小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

穂村弘『現実入門 ほんとにみんなこんなことを?』-(しているよ!!)-

 

僕もどちらかと言うと、

現実が苦手で、世界が音痴の方だ。

 

穂村弘『現実入門 ほんとにみんなこんなことを?』(光文社 2009年)の話をさせて下さい。

 

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【概要】

結婚も離婚もしたことがなく、独り暮らしをしたこともない。キャバクラにも海外旅行にも行ったことがない。

そんな「極端に憶病で怠惰で好奇心がない性格」のほむらさん・四十二歳が、

必死の思いで数々の「現実」に立ち向かう。

献血、モデルルーム見学、占い、合コン、はとバスツアー・・・。

経験値をあげたほむらさんが最後に挑むのは!?

虚虚実実」痛快エッセイ。

 

裏表紙より

 

【読むべき人】

・現実が苦手な人

・自分はずれていると感じている人

・ぬるぬる読めるエッセイが好きな人

・実はまだよく「現実」というものが分かってない人

 

【感想】

どうも現実が苦手だ。

どうも下手。どうもうまく調律が合わない時が多い。

そういう時は笑顔でその場をしのぐことが多いのだけれど、

それでうまくいかないことも増えてきた。

26歳。うっかりすると毎日がきゅうきゅうして息ができなくなりそうだ。

肩はもうほとんど肩こり。凝り固まってきていてほとんど石。

はあ・・・。

なんかいい現実入門書ないかなぁ・・・と思って古本屋で手に取ったのがこの本である。

 

おかげさまで毎日すっきり起きられます!!

腰痛が治りました!!

肩こりが治りました!!!

孫の遊びに付き合えるようになりました!!

・・・という風にはいかなかったけれど、

それでも読んでよかったなーと思えるくらいには良かった。

 

現実が苦手な人って、僕以外にもいるんだなー。

そしてこの人は16年間同じ会社を務めていて同時に短歌も発表して名を挙げてエッセイ連載までたどり着いているんだなー。

このブログも何やら凄い人が見て「凄いブログがある」と発表して凄い人達がこぞっておすすめしだして雑誌の連載化しないかなー。

ダ・ヴィンチあたりが現実的かなー。

アンアンとかでもいいけど週刊だから締め切り辛そうだなー。

でも私も朝井リョウとぴーちくぱーちく喋ってそれでお金貰いたいなー。

でも社会学興味ないしなー芥川賞もまだまだ結構遠いしなー。

話違ってきてるなー。

苦しいことも多いけれどなんとかそれなりにハッピーに生きていけるんだなー。

会社勤めながら文壇でも名を知らしめることできるんだなー。

僕のもとにもサクマさんこないかなー。

 

以下簡単に各話で思ったことを書く。

現実入門ときているので、僕の現実について緩やかに触れながら。

 

現実だな、現実って感じ。

現実だな、と私は思う。現実って感じだ。p.16

常に日頃から僕もそう思っている。

特にちょっとうまくいかないことがあると現実だ~~~と思う。

サクマさんは『世界音痴』に掲載されていた「人生の経験値」という章が気になって、穂村さんにエッセイを頼んだそうだが、僕もその章は今でも覚えている。

独り暮らしからないんから、いろんなことが書かれていて、そこに〇×をつけるというもの。経験していたら〇、していなかったら×。

当然ながら穂村さんは経験していないことが多く×が多いみたいな話だった気がする。

僕も穂村さんほどではないけれど×が結構あった。

人生って難易度高いんだな。現実って感じだ。

 

美しいドラえもん

献血の話である。

作中に出てくる不二家ホームパイを「納得感のあるラインナップ」p.20と穂村さんは称する。献血にふさわしいお菓子。

思うけど、献血に限らず厳しい現実の横には常に不二家のお菓子があるような気がする。

病院の白いテーブル上であったり、妙に居場所が悪い友達の家の茶菓子だったり、面接に落ちて顔を下げて歩く商店街にはペコちゃんが立っている。

ぐらつく現実に、僕達はペコちゃんの愛らしさを無意識に求めている。

 

