小さなツナの缶詰。齧る。

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マキヒロチ『スケッチー3』-新しい世界への扉を叩く時について。-

 

 

 

 

 

寂しい夜にはうってつけ。

 

 

 

 

 

マキヒロチ『スケッチー3』(講談社 2020年)の話をさせて下さい。

 

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【あらすじ】

初心者の壁に苦戦する憧子。

志帆に上達で遅れをとりながらも、彼女はひたむきに練習を続ける。

一方、めきめき上手くなる志帆には久々の恋の予感?

スケボーに恋、進む速度は違くとも、いつかはーーー。

 

ガールズスケーター群像劇、全身の第3巻。

 

帯より

 

【読むべき人】

・日頃の生活に何か物足りなさを感じている人

・何かを始めたいと考えている人

・スケボー文化に関心がある人

・20代-30代女子:君が今足りないと思っているものがこの夜にはある。

 

※足りない夜に、一話ずつ読むことをお勧めします

 

【感想】

待望のスケッチー第3巻である。

1-2巻は、なんとなく20代-30代女子が感じがちな、「足りない」を埋めるような内容だった。彼氏もいるし働いているしお金ももらっているけれど、心から湧き上がるものがない。何かが足りない。僕達は年を取ってしまったのか?

そんな中、思い切って始める趣味、好きなもの同士で集う文化、そこから広がる緩やかな人間関係、そして疾走するスケボーのスピード感・・・。

仕事、友達、彼氏、忘れられない過去・・・夜だけはそのしがらみをすべて解き放って、ほら、ボードに足を乗せれば疾走。

僕達は自由。

 

1-2まきのあらすじでも書かれていた「群像劇」が、本作ではより本格的に展開される。1話ごとに主人公が変わり、時系列も変わる。

冒頭と最後は我らがぼんやり女子・憧子が出てきてくれるが、中盤は志帆・かりん・まりりんと主人公が変わる。

そのためか・・・、一話一話区切って読まないと、若干内容が把握しづらい。時系列も場所もかりん・まりりんは違うからますます混沌。ぼんやり読んでいると「あれ?今の主人公誰だっけ?あれ?今いつだ?あれ?誰だこいつ?あれあれ?Aare?ARE?ここはどこ、私は誰???」になってしまう。

一話一話区切りをつけて、別の時に読むことをお勧めする。

深夜ドラマのように。

寂しい夜に寄り添う。

 

でも、わかりづらいからといって、登場人物評や年表を冒頭に持ってくるのはこの漫画は何か違う気がする。書籍としての一冊の出来がかなり欠ける気がする。

「考えるより感じろ」の空気感がこの作品のベースとなっているから、冒頭にそういう図とかチャートとかに会わない。

なんか、専用のインスタがあるならそっちに掲載してほしいと思う。

実在するスケッチーやスケボー野郎を紹介してくれるのもありがたいけど、スケッチーに登場するスケッチーやスケボー野郎も紹介してくれ。ドラマが作中ではなくサイトで人間関係図を掲載しているように。

 

 

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以下簡単に各話の感想を述べていく。

 

冒頭:転んでも、立ち上がれ。

 

 

#11 こんな夜

憧子「じゃあ・・・私は誰のためにいるの?」p,35

アスカの衝撃的なテレビの発言を受けて、アスカとアコの二人の過去の断片が垣間見える第11話。憧子は何かにずっとずっと憧れているが、その「何か」の片りんが見える。

でもそれよりも、やっぱりこの回一番ぐっときたのは、アコと彼女が短く語り合った「こんな夜」のシーン。まさか「カーストの一番上の嫌な女」ポジだけかと思っていた彼女が、こんな意思がある存在感あるキャラクターだったとは。意外すぎて、はっ!!??となった。しかもホームページ見たら「財前琴子」という凄い名前でますますふぁあ!!!???となった。財前琴子。すげー名前。

 

本作の根本ともなるこの憧子の物語は何処に着地するのだろうか。

そして、憧子はずっと憧れていた、「何か」を、如何にして手に入れるのか。

スケボー自体はまだまだ下手だし・・・スケボー界隈に彼女と付き合いそうな男子はいないし・・・僕と似てマイペースでぼんやりしているし・・・。

その過程はなんとしてでも追ってこの目にしなければならない。今作が今の僕に必要だと改めて確信させた一話。

 

#12 男嫌い

たいと「『スケート・キッチン』のレイチェルみたい」p.77

志帆の恋愛観もわかりみが深いんだよな~~~~~!!!!

分かるよ!!!自分のコンプレックスそうやって褒められたらもう好きになっちゃうよね!!!ただのフォロー返しにキュンキュンしてしまうんだよね!!!25超えてても男性経験少ないとそうなってしまうよね!!!わかるわ!!!すっごい分かる!!!!ああ~~~~~になった。なってしまった。

もう最近遥か年下の女子高生が主人公の少女漫画についていけなくなった、27歳僕の心にぐっさぐさ刺さる。ぐっさぐさです。もうぐっさぐさ。

 

憧子の過去の友情カースト縛りといい、志帆の年齢の割に幼稚な恋愛観と言い、

なんでスケッチーはこんなに「リアル」を切り取るのが上手いんだろうか。

それはまるで使い捨てカメラが命かけて渾身のシャッターを切っているかのような。

いや・・・実際に彼女達は実在していて、そのカメラで撮影しているカメラマンが「マキヒロチ」なのかもしれない。

そう思わせてくれるような冒頭2話。

あ、あとミニチュアのスケボーの文化は驚いた。そんなのあるんだ。いくらくらいするんだろ。3000円くらい?

