小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

此元和津也『セトウツミ①』-おもろいてか尊い。推しが好きな漫画なので。-

 

 

 

 

 

人間の、会話だ。

 

 

 

 

 

 

此元和津也『セトウツミ①』(秋田書店 2013年)の話をさせて下さい。

 

 

 

 

【あらすじ】

この川で暇をつぶすだけのそんな青春があってもええんちゃうか。

まったりゆったりしゃべるだけ。

関西の男子高校生、瀬戸と内海のクールで案あ雨でシニカルな放課後トーク7編。

 

裏表紙より

 

【読むべき人】

・会話漫画が好きな人

・血の通った会話漫画が好きな人

・「ODDTAXI」好きな人:脚本が描いた漫画の為

・シニカルにかまえちゃう人

 

 

 

【感想】

タイトルだけは知っていたし、本書が面白いことも知っていた。

じゃあなんで今このタイミングで僕が入手して読むに至ったのかというと、我らが推し・櫻坂46の大園玲さんが好きな漫画で挙げていたからだ。

なんと!!と思った。

なんとなく知っている面白い漫画、から聖書に本作が変わった瞬間である。

早速まぁその、ここだけの話、メルでカリった。本当は大園さんの言葉の影響を世間に知らしめるために新品を購入したいが僕は一人暮らしの極貧フリーターであり身分にあった金額で購入するほかなかったのである・・・ううう、大園さん、こんなしょーもない僕を赦してほしい。

 

 

大園玲さん。この前の雑誌の購入特典のポストカード。
時折見せる三白眼がたまらない。

 

結論、結構面白かった。

ど・はまりした訳では無いが、なかなかこれはこれで良いもの読めた、と言った印象。

 

会話劇ものである。だいたいの会話劇漫画ゆうと話し手は美少女女子高生(二次元)できわどい下ネタとかあるあるネタとか恋愛ネタとかばんばんぶちかましていくギャップを楽しむモノ、という傾向にあるが本書はそうではない。

話し手は男子高校生(リアル)、話題はシュール。

男子高校生(リアル)が河原に座って延々と、ぼつぼつと会話するだけの話である。

 

じゃあ何が面白いのかというと、血の通った会話。ここにあると思う。

タイトルにもなっている瀬戸も内海も結構リアル寄りに描かれているが、その中身も結構リアル。てか本物。好きな女の子の話とか、やな先輩の話とか、塾とか、勉強とか、夏休みとか、親の離婚とか。

血の通っている、というか、どこかにいそう、というか、いやいただろ2010年前後に。

瀬戸。(セト)馬鹿ではあるが、度を過ぎた馬鹿ではない。相手を思いやる心を持っているし、気になる女子へのメールひとつでもんもんと悩むし、自分の馬鹿さを恥じている部分もある。

内海。(ウツミ)ナチュラルに馬鹿の瀬戸を見下す「節がある」。勉強が出来て塾に通って頭がいい分、色々知っているし考えているから何事もシニカルに捉えがち。ちょい早めの大2病。けれども喋り相手である瀬戸のことは彼なりに大切に想っている。

いそう。てかいる。

毎回爆笑下ネタトークを繰り広げる色髪美少女は絶対いないけれども、この二人は、いそうてか、いる。

東京都内で言うと絶対多摩か日野。静岡県で言うと安倍川付近。に、いそうてかいた。絶対いた。

帯に「実写化」とあるのも頷ける。アニメよりドラマのが手っ取り早い。

 

そして櫻坂46・大園玲さんが本作を好き、というのもなんだかよく分かる。

彼女は独特の言葉遣いをする。けれど一つ一つが丁寧。比喩、特に暗喩の使い方が巧み。接続詞助詞の使い方は至って自然。ブログは特に詩的な表現が多いが、どうやったら相手に気持ちが届くのか計算したうえでの表現。聡明。言葉を慈しむ人である。

本作も二人の織り成す会話全部にきちんと感情がのっている。台詞、表情、コマ全て。瀬戸と内海に、しっかり寄り添って描かれている。視点が同じ。作者の中で、二人はきちんと一人の人間として存在する。

彼女の言葉を大切にする姿勢と、作者が二人の会話を描写する姿勢の間には、共通するものが多く存在する、気がする。うまくいえないけど。

通じる部分が多いから、本作は彼女にとても響いたのではないか。

まぁ他にも、物事を一歩下がって見ている感じとか、言葉の間合いとか、冷静さとか、ギャグのシュールさとか結構大園さんを思わせる部分が多い。けど本作と彼女が共鳴したのは上記の理由が主だと思う。

 

 

 

 

以下簡単に、各話の特に良かった会話・台詞と感想を書いておく。ネタバレを恐れない。

好きなのは「マジ雲は必ず雨」。マジ雲って何。

 

 

「マジ雲は必ず雨」

瀬戸「今度うちの親離婚すんねん」

内海「・・・・・・・・・」

瀬戸「さきより笑みこぼれてもうてるやん!」

内海「結末が意外過ぎるねん てっきり猫死んだ話かと思うやん」p.10

神妙な顔とは、からはじまる会話なんだけれども特にこのくだりは滅茶苦茶笑った。オチが意外過ぎる。え、読み切りでまさかメイン二人の内の一人の親が離婚するなんて誰が予想できようかいやできまいよ!!

しかもこの「・・・・・・・・」の時の内海の顔がまた何とも絶妙なのである。よくお前耐えたな。

この話は、セトウツミが連載決定する前の読み切りである。そりゃ連載決定するわな・・・ってくらいめちゃくちゃ面白いのでおススメ。

オチもしっかりついていてほろり、とさせられるし。

 

 

第1話 ムカーとスッキリ

内海「普段の気持ちの積み重ねが過去を作るのであって普段笑ってない場合・・・過去も面白くなかったということになるんちゃうか?」pp.43-44

ふっけぇ~・・・!深い。内海は塾に通っていて頭がいいのでこういうことを普段から考えているのである。すっげぇ。高校生で達する域じゃねぇだろこれ。

それを死んだ目てぽつりとつぶやくのである。どこで悟りを開いた。

内海はなんか早稲田の匂いがするな!

この話は、バルーンアートのピエロが出てくるのですが、まさかの完成品の形状にはビビったね。え、そうなる?え、どうやって?うますぎね?

 

 

第2話 アメとムチ

内海「こないだのオッサン先払いで払うて約束してたのにゴネだしてほんと最悪ー」

瀬戸「そもそものキャラ設定おかしいねん 樫村さん援助交際してへんねん タバコも吸うてへんし」p.60

樫村さんと言うのは、瀬戸が片想いしている実家が寺の女子高生である。

瀬戸が彼女へメッセージを送るけどないようがないよう、という回である。

そこへぶちかました内海のボケがこれまた秀逸。分かるわー。こういう内輪ノリ。ショーもない演技。めっちゃおもろーい!訳じゃないんだけどくすってきちゃうんだよな。

ちなみに、瀬戸が樫村さんに送るのはあくまでメール。ラインではない。刊行されたのは2013年・・・まぁ当時大学生の僕がLINEをDLしたのが2012年だから・・・確かに高校生はギリギリ、メールだったのか?

無論僕が女子高生の時もメールだった。

樫村さんのスカートの丈も今と比べて短いし、がっつりスクールバッグを肩から下げている。僕達の時代イケてる女子はみんなそうだった。

ノスタルジー、くすぐられる。

 

 

第3話 羽根と心根

田中くん「弟がそろそろ帰るから大丈夫や それよりこの試合を見届けたい」

内海「かっこええな 田中くん」

瀬戸「忘れへんよう手がポイントのままなとことか評価するわ」p.77

瀬戸と内海のバドミントン対決である。審判に呼ばれた男子生徒が田中くん。センター分けのガラケー持ちである。

家族の緊急事態をケータイで片手で見守りつつも、もう片方の手ではしっかりと点数をキープしている。スマートフォン主流の2022年では出来ない偉業。それをたたえた2人の台詞である。

こういうちょっとしたことにあえて心意義を魅せたり、またそれを称賛したりするような雑談、ここしばらくしていない。僕は28歳フリーター喪女。地方在住。中高大学ノン友達はみんな東京へ行ってしまった・・・。孤独である。

インターネットが広まったとはいえど、LINEの知人の通知は今日もゼロ、LINEしたところで、「既読」がつくし、あれはあれで面倒。インターネットで知り合っても、結局は顔も知らない名前も知らない人にそこまで砕けるにはかなりの時間がかかる。

あの頃は、よかったなぁ・・・。

バドミントンやりたい。

後半、タイトルの「心根」・・・思いやりに関する展開が続くのだけれども、簡単に言うと瀬戸がただただから滑りして痛い目を見る話で、もうなんか胸がきゅっとなる。瀬戸、お前は悪い奴じゃない。ただちょっと単純でバカなだけなんだ・・・。

 

 

高校時代はよくローソンにたむろしてた。
ホットスナック持って。

 

第4話 威嚇と擬態

瀬戸「フシがある選手権や」

内海「なんなんそれ」

瀬戸「出たほら」

内海「何が」

瀬戸「内海は最近こういった提案にめんどくさがるフシがある」p.94

要するにどれだけフシをつけられるか大会である。どこら辺が選手権なのかは分からないが多分瀬戸も分からないので問題はない。

途中、アフリカオオコノハズクというミミズクが出てくる。掛川花鳥園の看板鳥のアイツである。灰色で目がオレンジ色の。その鳥を使ったオチが秀逸。アフリカオオコノハズク知っている、且つそれを連想する地点で鳴山はいい不良である。(類義語:町を守るヤクザ 等)

後半、瀬戸が時計を見る下りがある。スマートフォンである。嗚呼確かにそういえば、僕が大学2年くらいまではスマートフォンガラケーが混在している文化だったなぁとしみじみ思う。もう今じゃあ、あえてガラケー使ってる学生なんて天然記念物だもんね・・・。

ちなみにアイフォンだった。高校生のスマホ≒アイフォン。この公式は10年たっても変わらない。

 

 

第5話 踏んだりと蹴ったり

瀬戸「あ!そうや 借りてたCD持ってきたで」

内海「ああ「ハラダ親子」の?良かったやろ?」

瀬戸「めっちゃ良かったわ。2曲目の「自制なき母の紙皿消費」とか」

内海「息子の方が歌詞欠いてるってのがすごいよな」

瀬戸「俺らと同い年とは思えへんわ」pp.105-106

普段瀬戸に対して冷たい内海が、終盤瀬戸にふっと感謝の気持ちを伝えるのがアツい回なのだけれども、僕的には使い古された「いつもいてくれてありがとう」的展開よりも、この会話にぐっときた。

タメの凄い奴っていうのが、意識され始める高校時代。

中学もまぁタメの凄い奴、薄々意識してた。でも指で数えるほどしかいなかったし、その大半がテレビに出てる子役。僕(1993年生まれ)でいうと、神木隆之介とか志田未来とか。まぁちょっとひねると元AKBのまゆゆとか。

でも高校になると一気にぶわっと、同世代で凄い奴が出てくるんだよ。しかもそいつらは自分で作って自分で発信する。

きゃりーぱみゅぱみゅ彼女が出てきた時はもうびっくりした。一つ上、なのだけれども、ほっとんど同年齢でこんな自分の世界を持っていて発信して且つ日本中で有名になるなんて、凄い。考えられない。ぱみゅぱみゅなんて言葉どんな生き方したら思いつくんだろう、東京だ。東京。そうだ、東京。きっと渋谷で毎日ミニスカートはいて109いってスタバのフラペチーノのんでクレープ齧ってたらそういう発想に至るんだろうアー!!!羨ましい!!僕もぱみゅる人生になりたかった!!

と思ったものだった。

同世代で、憧れ。

同世代だけど、遠い・・・。

ちなみに、大学入って間もなくきゃりーぱみゅぱみゅの出身校が渋谷近辺ではなく立川にあることを知る。東京都とはいえ、立川単体で見ると静岡駅前とそう変わらない。

どこにいるか、よりも本人が何をするか、が大事なのに僕が気づくのはもう少し後のことである。

 

 

第6話 先祖と子孫

内海「うちほら樫村さんとこのお寺の檀家やからお盆に少しだけな」

瀬戸「なんなんさっきから お盆とか日本の伝統的文化丸出しの」p.122

塾にも通い2年生から夏季講習そして進学を見据えている内海家。小綺麗な一軒家、そふぼのいえは地元の近く、ちなみに金を持っているタイプの老人。父親は恐らくそれなりの大学を出ていてそれなりの大規模な会社に勤めてる。

猫の餌で親が離婚寸前、兼じいちゃんが常時行方不明の瀬戸家。ちょっと古い一軒家、もしくはアパート。畳の部屋が絶対ある。母親はパートと介護、父親はリーマン。多分祖父母4人揃ってはないと思う。どれか死んでる。でも近所の子供と仲良く育ったし、それなりに幸せ。別に貧しい暮らし、とかそういうわけではない。

同じ「中流階級」に属する2人でも、全く違う家庭がうっすら見える、ぐっと来るやりとり。

 

 

第7話 親方と裏方

内海「じゃあウインザーノットやろか」p.138

ネクタイの結び方の話である。親戚の結婚式があるのにうまく結べない瀬戸に内海が古拙丁寧ユニークに教える話。ぶりーん、純ぶりーん、逆ぶりーん。親方・裏方等説明をする時の言葉使いがめちゃくちゃ面白い一話。

その説明をする前に、ぼそっと言った内海の台詞である。ウインザーノット、というのはネクタイの結び方の名前。

分かる~って思った。こういう無駄な知識、何となく覚えてて、つい人の前で言いたくなっちゃうんだよね。でも僕は言いません、28歳でそういうことばっかすると嫌われると気づいたので。

じゃあそういう知識って、何のためにあるの?

披露してドヤ顔する以外の使い道は?とか思っちゃう。

 

・・・まぁ、そういう言葉がある、それだけのことや。

 

僕の中の内海が言う。

 

いやでも、そんなんだったらない方がええんちゃう?

