小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

此元和津也『セトウツミ①』-おもろいてか尊い。推しが好きな漫画なので。-

 

 

 

 

 

人間の、会話だ。

 

 

 

 

 

 

此元和津也『セトウツミ①』(秋田書店 2013年)の話をさせて下さい。

 

 

 

 

【あらすじ】

この川で暇をつぶすだけのそんな青春があってもええんちゃうか。

まったりゆったりしゃべるだけ。

関西の男子高校生、瀬戸と内海のクールで案あ雨でシニカルな放課後トーク7編。

 

裏表紙より

 

【読むべき人】

・会話漫画が好きな人

・血の通った会話漫画が好きな人

・「ODDTAXI」好きな人:脚本が描いた漫画の為

・シニカルにかまえちゃう人

 

 

 

【感想】

タイトルだけは知っていたし、本書が面白いことも知っていた。

じゃあなんで今このタイミングで僕が入手して読むに至ったのかというと、我らが推し・櫻坂46の大園玲さんが好きな漫画で挙げていたからだ。

なんと!!と思った。

なんとなく知っている面白い漫画、から聖書に本作が変わった瞬間である。

早速まぁその、ここだけの話、メルでカリった。本当は大園さんの言葉の影響を世間に知らしめるために新品を購入したいが僕は一人暮らしの極貧フリーターであり身分にあった金額で購入するほかなかったのである・・・ううう、大園さん、こんなしょーもない僕を赦してほしい。

 

 

大園玲さん。この前の雑誌の購入特典のポストカード。
時折見せる三白眼がたまらない。

 

結論、結構面白かった。

ど・はまりした訳では無いが、なかなかこれはこれで良いもの読めた、と言った印象。

 

会話劇ものである。だいたいの会話劇漫画ゆうと話し手は美少女女子高生(二次元)できわどい下ネタとかあるあるネタとか恋愛ネタとかばんばんぶちかましていくギャップを楽しむモノ、という傾向にあるが本書はそうではない。

話し手は男子高校生(リアル)、話題はシュール。

男子高校生(リアル)が河原に座って延々と、ぼつぼつと会話するだけの話である。

 

じゃあ何が面白いのかというと、血の通った会話。ここにあると思う。

タイトルにもなっている瀬戸も内海も結構リアル寄りに描かれているが、その中身も結構リアル。てか本物。好きな女の子の話とか、やな先輩の話とか、塾とか、勉強とか、夏休みとか、親の離婚とか。

血の通っている、というか、どこかにいそう、というか、いやいただろ2010年前後に。

瀬戸。(セト)馬鹿ではあるが、度を過ぎた馬鹿ではない。相手を思いやる心を持っているし、気になる女子へのメールひとつでもんもんと悩むし、自分の馬鹿さを恥じている部分もある。

内海。(ウツミ)ナチュラルに馬鹿の瀬戸を見下す「節がある」。勉強が出来て塾に通って頭がいい分、色々知っているし考えているから何事もシニカルに捉えがち。ちょい早めの大2病。けれども喋り相手である瀬戸のことは彼なりに大切に想っている。

いそう。てかいる。

毎回爆笑下ネタトークを繰り広げる色髪美少女は絶対いないけれども、この二人は、いそうてか、いる。

東京都内で言うと絶対多摩か日野。静岡県で言うと安倍川付近。に、いそうてかいた。絶対いた。

帯に「実写化」とあるのも頷ける。アニメよりドラマのが手っ取り早い。

 

そして櫻坂46・大園玲さんが本作を好き、というのもなんだかよく分かる。

彼女は独特の言葉遣いをする。けれど一つ一つが丁寧。比喩、特に暗喩の使い方が巧み。接続詞助詞の使い方は至って自然。ブログは特に詩的な表現が多いが、どうやったら相手に気持ちが届くのか計算したうえでの表現。聡明。言葉を慈しむ人である。

本作も二人の織り成す会話全部にきちんと感情がのっている。台詞、表情、コマ全て。瀬戸と内海に、しっかり寄り添って描かれている。視点が同じ。作者の中で、二人はきちんと一人の人間として存在する。

