小学校低学年の時、女子トイレに入った時に隣のクラスのアイちゃんが、3番目くらいの個室から出てきた。すれ違う。なんかいそいそと出て行った。
アイちゃんは可愛い子で上品な感じの子で名前は知ってるけど、クラスは被ったことないから話したことは無い。なんか彼女も一人でトイレ行くことあるんだなー、と妙に安心した覚えがある。
さて僕もと、4番目5番目の個室に行こうと通り過ぎ、何気なく彼女が去ったばかりの個室を見た瞬間。
福澤徹三『忌談3』(KADOKAWA 2014年)の話をさせて下さい。
【概要】
社内で起きた盗聴事件、深夜に現場を撮影したビデオは封印された(「持ち禁」)。
売れないキャバ嬢を大金でホテルに誘った客の正体は?(「実験」)。
なぜかからみを嫌がるAV女優。監督は撮影を続行したが・・・・・・(「雨女」)。
サクラで出席した結婚式、新婦の過去は空白だった(「虚式」)。
訪問販売員が民家で見つけた謎の印が恐怖を呼ぶ(「マーキング」)。
思わず本を閉じたくなる、忌まわしい話シリーズ第3弾!
裏表紙より
【読むべき人】
・アンダーグラウンド界隈の話が好きな人
・「実話」にこだわる人
【感想】
3巻から5巻も結局メルでカリった。700円と破格だったため購入したが、「全巻」セットであったため、1-2巻が2冊ある状態に。参ったぜ。
まぁめでたく3冊目を手にして真っ先に読んだのは「まえがき」ですよね。
期待を裏切らず今回も福澤先生は締め切りに追われていて良かった。心霊体験談に対する愚痴や同業者からも話を聞かざるを得なかった悔しさ等が端正な文章で綴られている。めちゃめちゃおもろい。もっと追われてほしい。
本書は1,2巻から内容は相変わらず・・・といった印象。ホスト・ホステス・風俗・整形・歌舞伎町云々夜の街を舞台にした話が多い。人為的自然的霊的問わず実話が収録されている。
ただ文章は、1,2巻から比べて・・・締め切りに追われていることもあるからか、エッセイ的な部分が増えている。まぁそこも読める文章だし、面白いので良いのだけれども。
200ページ足らずだから、一冊通して読んでもそんなに怖くない。ただ、忌まわしいだけ。
毎度毎度、以下簡単に印象に残った話を記しておく。ネタバレ辞さない。
「古本の帰還」pp.23-25
つたない文字からして、幼い男の子らしい。p.24
終盤出てくる若者にとってはまさしく「奇跡」で、SNSよろしくすぐTwitterですぐ拡散したくなるような出来事。でも、体験者にとってはドキドキゾクゾクでたまったものではない。誰かにとっての奇跡は誰かにとっての恐怖。
僕もよくブックオフ(オンライン含め)使っているんですが、未だこういったミラクルはないですね・・・。
「トレイを汚す人」pp.49-59
「朝早く出勤したら、廊下で掃除のおばちゃんが泣いてるんです」p.49
会社や家、行きつけのパチンコ店のトイレを汚す人々の話を複数収録。
トイレを汚す、といっても「お、はみ出てるな」程度ではない。「うへぇ・・・」レヴヴェルの本当にがっちがちに汚しているパターンである。怪異的な存在も絡んでいるケースのあるしシンプルに厭だなぁ・・・めちゃくちゃ忌まわしいなぁ・・・と思った。便器からはみ出てるう○こ程、日常において忌まわしいものはないからね。
彼等は何故トイレを汚すのだろうと思った。誰かに見てもらいたいならば職場を荒らすのが一番手っ取り早い。逆に誰かに見られたくないのならば自分の部屋でやればいい。
終盤に出てくる自殺も同様。誰かに見てもらいたいならば職場で首括るのが一番手っ取りばやい。逆に誰かに見られたくないの成れば自宅の湯せんでリスカでもすればいい。
何故トイレ。
何故トイレで事件は起こるのか。
第三者が片づけてくれるというのはあると思う。自分でもない職場の人でもない、顔もよく知らないような第三者が勝手に片づけてくれる。自分の手を汚さずに済むし職場で恥をかくこともない。掃除のおばちゃんが悲しんだってそんなの知ったことか。
ストレス解消なのだと思う。社会人として普段ちゃんとやっている自分が、トイレでは基地外のように変貌し汚物を壁に塗りたくる。自分の価値を自分で一気に貶める訳だからある意味精神的自傷。身体を傷つけなくてよいから誰かに心配される必要もない。掃除のおばちゃんが悲しんだってそんなの知ったことか。
「ノックの音」pp.63-67
「あたしがいちばん怖かったのは、いま喋ったことじゃないんです」p.66
出張型のメンズエステを施していると、ノック音。やがて変な声が聞こえてきて・・・!?
