小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

山岸涼子『押し入れ』-読んだら絶対後悔する恐怖ほど、美味なものはない。-

 

 

ただ怖いだけじゃなくて何だろう・・・この後味の悪さというか不思議な感じというかなんというか。そら「ホラーの名手」と言われるわけだわ。

 

山岸涼子『押し入れ』(講談社 1998年)の話をさせて下さい。

 

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【あらすじ】

死の淵をさまよう男が体験した世界を描く『夜の馬』。

母親の偏愛が悲劇の結末をもたらす『メディア』。

実話をもとにした恐怖『押し入れ』。

そして愛と怨念に取り憑かれた男の話『雨女』。

 

ーーーーー衝撃の4編が、あなたを捕らえる。

 

裏表紙より

 

【読むべき人】

・眠れなくなりそうな奇妙な話が読みたい人(「夜の馬」

・マザコン、もしくは親ばかの母親を持つ人(「メディア」

・「残穢」系のホラーが好きな人(「押し入れ」

・忘れられない男がいる(「雨女」

 

【ためらうべき人】

・命の危機のある病気で病床にいる人(「夜の馬」)

 

【感想】

この漫画の存在は昔から知っていた。

昔、とはどれくらいかというと小2くらいの時にはもう既に知っていた。

その頃にはもうホラーに対する関心はビンビンであり、

小中学生向けの少女漫画雑誌講談社なので多分「なかよし」)に広告として掲載されていたこの本が、めっちゃ怖そうだな~と思っていたのを覚えている。

「押し入れ」というタイトル。もうここから怖い。

けれど当時は普通の女児。昔の少女漫画家の絵に抵抗があり、あと一回買ったらもうずっと家に置いとかなきゃいけないのかなんだか嫌で、ノータッチだった。

 

そして27歳現在、近くの貸本屋で再会することとなる。

貸本屋なので家に置いとかなくてよいし、じっくりごろんと家で座って読める。最高だな。

ただ一通り読んだ後、「雨女」は特に既読感が強かった。

過去にブックオフかどこかでこの話だけ立ち読みしていたのかもしれない。

しかし今回はブックオフではなく貸本屋なので立ち読みしなくていいし、非常に安いお値段でじっくりごろんと座って読める。最高だな。

貸本屋is最高

 

一通り読んだ感想としては・・・まあ「怖っ」である。怖っ。

ただ小学生の時には分からない怖さであったし、

「雨女」30が見えてきた今読んでこそ分かる話の恐ろしさ。

今出会うべくして出会ったんだなと思う。

ただ表紙のお姉ちゃん出てこないんかい!!と思ったけど。出てこないんかい!!!!

 

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今の僕の部屋の押し入れはごちゃごちゃ

 

以下簡単に各話の感想を述べていく。

ネタバレ有。

 

「夜の馬」:意識不明状態の重篤に陥っている青年が見た世界とは・・・

これは悪夢か現実か この世界をのぞいたあなたが判断してくださいp.4

悪夢のような一話である。

序盤の悪夢のような世界も恐ろしいけれど、中盤の衝撃的展開も恐ろしいし、終盤明らかになる世界の正体と、そして結末。すべて何もかもが恐ろしい

なぜこんなにも恐ろしいのか。

「死後の世界」という僕等生者には一生分からないものを描いているから。死後、僕等もこの主人公と同じような悪夢のような世界に行ってしまう可能性を、拭いきることが絶対に出来ないから。本作を読んでしまった以上、「死んだ後、この主人公のように暗闇が待っているかもしれない」という疑念から永遠に逃れることは出来ないから。

閻魔大王様が、ドーン!と出てきたら一気にフィクション感が出て、僕等は死後の世界にまだ希望を持つことが出来ただろう。しかし、本作の何とも言えないような気味の悪い世界が、「本当にこういう世界あるのかも・・・」感を掻き立てて性質が悪い。

読まなければよかった。

「死んだらこうなるかもしれない・・・」が永遠にまとわりつくある意味これは呪い。

読まなければよかった。

絶対に重病の病床についている方には読ませたくない一編。逆に、憎い人が病床につているのならば、白百合の花束等と一緒にこの1冊を送ってあげてもいいかもしれない。

 

「メディア」:イケメンと間違われるほどの端麗な容姿をもつひとみは、最近憂鬱なことがあって・・・それは母の存在。

「ひどいじゃない!30分も待たせて お母さんがこういう所ひとりでいるの大嫌いなの知っているでしょ」p.52

メディア・・・とは媒体を表すあの「メディア」ではない。女神の名前である。

どういった女神かというと、「父王を裏切ってまで愛する男イアソーンに尽くしたが、彼が若い女に心変わりしてしまい、復讐のために二人の子供を殺してしまう」p.59より女神である。

西洋美術の題材にも度々なってきた。本書でもとり扱われているドラクロワの「メディア」が一番有名だけどミュシャとかウオーターハウスとかも描いている。1890年-1910年代に「ラファエル前派」をはじめとして、盛んに描かれたミューズの一人。

まあ・・そのメディアちゃんがタイトルになってるので、結末は明らかですよね。

その明らかになっている結末を辿って読むのが本作の楽しみ方なんだろうけれども・・・うーん。

確かにひとみの「お母さん」の少女趣味とか凝った弁当とか不気味さは十分分かるのだけれど、漫画よりドラマで実写にした方が映える作品なのかもしれない。

途中シーマンが出てきたのは時代を感じたンゴねぇ・・。

 

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ウジェーヌ・ドラクロワ≪我が子を殺すメディア≫(1862年

画像では分からないが、明細度合が高い画像を見るとメディアの目がマジなのが分かる

 

「押し入れ」:姉と同居する部屋では奇怪なことが続く。

「うーーーん。この押し入れどうしても上の方が開くんだよね」p.110

表題作となっている本作。

所謂「実話系」の話である。

ホラー小説残穢が好きな人は絶対好きだと思う。

僕は残穢」そんなに好きではないので、本作もそんなに好きにはなれなかった。

ただそれでも、何度も出てくる炬燵のシーンの不気味さはたまんない。

普通に言えにある物なのに、暗闇にその電気を照らしているだけで非常に不気味に感じられる。なんか、自分の家でいつ起きてもおかしくないような。

でも殺された女性のことを思うと、ちょっと胸が詰まる。

最後の1コマ、殺された女性をもっと丁寧に官能的に描いてくれてたら、後味もっと引きずる作品になりえたかもしれない。

あと他の作品が「死後の世界」「子殺し」「死後の世界(その2)」と続く中で、結構あっさり感じられる。

 

「雨女」:財産目当ての結婚と分かっていても、ハンサムな数良と結婚出来て良かったと私は思っていたのよ。

「ここは成城のわたしの家・・・」p.168

序盤で話の真相は分かるようにできている。ああ恐らくこの主人公は死んでいて、その後彷徨っている様を描いた一編だろうと。

ただこのずっと寝間着姿の主人公がなんとも色っぽく、美人。ずっと不安げな表情も良い。雨の中しとしと降る中を黒髪で戸惑った表情で歩く彼女・・・。そして言葉一つ一つも上品で、物語を美しく彩っている。

からの、終盤の怒涛の展開。まさか主人公だけでなく、あの女もあの女も全員死んでいたとは・・・。そして最後のページが恐ろしい。一体この男どんな死に方するんだか・・・。

一番印象に残ったシーンは、p.187で主人公が取り憑かれながらも高らかに笑うシーン。彼女は背後霊となっても彼の傍にいることに喜びを見出しているのだろう。

逆に、終始現れる目つきの悪い女は数良のそばにいることが幸福とはいえど、彼のことを憎む気持ちの方が強いのかもしれない。

・・・にしても、終始不安そうにきょろきょろしている主人公が、初めて魅せる笑顔のシーンがこんなに恐ろしく感じられようとは。

 

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この女が「雨女」の主人公。裏表紙より。

 

ちなみに、こういう「主人公死んでて彷徨ってたんやで~」のさまよえる系の話で思い出すのは、高宮智先生の「記憶の森で」

当時読んだのは小学2年とかそこらだったけれど、今でもその短編のタイトル覚えているくらいにはインパクトを残す作品だった。

というのも、僕が人生で初めて出会った「主人公死んでて彷徨ってたんやで~」のさまよえる系だったからである。主人公が美人(美少女)で、戸惑いながら駆け巡る姿を色っぽく描いているのは本作ととも共通している。

「全部走馬灯でした!ちゃんちゃん!」の話は多いけれど、結構こういう戸惑う美人を楽しむ話は少ない気がする。映像化映えもすると思うので、もっと増えてもいいような気もするのだけれど・・・。

 

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背表紙からして怖いんだもんなぁ

 

以上である。

4編どの話も結構良かった。やっぱ「夜の馬」かな。あれは読まなきゃよかった。そういう一編なので。

 

にしても、この山岸涼子の他のホラーも読んでみたくなってきた。

貸本屋に他にもずらずら並んでいたのでどれか読んでみようかなあ・・・。

 

 ***

脚注:文章中で使った作品はすべてwikipedia著作権フリー画像から拝借しております。

 

***

 

LINKS

残穢について触れた記事。僕は圧倒的に「鬼談百景」の方が好きですね。

tunabook03.hatenablog.com

メーディアちゃんの絵は中野京子先生の「怖い絵」で知った・・・と思う。1-3、どれに収録されていたかまでは覚えていませんが・・・。

tunabook03.hatenablog.com

 

畠中恵『アイスクリン強し』-明治を舞台にした、「少女向け」キャラクター小説。-

 

 

江戸から明治へ変わる激動の時代を、

若者達は生きていく。

いや、生きていかねば。

 

畠中恵アイスクリン強し』(講談社 2011年)の話をさせて下さい。

 

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【あらすじ】

お江戸が東京へと変わり、ビスキット、アイスクリン、チョコレイトなど西洋菓子が次々お目見え。

築地の居留地で孤児として育った皆川真次郎は、念願の西洋菓子屋・風琴屋(ふうきんや)を開いた。

今日もまた、甘いお菓子目当てに元幕臣の警官たち「若様組」がやってきて、

あれやこれやの騒動が・・・。

キュートな文明開化物語

 

裏表紙より

 

【読むべき人】

・明治時代が好きな人

コバルト文庫ビーンズ文庫現役読者もしくは元読者

明治×イケメンの組み合わせが好きな人

・スイーツが好きな人

 

