苦い思い出も、嫌な思い出も、
全部きっと、愛おしくなる。
渡辺電機(株)『父娘ぐらし(おやこぐらし) 55歳独身マンガ家が8歳の娘の父親になる話』(KADOKAWA 2022年)の話をさせて下さい。
【あらすじ】
55歳、独身、ギャグマンガ家。
このまま一生、ひとりで生きていくものだと思っていた。
2人の娘を持つ女性との結婚により小学生の娘の父となり、思いもよらず2人暮らしをすることになった男が、娘との生活で経験した驚きと苦労、そして喜びを、
飾ることなく本音で綴った、著者初のコミックエッセイ!
裏表紙より
【読むべき人】
・子を持つ人
・親子エッセイ漫画系が好きな人
・発達障害?と思われる子がいる人
・子供時代苦い思い出がある人
・というか基本的に全員
【感想】
滅茶苦茶好きですね。
本作を知ったのは、Twitter。娘のことを想って父が、大好きなランチパックを毎日毎日学童の弁当に入れていたけど、50越えたおっさんが初めて作ったまずい弁当の方が美味しかったという話である。(第3話 愛情ランチパック)
ぐっときた。学童で一人だけランチパックよりかは、皆と同じ手作り弁当、親の愛がこもった手作り弁当の方がいいよなぁ・・・じぃん・・・と不覚にも来てしまった。ああこれは、是非ともこれは、紙媒体で入手しなくてはなるまい。
発売日に絶対手元に欲しかったので、僕にしては珍しくアマゾン経由で購入。いつもなら地元の本屋で直接本は買うのですが・・・。でもこの直感は正解でしたね。
衝動買い、心にビビビと決定的に来る買物ってだいたい正解なことが多くないですか?
まさしくそれ。
読んだ後もう良すぎて良すぎて、普段漫画の感想とか絶対上げないアカウントに、しみじみ感想あげちゃったもんね。少しでも多くの人に、読んでもらいたくて・・・。題材的にも「お、まぐろどんちゃんってこういうのも読むんだ。心が綺麗なんだな」って思われる作品ですしおすし。
エピソードが良い。結構苦い思い出も、楽しい思い出と同様に平等に綴られています。上記のランチパックもその一つなのですが。
例えば、「習い事をはじめて即やめた話」(第12話 「ならいごとした~い!」)。だいたいこういう話って、習い事の教室批判や娘や息子に対する過剰干渉等によって美化されて語られがちですが、本書では「教室に馴染めず結局娘のアユちゃんが泣いたのでやめた」とありのままを描いている訳です。
普通、子が習い事を泣いてやめたことって、思い出したくないじゃないですか。ある程度あっちのせいにしたりある程度美化したりして、言い訳しないとやってられないじゃないですか。
でもそこは、ありのままに作者が30年以上かけて培ってきたギャグマンガ力(ぎゃぐまんがりょく)で描くことで、当時のかけがえのない思い出に昇華されているんですよね。デフォルメされることで思い出すことすら嫌な出来事がデフォルメ化されることで、子供時代の思い出の一つに化す。
子育てをする以上、もしくは自身の子供時代、全部が全部キラキラした思い出ではない、ですよね。もう二度と思い出したくない。恥ずかしい。そういうエピソードも、東京観光とか初の祖父母宅訪問とかの楽しい思い出と並んで平等に描かれているんですよ。そこが凄くいいなと僕は思った。
平等に描くことで、アユちゃんだけでなく読者自身の子供時代の失態や失敗までも肯定されている、気がする。キラキラ輝く子供時代の真裏に存在するような陰の思い出も、あって良い。子供時代は決して、毎日が楽しくてきらきらしてて成功体験ばかりの日々じゃなくても良い。
だから子供時代を過ごした人、要するに全員におススメ出来る漫画です。作者の意図しないところで、読者の自己肯定感爆上がり。
無論、子を持つ親にも読んでもらいたい。今現在君達親子が嘆き苦しんでいる問題は、数年後には、当時のかけがえのない思い出になっているのかもしれない。
おれ※作者
「発達障害児童で学校に馴染めないアユに年度途中での転校はリスクが高い・・・
おそらくそのまま不登校まっしぐらだろう」p.9
あと冒頭ぬるっと、アユちゃんが発達障害児であることが描かれています。
ADHDの薬を飲みアスペ疑惑もある僕としては、まぁ、確かに。となるところも多々あります。
例えば随所に見られえる作者へのパンチ。懐いている大人にかまってもらいたいがあまりに、常時過度なちょっかいを出しちゃうんですよね。
例えば飴を同級生に奢る。こんな自分と遊んでくれるなんて、と無意識に引け目を感じる節があるんですよね。(「第13話 公園人間模様」)
ほとんどが自己肯定感の低さから及ぶ行為なんですけど、そこが大人には今一つ分かってもらえない。分からないなりに寄り添う大人ならいいんですけど、説教アンド暴力でなんとかしようとする大人だったらもう目も当てられないですよ。子の心はどんどん離れ、親の暴力はますます悪化する。だから前の父親にアユちゃんがどうしても懐かず、逆に作者にはべったり懐くのも分かります。
他にも、
泣いて習い事をやめてしまったりだとか。・・・僕達には耐えがたい感情の大きな起伏がある。
人見知りをしないところだとか。・・・初対面の人には何故かぐいぐいいけちゃう。逆に中途半端に知ってると緊張する。
逆に母親には緊張しちゃったりだとか。・・・僕も経験あるけどあれはまじでなんで?
