SF(すごく不思議)コメディ!!!
沙村広明『ハルシオン・ランチ1-2』(講談社 2010-2011年)の話をさせて下さい。
【概要】
突然現れた美少女ヒヨス。
その正体は宇宙から来た奇妙な存在だった!
不思議なお箸でリアカーから人間まで何でも一瞬で食いまくる。
そして吐きまくる・・・!?
ホームレス男や理系ヤンキー女、果てはヒヨスの仲間まで加わって、
そこらじゅうでシュールにホンワカと荒唐無稽な大騒動!
まったりオート系SF、いよいよ開幕です!!
裏表紙より
【読むべき人】
・パロネタ、メタネタが好きな人
・何が何までよくわからんギャグマンガ読みたい人
・頭空っぽにして読める漫画探している人
・2010年懐古厨
【感想】
昔からよく「面白い漫画教えてくれ」系スレのまとめに出てくる作品で、
全部で2冊で、
且つこの作者で読んだ作品今まで外れもなかったから、
絶対面白いだろうと思って読んだけど・・・。
うーん。想像以上の混沌とカオス。
正直僕はついていけなかったなあ・・・。
簡単に言うと、イケメンのホームレス(元実業家)(41歳)のもとに、釣り目の美少女ヒヨス(食いしん坊)(無口)(お箸を使ってもちょもちょ食べる)がやって来る。ヒヨスはなんでも食べる。だから吐かせないといけない。無理矢理吐かせると大抵食べたものが合体して出てくるのでもうどうにもならない。怪物が生まれ続けるしかない。そんななかホームレス(41歳)(白髪)(ヒモ男の才覚あり)は、絡んできたヤンキーの一人・メタ子(18歳)(攻略が難しい女)(理系)と、会社再建に向かって、まず2000万円貸した進次(モテる)(眼鏡)(ヘタレ)に借金の返済を迫っていたところ、彼のもとにもヒヨスの仲間・トリアゾ(金髪)(なかなかつれない)が来ていて、そこでひと悶着して、結局進次とトリアゾは八戸に向かい・・・!?目指せグルメ漫画!!!
あらすじのところに書いてある四字熟語、
まさしく荒唐無稽そのものなんですよね。
だからたった2巻といえど4巻分くらいのスペクタクルが起きてるわけです。終盤なんでもうガチのSFですからね。ガチのSFはついていけない。
まだドストレートに展開してくれればよいものの、莫大な数のパロネタメタネタことばあそび時事ネタで埋め尽くしながら進んでいくわけですよ。もうどこに目をやったらいいのか分からない。ごちゃごちゃ。
パロネタ。ドラマ映画アニメ、作家の浅くて膨大な知識を詰め込めるところ全て詰め込んだ感。なるほど、こういう使い道のない知識はこうやってSFで漫画書いて発露させればいいのね。ばきゃろー。
メタネタ。メタ子という登場人物がいるように、メタファーのネタも隙あらばぐいぐい押し込んでいます。背景人物締め切りご都合主義・・・政策の裏側全部見せ。卑猥。メタの意味が実は僕よく分かっていないのはヒミツのあっこちゃん。
ことばあそび。日暮里とにっこりを駆けるんじゃない・・・ん~にっぽり♡
時事ネタ。刊行時は2010年。アスキー犬はじめ、やられる人はピンポイントでやられます。10年前。何があったか何流行ってたかもう思い出せませんでしたが、これ読んで何となく思い出しました(/・ω・)/(/・ω・)/今と大差ないだろと思ってたけどやっぱり結構違いますね(;´・ω・)汗
それが全部ごちゃごちゃ詰め込まれているんですよ。1ページに2-3つはこのどれかが散らばっている。恐るべしサービス精神。
ただその「ごちゃごちゃ」はあくまで作家が狙って創ったものであり、妙に味があるからこそ、今でも「面白い漫画教えてくれ」「はいよ」と名前が挙がるんでしょうね。
以下羅列。
#1 アペタイザー
この1話にしてもう全てが分からない。何だその主人公。何だそのまちがいさがし。何だそのフナに対する知識量。何だその結末。どこからツッコめばいいんだ。
ヒヨスのスカートの下部が穴空いた卑猥なデザインって、やっぱこれが始祖?
#2 アゾトバクター
意外と進次の隠れ家のアパートが見せ場。
意外と進次が出てき続ける人物だったとは。食べられて終わりだと思ってた。
#3 ナビゲーター
アスキー犬誕生秘話。そういえばこいつヒヨスの部品だったんだっけな。
意外と設定SFしててビビった。
あとデコデコ凸したガラケーって懐かしいわね。ラインストーン自体がもう爪の上でしか見ないものになってしまった。
#4 インヒビター
「可愛すぎる市議会議員」みたいなのって、もう10年前にはいたのかよ。
あとここから突然ラブロマンス始まってビビった、日暮里♡
#5 ゲートキーパー
これほど憎い応募者全員サービスがあろうかいやない。沙村広明の多摩美大卒の画力で描かれるヒヨスのヒヨス、見たかった・・・!
「皆既日食」ってそうか、2010年でもう「今更」感のあるネタになっているのか・・・。
てかこの頃まだ食うために商売模索していたのか。総じて1巻は平和にコメディーやってんな。
#6 デッドリンガー
家族ものもそうだよねぇ・・・行っておきたいよねえ・・・。
東野圭吾はそうかあ、2010年だともうとっくにメジャーな作家だよなあ。
あとこのお姉ちゃん全ての元凶と見せかけて別にそうでもないというね。
#6.5 ドグマタイザー
何が何だかよく分からないが、絶望的結末が良かった。
終末物、少女終末紀行最後に見なくなってしまったね。そういえば。
#6.9 ハッシュスリンガー
12ページとは思えない濃さの漫画。体感30ページ。
エンタニルは顔一緒なのになんでこんなに可愛いんだ。
#7 リップスノーター
もう何が何やらか分からないが、十角館の殺人のパロはぐっと来た。講談社繋がり。
「マンガ擦れした日本人的には9割方そうだと思っていたよ」p.109
#8 アイドラー
ヒッピーものをラスト二話で決行。地球規模の話なんだと無理矢理読者は覚悟する。
感動もののはずなのだけれど、さっきアジアの大スペクタクルSFを60ページあっけて読んだものだから、ここまできたらなんかもうよくわからない。
地球VSヒヨス&トリアゾの母団体。
7-8話かけて、覚悟した地球規模の大規模スペクタクル最終回が始まるのねと唾をのみこみ覚悟するけど、
最後の最後なんかもうよくわからなかったな。マジのSFになると本当ついていけないのだよ。
作者が最後に6話と7話と最終話はこの話をまとめるのに必要だった云々言っているけれどもうその発言にもついていけない。p.206
ちなみに、タイトルについてる「ハルシオン」とは、ハルジオンとは違うんだそうな。睡眠導入剤の名前だそう。
劇薬漫画という意味では、確かに、タイトルは関連あるのかも。
結末見る限りすべては胡蝶の夢エンドなら、睡眠導入剤の名前はなおさらぴったりなのかもしれない。日本で一番打つ牛居と言われている終わり方、タイトルの伏線回収エンド。
以上である。
カオス混沌極まるえげつないオート系SFだった。
てかこの「オート」も嘔吐とかけているのか。
何が何やらもうよくわからなかったが、
まぁ読んで後悔はない。
ただまぁ「面白い漫画教えて」と言われて、
僕はこれ上げませんが・・・。
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