小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

田口翔太郎『裏バイト 逃亡禁止2』-かけがえのない友達がいるということ。-

 

 

楽しい楽しいアルバイトォ!!!!

 

 

田口翔太郎『裏バイト 逃亡禁止2』(小学館 2021年)の話をさせて下さい。

 

 

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【あらすじ】

様々な裏バイトに参加し、毎回、命からがら報酬を得てきた黒嶺ユメ白浜和美

命とは、斯くも軽いものなのか。

尊厳とは、倫理の中でしか価値がないのか。

全てを擲ち(なげうち)掴んだ者に、想像を絶する絶望が寄り添う。

※本作品は心身に多大な影響を与える可能性がございます。閲覧は自己の責任において、充分に注意して行ってください。これによって所汁いあなる損傷について、一切の責任を負いかねます。

裏表紙より

太字にした二行は、何気なく2巻本書の本質をついてると思う。

 

【読むべき人】

・ホラー好き

・ホラー小説好き:多くのホラー漫画が絵でみせるのに対して、本作品はストーリーの方がやや重点的に大切に描かれているのかなと思うので。実際僕もどちらかというとホラー小説・実話怪談等文字媒体が基本なのですが、本作品は漫画好きじゃない、そういう文字媒体のみ愛する人にも自信をもって勧められます。

 

 

 

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【感想】

もともとおもしろいと聞いていた1巻読んで、「こいつぁ面白いと聞いていたが期待以上に面白れぇぜ!!最高だ!!!裏バイト、最高!!!裏バイト、最高!!!!!ユメちゃん、最高!!!ユメちゃん。最高!!!!!」と叫んで部屋中踊りまくった午前三時から数日後・・・さっそく読みました、2巻。

1-2巻駿河屋の通販サイトで購入したのですが、もうね、1巻読了後2巻読むのが楽しみ過ぎて、本当に、やばかった。家帰ったら何やろう2巻よもう!!ああでも家にある未読の裏バイトがなくなっちゃうよ~し!!1巻の感想書いたら読もうあああ~~~1巻の感想書くのめんどくせぇええええおじさんのヌードとかどうでもぃいいいなんでこのページだけ妙にエロいんだよ何なら女体よりエロいの何なんだよぁああああ!!!!(1巻収録第1話最後のページ参照)

発狂しそうだったね。僕の表バイト先のレンタルコミックのところに本作置いてなくて本当に良かった。置いてあったら返却作業する際に絶対本棚に隠れて読みはじめるので。

 

2巻は、巫女・神様・お人形・水族館と結構怪談スタンダードのものが多く取り上げられています。まぁ・・・水族館はちょっとちがうか。1巻の山中のリゾート・運び屋・ビル・心理実験の題材の方が変わり種感はある。

でも、面白さは1巻同様そのまま。めちゃくちゃ面白いし、怖い。

特に「絶望」、裏表紙にも書かれている熟語ですが、ここに関しては本書の方が間違いなく上をいく仕様になっています。最後のおまけ漫画をつけるところが最高に憎いですね。なんたる悪趣味。最高。

あとギャグ。筆者の自画像から、もともとギャグセンたけぇ人なんだろうとは思っていたのですが、本書になるとのそのセンスがだんだんと垣間見えてきます。僕が好きなギャグは、人形供養」のなんちゃって裏情報と、あと「カイロですわよ」ですね。あと帯。1巻2巻き同様「楽しんで行ってくれ」とおっさんが呼びかけてくれるのですが、絶妙な表情が良いですね。どういう感情で言ってんだよ。

で、げらげら笑った後に、絶望が来るんだから・・・より一層高低差がついてもうグラグラです。後半グラグラ。まじもうやめてほしいわぁ・・・いややっぱやめないでぇ・・・・。

 

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緩急極まれりの本書、各仕事ごとに感想を書いていく。特に好きなのは、人形供養・自然保護監視員・助勤巫女(4仕事中3つかい!!)

特に助勤巫女は、おまけ漫画がついていたり表紙になっていたりと作者も気に入っているようですね。確かにストーリーのバランスが良く、最たる絶望が描かれているのはこの仕事だと思います。一番万人受けするでしょう

でも人形供養のメンヘラ、自然保護監視委員の圧倒的者の力、この2つも捨てがたいんですよね・・・。

水族館も良作です。橙出てくるし。でもこの3つの仕事が名作がすぎる。

 

 

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人形供養(第13-15話)

勤務時間2日 賃金966666円(ユメちゃん)966667円(白浜)

白浜「この人形と、用意された民家で数日一緒に生活をする。人間と同じ扱いをする事で、人形に感謝を伝える・・・と」p.8

ユメちゃん「体調が悪くなったらすぐ出てきてね。人形よりも自分を大事にして・・・お願い・・・」p.30

シャーロット天ノ崎「人間は美しくない 老いるし 排泄するし 菌がいるし 嘘つくし 暴力をふるうし 私を虐めるし アナタ達は完璧。私もアナタ達みたいに永遠に美しくありたい。」p.15

めちゃくちゃ怖かったです。特にpp.18-19の2ページの見開きの部分。唐突に挟んでくるものだからめちゃくちゃビビった。

まさかまさかの、終わり方も怖かったですね。確かによく笑うな、って思ったんですよ。しかも笑顔でお礼まで言って・・・天ノ崎が本当はなりたかった自分をやすやすとこなしているのが末恐ろしい。

どのタイミングで入れ替わったんでしょうね?3人で4時間静止して並んで黒柳を騙そうとした時か。それとももう、4時間静止する前、人形が大きく口を開けたあの瞬間か。

黒柳。こいつも小物クサくて結構いいキャラしてましたね。特に途中の裏帳簿には笑ってしまった。帳簿に笑い声書いてるんじゃねぇよ。

ただよくよく読むと、

「人形様は一体。人形様の「中身」は複数タイプだったか」p.43

という記述がみられます。

ということは、今回の人形は単体だったから天ノ崎一人の犠牲だけですんだってことですよね。「中身」が二体以上の複数タイプだったら白浜とユメちゃん、静止している状態時にどちらか入れ替わっててもおかしくなかった、ってことですよね。

まぁ複数タイプでもユメちゃんの嗅覚でどうにかなったでしょうが・・・ちょっとゾッとしたね。また、こういったちょっとしたところに小技を仕掛けるところが素晴らしいね。

 

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自然保護監視委員(第16-18話)

勤務期間2日 賃金300000万円

馬岡「うん・・・もともとここは古くから神の棲む山だと言われていてね・・・地元の字住民からも、こう呼ばれて今も崇められているんだ・・・「しらかみ様」ってね。」pp.58-59

白浜「今までの調査って・・・今回みたいに裏バイトを雇ったんですか?その人らはどうなったんです?」p.75

真っ白で何もない空間は まるで神様みたいだp.79

崇め祀られている、しらかみ様、の圧倒的力に人間は無力。神にとっては、人間の対立なんてはなはだどうでもよく、ただ、ただ食べつくすのみ・・・・。

神、自然の人ならざるものの圧倒的スケールの力が非常に巧く描かれた一篇だと思います。最後の結末はバッドエンドなんですけど、あまりにも圧倒的で、むしろ爽快感すら感じるくらい。ただまぁテレビのアナウンサーとかは可哀相だなぁと思ったけど。でもそういうのも関係ない。神様だから。ただ、食べつくすのみ。

食べられている描写もいいですね。今まで体験したことのないような感覚、そして恐怖に陥りながら死んでいく・・・。雪の白さに全て塗りこめられていくかのように・・・。安易なグロテスクに走らないところが好きです。

途中に出てきた、ミカの存在が素晴らしいですね。絶対何かあると思ってた。絶対悪い子だと思ってた。ら、まさかの最後そうきたかっていう・・・。確かにユメちゃん彼女に関しては一切「クサい」と言っていないんですよね。

この子の存在がなければあまりにも物語はシンプルで、物足りなかったと思うんですよ。ただ神様が人間食べるだけだから。

凄いフックの使い方が巧みだなぁ・・・と思いました。

 

 

 

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助勤巫女(第19-21話)

勤務期間:8日間 80000000円

未帆「はーい皆。お茶とお菓子よ~ん。」p.109

真琴「私をあげる。だから私の願いを叶えて。」p.147

ユメちゃん「一番大事なのは自分とハマちゃんの命だから。どちらを奪われても死んだも同じなの。」p.147

福音(神主)「自らを殺し、神に仕える。ある種生贄のようなものです。毎年、神隠しに遭うのは一栄のみ。他の巫女は数百万の富を得て帰るのです」p.130

白浜「あ、未帆ちゃん。昨日はお疲れーちゃんと寝れた?」p.119

赤川「触んなっち!」p.102

表紙にもなってますね。表題作。

本当に怖い話、トラウマになるものって、気軽に読み返したり見返したりできないものですよね。

僕はこの話、結構それでした。

あまりにも惨い。惨すぎる。

2巻は人形、雪の神様、人をぱくぱくするお魚と、結構人間にとって不都合な意図をもった怪異が出てくる話が多いんですが、この話だけ人間の悪意が煮詰まっていて最悪。

本当に最悪、非道。

特に、飲み会の見開き2ページ(pp.114-115)はインパクトありましたね。ただ殺しただけじゃない。惨たらしく。人間の悪意によって。赦さない。

本当に、本当に赦せない。

なんでだよ。死んでくれよ。どうしてなんだよ。

なんで。どうして。

どうして未帆がこんな目に遭わなきゃいけないんだよ。

そこが煮詰まったクライマックスの、

真琴のアップ(pp.148-149)に、

息が止まる。

ここの台詞何度も何度も繰り返して繰り返して読みました。何なら口に出して読みました、

真琴「■■■て。未帆をこんな目に遭わせた奴ら・・・かかわった■■■■■■■■■■■に■■■て。」pp.148-149より

未帆ちゃんがあまりにも可哀相で、そしてここに出てくる人間たちの極悪非道っぷりがひどすぎて本当に赦せなくて、気軽に読み返せないですね。ただ、ここの2ページから終わりに掛けた最後の最後のシーンだけ結構結構何回も読んでる。

エグイ惨劇の跡に残るのは深い傷跡のような、余韻。

さようなら。さようなら。さようなら・・・・。

実写映画化してもそのまま映えるくらいの妙な生々しさが厭ですね。実写化してくれしないでくれしてくれ。

あと、赤川。新キャラ登場回ですね。気怠い白衣のお姉さんかぁ・・・と思ったら、白い粉に手をだそうとした途端「だっち!!!」という謎の語尾がつくところが最高にぶっ壊れていていいですね。魅力的な、壊れた女キャラを描くのが巧すぎる。

ちなみに、粉は最初のページで「coffee」と書かれた段ボールがあることからコーヒーシュガーと思われるのですがどうなんですかね?その白い粉本当にコーヒーシュガーなんですかね?