妙にいろんな人からの注目や影響力があったりだとか。・・・クラスのヒエラルキーとは全く別の所でクラスの中心人物になりがち。三角形自体を照らす照らす太陽のように。
一方で女子のグループに馴染めなかったりだとか。・・・発達障害者には女子のグループという概念理解するの難しい。
非情に気分屋であったりだとか。・・・まぁ基本めんどくさがり。
朝弱いだとか。・・・今もそう。
そしてそれらの問題を、基本発達障害・・・発達「障害」ではなく、アユの個性として受け止めている作者がの姿勢が凄くいいんですよね。
発達障害だから○○・・・といったのは基本出てこないです。表紙を見ればわかりますが、アユちゃんが発達障害児であることは一切触れられていません。
大阪にいた頃からアユは知らない人にいきなり話しかける変わった子だった
考えていることを説明もなしに突然話し出すので困惑されてしまう
こういうものおじしない人なつこさと
朝の電話みたいなシャイさが同居してるから
ホント面白い子だよな p.65
全て包括してアユちゃんの個性として受け止めて、日々の生活を営む。
その作者の姿勢が、なんかすごくいいなと思います。いい感じに力抜けているというか。別に発達障害があろうがなかろうが根本は普通の子育てと変わらないことを改めて教えてくれる、というか。
暴力は振るわない。相手の気持ちに適度に寄り添う。正解がないなかで答えを見つけ続けていく。
多分発達障害と初めから分かっているので、調べればいくらでもそれっぽい情報が出てくると思うんですよ。でもそれに縛られない。アユはアユだと向き合う。
アユちゃんを発達障害だからといってひとくくりにしない。
なので、発達障害、もしくは発達障害ではなくともそういう疑惑が少しでもある、そういう子を持つ親には特におすすめです。変なこじらせ発達障害育児ツイッター垢とだる絡みしているより本書を読む方がよっぽど有意義。
以下簡単に、各話感想を書いておく。毎度のごとくネタバレ辞さないので注意。
ちなみに、何故父娘ぐらしかというと、新婚の妻の仕事の事情である。要するになんくるない理由。複雑な家庭云々を期待する人は読まない方が良い。普通にファミリーものなので。
特に好きな話は「第3話 愛情ランチパック」「第10話 遠足たのしみー!」
「第1話 おれの娘がやってきた」:アユ、大阪から東京上陸!
おれとアユが親子になったのは平成30年3月のこと。8歳のアユは大阪からたった一人で東京のおれの家へやって来た p.3
やってきた初日のことが描かれています。
東京のモノは美味しいなぁ~と大げさに感動するアユちゃんTHE児童で可愛い。子供は子供を演じちゃうとこあるよね。そして次コマで明かされるまさかの真実。
パパお金ないもんね、と親の懐事情に遠慮するアユちゃんもTHE児童で可愛い。なぜか子供は親の懐事情を詳しく知りたがり亜k津貢献したがる傾向にあるよね。
ちなみに、そんなん言われたらしゃーないやんけとアイス奢っちゃう、ちょろい作者もTHE父親初心者。
でもまぁしゃーないそう言われたら専門店のお高めのアイスとはいえどぽろぽろ買ってしまうよな。
でも御馳走しちゃう、地点ではまだ親子とは言えない気がする。
父娘関係開始冒頭の初々しさが眩しい一話。
ここから日々を共にすることで二人は父娘になっていく。
あとマイクラって平成30年の地点ですでにあったんですね・・・時がたつのははえぇや。
「第2話 パパはマンガ家」:初日の夜!