 

僕の中の瀬戸が言う。

 

うるさいわ、あるもんあるんやしょうがないやろ。必要なかったらもうとっくに自然淘汰されてるはずなんや、2022年やぞ。21世紀やぞ。

 

それくらい俺かて知っとるわ。なめとんのか。

 

なめとらんわ・・・・。

 

・・・。

 

・・・。

 

 

 

 

 

 

 

描き下ろし

瀬戸「お前勝ってコメだけ食べといたら生きられるけどデミグラスソースのハンバーグとか食べるやろ」p.160

食虫植物の話でこれが出るのだから、瀬戸というのは面白い馬鹿なのである。いやいや誰が食虫植物の好みなんて気にすんだよ。てかなんだよその思いやり。

普通考えへんやろ、普通。

そういう、普通に塗り固められて生きてきた内海だからこそ、瀬戸の存在は大きかったんだなと思ったり。

 

 

 

以上である。なかなか面白かった。

会話がだらだら続いていく感じ、爆発力もないしときめきもないし胸キュンもないけど、このだらだら続いていく感じは人生に似ている。

 

大園さん、恐らく読んだのは中高生の頃だと思うんだけど、お兄ちゃんがいるから、やっぱり勧められて手に取ったのかなぁ・・・。それとも2013年・・・まだ幼き中1-2だった大園玲ちゃんがにぃにの部屋に忍び込んフィーリングで手に取った一冊がこの作品だったのかなぁ・・・いやはやそれとも本屋で見かけて・・・?

ああ・・・当たり前だが、鹿児島県(大園さんの出身県)、九州のさいはてにも「セトウツミ」は流通していて、数年前大園さんはそれを読んでくすくす笑っていたのだ尊い恐らくクラスの中心・・・ではないであろう彼女が、周囲の親しい友達にだけ進めて貸し借りとかなんてしちゃったりしたのかなぁ多分ファンに向けたメッセージアプリで勧めたのがお初ってことは無いと思うんだよなぁカシコで慎重な彼女のことなので。そして数人の間でセトウツミブームが起きて、その頃実写化がが決定して、あ、大園さんが本作を知ったのはもしかして映画ああくそ!!!僕は横浜で塾講師してて映画のことなんて全く知る由もなかったくらい追い詰められていた嗚呼ああの頃鹿児島、少しでも九州に想いをよせていたら以下略。

 

 



 

***

 

LINKS

こういうたわいもない会話のなかに埋もれた言葉を拾い集めた随筆の感想を昨日upしました。

 

tunabook03.hatenablog.com

 

穂村弘『絶叫委員会』-数えきれないほどの永遠を乗り越えてきた。-

 

 

 

ほむほむの数あるエッセイの中では屈指のベストセラーっすよね。

だからといって僕のベストではない。油断するな。

 

 

 

穂村弘『絶叫委員会』(筑摩書房 2013年)の話をさせて下さい。

 

 

 

 

 

【概要】

町には、偶然生まれては消えてゆく無数の詩が溢れている。

突然目に入ってきた「インフルエンザ防御スーツ」という巨大な看板、

電車の中で耳にした「夏にフィーバーは暑いよね」というカップルの会話。

ぼんやりしているとみのがされてしまう言葉たち・・・。

不合理で案んセンスで真剣だからこそ可笑しい、天使的な言葉に痺れます。

解説:南伸坊

 

裏表紙より

 

【読むべき人】

・本を読む人

・国語が好きな学生

・国語の先生

 

 

 

 

【感想】

天使的な言葉に痺れます。という言葉に、不意に僕は今痺れた。

天使的な言葉。僕から出てこないフレーズで、天使・・・的、ってなんだろうってああ純粋な感じ方を文字にした言葉という事かと納得しかけた一瞬、不意を衝く「痺れます」、え、痺れるって。天使なのに攻撃してくるのか。痺れるのは、ふつう悪魔的言葉なんじゃないのか。

という何気ない言葉にビビッと感じた瞬間をもっと高い文章力で的確位に書いたエッセイ集が本書である。ぶっちゃけ絶叫感はあんまない。「本当は違うんだ日記」の方がまぁぶっちゃけまだ絶叫感はある。

 

本書は、昔ブックオフの100円コーナーで見かけてから、ああもう絶対、絶対にこの本は108円(当時)で入手するぞと強く誓った。何年前くらいだったかは覚えていない。意外と新しい本だから、大学卒業後だとは思うんだけど、何年前の何処のブックオフだったか。

しかしそれ以降、本書をそのコーナーで見かけることは滅多になかった。どのブックオフも100円コーナーのちくま文庫は90%をいしわたり淳治「うれしい悲鳴をあげてくれ」で占められており、残りの10%はなんかよく分かんない数世代前の老人向けの、ていうかもう本自体が老人、みたいな書籍で占められているのだった。

だから、名古屋に行った際、近くのブックオフで本書を100円コーナーで見つけた時僕は、雄たけびを上げそうになった。勝った。勝ったぞ。勝ったんだよ!!!僕はこの長年のブックオフと僕自身との長い長い戦いに買ったのである!!!踊り狂ってその場で買った。

 

けどまぁ、実際開いて読んで思ったのは・・・悪くないけど良くもない。これに尽きる。恐らく本書がほむほむとの初対面であったら、圧倒的名著確定だったと思うんだけれども、もう僕は幾度かほむほむと出会っているのである。

要するに、読むのが・・・・遅かった・・・!!

でもまぁつまらないことは決してない。

し、ほむほむと一番初めに会ったのが本書ではなく世界音痴だったからこそ、僕の中で「世界音痴」は永遠に輝く名著になり、兼こうやって幾度かのほむほむを読んで本書を読むに至ったのも、それこそ最初が「世界音痴」だったから。なかった出会いを悔やむのではなく、過去の出会いに感謝しよう。謝謝。

 

 

 

「パニック発言」pp.26-28

取り上げられた言葉:

「バーベキュー、バーベキューって何回やっても駄目なんです!」p.26

「皆憎」p.29

「バーベキュー」、と、「やる」、の間に来る適切な助詞は「を」である。バーベキューをやる。BBQをやる。「って」という言葉はまず入らない。イレギュラーな文字の並びが彼女のパニックをありありと伝えるといった旨の文章である。

確かに。そうかも。

のんきに思う。

世間に蔓延る「を」がなんか別の一文字になったらどうなるんだろ。

目玉焼き「に」焼く。、だとなんだか視点は焼かれる卵の方に行って、変な被害者意識が生じる、気がする。

犬「は」散歩させる。だと、まるで散歩させない存在があるようで、途端に不穏な匂いになる。散歩させない存在ってなんだろ。年取った義母とか?

後半の「皆憎」は自殺未遂をしたシンガーソングライターが壁に描いた言葉とのことである。名前は伏せられている。ので、節操なく即座に検索したら戸川純さんのことと分かって、そういえば名前は聞くけど聞いたことないなって思って、初めて聞いて衝撃を受けた。要するに今溢れるほど存在しているメンヘラソングを歌うアイドルの先駆け的存在という事でしょう?しかも歌詞や歌い方はすべてストレートでどちゃくそ刺さってきて、鮮度。鮮度100%で20年30年時を越えてインターネットで僕の耳に響いてきました、衝撃。

 

 

「パニック発言その2」pp.30-33

取り上げられた言葉:

「Nが生き返るなら、俺、指を4本切ってもいいよ」p.30

「両手、合わせてだよ。それ以上はギターが弾けなくなるからさ」p.31

Nというのは飛び降り自殺をした女友達のことで、その葬式で言ったある男の言葉である。

ああ、そうか、と私は思う。こいつはプロのミュージシャンだったっけ。(中略)

ギターを弾ける範囲で、という限定はケチってのことではないだろう。それによって逆に自分自身の本機を確認するような意味合いが強かったのではないか。p.32

両手合わせて10本ではなく、4本であるところに穂村先生は衝撃をうけて深く考え込んでいるが、僕はその切断された4本の指について考えてしまう。

切ったら、どうするんだろう。

切られた指は、どうなるんだろう。

Nがそれを食べて生き返る、ってわけでもなさそうだし、何の役にも立たない気がする。誰が4本の指を貰って、誰がNを生き返らせるんだろう。その者は4本の指をどうするつもりなんだろう。食べる?一方提供者の男はミュージシャンとしてやっていけなくなったので収入が減る。不定期雇用で細々と暮らす男の一生を見ながら、それを肴に赤ワインでも飲むのだろうか。

いや、そもそもそんな存在なんてなくて、でもなんで僕等は無意識に自己犠牲を選んでいるんだ?自己犠牲をすることで何かが叶うと考えてしまうんだ?

この話を読んだ時、四本の指が永遠に僕の脳内彷徨って、困った。

 

 

これは5本です。とても美味しいです。

 

「恋人たちの言葉」pp.38-41

とりあげられた言葉:

彼「ウニって本当は宇宙人だったらこわいね」

彼女「わざわざ遠くあら来てるのにお寿司にされてかわいそう」p.39

「先生、地球がホットです」p.40

「おんなじ戌年でよかったね」p.41

ウニって宇宙人だったら怖いね、の会話は僕は体験したことないし、今後も体験することはない気がする。28歳の喪女である。こういう会話って20代前半の男女が回転寿司でやるものではないのか。回転寿司に行くことはあっても、ウニひとつにこんなキラキラ夢を持ち込む余地がある年齢は、とうにすぎてしまった気がする。28歳だったら何だろう。あれかな。キャベツを死に物狂いでとりあっているウニの動画の話とか。

地球がホット、というのは男の子が女の子に言った言葉をほむほむが童貞ヨロシク盗み聞きした話だが、たしかにこれはぐっとくるなと思った。ホット、なんて藤井隆以降あんま耳にして聞かないし。

最後のは12歳差のアベックの話である。寝ぼけた彼女の言葉らしい。文中では書かれていないが絶対、事後の話なんだろうなって思う。犬のように貪り合っていたのかもしれない。僕は酉年なんでわかりませんが・・・。

 

 

「恋人たちの言葉・その2」pp.42-45

とりあげられた言葉:

「彼女が泣くと永遠を感じます」p.42

「今までの平和だった7年間にありがとうって云いたい」p.43

「彼が求めてるのはメーテルなんです。でも、あたしはメーテルじゃない。あたしだってメーテルがほしい」p.44

僕はことあるごとに泣く、泣き虫だった、というか今も良く一人で泣いている。泣いている夜は永遠に続くように思われる、のは本人も同じだ。僕は幾度もの永遠の夜乗り越えてきた。その翌朝は、抱きしめたい気持ちと後悔の気持ちでぐしゃぐしゃで、でもだいたいその夜、要するに翌夜はぐっすり寝ている。

7年間云々、というのは浮気が発覚した時の彼女の言葉らしい。「ありがとう」は何事をも無慈悲に区切る言葉。

メーテルがほしい、って僕は思ったことが無いな。だって部屋にいたら怖くない?たまったもんじゃなくない?でも確かに、母性をたたえた存在・・・父性をたたえた存在、甘えられる存在は欲しい。時々僕はおかーさんになってあげるから、時々僕のおとーさんになってくれる人がいい。そんな2人にメーテルが入る余地なんてない。

 

 

「天使の呟き・その2」pp.50-53

とりあげられた言葉:

「いいもの買ったね」p.51

「それがあればお部屋が暖かくなるわ」p.51

「知らない人よ、あなたの知らない人」p.52

「ここに糞をさせたら」p.52 等

僕も一日に一回誰かの知らない人になって、全部全部褒め散らかしたい。にこにこにこにこしながら。それで寝る前に、ふふっ、あの人びっくりしてたなぁ。今頃暖かい部屋で寝てるんだろうなぁとか考えながらすやすや眠りたいのである。宗教とかよりよっぽど心の安寧に効きそう。

糞云々の言葉は、道端での民家の看板に書かれたものである。散歩させている犬の飼い主・奴隷の飼い主に向けた言葉である。何も書かないことで、受取手の一番怖いと思うものを喚起させるしくみは上手いなと思った。

「殺します」「呪います」「丸焼きにします」「いやがらせします」「殴ります」「怨みます」「ファラリスの雄牛にぶちこみます」「私があなたの家までついていって糞をします」

 

 

「あるけどないもの」pp.70-73

とりあげられた言葉:

「ウメボシノタネのケガ・・・・・・」p.70

「ひも状のものが割けたりするでせうバナナのアレも食べてゐる祖母 廣西昌也」p.72

ウメボシの種の毛、バナナのヒモのあれ、など名前がないことで見過ごしされがちな存在について語られている。

確かに、僕はバナナのあの黒い部分をシュガースポットと聞かなければ意識してこなかったし、ペンをくねくねさせる現象を「ラバーペンシルイリュージョン」と知らなければ意識することもなかったし、ゴリラの学名は「ゴリラゴリラゴリラ」と知らなければゴリラはゴリラのままだった。

トリビアの泉仕入れた知識であるあれを死ぬ物狂いで見ていたからこそ、未だに世界の解析度が妙にクリアであったり歪んでいたりする、気がする。

でもSNSが発達してから、そこはいいよ!!ってところまで妙に解析度上げる言葉が増えた気がする。親ガチャ、とか。自己肯定感、とか。嘘松、とか。

視界を毒する言葉は、いらないな。

サングラスかけて、シャットアウト。

 

 

「「ありがとう」たち」pp.74-77

とりあげられている言葉:

「いつもきれいにご利用いただきありがとうございます」p.74

「この列車が遅れていることに関しては、お客様よりあたたかいお言葉をいただいており、まことにありがとうございます」p.75 等

こうやってあらかじめ感謝をすることで抑止力が高まると聞いたことがある。最近ではむしろこちらの方がスタンダードになって来た。確かに、「便器を汚すな!!」「列車が遅れていることに関するクレームは受けてつけておりません」より棘がなくて耳障りも良い。

何かを捨ててしまった言葉に思えるのだ。p.77

だから穂村先生がそのように書かれた時にハッとした。

確かに、ありがとうの安売り、というエアありがとう、というか重みがない、というか。

じゃあどうすればいいんだろう。

多分、このエアありがとうの繰り返しで、便器が汚れることがなく、列車の遅延に対して文句を言う客がなくなる、ことが理想なんだろうが、そんな日は果たして来るのだろうか。

「ありがとうございます」「ありがとうございます」「ありがとうござ」

そんな日を夢見て僕達も今日は空虚たる「ありがとう」を何度も何度も口にする。

 