あ、あとこの回を読んで思ったのは、本当に霊感があるのは白浜ではないか、ということ。未帆の夢を見たのは、ユメちゃんではなく白浜なんですよね。ついでに、「治験」の時も扉の夢を見て、ぎり開かなかったのは白浜でした。何か彼女にも闇臭い(きな臭いと同義語)秘密がありそうですね。

 

 

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おわかりいただけただろうか・・・・。

 

 

水族館スタッフ(第22-24話)

勤務期間:10日間 4000000円

橙「黒嶺先輩は白浜先輩とバディ組んで長いんスか!?詳しく知りたいッス。」p.159

ユメちゃん「私も同じよ。両親が借金だけ残して消えたの。」p.172

白浜「忘れてんじゃねーぞ橙ーッ 今日昼シフトだろーが!今すぐ来いオラーッ!!」p.195

なかなか面白い話ですね。魚は人間をどのように捉えてるのか。一切考えたことなかった。

でも確かに、僕達ホモサピエンスが魚に対して無双できるのは陸上だからで、水中だと立場がまるっと逆転するんですよね。そしたら溺れてただあばあば言っているだけの僕等はちょうどいい御馳走だぁ!!ってことですもんね。こわ。

でも、これ餌になる人間も人間で、すっごい幸せな気持ちのままで死ぬんだから、いいんじゃないかなぁ・・・。

魚はほら、まな板の上で跳ねたり油で揚げる時も最初の方は生きてるじゃないですか。人間の方がよっぽど残虐ですよね。

魚は優しい。

だから癒されるんだと思いますよ。アクアリウム

面白い、と言いましたが、赤川に続いて新キャラ出てきましたね。

今まで仕事の際に出てきた魅力的な女キャラは総じて生存率0%だったので彼女も死ぬのかなぁと思ったらバッチバチに生きててワロタ。でも3人になるのかぁ・・・どうなんだろうなぁ。私は白浜とユメちゃんの二人の尊い関係性が好き、っていうのもあるんだけど。

あと作品自体の大筋に関わる部分も出てきました。何故、裏バイトをする必要があるのか。特に白浜は父親と何かありそうですね。医療費かな。

思えば、1巻の同じく4件目に当たる「治験」も、白浜の父親など話の大筋に絡む話でした。単行本単位で4件目にあたる仕事が、話の大筋がだんだんとつまびらかになっていく形なのでしょうか。

霊感があるのがユメちゃんで、本当の闇を抱えているのは白浜、というこのバランス感覚、いいですね。2人で傷なめ合いながら裏バイトどんどんやってってくれ~。「俺も混ぜてよ」はぶっちゃけいらんのよ~。

あ、でも、右目左目全然別の方向向いている時の顔はちょっと可愛いなコイツと思いました。どうやったらそうなんねん。

 

おまけ漫画 しあわせな真琴ちゃん

未帆「主義に反することは出来ないんだよね~真琴。融通の利かなさは絶対、一生変わらないの~絶対、ウフフウフフフそこが好き。」p.207

未帆というかけがえのない親友がいるしあわせな真琴ちゃんの漫画です。

何故二人があれだけ仲良かったかが、且つ真琴が未帆をなぜあれだけ大事に思っていたのか、が簡潔に描かれていてとてもいい短編だと思います。

主義を曲げられない頑固な真琴、でも人の数だけ主義・考えがあるから必ずぶつかるじゃないですか、そこをやんわりと受け止める未帆の存在が真琴にとってどれだけ尊いものか・・・・。

書き下ろしこの2人の昔のフォーカスするの最高ですね。その分よりいっそう・・・うっ・・・助勤巫女の後味が・・・。

 

カバー裏:まじで誰だよおめぇ

 

 

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今回の帯。2枚目のおっさんオズワルドの畠中に似てる。

 

 

以上である。

2巻も1巻と引き続き、滅茶苦茶面白かった。むしろ好みの話は2巻の方が多かったかもしれない。

あと1巻と引き続き、やばいのも狂った人達もたくさん出てきてとても楽しかったです。赤川・橙と継続的に狂っている人達も出てきたのでこれからどうなるのか。うーん。橙入ってどうなるんだろ。僕的には2人でも十分な気がするんだけど・・・。

3巻4巻の入手を一刻も早くしたい。噂によると3巻の1話目が怖いらしいんですよね・・・言うな!!絶対言うなよ!!!

 

あとねー、タコピーも前後両方お取り置きしてもらっているんですよ一刻も早く本屋に、行かねば・・・!!

 

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求人雑誌に裏バイトは載ってねぇ!!!!!

 

***

 

LINKS

tunabook03.hatenablog.com

 

※途中で出てきた鳥居は静岡の浅間神社の鳥居です。

田口翔太郎『裏バイト:逃亡禁止1』-クサい。クサいクサいクサいクサいクサいクサいクサいクサいクサいクサいクサい!!!!-

 

 

 

あなた(の命)を輝かせるヤバい仕事がたくさん!!!

 

 

 

 

田口翔太郎『裏バイト:逃亡禁止 1』(小学館 2020年)の話をさせて下さい。

 

 

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【あらすじ】

あなたを輝かせるヤバい仕事がたくさん!!!

90万円のために死ねますか?

 

裏バイト。

それは合法違法含むグレーゾーンの高額報酬アルバイト。

その金は、あなたの命の値段。

 

とある事情で大金を求める黒嶺ユメ白浜和美の2人は、

軽い気持ちで裏バイトに手を染めていく。

 

※本作品は心身に多大な影響を与える可能性がございます。

閲覧は自己の責任において、充分に注意して行ってください。

これによって生じるいかなる損害について、一切の責任を負いかねます。

 

帯・裏表紙より

 

【読むべき人】

・ホラーが好きな人

・実話怪談系が好きな人

・おもろい漫画読みたい人

 

 

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帯のコピーが最高。

 

 

【感想】

めちゃくちゃ、面白いですね。

冊単位でいえば2022年読んだ中で一番かもしれない。

 

本書自体は昔から名前だけは知っていた。なんとなく話題になっていることも知っていた。ただ「裏バイト」という題材がぴんとこず、ホラー?なのか?ミステリー?なのか?お仕事?漫画?なのか?いまいちどういう漫画なのかよく分からなくて手を出しづらくずっとスルーしていた。

Twitterで知り合った人が「めちゃくちゃ面白い。「僕が死ぬだけの百物語」と「裏バイト」と「フォビア」で令和のホラーが語れる」と豪語していたので、ほおん、と一気に興味がわいた。まだ令和はじまって5年もたってないのに。

ホラーか。裏バイトっていうから毎回死体を掃除したりなんか地下道を通って薬を運んだりそういう仕事をしている女の子達の話と思っていたが、どうやら普通にホラーらしい。

それはそれは、とオカルト大好きまぐろどん、重い腰、あがりました。

その同時期に、駿河屋の中古通販で買いたい物があって、1500円以上だと送料無料だと言うので、その帳尻合わせに1巻2巻買って読んだ次第。

 

結論めちゃくちゃ、面白いですね。

なんかもうぐいぐい読んじゃう。

多分作者相当ホラー好きですね。

キャラクターとストーリー、あと多分コマ割り?が凄いうまいのかなぁ、と思う。

 

 

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ユメちゃん♡

 

 

キャラクター。ユメちゃん(後ろの黒髪)白浜(金髪)である。

ユメちゃんがめちゃくちゃ良い。良い~。良い~。何が良いのかっていうと、なんか霊感感じちゃうと「くさい」と言い出すんですよ。でそっから一気に正気を失ってガンガンなんかやっべーことやっちゃう、所謂霊感体質の子なんですけど、その「正気を失う」ところが妙にグッとくるというか・・・。発狂する女の子とか、タガが外れちゃう女の子とか、そういうキャラが好きな人はハマるんじゃないかなぁ・・・。

あと僕が個人的に好きな三白眼キャラっていうのも最高です。正直容姿は美少女!!で描かれていないんですよ。若干面長だし、目付きは悪い、且つ服のセンスが洗練されているというわけでもない。

でもそういう大人しい子こそ、発狂してナンボではないですか?

トニカクカワイイという漫画がありましたけど本当ユメちゃんトニカクカワイイ

白浜。白浜は本作品のマジの主人公の方。ギャル。「ふたりはプリキュア」でいうとブラックポジションですね。ホワイトはユメちゃん♡まあまあいいキャラしてます。それ以上でもそれ以下でもない。

ユメちゃん、サイコう!!!!!!!!

