一つ一つの窓の向こうに、生活が営まれていると思うとたまらないよね~。
「団地ブック 合併号0・1」(チーム4.5畳 2018年)の話をさせて下さい。
【概要】
団地、好きですか?
団地愛好家集団チーム 4.5畳がお送りする、
団地に並々ならぬ愛を注いだ一冊!
【チーム4.5畳とは】
団地愛好家集団。
公団住宅や公営住宅をはじめとする団地などを撮影・収集・分類し、それらの中でさらに細かい区分(給水塔・ツインコリダー・市街地住宅・断面・アニマルライド)について研究・鑑賞し、その成果を発表することを目的としています。
また、団地に関連する音楽やアート作品(絵画・写真・模型等)を発表し、『団地』そのものを『アート』対象として、世の中に認知していきます。
裏表紙より
【読むべき人】
・団地好き
・団地が気になる人
・団地で興奮する人
・「団地妻」に興奮する人
【感想】
団地。
もともとうっすら興味があったものの、明確に興味があるなと思ったのは、新卒で就職した塾講師の時だった。
講師といっても1年目のペーペーなので、夏期講習・冬期講習前には一人でも多くの小中学生を塾に来て参加させるため、様々なアクションを起こさなければならない。
そのなかのひとつにあったのが、ポスティング。
講習の概要が書かれたチラシを、無造作に(どこの家に子供がいるかわからないから)とにかく一軒でも多くの家のポストに投函するのである。
そして、その務めた塾の区は、所謂「市営団地パーティ地区」であった。
「かもめ」「すずめ」「ひばり」「めじろ」・・・。
鳥の名前からつけられた様々な団地が密集する地域であった。
団地はポストが密集している。
団地はポストが密集している。
団地に行けば早くたくさんチラシを分けられる。
夏期講習、冬期講習それらの団地を必ず一巡するようにしていた。
しかし、鳥の名前でそろっていても、団地の姿は多種多様だった。
例えば「めじろ」団地は大型の団地。治安は割と良い。中心の広場から伸びる遊歩道は駅へとつながっており、ショッピングセンターへ横断歩道を渡らずに行くことが出来る。編み物教室や英会話教室等の張り紙も貼られている。お年寄りも多かったが、若年層の夫婦も比較的多かった。
例えば「すずめ」団地は小型の団地。治安はかなり良い。小学校前に立っている。遊歩道、広場も全て手入れが行き届いている。名前こそ「団地」ではあるものの、ほとんど低層マンションといった印象。比較的綺麗。築10年程化。小学生がいる家族世帯が多いと見えて、高校のシールが貼られた自転車も多く目立った。
例えば「かもめ」団地は閑静な団地。建物も古くお年寄りが多い。ただ近くの不動産屋にはリフォーム済の部屋の案内が貼られていた。洒落たフローリングに白い壁。値段は3桁万円。築年数こそたっているものの、部屋を綺麗にすることで、比較的若い世代にも来てもらえるよう努めているようだった。
例えば「つばめ」団地は物騒な団地。15階建てで、ドアが10つも20つも並ぶ縦にも横にも大きい鉄筋の建築物が並行して密集して並ぶ。そのうちの何割が廃墟のようで、人の気配があまりしない。道路からも遠く離れていて、正直園団地の周りだけうっすら空気が暗い。そこはまわらなかった。「あの団地には投函しないでね。殺人事件や自殺が数件起きているから」
そういった個性様々な団地をひとつひとつ訪問し、ちらしをいれていく作業は大変ではあるが、なかなか面白かった。
目に映る一つ一つの窓に一つ一つの生活が営まれている。駐車場に並ぶ車も多種多様。軽自動車、ワゴン、外車、諸々。いったいどの部屋に住んでいる人がどの車に乗っているのだろうか。下駄箱の下に転がる汚れたサッカーボール。遊歩道を歩くベビーカーを押す夫婦。今は誰も乗っていないであろう子供用自転車。誰かが乗っているだろう一輪車。ベンチに座り呆けているお年寄り。掲示板にはさびれた色のチラシ。
ポスティングする前には必ずマップを見る。大抵の団地は5以上の棟で形成されている。1つの棟で最低でも50人住んでいるとすると、この敷地内で最低でも250人の生活が営まれているということになる。250の人々。250の人生。
それは、もしかしたら新婚後お金がないからと住んだ団地だったのかもしれない。それは、老後お金がなくて年金で細々暮らすため引っ越した団地だったのかもしれない。それは、子供を私立大学へ行かせるための節約として住み続けた結果の団地なのかもしれない。
そういった妄想をくるくる繰り広げながら、ポストに1枚1枚さっ、ささっと投函していくのだ。1枚2枚3枚4枚・・・。
「団地ブック」。
だからネットショッピング(「はちみせ」)でこの文字を見たとき、その時の思い出が一気に蘇ってきた。
そして思わず、クリックをせずにはいられなかった・・・。
団地万歳。
以下簡単に各記事の感想を書いていく。
0号と1号の合併号である。
そのため、まず0号の感想を順に述べていく。
わたしの一枚:お気に入りの団地の一枚を撮影
新潟県営石山第二団地p.7の写真が特に良い。
団地の前に置かれた自転車はなぜなんなに多弁に主人の生活を語ってくれるのだろうか。あとなんだかんだ、こじゃれた団地も好きだけれどもこういう王道の団地が、結局日本人の心象風景なんだよ。日本人はみんな団地へ還る。
日本級数党員養成ギプス:第一回給水塔を探そう
すみません。僕はこの記事で初めて「給水塔」を知りました。
てっきり、団地の上にあるあの謎の球体のことを「給水塔」というものかと思ってたら違うのですね。
じゃああれは何。給水玉?