 

「電車内の会話」pp.90-93

とりあげられている言葉:

「俺さ、Tシャツないんだよ」

「俺あるよ」

「嘘まじ?」

「うん」

「Tシャツだよ」

「うん、Tシャツ」

「あるの?Tシャツ」

「めちゃめちゃあるよ」

「1個くれよ」

「うん、やだ」

「2軍でいいからさ」 p.92 

会話の全体がたわいなさと意外性の淡い光に包まれているように感じられる。光の源にあるものは「不定形で無限の未来」ではないだろうか。それが彼らの「今、ここ」の言葉を照らしているのだ。p.83

そしてこれらの言葉の掛け合いは、社会人になると少なくなると続いている。

だから、会話型のギャグ漫画って昔も今も人気なんじゃないかなぁって思う。みなみけ」とか「あそびあそばせ」とか。きらら漫画だってそうか。

僕達は利益云々仕事できる・ない云々そういうところがぐっと離れた、脳みそ傾けても出来るような会話に飢えているのかもしれない。し、そういう会話が出来る人と結婚したいなぁ。

 

 

 

 

「おんなのちんこ」pp.110-112

取り上げられている言葉:

♪ゲ、ゲ、ゲゲゲのゲ、おんなのちんこに毛が生えたp.112

小学生がなぜ「ちんこ」「うんこ」にあんなに興奮するのかと言った旨を冷静に書いている文章であるが、僕は未だに28歳でも普通に「ちんすこう」「高慢」「運」でぴくっとするので、もうダメです。

でも本当はみんなピクッとしてるんじゃないかなぁ。隠し続けて、早数十年になったから「1万個」「運航」「あーなるほど」とかいう言葉にすん、と出来るんじゃないか。心の奥の奥の奥の核、ではげらげら笑っているんじゃないか。というかどうかそうであってくれ。

でもさすがにこの替え歌は下品すぎると思います。センスもねぇし。

 

 

「理不尽の彼方」pp.114-117

とりあげられた言葉:

「今がお前の人生最良のときだ」p.115

新OSの開発で、家に帰れず精神のバランス崩壊・家庭崩壊になった部下にチームのリーダーがかけた言葉らしい。僕は本書の中でこの言葉が一番印象に残っている。

苦しければ苦しい時ほど、この言葉は妖しい輝きを放つ。

 

 

 

 

「逆効果的」pp.118-121

とりあげられた言葉:

「テレビで紹介されました!」p.118

「ユミさんって、根はやさしんですね」p.120

「これ飲むと、青虫みたいになれるよ」p.121 

確かに、紹介ひとつひとつで騒いでいるとその程度の店なんだな、ってことになってしまう。納得。静岡県内ローカルネタだが、「くさデカ」一つでそんなにテンションブチ上がってるんじゃないぞ、平富のサインとかどうでもいいぞ、と思う。

確かに、「根は」の2文字はいらないし、逆効果かもしれない。納得。でもダイレクトに「やさしいんですね」だけだとどうも照れくさい。なんかドラマの台詞みたいじゃない?

でも最後、ここが青虫、ではなくて例えば「橋本環奈みたいになれるよ」「アイドルみたいになれるよ」「綺麗になれるよ」とかでも父親から娘へは、届かないような気もする。逆効果もクソもない。

 

 

「第一声」pp.126-129

とりあげられた言葉:

「こんばんは、やどかりなんですけど」p.127

自分の頭を占めていることを、何も考えずにそのまま口に出した感じだ。どうしてそんなに大胆になれるのか。世界と他者に対する怖れのなさが羨ましい。だが、そういうひとは決して珍しくはない。p.128

あー。間違いなく僕はこれ、やどかり名乗っちゃうタイプの人間である。

証拠に今日口にした言葉がこれである。

僕「どうでもいい話なんですけどね、今日ね、朝はいたスニーカーに穴あいちゃってて、あわてて長靴はいてめっちゃ足元暑いんですよ~」

出勤ときいつものスニーカーに足を通したら、靴下の模様が丸見えになるぐらい、ばかっと穴が開いていた。びっくりした。衝撃だった。どうしようと思った。慌ててローファー型の長靴に履き替えたという次第である。しかも今日に限って暑くて蒸れて気分は最悪だったのである。

それを職場の女子大学生の子に熱弁してしまった。2-3回しか会ったことないのに。

でもここで言っておかないと、僕は永遠に「靴をはき間違えたままである」という失敗を胸に抱えたまま一日過ごす羽目になるのである。だったら誰かの「へぇ」やら「(笑)」でもいいから、反応に昇華して成仏させたいこの気持ち。

やどかりの人は、子供が捕まえてきたやどかりに貝がほしいとのことで寿司屋をまわっていて、寿司屋のドア開けてはなった一言が「やどかりなんですけど」とのことである。分かる。もう結論から言ってしまいたいよね。「あの、すみません・・・今お時間良いですか?子供が昨日ヤドカリを捕まえてきまして、その住みかとなる貝を探しているんですけど・・・」ってそれこそまどろっこしくないか?

「私さ、やどかり用の貝ないんだよ」

「俺あるよ」

「嘘まじ?」

「うん」

「貝だよ、巻貝」

「うん、巻貝」

「あるの?巻貝」

「めちゃめちゃあるよ」

「1個くれよ」

「うん、やだ」

「2軍でいいからさ」 

これくらいの気楽さでもうすませたいのである。其の挙句の初めの一言が、それだったのではないか?と思う。

でも実際その女性と寿司屋は初対面だったぽいし初対面じゃあ2軍の巻貝は通用しない。人間社会、難しい。

 

 

「世界が歪むとき」pp.138-151

人間には世界そのものを生きるってことは不可能で、ひとりひとりの世界像を生きているに過ぎないってことを改めて感じる。世界が歪むと言いつつ、実際に歪むのは世界像であって、世界そのものは微動だにしていないのだ。

もしそうなら、世界を動かす言葉など存在しないことになる。あるのは世界像を動かす言葉だけ。p.140

世界を捉えるに、適している手段が言葉である。例えば「あまいバナナ」。あまい、という言葉だけしか知らなければそれだけで終わる、けれども「蜜のように甘いバナナ」「バナナジュースのより甘いバナナ」「完熟したバナナ」「硬いけれど一口一口に確かに甘みが伝わるバナナ」、言葉が増えることで解析度が上がる、気がする。

だから人は本を読むのではないか。

一つでも多くの世界の捉え方を、感じ方を学ぶために。自分の世界を、解析度高くするために。

歪めるために。

 

 

「OS」pp.146-150

とりあげられた言葉:

「日本人じゃないわ。だってキッスしてたのよ」p.146

キッス、という言葉をキス、にするだけでは駄目だ。その言葉を使うOS自体を新しくしなくてはならないという話である。

ところがどっこい令和現在ではう一周廻ってキッスが新しいまである。まだ「キス」してるの?古いよおじさん。

僕のOSは時代についていけてるだろうか、28yearsoldver.になっているだろうか、時々不安で心配になるけどでもまぁ、なんかもういっかなって気がしてきた。

みんながみんな、世界に一つしかないOS持っている。

更新多少遅れてても、それはもう世界に一つしかない訳だから、大切にしよーぜ。寿命まっとーさせちゃおーぜ。

 

 

「サービストーク」pp.163-167

とりあげられた言葉:

「万一ご満足いただけない場合は全額返金致します」p.166

恫喝に思えるという穂村先生の感想を読み、確かに、と思う。なんか丁寧な言葉なのにどことなく893の匂いがする。

でもなんで恫喝するに至ったのか。

多分それはその商品が売れないからじゃないのか。

「安くていいものですよ!!」「今ならお買い得ですよ!!」「芸能人も使ってますよ!!」「コールセンターのオペレーターこれから20分限定で増やしますよ!!」じゃあ、みんなに聴こえないから、「万一ご満足いただけない場合は全額返金致します!!!!!!」決定的最終進化的絶叫をするしかないんじゃないか?

ショッピングチャンネルの運営会社こそ「絶叫委員会」、なのかもしれない。

 

 

「天使的な言葉に痺れます。」

 

以上である。

言葉に対する違和感を拾う、というコンセプトで、ひとつひとつが短めで読み易い。し、どの文章にもきらりと光る穂村先生の感性が光っている。

ぶっちゃけ「世界音痴」は、社会不適合者()だとかネガティブな人だとか、ちょっと一部の人にしか自信をもって勧められない。

が、本書は万人に勧められる。

文系の大学生なんかに読んでほしい。

穂村初心者にはうってつけの一冊である。

 

 

***

 

LINKS:

ほむほむの他の随筆集の感想。コンプしたいわね。

 

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職場行くときに使ってたスニーカー。
お分かりだろうか・・・。穴が開いております。
偏平足なのでコンバースはここからやられる。
写ってないですが、手前側の方も小さい穴があいてます。

 

玉置勉強『彼女のひとりぐらし2』-今日もひとり。咳をしてもひとり。バターを買ってもひとり。-

 

 

 

 

今日も今日とてひとりぐらしぃ!!!

 

※「ひとり」暮らしは、一人暮らしと独り暮らし、両方の意味が掛かってると思われる

 

 

 

 

玉置勉強『彼女のひとりぐらし2』(幻冬舎 2011年)の話をさせて下さい。

 

 

 

 

【あらすじ】

輿水理香、26歳独身。

高校時代はバスケ部しょぞく。

きそくただしかったせいかつが、たまに遠い昔のことの様に思う、

最下層フリーランナー。

今は、部活時代より継承した、部屋干しロープ張りの部屋で、

スポーツ観戦したり、妄想したり、飲酒したり、

気ままなひとりぐらしを満喫中!?

裏表紙より

 

【読むべき人】

・女性で一人暮らししてる方

・ゆるーい漫画が読みたい方

・つかれている人

 

 

帯に描きおろしカラーイラストもってくるの、なかなか見ないよね

 

【感想】

ブックオフオンラインがこの前、「少ない巻数でおススメの漫画50選!」みたいな企画をやっていたのですが、本シリーズが入っていてやっぱりブックオフオンラインのライター、ガチ勢だよなって再確認いたしました。

2巻!!です!!

 

といっても基本1巻と変わらず理香がだらだらと暮らしているだけ。男はいないしダイエットに励むし洗濯しようにも雨は降るし・・・。

でもやっぱり小さいこと一つ一つにおける理香の気持ちの機微を描くのがやっぱりめちゃくちゃ上手くて、なんかやっぱり他の生活系漫画とは一線を画するんですよね。やっぱり。

本書は実は初版ではなく、発売1年3か月後の3刷目ですが・・・このサイズの漫画にしては結構売れてる方、だと思うのですが・・・、帯も前回から引き続き豪華なメンツで描かれていますが、まぁ分かります。当時多くの人が本作に魅了されたっていうのは。

また、3巻で完結しているのもいいんですよね。多分刷り数を見れば、まだだらだら続けようと思えば出来ると思うんですよ。多くの生活系漫画も巻数多い傾向にあるじゃないですか。でも潔く3冊。

そういうところもまた逆に、惹かれるんだよなぁ・・・。

 

 

帯の作り込みがすごいんよ

 

 

以下簡単に各話のあらすじとぐっときた台詞、感想を残しておく。

 

 

第13話:コインランドリー、部屋干しの話

理香「今はいてるのはえっと、2日目半だったり・・・」p.4

リアルさも絶賛している本作ですが、ここだけは異議申し立てたい。

意外と女子はパンツは毎日換えてる。どんなにずぼらでも基本毎日換えてる。

代わりに2日半つけちゃうのは、ブラですね。

パンツはまぁ汗以外の諸々でさすがに不潔を感じて自然と換えちゃう。コンビニにも売ってるし。

でもブラの方はまぁ基本汗だけじゃないですか。だからまぁいっかなって思っちゃう。特に冬だと。あと部屋着、とかね。

作者が男であることを忘れかけてた。

そやった、あまりにもリアルで忘れていたけど、玉置先生男だったわ。

そういう一話です。

 

 

第14話:プールの話

理香「安上がりでも安売りはしないっ!!」p.20

この台詞が掲載されている最後のコマ、曇天+雷の空の情景が描かれています。

ここが本作の面白い所。

別にど晴天でもいいし雨ざーざーでもいいわけじゃないですか。でもあえて中途半端なその天候を選んでいる訳ですよ。

その生半可感が、いかにも今の理香を象徴しているかのようで、面白かったですね。

センター試験の「漫画」で出るんじゃないでしょうか。

 

【問題】最後の1コマであるがここから分かる理香の心情を以下のアからエのうち一つ選びなさい

ア:モーリシャスに新婚旅行に行ったいこーを本当は妬ましく思っている

イ:市民プールでいっぱい遊んだことで生まれ変わった感覚になり、明るい未来を思い描いている

ウ:日々の鬱憤の合間の、一瞬のモノとは知りつつもその解放感に酔いしれている

エ:溺れかけたがミネラルウォーターが美味しかったので、再び市民プールで泳ぐことを決意している

・・・。

 

・・・。

・・・。

・・・正解、ウだと思うんですけど、どうでしょう?

