小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

田村由美『ミステリと言う勿れ7』-人と比較してしまう僕はダンゴムシ。-

 

 


いやー。
最新刊も最高だったね!!

1冊で終わるミステリっていうのもいいよね!!!

 

 

 

田村由美『ミステリと言う勿れ7』(小学館 2020年)の話をさせて下さい。

 

 

f:id:tunatunarice_03:20200929234237j:plain

 

 

【あらすじ】

大学教官の天達にバイトにと誘われて

山荘に行った久能整。

そこで謎解き会をするはずが、

思わぬ事件に巻き込まれていく・・・。

”解読解決青年”整が今度は山荘ミステリ!?

注目展開の第7巻!!

 

裏表紙より

 

【読むべき人】

・無論1-6巻まで読んできた人

・山荘ミステリものの設定にワクワクする人

 

【一息覚悟するべき人】

・山荘ミステリガチ勢

 

f:id:tunatunarice_03:20200929234246j:plain

晴天ですが、よく見ると雪かき中であることが分かります。冬の写真ですね。

 

【感想】※ネタバレ有読んでない人は、本書を読んでから読んでください

いやあ、今回はあっさり騙された。いや、今回「も」か。

まさかの二重構造だとは思わなかったよね。

そしてその一重目もよく練られた謎解きだったという・・・。

本当、仲良し夫婦の意味が分かった時は戦慄したよ。

そういう意味だったのか・・・って。

でもまあ確かに、わざわざ花の絵そんな丁寧に飾るか?とはちょっと思ってたけど、

まあそこ含めてゲームだったとはね・・・。

天達先生、蔦にはやられたよ。

特に蔦。絶対お前怪しいと思ってた。

 

そして後半明らかになる「本番」の謎解きゲーム・・・。

絶対デラさん怪しいと思ってたわ!!だってずっと瞳孔開いているから!!霜鳥もずっと開いてたし!!

でも瞳孔開いてたのがまさか犯人を見張るためだったなんて・・・。

なんか、冷静になれば橘高が犯人だってすぐ分かりそうなもんなんですよ。

だって一人だけ異様に潔癖症に描かれていたし、それは「痕跡を消すためでは?」と分かりそうなもんだし。

だけどそこに瞳孔開いているデラ

ゲームの犯人役であった世間離れした「イエス・キリストと、

怪しい男が2人いたからすっかりそっちに気を撮られてしまった。

まさかの橘高が犯人だと知った時はもう素直に驚いちゃったよね。「ええ!!!お前かよ!!!」って。めっちゃいい奴だったやん!!って。

登場人物が一切死なないのにこんなにハラハラさせられるとは。さすが「ミステリと言う勿れ」。

 

f:id:tunatunarice_03:20200929234242j:plain

裏表紙は天達。

 

殺すのか?

殺されるのか?

やっぱり殺すしかないんだろうな

p.4

 

あと、今回のエピソードは伏線回収が見事だと思いました。

先述した序盤に出てきた「殺すのか?・・・」から始まる文章、

「最近こんな事件多くてイヤになる」p.12ストーカー殺人事件、

相良から突如発せられる「透明人間」に関する謎解き、

そして序盤整が車内で発する「人を殺す可能性があるってことが怖いんです」p.14の言葉・・・。

その他諸々全ての点が繋がって明らかになる真相は圧巻。

息をのむ。

そうか、そういうことだったのか・・・と。

 

そして今回その橘高の動機も凄い切ないんですよね。

生徒会長しながら陸上部のスターで成績もよくて男前p.44だった橘高が、

完璧主義じゃないはずないんですよ。完璧主義だったはずなんですよ

それが高校卒業・大学卒業するにつれ、

一人の親友は親の遺産で豪遊しながら俳優・作家と華やかな職業に就き、

一人の親友は学業を実らせ大学の准教授という立場になり美しい妻も娶った。

しかし自分は役所勤めで、独身で、趣味にも走れず、親の認知症に追われ・・・。

あの頃は一番自分が輝いていたのに、

今では一番自分がみじめに感じられる。

凄く凄く良き親友であったからこそかきたてられる劣等感。

 

そして完璧主義だから、

自分がミスしたことを絶対に許せなかった。

それがバレることも絶対に避けなければならなかった。

たとえ、親友であれど、劣等感を掻き立てる二人を殺すことになったとしても・・・。

 