【感想】

本作を手に取ったのは、タイトルに惹かれたからではない。

確かに「アイスクリン強し」というタイトルはなかなか面白いと思う。クリームではなくクリンときた後に、「強し」とどん、と置きに行く。

本作に惹かれたのは、作者に惹かれたからではない。

確かに畠中恵さんと言えばみんな大好き「しゃばけ」の作者であり、その彼女が書く物語が詰まらないことがあろうかいやあ、そんなはずはない。

本作を手に取ったのは、表紙を見たからではない。

確かに色鮮やかなイラストで、パステル調で、目を惹くけれど・・・

 

僕が本作を手に取ったのは、本文に興味をひかれたからだ。

 

 

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汚いのは居酒屋で読んだからです。焼き豚の油が飛んでおります。(きたない)綺麗な状態の写真撮っておけばよかった。

 

僕が本書を手に取った時、このような容姿で本書は僕の前に現れた。

メカクシボン。

これは静岡市内週末限定古本屋「琵琶舎」さんでやっている企画であり、

本文の一部が書かれていて、

その本文を読んで選ぶシステムである。

外つ国から来た菓子は、南蛮菓子から西洋菓子へと呼び名が変わり、新たな品々があまた姿を現してきていた。スポンジケーキ、ビスキット、ワッフルス、チヨコレイトやアイスクリン、シユウクリーム、スイートポテトなどだ pp.21-22

確かこのあたりの文章が書かれていたと思う。

僕はてっきり明治の文豪が書いたお菓子のエッセイかと思って手に取った。

全く違う中身が、この「メカクシボン」規格の醍醐味と言ったところか。

 

内容は非常にライトノベルチックだなと思った。

お菓子屋の優男と、警察のちょっと野蛮なイケメンたちがああだこうだと絡み合いながら事件を解決していく。そして脇役にはお転婆なヒロインと、その父(成金、といっても明治の成金だからがちのまじで凄い人)、没落した御家から逃げてきた小弥太。

キャラクター小説といってもいいのかもしれない。

コバルト文庫とか、ビーンズ文庫とか読んできた世代には絶対刺さるはずである。表紙を講談社が抱える少女漫画家に描かせれば、もっとこの作品でがっぽり稼げるのではないか。意外とここ10年くらい少女漫画家層は非常に薄い講談社ではあるが。

ただまあ僕はそこら辺の少女小説あんまり嗜んでこなかったので、正直そんなに響きもしなかったのですが・・・。

 

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現代日本で最も「強し」とされているアイスクリーム。

以下簡単に各話の感想を語る。

 

所謂江戸→明治になりきっていない、明治時代の説明である。

舞台の背景の説明の部分といったところか。

日本史疎い身としては、非常に「はえー」となった。はえー。

多少長いが、わざわざこういう文章を足すところに作家の力量が伺える。実際この文章がなかったら、本編を半分も楽しめなかったように思う。ファンタジーで言う設定・世界観説明の部分と言ったところか。

 

チョコレート甘し:風琴屋にいきなり転がり込んできたのは、お家騒動に巻き込まれた青年・小弥太で・・・!?

スイーツで力業で解決しちゃうのが気持ちいい一遍。いやありえないでしょwと思いつつも、いやいや当時の人々はチョコレートを見たことがないなら可能なのか・・・!?と思ったり。

終盤出てきたキャラクター総勢で問題解決に向かって突進していくのはテンプレートとはいえ、胸が熱くなりました。激熱。熱盛。ただもっとこういうシーンが見たかったのだけれど、この「チョコレイト強し」でしか見られなかったのが残念かなぁ・・・。

あと沙羅ちゃん。お転婆の大正娘は可愛いね。

しゃばけ」といい作者は男性主人公の作品が多い印象だけど、意外と女子主人公の作品のが面白いんじゃないかなあと思ったり。

 

シュークリーム危うし:人探しの依頼が入る。しかもその場所は貧民窟で・・・!?

貧民窟で若様組がサーベル片手に暴れ、真次郎がピストル持ち出すこの話が一番面白かったかなぁ・・・。

真次郎もまさか武器持って戦う男だとは思わなかった。あえて「ピストル」という言葉を使っているのは、当時の真新しさと真次郎の西洋かぶれを表すためでしょうね。拳銃、の方がカッコいいけど漢字でいかにも日本的だからね。

そしてその貧民窟の親分、安野が出てくるわけですが・・・いやあ、彼の仕業には恐れ入った。まさかそう来るとはね。まさかまあ、そう来るとはね。

ちなみにこういう世界観をうまく漫画に落とし込んだのが銀魂だと思うんですよね。本章読む途中僕は久々に「曇天」をウォークマンで聞きました。

 

アイスクリン強し:真次郎と長瀬に関する事実無根の噂の記事がいきなり新聞に掲載されて・・・!?

今度は新聞社に殴り込み!といった回でしょうか。ここで出てきた三津谷という男は絶対再登場すると思ったのですが、しませんでしたね。ただの通り魔やんけ・・・。

この事件にも黒幕がいるわけですが・・・行動に至る理由が若干ぼんやりしていてそれが惜しいなと思う。確かに江戸から明治に変わる中でいろいろ登場人物も思うことはあるだろうけれども、今回の動機は「作者の想像」感で書いている感じが否めない。もっと具体的な理由があっても良かったのではないか。もしくは3編目でもって来るべきではなかった。江戸明治の変遷期を読者に伝えるだけ伝えてこれ以上伝えることがない!!ってくらいのクライマックスで、持ってくるべきエピソードではなかったか。

こういったふわっとしたところを赦せるのが少女小説読者であろうが、僕は残念ながら少女小説読者ではないので結構気になった。

でもまあ葉書の犯人は意外性があってよかったよ。

 

ゼリケーキ儚し:なんと沙羅がお見合いをすると聞き、真次郎は・・・!?しかも東京にはコレラが蔓延し始めて・・・!?

想い人が寝耳に水お見合い、且つ仲間の若様組はコレラの最前線!!挟み撃ちだ!!どうする真次郎!?といった回。今までは真次郎と長瀬のバディものでしたが、この話は明確に真次郎が主人公ですね。

ただまぁ、ぐっときたのは沙羅と長瀬。

「お父様、私は……私が小泉商会を継いではいけませんか?」p.269

ご都合主義展開とはいえど、勇気を出して父に心の内を語る沙羅にはちょっとぐっと、来てしまった。ヒロインしてますね。

そして終盤の長瀬の活躍。

「大河出警視は、金儲けも上手というから、社主とも関係が出てくるかもしれません。知っておいて悪い話じゃないでしょう」p.279

沙羅の父から金を引き出すために、情報を売るという決断をした頭の回転の速さと、ちょっと含みを持たせた言い回しは格好いいですね。上記の台詞なんて、文字を飛び越えてにやりと笑う長瀬の表情が目に見えるよう。

ただこの話には不満が大きく二つあって。

まず真次郎の作ったスイーツが出てきてないこと。ここに出てくる「ゼリケーキ」って見合いの場で出てきた不味いゼリケーキのことなんですよね。なんで不味いスイーツをわざわざ読まねばならんのだ。真次郎の美味しいゼリーが読みたいんだ。

小弥太がこの話で出番が終わっていること。まさかの第一章で転がり込んできた居候が、第四章でコレラでぶっ倒れているところで終わりとは思わないだろ。ちゃんと読者に向かって元気な姿を見せろ。だからお前はダメなんだ。もう!!

 

ワッフルス熱し:常に金に困っている真次郎と長瀬は、「序」で届いた懸賞付きの謎解きの手紙の存在を思い出す。

「序」がちょっと長めのプロローグであれば、この章はけっこう長めのエピローグと言ったところでしょうか。序で出てきた手紙の伏線回収と、序盤で出てきたワッフルが主役の話です。

ただまぁやっぱり・・・この手紙を出した理由もちょっとふわっとしててなんだかなぁ、と思う。

 

通して描いたが、やはり大きな不満が二つある。

一つめは、小泉琢磨の行動心理。

どうもこの小泉琢磨の悪戯する理由が、本編通して非常に弱い。簡単に言っちゃあ「次世代を担う若者を試したかった」だけである。そんな暇当時の成金にあるのか。ないと思う。これくらいの理由が行動原理の人物なら僕にも書けそうと思う。

このポジションは実在する「成金」を使っても良かったのではないか。そうすれば一気に物語の世界観にも厚みが増したように思うし、所謂「ライトノベル」の枠から出た作品になったと思う。

二つめは、キャラの扱いが雑。

特に小弥太と三津屋。各章の感想で先述したが、わざわざ名前を出して見せ場を作ったキャラクターの引き際が、「え、そこ!?」というところでぶつ切りで終わっている。

小弥太は第一章でどったんばったん風琴屋にやってきたから、最後までいるかと思ったらいつの間にか姿をくらましているし、最後に出てきてるのはコレラでぶっ倒れているところ。

三津屋に至っては何故名前を出したのかが分からないレベル。ただの通りすがりの「浪人」で良かったのではないか。

二人とも最終章でせめてもう一度出番がほしかった。

というか、作者のこの二人に対するキャラクター愛が足りないからこうなってしまうのではないか。結構キャラクター小説的側面が強い作品だったから、非常にここが残念だった。

あと若様組の「林田」「高木」あたりのいかにもとってつけた感が強いのも何とかしてくれ。

 

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最近食べた硬いチョコレート。

 

ちなみに、僕はこの作品を読んでいるとき、

ざっくり脳内でドラマ風にして読んでいました。

NHKの土曜10時くらいにやってそうな内容だなと結構思ったので。

なのでその配役を発表してこの記事を終わりにしたいと思います。

 

皆川真次郎:瀬戸康史

理由:やっぱりNHKで昔から菓子作っているので。

 

小泉沙羅:橋本環奈

理由:お転婆美少女枠といったらはしかん。あと美味しそうにスイーツ食べる図が浮かぶので。

小泉琢磨:谷原章介

理由:金持ちで余裕ある感じが当時の成金っぽいと思ったので。

 

長瀬:菅田将暉

理由:たれ目の瀬戸には釣り目の俳優をバディにしたいよね。

園山:伊藤健太郎

理由:これキャスティング失敗。眞栄田郷敦にしときゃよかった。

福田:岡山天音

理由:若者の脇役俳優と言ったらこの人しか知らないから。

高木:福徳秀介ジャルジャル

林田:後藤淳平ジャルジャル

理由:なんか優勝してたから。

 