私の団地修行:茨城初秋
関西から茨城に、一泊二日で団地を見る為に行った旅行の記録・・・団地好きが極まると新幹線に乗って宿泊してまで団地を見に行くらしい。やばい。凄い。
一軒一軒団地の窓をしっかり映しているのが良かった。そう。住民の生活を想像するに不可欠な要素それは窓。窓の作りで団地がどれくらいの年数のものなのか、もわかるし、その住民が果たしてどんな生活を送っているのか、もわかる気がする。とにかく知りたいこと全てがわかる気がする。この人とは「団地のツボ」が合いそうである。
最後の団地好き界隈では有名らしい、「茨木県営見和アパート」の写真は白黒ながらでも、圧巻。素晴らしい。これは是非見に行きたい。(多分いかない)
初心者のための団地講座:団地鑑賞において知っておきたいこと
同人誌である。だからまぁその書き手の文章力がいまいちということも考慮しなければならない。
進級団地容姿比較、団地運営に携わる運営が多種多様に分かれることが書かれている。だが、比較をする際のポイントや、運営が違えば一体団地の何が違うのか、といったところまでは言及されていない。
団地愛だけは十分に伝わるページである。
団地アイフォノグラフィーのススメ:三脚+カメラで団地を撮影していた筆者は、ある日それらを総て手放し、アイフォンで撮影することにした。そのきっかけ。
要するに、アイフォンの方が手軽にスナップ写真のようにとれるから、カメラを捨てたよ~のお話である。カメラガチ勢が読むとなかなか面白いのかもしれない。
団地をアイフォンで撮影する際の6つのポイント(「団地アイフォノグラフィーのストイシズム」)や、印刷する際の解像度についての解説まで書かれている。
団地写真家を目指す方は必読の記事ではなかろうか。
私の団地撮影用持ち物一覧:団地を撮影する時にもっていくショルダーバッグの中身だ!
これはシンプルに勉強になる。団地に行くときに一体何を気をつければいいのか何を持っていけばいいのか。
手ぬぐい、カメラ、帽子等は分かるものの、クリアファイルや名刺等も用意しなければならないというのは驚きだった。
そう、団地はあくまで「他人の敷地」なのである。そのことに敬意をしっかり払っていることが分かる持ち物一覧。さすが給水塔党首。
団地AtoZ:団地女子が「あ~わ」に沿って、各文字ごとに団地記事をフォーカス!
「ヨルダン」p.35というのは、夜各部屋に電気が灯った団地のことであるらしい。大学時代によく通った橋の川沿いにあったヨルダンのことを思い出し、ちょっと胸がきゅっとなった。周囲が真っ暗な中、電気が何百と灯る団地は非常に幻想的で美しく、ノスタルジーだった。綺麗だった。美しかった。あの頃も僕はひとりだった・・・・きゅっ。
ちなみに、この筆者は既婚者であるのにどうどう「団地女子です!」と名乗っている。そのオタサーの姫気取りの精神が気に食わない。
団地のグルメ:団地鑑賞の際に是非立ち寄りたい、団地の近くにあるグルメ
ラーメン屋が紹介されている。なかなか美味しそう。是非行ってみたい。(多分いかない。大阪なので)
1号。
わたしの一枚:お気に入りの団地の一枚
UR稲沢団地p.47の写真が良い。取り壊しが決まったほとんど廃墟同然の団地の写真なんだけれども、こう・・・なんだろうね。どうしてこんなに廃墟は人を魅了するのか。
団地トラベラーの記録:台湾に高層団地を見に行こう!