5ページにわたる実話怪談である。初めの3ページはなんくるない実話怪談。性的サービスをしていたらホテルのオバケ出てきたで~は実話怪談あるあるである。
残り2ページが怖い。
オバケが語っている側にやって来る・・・までは想像できたが、まさか最後そんなことが起きようとは。
点と線を結ぶと形になりそうでならない感じがもどかしい一篇。
「病の真相」pp.75-79
妻子がある身で自宅に押し掛けられては、もはや関係の修復は困難である。p.77
化粧品会社に勤めていたOLは、妻子ある男に熱をあげたが、その恋が敵わないと分かると、彼が住む部屋(マンション・6階)めざしてベランダ伝いに壁をよじ登り始めて・・・!?
女の変貌が怖ろしい話。ネタバレすると、化粧品会社に勤めていて身なりも綺麗で何ならバーの「姫」状態であった若く美しい娘が、失恋によって精神に異常をきたし入院する。
最後に、
「診断の結果、精神病じゃなかったと聞きました。どう考えてもふつうじゃなかったのに、じゃあ、あれはなんだったんだって思いますけどーーー」p.79
とあるが、なんてことはない。
ただの失恋だ。
それが本気であった分、どこかでかなわないとわかっている分、想いはますます募り募り募りに積もって、それが決定的にかなわないと知ると心が粉々に砕けて、場合によっては心どころか身体すらも粉々に砕けてしまうのである。もうどうしたらいいのか分からない。誰を呪ったらいいのか分からない。誰に不満を言ったらいいのか分からない。もうどうしたらどうしたらどうしたら。・・・僕も大学時代経験したので分かる。
恐らくその女性は僕よりよっぽど熱い情熱を持った女で、だからみ美しかったんだろうし、だから壊れた時の反動が大きかったんだろう。
「床下」pp.99-105
そこにあったのは、円筒形の古い井戸だった。p.102
経営する店が軌道に乗りはじめ、憧れの一軒家を購入した。古い木造の平屋。庭がある一軒家だ。
ところがどっこい床下から井戸が出てくる話である。実話怪談界隈では、井戸を埋め立てて家を建てるのはとにかく縁起が悪くよろしくないのは当たり前の話。そのためオバケがひゅ~~どろ~~~と出てくるのが定番。
ただ最後の2ページ、それだけではすまないことが明らかになってくる。どうやらこの井戸、ただの井戸ではない可能性が出てきた・・・。ここが怖かった。たまらない。僕だったらもう即引っ越してる。というかひゅ~どろ~した地点で引っ越してるわ。井戸とか掘り返す暇もないわ。ずっと住んでる体験者凄いわ強いわ結婚してくれ。
「オルゴール」pp.111-113
「その曲は、『禁じられた遊び』やったそうです」p.113
小学校低学年の子がこっくりさんを実践。ところが終わり方が分からず・・・?という具合。こっくりさんも相手が小学校低学年と幼いから手加減したのかな?とこっくりさんに無理矢理人の心を見出したくなる話。
ただ疑問なのが、「小学校低学年の女の子が『禁じられた遊び』という曲を知っているのか」ということ。オルゴールでこの曲が流れるのがオチではあるのだが・・・。
僕ですらどんな曲か知らない。ましてやローゼンメイデン初代OPではあるまいし・・・。
恐らく後日、主人公の女の子が大きくなってから知ったのであろうが、そこの描写が欠けているため一気に胡散臭くなってる。
