僕の母親は、肺がんを患っている。
恐らく付き合いながら生きてくことになるんだろう。
そう思ったときに、ふと頭をよぎった一冊。
「東京グラフィティ #154 2019年2月号」(グラフィティ 2019年)の話をさせて下さい。
【概要】
第一特集:MESSAGE 余命宣告後の生き方
余命宣告を受けて、人生について考えること、私の生き方
第二特集:ママと僕の甘い生活
仲良し母&息子・8組登場!デートをしたり、ハグをしたり、仲良しな親子が増えています。
【感想】
僕が本書を見つけたのは、埼玉県の志木駅の本屋である。
2019年年明け早々、埼玉の親友の家に就活の為泊りに行った僕はそこで見つけた。
平積みになっていた。はえ~と思いながらも、結局買わず店を出て友達と無事会って無事泊った。
母親の肺癌が判明したのは、この年の春だった。
それから母は入退院を繰り返しながら、今現在も闘病を続けている。
そして僕は想像以上に衝撃を受け、そのほかいろいろ相まって無事抗うつ剤を月に1回貰う日々を送っている。
僕が再び本書を思い出したのは、毎度おなじみ新静岡駅の丸善ジュンク堂で、あるコーナーである本を見たからだった。
そこには「癌に感謝したい」「癌にありがとうと言いたい」といったようなタイトルの本が並んでいた。手に取った写真集は、癌をはじめとする難病を克服した人々が笑顔満面に映っていて「今が最高に楽しい」「夢は■■■!!!」と書かれていた。
眩暈がした。
分かる。
いや分かるんだよ。
僕たち一人の力ではどうにもならないような難病を突発的に患ったとき、それをプラスに捕らえることで、自分の残りの人生(それは数年もしくは数十年)を充実させていく。
とても素晴らしいことだし、立派なことだと思う。道理にかなっている。
でも僕は、そこに立った瞬間クラクラしたのである。
それは未だに僕が母の病を認めきれていないからなのかもしれないし、ポジティブな言葉に対する皮肉な感情なのかもしれない。分からない。
その時に思い出したのが、この一冊なのである。
だらだら使うようになったメルカリで調べること数か月、ようやく出品された本書をやっと購入した次第。
東京グラフィティというのは、知っている人は知っている全国流通の雑誌である。
主に扱っているのは東京の人々。の、様々な話題を毎号提供する。
例えば「バッグの中身」とか「人生を変えた本!」とか「部屋の写真」とか「コスプレ」「ショップ」等々。
最近多いのは「性」。オープンにエロを語るAV女優とか。3人で愛し合って生きていくことを決めた人達とか。
連載も街角スナップ写真やインタビューで占められる。いわばちょっとサブカル寄りの「月曜から夜ふかし」の紙媒体という認識で良い。
バックナンバーとか見てみると面白い。その年その年の流行が反映されていたりして、歳をとるごとに薄まる去年今年来年の概念がとても濃く感じられる。
この雑誌なら、「難病」「癌」等といった話題を、どのように取り扱うんだろう。
関心と、
頼む。どうか。
どうか。
病になって良かったと、癌になって良かったと、
満面の笑顔で、
言わないでくれ。
祈りから、
手に取った。
サッカー部だったんだそうな。
特集:MESSAGE 余命宣告後の生き方
癌、だけではなくALSやその他の難病で、余命宣告を受けたことのある(受けている)人々にインタビューを行った記事である。偏りはある。雑誌掲載のインタビューを承諾した人々である。。社長やミュージシャン、難病を抱えた人々へ向けた活動をしている人が多い。
向けられる質問は多様。その多くが結構聞きづらいところまであっさり聞いているのが良かった。
「余命宣告を受けて最初に考えたことは?」「宣告後、家族や恋人以外で会いたくなった人は?」「人に言われて心に残っている言葉は?」「人生で一番泣いたことは?」「あなたの人生で過去最高の栄光は?」「人生で一番幸せを感じたことは?」「総理大臣なら真っ先に取り組みたいことは?」等々。
それらが(書ける状態の方は)全て直筆で掲載されているのも良い。汚くても読みづらくても小さくても、彼等の声を紙面越しに聞いている気分になる。
特に一番印象に残った質疑応答は、
「人生で一番大切なものはなんだと思いますか?」
「自分に素直に生きること。今日は終わりがあると気づかされ悔い無く生きるにはどうしたらいいか。本当の本当はどう在りたいのかを考えるようになった
一度きりの大切な自分の人生をハッピーにする答えは自分の中にある」
藤原英理花さん p.15
というもの。
僕は今フリーターと言う特質上、人生とは、とか、この先どう生きるのか、とか、自分のやりたいことは、とか,今の自分が幸せになるためには、とか、そもそも幸せとは、とかいろいろ考える。
でもその答えは全部僕の中にある。自己啓発書の中でもない、漫画の中でもない、著名人有名人の格言の中でもない。全部僕まぐろどん個人の中にある。
忘れずにいたい。
デリケートな問題であるからか、難病の特集自体が珍しいし、あるとしても所謂シニア世代の雑誌なので、この特集が「東京グラフィティを2019年2月号」を唯一無二の一冊にしている。末永く所持していたい雑誌。
あと、こういう難病特集のメディアってどうしてもテレビが多いよね・・・映像の力は凄いけれども、テレビだと、忘れちゃうよね・・・。だからといって「癌でも強く生きてます!!」みたいな単行本を1000円以上の金額で購入したいかっていうとそうでもないしね・・・。1000円以上の重みまではええねんもうちょっとライトに考えたいねん・・・みたいな。なかなか、こういう特集を組める雑誌自体が少ないと思うのですが、雑誌だからこそ、刺さる話題でもあると思うので、他の雑誌もネタ切れならこのトピックやってほしいですね・・・。「BRUTUS」「CREA」あたりに、期待してるヨ。
まだ食べたことないけど・・・。
特集:ママとボクの甘い生活
いやきんもい。
そりゃ綺麗なママが多いけれどもそれでもきんもー☆
特に息子を彼氏扱いしている人も度々見られて本当にキツかった。近親相姦ドキュメント。いや、他人の愛の形にどうこう言いたくはないし、否定もしたくないのですが、それでも血がつながった親をもしくは子を恋愛相手としてみるのはもう本当本能的に無理。
まぁ強いて言うなら、「05 ママ(秋香)と息子(勇貴)」p.60の関係性はまぁ・・・理解出来るし素敵な関係だと思うかなあ。特にママ側が
Q.息子について嫉妬することは?
