各界の有名人の漫画の
評価を評価してみる。
「BRUTUS 917 2020年6月15日号」(マガジンハウス 2020年)の話をさせて下さい。
【概要】
各界で活躍する有名人に今お勧めの漫画を聞いてみた。
マンガが好きで好きで好きでたまらない。
※ここで「好きで」を3回繰り返すところにブルータス編集部のセンスを感じます。
【読むべき人】
・何か漫画を新しく集めたいけど何買ったらいいか分からない人
・昔漫画好きだったけど今何買ったらいいか分からない人
・漫画読みたいけど何買ったらいいか分からない人
・要するに、2020年夏最強の漫画ガイド、ではあると思う。
【感想】
まああのブルータスが漫画特集やるっていうなら読むしかないよね。
内容はいわゆるこういう「ブックガイド」定番の書式だと思う。
各界の有名人にインタビューしておススメを聞く。
今回は特に最初から最後までこの書式が組まれているため、
「雑誌のインタビュー記事クソクラエ派」の方にはおすすめできない。
まあ正直非常に読みやすくて実用的な分、
雑誌1冊としても若干物足りないようにも思う。
長編解説読本や漫画家の描きおろしイラスト(最後に感想を記述)等、他のコーナーが構えてはあるけれど、それでも若干物足りない印象。
2ページずつ、各界の有名人による自身のおススメ漫画のレビューが掲載されているけれども、そのレビューをレビューしたいと思う。
終盤に少ない紙幅を割かれた他の特集の感想、
そして最後に結局僕がこれ読んで何買ったかを発表して占める。
佐久間宜行:★★★★☆
トップバッターは知名度が今一番高いテレビプロデューサー佐久間宜行さん。コンテンツ全部見男という肩書もあり、漫画映画ドラマステージ全てひっくるめてみている男である。
まず前半に1話の印象的なシーンを挙げているのだけど、プロデューサー視点で紹介しているからでしょうね。すっごい興味わいた。
後半、伊集院光のラジオを用いてミナレのトークを分析しているのは興味深かった。まぁこの人ラジオもやってるからね。
ただ紹介している漫画があまりにも有名すぎるのと、レビューがあまりにも無難に収まっているので★4つとさせていただく。
もうひとつふたつコンテンツ全部見男の腕っぷしの見せどころがあれば、もしくは自身のラジオパーソナリティーの経験をもっと組み込んでレビューしていれば、★5つとしていたかもしれない。
腕っぷしか経験談か。どちらか見せて初っ端からギャフンと言わせてほしかった。トップバッターのレビューにしては物足りなかった。
川島明:★★★★★
おススメ漫画:柴田ヨクサル『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』
さすが川島さん。文句つけようのない2ページにわたるレビュー。
まず冒頭でどこでこの漫画と出会ったかについてさらりと触れているのも良い。
そして内容について熱く語る前半からの、ぐっとくるポイントを紹介する後半、そして終盤は自身のマンガに対する考え方をハッキリ述べていて心地よい。
「緻密に計算された作品ももちろん面白いけど、衝かれているときには読めないと思うんです」p.19
今の風潮とは真逆を行くマンガ考には痺れる。
あとたまたま見た王様のブランチでもこの漫画紹介していてちょっと好感持った。まじで好きなんだなあ・・・って。
澤部渡:★★★☆☆
おススメ漫画:田島列島『水は運に向かって流れる』
★が1つ減っているのはシンプルに僕と漫画の好みが合わないから。読んでみようという気にはならない。
じゃあもう1つは何故減っているのかと言うと、シンガーソングライターじゃなくても書けそうなレビューだから。
正直、存じない方なので、ただの知らないそれっぽいおじさんがそれっぽい漫画を紹介している感プンプンで正直鼻につく。