台湾、中毒の団地は規模が半端ない。どこまでも続く家々、どこまでも続く窓々、どこまでも続く生活。なかなか圧巻である。
ただ、僕が惹かれるのはあくまで日本の団地。外国の団地の写真はどうしても「海外の写真」感が強すぎて、ちょっと違う。
でも面格子の写真p.53は結構興味深かった。私ならそこに何を置くだろう。猫を飼いたい。雑種。ベラ、雌猫、3歳。
日本給水党員養成ギブス:第2回 下を向いて歩こう
給水塔の下の部分にフォーカスしたコーナー。基本的にはフェンスで囲われている。法律によってそのようにしている場合が多いらしいが、正式には「フェンスで囲わなくても良い」らしい。というわけで、なかにトンネル状になっていたり展望台のようになっていたりするものもある。はえー。
なんかこのコーナーだけ、やたら真面目に「日本給水党員を養成したるぞ」という気概を感じる。現在、この団地ブック6号まで出ているが、そこまで読んだら僕は見習いくらいまではいけますでしょうか・・・!?UC師匠!?
PTA会長の憂鬱:「Protect Tile Association(タイル保護者の会)」会長の妄想ラノベ
この特集だけ圧倒的につまらなかった。
妄想のライトノベルがやりたいのなら別冊でやれ。
童貞キモオタの妄想が痛々しくて、文章も痛々しくて、読んでいるこっちが恥ずかしい。
というかタイル保護者の会会長を名乗るのであれば、一枚でも多くのタイルの者h審を掲載してその違いを説明するのが普通、ってもんじゃないのかい?え?
読んでいるこっちが憂鬱になるページだった。しかもその割に数も多いし。なんだよ。削って100円程安くしてほしいレベル。
団地間取り列伝 Vol.1:第1回 公団 55-$N-2K-2型
昭和三十年代初期の団地の間取りを解説したページである。非常に興味深く、面白かった。主婦の家事の負担の軽減を図り、風呂と台所は隣接している。バルコニーは広い。2室にも1室にも使える工夫・・・。
今は消えつつある間取りらしいが、なんだかほわほわと妄想が広がる。
当時の主婦は一体毎日何考えていたのかしら。「主婦」というのが一つの憧れの職業だた時代に彼女達は何を思って何に悩んで何を喜びにして暮らしていたのだろうか。キュートに美しくそしてクールに。
バルコニーは広い。
この連載は是非追っていきたい。
公団アパートの裏遊園地カタログVol.1:大阪市、神戸市の団地からピックアップ
ただただ撤去された団地の遊具の写真を紹介したページなのだけれども、これがなかなか面白い。
冒頭で、その設置するに至った日本住宅公団初代総裁加納久朗による文章が、ますますその遊具の写真一つ一つに深みをもたらす。
当時どういった気持ちでその遊具を設置するのに至ったのか、公園に設置された遊具に秘められた想い・・・。
この連載は是非追っていきたい。パート2。
団地AtoZ:団地女子が「あいうえお」に沿って、団地のあらゆる部分を紹介。
あ。から始まる、「アニマルライド」はなかなか可愛かった。
というのもこういう動物の遊具、見てるのめっちゃ好きなんですよね。なんか。
サビれてるとなおさらいい。特にリアルな「サイ」が良かったなぁ。
お。「沖田神社」。なんとその界隈では有名な団地神社らしい。そんな神社あるのか。すげぇな。団地にも神は宿る。八百万の神の国、日本・・・。
でもやっぱり既婚者なのに「団地女子」名乗っているのが気に食わない。
尚更団地サーの姫なのも気に食わない。
以上である。
おおむね楽しめた。特に0号より1号の蛾なかなか興味深い生地が多いのも期待できる。ので、続刊2-3合併号もすでに入手している。
団地にこんなにときめいている人がたくさんいようとは。
続き何が書かれているだろう。ワクワクである。
団地ブック・・・これを読んで極めれば、何気ない街歩きもちょっと楽しくなる・・・?のかもしれない。