 

#13  Do you like skateboarding?

かりんの祖母「かりんちゃんにはかりんちゃんにしか ないものがある

それには「次」はないんやで」p.110

これさらっと書かれているけれど至言だと思う。コンプレックスを抱えて悩んでいるすべての人にこのおばあちゃんの言葉が届いてほしい。

いまいちこの「かりん」が誰なのか分からない。志帆・憧子の先生の過去編ということでOKなのだろうか。にしてもインスタはあるし、同級生の娘達の名前はやたら今風だし。ちょっとここだけ時系列が良く分からん。もしかしたらわらわらいたスケッチーのなかの一人なのかもしれないし。

いや、表紙も飾ってるし冒頭滑ってるのは彼女だとは分かるんだけど・・・。

でもこの話はこの話で、「趣味を仕事にするな」を証左するストーリーとなっていて面白かった。好きなものがあれど、それを自身が稼ぐ手段してしまうと、好きなものが好きだった理由を見失い始めて、やがてそれが好きじゃなくなっていく・・・。

志帆・憧子とは違って、第一線で活躍するスケッチーだからこその葛藤や悩みが描かれていてそこが良かった。群像劇ならでは。やっぱオリンピックとか日本代表とかで活躍する人たちって裏ではこうやって涙流してる瞬間って幾度もあるんだろうなぁ・・・とも思ったり。

いや、スポーツとは限らない。

それは漫画かもしれないし、イラストかもしれないし、小説かもしれないし、食べ物かもしれないし、洋服かもしれないし、無数。人の数だけ「好きなもの」はあるはずなのだから。

けれどそれを仕事にした途端、それが自身が自身に与える最大の苦痛になりうる。「好きを仕事にする」って響きはいいけれど、中身はきっと超ハード。

 

#14 女子だからこそ

さっちゃん「ちょーう 気持ち良かったです!」p.160

女性初のフィルマー(スケボーのプレイを撮影する人)を目指すまりりんの物語。

確かこれ、過去編ですよね?#13同様時系列が遡ってたよね?

ここでは「好きを仕事にする」に加えて、「女子ならでは」に悩むまりりんが描かれている。終盤答えをみつけかけたけど・・・ってところでしょうか。

ワンピースや水着等外面ではなく、内面から溢れ出るものに答えを見つけたのが良かったですね。外面からガッチガチに作る「女子らしさ」は見ていて結構キツいものがありますからね。某寿司屋のように。

あとさっちゃん。なんかはじめ、階段等使ったプレイ中に転倒したのかと思ってたけど普通の平場で倒れてるんですよね。なんか病気だったりしたのかなぁ・・・。

あと2巻から始まったこのまりりんの物語は青春王道一直線という感じで結構好き。

 

#15 めぐりあい

憧子「ここに集まった人たちは好きなものが同じで繋がった人たち・・・・スケボーの話しかしない・・・・」p.190

今まで出てきた登場人物達大集合といったところでしょうか。憧子・志帆は無論まりりん、かりん、そして今巻出番がなかったいずみが出てきます。

そしてここでまさかの新キャラ登場。叶崎蒼太。かなさきそうた。もう名前からしてイケメンのヤリ●ン男。だがお前、まさかそこにときめくのか・・・。意外と年上の経験はないのか?え?やっぱこの軸の物語も気になるなー。4巻には収録されているかな。

そしてさらに終盤追加で新キャラが登場・・・長野の女子高生。若い。しかしその容姿はアスカに似ており・・・!?どうなるんだ。憧子にとって彼女はどういった存在になっていくんだろうか。

てか、この子#13の終盤に出てきてたな。ということは「かりん≠スケボーの先生」ということか。じゃあわらわらいたスケッチーの内の一人・・・?

正直、登場人物が多いわりに描き分けが出来ていないところもあるので(例えば志帆とアスカが髪型違えばほとんど似た顔しているように)、もうちょっとそこは趣向を凝らしてほしいところ。

でもまあその先の展開への期待が膨らむ一話だった。4巻冬発売?買うよ!!

 

ラストページ、蒼太、志帆、憧子の3人の顔が映り、

蒼太「なに・・・・この感じ・・・・」

志帆「ドキドキ・・・・」

憧子「ドキドキ・・・・する」p.182

というシーンがあるのですが、

最後に僕がドキドキしたのはいつだろう・・・。

なんか常にドキドキ、よりはビクビクしている。

ドキドキ・・・・したいなあ・・・・。

 

ちなみに、各話の台詞を抜粋していて気づいたのだけれども、この漫画における「てんてんてん」は、「・・・」3つではなく「・・・・」4つで表されている。

・・・だけだと沈黙として完結してしまうが、・・・・だと何か言いかけた末の沈黙という感じがする。

それは、常にぼんやりしていて常に何かに憧れている憧子を主人公にした本作における、作者のこだわりだと思う。

 

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以上である。

今巻も面白かったが、一気に読むと時系列が混乱してそっちに気がとられるので、次回は一話ずつ丁寧に読む。

 

世界が広がっていくというのはなんて爽快で・・・「ドキドキ」するのだろう。

最近の僕は新しいことに対する怯えが強くて、そういう感情忘れていた気がする。

 

ドキドキ・・・ドキドキしてぇ~!

 

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LINKS

1-2巻の感想。

tunabook03.hatenablog.com