押しつけがましくない白い漫画が好きというのは分かったが、もう一歩底を踏み込んで漫画というのはこうあるべき、みたいなとこまで踏み込んでほしかった。川島さんのように。
もしくは、もっと作品に対して一歩踏み込んでほしかった。「××な感じがいい」だけじゃ弱い。「好きで好きでたまらない」と表紙で謳っているのだから、もっと作品愛爆発させてくれよ。シンガーソングライターなら作品に対する歌詞一つでも作ってくれよ。
読んでいても物足りない、余白が目立つ2ページ。
市川紗椰:★★★★☆
おススメ漫画:東陽太郎『遺書、公開。』
今までの三人とは違って、ひたすら漫画の内容について語るレビュー。
ただそのレビューが非常に熱く、読んでいると紹介された漫画手に取ってみようかなという気になる。
終盤、特に惹かれた部分を簡潔に語られているのも良かった。内容紹介+惹かれた理由、非常にシンプルな構成の2ページ。
強いて言うなら、なぜこの漫画を手に取ったのかが知りたかった。
表紙は正直監獄学園から続く有象無象の黒文字×美少女の表紙なので、多分ジャケ買いではないんじゃないかな。タイトル買いか。
あとなんでこの作品を選んだか。多分、市川さんってもっと他に色んな作品読んでると思うんですよ。そのなかで「遺書」。物騒な日本語がタイトルに入ってるこの作品を選んだ理由は。
よって★1つ分マイナス。
神田伯山:★★★★★
泰三子『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』
この1冊の中で一番優れたレビューかもしれない。
まず本のギャップ。神田さんが紹介する漫画、ってもうこれ絶対『昭和元禄落語心中』系かと思ったらなんだよこの婦人警官漫画・・・。
冒頭でこの謎漫画を手に取った理由が述べられているのが良い。なぜ講談師が婦人警官漫画を?読者の心を見通すかのようなすんなりとした入り。そうか薦められたのか。
中盤は惹かれた部分。警察官と講談師共に通じる部分や、警察官という職業に対する偏見など、自身の考えを随所で述べているのが良い。
最後にマンガと講談との共通点と、講談師としてマンガに対して思うことを語って締め。
この漫画を読んでみようと思ったし、このレビューは神田伯山にしか書けないレビューだと思った。
「ここが面白いんだよ~」「良いんだよ~」で終わるレビューとは格が違う。
素晴らしいレビューだと思う。
榎本俊二:★☆☆☆☆
同業者としての冷静な作品の分析はまあまあ面白かった。この人の漫画知らないけど。
ただ、チェンソーマンが面白いことはもう一般国民全員が知っているんだよな。
漫画家のくせに堂々おススメして恥ずかしくないのか。
からの終盤、「藤本さんがリスペクトという言葉を出して僕の『斬り介とジョニー四百九十九人切り』を挙げ」p.27
お前それが言いたかっただけなんじゃないのか。
「今面白いと騒がれている漫画、実は僕の作品の影響を受けていたみたいなんですよ~」
履き違えてる。
この人はもう二度と漫画特集に顔を出さないでほしい。
横のおススメ漫画3冊にも自身のマンガを挙げるのは本当に厚かましいと思う。
そもそも、各界の有名人というスタンスをとっているはずですが、お前、有名じゃないよ(笑)
自身のマンガの宣伝をするようなコーナーじゃないし空気も読めてないし、最悪。チェンソーでこのページ切り刻みたい。
石塚元太良:★★★☆☆
おススメ漫画:入江亜季『北北西に曇と往け』
何故手に取ったか、自身の経験との照らし合わせ、そして惹かれた理由。すべてきっちり収まっているが、作品に対する熱があまり感じられなかったので★1つ分マイナス。
「アイスランド懐かしい~」だけでレビューしてるのが残念。なぜ石塚さん、入江さんが共通してアイスランドを舞台に作品を作ろうと思ったのか。その理由の琴線に触れてほしかった。
更に、『北北西』含め挙げてる作品全部有名なので、もう★1つ分マイナス。多分インタビュー組まれるほどマンガ好きではないでしょ?