 

 

ストーリー。

本書は4つ、の仕事が描かれているんですけど、そのうち3つが「実は・・・」的結末に落ち着く話なんですよね。(ホールスタッフ、ビル警備員、治験)

最後のオチに僕達は戦慄するんですよ。は!?え!?こわっ!!って。

で、こういう展開って漫画より、小説より、実話怪談とかでかなり見るような気がする・・・んですよね。長めの。最後の最後で全部裏返すことで読者をゾッとさせる。

あと全部裏返す、という点では叙述ミステリに似ている部分があるかもしれない。

 

だから、実話怪談・叙述ミステリどちらも全く触れたことが無いと、いまいち良さが分からないかもしれない。

そのおススメしていた方は「解説のwiki見て毎回深く感心している」と言っていたんですが、どちらも読んでいる身からすると別に解説wiki見なくてもだいたい分かります。(マウント)

謎解きとか意味が分かると怖い話の感覚の延長線上で楽しめるのであれば、それらに触れたことが無くても十分に楽しめると思う。

ただそれらに触れたことが無い兼、謎解きだとかミステリだとかそういうのが全くダメという人はハマらないかもしれない。

逆に、実話怪談とか叙述ミステリとか大好きな人は絶対ハマるんじゃないでしょうか。

ちなみに本作ぶっ刺さった僕はその2つがめちゃくちゃ好き。ただ本格ミステリは好んで読まないタイプの人間です。

 

あとコマ割り。

僕は漫画を描かないのでよく分かんないのですが、本書結構すらすら読み易いんですよね。裏バイト、兼幽霊という結構ややこしい題材。且つ絵もめちゃくちゃ上手いというわけでもない。それでも、すごい読み易いんですよ。

それは多分、ネーム?がうまいのかなぁ?、と思う。

あとまぁ、ホラー漫画のメインディッシュ、そういうものが出てくるコマの描き方も秀逸です。

特に「ホールスタッフ」のpp.37-39の3ページにかけての流れは神だと思う。

 

作者自身の似顔絵もホラー仕様なことから、作者マジでこういう怖いのが好きなんだなぁ、と思います。

そして多分だけど、摂取しているのはホラー漫画だけではない。

「ホールスタッフ」で見事なシャイニングのパロディが出てきますが、多分洋画邦画問わずホラー映画、あと前述したように実話怪談・ホラー小説、無論ホラー漫画も相当読まれているんじゃないかと思います。特に句読点が台詞にしっかりついていることから、文章媒体は間違いなくたくさん摂取されている気がする。

作者のホラー愛が伝わる作品。

僕は映画、漫画、全然読んでないんですよ。何なら小説もそんな読んでない。この作品にそぐう読者になるために大いにホラーを摂取していかなければだな・・・。

 

 

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左からユメちゃん♡、白浜、???

 

以下簡単に、各派遣先の感想を書いていく。ネタバレ気にせず書いていくので、気になる人はまず買って読んでくれくれクレメンス。こんな雑文よりも本物に触れてくれ。

好きな話は「治験」

 

 

 

ホールスタッフ(第1話)

森のリゾートレストランのホールスタッフ。

時給15000円×6時間×10日 9000000円

ユメ「・・・よろしくお願いします」

白浜「どもでーす」p.2

マスター「そーか、そーか、そーか。まだ言ってなかったか。二階にはね、僕の妻がいるんだ」p.15

初回なので、まるまる一回でまるまる一派遣先。この話以外は複数話で一派遣先、となります。

平和にはじまってコメディがあって中盤からスピード上がりスリリングになりシャイニングになり最後のホラー的クライマックスpp.37^39にの3ページに戦慄。

でさぁ、まあここまでなら分かるよ。中盤のスリリングな【急】の展開に3ページたっぷりに見せる【緩】のクライマックス。緩急めちゃくちゃついてて読み易いなと思うよ。前半のほのぼのとしたやりとりも結構面白かったよ。

でもその最後の最後にさぁ、もうひとぶちかまししてくるとは思わなかったよね。ちょっとそこは予想してなかった。マスターのいう事めっちゃ信じちゃってたよ。あとちょっとエロいの何なんだよ。お前のサービスショットいらんわ。

ただ、ひとつ消化不良があって。

中盤。ユメちゃんの後ろにてけてけついてった少女・・・あれ誰なんですかね。解説wiki見ても掲載されてなくて。は?何が解説wikiじゃボケ。分かることしか書かねぇくせして解説名乗ってんじゃねーぞと思ったんですが、まぁそこは、よしとして。

作品全体にかかってくる謎なのかな。

初めマスターと奥さんの間の子供か?と思ったらそもそもいないし、奥さんちょっと蘇っちゃった系か?と思ったら奥さんの正体自体がアレだったからありえないんですよね。

何だったんだ・・・。

 

 

 

ビル警備員(第2-5話)

出ると噂の雑居ビルの夜間警備。

時給10000円×8時間×30日=2400000円

ユメ「ハマちゃんッ。経験者だからって、一人でドカドカ行かないで。ひとのペースも考えるべきだわ!」p.51

白浜(あれ?七階ってそういえば空きフロアじゃなかったか?)p.63

近くの食堂のおっちゃん「しまいにゃ、ビルの上から飛び降りた親友社員も出てよ。あん時ゃ大騒ぎだったなぁ。他にも首吊って死んだヤツも何人もいたとか・・・」p.76

ブラック企業の幽霊モノである。うわぁ・・・。人間の幽霊かな?と思わせといて、企業全体そこ一帯の幽霊、ていうのが性質悪すぎる。そして一番最後だけ、人間の顔めちゃくちゃリアルに描く作者も性質悪すぎる。お前(読者)もここの幽霊と何ら変わらないんじゃないのか?

森のレストランの話がリゾート地ということもありちょっと「身遠」の話なのに対して、この話は普段街中を行きかっているサラリーマン・ブラック企業と結構「身近」の話なのも工夫されてるなぁ、と思った。いやいや、他人事じゃねぇんだぞ、ということですよね。

あと終盤で食堂のおっちゃんが

「あの人達さぁ、毎日あわただしく行きかってるけどさぁ、何やってるのか分かんないよね」p.97

と言っていて、めちゃくちゃ共感した。会社で働いているサラリーマンたち、いまひとつスーツ着て何やってるのか分からないんですよね。雑誌「働くOL特集」みたいなのぱらぱら見るとタイムスケジュール書いてあるんだけど「会議」って何話すの?「デスクワーク」って何やるの?「メールチェック」ファンレターの?いまいち実感がわかなくて、一般的仕事に今まで就いてこなかった。そういう仕事場へスーツで毎日行き来している人を、僕は本当に心から尊敬している。煽り抜きで。

今まで漠然と思っていた疑問をおっちゃんが言語化してくれた、という点でこの話はめちゃくちゃ好きですね。

あと多分、だけど中盤ゾンビものやろうとしてた形跡がありますね・・・。7階の社員があうあう追ってくる感じで。あっても良かったとは思うけれども、カットした今の方が白浜とユメちゃんの仲直りにピントがぴたっと合って、メリハリがついて読み易いと思います。正解です。そもそもそんな企みあったのかどうか知らんけど。

 

 

 

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シャイニングの双子のドールはもってる。映画は見たことありませんが・・・。

 

 

個人向け配送業(第6-9話)

あけてはいけない鞄を時間内に配送。

勤務時間2日 賃金500000円

ユメちゃん「今回随分アヤシゲじゃない?大丈夫?その箱の中、麻薬とか入ってないよね?」p.102

女「ステキな鞄ですね」p.108

白浜「何なんだよ・・・この鞄・・・」p.136

一番話はシンプル

鞄。

中を開けてはいけません。絶対に。

となったらまぁ開けたくなるよね。極限状況ギリギリでその心理と抗う話。

最後の最後思ったより大惨事になってて笑った。2022年多分北のある大国の大統領が、この鞄開けちゃったという噂を聞きました。

中盤は、ユメちゃんと白浜の故郷を通るということで過去に触れられていますが、どうやらどちらも訳アリでどうやらどちらも大変なご様子。一体何があったんだか。こんな裏バイトに手を染めなければならないくらいお金がないなんて。

ユメちゃん「あの鞄の中身なんて・・・違う世界の話よ。誰かにとって重要でも、私達にはそうじゃない。」p.151

あと、途中出てきた口紅の女と、国木田先生って同一人物ですかね?目元超絶似ている。耳の生え際で判断しようと思ったら国木田先生が髪型で見えなくて、わかんなかったんですよね。まぁもう、ちょっと確かめる術はなさそうですが・・・。

あと、4つのバイトのなかでこれだけ圧倒的に時給安く感じた。桁一つ足りないだろ。あと絶対本業豆腐屋の人が関わるべき仕事じゃないだろ。

 

 

 

治験(第10-12話)

ボランティア期間7日 礼金3000000円

子供の頃、見た夢でさ・・・夜中にトイレ行って、二階の自分の部屋に戻ろうとすんじゃん。

二階には自分の部屋と、空き部屋が一つしかないんだけど・・・奥に・・・見覚えの無いドアがある・・・?

中は想像もつかない位素晴らしいことが待っている気がする。けれど同時に恐ろしい、こことは違う世界に行ってしまう・・・よう・・・な・・・p.153 白浜の夢より

医者「第二十九回「Q治験」結果報告、お願いします」p,205

4つの仕事のなかで圧倒的のこの仕事が好きですね。

病院の無機質に蹲る不安感と不自由、対照的に無尽蔵に無限大広がる夢の自由と、そして最後の最後で明らかになる今回の実験の真相・・・。

最後の1ページはぞっとしましたね。「ありがとうございます。」本当に唖然とした。全然読めなかった。「ありがとうございます。」

確かに、食堂の席とか個室じゃないのに何で全員病室が違うのか、とか綿密に伏線貼られていたんですよ。「ありがとうございます。」でも僕達はその病院の雰囲気と、あとクロちゃんに完全に気をとら「ありがとうございます。」れていましたね。

扉を開いた後「ありがとうございます。」の、感想が書かれているのも良かった。「ありがとうございます。」鞄を開けた後の感想は書かれ「ありがとうございます。」ていなかったので・・・。本当は未知なるものを開ける、という点で実はアイデア被っているんですが、崎山さんのグッジョブリポート「ありがとうございます。」で全然違う話になったなぁ、という印象。

同じ夢、を「ありがとうございます。」題材にしたもので最近読んだものだと、清水玲子「秘密」の2巻。天地「ありがとうございます。」という若手女性研究員の夢、が出てくるんですけど、全く描き方が異なっていて「ありがとうぎいます。」そこも興味深かった「ありがとうございます。」です。いくつかの「ありがとうございます。」漫画で夢を描いた部分を「ありがとうございます。」比較「ありがとうございます。」するのも面白い「ありがとうございます。」かもし「ありがとうございます。」れない。

にしても「ありがとうございます。」・・・いやぁ、「ありがとうございます。」本当最後「ありがとうございます。」の1ページ「ありがとうございます。」にやら「ありがとうございます。」「ありがとうございます。」「ありがとうございます。」「ありがとうございます。」「ありがとうございます。」