 

 

 

やっす

 

 

第15話:ワールドカップ観戦

理香「世界中のいい男博覧会でもあるしっ!!はああ♡」p.25

クソみたいな台詞ですが、まぁちょっと分かるのが悔しいですね。同じ白人でも、東欧と西欧だと微妙に顔立ち違うんだなぁって思ったり、あこういう髪型ってありなんだ~でも似合ってる~とか思ったり、えやだ意外と南米かっこいいやんとか。結構面白いんですよね。

2011年のワールドカップだから、僕が高校3年の時のワールドカップですね。僕が初めて関心持って観戦したワールドカップでもあります。

女子サッカーというのが僕の母校ありまして、所属する女子は所謂クラスの中心のイケイケ系女子だったんですよ。だから自然と皆関心持っちゃうっていう・・・。

わくわくしたなぁ。

サッカー観戦ってこんなに面白いんだ!と衝撃を受けた覚えがある。

それ以来、ワールドカップだけは日本の試合は見るようにしてます。まぁ全然詳しくないのですが・・・。

ついこの前まで「すげぇ!!新星や!!」て思ってた柴崎選手がもう中堅もしくはベテラン勢にいるあたり、時の流れの速さを感じます。

 

 

第16話:隣駅の実家へ帰省。彼氏を連れて親に挨拶にきた妹も帰省してた。

理香「しっかしーー昔は喧嘩ばっかだったのになーーー

歳食うと変わるねお互い ちょっとだけ」p.42

僕は未だに妹と仲悪いですね。

でも喪女喪女している間に、妹彼氏作ってたらしくてビックリした。大手企業務めらしいが東京転勤になるので遠距離になるそうだ。

でもまぁ、仲悪いので昔はそのまま喧嘩していましたが、今はお互いに限界ぎりぎりまで距離を取っています。家は愚か連絡先も知らないし。彼氏の情報も母から聞いたものなので。

そういったところは、輿水姉妹同様「ちょっとだけ変わった」ところなのかもしれない。

 

 

第17話:飲み会の翌日。

理香「よし粗相した形跡もないっ」p.48

記憶亡くすほど飲んで気づいたら朝・・・ってことは今のところ僕は無いですね。そこまで飲める程お酒強くないというのもありますが。

だから、まじの二日酔いってこういう感じなんだぁ~と勉強になった一話。

でも鍵開けたままにしちゃったからって合鍵屋に2万近くも払うのは、自意識過剰じゃないか輿水理香。

僕は時々、家出る前どうしても見つからないと、鍵開けたまま仕事に出かけることが多々あるので・・・。

 

 

第18話:こたつ購入。

理香「ダークラム・角砂糖あと無塩バター・・・はないから普通のバター

わたし流は砂糖多目にラム少な目

ほんとはシナモンとか入るんだけどそれもめったに使うもんじゃないから買わずにすます!!」p.60

こたつでだらつく理香の気持ちもまる分かり。

トイレすらめんどくさいよな分かるよ。

でも後半の、理香が作るダークラムが本当においしそ~となった。あとこういう風に作るんだという勉強にもなった。

バター。一人暮らし8年目にしてようやく僕の生活圏内に入って来た食べ物ではありますが、美味しいお酒を作る材料にもなるんだなぁって思いました。

あとまぁ分かるよ。だらだらネット見ている時間が人生でいっちばん楽しいよね。

理香はPCで見ております・・・ああ確かに僕も高校時代はずっとネットはリビングのノートPCだったなぁそれが今じゃぁ、一人暮らしのスマートフォンプライバシー死守。

いい時代になったもんだ。

 

 

第19話:プリン頭になったので髪の毛を染める(セルフ)

理香「いいえ つつましく自宅作業です」p.70

世の中髪の毛染めている人全員エライと僕は思っております。

というのも染めた以上はどうしてもプリンが避けられないじゃないですか。僕それを埋める気力ないよ。絶対めんどくさーいだらーんで、プリンどころかあれ?頭頂部から石油湧いてます?にする自信があるよこんちくしょう。

あとネイル。あれもそう。どうしても爪延びるじゃん?以下略ですよ。

だーから喪っ女なのかなあー・・・。

なので、理香ち、黒髪だから男とヤッてるってのは一概にそうは言えないよ。

 

 

第20話:大掃除。

理香「・・・というか独り言が深刻に・・・

・・・やばい なおるのかなこれ」p.77

僕最近ひとりごとが深刻なのを、一周廻って開き直ってます。家では。

ただもう職場でも結構言うようになってて。もうやばい人扱いなんだろうなぁと思います。見ないでくれ。聞かないでくれ。著作権がある。

特に疲れている時、は結構口からぼろぼろこぼれておりますね。ぼろぼろ。

赤ちゃんか?ってくらい口周り汚いです。

誰かキスで塞いでくれ。

 

 

 

 

第21話:湯船にお湯をいれた。

理香「ドライヤー・・・あったあった めったに使わないけど今日は濡れ髪はやばいし。ぐっほ くっさ!!くっせ!」p.94

一応ドライヤーは毎日スイッチつけておりますね。簡単にですが乾かしてます。

中盤全裸で部屋の中を駆けまわる理香が自身を「芸人じゃないんだから!」とツッコんでいるシーンがありますが、僕はもう日常過ぎてなんとも思わない。何ならパンツさえ履いとけば一日そのままで過ごすことが出来ます。

パンツ一丁で独り言(多め)をこぼしまくる日々・・・。

もうこれ実質赤ちゃんでしょ。可愛いでしょ。

ベビーピンクでしょ。もう逆に可愛いでしょ。

何が「部屋着」だジェラピケがぁ!!!

 

 

第22話:マリッジブルーの妹が来た。

祐香「ほんとお人よしだなぁ・・・お姉ちゃん お人よしすぎるから男に縁がないんだよ」p.184

うすうす気づいてはいたのですが、玉置先生、妹萌えの性癖あるでしょこれ絶対。というか姉妹仲に夢を見過ぎている。

実際こんなに姉妹は仲良く無いです。天然記念物ですこんなの。

ぎりぎり距離保ってると先述しましたが、もっと汚いしもっと仲悪いです。

ワンチャン部屋に来ることがあってもここまで赤裸々に話すことはまぁまずないでしょうね。せいぜい何も言わず一緒に寝るのが限度というものではないのでしょうか。

男同士の兄弟のようにすべてざっくばらんにというわけにはいかないのですよ。

ていうか、輿水姉妹の仲がマジョリティーだったら、僕マグ・ロドンはマジの社会のあぶれ者になるので、勘弁してくださいまし候。

 

 

第23話:バーに行く。

理香「えっ・・・やだ な・・・に言ってんの勇太くん」p.115

理香のちょろさに衝撃の共感。分かる~。

普段から男っ気がガチでないとこんなちょっとしたことで、まじでときめいちゃったりするんですよね。

でもこういうのはだいたい賞味期限1か月くらいなのですが・・・。

僕も年に4回くらいこういうかっるいかっるい「恋」にも満たない恋はしております夜其の殿方の顔が浮かぶこともまぁあります。

だから神様・・・こんな哀れなる僕にもいい人をデスネ・・・。

 

 

第24話:同棲している親友の家で呑む。

理香(泥酔)「田舎って娯楽がセックスくらいしかないからーーーみんな早いって本当なんですかあれ?」p.122

こんな僕より男に飢えているのに、3巻通してどうやら男が出来なさそうな輿水理香26歳、哀れだ・・・。漫画なのに・・・。漫画だから・・・。

いやまぁでも、まぁそれでも&でもですよ、彼氏のいる理香ちもちょっと見てみたい気がする。

というか、本書発売から11年、37歳の理香ちの現在も見たい。

その時は「彼女のふたりぐらし」でお願いしたいのですが。もしくは「さんにんぐらし」無論旦那とね。子供とね。

果たして10年後どうなっているのか。

掲載誌(コミックバーズ)が休刊しているので再連載という我儘までは言いませんまぁそのツイッターで・・・ツイッターとかとかで、彼女の原罪の片りんを見せていただけないでしょうか・・・玉置勉強神・・・そして全国の「ひとりぐらしの彼女」に夢と希望と絶望を与えて孤独を埋め続けていただけないでしょうか・・・玉置勉教入信するので・・・。

 

 

 

 

以上である。

なんか10年たった今読んでも変わらないリアルさ生々しさ。

大きなことが起きないので、疲れていてもさっぱり読めるって言うのもいいんですよね。

だからといって後味までサッパリゼロ!というわけではなくどことなくじん、と余韻が残る終わり方。好き。

3巻もまとめ買いしたからあるけど、読んじゃおっかなー・・・あーでももったいないあなー・・・とも思ったり。

最高です。

 

おいしかった



 

***

 

LINKS

1巻。シンプルな線なんですけど、よくよく見ると人物のポーズのバランスに一切違和感がなくかなり高い画力が伺えます。

tunabook03.hatenablog.com

 

我妻俊樹『奇々耳草紙 憑き人』-大学生が一番怖い。

 

 

🍺うぇ~い。

 

 

 

我妻俊樹『奇々耳草紙 憑き人』(竹書房 2017年)の話をさせて下さい。

 

 



 

 

【概要】

この世の隅で絶えず囁かれる奇怪な話、異様な話、それらに〈聞き耳〉をたててーーー日常の狭間に除く恐怖をたっぷり53話収録。

一家心中の生き残りの男の元に、今もやって来るという両親の霊。その戦慄の理由「心残り」

先祖が戦国武将だという同級生は証拠を持ってくるといった翌日維新だ。その夜・・・「大和山実山」

大学に伝わる伝説とそれにまつわる恐るべき独白「死ぬ地蔵」など。

裏表紙より

どうでもいいんだけど、同シリーズ5冊でこのあらすじの書き方のテンションあと長さが一冊一冊違うのどうにかならなかったんですかね・・・

 

【読むべき人】

・不思議系実話怪談好きな人

・1-4巻同シリーズを読んで面白かった人

 

 

 

 

【感想】

一気読みした実話怪談シリーズ。とうとう最終巻である。感慨深い。

どうやら我妻先生は4-5冊単位でシリーズを3つ出されていて、これはその2つ目とのことなんですな。ちなみに1つ目から2つ目、2つ目から3つ目のスパンと比較して、3つ目のシリーズが完結してから現在までのスパンだいぶ長い。はよ4つ目のシリーズ出してほしいわ~。

 

最終巻、ということで他より分厚いかと言えばそうでもない。話数も最多かと思えばそうでもない。むしろ1巻2巻4巻より少ない。3巻よりは多いけれども。

でも、印象に残った実話・・・を僕はページ折る癖があるのだけれども、この巻が一番多かった。

4巻とか、印象に残った話の配置にだいぶ偏りのがあったけれども、本書は満遍なくページを折っている。

ここで一区切りつけさせて頂くということで、シリーズの集大成的な一冊に出来たのではないかと自負しております。p.223 あとがきより

とあるが、まさしくそうだと思う。

 

 

 

 

以下簡単に印象に残った実話の感想を記録する。

一番厭なのは「3周年」記憶に残ったのは「黄色い女」、好きなのは「中学生」

ただ本書は他の巻と比べると突出した傑作がある、よりかは良作が数多くあるといった印象。

 

 

「かしわ餅」pp.10-11

昔、飲酒運転の車に撥ねられて入院していた幸人さんは、夢で何度も事故の瞬間を再体験した。p.10

食べたはずの柏餅が戻っているという怪奇現象。それが意味するもの、というのが全く予想つかなくて、怖かった。む縁起がよさそうなモノなのに。

最後から逆算すると、何度も夢を見る行為、はその回数だけ強い罪悪感に悩まされたことなのかなとも思う。検証のしようはありませんが・・・。

 

 

「カラオケ林」pp.12-17

夜な夜なカラオケの騒音に悩まされる。音源を突き止めてやろうとすると、どうやら林の中から聞こえるようである。

これも前半の怪奇現象と後半の出来事が全く予想がつかなくて、怖かった。パート2。関係ないのか?とも思うけれども最後の一行がそれを全力で否定してくる。

僕の職場からの帰り道でもスナックから度々聞こえるが、カラオケの騒音って独特の不気味さがあるよね。そこにフォーカスした実話怪談って初めて読んだから新鮮だった。

あと、ああいうスナックの歌ってもれなく古い歌なのなんでだろうね。僕の十八番「徒花ネクロマンシー」「初音ミクの暴走」ひっさげてスナック潰しやりたいわね。

 

 

こしあん」pp.18-20

役場の椿が毎年咲くのを楽しみにしていた祖母。ところが今年はもう花をつけそうにない。祖母はそこで家族や近所にふるまうおはぎを椿にももっていくようになり・・・。

微笑ましくなる一篇。やっぱあんこ好きからすると「こしあん」「つぶあん」って大事なのかな。てか椿はいつ「こしあん」の味を覚えたんや・・・。

僕はマドレーヌがいいです。あんこ駄目なので。

あとおはぎと椿、の組み合わせもなんだか絵になってとても良いですね。

マドレーヌとフリーターはただただリアル溢れるだけですが・・・。

 

 

「スッポン」pp.22-24

近所の川にいる亀がひっくり返っていたので、戻してあげた。すると某俳優の顔がくっきりと浮かび上がっていて・・・。

読めば怖くないけれども、でも絶対遭遇したくない怪異。僕もスッポンからこんなこと言われちゃったらもうどうしようもないな。たまったもんじゃない。

2ページで終わりかと思ったら、3ページ目の一文がなんともいえない余韻を残していて素晴らしかった。

 

 

「たのしいたのしい」pp.25-28

〈たのしいたのしい、麻江もおいで〉p.26

たのしいたのしい、と二回繰り返しているにもかかわらず、楽しい雰囲気よりかは不穏な雰囲気を心に残す。

怖い怖いだと、一層怖い感じがするし、嬉しい嬉しい、だと一層嬉しい感じがするし、悲しい悲しいだと一層哀しい感じがするのに、楽しい楽しいはなんだか怖い。

この手紙を送った祖父は今もご存命なのでしょうか。不謹慎だけどなんか地獄に堕ちてそうな気がする。

 

 

「ひとごろし」pp.29-32

限界のチャイムが突如なり、知らない女が狂ったように「ひとごろしー!ひとごろしー!」と叫んでいる。

殺されたのが20数年前というのが妙に怖い。つまりそれだけの長い時間女はずっと、そこで殺され続けていたということでしょう?あと〈新興宗教)絡みというのもなんか厭。80年代後半-90年代前半にかけての物騒な事件の匂いがする。血の匂い。

あと、この話で思い出したのは小野不由美『鬼談百景』。あれにも似た話がありましたよね?女が助けを求めてドアバンバン叩くやつ。百話のなかでもトップ3には入るくらい怖かったなぁ・・・。

 

 

「3周年」pp.33-37

大学生のグループが、カラオケのくじを引く。眼鏡をかけたおとなしそうな女の子が前に押し出され、挙動不審にくじを引くと・・・。

「ぶげえええええええええ」p.34

これなんかよく分からんけど滅茶苦茶怖かった。

まずひいた写真の卑猥さが過激すぎてもうよく分からないし、3年後に起きた事実はもっと分からない。その眼鏡をかけた女の子はどうなってしまったのか。

ドッペルゲンガーなのか・幻覚なのか。

それとももうあっち側に行ってしまったのか。

この事象に巻き込まれた女の子がギャルとか風俗嬢女子大生とかだったら全然怖くなかったと思うが、そういうエロでグロテスクと一番遠そうな人物が巻き込まれる、というのが生々しくて怖かった。一体何があったのか。

本書の中でベストオブ恐怖。嫌悪感も含めて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「黄色い女」pp.46-55

『今はもう黄色くないもん!』p.52

支離滅裂で繋がりそうで繋がらない、王道我妻実話。ただ思うのは、恐らく黄色い女は現代妖怪的な存在ではないかと言う事。あと、主人公の女性・Cさんの御兄さんに恋をしていたんじゃないかな。昔の怪談を想起させる切なさも感じられた。

大阪では泉の広場での「赤い女」が有名でしたが、東京では渋谷の「黄色い女」ときましたか。是非四十七都道府県四十七色の女が出てきてほしいところではある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だーれだ?」

 

 

 

 

いちゃついてんじゃねーよ!!!!

