果てしなくファッショナブルな雑誌による「読書案内」。
「ギンザ11月号」(マガジンハウス 2020年)の話をさせて下さい。
【概要】
本のおしゃれ虫になる
GINZA読書案内
「空想の館」という題名の、古本を使って創られた家の模型展示を見たことがある。
矢ね、天上、窓枠すべて本(床だけは無数の栞が敷き詰められていた)。
扉を開けると6畳ほどの広さで、壁の一部の背表紙を抜くと読書できる仕組み。
佇んでいると誰かがそばにいるような感覚。本の気配が感じられた。
さて、今月号は187冊の本をいろんなアプローチで紹介します。
活字大好き、本のおしゃれ虫たちが大量発生中です!
p.32より
恐らく編集者が書いてた文章であろうが、前半のセンスの良さに対して最後の「活字大好き、本のおしゃれ虫たちが大量発生中です!」の投げやりはどうにかならなかったのか。あと前半と後半文体違うけどそこはどうなのか。そんな敬語でハイテンションな雑誌なのかギンザって。学校のおたよりみたいなテンションだけどそれでいいのか。
今月号では、187冊の本を多様なアプローチで紹介。
【速報】活字好きな本のおしゃれ虫たちが大量発生中
とかでよくない?
【読むべき人】
・本好きな人
・普段GIZNAを読まんくとも、本好きな人
・「ダ・ヴィンチ」読者
【感想】
GINZAといったらおしゃん・ハイセンス・チョー攻めてる・凄い高い割にTPOが分からない服ばっか・パリコレのイメージがあった。間違いなく読者は人生カースト上位。僕のようなじめじめした人間には無縁の雑誌かと思っていた。
が、なんとまあ、そんなGINZAが突如掲げたのは「本特集」。
本特集、というのはまぁ所謂「本を紹介する特集」なのだけれども、僕はこれがだぁ~いすきなのである。だぁ~いすき。
だから人生カースト上位に対するひがみとだぁ~いすきの間に挟まれてあばばばしていたけれども、僕は意を決して手に取った次第。
結果、まぁまぁ良かった。僕でも楽しく読めた。
というか、中身のお洒落度がぐっと上がったくらいで、中身はほとんど「ダ・ヴィンチ」やんけ・・・と思った。あのKADOKAWAの。あの元オタクがこぞって読むというあの雑誌。
何故そう思ったのか。理由は主に2つ。
・話題の書籍の作家のインタビューをがっつり掲載
本書では、恩田陸と遠野遥のインタビュー記事が掲載されている。が、もうこの陳腐な発想がダ・ヴィンチ。というかGINZAがやらんでも多分この2人、既にダ・ヴィンチが取り上げている気がする。もっとGINZAらしく捻った鼻につく作家を取り上げてほしかった。
・本物による書籍紹介
著名人による本の紹介、というのはマガジンハウスの本特集の十八番である。が、大抵においてここにおける「著名人」達のほとんどを僕達は知らない「なんちゃって著名人」だったりする。ところが本書では、又吉直樹・満島ひかり・長濱ねる・岡山天音・夏帆等マジの著名人・・・特にテレビで活躍する著名人を多く呼んでいる。「なんちゃって」も多いが、それでもマジの著名人の度合いの高さが目を惹く。もうそこがダ・ヴィンチ。
また、他の特集も「本屋さんでのグラビア」や「書籍を持ったモデルの撮影」「新刊の翻訳を手掛けた女性翻訳家へのインタビュー」等、無難なものが多い。発想が新しいものがない。そりゃそうだ。普段ファッションをフューチャーしちえる雑誌なのだから、斬新な発想を求めるのは酷な話だ。それにマガジンハウス・・・雑誌の家だけ名乗る分、出来も良い特集が多いわけだし。
ただまぁとにかく、読んだら結構ダ・ヴィンチだった。僕はとにかくこれが言いたい。
以下簡単に、本におけるページ・・・「THE BOOKS LOVERS GUIDE」内の特集の感想を書いていく。
034 本とコート、未来のカノン
将来「名作」として語り継がれるであろう書籍を、外国人モデルがおしゃれなコートを着込んでおしゃれに読んでいる写真群。
当たり前だがどれも10万円越え。脳汁ぷしゃーっ!!
p.34に出ているシスターのようなコートが可愛いと思ったけど身長154センチ(短足)の僕が着るとこれはこれは・・・になるんだろうなぁ。
取り上げられている書籍の中で気になったものはスティーヴン・ミルハウザー『エドウィン・マルハウス』。あらすじ見る限りみんなだいちゅきエーミールが出てくる「少年の日の思い出」に近いものがあるように感じるが、どうなんだろ。文庫本にして1500円・・・脳汁ぷしゃーっ!!