(おれの作品を読んで)アユ「パパのゾンビ全然こわくなーい 絵がかわいいもん!」p.18
どたばた初日の夜が描かれている。そうか、小2(小3進級直前)って、もうすでにゾンビって知っているモノなのか・・・まぁ僕も知ってたか・・・。
これまでの生活とのギャップが哀愁まじえて楽しく描かれています。アユと一緒にいる将来の作者自身もゾンビ化されて描かれている・・・!
でも不思議なことに、3話以降の作者は大変そうだけれどもイキイキしている・・・気がするんだよなぁ。
あとことあるごとにヒカキン見ているアユちゃん。子供に大人気って嘘じゃなかったんだな・・・。当時の僕はゲームボーイカラー、もしくはアドバンスでした。インターネットし始めたのなんて小4からだし、動画を見始めたのなんて中学入ってからですよ。時代の流れを感じるなぁ。
「第3話 愛情ランチパック」:学童はまさかの昼ごはん持参!アユに量も味もちょうどいいランチパックを持たせた!!
おれ「アユ お弁当どうだった?美味し」アユ「まずかった」p.32
アユ「やっぱりパパのお弁当がいい!」p.33
この話本当尊いです。なんか涙腺に来ちゃいます。
絶対味だけで言えばヤマザキのランチパックの方が美味しいんですよ。でもアユちゃんはパパのお弁当が食べたいと言い張る訳です。尊い。
いつ失ったんだろう・・・この感覚。多分高校時代には失っていたんですよね。毎日弁当だったんだけど時折母親が起きれなくて作れなかった日、何のパン買おうか頭の中ルンルンでしたから。おつりもためて漫画買えるし。まぁ夕飯は普通においしいのに弁当になると途端に献立のバリエーションが少なくなる母親サイドにも問題がありますが・・・。
でも確かに、確かに僕達は親の弁当を楽しみにしている日々があった。
小学校の時は間違いなくそうだったね。まぁ毎日給食だったからというのもありますが・・・。
「第4話 学校に行こうよ」:新学期!アユも3年生!東京の学校に初登校日!
アユ「おろせいおろせおろせ」
おれ「いたたたたた」
おれ「ああそうか他の生徒に見られて恥ずかしいんだな」p.38
あまりにもアユが学校行かないので、自転車に乗せて連行した時のやりとりです。周囲の子供達が歩いているので恥ずかしくなったアユちゃん。
保護者といるところを友達に見られるの恥ずかしい、あの感覚ってマジで何なんでしょうね。授業参観とかもめちゃくちゃ嫌でした。親と友達が同じ空間にいると混乱しちゃうし恥ずかしいしたまったもんじゃない。土日のジャスコとかで出逢ったらもう最悪でしたね。てかぶっちゃけ現在(28歳)もそう。
家と学校とで使う仮面(ペルソナ)が乖離しているから、なのかなぁ。家と学校で使い分けている顔が共存模擬的二重人格になっちゃうというかなんつーか。何なんだろ。
授業参観でも平然としていられる友達が当時不思議でたまらなかったです。
閑話休題。
でも後半、アユちゃんもじりじりと東京の学校に馴染んで行った様子。読んでいてそこはほっとしました。まぁ多少いかない日があろうと、遅刻する日があろうと、「基本的には学校に行く」それが出来てればいいんじゃないですかね。
あ、あと自転車。1台の時点さhに2人が乗って学校へ向かいます。僕の推測なんですが、多分アユちゃんは自転車の荷台に座っていたと思うんですよ。ただ現在だともろにグレーゾーンじゃないですか。だからか、巧妙にアユちゃんとの二人乗り描写が避けられてたり、アユちゃんがナチュラルにサドルに座っていたり、プロってすげぇなと思いました。
「第5話 ドキドキ♥保護者会」:人生初の保護者会!
