小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

沙村広明『おひっこし 竹易てあし漫画全集』-揺れろ燃えろ萌えろ喚け。オートバイで駆け抜けろ。-

 

邦画を見ている感覚。

 

沙村広明『おひっこし 竹易てあし漫画全集(講談社 2002年)の話をさせて下さい。

 


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【あらすじ】

「オモシロすぎる」「先生はやっぱり天才です」「イメージ壊れたっていうか」「クソ漫画」

言いたい放題いってくれて感謝感激の涙のランチョン日記から半年ーーー

沙村広明に絵がクリソツな竹易てあしが送る人の死なない漫画!!

 

八王子から橋本とかだいたいあの辺を舞台に繰り広げられる

懐かしくてちょっぴり切なくて

心底どうでもいい若者の群像を

4回ぐらいにわけてお届けします。

 

p.42 より引用

 

「少女漫画家無宿 涙のランチョン日記」「みどろケ池に修羅を見た」も収録しているよ!!

 

【読むべき人】

・八王子とか橋本とかだいたいあの辺でキャンパスライフ送った人

・大学が舞台の面白い漫画が読みたい人

・面白い邦画を読みたい人

・今40そこそこの人

・「風と共に去りぬ」が永遠に私の名盤です!!とか言っちゃう人

・「この漫画面白いよ~」と言われ続け知ってはいるものの今まで手を出してこなかった人、面白いよ~

 

【感想】

漫画研究会用ツイッターアカウントにて「ああ~~~面白い漫画知りたいンゴ~~~」と言ったら薦められた一冊である。

「面白い漫画教えてくれ」スレッドなどで枕詞化しつつあるこの漫画だけれど、

どれ、口もきいたことない顔どころかツイッターのアカウントのイラストしか知らないし時々♥送り合うだけのうっすいうっすい友達以上恋愛未満どころか他人以上知人未満関係の先輩だけど漫画研究会にいた同志が薦めるのであれば外れは無いだろう。

だって漫画研究会なんだし。3回太字。

ブックオフオンラインでポチった。ついでにずっと気になっていたハルシオンランチもポチった。

沙村先生の漫画を読むと小文字でやたらと色々書きたくなるけど読みづらくなるのでここでやめます。

 

外れは無いだろう・・・くらいだけれど、

大正解だった。

 

はいまず舞台!!東京八王子橋本その辺!!!

僕等の大学もその辺にあったから、まあなんかすごく親近感!!

あいにくモデルの多摩美大卒ではないけれど、

「南大沢」、多摩動物公園、擦れた雰囲気のバンドサークル、自動販売機、雰囲気、全てが刺さる!!!!

とにかく、刺さる!!!!

あの八王子橋本に乱立する有象無象の大学に通っている人・通っていた人は間違いなく絶対読んだ方がいい。めちゃくちゃ刺さる!!!

 

「馬鹿野郎 日本の女のボーカルなんてな・・・・・・

千秋がいりゃそれでいいんだよオ!!!」p.89

 

圧倒的2000年感!!!

ノストラダムスの予言を乗り越えた2000年感がたまらない。

皆ピチピチのTシャツを着て、デニムのミニスカート・パンツ、これもミチミチしている。

ショートカットは輪郭に沿っていて、真夏にニット帽なんか被っちゃう。

青春の合間をバイクで駆け抜けていく。

多分40前後の人は懐かしすぎて泣いちゃうんじゃないか。

当時の若者のエネルギッシュさがいい。

ロングスカートとツーブロックが台頭する現在とは明らかに違う、

2000年の若者感がいい。

三大欲求兼ね備えたうら若き身体を、みっちみちの窮屈な服に無理矢理捻じ込め、バイクで、駆け抜けていけ。

 

 


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雰囲気!!!!大学サークルの恋愛もつれ!!!!

めっちゃ好きなのか。そうでもないのか。

身体目的で好きなのか。身体精神含め総合的に好きなのか。

本当に好きなのか。ちょっと好き程度なのか。

その「好き」の温度差に、読んでいてヒリヒリする。

 

 

多分最後の主人公の「好き!!!」が圧倒的突き抜けていたから、

あの結末に至ったのでしょう。

あの子の好きは「好き・・・・かも」だったから、

あいつに届かなかったのでしょう。

そして彼女の「好き!!!!!」は主人公をしのぐ程の強さだったから、

最後に飛行機に乗れたのでしょう。

そして本作を読んで感じたその「ヒリヒリ」は。

多分青春の痛みです。

昔の古傷が痛んでいるのでしょう。

 

高校生から社会人へ移り変わる狭間の四年間、

子どもとも大人とも言えないかけがえのない日々。

この頃しか、こういう強い「好き!!!!!!」は衝かない気がする。

同様にこの頃しか、「ちょっと好き、ずっと近くにいてほしい」に強く縛られない気がする。

狭間に恋愛に悩み揺れる燃える萌える。

命短し恋せよ乙女、なんてうまい言葉、どこの誰が言ったんだろう。

 

こういう、20前後男女の突き抜ける衝動を描いた映像作品は多いけれども、漫画作品は少ない気がする。僕が無知なだけかもしれないけど。

邦画の青春映画が好きな人にはもう聖書化レベルで刺さるのかもしれない。

 

「幼なじみとか・・・・・・・・そういうのだけ」p.134

 


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そして同時収録されているのは「少女漫画家無宿 涙のランチョン日記」である。

「おひっこし」では人は死にませんが「ランチョン日記」では人が死にます。

「おひっこし」は大学青春漫画ですが「ランチョン日記」は人生青春漫画です。

ある意味。

 

一人の女の人生を描いた話である。

風俗、極道、刑務所・・・と各所で男に踊らされながら無垢なる処女はどんどん堕ちていく。

けれどその瞬間は唐突。最後の数ページで彼女は一気に成り上がる。

最後の横顔が美しい。

 

これこそ極端な例だけれど、大抵の女の一生ってこんなものだと思う。

若い時一瞬はしゃぎはすれど、その後様々な地獄を見て、脱落するものは脱落し、脱落しない者は口を閉ざし、それでも前向いて生きていく。

風と共に去りぬ

今でも名高いあの作品と同じ血が、

このヤクザ風俗チンピラ漫画にも通っている気がする。

まあ風と共に去りぬ見たことないけど。

 

僕等を下に見て胡坐をかく男など、

全員撃ち殺してしまえ。

 

「ああっ また イヤラシイ雑誌だァ!」p.176

 


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「みどろケ池に修羅を見た」

所謂京都旅行レポートパロディ漫画だけれど、

大して面白くもないしなんかよく分からんかったな。

 

ただ近年の作者の「あとがき」の文章が全て印刷した文字なのは十分分かった。

汚いからです。

 

以上である。

本編が良質の青春映画を見ているような作品で、

尚更舞台も親近感わくところで、

ちょー最高だった。

やっぱ漫画研究いそしんでた人が薦める作品は違いまんなあ!!!

 

***

 

LINKS

一緒に買った「ハルシオンランチ」。

期待値は「ハルシオン」のが上だったけど、

「おひっこし」のが面白かったです。僕的には。

 

 

tunabook03.hatenablog.com