恋は、どうしてこんなにも痛いのか。
穂村弘『求愛瞳孔反射』(河出書房 2007年)の話をさせて下さい。
【概要】
獣もヒトも求愛するときの瞳は、特別な光を放つ。
見えますか、僕の瞳。
ふたりで海に行っても、もんじゃ焼を食べても、眠っても、深く深く共鳴することができる。
心のシンクロ率の高い僕達。
だから、いっしょにレートーコに入ろう。
歌人にしてエッセイの名手、穂村弘が送る、甘美で危険な純愛連結詩集。
裏表紙より
【読むべき人】
・一つの恋が終わった人
・一つの恋を夢見る童貞
【感想】
あー失敗したーって思った。
と言うのも僕は本書を随筆だと思って買ったのである。
詩集だった。
あー失敗したーって思った。
というのも僕はこれを「昔のおもちゃ」について語った随筆だと思ったのである。
二人の男女の恋愛の始終を描いた詩集だった。
「ししゅー」だけに。
というのも僕は詩集の楽しみ方を知らない。
えだってすぐ読み終わっちゃうじゃん。ペラペラめくってどんどん消化していいものなのかこれ。
なので今まで買ってこなかったのだけれども・・・。まぁ、読みました。だって買っちゃったんだし。ブックオフオンラインでだけど。でも買っちゃたんだし。
スピードは気にせず。1,2。1,2。
あ、この詩はいいなと思ったら、頁を折ったりして。
約一時間くらいかけて、まるまる一冊読みました。
そしたらあとがきに「おかげでひとつの恋の物語としても読めるようになりました」p.136とあって、あれ?になった。え?恋の物語だったのか?これ。繋がっていたのか?これ。
と思って、二度読み。今度は更にスピードを上げて。1212121212。
するとああ、確かに。デニーズで一人の女と出会って海でいちゃついてやがて女の気持ちが離れて・・・一つの物語が見えてきた。
最後に男は、二人「ベリーズ」の畑に立つ夢を見る。男。
せつねぇ~になった。
せつねぇ~。
絶対そのベリーズの畑の空には様々なその恋の蜃気楼がフラッシュバックしている感じ、なのでは。海へのドライブ、デニーズ、白滝、鍋。カナリアは羽ばたくものも入拡いればされたものもいる。羽と血。
そこに二人立って向かい合って笑っている。
嗤っているけれどそれは現実ではない。恐らく一人男は泣きながら自慰をしている。自分を慰めるための自慰。
せつねぇ~。
ジャムを塗る。
トーストに、マーガリンをたっぷりと塗り、その上に、ジャムを塗る。
ストリベリージャム。
「やっぱりさ、食パンはこれに限るよね」
「わかる。私も小学校の時からそうだったの」
私達は笑った。
このダイニングキッチンで。
土曜の午後八時の朝陽は、あの日も柔らかかった。いつだって、土曜日は優しい。けだるくて、ぬくぬくしてて、そして始まりの予感。
希望に満ち溢れていた。
ストロベリージャムはルビーのごとくキラキラと日光を反射して輝いていてそれが綺麗だねと笑ったりもした。
かつて床は温かかった。
齧る。
美味しい。
美味しいけれど、植物油脂の感覚がわずかに舌に残ってまどろっこしかった。
裸足で床は、冷たい。
相も変わらず土曜日の朝は柔らかい。
けれど私はそれにぬくぬくとくるまったりなどはしない。
土曜日の午前十時に、始まりの予感は感じない。
表紙絵。可愛いけれど、詐欺だなぁって思った。
こんな表紙だったら誰だって、おもちゃ関連の詩を期待するじゃないか。
なのに開けば男女の恋愛モノである。
それは男が恋愛に見た純粋なる求愛瞳孔反射を表現した表紙と言うことなのだろうか。
にしても、妙に合ってないと思う。
それくらいは欲しかったな。
あと、鳥。カナリアじゃなくていいから鳥。
鳥は自由で不自由だから。
僕はご存じの通り童貞(メス)である。だから一つの恋愛の始まりと終わりを知らない。
それでもいいなと思った詩はいくつかある。
「デニーズ・ラヴ」でバーはバーでもドリンク・バーで恋愛が始まることを知る。
「おねがい」本当、僕を見つけてくれ。誰か。
「氷川丸」九龍ジェネリックロマンスを思い出した。中国人は嘘を言うか言わないか。
「獣姦爆撃機」激しい××ニーは戦争だ。
「それはよく晴れた真夏の」吹き抜ける風は涼しくくすぐったい。
「マイ・エンジェル」僕の舌には何も押されていませんよ?
