小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

沙村広明『幻想ギネコクラシー1』-ゴムタイヤのような絶望は癖になり、喜んで齧る。-


「ゴムタイヤは札幌の地下鉄。御無体なは沙村広明の漫画。」

呟きたくなる帯。

沙村広明『幻想ギネコクラシー1』(白泉社 2014年)の話をさせて下さい。



【概要】
短編集、ショートショート集。

身もふたもないお話を書かせたら当代髄一。

収録作品
・鳳梨娘
・かまくりあん
・楽園からのハッピーバースで^
・筒井筒
・コップと泥棒、その妻と愛人
・新世紀ゴッドスレイヤー
青い珊瑚礁2011
・オムレツの思い出
・惑星ソラリッサ
・健啖家・最後の晩餐
・殺し屋リジィの追憶
・イヴァン・ゴーリエ

「ギネコグラシー」とは女性上位・女権政治のことです。
自分の漫画の傾向として女性キャラが男性キャラをしたに欺くようなものが多いような気がしたので、
このシリーズもどうせそうなると思い連載途中で付けました」

「あとがき」より抜粋


帯より

【読むべき人】
・エロ・SF・ホラー、全部一気に取り入れたい変態
ショートショートが好きな人

【感想】
カオスである。

この前『ブラッドハーレーの馬車』
を読んだカフェで、
1冊漫画10円で借りられるというから借りた漫画である。
(返却期限なし。神か?)
ブラッドハーレーが面白かったのと、
短編集を食べて生きているので、
ぽろっと借りて読んだ次第。

これが10円なんて。
正解だった。

以下感想。
特に好きなのは「筒井筒」「惑星ソラリッサ」

■鳳梨娘
富豪の愛人やってたら、その富豪の家に果実のプールに浮かぶ美女(全裸)がいた、たまんねえ。

しょっぱなからインパクトでかい作品。
巨大フルーツポンチのような果物のプールで全裸で浮かぶ美女、
とかどんな頭してたら浮かぶんだろ。
絶対まともな頭じゃないな。
最後の1ページとか、特にまともな頭じゃない。
これ、Ifってことだよね?
切り開かない方がいい運命もあるなんて、残酷じゃないか。ギネコグラシー、ギネコグラシー。
ちなみにこの主人公ヒロインの人物像は、
この作者の作品の女性のいわゆるテンプレート、に近い気がする。
ギネコグラシー、ギネコグラシー、嫌いじゃない。
あ、あと鳳梨って、パイナップルのことなんだって。



■かまくりあん
地球温暖化かまくらが作れなくなった雪国での、初恋の話。

「かまくりあん」という言葉の響きがまたいいよね。
言いやすいし、ちょっとエロい。「あん」ってさ。
大きい女の子が好きな人にはたまんない一遍。

■楽園からのハッピーバースデー
星弘は童貞で40歳を迎えた記念に、楽園からある権利をプレゼントされる。

サッポロビール持ってんじゃねえよとまず突っ込みたくなる。
結末は一番印象深い。
その楽園、僕も連れて行ってくれないか、
いやそもそもその楽園の、住人になりたい。
これが噂の「無限の住人」というやつなのかしら。
あとサンマ今年はとれてないって・・・これも妖精の復讐
ギネコグラシーギネコグラシー。

■筒井筒
地球を冷やかしに来たアベックが遭難したぞ。

最後の一ページがまさしく「スパッ」とした切れ味。
予想外でエグくて、さすがの僕もこれは予測できなかった。
最後の彼女の絶望を想うと、そらさよなら告げるわな。
アルファケンタウリ、アルファケンタウリ。

■コップと泥棒、その妻と愛人
「この二人は正直村と嘘つき村の道案内です」

よく聞くブラックジョーク?小話?を短編化したもの。
いや、ブラックジョークか。
だって典型的なエロ漫画のテンプレートを踏んでて、
まさしく漏れる笑いはブラックだったもの。
途中まで。
最後に答えが提示されているのもよかった。

■新世紀ゴッドスレイヤー
神が世界を作ったよ。

勢いだけで世界創造。
アダムがなかなか良い味を出している。
ミルモでポン!を思い出した。
リアルミルモって多分こんな感じ。
妖精らしい愛らしいルックス。

青い珊瑚礁2011
憧れの先輩と海で泳ぎの特訓をしたぜ!

沙村版ぐらんぶるといったところか。
ぐらんぶる読んだことないけど。
最後のオチはなるほどな、と思った。
僕も常に持ち歩いておこうかな。

■オムレツの思い出
おばの衿子さんは、綺麗で、いつもオムレツの匂いがする。

沙村版山田詠美といったところか。
山田詠美はかじったことある。
異世界・未来人・妖精が多い中で、
あまりにもド直球なストーリーだったから一番インパクトでかかった。

■惑星ソラリッサ
着陸した惑星は摂氏-30℃、一人のワンピースの女性を発見。

エロとSFが5:5と見事な配分でつまった6ページ。
ギネコグラシー、女性政権。
やっぱり窓もわぜるは大切にしなければ、ギネコグラシー、ギネコグラシー。
筒井筒もそうだったが、
残された側の絶望が、癖になる。
ギネコグラシー。この言葉のように。

■健啖家・最後の晩餐
大食いクイーン・圷麻美子の秘密。

その技術を大食いごときに使ってしまうのかというトンデモ設定に加えてトンデモ結末。
これあったら引っ越しとか移動とか楽で済むのにね。
股間に収まっているのがしょーもなくて、良いですね。

■殺し屋リジィの追憶
目が覚めたら棺桶のなかだった!

どいつもこいつも変態だらけだ。
ただこれタイトルが微妙だなと思っていて、
ラストがまさかのまさかすぎて、
タイトルにもなってる「殺し屋リジィ」の存在感が薄いんですよね。
「スナックエリィのママの追憶」等のほうがまだしっくりくる。センスないとかおいといて。
ただたったこれだけの短編のために地道に方言調べてるとか
やっぱ頭おかしいんだよなぁ。好き。

■イヴァン・ゴーリエ
父の事故死で心が壊れた母は、夜な夜な浮浪者を抱いているを発見する。

沙村版ゴールデンカムイといったところか。
話の本筋よりも、を楽しむ作品。
このデザインは恐らく、ウィリアム・ブレイクの挿絵を参考にしたんじゃないかな。

以上である。
結構あっという間に読めたし、おっぱいが多かったし、あとまあおっぱいが多かった。
後やっぱこの人の解説は、面白いですね。
文章面白い漫画家は、たいてい漫画も面白いですから。

ギネコグラシー、ギネコグラシー。



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沙村広明『ブラッドハーレーの馬車』