相馬小弥太:京本大我SixTONES)

理由:気弱そうで背が小さそうだから。あと父親の顔がちらついてやっぱこういう江戸時代の作品で奔走してほしい

 

安野:柄本佑

その子:清原果耶

古河:香川照之

 

丹羽:堺雅人

杉浦:片岡愛之助

三津谷:伊勢谷友介

志奈子:齋藤京子(日向坂46)

富士村子爵の娘:加藤史帆(日向坂46)

 

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以上である。

ライトノベルとしてはまあまあ楽しめた。

ただその分若干不備も気になった。

例えば僕が古書店の店主だったら、この作品は「メカクシボン」にはしないかなぁ・・・。

店主の方は非常に静かで美人で美しいのだけれど、

読書の趣味はやっぱり微妙に合わなそうだ。

だからこそ、書籍と新たな出会いを求めてまた、

メカクシボンを買ってみようと思う。

 

***

脚注。

メカクシボン・・・こういった「表紙を見せずに本を売る」システムはあらゆる本屋で行われている。有名なのは東京の梟書房と、さわや書店の「文庫x」か。

ただそのほとんどが新刊書店で行われており、古書店でやるのは極めて珍しい。

秘密基地のような古書店で、手に取る秘密の本。メカクシボン。

新たな本との出会いを期待して、また購入したい次第。あと静岡ではこういうの滅多にないからぁ・・・。

 

 

「blt gragh. vol.59 2020 SEPTEMBER」-この雑誌を読むと必ず僕は「キュン」とする。-

 

 

 

 

大人の君だけじゃない。

昔の君にも、首ったけだったよ。

 

 

 

 

「blt gragh. vol.59 2020 SEPTEMBER」(東京ニュース通信社 2020年)の話をさせて下さい。

 

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【概要】

 

大人な君に首ったけ

 

1stアルバム「ひなたざか」表題曲「アザトカワイイ」センター、

佐々木美玲が初表紙

 

掲載順

佐々木美玲(日向坂46)

富田鈴花(日向坂46)

早川聖来(乃木坂46

大沼晶保(欅坂46)

石田桃香

宮﨑優

水木梨乃

櫻だひより

桜井日菜子

小芝風花

 

【読むべき人】

・みーぱん(佐々木美玲)推し:blt初表紙だぞ。必読だな!!!

富田鈴花推し:神のソログラビアだぞ。必読だな!!

小芝風花が「魔女の宅急便」実写化のイメージで止まっている人

 

【感想】

今月も 買ってしまったぜ blt(五七五)

 

しょうがない。表紙をここ4か月日向日向と変えてきたからね、仕方ないね。来月号の表紙はまだ明らかになっていないと思うのですが(2020年9月29日現在)、ここでまた欅来ちゃったら本当危ない。ましてや「櫻坂」としてきたらもうこれは本当買うしかない。定期購読検討不可避。危ない。

というのも、これ一冊1200円くらいするんですよね。それを四か月連続ってもうこのざっしに5000円も投資してるわけなんですよ。まあその分価値あるグラビアが毎号見られるから買っちゃうわけなんですけれども。

そこで5か月目ときたら6000円ですよ。6000円。分かりますか?6000円。

6000円あったらコミック12冊買えちゃうからね。ちょっとした少女漫画だったら完結まで全部買えちゃうからね。デスノートだったら完結しちゃうからね。いやまじで。

今一番買って読んでいる雑誌ですよ。いやまじで。

くぁ~~~~bltgragh本当恐ろしい、くぁああ~~~~~。

 

やっぱあれなんですよね。

目的の欅坂・日向坂のグラビアが良いのは勿論なんですけど、

他のグラビアも結構見ちゃうんですよね。

例えばいつだったかの鈴木愛理ちゃんのグラビアとか、今月の小芝風花ちゃんのグラビアとか。やっぱ「写真集クオリティー」を名乗っているだけあって、結構見ごたえがある。

あと乃木坂のメンバー毎回出てるのも強いですよね。新四期・四期とか、正直遠藤さくらちゃんと賀喜遥香ちゃんと林瑠奈ちゃんと北川悠里ちゃんくらいしか顔と名前が一致しない状態だったんですよ。

そこをカバーしてくれるのも地味に嬉しい所。この雑誌のおかげ金川さんと早川さんの顔は覚えました。

あと、先月号鈴木絢音ちゃん出てたのも嬉しかったなー。一番好きです。乃木坂で。写真集が出るらしいですね。買い・マス。

満足度の高いグラビアと、乃木坂のメンバーを紹介してくれるから、1200円といってもついつい買ってしまうわけでございます。

 

今月ももちろん満足度が高かった。

表紙は佐々木美玲初の表紙である。

笑顔のイメージが強い彼女の「大人な一面」に迫ったグラビアとなっている。わけだけど・・・うーん。ちょっとそこは、うーん。

初の表紙であるのだから、いつものみーぱんを前面に出した方が良かったのでは。あとやっぱりみーぱんをエロい目で僕は見られないです。

 

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ポスター1枚目。non-noよりMOREのが天下とれる気がするんだがなぁ・・・。

 

以下簡単に各アイドルの感想、思ったことなど徒然なるままに述べていく。

 

佐々木美玲(日向坂46)

「大人な君に、首ったけ。」と称してるだけあって、

基本的にクールな表情の美玲さん中心に掲載されてます。笑顔なのは最後の一ページくらい。

確かに、薄手のニットは身体のラインが分かって、まさしく「大人な君」なのかもしれない。彼女推しの男性はもう鼻の穴物凄く膨らませながら読んでいるのではないか。特にp.7のさかさまの構図の写真は色っぽくて美しくて、声が出ない。

ただ、僕は個人的には佐々木さんには笑っていてほしいんですよね。

にっこりと、笑顔で。そしてけやき坂時代の「女子高生」のイメージが未だに僕の中で抜け切れてなくて、その・・・そんな表情されても、僕は君をそ・・・そんな目で見れないよぉ・・・ん。

なので、「アザトカワイイ」のセンターの美玲さんはめっちゃ好きです。

もうずっと笑顔でやってるじゃないですか。キラキラが半端ないんじゃ!!!(半ギレ)

あと最後に何か呟くところあるじゃないですか、でもその直後に切ない表情をするんですよね、何あのMV。あざとい。アザト可愛すぎる!!!!!!

あと髪伸びましたね。ボブのイメージが強かったのですが。

アザトカワイイのポニーテール見てしみじみ思いました。

あとセンターでああいう髪型ってなかなかなくて新しくて良いと思います。そしてあの一つ結びがもたらす程よい「大人な君」で僕は満足です。

そ、それ以上は、み、美玲あ、あああ、あああ~~~~~~~!!!!

でもなんだろうな・・・。

けやき坂時代彼女は何度か一期生局を中心にセンターを務めてきたのですが、「期待していない自分」「イマニミテイロ」をはじめ、切ない表情で魅せることが多かったんですよね。

其処をさらに引き出そうとしたのが、今回のグラビアの意図なのかなあ・・・。

ちなみに僕が一番好きなのはp.16の体操座りしている写真。これくらいの大人感がいいです。

あ、あとインタビューで

「いつか自分や誰かが卒業する時がくることを想像したら、みんなと一緒にいられることが普通じゃなくなるんだなって、すごく悲しくなっちゃて。「私、こんなにみんなのことが好きなんだな」と気づいたので、(中略)、しれから伝えられるときにちゃんと伝えておこうって思って、それで毎日「らぶ~」って言うようになりました」p.14

のあたりは、ザ・みーぱん!!という感じがしてとても好き。美玲、らぶ~~~~~。

 

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僕の中の美玲はこの髪型のイメージ強かった。生写真は2枚持ってます~。

 

富田鈴花(日向坂46)

大人っぽくなりましたね~~~富田は。

もともと顔面は可愛い子、ただ若干華に欠けるなとは思っていました。ただここ1年くらいの活躍が目覚ましく、なんとなく目を惹く存在に。高瀬と富田と金村は特にここ1年くらい飛躍しましたね。

今回のグラビアも華、あります。

今まで見てこなかったような表情の写真が多い。富田、おいお前、いつの間にそんな表情出来るようになっていたのか・・・?てかいつのまにそんな大人になっていたのか・・・?これはファッション誌モデルオファー来るんじゃないのか・・・?っていうクオリティー

あとセンター分けにしてる髪型の写真がいくつかあるのですが、それがもう凄い大人っぽいんですよね。乃木坂で言えば白石、欅坂で言えば佐藤を思い出すような色っぽさ。

数年後、花ちゃんズの片割れとしてギター片手に、大人のおねーさん枠で活躍する日が来るのかしら・・・。

てなわけで、一番好きな一枚はp.25の一枚ですね。センター分けで大人っぽい。富田の未来も予感させるような写真であったので。

「もし好花がいなかったら、私はこんなに頑張れなかったなって。」p.26

花ちゃんズの活動についてや、最近変わってきたアイドルとしての意識について語ってくれています。(アイドルとして)伸びない子は理由が分からないことが多いですが、伸びる子は理由が明確なのは何なんでしょうね。

日向坂は結局、「仲良しごっこ」で終わらず、ひとりひとりが切磋琢磨しあえる仲を作れたからこそ、今があるんだと思います。その荒波に高瀬も富田もようやく乗れたといったところでしょうか。

その基盤を作ったのはやはり佐々木久美大先生という存在があって・・・うーむ。感慨深い。

 

早川聖来(乃木坂46

可愛いですね。

時々乃木坂ファンのまとめサイトも見たりするのですが、頻繁に名前が出るのも良く分かります。

ただ、顔面が非常に印象に残らない。

賀喜さんも印象残らない顔だなと思ってたんですが、あの子顔が大きいんですよね。だからどうしても目がいっちゃうし、惹かれちゃう。

でも彼女はスタイルも顔も全て出来すぎている。

そしてその美しい「顔」も既視感ありません?若干乃木坂の齋藤飛鳥や日向坂の金村美玖に似ている気がする。

例えば乃木坂の新四期の林瑠奈なんて、正直顔面偏差値はそこまでだと思うんですが、今までにいなかったような顔じゃないですか。バチバチに笑顔で面白いこと言うんだから、そら人気出るんだろうなとは思います。