戸田真琴:★★★★☆
おススメ漫画:椎名うみ『青野君に触りたいから死にたい』
非常に読みやすいレビュー。
2ページもあると大抵小難しいことを語りがちなんだけれども、
シンプルな言葉で面白さを伝えているのは好印象。
あと、読んでいて本当にこの人はこの漫画が好きなんだなと思った。
ただ、セクシー女優じゃなくても書けるレビューであったので、★1つマイナス。もっと自分の経験を交えて語ってほしかった。エッチに限らずともさ、過去の恋愛とか初恋とかそのへん。
ただ合わせて紹介している漫画は一番僕の好み。『荒ぶる季節の乙女どもよ』はアニメ見たけど面白いよね・・・あれは。
ちなみに、こういうセクシー女優のサブカル進出支持派です。ばんばんもっと出てきてほしい。
松尾スズキ:★★★★★
おススメ漫画:藤岡拓太郎『藤岡拓太郎作品集 夏がとまらない』
解説レビュー。
作品の魅力を前半で語り、魅力の分析を後半で行う。漫画の巻末の解説に書かれててもいいくらい。
この作品を「人そのものではなく印象を描いている」p.33と分析していたのは恐れ入った。なるほどと思った。腑に落ちた。
僕もこの漫画はちょくちょくインターネットで見てて気に入っていたのだけれど、何がそんなに面白いのかわからなったのを、ズバリ言い当てていたので、文句なしの★5つでーす。
箭内道彦:★★★★★
おススメ漫画:山口つばさ『ブルーピリオド』
自身の経験にしっかり基づいて書かれているので文句なしの★5つ。
箭内さん自身の大学受験の時の気持ちの高ぶりに、似た部分があったからこそこの漫画に撃ち抜かれたんですよね。
きっかけが明確なのはとても良いレビューだと思った。その人にしか書けないレビューだから。そういうレビューがなんだかんだ記憶に残りやすかったりするから。なので大目に見て★5つ。
ただ、他のおススメ漫画も似たようなジャンルのものばかりだったのは残念。1冊くらい変化球挟んでほしかった。
ゆうこす:★★★☆☆
おススメ漫画:ヤマシタトモコ『さんかく窓の外側は夜』
あまりにも普通なレビュー。
浅い。
キャラクターの魅力、距離感、作品の雰囲気、の良さなんて、ゆうこすじゃなくても誰でも書けるっつーのと言いたい。
漫画を手に取ったきっかけも、『運命の女の子』という作品で出てくる女の子の鼻が好きで同じ作者の漫画だったから・・・って、
なんで感想を述べたのがその『運命の女の子』ではなく、『さんかく窓の外側は夜』だったのかってことが聞きたい。
漫画好きと言う割に、ほかに挙げてるおススメ漫画も全部聞いたことある作家・作品ばかり。
さんかく窓、映画化するからそのコマーシャルに食いついてやろうと選んだんじゃないかな?
幡野広志:★★★★☆
おススメ漫画:平庫わか『マイ・ブロークン・マリコ』
自身の経験を踏まえたうえで、作品の考察がしっかりなされていて良かった。
多分この2ページを書くのに何回もこの漫画を読みなおしたのではないか。
特に二人の関係性を友情以上のものとして捉える考察は凄いと思った。
ゆうこすのように作品の魅力を外側から舐めるのではなく、内側からきちんと自分でかみ砕いているのが素晴らしいレビューだと思う。
強いて言うなら、冒頭で「マンガはあまり読まない」p.38とおっしゃってるのに、
なぜこのマンガを手に取るに至ったのか。
そこを簡単に触れてほしかった。
誰かにお勧めされたのか、妻が買ってきたのか、本屋でたまたま見かけたのか、重度のツイッタラーである幡野さんだからツイッターで知ったのか・・・。
他のおススメ漫画、3作品中2作品は既に知ってるマンガでしたが、残る1作品は初めて知ったのと凄く面白そうだったので、★4つ。
ダ・ヴィンチ・恐山:★★★★★
おススメ漫画:雨瀬シオリ『ここは今から倫理です』
いやー、さすが小説家ですね。国語的分析力が凄いんじゃあ~。一人だけレビューが国語の「論説文」なんじゃあ~。
このシリーズは紹介されている漫画で唯一すでに愛読していたものだったんですけど・・・、こう捉えられるのかと深い感慨に打たれる。僕のあっさいあっさい感想はなんだったんだ・・・。