 

 

 

 

「穴へ」pp.60-62

友達の家の玄関には、得体のしれない不気味な人形がいて・・・。

まさかのくすっとくる怪談系だとは思わなかった。好物を知ると途端になんだか行間から愛嬌が感じられる。

「靴が大好きみたいなんだよ、それも鼻が曲がりそうなほど臭いやつが」p.62

まぁ人間でも色々よく分からないフェチの人がいるからね・・・。よく分からないフェチの人形がいたってなにもおかしくない。

この人形と是非「クレヨンしんちゃん」の、ヒロシの靴下で一家が悶えているシーン見たいわね。動いて髪の毛のびそう。

 

 

「犬の歌」pp.63-64

(恐らく)井の頭公園の殺人事件で死体を見つけた犬のその後。

なんとなくアメリカンジョークを感じる一篇。特に最後の一行の台詞。絶対語り手外国人だろ。ジョンとかボブとかそのへんだろ。

あと、こんなに都合いいことが起きるかね?みたいな実話。事実は小説より奇なり。探偵ナイトスクープ派遣したかった。

 

 

「資料館」pp.67-70

ある男が出勤の行き来の際に通る道に、ひっそりとした陰気な郷土資料館があった。試しに中に入ってみると・・・。

なんか呪い、を感じる一篇。最後絶対話したら死ぬパターンじゃんと思ったら違った。

一生に出てくる人物を模した蝋人形だった、ってことなのかなぁ・・・。たまたま覚えていたのが義父というだけで。

あとさびれた資料館から不気味な現象が起きる、という世界観が好き。確かにそういう場所はいっぱいあるけれども実話怪談の舞台になるのは珍しい。

 

 

「写真のデパート」pp.73-78

ある日小学生男児は母と祖母の親子が写った奇妙な写真を見つける。

デパートの、謎の心霊?写真がなんとも不気味な一篇。でもここに出てくる幽霊達は、そこまですごい邪悪な感じはしない・・・と思うけどどうだろう。

家に憑いてる霊、先祖、精霊、みたいな。イギリス的なね。

 

 

「中学生」pp.87-88

中華料理屋の配達先のひとつに、いつも泣き声が聞こえる家がある。

シンプルであっさり風味だけど不気味。泣いているということは、やっぱり助けてほしいとか成仏したいとかそういうことなのでは。ミルク欲しい、うんこしたから気持ち悪い、成仏したい。そしてそれに悩まされ続ける母親のことを思うといたたまれない。

あと「もう中学生」という字面が読める貴重な実話怪談。万が一文庫本で「もう中学生」という日本語が読みたいな~ってなった時は是非この実話怪談を。2ページで短めなのでもう中学生欲をささって満たせますよ。

 

 

「町なかのベンチ」pp.89-91

〈K山F美ちゃんと結婚するF美は俺のもの、たとえどんな手段を使っても(殺してでも)。〉p.89

たまったもんじゃないという話。最近男女の好き嫌い関連で起きる殺人事件・・・茨城一家殺人事件であるとか確かあれも長女に勝手に思いを寄せていた男が起こした事件だったか。あと少し前に沼津で起きた女子大生?だかの殺人事件のきっかけは、LINEブロックされたから殺した」。

そういう奴って絶対頭おかしいと思うんだけど、どういう風におかしいの。

こういう風におかしいんだよ。

って、言われているような気がする一篇。

 

 

「徹夜奇譚」pp.92-94

ふっと意識を失い、取り戻すと、私が二人いる。どちらの身体に戻ればいいのだろう・・・。

幽体離脱奇譚。どっちか、という選択を迫られるというのは、王道、ではないけれど長年細々と培われてきたルートではある。「奇々耳草紙」1巻に収録された「ラーメン」もそうだった。あれはデブの全裸+ラーメンという奇抜な設定が目を惹く実話怪談であったが、同じく二択系の怪談だったはずである。

ルーツはどこだろうね。日本で一番有名で古いものだと、世にも奇妙な物語の「あけてくれ」だと思う。

こういうどっちの料理ショー」的実話怪談に僕はめっぽう弱い。正しい決断できる自信全くない。

 

 

「天使の警告」p.102

宏夫さんが部屋で好きなアイドルの写真を熱心に眺めていたら「じろじろ見るんじゃねえよ、キモいんだよ」とそのアイドルの声がきこえた。p.102

大園玲ちゃんの生写真にこんなこと言われたら僕もう生きていける自信全くないですね・・・・。

 

 

 

尊い・・・。

 

 

「髪の毛」pp.106-112

ある日風邪で寝ていると、「区役所から来ました」p.106スーツを着用した奇妙な男が立っていた。

住んでいる区全体に怪異が及ぶとは思わなかった。怖い。やっぱ呪われた土地とかあるんですかね。「残穢」を思い出した。

慌てて僕自身が住む区のHPアクセスしたけど、深海魚の写真は出てこなかったよ。

多分、なんだけど僕の住む静岡市含め地方都市だと区はかなり広くなって、怪異が区単位で結集する、っていうのはなかなか難しいから結構都会の話だと思うんだ。横浜とか。

 

 

「父親」pp.124-125

水族館で迷子になった。名前を呼ぶ声に振り向くと、父親が水槽の中でボロボロの状態で漂っている。

なんだ、ただの子供の幻覚かよ。と思わせてかーらーのー、である。幻覚だったら最後の現象に説明がつかなくなる。

でもこういう意味が分かんない経験って幼少期たくさんあった。ノスタルジックくすぐられる。

あとこういう話って大抵海が舞台だけれども、水族館舞台は珍しいわね。水族館で起きる怪奇現象・・・がまがま水族館か

 

 

「命日」pp.131-138

昔火事で焼けたアパート跡に絶ったビル。オーナーが〈命日〉と呼ぶ日は各テナントに休業を要請していたが、美容院の店長は守らなかった。

え?どういうこと?ってなる一篇。けれどえ?どういうこと?の前に、凄惨で怖いことが次々と起きて、恐ろしかった。何故店長はちょっと話しただけでその「仕事」を引き受けたのか。なぜ店長は自殺したのか。店長と会話していたのは何なのか。それを見たスタッフの靴が紛失したのは何故なのか。オーナーはどこへいってしまったのか。そもそもオーナーが命日にやっていた「仕事」?とは何なのか。

謎が謎を呼ぶ展開に、焼身自殺・マネキン・謎の声・謎の儀式と恐怖のエッセンスがふんだんに使われていて、さながらデコレーションケーキ。怪奇現象の玉手箱や~。

なんとか得られる教訓は、やっぱり上の人の言うことは守っておくに越したことはない。ということだろうか・・・。

 

 

「鯨幕」pp.139-143

大学のサークルの新歓活動中、自殺について輪になって話しているグループがいて・・・。

「でもあの日見た人たちはどう見てもただのそこらへんにいる学生」p.142達が突如消える怪異。どう見たって普通の存在が、普通の存在ではなかったという話。

死神がたまたまその場にふさわしい姿に擬態しただけなのでは?と思う。死神そもそもいるのか知りませんが・・・・。

でも普通だったら、卒業後そんなん見た母校に務めようなんて発想にはならないと思う。その行動の不可解さの方が怖い。

 

 

「大和山実山」pp.148-151

先祖が「ヤマトヤマサネヤマ」という戦国武将だと言いふらしていたクラスメイトが、翌日、亡くなった。心中で。

最後の方で、この武将御存在を否定するかのようなニュアンスがつけられているが、それは分からない、と思う。書物に残っていないだけで、いたのかもしれない。もしくはいたけれども、名前が残っていないだけとか。もしくは、クラスメイトが名前を間違えていたか、もしくは名前を間違えて思い出したか。分からないが、安易に否定するのはちょっと疑問。大学の日本史の教授とかならまぁ分かるけど、一人の実話怪談の書き手にそこまで断言できる裏付けがとれたとは思えない。大学時代史学専攻だったので、ちょっとそこらへんは違和感。

 

 

「鳥」pp.152-153

智也さんが後輩を連れて居酒屋で飲んでいたら後輩の肩の上にいきなり鶏がとまった。p.152

ファミチキ食いてぇ。

 

 

「小太郎」pp.156-160

若い時に蛇を飼っていたが、行方不明になる。一年後姿を現すも、再び姿を消して・・・?数十年後、当時住んでいたアパートの近くを通ると。

蛇にまつわる奇譚は多い。この話もそう。

そして意外と蛇は人間に害を及ぼさない話が多いが、この話もそう。

並行世界絡みかなと思ったんですけど、どうでしょう。

昔、ちーちゃんは悠久の向こうというライトノベルがありましたが・・・あれを思い出した。見えない世界と見える世界は並行して存在してだぶついている。小太郎は見えない世界に行って人間として転生したけど、昔の主が来たから並行した世界がリンクしたんじゃなかろうか・・・・まで考えるのはちょっとキモイですか?そうですか・・・。

 

 

「薔薇の女」pp.165-169

マスターが経営するバーは一見さんでも「来た事がある気がする」と言われることが多い。

なんだかロマンチックな一篇。薔薇の女の正体は分からないが、マスターに恋をしているのは分かる。とても情熱的で熱い恋を。

多分、その女の機嫌を損ねない限りバーは続いていくんでしょうね。

こういう実話は、夢があるなあ。

 

 

「いなくなった」p.173

娘が飼っていた金魚が行方不明になった。

魚が擬人化する実話怪談はちょくちょく見ますね。人魚、魚人というメジャーな概念もあるし。住んでいるのが水中か陸かくらいで、意外と人間に一番近い生き物なのかもしれないね。独自のソサエティありそうだし。

 

 

「〒」pp.174-177

ある日入った郵便局は奇妙で・・・?

よく、怪異現象や心霊番組が起きなくなったのは、技術が発達したからだ。スマホが普及したからだというけれど、「黄色い女」といいこの話といい、それは嘘。と僕は考える。あっちもあっちで適応できていて、適応出来過ぎているからこそ僕達は気づかない。

あと郵便局って基本なんか怖いよね。すごい狭い空間に何人かが毎日毎日毎日何年も何十年も出勤してきていて、そういう場所が全国に何万か所とある。その事実だけでちょっと震える。郵便局に務めるってまぁ基本安牌だと思うんだけれども、僕は絶対嫌。郵便局という場所自体がちょっと怖いので。

 

 

「雄鶏」pp.189-195

空き部屋と思っていた隣室に女が引っ越してきたようだ。そしてどうやら鶏を預かっているらしく・・・?

「鯨幕」でもそうだったが、大学生の幽霊系って滅茶苦茶怖いよね。大きい声でワアワア騒いで若さ撒き散らす彼等のイメージが、死と非常に乖離しているからかもしれない。だからこうやって、不思議な現象で結び付けられると、突然という感じがして怖くなってしまうのだと思う。

今回は霊ではなく、なんとなく、残骸って感じがする。多分昔そういうことがあって、駆けつけてきた学生の残骸が毎日廊下を走る・・・みたいな。

にしても、隣の女が「まさみ」なのかどうかはマジで気になる。

まじでどうでもいいですが、セクシー女優の市川まさみってマジで可愛いよね。

 

 

いちゃついてんじゃねーよ!!!!!!!!!!!!!!!



 

 

以上の25話が特に印象に残った。53話収録というわけだから、約半分印象に残ってる。

我妻俊樹氏は、実話怪談印象派。実話怪談のモネと呼んでくれ。

集大成、堪能させていただきました。

 

以上である。

奇々耳草紙、非常に楽しませていただいた。残り2シリーズある、という訳だけど・・・いやぁ、是非読みたい。我妻俊樹に酔いしれたいよ。

そしてもっとみんな、実話怪談書き手としての我妻俊樹を知ってくれ・・・。というか実話怪談自体もっと流行れ・・・金かかる分、そこらのネット怪談より全部質が高いので・・・そして我妻氏によく分からん掌編小説じゃなくて実話怪談をもっと書かせるように世界よ、廻ってくれ・・・。

 

全5冊読了。よく見ると1巻の表紙とよく似てますね。



 

***

 

LINKS

水族館怪談物と言えばこの漫画にも掲載されていましたね。

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実話怪談風小説・・・なのかな。九十九話収録されていて、これの100話目がかの有名な「残穢」というのは意外と知られていない。百物語をモチーフにKADOKAWAと新潮社、出版社またいで同時発売した。こちらも実写映画化されてる。見たことないけど。

tunabook03.hatenablog.com

 

 

1-4巻の感想。

1巻は文中で挙げた「ラーメン」が掲載。

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20220423

これも半年くらい前の記事を編集したものである。書き溜まりがいっぱいある。

実話怪談蒐集家の方々は、創作しているのではなく、あくまで事実としてあったことを取材して集めているだけ、と僕は認識しているので、書き手としてどんなに尊敬していても、と呼ぶように心がけています。記者の延長線のような仕事だと思うので。平山夢明先生も実話怪談の書き手として登場する時はなるべく「先生」をつけないようにしています。

それでも勢い余って先生、と呼んでしまう、書いてしまう、そしてそれに気づかないことが多々あるのですが・・・。

 

 

我妻俊樹『奇々耳草紙 死怨』-「いません。いませんいませんいませんよいるわけないじゃないですかそんなものいるというならほらつれてきてみてくださいよいませんいませんいません。」-

 

 

👻

「幽霊なんていません。」

 

 

我妻俊樹『奇々耳草紙 死怨』(竹書房 2016年)の話をさせて下さい。

 

 

【概要】

人気シリーズ最新作。頁をめくる手を止めてふと、周りを見渡すと、何かが変わってしまったような気がする・・・・・・よじれた恐怖がまとわりついてくる!金縛りの自分を見下ろす人達、見知った顔があったので声を掛けたら・・・・「取り囲まれて」、陰惨な事件により弟を亡くした男のもとに届いた奇妙な葉書「蛇長蛇男」など、日常に仕掛けられた黒くて奇妙な罠の数々、怒涛の61篇を収録!