気になった本: スティーヴン・ミルハウザー『エドウィン・マルハウス』
恩田陸さんの和風なんだかアロハシャツなんだかよく分からないダサいシャツで脳が再構築される・・・・ッ!!!
恩田陸は活躍するレーベルこそ一般書籍と言えど、日本一のラノベ作家だと思うのだけど、そこんとこどうですかね。GINZAがラノベを扱う・・・逆におしゃん。
多分編集部のなかで恩田陸好きがいたのかなぁ・・・。もっとGINZAっぽい作家って山程いると思うのだけれども。皆川純子とか。
044 デザイナーたちから言葉の贈りもの
所謂ファッションで第一線で活躍すr人による本から明言を抜粋といういかにもGINZAらしい鼻につく特集である。この特集だけ、ダ・ヴィンチとは距離を置老いていた。
そしてたとえどんなに良いことをその人が言っていたとしても、その言語が英語であるならば、その威力は半減されてしまう。まぁ僕がブランド云々にそんな興味ないといいうのが根底にあるんでしょうけれど。
048 満島ひかり×又吉直樹共感よりも、不可解こそ恍惚 ふたりが本に惹かれる理由
二人がお気に入りの本各々二冊持ち寄って対談している。言葉の距離感云々について語っているがまぁ常人には理解できないことを云々語り合っている。まさしくこの2人こそ「本のおしゃれ虫」といったところか。
そんな2人が協力して小説の連載をするんだそうだ。
満島さんが回文を考えて、それに沿って又吉さんが小説を書くという物。圧倒的負担・又吉!と思ったけれど、満島さんが考えた回文も意味こそないが長く美しく、これを考えるのもなかなか大変そうである。
小説は結構面白かった。最後のたった二分。たった二分だがその内容が気になる。
まぁ、又吉が齧っているのだから、いつか書籍化するんだろうなぁ・・・。
気になった本:萩原信一郎『歌集 滑走路』
054 朝吹真理子 ニットの肖像
女性作家のニット×古書店のグラビアである。さすがは女性作家と言ったところか。たたずまいが慣れている。あとちょっと、小池栄子に似ている。
あえてなのか、周囲にある書籍のタイトルがほとんど分からないのが残念。そのため朝吹さんのグラビアがメイン。
ううーん。朝吹さんも悪くないんだけど、どうせ写真がメインになるなら、そこに長濱ねるちゃん欲しかったなぁと思う。古書店×長濱ねる。知らない作家よりこれ見たかった。
あと「日記専門のZINEを扱う店」「店主の問いによって書籍が並べられている店」「100年以上の歴史を持つ店」等、東京はさすが。面白い本屋が多いなぁ。いいなぁ。
061 ロゴ、書体、フォントを調査!おしゃれ業界と”文字”
書体に注目した一ページである。上半分はブランドのロゴに注目。確かにブランドごとによってだいぶ字体違うよね。
下半分は資生堂の花椿に使われている文字に注目。なんとまぁ、この書体、「資生堂書体」というものがああって、入社したデザイナーには約3か月それを習得する期間が設けられるんだそうな。意味わからん。てか化粧品会社が書体を持ってるってどういうことやねん・・・どういうことやねん・・・。
062 いつもそばに、物語とジュエリーを。
女性の生き方が書かれた本と、ジュエリー写真のコラボである。別に書籍紹介必要なくない?逆にジュエリー紹介必要なくない?2つの関連性も薄く、手掛けている人は一流と言えど正直企画自体が微妙な特集。
ただムーミンの作者「トーベ・ヤンソン」が女性であることには驚いた。フィンランドっていうからお爺さんだと思っていた。
気になった本:トゥーラ・カルヤライネン『ムーミンの生みの親、トーベヤンソン』
メイ・サートン『独り居の日記』
063 岸本佐知子ワールドへようこそ 海外文学のおもしろさを教えてください
金魚を抱えている子供の絵が表紙の本。
最近色んな本屋で平積みされているから内容が気になってはいたのだけれど、まさか短編集だったとは。『内なる町から来た話』、ショーン・タン。名前も覚えた。今最大に積ん読がたまっているため厳しいけれど、この翻訳者の話を読んでぐっと読んでみたくなった。ただの絵本かと思ったらどうやら違うらしい。絵を主題にした短編集みたいな感じだそうな。
他にも、この岸本さんが訳してきた女性作家の本が紹介されている。どの本もあらすじが独特でなかなか興味深い。
いやしかし、サガン『悲しみよ こんにちは』、サリンジャー『ナイン・ストーリーズ』どちらも難解で面白くなかった覚えがある。
今読んだら、違うのだろうか。
気になった本:ショーン・タン『内なる町から来た話』
ショーン・タン『セミ』
リディア・デイヴィス『ほとんど記憶の無い女』
ルシア・ベルリン『掃除婦のための手引き書』
070 24人の愛読書 私のいちばん好きな本