「私が見たことない笑顔で彼女と話しているとき」p.60
と、彼女の存在を容認しているので・・・。いや他のママ当たり前に赦していないから・・・。あとまぁ互いに親子としの絆があったうえでの、「甘い生活」なので・・・。本当マジ、息子は彼氏じゃねんだぞ。母親は彼女じゃねんだぞ。マジ・・・。
でもまぁ幸せそうならそれでいいのかな。きんもー☆は変わりませんが。だってママだぞ。
1+1=3:男がイケメン。
BOOKSHELFGALLERY:45歳の美容師が、こんなに本読んでたらギャップに惚れちゃう。内田樹とか「サピエンス全史」とか当たり前に本棚にあるの良いですね。
TOKYOSTREEETFASHIONSNAP:表紙のアベックが可愛い。当たり前に出てくる職業の「会社員」全員に尊敬のまなざし。はい!!ぺかーーーーっ!!!!
今月のギョウカイ クラブパリピ女子:このままクラブとは無縁の一生を送りそうなので誰か連れて行って私をパリピにしてください。
テーマ別映画レビュー 「タバコがかっこいい映画」:紹介者の一人に渡辺大知が出てきてる。「鮫肌男と桃尻女」「シャッター・アイランド」「一瞬の夢」「阿附ライカの光 アイ・青春・海」紹介されてる枻がどれも見たくなる。何気に良質レビュー記事。
童夢:39になっても処女は避けたい。
沙織との日々:次東京グラフィティ買うなら、沙織特集の古書がいいなあ。
VOICE 「出身国以外の人と付き合うならどこの国?」:どうでもいい話なのですが、前いた店舗のスタッフが生んだ赤子が、ペルーとのハーフと聞いておったまげました。
発見!街の王子様:何にでも「王子」つければええと思ってたら違うぞ。「ワンちゃんもふもふ王子」でお願いします。
ROOMGALLERY:今回は夫婦の2部屋がっても良かった、アンティークのミシンがインテリアとして堂々と置かれていた莉、座れるぬいぐるみに当たり前に座り、赤い冷蔵庫が得屋に馴染んでいたり。
君に遺す五箇条:「四. 二人で、尾瀬に行きたかった」p.82
心に響くセリフ集:「さいはて機構」という本、気になる。メルカリで調べたらやっぱり高かった。
ピンク日記:毎度思うがピンクじゃない日記の方が読みたい。
TOKYOLOCALFASHIONSNAP:神保町のサンタが全員なんだかどれもきっつい。可愛くて綺麗だけどきっつい。
100answers これまでの告白成功率は?
男子と女子の答え方の違いが面白い。
女子。は、成功率高ければ高いほど如何にして成功したか詳しく語る傾向にある。まるで私モテるの当たり前。
男子。は、成功率低ければ低いほど如何にして成功したか詳しく語る傾向にある。まるで僕の想いが通じたのは奇跡のような。逆に成功率高い男子は「俺が格好いいから!!」みたいな答えばかり。
なかなか面白い結果が出てる。
社長になった青年
青年時代の質疑応答
⑩将来の夢は?
大きな夢を抱くこと。自分が「これだ」と思ったことを実現するために、いろんなポジションにつく必要はあると思っていました。p.74
社長になるような青年はもう、大学時代から違うんよな。なんかもう根本から違う。細胞から違う。覚悟が違う。凄いなと思う。
以上である。
なかなか面白い特集だった。
雑誌ならでは、東京グラフィティならではの切り口で臨む「難病」という話題は結構斬新だった。他にもいろいろ切り込んでほしい話題がある。例えば「政治」とか「お金」とか「アイドル」とか。性の話ばかりしてんじゃねーぞと言いたい。「東京グラフィティ」、東京の落書きを名乗るくらいならもっといろいろやるべき特集あるはずだ。落書きって言うのは、Hな単語だけじゃないだろう?もっと自由なはずだ。・・・まぁとにかく末永く続いてほしい雑誌である。2か月に一回になっても。3か月に一回になっても。
あと特集に対しては、まぁ平凡な感想で恐縮だが、毎日一日一日を大切に生きようと思った。
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LINKS
過去の東京グラフィティの感想。
バックナンバーはバックナンバーで結構面白いので古本としてもおすすすすすす、め。