裏表紙より

 

【読むべき人】

・少し不思議系の実話怪談が好きな人

・サラサラ読める実話怪談が好きな人

 

 

【感想】

実話怪談って怖さよりも、イデア・文体が勝負だと思う。

ネットが普及しSNSも普及した現在、アマチュアのネット怪談なんて手を伸ばせばひょいっ!!!と読める。Twitter等のSNS、小説投稿サイト、「死ぬほど怖い話を集めて見ない?」兼まとめサイト、SCP財団、個人ブログ・サイト・・・等々。

でもその多くが、どこかで読んだことあるような話だったり、大して怖くなかったり、もう一行読んだだけで全部わかったり、そもそも文章がめちゃくちゃ読みづらかったりする。全然怖くない、いや私の方が多分巧く書けるわ。とか場合によっては思ったりすることも多々。実際に書けるかどうかはともかく。

体感でいえば、玉石混合という四字熟語があるが、ネットに蔓延る怪談は玉石石石石石石石石石石石石石石石石混合くらい。

玉は梨.psd先生とか。あと工作力でいえば雨穴さんとか(ただし雨穴、文章力おめー、だめだ)。単品でいえば「夜明け望遠鏡で景色見てたら猛ダッシュ&猛ピンポンしてくるヤツ」とか。「あなたの娘さんは地獄におちました」

石でいうと、Twitterにあがる「ツイート怪談」とか。体感として、Twitterに上がる怪談は99%クソ。総じてクソ。本当にクソ。文字数の制限が厳しい為と思われる。

そこを逆手にとり、優秀な文字数制限怪談のみを書籍にしようという「#10文字ホラー」という取り組みがありましたが、あれは凄いと思ったね。本パラパラ見たらやっぱ全然違うもの、クオリティ。僕も一作掲載されましたが。

閑話休題

まぁともかく、ネットには怪談が多く蔓延っているけれどもその9割がしょーもない怪談ばかりである。

だから僕達は、実話怪談本にこうして金を払って読む。今までない怪異を読むために。出来れば読み易い文体で。

時間は有限なのである。面白い怪談が一気に読めるのであれば500円600円なんて僕達にとっては実質無料も同然なのである。

嘘。さすがにちょっとそれは高いので、中古で買っている訳ですが・・・でもそれは僕が月々12万円のフリーター(ひとりぐらち!!)だからであって・・・赦してくれ・・・赦してくれ・・・。

 

発想、読み易さ。その二つを我妻氏の怪談はひょーいと軽く凌駕する。肌をなぞる冷たい感触。

特に発想。怖い、よりかは不思議。謎。不条理。どういうことなの・・・?となる感覚がたまらない。いやまぁ実話怪談なんで発想ではなく、実際に起きていることなのだけれども・・・言い方難しい。集めた事象が面白い、が適切な表現だろうか。

文章も確かに稚拙な部分は見られるけれども、詩的表現がベースになっているからかすらすら入ってくるし読み易い。日本語が破綻していない、ネット怪談あるあるの不自然な接続語・助詞が一切ないというのもポイントが高い。

文章に関しては、あとバランス感覚がいいと思う。実話怪談は単行本化されているものでも、多少「前半のここの説明いらんだろ」とか「オバケの出番少なすぎ」等あるのだけれども、我妻氏の怪談に基本そういった不満を抱いたことは無い。きちんと読み返しやってんだろうなぁ。

あー。しゅき。我妻氏。しゅきしゅきしゅきぴ。我妻氏。

 

そんな感じで一気読みしている全5巻のシリーズであるがあっという間に4冊目、という事実に震えがとまらない・・・。もっとずっと読んでいたかったんですけどね・・・。

四巻にあたる本書は、三巻とは違って一巻二巻同様60篇以上収録されている。ただ怖さでいえば・・・後半に良質なものが偏っているかなあ、という印象。そこは三巻と同じかな。

 

ぎょろん。

以下簡単に面白いと思った実話怪談のあらすじと感想をネタバレ恐れず書いていく。

好きな話は「幽霊はいません」「老人会」「秋分

 

 

秋分」pp.129-131

出勤前に一時間ほどランニングをしていたが・・・。

〈はまもとしんいち 6さい〉p.130

何とも不気味な一編。まずひらがな・本名・年齢っていうのがもう気持ち悪い。

こういう時、日本人で良かったなぁと思う。英語圏だったら「HAMAMOTOSHINICHI 6years old」である。全部の文字がアルファベットだと恐怖感が薄まる。子供がまず初めに使う文字「ひらがな」で書かれているからこそ、不気味さが一層増すのである。

 

「行旅」pp.132-141

勝間さんの叔父は各地を転々として暮らした人で、仕事も定まらずホームレスだったこともあるらしい。p.132

実話怪談、というかもはやロードムービーである。何年もかけて、叔父がいろんな場所に住んで働いて働かなかったりして・・・を繰り返している合間に、かつてアパートの隣室に住んでいたNさんという男の幻影を見たり見なかったりする話である。

東京や日本海側の地方都市、更には違う街・・・で暮らす叔父を読んで、ああ人生って旅なんだなぁ・・・と思う。一人きりの旅。故郷が故郷でないこと。筒井康隆先生の「旅のラゴス」を思い出す。

同時にクライマックス、残り3ページにかかる不穏な畳みかけは見事で、最後は何ともいえない後味が胸に広がった。

 

 

「掴む手」pp.156-157

咲希さんは右手が子供の頃のけがの生でうまく曲がらないが、時々人の服を無意識にぎゅっと握っている

咲希さん「嫌な話でしょ、でもこれって二つの考え方ができるんだよね。死が間近に迫っている人に、この手がいわば告知をする役目を果たしているのか、それとも・・・」p.157

右手は、死を告げるのか。それとも・・・。

咲希さんにとってはどっちでもいいかもしれないが、身近な人にとってはどっちでもよくない話である。後者だったら今すぐ関係を断ちたい。ラインをブロックしたい。「知人」から「かつての知人」へとなりたい。絶縁したい。同じ家は愚か同じ町に暮らすのは嫌だ。絶対に引っ越したい。結婚おつきあいデートはおろか「お友達から」でもお断りしたい。

へらへらしてないで早く神社か寺行って直してもらえや案件である。それを放置している地点で咲希さん自身も無邪気な死神にすぎない。

ちなみに最後の一行が素晴らしい。

話を聞きながら思わず、手の届かない距離まで後ずさってしまう。p.157

 

 

「やつれゆく息子」pp.170-172

離れて暮らす息子が、仕事の配達中に追突事故を起こして入院した。

妻「ちょっと何で人違いしてる訳。自分の子供の顔もわからなくなったの?」p.171

衝撃的な展開でちょっとビックリした。

母親が肺癌なのもあって、入院時はよく見舞いに行っていた。ナースステーションで部屋がどこかを聞くのである・・・自分の体験と近くて、その分生々しく感じられる。

よく、家族・特に兄弟姉妹に怪異現象がわあっ・・・!!と起きて、「それ以来兄は顔が変わったままだ」「それ以来姉は別人のままだ」と締める実話怪談があるが、それの発展したパターンと言えよう。よりリアルに肉薄しているというか。

ちなみに、実話怪談あるあるとして挙げられるのは、兄入れ替わりがち。兄が7割父母2割残り1割・・・な気がする。少なくとも入れ替わりを体験するのは子であることが多く、体験者が父親のパターンはなかなか珍しい。

 

 

「知らない女」pp.173-177

女の飛び込み自殺を見た夜に、見知らぬ女が訪問してくる。

一瞬駅のホームで見た光景が蘇るが、もちろん外に立っているのは列車に飛び込んだ女ではない。p175

じゃあ誰だよ。

そこはむしろ朝飛び込んだ女性が、夜部屋の前血まみれで突っ立ってるのが実話怪談の「もちろん」だろ。と思わないでもないが・・・その女の行動とオチが不気味で印象に残った。

要するに生霊が、マネキンに乗り移ったってことなのだろうか。呪い?

それとも、最後の一行から鑑みるに、別人と見せかけて飛び込んだ女性と夜に来た女性は同じ人だったのだろうか。

どうとでもとれるし、どうとでもとれない。

あと女×マネキン、だとあれ思い出した。「探偵ナイトスクープ」のマネキンに恋した女性とかっていう事件。確か後日訪問したら普通に結婚しててどうしてあの時マネキンを識別で来たか分からない・・・という話。

等身大の人形ですからね、マネキンって。

 

 

「老人会」pp.186-187

東日本の観光地に住んでいた女子小学生だったサチさん。下校中、突然知らない老人たちがカメラをむけてシャッターを切ってきた。

まるで動物を撮るよな不躾さに腹が立ったので睨みつけたところ「田舎の子は目つきがきついねえ、怖い怖い」と、聞こえよがしにつぶやいて老人たちは行ってしまった。p.186

後日土産屋の店員に効いたら、そんな老人達なんて実在しないですよ。くらいなオチかなぁ・・・と思ったら予想の斜め上を行くオチでよかった。まさかのスカッとジャパン系実話怪談だった。

でもそれを凌ぐのは、「うわぁ・・・」という恐怖。

多分体験者になったら間違いなくその夜は眠れない。し、一生のトラウマ必至。

すっきりと、うわぁ・・・。何とも言えない唯一無二の後味。

本書で二番目に好きな一篇。

 

 

「幽霊はいません」pp.193-198

家族が経営する事業の一つである遊園地に、小学生の頃はよく友達を連れて行った。なかでもお化け屋敷は本物の幽霊が出るという噂があって・・・?

女「残念、幽霊なんていません。あれは機械で動く人形なんですよ。それだけがあって、後は何もありません。幽霊がいるですって?とんでもないですよ、幽霊なんていませんから」p.196

不気味な女が出てくる一篇。お化け屋敷に行った小学生に対して「幽霊がいない」としきりに繰り返す様が、目に浮かぶようである。ファッションについても詳しく言及されているから、より生々しい。同時に、生きている人なのか?頭がパアになった人なのか?とも思うが、どうやらそうでもないらしい?では一体彼女は何。子供にしか見えないような存在ではあるが、目的自体も謎。なんのためにそこにいるの?そこで死んでたり近くで惨殺されてたり自殺してたりとかなら分かるがそれが一切ないということは、存在の母体は一体何。幽霊を否定したい存在といえば、やはり終盤で描かれているようにお化け屋敷の人形の幽霊なのか。いやそれだったらあの詳しいファッション描写は何だよ。デニムスカートとか、スニーカーとかどこで買ったって言うんだよ。ABCマートか?

口調も妙に癖になる。「幽霊なんていません」強めの断定の敬語は読んでいて、まるで耳に聴こえてくるかのよう。沢城みゆきくらいのアルトの無機質な声で聞こえた。「は」ではなく「なんて」と言っているのが良い。

この女のキャラクターがばっちりたっている、実話怪談。キャラクター小説という言葉があるが、これはキャラクター実話怪談。あの「猛ダッシュ&猛ピンポン野郎」と張れるんじゃないか。あわよくば、付き合ってほしい。

本書で一番好きな一編。

 

 

これは去年のハロウィン前にダイソーで買った。100円とは思えないクオリティに感動して買った。軽くて持ち運びも便利。
台所に置いて、普段のメメントモリは僕はこれですましてます。

 

感想を述べる前に、我妻先生の作品について日本が「一部稚拙な部分はあるが、」と述べた。本書ではそれが明確に示された一篇がある。

「夜を明かす」pp.178-182におけるp.179の描写である。頁前半では、出てくる人影は主人公のいるビルの、隣のビルの屋上にいたことになっているが、頁後半では「屋上に戻ると」と書かれていてその後主人公に接近している。主人公と同じビルの屋上にいたことになっている。また、人影の行動の描写があるが、何故かこの一篇だけ妙に下手。全然何しているのか分からない。

恐らく、本書自体締め切りにかなり追われた一冊ではないのかと推測する。

61篇収録されているにも関わらず、印象に残った話数は45篇収録の3巻より少ない。なんか知らんが、我妻氏にしては無味乾燥な実話怪談が前半ならなんだ印象。妙に詩的で不思議さがウリだから、湿り気が無いと何も心にこないのである。

 

 

目目ントモリィっ!!!!

 

以上である。それでも4巻も比較的面白く読めた。

次は5巻・・・最終巻である。気合を入れて感想記していこうと思う。

 

 

***

 

LINKS

しりーず。「見て下さる方の中には実話怪談本とか興味ない方もいるのかなと思って違うジャンルの本載せようと思うけれども、ついついめんどくてずるずる同じシリーズを連打して投稿してしまう」病にかかっております。どうやら不治の病らしいです。助けて。

 

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名著なので事あるごとに思い出す。4年前に読んだ本だけれども、今でも明確に思い出せるよ。

 

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20220420 相も変わらず、昔描いた記事のを編集したものである。

今思うと、「幽霊なんていません」は、早見沙織でもいい気がする。

我妻俊樹『奇々耳草紙 祟り場』-痛シーツにもほどがある。-

 

 

 

🍅

 

ご注文は、トマトですか?

 

 

 

 

我妻俊樹『奇々耳草紙 祟り場』(竹書房 2016年)の話をさせて下さい。

 

 

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【概要】

五感がねじれる奇妙で落ち着かない恐怖。我妻の実話怪談は気づけばすぐ後ろで黒い影が嗤う。

焼けたスーパーにいる人影「小火のスーパー」、クレーマー住人が伝えたかったこと「賃貸物件三題」、肝試しの場にやって来た警官の行動「廃墟の警官」など、踏み込んだら逃れられない恐怖の45篇。

裏表紙より

 

【読むべき人】

・1-2巻面白く読めた人

・比較的長めの実話怪談が好きな人

 

 

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さん・・・?