24人の本物の著名人・なんちゃって著名人が一番好きな本を紹介するというコーナー。誰が何を紹介したか全て書くと、本書のネタがバレ過ぎていまいちだと思うので、著名人の名前と「僕がその本を読みたくなったか度」★5つで判定していきたいと思います。
1.夏帆:★★★☆☆ 2.清水奈緒美:★★★☆☆ 3.井野将之:★★★★☆ 4.井之脇海:★☆☆☆☆ 5.吉開菜央:★★★★★ 6.近田まりこ:★★☆☆☆ 7.宝健吾:★★☆☆☆ 8.平野太呂:★★★★★ 9.松田ゆう姫:★☆☆☆☆ 10.鈴木みのり:★☆☆☆☆ 11.落合宏理:★★★★★ 12.佐久間宜行:★★★★★ 13.DAICHI YAMAMOTO:★★☆☆☆ 14.岡山天音:★☆☆☆☆ 15.仁村紗和:★★☆☆☆ 16.秋元才加:★★★☆☆ 17.間部百合:★☆☆☆☆ 18.ユザーン:★★★★★★ 19.白武ときお:★★☆☆☆ 20.荒神明香:★★★★☆ 21.南雲詩乃:★★☆☆☆ 22.牧野圭太:★★☆☆☆ 23.芋生悠:★☆☆☆☆ 24.荒内佑:★☆☆☆☆
気になった本:★5つついているものすべて
076 長濱ねると小川洋子作品 密やかな読書
「密やかな」「小川洋子」・・・そう、小川洋子「密やかな結晶」を主題に撮られた写真・エッセイ。ところがどっこい、小川洋子先生大好きなんですけど、僕これ読んだことないんですよね・・・。
他に5冊まとめて紹介されているのですが、でもこちらの本よりかは別の3冊のが気になるかなぁ。
そしてねるちゃん。雑誌という媒体で彼女を見るのは久しぶりです。あんだけダ・ヴィンチ言ってたけど読んだことないので。
ただ、長濱ねる×小川洋子がジャストフィットかというと、そうでもない気がする。
ねるちゃんには例えば・・・「第六官界彷徨」の尾崎翠さんがピッタリなんじゃないかなぁ。今で言うと綿矢りさとか。
小川洋子はちょっと彼女の童顔には似合わない。
小川洋子は、同窓の三白眼の少女・影山優佳のが似合う気がする。櫻でいうと顔面だけで言うと渡邉理佐、大園玲(でも多分彼女達は本を読まない人であろうからダメだ)。乃木でいうと鈴木絢音、金川沙耶。女優で言うと二階堂ふみとか。
まぁ好きな作家さんとのコラボと言われればもうどうしようもないんだけどさ・・・。
気になった本:紹介されている緒が陽子の書籍6冊全部。
083 GINZACHARMINGBUSTERS 本棚からのお気に入り
GINZAのモデル、GINZAガールズ達のお気に入りの本と本棚を紹介する特集。
面白い。
写真集ばっかり。意外とガチな文庫本と単行本。流行りのエッセイ。洋書。創元推理文庫。母国語(韓国語)。人によって結構違って面白かった。
特に「お気に入り」として、村上龍『五分後の世界』を挙げているサクラマヤミチキさんは気になりますネェ・・・。あれ、「お気に入り」として挙げるのか?普通「コインロッカー・ベイビーズ」じゃないのか?そこも含めて気になる。
088 読んで味わう本と料理
僕は読書においてグルメのジャンルはそんな好きじゃない。漫画もしかり。
何故ならお腹がすいて集中できなくなるからです。
完
本をもっと好きになる!GINZALIBRARY
32冊まとめて編集部がGINZA読者に向けて本を薦めるという雑なんだか丁寧なんだかよく分からない重みのある2ページである。見たこともある本もあれば見たことのない本もある。ベストセラーもあればベストセラーじゃないものもある。
「高学歴」の「良い趣味」をしたマガジンハウスの編集部が薦めるのだから、おおかた外れはないのだろうけど、とちょっと意地悪くも思う。ちなみに僕が読んだことある書籍は1冊もなかった。
気になった本:
島本理生『ファースト・ラヴ』:この前島本デビューを果たしたので2冊目に。
角田光代『私はあなたの記憶のなかに』:角田先生の短編中編は外さない。
山内マリコ『あのこは貴族』:かれこれ3年くらいずっと気になっている。
松田青子『持続可能な魂の利用』:欅坂のにほひがするので。
藤野可織『来世の記憶』:『爪と目』は今でも覚えているよ。
小山田浩子『庭』:『穴』は読んだ。
女性作者の書籍が多すぎるのが気になる。
だがそれもGINZAらしさといえばらしさなのかもしれない。
だからこそ、やっぱりあのゴリゴリの『5分後の世界』を挙げた彼女が気になるのだ。
092 最新BOOKTOPICS8
あの外国書籍シリーズを新潮社が刊行し、「身長クレクレクレメンス」「新潮クレストブックス」と名前がついていることを初めて知る。『双子のライオン堂』は本特集にあるとすぐに出がち。出すぎだぞ。『B&B』は本特集になるとすぐに出がち。出すぎだぞ。BIBLIOPHILICのブックダーツ。ラッパーが哲学書やビジネス書を読んでいるのは知的。コ本屋一時期ツイッターフォローしてた。古典芸能にかまっている暇は今はない!!!
