例えば、先述した「時計マウンティング」、ぼかぁおにゃのこなのであまりそこでマウンティングしません)、がっちりハマるところはがっちりハマる。
まさしく、表紙だけでなく中身も「防災ガイドライン」。
「地震が起きたら机の下にまず隠れましょう」「車での移動は避けましょう」「防災バッグ備品一覧」・・・等々、あれも役立つ知識が淡々と書かれているが、本書も同じ。
(発達障害者がこの非常に生きづらい2020年現代において)「文化的で健康的な最低限度の生活を営むための防災ガイドライン」。文体は借金先生のユニークで軽い面白い筆致で書かれていて、軽くけらけら読めるけれども、その中身はゴリッゴリなのである。
今までの発達障碍者向けの本は、全体的傾向として、ふわっふわなものが多かった気がする。
「部屋が散らかっている自分を赦せるようにしましょう」「求めるハードルを低くしましょう」「あなたはあなたのままでいいのです」「アーメン」。
悪いことではない。
何故なら、「発達障害」の本を手にする発達障害者なんて大抵が何かがうまくいっていない人だからだ。そもそもすべてがうまくいっていれば「障害」なんてないのであり、己がADHD・ASD・LDなど思いもしないのだろう。幸福。
うまくいかないこと・・・それは仕事かもしれない。「仕事でどうしてもミスしてしまう」「入社してもすぐにやめてしまう」・・・。家族かもしれない。「家族と上手く関係を築くことが出来ない」「どうしても相手につらく当たってしまう」・・・。
(キラキラ)「大丈夫ですよ、あなたはあなたのままでいいのです」(キラキラ)
そうやって悩んでいる人達へ向けた本は、そりゃあふわっふわに越したことはないのである。
ただその言葉には優しさはあるが、責任がない。
「休日を怠惰に潰した自分を赦すにはどうしたらいいのか?」「ハードルを低くするにはどうしたらいいのか?」「それでも自分が赦せません」「しにたい」。
本書はそこにも焦点を当てて解析度高く書いているのが良い。
「休日においてまず大切なことは何なのか」「変えるべきなのは自分自身ではない」「うつの底にいる時にまず僕達がすべきことは何なのか」「「死ねばいい」に頼るな」。
言語化・明文化しづらい人間の内面に至るところまで、ゴリッゴリに書こうとする試みが素晴らしいと思った。
この書籍には、責任はとれないしとりきれないけれども、少しでも取ろうとする姿勢が透けて見えていて、そこがとても良かった。
発達障害者が「健康電文化的で最低限度の生活」が送られる責任・・・。
今までの発達障害者向けへの本が「宗教」ならば、この本は「科学」だと思う。
目を醒ませばもう午後4時。
いつのまにか寝ていた様で変な時間に起きてしまった。
自己嫌悪・・・どうして貴重な休日をこんなことに費やしてしまったのだろうと思っていたけれども、
「休日に必要なのは「休息」・・・」
朝から何も食べていないことに気づく。
1.5人前のたらこパスタでも食べてみようか。
以上である。
非常に実践的内容であり、帯の「普通じゃなくていい、生き抜こう」とするための要の部分はほとんど書かれていたように思う。
特に抗うつ剤を飲んでいる僕には「うつ」、そして休日を寝てスマホで潰してしまいがちな僕には「休日」の部分が響きましたね・・・。あと金銭感覚の部分も結構勉強になった。「習慣」とか、「生活」とかも。
と言いつつ、そのほとんどを未だに実践できていない。怠惰に潰した休日をちょっとは肯定出来るようになったことくらいか。
なので、「こんなことやりたくないけど、まあ、試してみるか」p.314感覚で少しずつやってみようと思う。
少なくともこの本を新刊で買ったことに間違いはなかった。
健康で文化的な最低限度の生活・・・を望む発達障害者必携のガイドラインである。
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