彼女の言葉を大切にする姿勢と、作者が二人の会話を描写する姿勢の間には、共通するものが多く存在する、気がする。うまくいえないけど。

通じる部分が多いから、本作は彼女にとても響いたのではないか。

まぁ他にも、物事を一歩下がって見ている感じとか、言葉の間合いとか、冷静さとか、ギャグのシュールさとか結構大園さんを思わせる部分が多い。けど本作と彼女が共鳴したのは上記の理由が主だと思う。

 

 

 

 

以下簡単に、各話の特に良かった会話・台詞と感想を書いておく。ネタバレを恐れない。

好きなのは「マジ雲は必ず雨」。マジ雲って何。

 

 

「マジ雲は必ず雨」

瀬戸「今度うちの親離婚すんねん」

内海「・・・・・・・・・」

瀬戸「さきより笑みこぼれてもうてるやん!」

内海「結末が意外過ぎるねん てっきり猫死んだ話かと思うやん」p.10

神妙な顔とは、からはじまる会話なんだけれども特にこのくだりは滅茶苦茶笑った。オチが意外過ぎる。え、読み切りでまさかメイン二人の内の一人の親が離婚するなんて誰が予想できようかいやできまいよ!!

しかもこの「・・・・・・・・」の時の内海の顔がまた何とも絶妙なのである。よくお前耐えたな。

この話は、セトウツミが連載決定する前の読み切りである。そりゃ連載決定するわな・・・ってくらいめちゃくちゃ面白いのでおススメ。

オチもしっかりついていてほろり、とさせられるし。

 

 

第1話 ムカーとスッキリ

内海「普段の気持ちの積み重ねが過去を作るのであって普段笑ってない場合・・・過去も面白くなかったということになるんちゃうか?」pp.43-44

ふっけぇ~・・・!深い。内海は塾に通っていて頭がいいのでこういうことを普段から考えているのである。すっげぇ。高校生で達する域じゃねぇだろこれ。

それを死んだ目てぽつりとつぶやくのである。どこで悟りを開いた。

内海はなんか早稲田の匂いがするな!

この話は、バルーンアートのピエロが出てくるのですが、まさかの完成品の形状にはビビったね。え、そうなる?え、どうやって?うますぎね?

 

 

第2話 アメとムチ

内海「こないだのオッサン先払いで払うて約束してたのにゴネだしてほんと最悪ー」

瀬戸「そもそものキャラ設定おかしいねん 樫村さん援助交際してへんねん タバコも吸うてへんし」p.60

樫村さんと言うのは、瀬戸が片想いしている実家が寺の女子高生である。

瀬戸が彼女へメッセージを送るけどないようがないよう、という回である。

そこへぶちかました内海のボケがこれまた秀逸。分かるわー。こういう内輪ノリ。ショーもない演技。めっちゃおもろーい!訳じゃないんだけどくすってきちゃうんだよな。

ちなみに、瀬戸が樫村さんに送るのはあくまでメール。ラインではない。刊行されたのは2013年・・・まぁ当時大学生の僕がLINEをDLしたのが2012年だから・・・確かに高校生はギリギリ、メールだったのか?

無論僕が女子高生の時もメールだった。

樫村さんのスカートの丈も今と比べて短いし、がっつりスクールバッグを肩から下げている。僕達の時代イケてる女子はみんなそうだった。

ノスタルジー、くすぐられる。

 

 

第3話 羽根と心根

田中くん「弟がそろそろ帰るから大丈夫や それよりこの試合を見届けたい」

内海「かっこええな 田中くん」

瀬戸「忘れへんよう手がポイントのままなとことか評価するわ」p.77

瀬戸と内海のバドミントン対決である。審判に呼ばれた男子生徒が田中くん。センター分けのガラケー持ちである。

家族の緊急事態をケータイで片手で見守りつつも、もう片方の手ではしっかりと点数をキープしている。スマートフォン主流の2022年では出来ない偉業。それをたたえた2人の台詞である。

こういうちょっとしたことにあえて心意義を魅せたり、またそれを称賛したりするような雑談、ここしばらくしていない。僕は28歳フリーター喪女。地方在住。中高大学ノン友達はみんな東京へ行ってしまった・・・。孤独である。