 

 

 

「ありがとうございます。」

 

 

 

 

 

 

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あと、カバー裏がめちゃくちゃ楽しいことになってます。

裏バイトなだけに。

近年の漫画でも屈指の出来。

ギャグ漫画家がホラー描くとバチバチに怖いように、ホラー漫画家がギャグを描くとバチバチに面白いのはあれ何なんだろうね。あの現象の始祖としてでも、楳図かずおってやっぱすごいんだなって思う。

あとこの漫画で好きなのは、ですね。コピーもいいんですが、めくった時のおっさんが良い。なんでこんなに創意工夫凝らされているんだ・・・。

 

 

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いい表情だ。

 

 

以上である。

いやー、めちゃくちゃ面白いですね。大切なことなので3回言いました。

今まで読んでいなかったのが悔やまれる。

最近漫画熱がいきなり再燃したことがあってそういう作品が多いんだけれども、そのなかでもこの作品はもっと早く手に取っておけばよかった・・・・!!!のナンバー1。

3巻からは新刊で買おうと思う。

6-7冊出てますよね?夏までに絶対追いつきたいシリーズ。

 

 

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***

 

LINKS

文中で取り上げた「秘密」の2巻の感想。

これもこれでえぐくていいよね~。

 

tunabook03.hatenablog.com

 

同じく嗅覚に関する小説。前回の記事。

ちなみに僕は静岡県で一番花粉症が酷いのでここ2ヶ月くらい匂いを嗅いだ記憶がありません。助けて。

 

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曽根圭介『鼻』-くっせえくっせえくっせえわ!!-

 

ちぎってやるよ。

ちぎり散らしてやる。

 

曽根圭介『鼻』(KADOKAWA 2007年)の話をさせて下さい。

 

 

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【あらすじ】

人間たちは「テング」と「ブタ」に二分されていた。鼻を持つテングはブタに迫害され、特別区に送られている。外科医の「私」は、テングたちを救うべく、違法つぁれるブタへの転換手術を決意する。一方、刑事の「俺」がm2人の少女の行方不明事件を捜査中に、因縁の男と再会する。2つのもの勝ち足りに訪れる、恐るべき真相とは。

日本ホラー小説大賞短編賞受賞作「鼻」他2篇を収録。大型新人の才気が迸る、驚異の短編集。

 

裏表紙より

 

【読むべき人】

・読み易いホラー小説読みたい人

世にも奇妙な物語が好きな人(「暴落」)

 

 

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いい表紙。



 

 

【感想】

リメイクされましたね。めでたい。

本書は昔から「おススメ ホラー小説」と検索するとよく出てくる本の一つで、その割に絶版だったから、微妙にプレミア値がついたりつかなかったりしていた文庫本だったんですよ。

ところがどっこい、昨年KADOKAWAがいくつかの角川ホラー文庫をカバーかえて復刊させまして、そのなかに本書があったのでございます。

刷新されたカバー。いいですね。新装版の方がばちばちに表紙がいいと思います。よく見るとマスクをした少女の白黒写真なんですよね・・・且つなんかホラーだけでなく、欧米のアクション映画感もあるジャケット。ホラーよりかはグロ、幽霊よりかはヒトコワ。くあうぇて文体が軽くガンガンに読めちゃう本作をよく表していると思います。

前のね、プレ値ついてるほうの表紙はね・・・うんまぁ・・・まぁうん。版画だけどいかにも「純文学」みたいな感じの表紙で、ジャケ買いした人は恐らく肩透かしを食らってたんじゃないかなぁ。

ちなみに、他にリメイクされた作品には小林泰三玩具修理者がありました。5年以上前に読んだんですけど・・・あれは本当にすごい一冊ですよね。今でも鮮明に玩具修理者」「酔歩する男」両方思い出せる。玩具修理者の最後のまさかの着地点にうっわあ・・・なった後、「酔歩する男」今まで考えたこともなかったし出来れば知りたくもなかった悪魔的概念にクラク「酔歩する男」も実写映画化されてもいいような気がするんですけど、意外とされてない。齋藤工あたりを使ってやって欲しいですね。大変失礼なんだけれども齋藤工ご本人のあの汚い字で手記書いて、そっから遡る悪夢の・・・って感じでお願いしたい。手児奈たんは誰だろ・・・誰がいいだろうな。橋本環奈とか?読んだことない人は滅茶苦茶おススメです。グロ耐性・SF耐性がある程度ないときついですが、毎日続く日常に幸福を見出せます。

お悔やみ申し上げます。

 

閑話休題そんなこんなで、実はここ数年ずっと気になっていた本書なんですが、新装版発売という訳で、供給量が増えるわけですから自然と値下がりもするわけで、昨年冬メルでカリって入手致しました。

内容としては・・・なるほどね。なるほどです。

裏表紙にある、「恐るべき真相」自体は、正直、叙述ミステリにある程度触れていればすぐに気づきます。結構呆気ない終わりに何が凄いのか分からなくなる。解説を読んで、「ああ~~確かに」と僕はその凄さを再確認しました。

残りの2作が前評判より・・・思ったより良かった。結構硬い内容なんですが、文体がライトノベル並みに凄く軽くてするする入ってくるんですよ。

一つは、文体でしょうね。体言止めとか多く使われていて。なんとなく口に出して読みたくなるような文体。なんか大人向けライトノベルを読んでいるみたい。

中身も角川ホラー文庫の大御所、小林泰三貴志祐介・・・のような感じを期待するとちょっと違う。前者は作品によっては純文学・倫理的要素も入っていると思うのですが、本書も、まぁ入ってるんだけど・・・この2つより分かりやすいし直接的。

ぶっちゃけ内容は角川ホラーよりハヤカワSF文庫に近い気もする。まぁ僕はそんな角川ホラー文庫もハヤカワSF文庫も読んでないのですが・・・。

恩田陸とか好きな人こそハマるのかもしれない。まぁ僕はそんな恩田陸読んでいないのですが・・・。

 

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収録されている三作、ネタバレためらいなく端的に感想を書いておく。

好きなのは「受難」、令和四年現在において一番作品の出来がいいなと思うのは「暴落」「鼻」も確かによくできているんだけど、まぁ令和となっては新鮮味はこの2作の方があるかなぁ・・・。

 

「暴落」

真面目そうな老人だった。席を譲ってくれた若いサラリーマンのことを、「敬老.com」に報告することだろう。あのサイトの試乗への影響力は侮れない。席を譲った偽善野郎が、うすら笑いを浮かべながら自分の株価を見ている光景が目に浮かぶようだ。p.16

個人単位で株価がついたら。それに翻弄されるエリート街道一直線の男イン・タム氏の株が、一気に「暴落」する様を描いた、近未来SF的ホラー。

それを100ページ近い尺でやってます。斬新な設定も凄いですが、それを思いついた普通の作家だったら短編小説・掌編小説で終わらせそうなところを、読者を飽きさせず読み切らせる中編小説に仕上げたところも凄いと思います。

ブラックユーモア・緻密な設定・読み易い口語的文体・・・。はじめ、ぶっちゃけ10ページで「うわぁ・・・こいつが転落する様を読むのに100ページもあるんかぁ・・・」と思ったんですが、気づいたら結構終盤まで落ちてました!

特に名前の由来のブラック・ユーモアには笑った。まじかよ。そこまでやるのかよ。あと最後の最後まで、設定が徹底される悪夢的エンド・・・。ふふっ。

ふはっ・・・・、令和四年現在にほんこくえでゃあり得ない世界の話だから笑っていられる。

と思ってたよ。

終盤までは。

クライマックス、最悪な結末のきっかけが、僕にも君にも誰にでもあるありふれた「人生で最も後悔した選択」だと気づいて戦慄。

イン・タムはどこまでも愚かだった。でもそんな彼をどうして僕達が笑えよう?人間は常に愚か。どこまでも愚か。果てしなく愚か。多分僕もイン・タムらしからぬマグ・ロドだったらそっちを選んでいたと思います。

ちなみに、【おすすめする人】に世にも奇妙な物語が好きな人」と挙げましたが、それは本作が奇抜な設定から物語が進むプロットだからですね。最近長尺化しているので、名前の下りを削って3つ目のチャプターをいい感じに省略したら、名作になるのではないでしょうか。削って省略する必要があるのは、尺の都合上と普通に夜9時から11時に流せない内容だからです。

あと序盤、話の展開的には、綾辻行人「フリークス」も思い出した。現代日本が舞台で設定とかは全然違うのですが・・・。冒頭のシーンとそして最後に真相がつまびらかになるのは着想源が似てる、気がする。あれもあれでまさしく悪夢、めちゃくちゃバッドエンドでしたね。中盤で僕は主人公のアレの存在に、気づきました。

 

 

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「受難」:

『はじめまして。ひろ子といいます。

みんなからは、『ひょこたん』と呼ばれています。(笑)

二度も介助者に選ばれるなんて、光栄です。

がんばります。

よろしくおねがいしまーす。

               ひょこたん』p.125

圧倒的理不尽ホラーですね。真相が明らかになっても最後まで明らかになる訳では無い。そういう話、である程度割り切れる人でないと、不評でしょうね。某密林サイトで本作の評価があまりよろしくないのも頷ける。

それでも僕が本作を好きなのは、この圧倒的ひょこたんのクソ文体ですね。もうね、ムカつく通り越して全然ムカつかないんですよ。笑っちゃう。ひょこたんってなんやねんと。当時デビューほやほやの中川翔子のあだ名のもじりなんでしょうけど。でも何倍もムカつきますからね、ひょこたんて。1000000しょこたんくらいムカつく。1文字違うだけでこんなにムカつくとは。

加えて、途中で老紳士が出てくるんですよ。こいつもひょこたん同様もう言葉通じなさ過ぎてムカつく通り越して最高。最後の最後にも登場するんですが、想定されたエンドよりさらに最悪なエンドを想起させる・・・絶対嫌だ。そのままでいてくれ。