「土中の骨」pp.132-136
投込塚とは、身元不明の行き倒れや、引き取り手のない病死者を埋めた塚である。p.136
なんともいえない後味が胸を抉る。怖いというより、悲しい恐ろしい切ない辛い痛い、「土中の骨」というタイトルからも、福澤先生も怖さ以外のものを感じ取っているのが分かる。
一体いつになれば彼らの魂は浮かばれるのか・・・。余韻引きずる一篇。
「悪霊」pp.147-157
「あのひとには、悪霊が憑いています」p.153
本人に悪意はないが、自分も他人も不幸にしながら滅びていくという。p.156
当時居酒屋経営者だったDさんは、3歳年下の不動産会社社長のEさんと懇意になる。
悪霊に憑かれた人の話。知らず知らずの人に不幸を呼び寄せる人と仲良くなることも怖いし、知らず知らずのうちにそういう悪霊に取り憑かれるというのも怖いなと思った。
ましてや僕はネガティブな方で常にぐずぐずしている方だから、格好のターゲットだと思うのだ。ええー・・・厭だ~。取り憑かないでほしい~。
あと逆に、「悪霊が憑いている」人って、思いを巡らせると・・・いないこと、なくない?あの人とか・・・あの人とか・・・。
ああどうか、君の浮かべた「あの人」に僕が当てはまっていませんように!
「蜘蛛と山羊」pp.182-185
「タランチュラみたいな、大きい蜘蛛だったんです」p.184
蜘蛛を食べたよ!!その味は!?ドン引き中国食珍道中!!
怪談、よりかは、おもしろい。
蜘蛛食べる描写があるのだが、う~む。なんとも美味しそう。機会があったら食べてみたい。逆に一番おいしくなかったのが意外にも山羊の■■とのこと。山羊って美味しそうなのにね。
珍味、あんまり食べたことないんですが、大学時代居酒屋でカエルなら一回食べたことある。「鶏肉みたい~」て言われて気になってたけど本当に鶏肉みたいだった。
蜘蛛、「ホタテみたい~」と言われてるのでこっちも多分本当にホタテみたいなんだろうな。食べてみたい。一度だけ。
どうでもいいけど、小6の時に1年生で3つ子が入ってきて「実在するんだ~!」と驚いた。
以上である。
今回も面白かった。
「トイレを汚す人」や「蜘蛛と山羊」のようにエッセイ風の話が増えてきた。だからといって「悪霊」「土中の骨」のような話ばっかりでも重いし、ちょうどいい塩梅だと思う。
最終巻(全5巻)まで買ったので一気に読むぞ~。
あ、あとまぁアイちゃんは多分お腹冷やしちゃったのかな・・・それか牛乳飲みすぎちゃったのかな・・・まぁうん。・・・うん。
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LINKS
1-2巻の感想。1巻はめちゃくちゃ面白かった。2巻はまぁ、うん。
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20220305
去年の夏に読んで書いた記事を再編集。なんか2巻より面白かった、覚えはあるんだけど、感想読んでもなんか思い出せない話が多かったな。「古本」は思い出せた。
ちなみに被って2冊になった1-2巻は、沼津の古本屋「書肆ハニカム堂」に売った。後日Twitterで100円棚に並んでいるのも確認している。面白いから沼津の人は今すぐハニカム堂で買いましょう。僕の気に入った実話を折った跡つきです。