〈生活〉といううすのろがなければ

ショールーム見学の話である。

分かる。

僕もこういったショールームとか物件選びとかそういったときに、「すべき質問」が良く分からない。

こういうの、普通の人は普通にできるからすごい。

どうも世界が音痴なもので。

 

にわかには信じがたいでしょうが/りそな姫

占いの話である。

僕は占いが好きだ。

東京にいた時1万円払って足を運んだ、雑誌に連載をもつ占い師は凄かった。当てる、よりかは的確な人生のアドバイスまでくれる。

静岡に戻った時1万円払って足を運んだ、ちょっと胡散臭い占い師は全然だった。悪い結果を云々言っていた。当たっていたかもしれないが、その占いを受けて僕は気持ちよくなかった。

まさしく「にわかには信じがたい」占い師。

東京と地方都市、同じ1万円でもこんなに違うとは。

けれど、静岡で3000円のところを2000円で負けて人生占ってくれたおじいさん、1000円で路上で手相を見る怪しいおっちゃんの占いは、結構当たってたりして面白かった。

おじいさんはまさしくこの「りそな姫」の仲間かもしれない。りそな爺。

地方都市には地方都市に見合った金額を支払うことが大切なのかもしれない。

 

真夏のおめでとう

タイトルを打って、「まなつ」は本上まなみの「まなみ」とかかっているのかな。

本上まなみと編集者の結婚式の話である。

結婚・・・うっ。この2文字でくらくらする。

まなみといったら、小西真奈美本上まなみと橋本マナミがよく混ざる。

 

逆転の花園

合コン回である。

この話が一番面白かった。

合コンというものに行ったことがない。

そのため共感する部分は一切なかった。ファンタジーくるっくー。

ただまぁこれを読んで思った。

行くこともなさそうだ。

 

何故、お腹が痛いのか。

お臍のゴマを耳かきで徹底的に取ったら痛くなってしまったのだ。

「こんなことで大丈夫だろうか」と私は思う。p.73

 

祖母を訪ねる

僕にも10年以上あっていない祖父が北海道にいる。

ずっと病院にいる。出られないのだ。

もう間もなくともなんとなく聞いている。

会って、久々に会う親族のとの間のあの虚空を、久々に肺の奥までゆったり満たさなければと思う。

 

幸福の町

幸福の町なんていうものはこの世に実在するのだろうか。

幸福。幸福の町。

それは例えば何だろう。

結婚相手で夫となる人と暮らし始める1LDKがある町とか?

でも、それは何処?

それは何時?

私は誰?

 

ちかいます

 

 

あ、ガラス玉 p.125

 

アカスリとムーム

健康ランドの話である。

はるか昔に大学時代の友達と行ったことがあるけれど、それからはめっきりぽっきり言っていない。

でも確かに、穂村さんが圧倒されるように、そこはもう異世界だった。

皆尾内上な服を着て、畳、えんにち、漫画、冷やし中華・・・薄暗いけれど明るくて、天上は高く、木目が遥か遠くに見える。ぎらぎら。

ライトな千と千尋の世界が毎日僕の知らないところで毎日続いているのかと思うと眩暈がする。

いやなんなら僕がこうやってぐだぐだ寝て過ごした休日中だってずっと・・・ちゅるちゅる。

 

ゲロネクタイの翼

一転、電車での吐き気からの健康診断の話である。

この日穂村さんは新人社員への説明会のシミュレーションを繰り返ししているのだけれども・・・まあ分かる。

世界に音痴だとこういう人前で出る者は執拗に脳内で練習しないと本番上手くいかないことが多い。

毎日の出勤もそうで、やることをリストアップしてシミュレーションして・・・息切れしそうになるところを深呼吸して職場へ一歩、足を踏み入れる。

ときどきそのシミュレーションが延々頭の中ぐるぐるして酔う時があって、今回それが嘔吐に繋がったという訳だろう。

話は変わるが、ゲロネクタイの翼という響きは、テセウスの船という響きに少し似ている。

 