おれ「小学校の父兄とか先生とか今まで一番無縁な世界だったのに・・・」p.42
そのギャップにくらくらしながらも、なんとか参加する保護者会。係に立候補して見たりだとか、クラスの中でのアユを見て新たにもやもや心配しちゃったりだとか。意外と皆優しく受け入れてくれたりだとか。悲哀こもごも保護者会。
僕も長らく、そういう小学校だとか健全なところと無縁で生活をしているので、最近小学校の校舎を見ると眩しくて倒れそうになります。ランドセル背負っている子供を見るともうああ~~になります。ああ~~~。
当時は保護者会ある時は、早く帰れてルンルンだった・・・気がする。小学校の時の記憶がどんどん遠くなっていく感じが最近著しく、していて、それがとても切ない。それが、大人になるということなんでしょうか。
「第6話 アトピーはつらいよ」:初のアユの病院付き添い!
おれ「アトピーのある暮らしそれは ヌルヌルとともに生きる・・・」p.58
病院で受診の前に書類を書く際にワクチン接種歴とか既住歴が一切分からなかったり、裸だのなんだの遠慮とかしている暇なく無理矢理風呂にいれ薬を塗ってやったりと、あれやこれやがドタバタ描かれています。
あれ・・・?この作者・・・本当にギャグ漫画家か・・・?
絵柄も題材にあまりにもマッチしているし、もしやエッセイ漫画家じゃないのか・・・?
と思わせてからの最後の1コマで思わず笑ってしまいました。良かったね。
「第7話 公園デビューの日」:ママとテレビ通話、そして公園デビュー!
おれ「ククク・・・皮肉なものだな 今ではそのおれ自身がフツーの親子連れだとはな!」p.63
公園て無縁ですよね、分かる。特に大学卒業すると本当に無縁。そこで遊んでいる親子連れが本当に尊くキラキラ見える。
僕は28歳。おれ(作者)は55歳。
ましてや売れないギャグマンガ家歴30年、片手には常にエナジードリンクとなんともアングラな生活。
今の僕よりさぞかしもっと無縁振り積もっていたはず。
そんな作者からみた公園は、想像以上に開けて、さわやかで、自由で真新しく、見えたのでしょう。p.69の描写から、その解放感が感じられます。
途中キックボードが出てきますが、まつわる苦い思い出が本当しょーもなさとアングラを足して割ったようなエピソードで笑う。社会って深いよなぁと思う。
でも翌日即飽きちゃうのは笑ってしまったぜ。
前半は貴重なママの登場シーン。だいぶデフォルメされて描かれていますが、分かる分かるぞこの感じ、こういう美人な四十路いるよねー。このママもきちんとした大人の女性でありながらも、一癖二癖ありそうでなかなか面白そう。
「第8話 イライラする日」:突然アユがおれの顔を叩いて、おれは・・・。
仕事をしたくても思うようにいかない気ばかりあせる毎日が続きこうして無為に過ぎていく時間がおれを苛立たせた・・・p.73
数ある苦いエピソードの中でも、作者の中では最も苦いエピソードでしょうね。初めてアユちゃんに暴力振るった日のことが描かれています。
この回だけ「イライラする日」とタイトルが抽象的なことからも、未だに作者が後悔していて過去に直面できていないことが伺えます。でも僕は、数年たった今でも未だにモヤモヤしているということは、おれ(作者)が今現在もアユちゃんの父親を無事しっかりやっているってことだと思います。「あれは昔のことだから」「当時は俺も父親初心者だったからさ」いくらでも言い訳出来そうだけれども、そこに逃げず、ただ自分を悔いる作者の姿勢が垣間見えるタイトル。
初めて手を上げたショックはしばらく尾を引いたと言いますp.75とありますが、恐らくその尾は未だに引きずられていることでしょうずるずる。
ちなみに、そんなセンチメンタルな後半とは違って、
前半は面白人間ヒライが出てきます。
なんだこいつ、出てきたのが約1ページなのにとんでもない存在感。「ユニークで楽しい人」p.70なのはお前じゃヒライ。
再登場、希望ですね。
「第9話 わしらの孫がやってきた」:祖父母(おれの父母)の家へ突撃!