 

【感想】

我妻俊樹「奇々草紙耳シリーズ」第三弾★である。第三弾★

よく見ると表紙の真ん中の手もおやゆび人差し指中指で「3」を作っている風に見えなくもない。

 

1巻・2巻と大きく違うのは掲載されている話数。厚さは大して変わらないが、1-2巻が60篇以上収録されているのに対して、本書は45篇とある。

がーん。

短さ重視の僕としては残念だった。

やっぱ実話怪談≒短さ重視という人が多かったのか何なのか、4-5巻は1-2巻と同じく60篇越え収録されている。

なので、本書だけほんの少し異色と言えば異色。

ただまぁ全5巻ということを考慮すると、3巻だけ長めの実話怪談が多いというのはちょっと祟り場らしからぬ「山場」感があってバランスがいいのかもしれない。知らんけど。

ただまぁ収録数が少ないのもあって、印象に残った話は1-2巻と比較すると少な目ではあった。分母が少ないから自然と分子も少なくなる。自然の摂理である。

 

 

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以下簡単に、それでも忘れがたいい否、忘れたくない実話怪談のあらすじと感想をネタバレ恐れず書いていく。

特に🍅だったのは、「子供たち」「ホテル再訪」。

 

 

「犬が飛ぶ」pp.10-11

駐車中の車からいきなり火が上がる。通りすがりの散歩中だった小型犬が、そこに飛び込んでいき真っ黒になって死んでしまった。しかし・・・。

2篇目にあたる2ページの怪談だけれども、いつ起こってもおかしくない怪異で、なかなか気味が悪かった。

冷静に読むと、まず駐車中の車から火があがる、というのも怖いし、そこから手が伸びて犬を連れ去っていく、となればそれはもはや火事ではなくファンタスティックビーストの世界である。日本だぞ。

通勤時もしくは外出時、駐車中の車総てに火が上がる可能性があって、そこから手が伸びてくる可能性があって、そして僕を連れ去っていく可能性がある・・・と思うと怖かった。でもまぁファンタスティックがビーストできるならいいか。

 

 

「子供たち」pp.17-19

明け方、タバコを切らしてコンビニに買いに行くと子供達の声が聞こえる。

携帯の時刻を見ると午前四時四十四分である。p.19

の最後の一行が何とも言えない余韻を残す一篇。

あと、僕もよく明け方に向かいのセブンイレブンに行くので他人事じゃないな、と思った。

ちなみに明け方のセブンはなかなかたまらない。明け方にもかかわらず外国人の女性店員はそこそこ丁寧に接客してくれるし、時々トラックがとまっていて、そこからパンが仕入れられたりしている。外に出るとほんのり肌寒い。手前の交差点では誰も信号を待っていなくて一人、吹いてくる風に郷愁を感じながらあと数分で、このセブンイレブンは通勤通学する人々が寄ってくる、異国の店員も主婦の40代50代のおばちゃんにバトンタッチして、たったあと2-3時間で健全たるセブンイレブンになるのだわと思うと何ともいえない感覚に、胸がきゅっとなる。

そんな時間地にいないはずの子供たちの声が聞こえたらと思うと・・・怖いというか泣いちゃうかもしれないな。切なくて、懐かしくて。極まって。

 

 

「ホテル再訪」pp,38-40

信郎さんは十年ほど前に上京した時泊ったビジネスホテルが安くて駅に近くて便利だったので、最近ひさしぶりの上京に際してまた予約しようと思った。p.38

突然予想外の結末に、「え」となる一篇。「え」。要するに、並行世界ということだろうか。多分どこかで分岐してしまったのだろう。でも知らず知らずのうち分岐してしまったルートの記憶を所持したまま、僕達は生きている可能性が常にあって、そうすると記憶総てが曖昧模糊となり、昔会った人昔行った場所昔あった出来事全部確認したい衝動に駆られるべきなのだけれども、多分其処は何らかの本能で「まぁいいや」と思うように僕達の脳味噌は細工されている。

なんて思うのは僕だけ?

一歩間違えればアルミホイル案件なのでもうこれ以上は考えませんが。

世界は常に分岐している。

 

 

「トマト」pp.42-46

頭が痛いので頭痛薬を飲もうと思い、那美さんは薬箱代わりにしている空き箱の蓋をあけた。p.42

すると、トマトがあった。

トマトは、感染する・・・!!!といった一篇。

そもそも何でトマトなんだよ。あーなんかグロい系の比喩か?と思ったけれど、描写的にもどうやらリアルのトマトっぽい。え。なんでトマトが。こわ。アルミホイル案件か?

でもトマトって、結構高くて一人暮らしだとなかなか買えないので、毎日僕のところにほしいですね。トマト。そして毎日キューピーのイタリアンドレッシングドバドバかけてリコピン摂取するんや・・・!!!

 

 

「先輩の家」pp.51-57

先輩の家に行くと、部屋に三十代くらいの女が転がっていた。

敷居のところに裸足のつま先がそろっていて、見上げるとさっきの女だった。p.53

普通に怖い実話怪談。我妻先生の作品は謎を残して終わって、そこに余韻が・・・という感じのものが多いのだけれど、この話はシンプルに出てくる女が怖い。

特に先ほど挙げたp.53の一行では背筋が凍りつくかと思った。

加えて意味わからない現象が続く。え?なんでこどおじの先輩のご家族は談笑できるの?え?結婚したの?え?とりあえずそのシーツ悪趣味じゃね?

ただ終盤の年賀状の下りは怖いと言えば、怖いんですけど、カットしても良いような気がする。途端に読者へ怪談が逼迫し、よりリアル感が増す・・・ように思う。年賀状の展開含めて8ページにして長めにしてもいいが、後半カットして4-5ページ程に短く鋭くしてもいい気がする。若干、後半冗長感は否めない。完全に好みの問題ですが。

ただ我妻俊樹氏の実話怪談はリアル感よりかは、不思議さ・余韻・謎をワインがごとく丹念に丁寧に長く楽しむモノ。怪談新耳袋の中山氏や木原氏、川奈まり子氏等、本当にあったこと感を重視して楽しむような実話怪談蒐集家がこの怪談にもしめぐりあってたらどのように書き残すか。多分間違いなく一部カットがあって短くなるとは思うんだけど・・・それは少し気になるところ。

 

 

「カラテ」pp.62-67

外国でインチキセミナーをやっていた男のもとに、昔男からカラテを習ったという絶世の美女がやって来て・・・?しかしその美女に見覚えはない。

「気をつけて。この女にあんた、もう一度だけ会うことになるよ」p.65

会えればそれは死、ということなのだろうか。じゃあ会わずに不幸極まった人生送っている詐欺師範代(詐欺師と師範代をかけた超絶面白ワード)は、もう即座に会うべきなのでは。

辻褄が、合いそうで合わない。わかりそう、でわからない。

とにかく何かしら運命、とでも呼ばれるような大きい流れが関わっているの判となく分かるのだけれども・・・。

けれどそれが意味することはよく分からない。

まるで異国の言葉を聞いてる。みたいだ。

 

 

「賃貸物件・三題」pp.76-85

空室であるはずの部屋から物音がして、目が覚める。原因を突き止めるため、外に出てベランダの方を見ると、ベニヤ板が横に自然とずれているようだった。翌日、外国人の女が子供を連れてその部屋を訪れていた。

畳一枚より少し大きいくらいの板で、なぜか人間の形にくりぬかれた穴があいていた。p.83

賃貸物件「三題」なので、一話に3話収録されていることになる。1話目ではおばあちゃんのご冥福をお祈り申し上げた。2話目は一体何がしたかったんだよとツッコミたい。人と少しでも長い時間会話していたかったのか・・・?そしてこの3話目ときたわけだが・・・この話が結構奇妙で怖かった。

まずアパートの空室に、人型にくりぬかれたベニヤ板が置かれている、っていうだけでもう嫌だ。

どういうことだよって思う。どういうことだよ。しかも動く。どういうことだよ。

まだ死体とかダイレクトに子供の幽霊とかいたほうが怖くなかったけれど、このベニヤ板が得体知れない極まって怖かった。

そしてその翌日に訪れる女性と、最後に明らかになるちょっとぞっとする展開。どういう、ことなのだろう。空室に憑いた子供の幽霊が母親となる女性を求めて毎日もしゃもしゃ食っているということなのだろうか・・・。

あ、あと、人型のベニヤ板・・・。

昨日Gyao!で見た、水曜日のダウンタウン「30-1グランプリ」ジェラードンの2回戦目のネタを思い出した。海野はよ戻ってこい。

 

 

「俺が行く」pp.194-199

男子中学生達の帰り道、踏切前に黒い高級外車が一台とまっていた。そこにはひとりの老女が乗っていて・・・?

「お願いだから、線路に横たわってくださらないかしら」p.196

これも謎が深い一篇。え?老婆は幽霊だったってこと?にしては妙に実体伴いすぎているし、でも幽霊でないと説明がつかないような出来事が起きている訳だし。

うーん。

要するに老婆の孫か子供か中学生くらいの時にその踏切で亡くなってて、そいつの供養のために誰か死んでくれないか?といったことなのだろうか。「蹴飛ばした花束から白い花びら地面に散った」p.198とあるように、その踏切で誰かが死んだのは確かなようだし。

あとなんとなく、なんとなくだけどほのかにエロスを感じる。

 

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裏表紙色ついてるの珍しい。

以上である。

我妻氏の集めた実話は余韻のある謎を残す話が多くって、自然と僕達は名探偵○○○になってしまう。だからこそ、面白いんですけど。

ただまぁ収録本数が少なかったのもあって、刺さった話は1-2巻と比べると少なくなるが・・・ページ数を見てもらうと分かるが、特に後半は響く話があんまりなかったかなぁ・・・。

それでも「気づいたら読み終わっていた」、そこは変わりない一冊だった。

 

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1-3巻揃えるとライブ会場になる。
「とうとい・・・」とか言って泣いてるやつ、全力でコールしてるやつ、
手だけ挙げて盛り上がる奴をやってるやつ。

 

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「FKB」は平山夢明先生が編纂した書籍という意。
竹書房文庫の初期作品はだいたいこのチーム?団体?がついてる。

 

***

 

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キキララ草紙、奇々耳草紙の1-2巻の感想。

 

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20220415 同じく記事自体を書いたの半年以上前。

どうでもいいんだけど、本シリーズは全五冊ですが「奇々耳草紙」と正式なタイトルをかけている記事は一つもなかった。呪いか?

 

 

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我妻俊樹『奇々耳草紙 呪詛』-ペット霊園。-

 

 

 

🎈

 

🤡

 

 

 

 

ピエロはにっこりと笑って風船を一つ手渡してくれた。

p.94「赤い風船」より

 

 

 

 

 

一気読み実話怪談2冊目。

 

 

 

我妻俊樹『奇々耳草紙 呪詛』(竹書房 2015年)の話をさせて下さい。

 

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【概要】

不安と恐怖が腸(はらわた)を捻じりあげる!

帯より

 

日常の歪みと暗黒の隙間から覗く誰ともわからぬ視線の先、そして大きく開けられた口からとめどなく響くのは呪いか嘆きか・・・・・・。我妻俊樹が放つ、奇妙でよじれた怪異の断片をまとめた実話怪談集。

つきあいのない女が住んでいる隣室で、いきなり壁を殴る音が響きだすのだがその正体は?「腕が垂れる」

左目より一回り大きな右目だが、視力が極端に低い。それは毎朝会う女がやってきて・・・「女と右目」

父親の形見の時計を間違って捨ててしまった。

そんな折、疎遠だった母親が突然やってきて時計をを見せろというが・・・「父の形見」など全64篇収録。

ふと我に返った途端に襲ってくる悪寒と鳥肌、我妻ワールドを堪能せよ。

裏表紙より

 

【読むべき人】

・「梨.psd」先生の怪談などが好きな方

・不思議系の実話が読みたい方

 

 

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よく見ると、表紙に帯が描かれています。新しい。すぐやめたのか、この仕様は本書だけ。

 

 

【感想】

本シリーズ1巻で述べたように、メルでカリって5冊一気読みしたうちの2冊目である。「呪詛」だって。いい感じ。

表紙もよく見たら、捻じりあがった腸が描かれていて、「よっ!!いいぞ!!竹書房!!」となった。

表紙の人もそう言ってんのかもしれない。

 

 

 

 

 

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表紙の人「よっ!!いいぞ!!竹書房!!」

 

 

 

気付けば実話怪談系は、竹書房文庫(現在は竹書房怪談文庫)が圧倒的になっちゃいましたね。平山夢明黒史郎等著名な怪談作家が参加しているのが強い。その上「これは」と思った作家には何冊も書かせることで、神薫・小田イ輔・つくね乱蔵そして我らが我妻俊樹のように、中堅どころもしっかり固めつつあるのが強い。

一昔前は角川春樹事務所「ハルキホラー文庫」が結構このジャンルでは幅を利かせていたと思うんだけど、今はもうすっかり鳴りを潜めてますね。

角川ホラー文庫も中山市朗「怪談狩り」シリーズ、黒木あるじ「全国怪談」「無惨百物語」等ありますが、ホラー小説がメインですよね。実話怪談もうちょっと出してもいいと思うんですが・・・・。

まぁ実話怪談界で竹書房が天下とってるのは、気合でしょうね。気合。

というのも、角川ホラー文庫」「ハルキホラー文庫」に対して、当時は竹書房文庫」竹書房の文庫レーベル全体で、この実話怪談に取り組んでいるんですよね。

出版社の片手間のホラーレーベルとは訳が違う。

ていうか自社の文庫全部実話怪談。今は竹書房怪談文庫」と名前が変わっているものの、毎月刊行されるのは実話怪談文庫本ばかり。

冷静に考えるとなかなか頭おかしいので、ポプテピピック然り爆破されて当然の指定暴力団竹書房なのである。

ちなみに、そんな暴力団が主催する、実話怪談を毎月募集する「怪談マンスリーコンテスト」があり、過去のグランプリ作品が数多く掲載されているのだが、良作多くて良いです。ぬるいネット怪談に飽きた人にはおススメ。最近で面白かったのは、歳末の魚屋の風習の話かなぁ・・・。

 

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以下簡単に、特に良かった実話怪談とその感想を述べておく。

ネタバレも辞さない。

一番ぐっときたのは「ペット霊園」。圧倒的。

次点は「歯医者へ」

 

 

「シンク下」pp.22-23

徹子さんはシンク下で発券した大きなゴキブリの死骸を片付けられなくて、何日も見ないふりをしていたら夢にゴキブリが現れた。p.22

その夢がシュール過ぎる。どういうことやねん・・・。

しかもゴキブリと握手するとか、どういうことやねん・・・。

からの目を覚まして迫りくる鮮やかな現実の怪異が、強く心に残った一編。

要するに死体の後始末も人間に任せたいってことでしょ・・・?そんな最後にどうでもいい「ありがとう」みたいな恩返し、いらんねん・・・。

とにかく家はいらないで欲しい。それが君に出来る最大の・・・「ありがとう」やねん・・・。

 

 

「歯抜け」p.58

勝治さんの部下だった男は酔っぱらって行きずりの人間と喧嘩した翌日、出勤してくるとはが五本くらい亡くなって酷い顔になっていた。p.58

からのまさかの結末。

この実話自体、話の重要な部分が「歯抜け」しているような印象を受ける。

その分、1ページにも関わらず僕に強い打撃を与えた一編。一体どういうことだってばよ・・・。要するに行きずりの「人間」じゃなかった・・・ってこと?