インターネットが広まったとはいえど、LINEの知人の通知は今日もゼロ、LINEしたところで、「既読」がつくし、あれはあれで面倒。インターネットで知り合っても、結局は顔も知らない名前も知らない人にそこまで砕けるにはかなりの時間がかかる。

あの頃は、よかったなぁ・・・。

バドミントンやりたい。

後半、タイトルの「心根」・・・思いやりに関する展開が続くのだけれども、簡単に言うと瀬戸がただただから滑りして痛い目を見る話で、もうなんか胸がきゅっとなる。瀬戸、お前は悪い奴じゃない。ただちょっと単純でバカなだけなんだ・・・。

 

 

高校時代はよくローソンにたむろしてた。
ホットスナック持って。

 

第4話 威嚇と擬態

瀬戸「フシがある選手権や」

内海「なんなんそれ」

瀬戸「出たほら」

内海「何が」

瀬戸「内海は最近こういった提案にめんどくさがるフシがある」p.94

要するにどれだけフシをつけられるか大会である。どこら辺が選手権なのかは分からないが多分瀬戸も分からないので問題はない。

途中、アフリカオオコノハズクというミミズクが出てくる。掛川花鳥園の看板鳥のアイツである。灰色で目がオレンジ色の。その鳥を使ったオチが秀逸。アフリカオオコノハズク知っている、且つそれを連想する地点で鳴山はいい不良である。(類義語:町を守るヤクザ 等)

後半、瀬戸が時計を見る下りがある。スマートフォンである。嗚呼確かにそういえば、僕が大学2年くらいまではスマートフォンガラケーが混在している文化だったなぁとしみじみ思う。もう今じゃあ、あえてガラケー使ってる学生なんて天然記念物だもんね・・・。

ちなみにアイフォンだった。高校生のスマホ≒アイフォン。この公式は10年たっても変わらない。

 

 

第5話 踏んだりと蹴ったり

瀬戸「あ!そうや 借りてたCD持ってきたで」

内海「ああ「ハラダ親子」の?良かったやろ?」

瀬戸「めっちゃ良かったわ。2曲目の「自制なき母の紙皿消費」とか」

内海「息子の方が歌詞欠いてるってのがすごいよな」

瀬戸「俺らと同い年とは思えへんわ」pp.105-106

普段瀬戸に対して冷たい内海が、終盤瀬戸にふっと感謝の気持ちを伝えるのがアツい回なのだけれども、僕的には使い古された「いつもいてくれてありがとう」的展開よりも、この会話にぐっときた。

タメの凄い奴っていうのが、意識され始める高校時代。

中学もまぁタメの凄い奴、薄々意識してた。でも指で数えるほどしかいなかったし、その大半がテレビに出てる子役。僕(1993年生まれ)でいうと、神木隆之介とか志田未来とか。まぁちょっとひねると元AKBのまゆゆとか。

でも高校になると一気にぶわっと、同世代で凄い奴が出てくるんだよ。しかもそいつらは自分で作って自分で発信する。

きゃりーぱみゅぱみゅ彼女が出てきた時はもうびっくりした。一つ上、なのだけれども、ほっとんど同年齢でこんな自分の世界を持っていて発信して且つ日本中で有名になるなんて、凄い。考えられない。ぱみゅぱみゅなんて言葉どんな生き方したら思いつくんだろう、東京だ。東京。そうだ、東京。きっと渋谷で毎日ミニスカートはいて109いってスタバのフラペチーノのんでクレープ齧ってたらそういう発想に至るんだろうアー!!!羨ましい!!僕もぱみゅる人生になりたかった!!

と思ったものだった。

同世代で、憧れ。

同世代だけど、遠い・・・。

ちなみに、大学入って間もなくきゃりーぱみゅぱみゅの出身校が渋谷近辺ではなく立川にあることを知る。東京都とはいえ、立川単体で見ると静岡駅前とそう変わらない。

どこにいるか、よりも本人が何をするか、が大事なのに僕が気づくのはもう少し後のことである。

 

 

第6話 先祖と子孫

内海「うちほら樫村さんとこのお寺の檀家やからお盆に少しだけな」

瀬戸「なんなんさっきから お盆とか日本の伝統的文化丸出しの」p.122

塾にも通い2年生から夏季講習そして進学を見据えている内海家。小綺麗な一軒家、そふぼのいえは地元の近く、ちなみに金を持っているタイプの老人。父親は恐らくそれなりの大学を出ていてそれなりの大規模な会社に勤めてる。