アユ「おばあちゃん これ!」
アユの祖母(おれの母)「あらあらお菓子?ありがとアユちゃん」p.82
アユはおれと血は繋がってないので、アユの祖母とも勿論つながっていないんですよ。無論家族・親族なのですが。
普通に「おじいちゃん・おばあちゃん」としてアユを迎えた二人は凄いと思います。多分80代って、「家族」という概念と血縁って密接に繋がっていた世代だと思うので。
特に、ママが送ってくれた大阪のお土産を渡している時の上記のやり取りは、もうアユちゃんが生まれた時から祖母・孫の関係性のようで、ほっこりしました。
まあ、疲れちゃうのは仕方ないですね。母方の祖父母が共に85超えてます。5-6年前、僕も大学生の時一人で帰省したことありますがやんわりと「家事手伝わないなら、もういい」電話で言われました。むしろ「ホント楽しい子」p.84という評価を貰っただけでも御の字じゃないでしょうか。
「第10話 遠足たのしみー!」:アユの遠足!!
アユ(おれの夢)「あれがないと連れていけないって先生が パパがリュックに入れてくれなかったから・・・」p.90
無事前日の夜に魅せられる遠足のしおり!!慌てて揃える持ち物!!かと思いきや最後にしおりを忘れていた!!という、遠足前夜もおおわらわ。タイトルもよく読むと「たのしみー!」なので、遠足前がメインの話だということが分かります。結構面白かったですね。好きな回。
えっちらおっちら。大変ですよ。なのに最後手間をかけたおにぎりが不評だったのは笑っちゃいました。
小学校時代僕も無事お便りは一切出さない子供でしたが、まぁ前日にこれ見せたら叱られてたでしょうね。こっぴどく。夜に。ギャン泣きですよギャン泣き。暴力もきっと振るわれていたことでしょう。
必要以上にやたらめったら怒ることなく、アユが無事に楽しく明日遠足できるよう奔走する「おれ」は滅茶苦茶いい父親だと思います。羨ましい。
アユ「あとねあとね」p.92
遠足楽しかった旨を報告するアユちゃんめっちゃかわいい。
「第11話 お出かけ日曜日」:アユちゃんを連れてフクロウカフェへ!!
アユ「なわけねーだろ」
おれ(コイツいま おれの真似したよ・・・
こうやって少しずつ本当の親子になっていくのかな・・・)p.100
前半はちょーフクロウです。アユちゃんフクロウに一切びびらず、且つフクロウもアユちゃんに懐いていて、凄いなぁと思います。動物関係の仕事とか目指したりするのかなぁ。フクロウに初対面で頬ずりできる人なんてなかなかいないっしょ。
あと、小3でフクロウに興味を持ったきっかけもちょっと気になる。ハリポタの世代でもないでしょ?
後半は、その他と居酒屋。
掲載したやりとりは最後に訪れた居酒屋でのやりとりです。
アユがおれの真似をしたんですね。
それに、ふっと俺が気づく。
・・・エモい。
家族であるのに、血の繋がりってやっぱ別に必須じゃないよなぁとか思っちゃいました。改めて。実際夫婦も(多くの場合)繋がっていない訳ですし。
家族って言うのは愛情を共有して同居している人達、てことなのかもしれないなぁ。
というのも、僕自身子宮内膜症でピルをずっと飲んでいるので、妊娠とか出来ない可能性を視野に入れているんですよ。前々から。
そうなった時に養子、も考えていて。腫瘍により救急車で運ばれた20代前半の頃から。
本書といい「たーたん」といい、だから血の繋がらない親子・・・・特に父娘漫画に強く惹かれるんだと思います。僕はめっちゃくちゃ両親と血がつながっていて容姿も中身も二人をごった煮にしたような感じです。どちらかというと、特に父と似てます。間違いなく父の子です。でも、あまり良い関係を築けていないので。その反動もあって。
だからこの1シーンは、なんか、ぐっとくるものがありました。
いやーこの一瞬があったら1日かかった費用なんて実質0円でしょ。
「第12話 ならいごとした~い!」:そろばん教室行ってみた!!
