小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

萩尾望都『11人いる!』-現実は1億2千万人いる!からむつかしいよね。-

 

はえー。昔の少女漫画って

めっちゃSFで

めっちゃファンタジーやねんな。

 

萩尾望都『11人いる!』(小学館 1994年)の話をさせて下さい。

 

 

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【あらすじ】

宇宙大学受験会場、最終テストは外部との接触を断たれた宇宙船白号で53日間生き延びること。

1チーム10人。

だが宇宙船には11人いた!

さまざまな星系からそれぞれの文化を背負ってやっていた受験生をあいつぐトラブルが襲う。

疑心暗鬼のなかでの反目と友情。

11人は果たして合格できるのか。

萩尾望都のSF代表作。

裏表紙より

 

【読むべき人】

・SF漫画を読みたい人

・ファンタジーライトノベルが好きな人(ビーンズ文庫とか)

・昔の少女漫画的絵柄に惹かれるけど何読んだらいいか分からない人

 

【感想】

11人いる!

昔から少女漫画の名著として名前だけは知っていた。(多分一度聴いたら忘れられないタイトル)

作者の名前も知っていた。(ポーの一族、今は歴史漫画を描いている)

パロったタイトルのドラマも存在を知っていた。(主演は確か神木きゅん

でもジャンルは全然知らなかった。

てっきりミステリーだと思うじゃん・・・違うのかよ。

「11人目は誰だ・・・?」に焦点が当たるのかと思うじゃん・・・違うのかよ。

ミステリーを期待する人には勧めない。

11人目に期待するな!!!!!!!!!!!

 

けれど内容はまあ想像以上の大満足。

SF少年少女冒険譚といったところか。

文字量も多いし、設定も細部までよく練られている。

漫画を読んでいる、よりかはちょっとしたライトノベルを読んでいるに近い感覚。

 

特に脇役のガンガやヌーの星の設定があるのは驚いた。

しかも聞けば聞くほど非常に新しく感じられて、ますますその先を聞きたくなるような、濃密な設定。

物語の本筋に絡まないのにここまで考えてるのって今の漫画はおろかファンタジー小説でもなかなかないんじゃないか。

やっぱSF・ファンタジーって設定を読んでいる節あるからな。

 

あ、あと伝染病・・・この展開はちょっとコロナを思い出した。

結局11人は協力することで問題を封じ込めていく。

ああそうなんだなあ、やっぱり協力することが大事なのだ。

けれど実際、僕達はバーベキューする輩や居酒屋で食事会をする輩、ホスト、キャバクラ、アベックを赦せない。自粛しろと言ってしまう。

この船には11人しかいないけれども、

僕等が乗る船は1億2000万人いる!!!!!!!!!

 

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よく見ると上の三人顔が見キレているのじわじわ来るな。

続11人いる!東の地平 西の永遠

後半は王様の星でまさかの宇宙オペラ。

まさか船に乗ってたメンバーがあそこであっけなく死ぬとは思わなかった。

11人いる!-続編でそのうち誰か1人死にます。-

だったらなかなかミステリ好きも満足する内容だったと思う。知らんけど。

 

あと最後交際3-4か月で王様が所謂政略結婚するのは当時の風潮を感じる。

政略結婚なんて今じゃ決定的に「悪」とされているものだし。

それでも、やっぱりこういう物語上の政略結婚は、ロマンがあるよね。

お姫様と王子さまは結婚しました、はもっと現代で肯定されてもいいと思う。

女性の自立と未婚は関係ないと断言したい。

 

スペースストリート

終盤の番外編もなかなか良かった。最終回後のこういう番外編を望むのは今も昔も変わらないのねと安心すらした。

こういうドタバタを延々読んでいたいと思うけれども、それはシリアスは本編があるからであって、でも一番面白いのはシリアスよりもこういうのだったりして・・・でもそれは本編ありきで・・・卵が先か鶏が先か。ケンタッキー。

 

エッセイ

そしてあとがき。

中島らもなんだけれども、まあこのあとがきが痛快だった。

この本編、いくらでも難しいあとがきを書こうと思えば欠ける内容だと思う。

環境問題とか、青春時代とか、信頼関係とか、宇宙とか、未来とか、SF一般論とか、諸々。

でもらもが選んだのは「フロルの可愛さ」この1点!!

単純さ、バカバカしさが凄く痛快で良かった。

分かる。分かるよ。

結局は漫画なんだ。

面白くて、ヒロインが可愛かった!

それに越したことはなくて、後々はそれに付随する。二の次。それでいいじゃないか。

てかよく見たら「あとがき」でも「解説」でもなく「エッセイ」だし。

 

ちなみに僕が一番かわいいと思ったフロルは

「ちょっと熱があるみたい・・・」p.116

のフロル。

タダに言い寄られてここだけ女言葉になってるんですよね。ずるいわ。

あと「熱がある」という言葉にもエロスがあるよね。ずるいわ。

 

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母が一時期買い集めていた昔の少女漫画。てかポーの一族家にあったのか。

ちなみに、こういう「昔の少女漫画」は、苦手意識があった。

母親が昔好きだったと砂の城の新装版を買い集めていたが、昼ドラのような年齢差アベックの何が良いのかサッパリ分からなかった。

「ベルサイユとばら」、主人公が死ぬという結末を既に知ったうえで、あれだけ分厚い漫画を読む気にはなれなかった。フランス革命という歴史舞台も難しく思った。

あと「聖ロザリンド」、ホラー好きだったからあれは一通り読んだ。そんなに怖くなかったけど、どうも読んだ翌日ガッツリ体調を崩して、トラウマになって決定的に苦手になった。

しかしそれもこれも昔。

26・・・もうすぐ27目前の今!今こそ読むべきなのかもしれない。

昼ドラのような濃密な愛憎劇、ベルサイユ宮殿舞台に繰り広げる壮麗・壮大さ、罪の意識なく殺す少女の恐ろしさ、

そして本作の宇宙船を舞台に繰り広げられるSF壮大ファンタジア、

10代前半の僕にとっては劇薬。胸やけがした。

でも今!今ならその刺激に心地よく痺れられるのらも!

 ちょっとこの1冊をきっかけに、昔の漫画もディグってみようかなと思った。

 

 

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母が一番好きな少女漫画、砂の城。ちょっとミュシャみがある。

 以上である。

期待してたのとは違ったけど結構面白かった。

フロルかわいい。

これであとがきを書いちゃうらもさすが。

昭和の少女漫画とらも、読んでみようかな。おおむねこんな感じ。

 

少し前に読んだ沙村広明『おひっこし』もそうだったけど、

「タイトルだけ聞いたことあるけど読んだことない」漫画はやっぱり大抵とても面白い気がする。

面白いと知ってるのに、触れないまま老いていくのは嫌だ。

漫画書籍音楽映画舞台なんでもいい。

どんどん撃って、撃って、撃っていこう。

 

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最近撃った、タイトルだけ知っていた物物。

どっちもすごくエネルギッシュで、エモーショナルで、半端なかった。

 

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