入院していた母親に渡したら
「お!あんたそっくりじゃん」
と言われた。
中憲人『雑な生活』(KADOKAWA 2020年)の話をさせてください。
【あらすじ】
生活が雑でぐうたらなゆう子(会社員)と、
才一が雑ではない佐々木(看護師)は
なぜか仲良し。
そんなふたりがくっついたり喧嘩したり、なんかわちゃわちゃする365日。
裏表紙の帯より
【読むべき人】
・自ら雑な生活をおくっているという自覚がある人
・そしてそのことに自己嫌悪を抱いている人
・逆に、雑な生活を送っている人の理解に苦しむ人
・休日のお昼に起きちゃった人
【雑な生活とは】
片付けが苦手な人の生活。
冬にこたつから出ない。4月はこたつを出しておきたい。
だからといって、汚部屋、ゴミ屋敷と呼称されるほど部屋を散らかすわけでもなく、週に0.5-1回程部屋は掃除している。
見てらんないレベルまでいったり、あと友達が来る予定が入ったりすると、ようやく重い腰をあげて片づけたりもする。
しかし来た友達に「まぐろどん、部屋片づけてくれてありがとう」と突如言われたりする。
意外と自炊は結構する。
近年の国勢調査で日本国民の8割ほどがこのような生活を送っていることが分かっているとかなんとか。
※これはあくまで僕の見解で会って、作者中先生の見解とは異なる場合があります
【感想】
別に休日昼まで寝ててもよくないか?
まぁ確かにその日の充実度はダダ下がりするけれど、二度寝の快楽に身をゆだねられるのは週に二回しかないんだぞ。
けん先生(ツイッターアカウント名から、今回はこの呼称を使わせていただきます)は昔からフォローしていて、作品もずっと追っていた。
意外と数ある緩い作品群の中で、僕が一番好きだったシリーズがこの作品。
新作はすべてサイト開いてチェックしていた。
あっという間に2年たち、連載が終わるということでしくしく泣いていたわけだけれどもまぁそれが書籍化するって。買うよね。
今作は「アイスム」という暮らし系ウェブメディアに連載された漫画で、
一話一話基本4-6ページほどと非常に短い。ちょっとリアル感の強いきらら系漫画と思ってくれればいい。
ゆう子の雑な生活っぷりがまぁめっちゃかぶり、そのゆう子をたしなめる佐々木の言葉がまぁめっちゃ刺さる。
グサァッ!
でもそこで「雑な生活はよくない!丁寧な生活をしろ!物を片付けろ!!」となりそうなところを、
ある程度佐々木が許してくれるところがいいんですよね。
そしてその雑さのなかに、日々楽しみを見出してくれるゆう子もいいんですよね。冷蔵庫の上にラスボスの塔を見たり。p.46
お片付け漫画になりそうなところに楽しみを見出す、このゆるーい感じがたまらない。
昼12時まで寝ている私をゆるしてくれる数少なき漫画。
僕が特に好きなのはこの2編。
「ガールズトークと生活」pp.22-28
これ当時連載されていた中でも「お?異色作か??」と思った覚えがある。
所謂擬人化作品で、ツイッターでははじめの4ページしか見れなくてその続きが「アイスム」開けばみられるんだけれどもなかなか重くて開かない・・・もどかしい・・・!となった覚えがある。
全部うろ覚えだけど。
その正体が非常に衝撃的で、そうなの!?そうなの!!となり、何回も何回も読んだ。
あと全員が、「好きだからこその悪口」なのがいいんだよね。
自分の足元を考えさせられる一遍。
「公園と生活」pp.82-90
運動神経を失って生まれ落ちた僕だけれども、結構これでも小学生の時は公園をたしなんできた。
だから遊具を見るときに思う。
「ああ、あの頃は今ほど深刻な悩みを抱くことなく楽しく遊んでいたな」
公園の遊具にとどまらず、結構野山の公園に行き茂みを掻きわけることも度々していた。
多分人生で一番アウトドアだったように思う。
皆結局優しかったし、その先を深く考える必要もなかった。
叶うなら、あの頃に帰りたい・・・。
となるところを、最後「大人にしかできない楽しみ」で締めるところが好き。
でもまぁ今の僕には身近に飲みに行ける友達一人もいませんが・・・。
禁句。叶うならあの頃に(ry
ただこの漫画、雑な生活を決して否定はしないけれども、肯定もしない。
一番好きなシーンは、最後の描き下ろし「夜の散歩と生活」pp.131-162のシーン。
汚いところで生活をするということが「一旦できる」というだけで
ずっとそういう環境で生活すると
やっぱり少しずつ気分が沈んでいって
どんどん落ち込んでいく
と気づいたのはかなり生活したあとで
p.148
わかる・・・!
そう僕たちは望んで雑な生活をしているのではく、
雑な生活しか出来ないのだ。
いけないこととは分かりつつも、時にはそこに楽しみを見出しつつ、時には頑張って片づける。
そう、それが僕たち、雑な生活を送る人々・・・!
この本質を突いた1ページのためだけでも、買う価値は十分にあると思う。
ちなみに描き下ろしもこの長編含め、各話のおまけ漫画がついていたりとそこそこ充実している。
若干青年コミックにしては高い値段ではあるが、
この緩い表紙含め描きおろしの量含め、ファンだった人は買って損はしない。
あとさくさく読めるので気軽に何回でも読める。
以上である。
汚部屋、ゴミ屋敷とまではいかないけれども、緩やかに部屋が汚い「雑な生活」を送っている人は案外多いんじゃないかと僕は思う。
特に今なんてステイホームで、「雑な生活」を送る自分を自己嫌悪してネガティブになっている人も多いのではないか。
そういった人達のおうち一軒一軒のポストに、僕が一冊一冊突っ込みたい。
そんな一冊である。