あとまぁ理不尽なホラーではあるんですけど、最低限の謎の種明かしはしてくれています。一見すぐ分かりそうなものですが僕は全然分かんなかったね・・・。

この前の記事書いた福澤徹三「五月の陥穽」、あれは人がいないことにとにかく絶望する内容でした。本作は人がいるにも関わらず言葉が通じない絶望。どっちの方がマシなんでしょうね。

 

 

「鼻」

私はリカの将来を考え、手術を決断した。障害でたった一度、私が行った転換手術だった。こういう世の中になり、当時の決断は間違っていなかったとお確信している。私はそれ以来、リカには会っていない。p.232

なんとなく、結末は見えます。僕も中盤から気付いた。「俺」の世界線ではテング・ブタの一文字も出てこないから。もっとカンが鋭い人は冒頭から気付いたのかもしれない。

ただトリックとしては消化不良感が残る。一体何が何だったのか辻褄合わせるのに非常に時間がかかる。マサキは瞬時に分かったものの、母親と娘の親子関連はちょっと考えないと分からなかった。そういや入院していた娘いたね・・・って読み返して気付いた。「俺」の世界線においてもう2-3行でもいいから娘の存在感をもっと色濃いものにしておくべきだったんじゃないでしょうか。

加えて、わたしの想像力がたくましすぎるあまり、0から作り上げちゃっているものだから、辻褄が合う合わないの問題じゃないところもあって・・・まぁ叙述トリックが使われているとはいえミステリ小説ではなく、「ホラー小説」ですよね。

でも独特の、読後感は最高ですね。

本当はもう最悪&最悪な結末なはずなんだけれども、僕達は気づけば「私」側の世界線に立っており、「してやったぞ!!」「正義は勝つ!!」「ざまあみろ!!」恍惚な表情で本を閉じる。

気付けば僕達は「私」の、テングとブタが存在する世界に取り込まれている。

考えて。

ここ、2-3年。みんなマスクをつけています。

コロナウイルスが流行っているからです。

本当に?

本当は、その「テング」鼻を隠すためにみんなマスクをつけているんじゃないのか?

差別されないために。殺されないために。

「ブタ」としていきるために。

え?

何?

注射を受ければ、鼻が自然と縮小するの?

「ブタ」になれるの?

受けなきゃ!!!ワクチン!!!

受けなきゃ受けなきゃ受けなきゃワクチンワクチン!!!!!

受けなきゃ受けなきゃ受けなきゃ!!!ワクチンワクチンワクチン!!!!ワクチンワクチンワクワクチンチンワクワクチンチンワクワクワクチンチンチン!!!ブシュブシュブシュブシュ!!!!!受けなきゃ!!!!!

 

 

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以上である。

表題作がまぁ正直期待値ちょっと下がるけど、でも他の2作が思ったより面白くて・・・良作、と言っても良い一冊。初めて読む作者で、他の作品が刑事ものとかが多かったので文体がっちがちなんだろうなぁ・・・と思ったら非常に読み易くて良かったです。

順番もいいですね。一作二作目のバッドエンドでたまったフラストレーションを最後にぶっ放す感じ。

 

あと、コロナウイルスが蔓延ってマスク社会になったからこそ、リメイクした角川ホラー文庫編集部、悪趣味最高~。「コロナが流行した今こそ!!」みたいな文言を一切帯にも書かなかったところにも大変好感が持てる。

もう少し昔だったら「鼻」も新鮮な気持ちで読めたんだろうけど・・・いやぁ、でもやっぱり設定的に2022年現在こそ読んで良かった一冊です。

 

ちなみに、ワクワクワクチンチンチン・・・3回目の案内いつまでたっても届かないんですけど、そんなもんなんですかね?

それとも、私に鼻があるから私がテングだから、案内来ないんですかね?

 

***

 

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つい最近書いた「五月の陥穽」の感想。

tunabook03.hatenablog.com

 

福澤徹三『怪談歳時記 12か月の悪夢』-僕達に出口はない。-

 

 

 

 

12の月には12の怪談が相応しい。

 

 

 

 

 

 

福澤徹三『怪談歳時記 12か月の悪夢』(角川書店 2011年)の話をさせて下さい。

 

 

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【あらすじ】

初詣の夜に妻を見失った男。帰ってきた妻は、以前とはなにかがちがっていた。老人の語りが戦慄を呼ぶ「鬼がくる家」

女子大生〈あたし〉は真夏の山中で、われにかえった。見知らぬ車に見おぼえのない服。失われた記憶を求めて恐るべき真相にたどり着く「迷える羊」

平凡なOLが引っ越したマンションには、得体のしれない誰かが住んでいた。女の情念と狂気を描く「九月の視線」

四季を舞台に織りなす12篇の恐怖。

 

裏表紙より

 

【読むべき人】

福澤徹三先生が好きな人

・アンソロジー「再生」おいて「五月の陥穽」から気になっちゃった人(is僕)

 

 

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【感想】

う~ん。微妙。おかしいなぁ、福澤先生の実話怪談は滅茶苦茶面白いし、アンソロジーに掲載されていた作品も面白かったんだが・・・。

 

朝宮運河編『再生』に、本書の五月に当たる短編「皐月 五月の陥穽」が掲載されていた。絶望感が半端なく、また文章力も達者で、はえ~こんな短編どこに掲載されてるんやろと後ろの方のページを見たら「怪談歳時記」とある。

12か月、それぞれの月に当たるホラーが収録されているとの旨。

「やったぜ!!!」

ホラーも好きで、長編より短編小説のが好きだから、期待してワクテカして読んだわけだけれども・・・うーん・・・といった印象。

「皐月 五月の陥穽」レベルの短編が他11も読めるのかと思ったが、実際12つの短編の中でこれはかなりの上位で、結構微妙な短編が多かった。まぁ角川ホラー文庫収録作品全般対象にしたアンソロジーに掲載されている訳だから、「五月の陥穽」自体が、作品単体でかなりレベルということは当たり前体操なんだけれども。

にしても、その「微妙」のレベルが想像よりかなり低く、がっかりといった印象。

「皐月 五月の陥穽」に並ぶのは「長月 九月の視線」「神無月 紅葉の出口」くらいで、あとはまぁ・・・うーん。どこかで読んだようなものであったり、いまひとつ怖さに欠けていたり、バランスが悪かったり・・・といった感じである。

 

 

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以下簡単に、収録順・・・・1月-12月(睦月‐師走)の順・・・に短編の感想を書いていく。

 

「睦月 鬼が来る家」

母の実家を訪れたのは、大晦日の夕方だった。p.7

寝たきりになった祖父は、小学生の裕太に、新婚時代の初詣についての話をするが・・・。

微妙。

まず福澤先生の字体と、舞台となる時代・・・昔で和風な昭和中期の相性が微妙。こういう昔のホラーってじっとりねっとり感がウリだと思うのですが、福澤先生の乾いた文体でそれをやられるとう~ん・・・?になる。う~ん・・・?坂東眞砂子先生、岩井志麻子先生のあのぐっちょりねっとりぬれぬれ文体で読みたかった。

そしてピークとなる場面も、既視感がある。自分とパートナーが同じ部屋にいるが、「開けて!!その人は偽物なの!!」と外からパートナーの声が聞こえる。しかし目の前にいるパートナーも「私が本物よ!!」と言う・・・。

ちょっとホラー齧った者からすれば、こ一つのパターンで、新鮮味もくそもないのである。具体的な例を挙げると、「世にも奇妙な物語」の「あけてくれ」であるとか。創作ではうやむやにされるか、「偽物」を選び取ることが多い。また、実話怪談でもこういうパターンが近年見られる。創作とは反対に、「実話」である以上「本物」を選び取っているケースが多い。

あと、安易に女性のみに「鬼」の血が流れるっていうのもどうなんだって思った。

設定と文体の相性が微妙な上、展開諸々凡庸。ちょっと物足りない一篇。

 

「如月 雪の下の蜘蛛」

けれども、きょうは体調のせいか、すんなり記憶が蘇った。p.26

28歳サラリーマンの蓮見は、由加里(本命)志保(毛深い)を二股するが・・・。

これも微妙。

起承転結の「転」の描写が雑だから、いまひとつ予想外の展開の「結」まで今ひとつ結びつかない。「転」の場面における志保の描写を2ページ程設けるべきだったと思う。あまりにも突飛すぎる。

また、これを恐怖譚として書いているが、女の身からすると、恐怖譚とすること自体ちょっとムカつく。志保の気持ちをないがしろにし過ぎ。ありえない。男側に都合よく考えすぎ。

その割には、蓮見にバチが当たってない。足りない。献身的な妻を手に入れ、息子にも恵まれ、加えて自分は無理して働かなくても良くて・・・ハッピーハッピーおじさんである。なんだよクソ。

また、毛深い体質である志保を「蜘蛛」と安易に結びつけるのもいまひとつ。毛深いだけでは蜘蛛感ないし、もっとこう、蜘蛛らしい特徴が欲しかった。肌色、関節、服の色、目の色・・・もっと蜘蛛を想起させるような描写が出来たはずなのだ。

最近読んだ蜘蛛人間と言えば、遠藤周作の短編「蜘蛛」に出てくる青年・・・あれはまさしく蜘蛛っぽくて素晴らしかったなぁ・・・。

う~ん。男に都合よすぎる話だし、毛深いだけで「蜘蛛」呼ばわりするし、フェミニズム抜きにしても起承転結の構造自体も雑だし・・・ちょっと色々残念な一編。

 

「弥生 卒業写真」

結婚してしばらくは、カレーを作ると、なぜか帰りが早かった。ひとりでいるのがさびしいときは、せっせとカレーを作った。おなじ煮込み料理でも、シチューは帰りが遅かったから、休日にしか作らなかった。p,46

主婦の洋子は、高校時代付き合っていた真治とたまたま道でばったり出会う。

良作寄りの普通。

夫に不満を抱いている妻が、ある日ばったり昔の恋人と出会って逢瀬を重ねるけれどもまぁここは怪談なのでその相手が死んでいることが判明しましたという話である。あるある探検隊あるある探検隊!!というわけで、展開自体は凡作中の凡。

それでも「良作寄り」なのは、洋子のキャラクターがしっかり練られているから。「流されやすい人物」として丁寧に描かれている。例えば上記のカレーのおまじないであるとか。大人しいからこそ、気が強い昌平に惹かれて結婚したんだなとか。様々な無駄と分かっているものでも切り捨てられないところであるとか。彼女の人間性を感じられる小さいエピソードがところどころに配置されているので、そこは読み応えがあった。

あと結末。大抵なら、初恋の相手が死んでいることを知ってショックを受けて余韻に浸って終わりだが、本作では終盤「引っ越し」が唐突に出てくることで、一気に切なくなる。もう二度とこの場所には帰ってこない、もう二度とあの時代には帰れない。

この2点があるという点で、「良作よりの」凡作という訳である。ただあまりにも既視感が強かったのと、話全体を引き締めるようなインパクトはなかった。引っ越しもそこまで達せなかった。ので、凡作。

 

「卯月 迷える羊」

ディー「あんたがエスになれたのは、いままでの自分を忘れたからでしょう。ここへくる前の記憶がもどったってことは、反対に、ここにいたのを忘れたのかも」p.68

目を覚ますと、いままでの趣味とは全く違う下品なギャルの格好に身を包んでいた〈あたし〉は・・・!?