あとグラビアもまあクールな表情は映えるんですが、金川さんのような「はっ!!」とするような感じは感じられなかったんでうしょね。

インタビューを読んでいてもいい子なのは伝わってくるのだけれど、それ以上が感じられない。個性が感じられない。

この顔面がある限り、絶対人気下位にはならないとは思います。ただ、これ以上の伸びはこのままでは期待できないようにも思います。

欅で言うと守屋麗奈が同じような境遇にいると思うのですが・・・。

日本のアイドルは、顔が良くて中身も良い子だけでは、高みを目指せないのです。

ルックスに多少の欠点あれど、強烈な個性・根性・「グループよりも私が人気者になる」という意志がある娘が、より高みを登っていけるような気がします。

グループって、極論仲良しグループとは違うので。特に乃木坂はその傾向強いと思いますが。

そこを勘違いしたのが欅の・・・なんでもないです。

 

大沼晶保(欅坂46

この子は入ってきた時「なんで欅なんや・・・?」と思っていたのですが、「こりゃ欅ですわ・・・」と思うことが多いです。

まず本人もインタビューで言ってるんですが、クセが強いんですよね。クイズの早押しのポーズだったり、反復横跳びに全力だったり。

そして、このグラビアで初めて知ったのですが、無表情の写真がよく映える。こういう一面があったんだなぁ・・・って、惚れ惚れする。

あと瞳が大きくて左右非対称が若干強めの顔面だから、写真映えが半端ないんですよね。

逆に笑顔の写真はそれが全部分からなくなるから、なんか普通になっちゃいます。笑っているところ動画だと可愛いんですけどね。

クセが強くて、無表情が映える・・・こりゃ、ちょっとひねった欅の方が彼女としてのアイドルの道が拓けると運営は判断したのでしょう。

ただその「クセ」で勝るのが新二期には二人いるんですよね。大園と増本という強敵が。

この2人をはっ倒すくらいの「クセ」を期待したいのと、あともっと彼女の写真見たいですね。多分シチュを変えれば変えるだけ新しい顔見せてくれるんじゃないかしら。

一番好きなグラビアはp.38-39。「え?そんな顔するんだ!?」からはじまって、家の壁に顔をつける可愛い一枚の繋がりがなので。

底なし沼を見せてくれ。

 

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ポスター2-3枚目。石原さとみ感ある。

 

石田桃香

凄いいい顔ですね。

多分、顔から下を隠したら、凄い童顔なんだと思うんですよ。ところがどっこい、顔全体を見ると唇が色っぽくて、「幼いのに色っぽい」そのギャップがたまんないですね。

身体も申し分なくエロいです。

控えめな胸を押し上げている感じがまあそのぽろりしそうでエロい。そしてくびれ。くびれのラインが綺麗。安産体型だから、くびれがより映えますね。

幼いんだか大人なんだかエロイんだか。

そのアンバランスが彼女の魅力なんでしょうね。

好きな一枚はp.53の畳の上で正座している写真。こっちを見据える表情と身体のエロさがより際立っているポーズと、あとやっぱ畳は正義ですね。

インタビューを読むと、意外と関西人なんですね。なんか逆に好きかも。

インタビュアーの「快進劇が続いていますが、どうしていろんなことが実現するんdなと思いますか?」といった旨の質問に、彼女は以下のように答えています。

「言霊です!私、昔から言霊をずっと信じていて、自分がやりたいことは周りのいろんな人に言いまくるんですよ。そうすると、「”自分もがんばらなっていいプレッシャーになるし、これからもやりたいことは何でも言葉にして言っていこうと思います。うん、言霊はすごいですよ。言霊は大事!」p.56

と言い切るエネルギッシュさもいいですね。

童顔えちえちエネルギッシュ関西娘、応援します。

 

宮﨑優

多分若手女優としての道をこれから歩んでいくであろう娘の、グラビアですね。

セパレートでない水着をきているのですが、こういう水着が逆にエロいいっていうの、あると思います。無駄に股間見ちゃう。あると思います。

で、なんか知らないんですけど、途中でさらにレースのようなものを身に着けるんですよね。何で着れば着るほどえろくなっちゃうんですかね。

それで普通の道路を背景に取っているんだから、もう半分痴女です。痴女。

ただその「痴女」感を感じさせない清純な雰囲気が、彼女の持つ魅力なんでしょうね。出身も三重か。いいねえ。うんうん。いい女優になりそうだ、うんうん。

あと「東京に友達がいないので(笑)」p.64一人で映画カラオケステーキ屋さん焼肉屋さん全部できるようになったのか。いいねえ、うんうん。

ただ、彼女のことを、次のbltの号が出たときに覚えているか、と言われると凄い微妙なんですよね。シチュエーションが「道路で水着」だったのでそれで覚えているかもしれませんが・・・個人単位で言えば、まだ石田さんの方が覚えている気がする。

顔も良くて清純な雰囲気もあって、そして東京でも友達が上手く作れないちょっと控えめな部分もある、完璧。完璧なんだけれど・・・。演技を見ないと何とも言えない。

一番好きなグラビアはp.64。女の子が髪を耳にかけるのは正義ですね。

 

水木梨乃

今号で一番エロいです。エロイザちゃんよりエロいかもしれない。

胸から腹までの肉感が素晴らしいんですよね。細すぎないシフト過ぎない。からの、ちょっと照れもあるような表情。若干内斜視なのも良い。

顔もかわいいんですよ。少し流し目気味の瞳も、口元のほくろも程よい大人感があって可愛い。

インタビュー見る限り演技の仕事が中心で時々グラビア、とのことだったけれど、グラビアもっと出してもいいんじゃないんでしょうか。知らんけど。内田理央のようにグラビアから女優になっていこうよ。服着たらもったいないよ。

多分この子胸、「胸間」が極端に狭いと思うんですよね。おっぱいとおっぱいの距離が狭い。だからすぐ自然に谷間が出来るし、実際のカップ以上に大きく見える。

非常に得な胸だと思います。ただ僕もこの胸だから分かるのですが、合うブラジャーがなかなか見つからないんですよね・・・。どうでもいいんですけど。

あと国語の教師目指している大学時代にスカウトされ、卒業後はグラビアやっている。もう、そのシチュだけで充分です。ありがとうございます。

あと、彼女の所属事務所を調べたら、宮﨑優さんと武田玲奈と同じ事務所なんですね・・・なるほどね。なるほど。

 

桜田ひより

カレンダーの宣伝グラビアですね。

いつのまにこんなに大人になっちゃってたんですね。

まだ高校1年とかそこらへんか灯ってたけど、プロフィール見ると2002年生まれ。そっかあ・・・そっかああ・・・。そら僕もうっかり27歳になっちゃうわけだな。

p.74の表情とかもう誰?って感じです。誰???モデルさん・・・???

高校卒業してこれから女優活動がさらに活発化されるのでしょうか。将来楽しみね。

ちなみに僕の中の三大ひよりは桜田ひより」「濱岸ひより」「一色日和」です。

 桜井日菜子

同じく4ページのグラビア。

「岡山の奇跡」と呼ばれた時ほどの輝きはないけれど、可愛いですね。

特に最後の笑顔はたまりません。

ただ彼女の問題点って、「岡山の奇跡」と言われた後から年齢に合わせて進化していないところなんですよね。

今でも可愛い。可愛いんですけど、髪型もメイクもあまり変わっていなければ、そら「奇跡」言われた時の輝きには劣る訳ですよ。

年齢を見ると23歳。もうちょっと、新しい日菜子が見たいんですけどね・・・。いかがでしょうか。

 

武田玲奈:タビレナ

ううーん・・・かわいくないことはないんだけど、正直この子より、さっきの水木さんの方が可愛かったよ。もう十分有名になったのだし。この「blt連載枠」も、後輩に譲ってもいいんじゃなかろうか。

あとこのコーナーって、写真見ても結局いまいちどこ行ったのかわかんないから微妙だなと思う。青森までわざわざ行く必要あったか?て写真ばかり。千葉でもよかったのでは?コロナ禍でわざわざ青森まで行って撮りたいショットというのがいまいち分からないのだけれど。

 

小芝風花

この子のグラビアが一番良かったです。

終始クールな表情で撮っているのですが、意志の強そうな眉にその表情がよく似合う。

昼と夜をテーマに撮っているのですが、特に夜。

黒字に黄色い花柄のワンピースで夜の街を闊歩する姿が非常にかっこいい。

特に好きなのは、p.92で遠いところから東京を眺める1カット。これをポスターにしてくれ!!と言ってもいいくらい凄い良い写真。

正直彼女は、魔女の宅急便実写化で出て、その後はすぐ消えるものだと思ってたんですよ。

ただこの前ちら見した「美食探偵」での主人公の演技は凄くいいなと思いました。自然で愛嬌があって好感が持てる。

からの、こんなクールで格好いいグラビア魅せられたら、僕達いったいどうしたらいいの・・・小芝さん・・・どうしたらいいの小芝さん・・・助けて・・・小芝さん。

「コメディー作品だけでなく、いろんなジャンルの作品をやらせていただきたいですし、役の幅を広げたいです。例えば、猟奇的な怖い役をやってみたいですね」p.94

力強い瞳で語る彼女の女優の道は明るいはずである。

次はどんな顔を見せて、驚かせてくれるの?

ますますこれからが楽しみな女優ですね。

 

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キュン。

 

以上である。

メインとなる坂道は勿論、特に最後の小芝ちゃんのグラビア、素晴らしかった。

満足である。

ただポスター・・・飾れずに結局たまるだけだから、1枚だけにして雑誌自体の単価を少し下げてもらえたらうれP・・・。それかポストカードをだな・・・。

 

なんだろうなあ・・・やっぱ次号は「櫻坂」表紙でいくのかなぁ・・・そうしたら買うしかないし多分たくさんの人が買うよなあ・・・。

5が月連続購入・・・・6000円???

うーむ。うーむ。

 

 ***

 LINKS

過去に買ったbltの感想です。この雑誌は最近発売日からだいぶたつと本屋で店頭で見かけなくなることが増えましたね。やっぱ坂道だと売れるんだろうな。

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田村由美『ミステリと言う勿れ7』-人と比較してしまう僕はダンゴムシ。-

 

 


いやー。
最新刊も最高だったね!!

1冊で終わるミステリっていうのもいいよね!!!