でも、冒頭で「ツイッターで知りました」p.40と作品との出会いを語っていたり、蔵家柄を「この高校、蛍光灯3本しかないんじゃないか?」p.40とユーモアをサービスしたりしてくれるところが、ダヴィンチさんの良い所。ちゅき。
好きな漫画×好きなライターの夢のような組み合わせで、目次見た時からこれはとワクワクしていましたが、その期待以上のレビューでしたね。ちゅき。
まあ強いて言うなら、ほかにお勧めする3冊含めて全部メジャー作品だったことかなあ・・・。『ここは今から倫理です。』も結構30万部だかいってるドラマ化決定のメジャー作品となりつつあるし・・・。もっとマニアックな作品を1つ挟んでも良かったんじゃないか。
というか恐山さんしか知らないようなめちゃくそマニアックでどこにウケがあるのかよくわからないような漫画をちょっと期待していた。
蓮沼執太:★★★★☆
漫☆先生のこの作品が本当に好きなんだなと伝わるレビュー。終始褒めっぱなし。本当に好きなんだな。大丈夫か。
多分レビューの原稿書く上で原作と読み比べているのも良い。普通この漫画評するのに原作は読まないでしょ、大丈夫か。
あと、漫☆先生を「すごく品の良い方」p.57と称するのは非常に興味深い、まじで大丈夫か。
私自身がこのシリーズにめちゃくちゃ興味そそられたので、評価は★4つと高め。同時に紹介している漫画も雰囲気統一しているのが良い。マニアックなものをきちんと挟んでいるのも好感が持てる。
ただ、このレビューは別に「音楽家、アーティスト」の蓮沼さんじゃなくても書けるレビュー。多分一般人のファンなら頑張ればこれくらいかけるのではないか。
演劇、楽曲制作、個展も開くような人なのであれば、もっと己の表現論と作品をかませてほしかった。ブルータスだし。
ただの「大丈夫か」な人の良質なレビューになっているのが惜しい。蓮沼さんの良質なレビューが読みたかった。
村田沙耶香:★★★★★
おススメ漫画:横槍メンゴ『一生好きってゆったじゃん』
まず村田先生が横槍メンゴ先生の漫画を読むということに衝撃。衝撃すぎて★5つ。
作品との出会いもしっかり描いているし、作家としての経験ではないのは残念だが自身の経験と照らし合わせながらレビューをしているのはさすが。村田さんにしか書けないレビューになっているのも★5つ。
あと1編1編こんなに丁寧に分かりやすい言葉で評価ってできるものなのですね。すごい。日本語力★5つ。
そして最後はタイトルについての考察。村田先生らしい「好き」に対する歪んだ価値観が響く。
「安心できる恋愛をしていても、「好き」という気持ちにとらわれて、愛情を証明してほしいとか証明したいとか思い始めるとどんどん歪んでいってしまう」p.69
成程。てか、タイトルからレビューするのも十分ありだな。学んだ。
ブログを書く上で一番勉強になった2ページ、という意味でもやっぱり文句なしの★5つ。
伊地知潔:★☆☆☆☆
おススメ漫画:芥見下々『呪術廻戦』
漫画別に好きじゃないだろコイツ。
なんでそんな奴にレビューを頼んだのか。
要するに、この漫画に「伊地知潔高」という自分をモデルにした人物が出てきたからこのページ使って自慢してやろう!!!っていう魂胆ですよね?何ですか?それとも芥見先生にこの想いが届け!!とでも思ってるんですか?個人のツイッターでやれよ。そういうのは。講習向けのメディアでやるな。私物化も甚だしい。
レビュー、前半はそれっぽいこと言ってるんですが、まあこんなん高校生でもがんばれば書けるレビューですよ。
要するに「僕は~アジカンという有名なバンドのドラマ~で~、ドラマ~なのに~モデルにされちゃった(笑)」これに尽きる。〇ね。
で、ほかに挙げる漫画が、「お!!漫画好きだね!!」と分かるものならいいんですが、
漫画に別に思い入れないだろ!!!
ブルータスで自慢を聞かされるこっちの身にもなってほしい。はらわた煮えくりかえる。
「リライト」しろ。
枡野浩一:★★★★☆
おススメ漫画:和山やま『夢中さ、きみに。』
この本とどのようにして出会ったか、が書かれていない。一通り読んだ感じ既に話題になっていてそれで手を出したか?