普通。

まず思ったのは「え!?いきなりそういう話!?」である。初恋をもう思い出さないわ・・・!といった話から、いきなりなんか生臭い汚いや陰謀めいた話だから、その落差にくらくらした。こういうのは怪談じゃないじゃん。勘弁してくれ。

次に思ったのは「4月、関係ねぇ~~~~~」。今まではなんとか1月は初詣、2月は雪、3月は別れの季節・・・と、季節感重視!!!よっ!!!怪談歳時記!!!感があったが、この話、四月感全くねぇ~~~~。誘拐されたのが四月で、解放されたのが夏だったから正直卯月より葉月感半端ねぇ~~~~。夏の女子大生によるオカルト自由研究!!じゃねぇんだよ~~~~。

ポカーンとしてしまった一篇。

ただクライマックス、施設の内部が明らかになるシーンは衝撃的で、本書で一番記憶に残っているシーンといっても過言ではない。それは怪談じゃなくねぇ?感はあるけど

多分こんなにカオスな一篇になっているのは、新耳袋山の牧場」へのオマージュ作だからだと思うんですよね。設定といい結構共通点があると思うのですが。でも元ネタ踏まえてもこれは・・・う~ん。

普通に四月は櫻に関する怪談読みたかったです。

 

「皐月 五月の陥穽」

しかし、どんなに苦しかろうと、あの窓に足が届くまでは、あきらめるわけにはいかない。p.97

さえないサラリーマン石黒が、会社のビルとビルの間に落ちた!!

傑作。やっぱり改めて読むと他と比べて絶望感が違いますねぇ!!!もうどうしようもない感じ。石黒頑張れ!!石黒頑張れ!!

あとこういう「閉じ込められる系」って、本当に文字通りに棺桶だとか箱だとかそういうのが多い印象でしたが、ビルとビルの間、っていうのがこれまた斬新でいい。そしてそれを「五月の陥穽」と名付けるセンスの良いタイトルも素晴らしい。

やっぱり今までの4編と比べると、数段秀でていると思う。

あとやっぱあれっすね・・・「師走 幽霊たちの聖夜」でもいえますが、中年男の漠然と抱える絶望を描かせると福澤徹三先生に並ぶ作家はいませんね。

ちなみに僕は、この短編で初めて「陥穽」をかんせいと読むことを知りました。今までかんさいと読んでた。なんでやねん。

 

水無月 梅雨の記憶」

砂村「屍体が埋まっていると、紫陽花は何色になるんだろう」p.105

暁子にとっては、恋愛とは、要求であり、欲求だった。p.108

女子大生と怪しからん関係を持っている砂村48歳が、思い出したのは大学時代しつこくつきまとってきた女・暁子のことだった。

凡作。残しておきたくなる文章が上記2か所あったけれども・・・名文だと思うけれども・・・・展開としてはまぁ普通。

というのもこの作品も「起承転結」の「転」が雑。大学時代の暁子との交際の終わりが物語の主軸となる。でも、その終わり方があまりにも雑過ぎる。

大学生をもつ母親が一人の女子大生を埋める体力があるか、ってとこも疑問。母親自体が過干渉な親の節が見えていたら、成程そこまでするかなぁ、と思うけれども、砂村の母親に至っては別にそういった描写もないから、本当に埋めたのか・・・?となる。

暁子が砂村との間にできた子を紫陽花の下に埋めた、という展開だったらまだ納得いったかもしれない。で姿をくらます。そして時がたって、48歳の砂村の浮気現場であるバーの白い女が白い少女(もしくは少年)を連れていたら、まだ説得感あると思うのだけれど・・・どうだろう?

あと短編集全体としてみた時に、男が悪気なく不倫・浮気しているという点で如月 雪の下の蜘蛛」と被っているのでそこも残念だった。

あと一冊丸々読んだ後、12の短編のタイトルを見るとほとんどが何となくどういった話か思い出せた。でも、この話だけ中身読むまで全くどういう話だったか思い出せなかった、ということも追記しておく。

 

「文月 おどろ島」

達夫「この神社のまわりを三回廻ると、神隠しに遭うんだ」p.122

大学の教職員である主人公は、大学時代以来の「おどろ島」付近へ、学部の旅行で足を運ぶが・・・。

悪くない。

島に魅入られた男の話である。

強いて言うならば、男女間の関係性の描写がもう少し欲しかった。

沙耶⇒主人公の伏線が足りない。読み返せば確かにあったけれども、全然気にかけていなくて、最後の展開がまぁ今までと同様かなり突飛に感じられた。

また、俊介⇒沙耶も限られたページ数では察するのがむつかしい。「俊介は沙耶に気があるようだった」の一文でもあれば話の全体像が見えて引き締まったのかもしれない。

推敲する時間がもっとあれば、赦されるページ数がもっとあれば、間違いなく良作になったであろう、惜しい作品。

 

 

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「葉月 精霊舟

圭吾「カラオケなんかやめて、ドライブにいこうや」p.139

東京に進学した女子大生の結衣は、高校の同窓会に顔を出すが・・・。

微妙。

文月同様、人間関係における伏線の張り方が雑。圭吾と、そして琴音が、結衣を狙った理由がほしいところだが、そこらへんが非常に曖昧なため、最後の一行「ハァ?」になった。

その癖、厭そこいらんやろという描写が多かった。結衣の実家であるとか、クラスで一番かわいかった女子であるとかいらないエピソードを詰め込んでいるため、最後があまりにもやっぱ「ハァ?」。

だったらもっと書くことあるやろ。琴音と圭吾の関係性を暗示するようなエピソードであるとか、精霊舟を幼少期見たエピソードであるとか。

説明不足な印象。

所謂「夏」にあたる、「文月 おどろ島」「葉月 精霊笛舟」のこの2編はいらない部分があまりにも多すぎたために、微妙になってしまった感が否めない。どちらも「夏」という季節感満載の作品なだけに・・・残念。

 

「長月 九月の視線」

そもそも二十九歳になって、学生のような1DKに住んでいる方がおかしい。この部屋なら、健司を読んでも恥ずかしくない。p.146

おととしの同窓会で、春香は疲れた顔をしてみせたが、彼女の眼が嫌みなほど輝いていた。p.150

自分を振った女に未練を残しているようにお見えるし、その女が今季を逃しつつあるのを嘲笑っているようにも見える。p.152

その夜も部屋に帰ってウイスキーを呑んだ。p.162

良作。

所謂事故物件ものである。しかし、共に棲んでいた者の正体は・・・。

意外な正体であったけれども、この短編は上記に挙げたような伏線が幾重にも貼られているから、その結末に非常に納得感があった。

恵理の見栄っ張りな性格。と、二十九歳という年齢。実家に帰れば結婚をせっつかれ同級生は結婚している。一瞬気をもちかけてしまった妻子持ちの中年の上司・・・。酒量は増えていく。焦燥絶望閉塞感・・・。

一行一行総てにそういった含みがもたらせれていたからこそ、最後の現象を自然と受け入れられたんだと思う。

普通に考えれば「葉月 精霊舟のラストの方がまだ現実的ではあるんだけれども、こっちのラストの方が「なるほどね」となるのは小説という媒体ならでは。

また、その格安の物件で起きる現象の魅せ方も巧かった。オーブや、突然すぱっと切れたさぼてん、ぬいぐるみから出てくる髪の毛・・・。出てきそうで出てこない不気味な演出もなかなか良かった。

「皐月 五月の陥穽」に並ぶ良作であると思う。

 

「神無月 紅葉の出口」

自分も裕美も、いったいなにを急いでいるのだろう。

大学を出て就職をして結婚をして子供を作った。

出世こそできなかったが、ひとつの場所にとどまることなく、急ぎ足で歩いてきた。

それなのに、この歳になっても出口は見えない。p.179

一番好き。名作。

家庭にも仕事にも疲れ切ったサラリーマンが非日常的な状況下において、ふと自分の人生に思いを馳せる一遍である。

そしてその人生が、あまりにも誰にでも当てはまっていて、あまりにも哀しい。

いったい僕達は何のために生きているのか。

いったい僕達は何のために頑張っているのか。

いったい僕達は何のために・・・。

モラトリアム的憂鬱は若者にとっては甘美なるものだった。しかし不惑の齢にもなるとそれはもう無味乾燥な砂を口に無理矢理詰め込まれているような感覚。

その鬱屈とした気分が、山奥の紅葉の美しさへの感動によって、ピリオドが打たれる。

唐突に。

そして・・・といった具合。

前半の渋滞、妻の小言、息子の態度無駄な部分が一切ないのも良かった。

やっぱり人生の悲哀・・・特にサラリーマンの悲哀が絡むと一気に良作になりますね。福澤先生の作品は。

ところで僕の人生の出口は・・・どこなんだろう。

 

「霜月 隣の女」

朝比奈のハンドルネームはリュウで、キャラクターは戦士である。p.182

ネトゲMMORPG)に熱中する独り暮らしニート朝比奈には悩みがあった。それは幾千もの戦いを共にしてきたパートナー・女魔術師レイチェルが、リアルで会うことを執拗に申し出てくることだ。

微妙。

MMORPGを舞台にして書くのが初めてだったんでしょうね。色々欲張りすぎている。アニメ(ラノベ)「ネトゲの嫁は女の子だと思った?」殊能将之ハサミ男ごった煮にしたかのような短編。

でもクライマックスになる部分は、「長月 九月の視線」と丸被りで・・・残念。おじいちゃんそれ先々月もやったでしょ・・・という具合。伏線も前作と違って張り方が雑だし数も少ない。恐らく「MMORPG」という特殊な舞台に引っ張られ過ぎたのだと思う。

あと、最後の一行が

次の瞬間、あたしの悲鳴が長く尾を引いて、闇の中にひびきわたった。p.196

なんだけれどもこれいまいち意味わからないんだが・・・?この一行いらなかったのでは・・・?