おれ「アユ大丈夫だから」
アユ「やだ」
おれ「パパもう仕事いかないと」
アユ「やだやだ」
アユ「やだーーーー!!」pp.111-112
そろばん教室の習い事をはじめたよ!という話です。
おれが先生から説明を聞いたり、実際に通っている子から評判を聞いたり、そしてアユが自信満々に楽しそうに通い始めたりと、前途洋々。
ここまでならまぁよくある育児マンガ。
アユちゃん最初こそイヤイヤ言いつつもこのままそろばん教室続けるんだろうなぁ。それで人間関係広がって東京の生活もっとハッピーになるんだろうなぁ・・・と思っていたので、
おれ「わかったわかった そんなムリに行けとって言わねえから」p.112
教室で泣いてやめる、という展開は衝撃でしたね。 デフォルメされて描かれていますが多分現場は相当大変だったのではなかろうかと思います。
思えば僕もやめた習い事いくつかあって・・・。特にスイミングは明確に覚えているのですが、本当だんだんサボるようになっていくんですよね。確か永遠に僕だけバッチが貰えないのが嫌だった、気がする。今も泳ぎは全然得意ではないです。まじで向いていないんでしょうね。
多分教室で泣いちゃったのなんてアユちゃんにとってはめっちゃくちゃ黒歴史なはずなんですよ。僕も人前で泣いたこと多々あります。めちゃくちゃ怒鳴られて恥ずかしい思いをしたことが多々あります。何なら中学生の時もありました。大学の時もありました。大学卒業後もありました。人生の7割が黒歴史です。
でもそういう出来事も、おばあちゃんち訪問やフクロウカフェ等の楽しい思い出と同列に、コミカルに描いているのがこの漫画のいい所なんだと思います。
いい思い出もつらい思い出も同列に並べることで、ああ、良いことだけではなく思い出したくないことも含めて、あの頃って全部が全部もう戻ってこないかけがえのない日々だったんだ。
子供時代の苦い思い出も、大切にできる。
この一点において、本作は日本国民全員に読んでもらいたいと思いますね。特に大人に。
「第13話 公園人間模様」:週末の家にこもっているアユを公園に連れ出すぞ!
おれ(アユと一緒に暮らすようになって1ヶ月半ーー 世界は何も変わっていないはずなのにその見え方は今までと全く変わってしまった)p.116
大阪からの転校生のアユちゃんとその保護者であるおれの、人間関係が描かれた話です。ちょっと前まで無縁だった公園社会に馴染むおれが微笑ましい。
終盤、アユちゃんがお友達に奢る描写がある。まぁ・・・分かるなぁ。なんか自己肯定感低い時、基本接してくれる人に申し訳ないみたいな感覚に陥って、もう今すぐにでも接してくれている人全員に1000円札あげたくなる、ありません?ぼかぁピルを乗り越えてやって来る月経前後でよくなりますねぇ!
それを見たおれが、アユが友達と馴染むためにある行動を起こしていて、それが「正解だったのか正直なところ今でもわからない・・・」p.120とありますが、子育てに限らず世の中の総てには正解などないので別にいいんじゃないでしょうか。
アユちゃんのために全力を尽くしている、だけで充分だとぼかぁ思います。子のためにめっちゃ頑張る。単純なことだからこそ難しい。まぁ子をもったことはおろか喪女、童貞(メス)なので知ったこっちゃあないですが・・・。
「第14話 パパになってよかった」:アユを歯医者に連れて行く際、思い出すのは10数年前の飲み会。あの頃は子を持つなんて無縁だと思っていた。
おれ(アユにとってはどっちが幸せだったのかな・・・)p.123
エナドリ片手に物思いにふけるおれ。
どっち、というのは明確には書かれていませんが、ざっくり「新しいパパ(おれ)がいる」「新しいパパ(おれ)がいない」という事でしょう。
分かりません。
もしかしたらおれと出会わなかったルートのアユちゃんは、この後大金持ちで毎日31アイスクリーム買ってくれてフクロウカフェも連れてってくれて、無論人格も素晴らしくて愛情も深い素晴らしいパパと出会うのかもしれない。
でも少なくとも
アユ「アユ全然がまんしてないよ めっちゃ楽しい!」p.127
と「新しいパパ(おれ)がいる」アユちゃんは言っている訳です。
実際「大阪から東京に来て・・・良かったと思う?」p.126という問いに対してジュースをじゅーっと吸っていることからも、それが分かります。基本子供って慕っている大人が、自分に遠慮しているところって見たくないですからね。
だから引き続き、「新しいパパ(おれ)がいる」アユちゃんが少しでも幸せであるよう努め続けるのが、おれの最大の使命なんじゃないでしょうか。