猫の餌で親が離婚寸前、兼じいちゃんが常時行方不明の瀬戸家。ちょっと古い一軒家、もしくはアパート。畳の部屋が絶対ある。母親はパートと介護、父親はリーマン。多分祖父母4人揃ってはないと思う。どれか死んでる。でも近所の子供と仲良く育ったし、それなりに幸せ。別に貧しい暮らし、とかそういうわけではない。

同じ「中流階級」に属する2人でも、全く違う家庭がうっすら見える、ぐっと来るやりとり。

 

 

第7話 親方と裏方

内海「じゃあウインザーノットやろか」p.138

ネクタイの結び方の話である。親戚の結婚式があるのにうまく結べない瀬戸に内海が古拙丁寧ユニークに教える話。ぶりーん、純ぶりーん、逆ぶりーん。親方・裏方等説明をする時の言葉使いがめちゃくちゃ面白い一話。

その説明をする前に、ぼそっと言った内海の台詞である。ウインザーノット、というのはネクタイの結び方の名前。

分かる~って思った。こういう無駄な知識、何となく覚えてて、つい人の前で言いたくなっちゃうんだよね。でも僕は言いません、28歳でそういうことばっかすると嫌われると気づいたので。

じゃあそういう知識って、何のためにあるの?

披露してドヤ顔する以外の使い道は?とか思っちゃう。

 

・・・まぁ、そういう言葉がある、それだけのことや。

 

僕の中の内海が言う。

 

いやでも、そんなんだったらない方がええんちゃう?

 

僕の中の瀬戸が言う。

 

うるさいわ、あるもんあるんやしょうがないやろ。必要なかったらもうとっくに自然淘汰されてるはずなんや、2022年やぞ。21世紀やぞ。

 

それくらい俺かて知っとるわ。なめとんのか。

 

なめとらんわ・・・・。

 

・・・。

 

・・・。

 

 

 

 

 

 

 

描き下ろし

瀬戸「お前勝ってコメだけ食べといたら生きられるけどデミグラスソースのハンバーグとか食べるやろ」p.160

食虫植物の話でこれが出るのだから、瀬戸というのは面白い馬鹿なのである。いやいや誰が食虫植物の好みなんて気にすんだよ。てかなんだよその思いやり。

普通考えへんやろ、普通。

そういう、普通に塗り固められて生きてきた内海だからこそ、瀬戸の存在は大きかったんだなと思ったり。

 

 

 

以上である。なかなか面白かった。

会話がだらだら続いていく感じ、爆発力もないしときめきもないし胸キュンもないけど、このだらだら続いていく感じは人生に似ている。

 

大園さん、恐らく読んだのは中高生の頃だと思うんだけど、お兄ちゃんがいるから、やっぱり勧められて手に取ったのかなぁ・・・。それとも2013年・・・まだ幼き中1-2だった大園玲ちゃんがにぃにの部屋に忍び込んフィーリングで手に取った一冊がこの作品だったのかなぁ・・・いやはやそれとも本屋で見かけて・・・?

ああ・・・当たり前だが、鹿児島県(大園さんの出身県)、九州のさいはてにも「セトウツミ」は流通していて、数年前大園さんはそれを読んでくすくす笑っていたのだ尊い恐らくクラスの中心・・・ではないであろう彼女が、周囲の親しい友達にだけ進めて貸し借りとかなんてしちゃったりしたのかなぁ多分ファンに向けたメッセージアプリで勧めたのがお初ってことは無いと思うんだよなぁカシコで慎重な彼女のことなので。そして数人の間でセトウツミブームが起きて、その頃実写化がが決定して、あ、大園さんが本作を知ったのはもしかして映画ああくそ!!!僕は横浜で塾講師してて映画のことなんて全く知る由もなかったくらい追い詰められていた嗚呼ああの頃鹿児島、少しでも九州に想いをよせていたら以下略。

 

 



 

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LINKS

こういうたわいもない会話のなかに埋もれた言葉を拾い集めた随筆の感想を昨日upしました。

 

tunabook03.hatenablog.com