 

 

「炎昼」pp.81-82

末に遊びにいた姪の顔を思い出し、あの子と同じくらいの子かもしれないと胸が痛む。p,82

から、恐らく怪異に襲われたのだろう。寂しいから、自分を気にかけてくれた人間にふっと寄り添いたくなっちゃったのだろう。展開自体はよく分かる。

その「寄り添い方」が、結構独特で、不気味だった。物理的にもツイてっちゃうんだ・・・うわあみたいな。

けれど結末の、ささやかなる微笑ましさには、ほっとする。我妻先生にしては珍しい、ちょっと感動系の一篇。

あと「炎昼」というタイトル秀逸だと思った。クソ暑い真夏の日中が用意想像できるため。

 

 

「赤い風船」pp.94-98

砂場で遊んでいると、少し離れた場所に、色とりどりの風船を頭上に雲のように浮かせている人が立っていることに気づいた。p.94

エドワード・ゴーリー。IT。

のような、ロマンチックなピエロ像がざらりとした感触を残す実話怪談。やっぱピエロに碌なヤツはいないな。ピエロには死の匂いが溢れてる。

後半、ホームレスが亡くなったことが明かされるが、やっぱりその人はピエロなんかではなくて、風船だったってことなんだろう。

哀しいが人が亡くなる瞬間てきっとこうなんだろうなと思う。

・・・さようならさようならありがとうありがとう、おげんきで。

ピエロの手を離れて、ふわりと飛んで、遠く遠く、小さく小さく、風船が姿を消すまで少年は、ずっと目を離せなかった。

 

 

「足を落とす」p.99-100

終電で帰って来た市雄さんが近道をしようと思って夜中だし、ばれないだろうと畑の中の道でもないところを突っ切ろうとしたら、何歩目かで右足がずぼっと土中に落ち込んでしまった。p.99

からの、後半の展開には思わず合宿免許、ワオ!!になった。

2ページだからこその鮮やかな切れ味の実話怪談。まぁちょっと汚い逆シンデレラと思えば・・・まぁ・・・。

「詰まっている」p.100と、最後の一行が現在形なのも良かった。

 

 

「池のほとり」pp.108-111

夜、滋郎さんが池のほとりの遊歩道を散歩していると対岸に青白い火の玉が浮いていた。p.108

意味が「わからない」ように書かれているが、要するに女の幽霊が、滋郎さんにホの字という話なんだと思う。誰だって自分の顔が浮かぶ火の玉をじっと見ている異性がいたら、意識せずにはいられないと思う。だって火の玉、ってことはある意味裸より裸ってワケだし。

「あれは私です、」p.111ってわざわざ教えてあげたくなるのは当然の理、とも思える。ある意味わざわざ脱いでるわけだし。

 

 

「ひげ人形」pp.119-121

その際夢にその〈ひげ人形〉にそっくりの男が現れ、しつこく求婚されたのだという。p.119

奇妙な人形の奇妙な話。僕も個人的にドールが趣味なので、とても印象に残った一編。

何度も求婚したり、「ごめんね」とでも言うように姿を変えてわざわざ指輪を持ってきたり・・・行動もどこかユーモラスで愛らしい。

にしても気にかかるのは、人形を捨てた日の夜に、土下座して非礼を詫びて殺すのだけはがまんしてくれ、と泣かんばかりの声でp.120訴えたこと。

やっぱり目と口があるものは、少なからず魂があるものなのかしら。捨てられたくないと思うものなのかしら。〈ひげ人形〉のひげの毛が、本物の人間の毛で、そこに魂が宿っていた、という可能性もなきにしもあらずですが。

 

 

「ペット霊園」pp.131-139

単身赴任先で、散歩をしているとよく道を聞かれた。美術館への道も多かったが、ペット霊園への行き方を聞かれることも多かった。しかし近くにそのような施設はない。帰宅するとポストに入っていた投げ込みチラシには以下のように書かれていた。

〈ペット霊園建設中〉p.133

本書の中で一番怖いし一番好き。比較的長めではあるが、紙幅を割く程の価値がある実話だと僕も思う。

まず〈ペット霊園〉というのが怖い。墓じゃなくペット。墓建設中だったらダイレクトに怖いけど、ペット、というところが絶妙に距離感があって気持ちが悪い。

そして単身赴任先にも、家族が住む自宅にも同じ旨のチラシがポスティングされる現象。人間なのか幽霊なのか生きているのか死んでいるのかマジかイタズラか。相手の実体自体がいきなりつかめなくなってそれも怖い

終盤もびっちり恐怖は続く。体験者が飼ってきたペット・・・猫3匹犬1匹、金魚とミドリガメ、全て短期間で行方不明になっている。ええじゃあ相手は幽霊なのか。何なのか。

不気味な上に深まる謎。

凄く好きな一編。

投げ込みチラシ、見ずに即座に棄ててるけど、こんなことも起こりかねないからやっぱり見ていた方がいいよね~。

 

 

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「二十歳の死」

信介さんの高校時代の親友Kは二十歳のときにバイク事故を出なくなり、その一年後の同じ日にKのおとうとがやはりバイク事故を起こして二十歳で亡くなった。p.144

法要後のファミレスの集まりで、其処に参加していた霊感の強い久保という女子が、この現象について語ることには・・・。

頼む!!なんちゃって霊感であってくれ~~~!!を祈らざるをえない一篇。「お前の親友死後こうなってるで!!」と言われる話なのだけれど、その姿がなんとまぁ・・・。

有名なネット怪談「あなたの娘さんは地獄におちました」もそうだけれども、こういう大切に想っていた人が死後××になりましたよ~系って独特の後味があるよね。

そーいう話、凄い厭だ。凄い怖い。そして多分凄い好き。

でも絶対体験したくない実話圧倒的ナンバーワンですね・・・・。

 

 

リュウジの家」pp.163-164

三十年ほど前、菱野さんが子供の頃、友達のリュウジの家に電話を掛けたら知らない人が出た。p.163

何だよ・・・ほのぼの系かよ・・・好きじゃないけどまぁ嫌いじゃないぜ・・・からのまさかの後味の悪さにええ・・・になった。

ええ・・・どういうことやねん。

声の主はてっきりリュウジの亡くなった父親かそれとも先祖かと思ってた矢先の出来事だから、あまりの落差にクラクラした。ハッピーエンド、とみせかけて・・・・系は何度読んでもいいものですね。

 

 

「プレハブ」pp.165-167

絶望した美穂さんがバーで泥酔して店員に愚痴っていたとき近くにいた若い男が「よかったらここに行ってみてください」と紙を置いて店を出て行った。p.165

我妻先生にしては珍しくけっこう直球にホラーな一編。最後までひえっ・・・となる。にしても何でマネキンはこんなにも怪奇現象と相性がいいのか。

どこで愚痴をこぼしたら、このプレハブ小屋に行けるのだろう。主人公のように、再訪する愚行は犯さないから、どうやったら行けるのか知りたい。

あと、絶対これ、「あなたの上司は地獄に落ちました」ね・・・。

 

 

「犬を叩く」pp.170-171

理不尽な上司と顔そっくりの犬が夢に出てくる。叩いてイジメていると翌日ケガをして出勤してきた。

終盤がとてつもなく怖い一篇。

夢、というのは一番身近にある宇宙。

毎日体感する宇宙。

しばらくネット怪談界では「猿夢」が胡坐をかいてましたが、もっともっと面白い夢怪談出てきてほしいわね。

あと、どうでもいい話ですが、夏目漱石夢十夜」読みてぇ~になってからかれこれ10年たとうとしています。

 

 

「上陸者」pp.172-173

海岸で遊んでいたら、海からボロ布をまとったような人が「上陸」してきた。その正体は。

正体、意外だった。絶対人間か妖怪化と思ってた。違った。というか人間食べたらそんな知恵がつくってたまったもんじゃないな。

あとこの前読んだ漫画。田口翔太郎「裏バイト 逃亡禁止」水族館の話思い出した。ざっくり、あれの実話版って感じ。

 

 

「魚はない」pp.185-189

来年喜寿(七十七歳)を迎える篤夫さんが中学生の頃、四つ下の弟とと近くの川へ遊びに行った。p.185

こちらはカラスヤサトシ「いんへるの」風実話。ひょおおおひょおおおお。

こういう妖怪譚実話は単純に興味があるので、とても印象に残った。僕も是非こういう日本古来の現象と遭ってあわよくばその恩恵に授かりたいものだけれども、なかなかどうして遭遇しない。やっぱり令和にもなると、時代と共に消えていくのかしら。

まだ山に、この魚を求める妖怪は、いるのかしら。

ひょおおお。ひょおお。

ちなみに「いんへるの」そういえば2巻!!と思ったら、まさかの電子書籍でしか出てないという・・・どうしてや!!!講談社!!!どうしてや!!!!講談社ァ!!!!

「裏バイト」「僕が死ぬだけの百物語」とホラーを小学館が席巻していて悔しくないんかぁ!???

 

 

「山間の町」pp.190-191

「何だかここの牛、みんな怖い顔だな」p.191

北海道を思い出した。

僕の父親の実家は北海道の北部の田舎町で、そこまで行くのにフェリーの港がある苫小牧から、ずっと山間の道を車で走らせる必要があった。。度々町っぽいものが現れてはまた山になり、町、山、人里・・・といった具合。道路は太く一本線で父はそれをただひたすら真っ直ぐに走らせていく。

時々一気に山が拓けて、牧場が見えることがあった。そこには悠々自適に牛が放たれていてもさもさと草を食べている。

その牧場のはるか遠くに、この話同様紫色の奇妙な建造物が見えても、おかしくないな、と思った。

15歳の時に祖母が亡くなってから、北海道に家族で行った覚えはない。今もし家族で行くならば、60近い父親ではなく自動車のディーラーになった妹が運転担当するのかもしれない。

怖い、よりかはちょっとノスタルジックな気持ちになった。

 

 

「歯医者へ」pp.195-207

気が付いたら山塚さんは、十年後の妻と娘と共に暮らしていた。

雑然としてそれなりにくたびれた我が家に、それなりに老けた妻と自分がいる。p.204

クライマックスに収録された奇妙な長編実話。

創作か、と思ったが、創作にしてはどうも辻褄が合わなすぎる。

だからやっぱり、実話ベースなのか、と思ったけれども、現実にしてもどうも辻褄が合わなすぎる。

途中記憶があいまいになり、何ルートかに記憶が分離したようではあるが、主人公が感じたその奇妙な感覚がそのまま、読者の肌にぞぞぞと這う。

歯医者へ。

歯医者へ行けば、全てがわかるかもしれない。

歯医者へ。

歯医者へ行けば、今の辛いこの現実も早送りできる?

歯医者へ。

歯医者へ。

 

 

「漫画を捨てる」pp.211-219

克之さんのお姉さんは七歳年上で、彼が中学生のときには結婚して家を出ていた。p.212

その姉が置いていった漫画にまつわる一篇。ラスト。恐らく呪われたのは主人公ではなく姉の方と思われる。結構怖かったけれど、主人公の優しさで物語はなんとか、まぁるく幕を閉じる。

高校時代からブックオフで、今現在は主にメルカリで、中古漫画を躊躇い無く買う僕にとってはなかなか怖い一篇だった。買ったなかにこんなん一冊でも入ってたらと思うと怖すぎる。というか、たまった蔵書自体も迂闊に捨てられないじゃないか。

一度、300冊余りをブックオフに総て売ったことがあるけれど、やっぱりブックオフの海ですくった漫画はブックオフの海に還すのが正解なのかもしれないな。

 

 

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腸を捻じり上げる、とありますが、多分これが腸(はらわた)?

 

以上である。

なかなか今巻も面白かった。

特に後半に、面白い話が詰まっていた印象。特に本書は「赤い風船」「ペット霊園」「歯医者へ」と鮮烈なイメージを残す週稲奇妙な話が多かった・・・と思う。

前半は「おや・・・やっぱ一巻が至高ってやつか?」と思ったら全然そんなことはなかったでござる。

 

 

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1巻と2巻並べると、なんだかいちゃついててとてもいい感じ。
ぜってぇ本書は「大好きだよー!!!」とか叫んでると思う。
それを無視する1巻・・・。
もうこれ半分ラブコメだろ。

 

 

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前巻

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我妻先生の参加されてる瞬殺怪談シリーズの感想

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文中で上げた漫画の感想

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20220413

半年以上前になりますね・・・記事書いたの。寝かせすぎだろっていう。

「ペット霊園」は、副題そのまま掲載しましたが、このシリーズ(全5冊)を通しても一番好きな怪談です。我妻先生の作品の中でもトップ3に入るくらい。

本当に怖い、というか不思議、というか底知れない、というか。

これが掲載されている、という一点のみで本書は特におすすめ。