 

 

 

田村由美『ミステリと言う勿れ7』(小学館 2020年)の話をさせて下さい。

 

 

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【あらすじ】

大学教官の天達にバイトにと誘われて

山荘に行った久能整。

そこで謎解き会をするはずが、

思わぬ事件に巻き込まれていく・・・。

”解読解決青年”整が今度は山荘ミステリ!?

注目展開の第7巻!!

 

裏表紙より

 

【読むべき人】

・無論1-6巻まで読んできた人

・山荘ミステリものの設定にワクワクする人

 

【一息覚悟するべき人】

・山荘ミステリガチ勢

 

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晴天ですが、よく見ると雪かき中であることが分かります。冬の写真ですね。

 

【感想】※ネタバレ有読んでない人は、本書を読んでから読んでください

いやあ、今回はあっさり騙された。いや、今回「も」か。

まさかの二重構造だとは思わなかったよね。

そしてその一重目もよく練られた謎解きだったという・・・。

本当、仲良し夫婦の意味が分かった時は戦慄したよ。

そういう意味だったのか・・・って。

でもまあ確かに、わざわざ花の絵そんな丁寧に飾るか?とはちょっと思ってたけど、

まあそこ含めてゲームだったとはね・・・。

天達先生、蔦にはやられたよ。

特に蔦。絶対お前怪しいと思ってた。

 

そして後半明らかになる「本番」の謎解きゲーム・・・。

絶対デラさん怪しいと思ってたわ!!だってずっと瞳孔開いているから!!霜鳥もずっと開いてたし!!

でも瞳孔開いてたのがまさか犯人を見張るためだったなんて・・・。

なんか、冷静になれば橘高が犯人だってすぐ分かりそうなもんなんですよ。

だって一人だけ異様に潔癖症に描かれていたし、それは「痕跡を消すためでは?」と分かりそうなもんだし。

だけどそこに瞳孔開いているデラ

ゲームの犯人役であった世間離れした「イエス・キリストと、

怪しい男が2人いたからすっかりそっちに気を撮られてしまった。

まさかの橘高が犯人だと知った時はもう素直に驚いちゃったよね。「ええ!!!お前かよ!!!」って。めっちゃいい奴だったやん!!って。

登場人物が一切死なないのにこんなにハラハラさせられるとは。さすが「ミステリと言う勿れ」。

 

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裏表紙は天達。

 

殺すのか?

殺されるのか?

やっぱり殺すしかないんだろうな

p.4

 

あと、今回のエピソードは伏線回収が見事だと思いました。

先述した序盤に出てきた「殺すのか?・・・」から始まる文章、

「最近こんな事件多くてイヤになる」p.12ストーカー殺人事件、

相良から突如発せられる「透明人間」に関する謎解き、

そして序盤整が車内で発する「人を殺す可能性があるってことが怖いんです」p.14の言葉・・・。

その他諸々全ての点が繋がって明らかになる真相は圧巻。

息をのむ。

そうか、そういうことだったのか・・・と。

 

そして今回その橘高の動機も凄い切ないんですよね。

生徒会長しながら陸上部のスターで成績もよくて男前p.44だった橘高が、

完璧主義じゃないはずないんですよ。完璧主義だったはずなんですよ

それが高校卒業・大学卒業するにつれ、

一人の親友は親の遺産で豪遊しながら俳優・作家と華やかな職業に就き、

一人の親友は学業を実らせ大学の准教授という立場になり美しい妻も娶った。

しかし自分は役所勤めで、独身で、趣味にも走れず、親の認知症に追われ・・・。

あの頃は一番自分が輝いていたのに、

今では一番自分がみじめに感じられる。

凄く凄く良き親友であったからこそかきたてられる劣等感。

 

そして完璧主義だから、

自分がミスしたことを絶対に許せなかった。

それがバレることも絶対に避けなければならなかった。

たとえ、親友であれど、劣等感を掻き立てる二人を殺すことになったとしても・・・。

 

「久しぶり 三回忌以来か 元気だったか」p.24

序盤で天達が橘高に声を掛けます。

この掛け方から見るに、恐らく橘高としばらくは会っていなかった様子。

合わせる顔がなかったんでしょうね。いや、顔を合わせたくなかったんでしょうね。

 

僕も、27にして今、社員かバイトかギリギリの状況にいます。社員だったけど仕事ぶりからバイトの提案を受けている状態です。それくらいコミュニケーション不得手で物覚えが遅いのです。

でも、インスタグラムには新卒時からずっと同じ大企業に務めていたり、学校の先生になっていたり、結婚していたり、子供がいたり、趣味に百万単位で継ぎこんでいたりと、

きちんと「大人」している友達がたくさんいるんですよね。

東京界隈・・・千葉埼玉横浜で。

東京で正社員労働をして「大人」をするみんなと、静岡でフリーター労働が迫られている僕。

しかもなにわにMARCHだからなんかもう格差がね。感じられるわけですよ。

大学でも同じ部活だったじゃない。対等に話をしていたじゃない。

高校になると早稲田とかいて、帝大院卒とかいるんですよ。

高校時代一緒にご飯囲ってたじゃない。それなのに僕だけ職がつづかない。

静岡で一人、僕はダンゴムシです。

親が癌なので、ちょっとしばらく関東暮らしは現実的に考えられません。実家が関東で親が健康で大企業の社員労働している方々は一体どんな徳を前世で積んだのだろうか。

なので僕は最近、大学の友達とも高校の友達とも、若干疎遠気味です。

みんな関東にいるというのもそうだけど、でもそれ以上の理由が橘高の動機と同じ部分にある気がするのです。

仲良しだったからこそ、比べてしまうし自身が卑小に感じられる。

ましてや「パーフェクトマン」ならもうミクロ単位に小さく感じられていたことでしょう。

橘高勝の動機は、僕が今までで一番共感した動機でした。

 

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展開、動機共に非常に満足した一巻でした。

ただ強いて言うならば、「館ミステリ」設定を活かしきれていなかった印象。

こう・・・「蔦」の設定をもっとこう練られなかったものか・・・もしくは部屋の配置や家具の位置とかをトリックに応用できなかったものか・・・。

「ミステリ言うなや」タイトルで言っているのに、そこまで言うのは我がままですか?

 

キャラも正直若干既視感。

橘高、天達は「お、新キャラきたな」と思いました。

ただ、相良が出てきた時は正直「池本に似た奴きたな」と思っちゃったんですよね。いや頭の回転の速さとか全然違うんですけど、それでも顔と髪色似てない?

蔦は世間離れしているところが放火犯(美の方)と若干被ったのと、

あと喜和さんもバスに乗っていた気が・・・。

「キャラクター造形」の限界を少し感じられたのが微妙。相良、すまんが整形してくれ。

 

あとこれはあえて天達が学生に向けて使う呼称なのかもしれないが、

教授は学生に対して「生徒」とは言わないと思う。p.167

小学生が児童、中高生は生徒、大学生は学生・・・では?

でも大手の小学館だし校閲も入っているだろうからあえてなのかなあ・・・。

 

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コナン君の作者が小学館繋がりで帯描いてましたが、この顔じゃないだろと思った。この顔じゃないだろ。

 

以上である。

展開にハラハラさせられ、

明らかになった動機には胸がきゅっとなった。

そしてそれがまるまる1冊で楽しめるという・・・。

秋の夜長にうってつけの一冊であった。

 

MOREでだーりおが今月おススメしてましたね。

さすが我らのだーりお。はい神。神です。

 

は~・・・。まさかこのまま進んで橘高のように殺人事件起こすわけにはいくまいし、

この先人生どうすっかなぁ・・・。どうすっかなぁ・・・てかどうにもならないんじゃなぁ・・・もう嫌だよ。もう、嫌だ。

 

***

 

LINKS

今までは追っていたので2冊単位で感想を書いています。

ちなみに6巻の表紙が一番好き。

 

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小川洋子『最果てアーケード』-そこはどこでもない。いつでもない。心の最果て。-

 

 

 

そこは最果て。

貴方の心の最果て。

僕の心の最果て。

 

 

 

 

小川洋子『最果てアーケード』(講談社 2015年)の話をさせて下さい。

 

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【あらすじ】

使用済みの絵葉書、義眼、微章、発条、玩具の楽器、人形専用の防止、ドアノブ、化石・・・・・・。

「一体こんなもの、誰が買うの?」という品を扱う店ばかりが集まっている、世界で一番小さなアーケード。

それを必要としているのが、

たとえたった一人だとしても、その一人が辿り着くまで辛抱強く待ち続ける・・・・・・。

 

裏表紙より

 

【読むべき人】

小川洋子初心者。一編一編が短く、非常に読みやすいため

古書店、古着屋の雰囲気が好きな人

・黄昏に切なくなる人

・朝読書にうってつけの本を探している人

・手芸が好きな人、ハンドメイドが好きな人、は多分とても好きな一冊。

 

【感想】

小川洋子はもともと好きな作家だ。

高校時代の国語の教材で読んだ「刺繍する少女」でホスピスの存在を初めて知った。そしてそこから大学時代、『完璧な病室』『人質の朗読会』『まぶた』『薬指の標本』等々・・・ブックオフの100円コーナーで見つけては買って読んで、を繰り返してきた。

今回も、夏にブックオフオンラインで買い物した際に見つけ、「小川洋子の短編集なら外さないだろう」と買った次第。外さなかった。

 

世界で一番小さいアーケード街の話である。

恐らく「商店街」という言葉を用いないのは、「商店」と言い切れるような活気さがある場所ではないからだ。

使い古したレースのみを扱う店、百科事典が置かれている多目的室、剥製等に使われる義眼屋、「愛と情熱で揚げるドーナツ」屋、使われた絵葉書を扱う文具屋正確には違うが、表彰が好きな勲章屋・・・等々。「商店」と言い切れるのはドーナツ屋くらいで、他はどこかひっそりとしている。

アーケードには偽物のステンドグラスが嵌められていて、路面には色色色が映る。

静謐な雰囲気が、常にどこかにいつも、漂っている。

そして20代中盤になる「立派な娘さん」になった主人公の行動範囲は年齢の割には非常に狭く、配達屋としての仕事をこなす時、そして「人さらい」をする時以外は、生活のほとんどをアーケードの中で過ごしている。

 

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手芸やハンドメイドが好きなあなたには「衣装係さん」を。

あなたはきっと今はもう亡き劇場で長年働いていた衣装係さんの創作意欲に打ち震え、本を開いたその両手でより一層、密な世界を作り上げるでしょう。

ヴィンテージのレースってどうしてこんなに惹かれるのだろう。

 