タイトルも微妙。「隣の女」と書かれればいわゆる隣人もののヒトコワ系を想起すると思うのだが、全然そういう感じの短編でもないし。

なんか・・・「長月 九月の視線」「神無月 紅葉の出口」と連続して傑作出しちゃったから、この時期は搾りかすしか残っていなかったのか・・・?という短編。

 

「師走 幽霊たちの聖夜」

世の中という階段は、日増しに勾配が急になっていく。その場にいるときはきづかなくても、一段でも下に落ちたら、もといた場所は見上げるほど高い。p.208

リストラされ自営業をしていたがたちまち借金まみれになった中年・玉岡は、ラブホテルでの清掃バイトを始めた。

良作寄りの凡作。この話が普通の短編集に収録されていたら「良作」判定を下したけれども、「怪談歳時記」において収録されるにはあまりにも怪談要素が薄すぎる。しかもトリに限って。

まぁ所謂寄生獣的なね、寄生獣の正体は・・・人間でした!!」みたいな、「幽霊たちの正体は・・・玉岡達でした!」といったことがやりたかったてのは分かるけどいやみんな生きてるし。

それにラブホうんぬんよりもやっぱり人生の悲哀の部分の方が、キラリと輝く部分があって・・・。「神無月 紅葉の出口」は状況・ラストが怪談らしかったけど、これはもう・・・ただのおしごと小説では?といった印象。

ラブホのおしごと小説、読んでみたいですけどね。上野さんみたいな楽しい感じもいいけれども、こういう悲哀が詰まった感じもちょっと読んでみたい。桜木紫乃「ホテル・ローヤル」もやっぱ直木賞なだけあって傑作でしたね。でも男目線の泥臭いラフ保証説も読んでみたい。福澤先生、たのんます。

 

 

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おまけ

順位をつけるなら・・・

1位 「神無月 紅葉の出口」

2位「長月 九月の視線」

3位「皐月 五月の陥穽」

4位「師走 幽霊たちの聖夜」

5位「弥生 卒業写真」

6位「卯月 迷える羊」

7位「文月 おどろ島」

8位「如月 雪の下の蜘蛛」

9位「睦月 鬼がくる家」

10位「葉月 精霊舟

11位「水無月 梅雨の記憶」

12位「霜月 隣の女」

きみの誕生月は何位かな!?

 

 

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以上である。う~ん。期待値以下の短編集、といったのが正直なところ。

「皐月 五月の陥穽」が面白かったこと、福澤先生の実話怪談がめちゃくちゃ好きであること、それぞれの月に向けたホラー短編集・・・。期待値高過ぎたのも否めないけれども。

でもまぁ「長月 九月の視線」「神無月 紅葉の出口」と出会えただけでも良しとするかなぁ・・・といった感じである。

 

ちなみに「長月 九月の視線」の恵理は29歳で1DKに住んでいることを恥ずかしく思っていいたが、僕は28歳にしてワンルームに住んでいる。

 

人生・・・。

 

 

***

 

LINKS

本書を読むきっかけ。このアンソロジーはお薦めですね。

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福澤徹三先生の大好き実話怪談。同じく角川ホラー文庫から。

基本角川ホラー文庫から出ている実話怪談本は質が保証されている・・・気がする。例外もありますが。

 

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遠藤周作『なんでもない話』-僕達人間の延長線には猫、ATM、ぬいぐるみ、そして同じく罪を犯した人間が立っています。-

 

 

別に怖くもなんともないさ。

なんでもない、話さ。

 

 

遠藤周作『なんでもない話』(講談社 1985年)の話をさせて下さい。

 

 

 

 

【あらすじ】

心臓の凍るような恐怖と、絶妙のユーモアを織り交ぜた十編の小説世界。何気ない平凡な日常生活のかげに、人知れぬ秘密を隠し持って生きねばならない人間と言う小さな存在・・・・・。あるテレビ・ディレクターの人生を描く表題作のほか、「姉の秘密」「爪のない男」「恐怖の窓」「猫」「気の弱い男」「知らぬが仏」等を収録。

裏表紙より

 

【読むべき人】

・道徳の参考書・教科書が好きな人

・昭和の文学を読みたい人

・殺人とはいかなるものか・・・・とか考えてる人(「何でもない話等)

 

 

 

 

【感想】

本書は別に欲しくて手に入れた訳では無い。

たまたま気になっていたアンソロジー「宿で死ぬ」の冒頭に遠藤周作「三つの幽霊」が収録されており、それが怪奇小説集 「恐」の巻」から持ってきたものと知り、はて、あの遠藤周作がホラー小説を書いているのかとそこで僕は初めて知って、メルでカリった結果本書との抱き合わせでの出品が一番1冊単位の値段が安かったから、それで購入しただけである。怪奇小説集「恐」の巻」ほしさに手に入れた。本当何でもない話なのである。

結果、「怪奇小説集」と抱き合わせであった点、そして裏表紙の「心臓の凍るような恐怖」という文字に心躍り読んだわけだが、思ったものとはちょっと違った。怪奇小説・恐怖小説の短編集を期待していたがちょっと違った。

何というのだろう・・・僕がここに何か書き換えることが出来るのであれば、「日常にひたと感じる罪の意識を切り取った、共感必至の短編集」

もうもしくはもうあれです。「大人の心のノート」。

 

というのも、とにかく道徳的な内容が目立つんですよ。

「殺人を犯しても、平凡な生活を送り続けることが出来るのが人間、ってやつなんやで~」っていうのが結構な頻度で出てくる。

・・・。

 

・・・。

 

 

 

・・・むつかしいよ!!!

ただの怪奇小説求めてた僕にとっては滅茶苦茶むつかしいよ!!!!

道徳かよ!!

「心のノート」かよ!!!

でも思い出してほしい。道徳の退屈な授業の合間に見た、道徳の参考書、教科書、心のノート・・・あれは決してつまらなくなかった。むしろ面白かった・・・読んだだけで自分のランクが上がる気がした・・・。あの感覚に近い読後感が味わえる。

でも、怖くないんだよ~~~でも、怖くないんだよ~~~ぴえーん。今求めているのは面白い怪奇小説集だったのにぴえん。

 

 

 

 

以下簡単に各短編の感想を書いていく。

一番インパクトあったのは表題作「何でもない話」

 

「何でもない話」:母親を殺した杉本勝鷹の家を見つけた主人公は、浮気相手と借りた部屋で日々その家の盗み見にふけるようになる。職場のうだつのあがらない男がかつて戦争中中国人の捕虜を惨殺したこと、自分と浮気相手との間に出来た子の中絶に思いを馳せながら・・・。

人を殺しても、人は生きていくことが出来る。

人間の残酷なる一面を切り取った短編である。遠藤周作先生の表題作「海と毒薬」は同じく、人体実験を取り扱ったものだと聞いたことがあるが・・・(読んだことはない)、それと同じ道徳観がなんとなく感じられる一編。

特に、仕事先の男が戦時中に捕虜を殺したことを語るシーンはなかなかクるものがあった。昭和、特に祖父母が生きた時代はそれが当たり前であって、そういう時代だったんだなぁと思う。

令和現在ではメンタル病んでいる人が多い。清潔で血生臭さは減った分脳内は常にパンク。SNSで飛び交う自傷他傷。政治不信。コロナ。蔓延る不景気。清潔になったけれども明るくはない。暗い。

そのことに対し、「昔はそうじゃなかった」と高度経済成長期に想いを馳せる人々が多いけれども、当時は当時でなんか暗い、血生臭い、闇の部分が多々あったんじゃないかな。令和現在に匹敵する程の。

でも人の記憶が美化されるように、歴史も美化されていく。今の人々がうっとりと口にする「昭和」「昔」等実在しない、それこそ夢物語みたいなものなんじゃないか。

大阪万博で人々が夢見た「未来予想図」と何が違うだろう。昔を懐古するのではなく、今生きているからには今と向き合わなければならないし今を生きていかなきゃいけないんだと思う。

・・・って、殺人うんぬんより、殺人について軽やかに語る男を見て、時代自体に注目がいきましたとさ。

 

恐らく「何でもない話」の主役の2人と思われる。2人ともいい顔をしている。

 

「姉の秘密」:患者の一人である福島光子が死んだ。後日その弟という者から感謝の手紙が、医者のもとに届く。

表紙には少しインキのかすれた姉の筆跡で『病床日記』と書いてありました。p.37

展開は、読書をある程度してきた人なら予想がつくと思う。弟もやはりそのことを知っていた、知っていたからこそ、やはり医師に感謝を伝えられずにはいられなかった。「姉の恋の相手になってくれてありがとう・・・」と。

スマホもゲームもなく、医療の進歩も今ほど見込めなかった当時、彼女の心の拠り所はその夢物語の恋愛話だけだったのだ。

ああ。そう思うと切ないね。切ない。昭和の恋愛映画とかの良さが分かった気がする。

あ、あと弟が明らかに母校同じでワロタ。

 

 

「動物たち」:遠藤家の近くに動物病院がめでたく開院。しかしその看板を何と遠藤家の門の前に建てちゃった!!あと老犬が迷い込んできたよ。

花柳病・・・かりゅう病という言葉をこの短編で初めて知りました。性病とのことなんですってね。はえ~。トイレに行くのを「お花摘みに行ってまいりますの」と言うようなものか。

タイトルは「動物たち」と書かれているが、まぁ実際は「犬たち」である。犬のエピソードが2つ書かれた随筆。1つは毎晩牛乳を盗む犬。もう1つはモノクルをかけたように見える病気もちの犬である。

筆者は両者に対して優しいまなざしを向けているけれども、いやぁ僕はちょっと両方ともご遠慮願いたいな。牛乳盗まれるのもたまったもんじゃないし、家の周りにいるましてや病気もちなんてそんなん絶対汚いじゃん!!なんだろうこれも昭和ってやつですかね・・・。

あと最後の一行に、

私は今日、自分の家で一匹の犬、一匹のネコ、十二羽の小鳥、に十匹の金魚を飼っている。p.61

とあるが、他にwikiにもこの書籍の巻末にもそして筆者の作品群にも動物のどの文字も出で来ない。本当に、飼ってたのか・・・?