「ぼくはノーブラ」ってことは万能なのね?
「クリネックス」カブトムシの角は何を表してるのー?、とか(笑)。
「つるのからまった」人工衛星は燃えていない。落下し続けている。
「お願いメール」やっぱり穂村弘は気持ち悪い。
「カカオマス」クリ■リスって言え!!!!
特に好きなのは「おねがい」「それはよく晴れた真夏の」「お願いメール」。
前者が「おねがい」、平仮名で純粋なのに対して、後者は「お願い」感じが混ざって濁っているのがとてもリアルだなって思った。
カナリアは、もう囀らない。
言葉。
ほむほむが今まで恋愛について固執してきたポエムとかいろいろ読んできたけれどその度にほむほむの言葉に僕は毎回新鮮に驚く。
それが詩になると凝縮される。
随筆の方が読みやすいけれど、ああ詩も悪くないなって思った。
どう読めばいいか分からないって思ってたけど、思うが儘にそのままに読んでしまえばいいのだろう。
その度に恋物語をリフレインリフレインリフレインさせれば良い。
僕はもっとわがままでいい。
トーストに、ジャムを塗る。
パンは焼かない。そのまま直接ジャムを塗る。
そうした方がジャムの甘味が凄く感じられてそれはそれで美味しいのである。
冷蔵庫の隅には半年前の賞味期限のマーガリンがある。
次のゴミの日にでもだすか。
土曜日は相も変わらず温かい。これから始まりますよ休日。
午前十時に感じる予感はをキッチンの床で、踏みにじって、もてあます。
今日はどうしようかな。
置かれたサボテンを見る。ここしか場所がなかった。
今日は何しようかな。
サボテンの棘は少し痛いけど、それすらも愛おしいような。
パンを齧る。
苺の甘味が直接感じられて、
キラキラで、
甘くて、
いいじゃん、
ジャム党、いい感じ。
以上である。
なんか気にせず読んだらそれなりに、楽しめた。
さらに短いから二度読みしちゃった。そうすることで「ああほんとだ恋物語だ」発見もあった。案外面白いかもね詩集。
ところでほむほむ(おっさん)について、僕は随筆しか知らない。
初期の随筆は女子に夢見る童貞臭い(童貞ではない)文章ばかりでとてもとても面白かった。ああそうだ僕は、僕達は世界音痴だあッはッはと笑ったりもしたものだった。
短歌は知らない。
そういえば、僕が崇拝・・・はしていないが勝手に崇めてる随筆家・雨宮まみちゃんの「あまみやまみ」もほむほむの短歌集のタイトルからきたというではないか。
短歌を知りたい。
いつかそのうち、短歌集も手に取ってやろうと思う。
覚悟しといてほむらちゃん RN:東海地方のまどか より
まぁ実際僕はパン党でもなく麺派ゴハン党員でトースターもないしダイニングもないしワンルームだしジャムもマーガリンもそんな好きじゃない。
齧る食パン(ヤマザキのサンハート・半額のシールがついている)は無味無臭でもきゅもきゅもきゅもきゅ食べるているとなんだか喉が詰まりそうになる。
確かに土曜は休みだけど日曜は普通に出勤だから何も始まらないし、何も終わらない。
別に土曜の朝だからって、気怠くないし。寝起き悪いからまぁ毎朝気怠いんですけど。
でもまぁ、珈琲は飲むかな。
ブラックで。