一日お父さん〈昼の部〉〈夜の部〉

一日知人の娘さん2人を相手する話である。

ちょくちょく小さい女の子達と、穂村さんの好きな大きな女の子達を比較する描写があるものだから面白い。

人生ゲーム。あれは良い。僕の家にもあったけれど、当時多分イライラしたり多少なりともストレス抱えながらやってたと思うんだけども、27近くなると盤上の人生全てが「良い思い出」に変わりつつある。

あと、p.161の穂村さんが「子どもに訊いてみたいこと」が世界に音痴過ぎて笑った。私でもさすがにそこは音程とれるよ。

 

ダンディーと競馬

競馬は行ったことがない。

行ってみたいと昔から言ってはいたが、そういうとこに連れてってくれた人も連れてく前に私からやんわり離れてしまっ・・・はっ、そうやって今は亡き大学時代を美化して語るのは良くない。

ダンディーには出会ったことがある。

前の職場のエリア長がそうだった。

今思えば、50を超えて20代前半の彼女がいるのも納得のダンディーさだった。部下の失敗も成功もさらりと笑って受け流す人で、スーツは何やらとても高そうだった。

結局あの2人今はどうなっているんだろうか。

 

魅せられて

ウェディングドレスの話である。

(本書は2005年に書かれています)からこういう知る人ぞ知るみたいな場所ってあったんだなあとしみじみ思う。

ウエディングドレスの話になるともう現実感がないから特にそれくらいしか思わない。

「貧しい時代の、花嫁の夢の全てが一枚のヴェールに込められているのだ、と鉄郎は思った」と私は思った。p.203

 

夢のマス席

相撲の話である。

僕は26にして、競馬も相撲も結婚もしたことない。

 このまま年を取って、穂村さんのように43になって50になってしまうのだろうか。

その時に僕のもとにサクマさんのような存在がいてくれるような気はしないのだけれど。

ああー、やっぱり一人で行くべきなのかこういうのは。

でも一人で行ったらますます世界に音痴の拍車が爆走しそうだ。

こういう時こそやっぱホームパイ齧ってミルキーなめて舌ぺろをして、

現実とのバランスをとっていくべきなのかもしれない。

 

パラサイトシングルマン 家を探しに

ずれていないひとはちゃんとそれなりの努力や準備をしているだけかもしれない。

世界からずれているというのは、実はその努力をしたくない怠け者の、単なる云い訳なんじゃないか。p.228

 

木星重力の日

全てはここに集結する。

世界に音痴なパラサイトシングルマンが現実に着地するまでの話。

この先の、穂村さんの話も気になるところである。

世界に音痴な人が結婚して家庭もって・・・となったらどうなるのか。気になる。買うか。

 

以上である。

とっと独特なところがある穂村さんのエッセイは、

ついつい僕と合わせて読んでしまう。

あっさり読める割に、じいんとくる余韻よ。

 

他に読んだことあるのはこの2冊。

 

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穂村弘『短歌という爆弾ー今すぐ歌人になりたいあなたのために』(小学館 2013年)

三十一字でがっぽがっぽ稼ぎたい!!と思って読んだ。

三十一字でがっぽがっぽ稼いでやるぜ!!と読んだ後は思った。

現実は厳しい。

やっぱり現実は苦手だ。

「現実入門」読んで然るべき。

 

 

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この古本感がいい。

 

穂村弘『世界音痴』(小学館 2002年)

この本は前に買った本である。古民家カフェで見つけて、中身気に入ってその後ブックオフオンラインで買った。

すんなり読めて面白かった。

というか、ああ、こんなに現実が苦手な人は僕のほかにもいるのだ。

そして、その人がはサラリーマンで固定給を得ながら趣味を仕事にまで押し上げることができているのだ。

衝撃だった。

てか感想書いたかと思ったら書けてなかった。

また今年中くらいに読み直してみようかなあ・・・。

 

 

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LINKS

 『世界音痴』を手に取ったきっかけとなったカフェ(おしゃれ)。

tunabook03.hatenablog.com