雑誌に載ってるような、
お洒落な部屋じゃなくてもいいじゃないか。
部屋に愛を。
「東京グラフィティ 7月号 #162 」(グラフィティ 2020年)の話をさせて下さい。
【概要】
LOVE!!STAY HOME 部屋こそ楽園!!
と称して、
創刊から約15年間続けてきた部屋スナップ連載総集編!!!
魔女っ子アイテム好き、爬虫類マニア、アフリカ雑貨好き、音楽マニア、アニメ好き、ペッツマニア、
ラブドール・モダンガール・ミニマリスト・ホスト・ホームレス等々。
撮影当時の情報のまま再構成!!!
同時掲載はおうちSNAP。
セントチヒロ・チッチから、研ナオコまで多種多様な人々の大切な10のモノとは。
【読むべき人】
・他人の部屋を見る特集が好きな人
・自分の部屋に自信が持てない人
・逆に、これから自分の部屋のイメージチェンジを図りたい人
・これから引っ越す人
・NHKの数あるサブカル神番組のひとつ、「金曜日のソロたちへ」を視聴していた人 再開いつなんだ・・・。
【注意すべき人】
・あくまで「総集編」であるため、新しい内容を本誌に求める人
【感想】
東京グラフィティといえば、部屋写真。部屋写真と言えば東京グラフィティ、くらいの看板になりつつある部屋写真連載。
シンプルに、独り暮らしの人とその部屋を映すコーナーで、
部屋独特のこだわりやポイント、
最寄り駅や広さ場合によっては家賃まで公開する、
なかなか面白いページである。
部屋の主人の年齢と職業も同時に開示。
まぐろどん(26) 会社員
1K 家賃65000円 最寄り駅:稲田堤駅
趣味:ブログを書くこと
部屋ひとつひとつにドンびいたり軽く突っ込んだり「へえ~そんな世界があるんか」となんとなく頷くのが好き。
部屋に置いてある家具置物インテリア嘗め回すように見て「へえ~いったい朝何時に練るんだろう?」想像するのが好き。
「普通」等この世に一つもないことを知らしめてくれるところがなんとなく好き。
他人の部屋を見て何が面白いんだ、という話だけれど、
昔からずっとなんとなく好きなコーナーなのである。
そのコーナーの、15年分の総集編。掲載46部屋。
いわばベストアルバム。2枚組のボリューム。
買うしかないじゃないか。
まあ正直、新しく制作されたページが少ないのは不満だけれども、
本書税込み488円。ワンコイン以下。
のベストアルバム、と考えれば、
買うしかないじゃないか。
そんなわけで、46を超える部屋から気になった部屋トップファイブを挙げ、感想を述べていく。
第5位 room.19 本に埋もれて死ねるなら本望 活字と共存した生活 の部屋
一番今の僕の部屋に似ている。
本棚に本を入れるだけではなく、棚にぬいぐるみ、棚の上にもぬいぐるみを置いているのも似ている。
部屋の主が冴えない眼鏡なのも似ている。
第4位 room.38 博物館も顔負け 中世を愛する貴族スタイル の部屋
アンティークや、歴史好き極まる変なアイテムが、上手く部屋になじませているのが良い。大学時代西洋史学専攻だったので、中世ルーツというのもビンビン来る。
部屋全体に知性が漂っているのも良い。
ただ掛け時計が8個あるのはどうなんだろう。
あとどう見ても窓にレースカーテンだけなのはどうなんだろう。
第3位 room.13 男のロマン!鉄道模型に囲まれた鉄ちゃんの世界 の部屋
部屋の主は物流関係(30)である。顔は柳楽優弥にちょっと似ていて、きりっとしている。
しかし28.5畳の広い部屋のフローリングに広々広がるのは鉄道のレール。
普通っぽい・・・何ならちょっとイケメンの雰囲気と、部屋のギャップがツボでランクイン。
第2位 room.03 台湾への愛がとまらないカラフルレトロな台湾部屋
台所や床を見た感じ、非常にレトロな部屋なのだけれども
そこにぎっしり台湾雑貨を並べてきちんとして可愛いのが強い。
紹介している台湾グッズも一つ一つ丁寧に厳選していると分かるのが良い。特にツバメの財布が可愛い。
よく見ると、変わった椅子の形や台所の戸棚に張られたシール、天上の装飾、プロペラ式の換気扇等、ワクワクが多いのもポイントが高く2位にランクイン。
第1位 room.02 古いお家を洋服でいっぱいにしたニューノスタルジー空間 の部屋
可愛い台湾雑貨部屋をしのいで一位にランクインしたのはこのお部屋。
部屋自体は木造で古い畳、押し入れも引き戸・・・なのだけれど、
そこに白い家具やキルティングした布、植物柄の絨毯、四方八方かかった淡いフリルの洋服・・・。部屋の片隅にはカードキャプターさくらの表紙(原作コミック)。
まさしく古民家×白フリル。
それが絶妙な配合でマッチしていて、
今までに見たことがない「新しい可愛い」が見られる。
自分の部屋が畳の女子高生・女子中学生には、是非読んでもらいたい1ページである。
畳だからといって可愛いを諦めるな。
番外編:ランク外だけど気になった部屋
room.29 たらこ、たらこ たっぷりたらこ ラブリーピンクのたらこ部屋
現在でも彼女の部屋にたらこは生存しているのだろうか。
room.25 光がインテリア 持たない暮らしのミニマリスト部屋
この部屋の主、佐々木典士さんの本、読んだこと、ある!!!