孤独が寂しくなったあなたには「百科事典少女」を。

あなたは幼いんながらもあらゆることを知ろうとする少女の知識欲に感動し、そしてその父親の一心に取り組むそのひたむきさに心を射抜かれることでしょう。

寂しい時は何かに一点注ぎ込めば誤魔化すことが出来る。

 

これ以上愛おしくて大切な存在はないというものがある方には「兎夫人」を。

あなたは物語の行く末を見たときに、いつかくるその時を思って、あなたのその大切な存在をより愛おしく大切に思うでしょう。

ずっと一緒に入れないからこそ、一緒にいる時間を大切にしたい。

結末の切れ味も相まって、僕はこの短編が一番好き。

 

恋するあなたには「輪っか屋」を。

あなたは「愛と情熱で揚げるドーナツ」の色形感触触感味を想像して、一緒にその想い人と食べる想像を更にします。青い空、白い雲、若々しい緑の木陰、春風が吹く手元にはきつね色のドーナツが日光を浴びて輝いています。なんて幸福なことでしょう。

一緒にいる時間を大切にしたいけど、「大切にする」の仕方が分からないの。

その一つの答えの断片が、この短編にはある。

 

手紙を書いて送られてさらに書いてと文通をしたことがあるあなたには「紙店シスター」を。

あなたは文通していた時の気持ちの昂りを思い出し、そしてその文通の「終焉」をなんとか思い出そうとし、そして今何も手紙が届かない自分の境遇を少し寂しく思うことでしょう。そして手紙の偉大さを知るのです。

メールでもSNSでもない。手紙がいいの。

だって死んでも、あなたと僕が繋がっていた証拠が残るから。

 

ひとりになりたいあなたには「ノブさん」を。

あなたは、静謐がより色濃くなったドアノブ屋に迷い込み静寂の国のアリスとなるでしょう。そしてその穴にすっぽり嵌ってもう出られません。そこにはウサギもチェシャ猫もいません。トランプ一枚すら落ちていません。

しかしそこを、ようやく自ら出ることが出来たとき、あなたはアリスであることを瞬時で忘れている。跡すら残さず涙は乾いているでしょう。

僕がドアノブをひねった時、その先は、真夜中でした。

 

はるか昔、例えば小学校の時中学生の時に表彰されたことがあるあなたには「勲章店の未亡人」を。

今は表彰されることは愚か表彰されている人を見たのもいつが最後か分かりませんが、それでも昔に確実にあなたは表彰されたのです。あなたはあなた自身が、それ程に素晴らしい存在であることを思い出すでしょう。

表彰式というのは人生において一瞬で、ついつい「自分は素晴らしい存在である」という事実を忘れてしまうから勲章があるのです。

 

亡くした経験のある方には「遺髪レース」を。

あなたが寂しさや悲しさに耐えられなくなった時、この物語の女主人が紡ぎだすレースの繊細さ美しさ細やかさを脳裏に思い描けば、少しそれは慰められるでしょう。

でもそのあいた穴は決して癒えることはないのです。

 

その癒えなさに耐えきれなくなったあなたには「人さらいの時計」を。

同じく耐え切れず今も心に空虚を抱えている「私」が日々織りなす行為に、あなたは共感して震えるでしょう。

そして街に出ては吹く風と共に思っていた、「どうして私だけ・・・」がなくなっていくのを感じるはずです。

 

そして亡くした瞬間を幾度となく思い出してしまうあなたにはフォークダンス発表会」を。

ほら、見てごらん。

ドアノブがあるよ。

目を閉じて・・・目を閉じて。

「そこは思い出に巡り合える場所」帯より、あなたは莫大な数の思い出を思い出し、そっと涙を拭きながら、布団を被って眠りにつくのです。

壊れてしまうから、心の最果てに置いてきたのに。

おやすみなさい。

おやすみなさい。

 

一通り感想(?)を書くと、

一見どこから読んでもいいように見える本書が、

実は密なつながりがある「連作短編集」であることに気づく。

そしてどの短編にも漂う静寂の正体が「死」であり、

本書の登場人物全員が「遺された人」であることにも気づく。

 

以上である。

あっさり軽く読める割に、実はとても重いテーマを潜めている、

不思議な一冊であった。

 

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一通り読むとこの表紙がまた違って見えてくる。

 

そして久々に読むとやっぱりいいよね!!小川洋子!!!

何がいいって言うと、どの作品もまあ傑作なんだけど何より多作な作家だから、読んでも読んでも未読の作品が山程あるというのがこれまた凄いところ。好きなところ。

 

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この作品の前に、最近読んだのは

『ミーナの行進』(中央公論新社 2009年)

これはエモエモのエモ。

「最果てアーケード」はあえて時代を「昭和」「平成」あるいは「令和」か分からないようにしているのですが、

この作品はごっりごりの「昭和」。

昭和のポップな雰囲気と、同時に思い出が思い出であることの切なさが襲ってくる。エモエモエモのエモだった。

 

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でもやっぱり一番好きなのは

人質の朗読会』(中央公論新社 2014年)

これですね。

また再読しようかなあ・・・。

積ん読山程あるからなかなか、なかなか、なかなかアレなのだけれども。ね。

 

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中央公論新社は一番小川洋子を「分かってる」表紙で文庫出してくれるからすこ。

 

***

 

LINKS

 

このブログに書いた他の小川洋子の作品の記事。

意外にも1冊しかなかった。

「ミーナ」はブログサボってた時期に読んだ本だったからなぁ・・・。

 

tunabook03.hatenablog.com

 

「&Premium 2019 OCT.」-誰が何の本を読んでいるかということには永遠に興味がある。-

 

 

 

数冊の制限の中で誰かがお勧めする本は絶対面白いはずなのである。

 

 

 

「&Premium 2019 OCT.」(マガジンハウス 2019年)の話をさせて下さい。

 

 

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【概要】

これまでの読書が、いまの自分のある部分をつくってきたと思いませんか。

著者の深い思考や知恵、豊かな感性に本を通して触れ、

それを吸収することが自身の人格を作っていく、と感じたことがある人は少なくないと&Premiumは思います。

その体験を数多く積み重ねてきた人は、読書がより豊かで深い人間性を育てることを知っています。

今回はそのような人たちに、もう一度読みたい本を教えてもらうことにしました。

素敵な大人になり Better Lifeを送るための読書案内です。

p.26より抜粋

 

【読むべき人】

・良い読書ガイドが欲しい人(漫画特集もあるよ!)

・雑誌が好きな人(各界の著名人が「捨てられない雑誌」を紹介するコーナーがあるよ!初めてこんなコーナー見た!!最高だな!!!さすが「マガジン」ハウス!!!!)

 

【感想】

週末限定の古本屋で買った。

雑居ビルの二階にあるけれどドアを開ければ、そこで美しい女性店主がカウンター越しに読書をしている。店。

 

一通り見て、「古書店で一度に使う金額は1000円以内」という自分で決めたルールのもと、

悩みに悩んで悩みに悩んで悩み悩んだ結果、

購入した3冊のうちの1冊である。

2019年の&プレミアムの読書特集。

去年新刊書店で立ち読みして買おうかどうか悩んだ一冊で、それが古書価格で手に入るならと手に取った。

内容は、値段以上のすばらしさ。昨年新品で買ってマガジンハウスにお布施しても良かったなと思うくらいには良かった。

 

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まず特集は、女性が古書店で本を購入し、カフェで読む複数枚の写真から始まる。

冒頭見開きの二ページが素敵。この時の古書店が本物の古書店で所謂ブックカフェのようなおしゃれな感じではない。ただその武骨な感じが逆に凄いお洒落。

そしてそのお店以外にもイギリスの哲学書が充実した飴色の手すり付きの螺旋階段の古書店や、デザイン書中心の古書店、最後には新刊書店も登場する。書店の個性が見えて面白い。

そしてその合間合間に彼女はカフェで読書をする。古風であったり洋風であったり・・・「さぼうる」は僕も行ったことある。

本を愛する女性を、魅力的に撮影したグラビアは、

これから読書案内に一歩踏み出そうとする僕達に対する最高の賛辞。

 

そしてはじまる、メインの企画。表紙に書いてある「あの人が、もう一度読みたい本」になぞらえて、「私が、もう一度読みたい本」と題して各界の著名人のインタビューが収録されている。

名著であったり、近年刊行された単行本であったり、絵本であったり、児童書であったり、種類は様々。

特に憲法学者がお勧めする本の中に、富士見ファンタジア文庫があったのは驚いた。本棚の前で何やら高そうな椅子に座り読書する横顔にも、ライトノベルを愛する少年心が今でも灯っている。

あと書籍として、ムーミンが挙げられているのも珍しい。フィンランドの作家は、あのカバの要請のようなキャラクター達を登場させて何を書いたのだろうか。いつか読んでみたい。

 

次は「世代を超えて読み継がれる、20世紀の良書。」と題して、超有名な20世紀の名著1冊をそこそこ著名な2人が読み、その感想を書いている。選ばれているのは6冊。

そのなかでも特に岡映里さん「センス・オブ・ワンダーの感想文が印象的だった。

困難を乗り越えられると信じている人、信じられない人の違いには、「自分自身を取り戻すツール」の数があるという。多ければ信じられるし、少なければ信じられない。

僕にとっての「自分自身を取り戻すツール」って何だろう。

ブログ?文章を書くこと?人形?ぬいぐるみ?読書?漫画?写真?本屋?古書店?何。

「つまり、世界と自分を接続させること。そうすることで本来の自分自身の心の輝きやしなやかな強さを思い出すこと」p.62

多分思いついたものすべてがそうで、それらの濃度を濃くしていくことで、世界との繋がりをより強めていくことで、

僕は、錠剤なしでも生きていくことができるようになりますか?先生。

 

TBSラジオ「アフター6ジャンクション」がここで唐突に流れる。本を好きな3人が語る本の話である。

ここに挙がる本は名著や90年代を感じさせるような本が多くて、全体的になんだかロック。「アイドルを探せ!」なんてタイトルの漫画なんて素敵だ。

「もう一度読みたい本」でも挙がっていた田辺聖子がここでも挙がっている。ジョゼと虎と魚たちしか読んだことなかったけれど、もっと読んでみようかなあ。

 

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「捨てられない雑誌」では著名人が、未だに持っている雑誌を紹介するコーナーである。

最高かな。

雑誌というものは基本棄てることが前提とされた媒体の節がある。僕も結構ファッション誌とかはある程度期間とっといたら捨ててしまう。

それでも、捨てられない雑誌を紹介するというコーナー。

雑誌というのは、編集者作家写真家デザイナー、限られたページ数でプロが集まって作る情報媒体。その濃度はインターネットより段違いに濃くて、本来「捨てる」にはもったいないくらいの尊い存在なのである。まあ捨てるんですけど。

例えばこのコーナーに僕が「まぐろどん(ブロガー)」として登場して1冊挙げるなら、入院中に読んだSPRiNGかなぁ・・・。

インタビューの言葉が未だに心の支えになっている。「20代は失敗する期間で・・・」みたいな内容だった。支えになっている割にほとんど覚えてないな。

 

「キッチンで読み返したい、料理の図鑑」。では図鑑風の料理本があがっている。

西洋美術も書籍も好きなのに、いまいち図鑑というものに惹かれないのは何故?