枡野さんだから書けるレビューというわけでもない。自身の経験に基づいているところもないし、歌人という職業ならではの視点も薄い。むしろ演出家のような視点。
ただそれでもこの★4つと評価が高めなのは、
これ読んでこの漫画を僕が買ったから。
マンガ好き界隈では有名だったかもしれないが、
僕の知らない、僕に刺さるマンガをさくっと紹介してくれたという意味で、
★4つ。
他に挙げている3冊も僕が全く知らない漫画だけれども、
結構興味惹かれていたり。
そういった意味でも★4つ。
この人と僕の漫画の嗜好は結構合うのかもしれない。書店もやっているというし、この枡野さん自体をマークしておく。バカリズムさんといい、「枡野」って苗字だとユニークになっちゃうのかな。
一番作品に対する熱量が伝わってくるレビュー。本当に井上はこの漫画がまじで好きなんだなと分かる。このページでこの漫画を紹介できることに非常にアツくなっていることが、行間から分かる。
忖度なしに作品も選んでいる。
お笑い芸人だからギャグ漫画とか、井上・石田がもをモデルにしたキャラが登場する漫画とか、車アレしたから「頭文字D」とか、そういう「×××だから」と作品を選んでいないのが良かった。
本当に好きな漫画を、大手出版社が刊行する漫画特集で紹介できる喜びがひしひし伝わってきて良い。
戦争漫画といえばグロいイメージがあったけれど・・・、この漫画はちょっと読んでみたい。既刊8巻はまあ・・・地味に痛いですが。
他の漫画も、忖度なしのまじで好きで選んでいる。
ちょっと井上見直した。「金曜日のソロたちへ」出演してたからなんとなくサブカルイメージはあったけれど、漫画に関しては結構ガチなんだな。
作品との出会いや自身の経験、芸人ならではの視点・・・などは欠けているが、作品愛めちゃくちゃ感じたので大目に見て★5。
岡田育:★★★☆☆
なんか知らんが一番鼻につくレビュー。
レビュアーの「文筆家」というよく分からない肩書や、そのよく分からない肩書で住めるのか「NY在住」の表記、一人だけばっちりポーズ&メイク&小細工まで施した写真、なんか知らんが「イラッ」とさせるポイントが多い。
そのくせ紹介している漫画は「ワールドトリガー」。
安易に安野モヨコやねむようこ等に奔ったりせず、「私、以外少年ジャンプもちゃんと読めます。」アピールにすら感じられる。どこにアピールしてんだ。安易に安野モヨコにしろ。
・・・とまあ、単なる僕の嫉みひがみではあるが、
レビュー自体も平易。え、本当に文筆家なんですか?ってくらい、平易。
作品の題材の深読みもなし、なぜこの作品と出会ったか・自身の経験に基づく記述もなし、作品に対する熱意も普通。
他のおススメ漫画もそのうち2作は有名作品。
別にこの人漫画好きじゃないでしょ?なんでこの人選んだんだろ。
てかジャンプ漫画ろくなレビュアーいない。次から少年ジャンプは禁止にしてくれ。
宮川達彦:★★★★☆
おススメ漫画:山田胡瓜『AIの遺電子』
レビュアーがエンジニアということもあって、作品を通したAIについての誌上演説のようなレビュー。エンジニアであるこのレビュアーにしか書けないレビューだから、それは十分に評価点。一方で作品の気に入ったところを初っ端に簡潔に語っているのも良い。
作品自体も全く聞いたことがない作品だった。連載終了している。ほとんどの作品が連載中のものだったからそういう規定があるものだと思ってたけどそうでもないらしい。
ではなぜ星つかというち、作品の「好き」があまりつたわってこないから。
推しとか、作品の特に好きなシーンとか。
いや、そういうのにこだわりすぎるとさっきの岡田さんみたいな薄っぺらいレビューになりがちなのだけれど、一切ないのもないで「本当に・・・好きなのか?」になる。いや好きなんだろうけどさ。
岡田利規:★★★★☆
おススメ漫画:都留泰作『竜女戦記』
なんだこの漫画。まじで知らない。
会社も平凡社と漫画界では結構マニアックな会社だし、掲載されている漫画のシーンもなんだかよく分からない。絵もうまいんだかよくわからない。話も本当に面白いんだかわからない。なんだかよく分からない。
1巻しか出てないし、掲載する雑誌はなく「描き下ろし」。描き下ろしで漫画って出せる時代になったのだな。