「久しぶり 三回忌以来か 元気だったか」p.24

序盤で天達が橘高に声を掛けます。

この掛け方から見るに、恐らく橘高としばらくは会っていなかった様子。

合わせる顔がなかったんでしょうね。いや、顔を合わせたくなかったんでしょうね。

 

僕も、27にして今、社員かバイトかギリギリの状況にいます。社員だったけど仕事ぶりからバイトの提案を受けている状態です。それくらいコミュニケーション不得手で物覚えが遅いのです。

でも、インスタグラムには新卒時からずっと同じ大企業に務めていたり、学校の先生になっていたり、結婚していたり、子供がいたり、趣味に百万単位で継ぎこんでいたりと、

きちんと「大人」している友達がたくさんいるんですよね。

東京界隈・・・千葉埼玉横浜で。

東京で正社員労働をして「大人」をするみんなと、静岡でフリーター労働が迫られている僕。

しかもなにわにMARCHだからなんかもう格差がね。感じられるわけですよ。

大学でも同じ部活だったじゃない。対等に話をしていたじゃない。

高校になると早稲田とかいて、帝大院卒とかいるんですよ。

高校時代一緒にご飯囲ってたじゃない。それなのに僕だけ職がつづかない。

静岡で一人、僕はダンゴムシです。

親が癌なので、ちょっとしばらく関東暮らしは現実的に考えられません。実家が関東で親が健康で大企業の社員労働している方々は一体どんな徳を前世で積んだのだろうか。

なので僕は最近、大学の友達とも高校の友達とも、若干疎遠気味です。

みんな関東にいるというのもそうだけど、でもそれ以上の理由が橘高の動機と同じ部分にある気がするのです。

仲良しだったからこそ、比べてしまうし自身が卑小に感じられる。

ましてや「パーフェクトマン」ならもうミクロ単位に小さく感じられていたことでしょう。

橘高勝の動機は、僕が今までで一番共感した動機でした。

 

f:id:tunatunarice_03:20200929234234j:plain

 

展開、動機共に非常に満足した一巻でした。

ただ強いて言うならば、「館ミステリ」設定を活かしきれていなかった印象。

こう・・・「蔦」の設定をもっとこう練られなかったものか・・・もしくは部屋の配置や家具の位置とかをトリックに応用できなかったものか・・・。

「ミステリ言うなや」タイトルで言っているのに、そこまで言うのは我がままですか?

 

キャラも正直若干既視感。

橘高、天達は「お、新キャラきたな」と思いました。

ただ、相良が出てきた時は正直「池本に似た奴きたな」と思っちゃったんですよね。いや頭の回転の速さとか全然違うんですけど、それでも顔と髪色似てない?

蔦は世間離れしているところが放火犯(美の方)と若干被ったのと、

あと喜和さんもバスに乗っていた気が・・・。

「キャラクター造形」の限界を少し感じられたのが微妙。相良、すまんが整形してくれ。

 

あとこれはあえて天達が学生に向けて使う呼称なのかもしれないが、

教授は学生に対して「生徒」とは言わないと思う。p.167

小学生が児童、中高生は生徒、大学生は学生・・・では?

でも大手の小学館だし校閲も入っているだろうからあえてなのかなあ・・・。

 

f:id:tunatunarice_03:20200929234232j:plain

コナン君の作者が小学館繋がりで帯描いてましたが、この顔じゃないだろと思った。この顔じゃないだろ。

 

以上である。

展開にハラハラさせられ、

明らかになった動機には胸がきゅっとなった。

そしてそれがまるまる1冊で楽しめるという・・・。

秋の夜長にうってつけの一冊であった。

 

MOREでだーりおが今月おススメしてましたね。

さすが我らのだーりお。はい神。神です。

 

は~・・・。まさかこのまま進んで橘高のように殺人事件起こすわけにはいくまいし、

この先人生どうすっかなぁ・・・。どうすっかなぁ・・・てかどうにもならないんじゃなぁ・・・もう嫌だよ。もう、嫌だ。

 

***

 

LINKS

今までは追っていたので2冊単位で感想を書いています。

ちなみに6巻の表紙が一番好き。

 

tunabook03.hatenablog.com

 

 

tunabook03.hatenablog.com

 

 

tunabook03.hatenablog.com