あとグルメ本通りに作るほど僕は未だに食にこだわりが持てない。

もう27になるというのに。

ナツメグとか使ったことない。

もう27になるというのに。

 

「夏の終わりの、大人の読書感想文」では、まじの「傑作」に対するまじの「読書感想文」が書かれた特集である。同じ感想文でも縦書き横書きに分けて編集してあるのは面白い。

これであらすじを知った話がいくつかある。

例えば武者小路実篤『友情』とか。著者の名前に気をとられて中身のことなんて考えにも及ばなかったわ。

宮沢賢治銀河鉄道の夜とか。え、ジョヴァンニって死ぬんだ。

あ、でも『モモ』はこの前ワタクシも、嗜ませていただきました。

こういう特集に必ず挙がって、必ず誰かおススメするんだけど、

なんかな。気に食わないんだよな。

「ミヒャエルエンデを好きな私お洒落」「児童書を心の拠り所にする私素敵」が透けて見えるような気がして。もう何度も何度もレビューは読んだので、そろそろ別の本の話をしませんか。

 

そしてお待ちかねの漫画特集。各界の著名人が好きな漫画を上げている。

少し前のBRUTUSでは「マンガが好き」よりも「自分、これだけ有名なんすよ」みたいななんちゃって漫画好きが目立ったけれど、この特集はそんなことはなかった。やっぱり紙幅が狭いからだろうか。余計なものを入れる隙間はない。

動物のお医者さんは小学校の時に親が持ってた文庫版を、拾い読みしたなあ。確かに滅茶苦茶面白かった。一通り通して読んだことはないから、実家に戻って1-2巻だけでも誘拐してこようかしら。

『僕と君の大切な話』はこのブログでも感想書きましたが、近年まれにみる最高の少女漫画だったよね。分かるよ。1冊挙げて下さいと言われたら、僕も挙げちゃうかもしれない。

そして、これから読んでみたいなと思ったのは以下の二冊。

『棒がいっぽん』『雑草たちよ 大志を抱け』

 

本特集は以上である。

 

&Premiumは連載企画のページ数が多く、世界のお洒落な町々を訪ねる企画や、売一章手が出そうにない高級な服を紹介する企画(ブラウスに7万円だせますか?)、お金持ちなエッセイスト(アルゼンチン生まれの香水店のオーナーとの繋がりはありますか?)の企画等々。

そして今号はなぜか最後は居酒屋特集。個人の居酒屋についての対談やエッセイ、お勧めのメニューが掲載されている。

27にもなれば「いつも行く居酒屋」1軒は持っておきたいところだけど、

そこに割く時間も金もなく、

錠剤飲んでいる以上「お酒は避けて下さいね」薬剤師のお姉さんの笑顔キラキラしてたな。

 

以上である。

非常に楽しめた。

新品で買ってもいいと思えるくらいには楽しめた。

とりあえず、「センス・オブ・ワンダー」と漫画の「雑草よ 大志を抱け」は読んでみようかな。あとムーミンの単行本とか古書店で見つけたら買おうかしら。

 

ちなみにこの&Premiumの本特集は買ったのは初めてではない。

 

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「&Premium 2018 OCT.」(マガジンハウス 2018年)

たくさんの著名人がたくさんの書籍を紹介する特集がメインである。

本書はさらにそこから一歩踏み込んだ内容といっても過言じゃない。

ただ、素晴らしい企画が2つあって、「7歳から45歳、そして人生最期。そのときに読みたい本」では、7.17.20.27.35.45.最期に読みたい書籍を本好きな人々が薦めている。

そう27、27という数字がある。

とりあえず2人もこの年齢でお勧めしている1冊は買った。近くの古本屋の100円コーナーにあったので。

 

それと「5人、それぞれの転機。」

各界極めに極めて一流の仕事をしてきた5人の女性たちの転機について語られた特集である。非常に硬いコーナーではあるが、読むとそれだけで背筋が伸びる。

この特集自体が優れた読書体験なのかもしれない。

 

あとこの本自体は2018年当時新品で買ってもらったのだけれど、勝手に捨てられて絶望した経緯がある。「ずっとリビングにあったから・・・」母親に買ってもらい母親に捨てられたので何も言えないのであった。

「これだ」

ところがこの前、近所の古本屋に行ったらなんと再会を果たすことが出来た。運命。

本とは流転するもの。

ありがとう、古書店。ありがとう、古書。ありがとう、これをここに売ってくれた名前も知らない素敵な人。

 

本特集・・・本当に弱い。あるとついつい買っちゃう。

けど読んでいるとき一番ワクテカする雑誌内容なのも事実。

これからも見つけたら買う、のペースでどんどん遠慮なく買っていこうと思う。

もちろん紹介された書籍もほどほどに読みながら。

 

***

LINKS

かなり昔に行った「さぼうる」。

tunabook03.hatenablog.com

 僕の「捨てられない雑誌」。

tunabook03.hatenablog.com

近年の僕の中での最高の「少女漫画」。

tunabook03.hatenablog.com

 この特集、コピーに偽りあったな。

tunabook03.hatenablog.com

 これは良かった。

tunabook03.hatenablog.com

 

 ***

 

20210421 タグをつけました。

二階堂奥歯『八本脚の蝶』-さようならさようならさようなら。奥歯ちゃん。-

 

 

二〇二〇年 九月二十日

 

愛する

奥歯ちゃんへ

 

元気にしてますか。

もうすぐ貴女が死んで、17年半年がたとうとしていますが、あの世はどうですか。起きていますか。それとも眠っていますか。

いいんです、起きていても眠っていても。大した問題じゃない。でも起きていれば少しでも幸福な気持ちであればと願うし、眠っているのであればその深い眠りがより深くより安らかのものであることを祈ります。

昨日、あなたが死ぬ前の約二年間に及ぶブログを書籍化したものを読みました。ページ数にして500を超え、時には非常に難解な部分もあったけれど、読み終えた今、とても寂しくて寂しくてなりません。あなたがもうお星さまになって遠く離れていることを嫌でも思い知らされて、私はとても寂しいです。読んでいる間は、近くにいたような錯乱をしていたので。読み終えたのと同時に目が醒めてしまいました。

 

初め、私はあなたという存在に凄い衝撃を受けました。

編集者という多忙な職業の傍ら、ヴィヴィアン・ウェストウッド、ヴィヴィアン・タムなどその他諸々ファッションのことに精通し、アユーラ、キオラ、クリニークコムサイズム等次々と現れる化粧品ブランドの名前群。

かと思えば、冒頭からマニアックな画集の話から始まり、スーパードルフィー、球体間接人形、ベッドにそっといるのはクトゥルーのぬいぐるみ「クトゥルーちゃん」達、ラブドール、アニメ、聖書、アノマロカリス、ボスの絵画、そして膨大な数の読書量・・・。

こんなに女の子を突き詰めて生きることと、趣味を深淵まで掘り続けることが両立できることに衝撃を受けたのです。

そして、アイドル・漫画、美術、歴史、絵画、プリキュア、人形、真夜中にごく少数の方に見てもらうために日々膨大な文字数の記事を上げるブログ・・・(一部趣味被ってるかもしれませんね)、決して公然に言いふらすことができないような趣味を私は多々持っています。

それらを持っている限り、ファッション面はどこかを諦めなくてはならないと勝手に自分に枷をつけていました。

違うのですね。

それらと、ファッションが好きなことは両立されうることなのですね。

私はあなたのブログを読んで、アイシャドウを2色3色4色買い足しリップも2色買い足し、なくすと嫌な思いをするからと避けていたイヤリングもつけるようになり、人生で初めて髪の毛を染めました。意外と綺麗に染まって、違和感はありますが気に入っています。

あなたように、私も今をエネルギッシュに生きなくてはならない。

私は自由。

好きだと思ったワンピースを着ていいし、アイシャドウもリップも何色だって持っていていい。私の中においては私は素敵で無敵であるべきだということ。それが「私を大切にする」という行為であること。

そのことを忘れておりました。

一方で、あなたと同様物欲の乙女になってしまったので、カードの引き落としの日が非常に怖いのですが。

 

けれど初期から死の匂いは常に漂っていましたね。

ふとした時に書かれる死に、私は胸がきゅっとなりました。

そして終盤にいくにつれて増えてくる聖書の引用と児童書の引用、頭を巡らせ次々と浮かぶ自殺作法と、あなたへの切なる想いが綴られた雪雪さんの手紙によって、渦を巻いて渦を巻いて渦を巻いて生きることに希望を見出そうとしたその最高潮で、最後はあっさりと『完全自殺マニュアル』で死ぬのは、ラヴェルの『ラ・ヴァルス』のようだと思いました。

ラヴェル『ラ・ヴァルス』。オーケストラの為に作られたワルツで、最後にフォルテッシモのピークを迎えた末に、あっけなく終わるのです。

知っていますか?ラヴェル

音楽については奥歯ちゃんは疎そうだけれども、この作曲家の作品は絶対好きだと思います。知っていたらごめんなさい。別にマウントしようと思ったつもりはないんです。

 