アユ「それにパパは前のパパみたいに怒らないしおもしろいもん」p.128
まじそれ大事。
第0話 父娘暮らしの前の話:アユと初対面
おれ(3月の冷たい雨に濡れる玄関先でゲームの攻略本を手にアユは待っていた)p.131
再婚したのに、なぜわざわざアユとおれが東京で二人暮らしをすることになったのか。それが詳しく書かれております。
東京に引っ越す前に何回かおれは大阪に行っており、その時の苦労話や、思い出等も描かれています。
多分この話だけカラーなので描き下ろし。単行本が1500円近くなった要因の一つでしょうが、でも、この第0話だけをカラーにしたのはKADOKAWA賢明な判断だと思います。*1
アユと初めて会った日を作者がずっと忘れないように、読者もずっと忘れない。
カラーすることでインパクト残すことで、読者はアユと出会った瞬間を、克明に記憶する。場面に色がつくことで、所謂おれ(作者)の追体験を読者がすることになる。
あと、子供の存在を「重圧」、結婚した時のメリットを考えた際に初っ端からジュリー似のママが出てきたところは・・・とても正直でいいと思います。雨の中立っていた連れ子の長女、という点でいくらでも美談に出来そうなものですが、当時の気持ちをありのままに描いているのは好感が持てました。相手の女(ママ)が好きで結婚する。意外とこれが難しい。
あとがき、では本作に出てきた友人たちの卒業式の姿が描き下ろされています。
なんでや!!!なんでアユちゃんのがないんだ!!!と別垢で嘆いていたところ、おれ(作者)からまさかのリプライがあり、そこまでの気力がなかったとのことでした。
要するにアユちゃんの卒業式は、本編で見れるということでしょうか。
父娘暮らし、まだまだ続くのも楽しみなのですが、是非ジュリー似の母親、そして妹、あと描き下ろしの跡に掲載されていた年賀状を見ると、どうやらアユちゃんに弟もいますね。家族ぐらし(仮)も読みたいです。
55で大黒柱になったという経験談、エッセイは、高齢社会の日本のこれからに絶対必要じゃないでしょうか。ましてやプロ歴30年以上のプロの描いた良質な漫画、となると。
以上である。
めちゃくちゃ良かったので、ここまで書くのに10日以上使った。1万字越えてる。
noteとのことですが、まぁこれは是非紙で読んでもらいたい。おじいさのばあさんおじさんおばちゃん・・・多分noteまでたどり着かないであろう世代にも響く漫画だと思うので。
そして全てこれ数年前の話なのですが・・・、そこもまたおれのアユに対する愛情を感じます。
リアルタイムの自分を漫画で発信される、っていうの結構嫌じゃないですか?
でも数年前、だったらまぁ、いいかってなりません?
アユちゃんが東京に来た頃、僕は絶賛ニートをしてました。その頃の生活を発信されるの、今ならまぁいいかなって思いますが、多分リアタイで発信されてたらめちゃくちゃ嫌だったと思うんですよね。腹出してぼりぼりかきながら吉田君が活躍する高校野球を見てました。ほとんど夜通し起きてウォークマンで音楽を聴きながら静かに涙をながしてました。
でも今だったらまぁ・・て、なります。ニートになったこと自体よりもそのまま引きこもり化しなかった点で、僕は僕を評価しているので。
閑話休題。
なので、時の流れの速さに流されず、あーでもまぁまぁ時には流されつつ、今のように引き続き楽しい思い出も苦い思い出も丁寧に一つ一つ、描いていってほしいなぁと思います。
2巻も楽しみです。
というか、紙媒体の2巻が出てほしいので、皆さん是非買ってけろ。おれの為、アユの為・・・よりかは、僕の、為に!!!
***
LINKS
なので初めてAmazonも貼っちゃう!!!!!!!!!!
父娘漫画。こちらは完全創作ですが良質漫画。
童貞が父親をやる話です。
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20220513 註をいれました。
「たーたん」の5巻が買えてないので積み漫画が減って来たら買いたいです。
他に親子漫画だとこれは母娘ですが「あたしがママよ」。これ今年中に買って読みたい。傑作というか小さい頃というか私の誕生祝に父方のおばさんが母にプレゼントした漫画。家になんとなくあってだらだら読んでたんですけど小学生の私でもおもろ~と分かる漫画でした。つい最近、何気なく調べたら「ごくせん」「デカワンコ」の人の初期作だったみたいでこれはこれはになった。これはこれは。そりゃおもろい訳だわ。