恐らくコロナでるため、過去から引っ張り出してきて作ったであろうこのページ。
概ね満足ではあるし、
「ステイホーム」を鋭く突いたその視点は、むしろ天晴。ではあるが、
強いて言うならば、
部屋の主の現在を、
2-3人でもいいから知りたかったなあ・・・。
例えば魔女っ娘とか雑貨とかそういうのを部屋にギッシリ並べた部屋がたくさん出てくるんですが、
そういった部屋に住んでいる人は今もそういった趣味が続いているのか、とか。
当時肩書は「漫画家」「ライター」だけれども現在もそれで食えているのか、とか。
今も白塗りしているのか、ホームレスよろしくビニールハウスに今も住んでいるのか、とか。
結構、全部の部屋主の現在が気になるんですよね。
正直、朝ご飯についてのへっぼいページを掲載するくらいなら、
無理やりにでも取材して、
紙幅増やして、
このコーナーを充実させた方が良かったのではないかと思います。
あと、
「金曜日のソロたちへ」が好きな人には間違いなく刺さる特集なのは間違いないです。
むしろ、「金曜日のソロたちへ」ロスに悩む方へ向けてのこのタイミングでの刊行か?というくらい。
「金曜日のソロたちへ」を知らない人に説明するんですが、一人暮らしの帰宅後~就寝までをカメラで見るという番組なんですよ。ノンスタイル井上と能町みね子さんがレギュラーパネラーなんですが、その二人とまあ30分、一人暮らしを眺めるという・・・。
それがまあ、面白いんですよね。結構。
自分の普通が普通じゃないとわかる、というか、普通の人っていないんだな、というか。
逆に、この特集・連載が好きな人は検索してみてみればいいと思います。
でも多分この連載のルーツはテレビ番組ではなく、
都築響一『TOKYO STYLE』でしょうね。間違いなく。読んだことないけど。
第二特集は「人生最高の10のモノ」。
と称して、各界で活躍する著名人10名の10の大切なものを紹介。
だいたいが・・・、まぁ巻末のコマーシャルで来てるのは分かるんだけれども、
なぜに・・・研ナオコ???
この特集で初めて知って気になった人は2人。
フォトグラファー 花盛友里
一般女性のヌードを撮ったという「脱いでみた。」という写真集は気になる。
あとサブカルくっさい写真集連発しながらも、2人の母親というのもなんだかカッコいい。
パフォーマー ぼく脳
紹介する10のものが全てしょうもなくて面白かった。
別にカッコよくはない。
定番のSNAP連載も、今回はおうちSNAPと称し(恐らく)各人撮影したものを掲載する形に。
くくるジャンルを「コミックマーケット98」「原宿お洒落キッズ」「バーレスク東京」等工夫を凝らしていて、結構面白かった。
次回是非、「ラブドール」あたりのくくりが見たい。もちろんセンターは沙織ちゃんで。
大学生のコーナーのページはつまらないねぇ~相変わらず。
昔からやっているけど一体いつになったら面白くなるんだレベル。
朝ご飯コーナーとかいるか?沙織ちゃんとご主人の朝の食卓1週間分載せた方がまだ面白いんじゃないか。
ピンク日記。所謂アベックの出会いを紹介するコーナーなのだけれども、ここは何も工夫のないただの再掲なのはマイナス。手抜きが酷い。それなら掲載しない方がマシ。沙織ちゃんとご主人の夜の四十八手1週間分載せた方がまだ面白いんじゃないか。
以上である。
概ね満足。第一特集、第二特集、おうちスナップは結構工夫凝らしてあるなという感じ。ワンコインにしては結構いいんじゃないか。これが800円とかいったら問題外だけど。
ただその分、いつもの連載コーナーの手抜きの荒が目立つ。
これだけ編集者がいるのに、2月に1回の刊行なのに、なぜそうなってしまうのか。
東京の柔軟な文化を売りにしているような雑誌だけれども、
どうも編集自体に柔軟な変化を感じられない。
変な「守り」の姿勢を感じる。
編集者全員童貞処女か?違うだろ。ピンク日記と称して他人の出会いを聞くならば、己の出会いくらい語れよ。身売りするくらいの覚悟を持てよ。
若者感満載東京カルチャー満載万歳するならば、もっとこう・・・「攻め」てほしい。どこの馬の骨か分からない大学生の朝ご飯なんてどうでもいいんだよ。
15年間刊行し続けた、長寿雑誌だからかもしれないが、
そこを崩さなければ季刊化ムック化廃刊一直線だと思う。
そしてなぜ僕がこの雑誌を手に取ったか。
それは、
僕も引越しをするからである。
どうなるのだろう。
分からない。
生活続けられるだろうか。
分からない。
けれど、まあこの雑誌に計刺されている有象無象の部屋を眺めると、
「静岡グラフィティ・・・だせえな笑」
ゆうて「東京グラフィティ」という響きもそこまでおしゃんではない。むしろださ・・・げふん、15年の厚みを感じる。
案外悪くないような気もしてくるのである。
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こういう自己啓発本って、ほとんど実践しないで終わるんだけれども、それでもふと見た1行がふと忘れられなくなったりする。
あと背筋が伸びて前向きになれる。
それだけで、存在意義十分なのではないかと思う。