あと、読んだ後呆けて何も手につかなくなりました。それは傑作と言われる映画を見た後のような。

空いた穴を埋めるように、奥歯ちゃんのブログを読んだ感想を検索してみると、以下のような言葉が散見されました。

「物語になるために生まれてきた人」

私は憤怒しました。

違います。決して違う。

本来ならば八本脚の蝶は500ページでは飽き足らず1冊2冊3冊と刊行され続け、10巻で完結。そしてその新装版として河出書房新社から2020年2月10日に刊行開始されるべきだったのです。

そしてその1巻目として私の手に届くべきだったのです。

物語になるために生まれてくる人なんて決していません。

今回物語になり、死から17年半たって美しい装丁の文庫本にされたのはあくまて結果論であって、目的論ではない。文庫本になるために生まれてきたわけではない。

それは二階堂奥歯という個人をどこかで軽んじて見ているような、

「2003年の東京で自殺した若い女の子」というラヴェルを貼って満足しているような、男性の独りよがりの視線を私は感じました。

「Okuba Nikaido (25)」と彫られた石板の付いた透明の筒の中はホルマリンでいっぱいになっていて、そのなかに全裸の奥歯ちゃんが目を閉じて髪をたゆたわせています。

その奥歯ちゃんを下から上まで舐めるように見て「最高傑作だ」と笑みを浮かべる、中年太りした2020年の科学者達の下衆さ。その中の一人は、白い太ももをじっと見それに沿って筒をゆっくりと指でなぞり、うっとりと瞳を閉じ眠り続けるあなたの睫毛のシルエットを眺めています。そして気高き奥歯ちゃんを脳内で、強姦するのです。

モニターで四六時中中継されていて、ホルマリン漬けの奥歯ちゃんは24時間いかように好きな時に見られるようになっています。2020年ではそういうのを「リモート」といいます。そして、何万人何十万人何百万人もの日本人男性が寂しくなった真夜中に、インターネットを繋いで暗い部屋でスマートフォン越しにあなたを見て「美しい」と思うのです。やはり、その右手は下半身に伸びています。

そんな絵を私は想像してしまいました。想像過剰でしょうか。

奥歯ちゃんはフェミニストでもあって、男性から見られる女性についての考察が何回も何回も出てきましたね。

残念ながら貴女が死んで17年たった今でもあなたは男性に、見られています。

飛び降りた代償に手に入れた永遠の25歳という性質が、有無を言わさずそうさせるのだと思います。悲しいことです。

できれば「女性専用車両」があるように、「女性専用書籍」としたいくらいなのです。ほむほむ・・・穂村弘の眼球にもこの文章を映したくないのです。随筆を2冊読んでおりますが、あいつは結論年中色恋沙汰を考えているむっつりすけべなのです。あんなむっつりすけべが奥歯ちゃんの日記を読んで解説まで書いているなんてもう犯罪です。

 

奥歯ちゃん、改めて言いますが、私はとても今寂しいのです。

奥歯ちゃんが死んでちょうど17年半がたつ2020年9月26日に、私は27歳になります。

奥歯ちゃんは活字の中で永遠に25歳として生きるけれど、私は現実の中で27歳28歳とどんどん年を取っていくのです。

多分今日以上に、奥歯ちゃんとの距離が近い日はないのです。

二〇〇三年と二〇二〇年、17年の差がもう開いているというのに、年齢という壁によってますます奥歯ちゃんが遠くになっていくであろう未来が寂しくてならない。

奥歯ちゃんが、生きていたら。奥歯ちゃんの二六歳二七歳三〇歳四〇歳を感じることが出来ていたら、私はこんなに孤独感にさいなむこともなかったのに。

結局私は自分勝手なな人間なので、私本位で「生きていてほしかった」と言っているわけですが、それでも、せめて年齢は遠くても同じ時代を生きていたかったです。

スーパードルフィーは今や凄い進化を遂げ、メイクは生で見るとため息ものです。写真を撮って愛でることがスタンダードとなっていて、毎日挙げられるツイッターの写真で僕は毎日その美しさにため息をついています。

ツイッターというのは、普通の人が140字以内で、インターネットに心境を気軽に公表できるツールです。個人サイトより今はツイッターの個人垢の方がスタンダードになっているのです。ツイッターでは奥歯ちゃんのような繊細な言葉遣いをする人がたくさん出てきていて、病んでいることがマジョリティーであったりします。でも誰のどの言葉も、奥歯ちゃんの言葉の鋭さにはかないません。

欅坂46というアイドルが出てきました。既存のアイドルとは違って笑わないことを一時期ウリにしておりました。奥歯ちゃんは絶対好きだと思うのですが、どうですか。あの世でもYouTubeはあってMVは見られますか。「黒い羊」が17年前にリリースされていたら奥歯ちゃんの救いになりましたか、それでもなりえませんでしたか。

たくさんの本が刊行されております。出版不況とはいえど、小説評論童話随筆エッセイ雑誌漫画画集写真集同人誌諸々、人間が生き続ける限り、書籍は無限に増え続けるのです。繰り返し出てきた「氷と海のガリオン」の作者も新しく小説を書いています。奥歯ちゃんは何読みたいですか。私は同じく河出書房新社から出ている世界各国の怪談集が気になっています。

音楽の話もさせて下さい。2003年といえば鬼束ちひろという人を知っていますか。そう、病んでいる歌を延々歌っているあの黒髪の美人の女の子です。あの子は一時期すごい病んでKISSみたいなメイクをしていた時期もありましたが、2020年も美しいを更新し続けています。今年に入って「書きかけの手紙」という曲を上辞したのですが、僕は辛くて辛くてたまらなくなった時その曲を聞くと涙が出ます。声に個性があるのですが、奥歯ちゃんは好きですか。

ねえ、奥歯ちゃん、2020年は思ったより悪くないです。東京オリンピックも延期されコロナがはやり俳優が自殺しエンタメも衰退しているけれど、1億2千万人でそのゆるやかなる衰退を楽しんでいるような空気すら感じられます。病んでいて当たり前。まだ病んでいないのですか?それは異常です。そういう時代なのです。

ねえ、奥歯ちゃん・・・奥歯ちゃん。奥歯ちゃん奥歯ちゃん奥歯ちゃん奥歯ちゃん奥歯ちゃん!!!!

私はあなたと同じ時を生きていたかった。せめて。

あなたが死んだ日9歳だった僕はもうすぐ27歳になろうとしています。

21世紀は「初期」から「中期」へ限りなく緩やかに姿を変態しつつあります。

どうして・・・どうして。

完全自殺マニュアルが不完全であれば良かったのに。

 

奥歯ちゃん。

私はあなたのことがとても好きだけれど、

でも永遠の26歳になろうとは思いません。

なりたいと思うか云々の前にその勇気がありません。致死量に至るビルの高さが思ったより低かったからと言って、それが3メートルでも1メートルでも50センチでも私は戦慄してそこから動けなくなるでしょう。

生きている人の大半はそうで、死ぬ勇気のない意気地なしであることを必死で隠しているからこそ「死ぬ勇気があれば・・・」という言葉が出来たのだと思います。自分の不甲斐なさを誤魔化すためです。

 

でもかつてのあなたのように生きたい。

幾つになっても、好きなものは好きと断言する気力を持ち、コスメを買い服を買い身に着ける一方でアニメを見てドールを見て本読んで漫画読んでブログを書いて小説を書いてその他たくさん諸々書いて、それらを達成するために日々ギリギリを責めながらも労働にいそしんで、エネルギッシュに乙女でい続けていたい。

日々のことを無造作に書くブログを始めました。

自分が何を好きか忘れないためです。

奥歯ちゃん、私はツイッターは6つのアカウントを持っているのですが、日々のことを書くブログは初めてです。

アドレスは以下です。

 

https://tunatunaricehanemurenai.hatenablog.com/

 

あの世が天国で幸せで幸せで暇だったら読んでくださいね。

あの世が地獄でさらに苦しくて苦しかったら読んで、更に苦しんでくださいね。

今もビルの屋上に立ち続けているのなら、このアドレスの電波を受信してください。

発信します。びびびびび。

 

あと、これはさっきも書きましたが、

物を買うとき我慢しないようにしました。

いや、一定レベルはちゃんと我慢しますが、

想像して金を払う時罪悪感がわかないだろうという物に関しては、

金を使うことにしました。

これはのちに浪費癖にもなりうる危険な行為ですが、でもそうでもしないと私は日々に埋もれてただのアラサーになってしまう。乙女でい続けることを見失ってしまう。

奥歯ちゃんのように堂々と「物欲の乙女」名乗って、

今年は何とか・・・乗り切ろうと思います。

 

奥歯ちゃん、書いてくれてありがとう。

あなたの遺した文字は一文字一文字愛おしい。

だからこそその分寂しさが募る。

せめて夢の中で、夢の中で、深夜一時に花火が出来たらいいな。

 

奥歯ちゃん、ありがとう。ずっと、ずっと大好きです。

 

生存の端女 まぐろどん より

 

***

 

二階堂奥歯『八本脚の蝶』(河出書房新社2020年)の話をさせて下さい。

 

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よく見ると、ドールやコスメ、書籍等奥歯ちゃんが好きなモノで出来てる表紙。

 

【概要】

二十五歳の若さで自らこの世を去った女性編集者・二階堂奥歯

亡くなる直前までアッ枯れた二年間の日記と、作家や恋人など生前近しかった十三人の文章を収録。

裏表紙より一部抜粋

 

【読むべき人】

・にほんのしにたいおんなのこ

 

【感想】

「奇書が読みたいアライさん」のツイッターで知って、いつか読んでみたいいつか読んでみたいとおもっていた本書が文庫本で出ると聞き、買った。

厚さがあったので結構な間積ん読していたが、一刻も早く読むべきであった。

消費期限はないが、賞味期限は多分ある書籍だった。

 

最高の、一冊だった。

心療内科の冷房の下でこれを読んだ時、

心療内科の現実と書籍で繰り広げられるトルコの旅行記のギャップで頭くらくらしそうになった。

たくさんの読みたい小説が出来た。

たくさんの読みたい漫画が出来た。

 

夏の読書はこの一冊で終わった。

 

***

 

二〇〇一年 一〇月七日(日)

夜中の一時にパジャマの上にダウンジャケット着て公園で花火。

 

p.59

 

***

LINKS

むっつりすけべのエッセイ本と、本書を紹介した雑誌。

ただ僕はこの本書を、ツイッターの「奇書が読みたいアライさん」で知りました。アライさんまじ有能。

tunabook03.hatenablog.com

 

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