気になった本:エトガル・ケレット『突然ノックの音が』
095 GINZA HARUKA COLUMN
遠野遥『破局』についてのインタビューだけれども、まあページ数割いてた「ケトル」のインタビューのがそらその分内容深堀出来ていいインタビューできるわな。
本特集以外にも結構面白い特集があった。
TOD’S 新しい”T”との日常:公衆電話で話しているというシチュエーションでのファッショングラビアである。公衆電話、いいよね。本当僕大好きで。道端にあるとついつい写真撮っちゃうくらい好き。それで電話をかけているというシチュエーションに特化したグラビアとかもう最高だよね。格好いい可愛い揺さぶられる服がほしくなる撮られたい。
朝吹真理子のデザイナー訪問記#18森永邦彦:アンリアレイジの人である。平手友梨奈の存在を通して知ったブランド。そしてこの社長がまさあの「ドロップアウトのえらいひと」の森永博志の甥だとは思わなかったな。その一点において。
緊急企画これなんなん!?ニッポンを席巻中 岡山の逆襲:なぜ朝吹真理子先生のグラビアがあって、岩井志麻子先生のグラビアがないのか。そこがダメ。岩井志麻子にファッショナブル・オシャンティーな一面を切り取ってこそGINZAではないのか。正直このコーナー単体でもPOPEYEにあっても「an・an」にあっても何ら不思議ではない。GINZAらしさがない。ダメ。GINZAの岡山特集ならば、岡山デニム履いた岩井志麻子に桃太郎の本持たせて岡山について品よく下品に語らせるくらいしろ。雑誌のアイデンティティーを見失った瞬間その雑誌の寿命は短くなる。
冬までにしたい5つのケア 理想の質感に近づける「肌のフィットネス」:意外と現実的な値段のコスメも多く特集していて驚いた。
G'sentertainment
YUKI'swonderland:松田ゆう姫って結構千秋に似ててる気がする。あとこの女結構嫌いじゃない。ハロー!世界のガールフレンド:何このフレンド。かっこいー。神木隆之介になりたいの:え、これ第20回とか今まで19回も神木隆之介になったあれこれしたいという妄想をしてきたということ?頭おかしすぎるでしょ。一刻も早く書籍化しろ。
松尾スズキ「人生の謎について」:この人のエッセイ本はいつか読んでみたいンゴねぇ・・・。
以上である。
今までおしゃんな雰囲気に遠慮してきた雑誌だったけれど、大好きな本特集だったからか比較的楽しく読めました!!!
でもところどころ「おいおい・・・GINZAでこんなんやってていいのか??」と思うようなところも多々あったので、多分この雑誌も10年は持たないと思います。
でも、普段ハイセンスはファッションばかり取り上げているような雑誌が「読書」を人と津のコンテンツとして取り上げるということは、つまりそれは「読書≒お洒落なこと」と見なされうるということ・・・。なんか、そこに一つの意義がある気がする。「普段ハイセンスなファッションを取り上げる雑誌が読書を話題に取り上げました」。
いやないかもしれん。
ここまで持ち上げといて7000字も感想書いといて、最後ディスると見せかけて褒めると見せかけてやっぱディスる。これが私のファッショナブル。終わり。
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LINKS
記事内で書いた書籍の各感想文。
この2冊は背伸びして読んだ。サガンはまだおもろかった覚えがある。
龍は春樹より好き。この2冊しか読んだことがないが。なんたらかんたらのブルー読んでみたいわね。
この特集の蛾内容は充実してた。てか全体的に「マガジンハウスへの挑戦状」という感じすらした。
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ちなみに、この前ブックオフオンラインで買った書籍群。この中に、本書を読んで買った書籍も数冊。