まあでもなんか読んだ感じ、多分岡田利規さんが最近読んだ中で一番刺さった漫画なんでしょうね。分かる。爆発力持った1巻に出会った感動は何事にも代えがたい。
その興奮がひしひし伝わるレビュー。
あと、作品のディテールに対する考察から始まって、最後に「フィクションと現実」という大きい話題に昇華しているのはさすが演劇作家、小説家、といった感じ。どこぞのよくわからん岡田さんとは違うんですね。
他の3冊からも読み取れる、独特な漫画の嗜好も興味深かった。
強いて言うなら、平凡社・1巻のみというマニアックな本作の存在をどのようにして知ったかが知りたかった。その分★1つマイナス。
以上である。
レビューのレビューはこれで終わり。
「マンガが好きで好きで好きでたまらない」と表紙で謳っている割には、本当に「好きでたまらない」人か?こいつは。という人も多かった。
しかもそういう人に限ってなんかよく分からない肩書だったりするし。
そりゃブルータスのような知識人界隈では有名な人かもしれないけど、
大半の人からしてみれば「よく分からない有識人」に過ぎないわけで。
ちょくちょく、「なんとなく漫画が好きな、なんちゃって有名人」のレビューが混ざっているのは本当にやめてほしかった。
他にも漫画特集が組まれている。
簡潔に感想を述べておく。
漫画家からのラブレター。
有名漫画家にそれぞれ己の好きな漫画の絵を描かせる・・・といったコーナー。
恐らくその「好きな漫画」に規定はなかったんでしょうね、6作品中5作品は知らない。でもまあそれでいいんだと思います。
このコーナーで5作品、新しい作品を知ったということなのだし。
長編大作攻略読本
これはけっこう興味深いコーナー。
長編作品を随所でネタバレしつつ、1巻から最新刊までどういった軌跡を辿ったのかを紹介。
「ダイヤのA」「土竜の歌」「ちはやふる」名前は聞いたことあるけど・・・という作品が、どういったあらすじでどういった始まり方をしていてどういう佳境を迎えて今現在何をしているのか。丁寧に解説。面白い企画だと思う。
特に印象的だったのは「アフロ田中」シリーズかなあ・・・。ドラマ化しましたよね?なんとなく気にはなっていたけど、こういう漫画だったのか。人生じゃん。僕はアフロでもないしましてや田中でもないが、ちょっと気になる。
”こんなとき”だから読むマンガ24選。
「漫画好き」で生計を立てる人達に聞くおススメ漫画。なので結構マニアックな作品が多い。そして「漫画好き」で食ってる人達のレビューだから、読みたい!!と思える作品が多々。
もう少しこのコーナーにページを割いても良かったのかもしれない。
というか、「好きで好きで好きでたまらない」と表紙で謳うくらいならば、
彼らをメインに据えるべきではないか?
なんちゃって漫画好きのなんちゃって有名人ではなく。
けっこうけなしたが・・・
この1冊の満足感は・・・・結構高い。
「本」はあっても「マンガ」に特化して特集する雑誌は久々だったし、
面白く読めた。
ただ、本当に「好きで好きで好きでたまらない」人をもっと集めてほしかった。もしくは、なんちゃって有名人じゃなくガチの有名人とかさ。
レビュアーの人選が中途半端だったのがいまひとつ。
ちなみにこの雑誌を読んでまず買った漫画は、
和山やま『夢中さ、君に』(KADOKAWA 2019年)
これはまあ・・・期待通り良かった。
何ならその後に出た「女の園の星」も買った。
サンキュー枡野さん。
次に紹介されているもので買うとするならば・・・「星の王子さま」「マイ・ブロークン・マリコ」「夏がとまらない」「一生好きってゆったじゃん」あたりかなあ・・・。
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LINKS
本書で紹介されていた漫画群。
これは即買った。
2冊目に買ったものは「いんへるの」。
以下の作品は読んだけれども、この雑誌で紹介されていたから、というわけではない。
紹介した村田さんのコンビニ人間は、凄まじかった。
そうだ。幸福に他者は必要ない。
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20200901 画像を追加しました。