 

 

「爪のない男」遠藤周作がフランス留学中の話。モンブランには人が消える「悪魔の地点」という場所があるという。片手の爪がない男とそこを筆者は訪れるが・・・。

果たしてこれも随筆か怪しい。事実だったら怪奇小説集 「恐」の巻」「宿で死ぬ」に収録されていた「三つの幽霊」「四つの幽霊」になっていそうなものだが、あれに収録されていないということは、雑誌に書いた短編小説ではないかと思う。

そしてこれが本書の中で一番「怪奇小説」している。まぁ出てくるのはなんくるない感じのアレですが。

男「じゃ、出かけて見な、おまえさんだって、あの男のようになるかもしないぜ。なんあらおれが案内してやってもいい」p.71

あとタイトルにもなっている「爪のない男」が良いキャラしている。うすら笑いをすぐ浮かべる男の下品な、けれど肝の座っている憎めないキャラが良いです。CVは三宅健太さんでお願いします。

 

「恐怖の窓」:フランス留学中の話。やたらと安い下宿に2人で住んだが、その下宿は夜な夜な窓がガタガタいう。そして窓に映るのは・・・。

う~ん、小説か随筆か怪しい・パート3。事実だったら「三つの幽霊」が、先程の「爪のない男」含めて、めでたく「五つの幽霊」になっていそうなものだが以下略。

最後、窓に映ったものは僕の意表を突いた。現象自体は、結構似た現代日本が舞台の実話怪談を読んだことがあるからだ。なんか幽霊は今も昔も変わらないんだな・・・て。でも舞台は昭和だから結構新鮮に感じられる。

こういう昭和の、昔の、事故物件実話も読んでみたいわね。頼みます。東雅夫氏。

 

 

「猫」:29歳、オールドミスとなりつつある世津子は、妹が拾ってきた猫を嫌がっていたが・・・。

(猫を撫でながら、デートした気の弱い男を思い出して)自分はあの男ともし結婚すれば、愛情とか思慕などという感情はもてなくても、この猫に今、もったのと同じような情がひょっとすると起きるかもしれないな、結婚生活なんて若い人たちはアレコレいうけれども結局はそういう事ではないのだろうか。p.102

そういうことなのかもなぁ・・・。

29歳という年齢を迎えた女性の、結婚観の変化を捉えた短編である。怪奇小説のかの字もねぇ・・・共感しかねぇ・・・。

若い頃、それこそ大学時代新卒後数年は、すっごい好きな人!と結婚するものかと思っていた。けれど27歳の今じゃあそんなキラキラしたことは思わない。ちょっと好き、があればいい。恋はエッセンス程度でいい。

そんなドキドキする相手と暮らしていたら心臓が持たないよ~(ぴえ~ん☆)まさしく、猫くらいでちょうどいい。

30を超え35・40となれば結婚観に変化は生じてくるのだろうか。

猫、ATM、存在してくれるだけでありがたい・・・みたいな。

にしても、この短編が書かれたのは1965年。遠藤周作42の年齢である。まさか50年も前の40のおじさんが書いた小説に出てくる女性にこんなに共感なんて・・・だから文学やめらんねぇよ。

 

 

「気の弱い男」:気の弱いリーマン・啓吉は、ある日同級生だった男・田口が妻を殺したというニュースを見る。彼はむしろいじめられる側の気の弱い生徒だった。肌の白い面長い・・・。

啓吉の妻「女には、何もないほうが一番、倖せなんですよ。あんたなのように無茶のできない人と一緒に住むのが」p.123

啓吉の妻とは・・・要するに・・・世津子か!?猫を撫でながら結婚に思いを馳せたオールドミス・世津子なのか!?とうとう結婚出来たのか!?と思ったけど、本編では細君としか書かれていないし掲載雑誌も違うので何とも言えないけど、世津子か!?おい、お前、世津子なのか!?

本編は気の弱い男が気の弱い自分をあー厭だと思う短編である。まさしくこれこそ「何でもない話」。

最後主人公は、金魚を殺すことで気の弱い自分自身にちょっと反抗する。

何となく、分かる気がする。

彼が生まれる時代ももう少し前であれば、この金魚が中国人捕虜であったのかもしれない。「何でもない話」・・・冒頭の表題作で、上司が人を殺したことがあるということに衝撃を受けたけれども、多分戦争においての殺人ってそういうことなんだろう。何でもないんだろう。

 

 

「尺八の音」:義母と障害があるその娘を殺し、死刑囚となった男・花田に編集者である主人公は、取材のため会いに出向くが・・・。

(殺人事件を報じた20年以上前の新聞に掲載された花田の顔写真は)まるい眼鏡をかけて当時、かなりの学生がそうだったように頭を丸坊主にしている。眼鏡の奥の二つの眼はどこか気が弱そうで、憶病なように見える。p.130

ネタバラすと、主人公は花田と会うことは叶わない。そのため彼を看ていた木内医師との会話が主になる。花田は、アルペ神父の話をパンフレットで何気なく読んでから改心し、月々の小遣いを障害のある子どもの施設に送っているという。結局最後、結局花田自身は出てこないまま処刑されて終わる。

直接花田を登場させないことで、編集者である主人公とそして読者が彼の人間性に思いを馳せ「罪とは・・・罰とは・・・」と思いを馳せる構造になっている。

もしその平凡な男が医師のいうように別の環境におかれたなら、郊外から満員電車に乗って務め先に通い、勤め先から戻るとテレビを見、日曜日には子供のためにプラモデルの飛行機をつくってやる父親になっていたかも知れぬ。p.143

遠藤先生の作品に出てくる殺人者は、サイコパス等といった存在とは程遠い、総じて平凡な人間であることが多い。罪を犯した人間と罪を犯さなかった人間があまりにも平等に書かれている。

今は殺人等重い罪を犯した者を、無敵の人、と呼んでひとくくりにして社会から遠ざけがちにあると思う。けれども無敵の人と僕達に何の境界線があろうか。境遇が違ったら僕達もナイフ持って繁華街うろついてもおかしくないんじゃないのか。令和現在でも遠藤周作の作品が長く愛されるのもよく分かる。

 

 

「知らぬが仏」:一人娘である泉が、デザイナーの男と結婚するという。

一転、話は結婚前後における娘とその父親のどんでんどんでんを描いた話である。娘が父親に結婚をあれこれ認めさせるためいろいろ企んでいろいろ実行する。画策する。それを「知らぬが仏」と称している訳であるが、最後父親は娘のふとした表情を見て結婚を心から祝福する。

両者ハッピーで良い話だなあと思う。デザイナーの男もこれまたなかなか将来有望なデザイナーらしく読んでいる読者も安心できる設計なのが良いですね。

不倫・殺人・野犬(性病付き)・「爪のない男」・死刑・ゲシュタポが右往左往する短編集にどうしてこんな作品収録したんや・・・。

この作品と「猫」だけは好きですね。怪奇小説とは別ベクトルですけど。もうこの2編に関しては怪奇小説のかのkの発音自体も聞き取れないような感じですけど。

 

「お母さん」のんだくれのストリッパーは、月に一回離れて暮らす息子と会うのが生き甲斐であるという。そしてその息子が舞台を見に来るというが・・・。

せっつねえよぉ・・・・になる。もう怪奇小説うんぬんどうでもいい。せっつねぇ・・・・せっつねぇ・・・。

何が切ないのかは分からないし、息子の気持ち総てを推し量ることは出来ない。このあたり、まさしく道徳の教科書に掲載されていた純文学を思わせる。

やはりまだ、高校一年生である息子は、ストリップで金を稼ぐ母を赦せなかったのだろう。童貞にストリップはハードだったか。

でも、その後、息子が赦せなかった自分自身も責めるのは容易に想像できる。

母を赦せない、というのはある種殺人に値する罪の深さかもしれない。

 

 

 

 

 

以上である。

概ね面白かった。怪奇小説集・・・ではなありませんでしたが・・・。どの部分が「心臓の凍るような恐怖と、絶妙のユーモアを織り交ぜた十編の小説世界」なのかは全く分かりませんでしたが・・・。

にしてもサクサク読める文体には圧巻。そしてやっぱ後世に名前が残っているだけあって圧倒的文章力最高。

怪奇小説集 「恐」の巻」と続いて二冊目の遠藤周作で知Þが、もう次はあれですね。「海と毒薬」しかないでしょ。

 

あとまぁやっぱあれだね、戦争で人を殺したことが「なんでもない話」にひとくくりにされていることがあまりにも衝撃的過ぎましたね。

 

一昔前の文庫本のシュールな表紙、嫌いじゃない。

 

***

 

LINKS:

 

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死刑囚の歌人を扱った新書。これも面白かった。

 

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遠藤周作『新装版 怪奇小説集「恐」の巻』-幽霊がいたんだ!!まじで!!そこにいたんだよ!!!!いたんだって!!!まじ!!!-

 

 

 

 

【ホラー好きあるある】ビビり

 

 

 

 

 

遠藤周作『新装版 怪奇小説集「恐」の巻』(講談社 2000年)の話をさせて下さい。

 

 

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【概要】

ルーアン、リヨン、熱海で起きた怪異現象御綴った「三つの幽霊」をはじめ、とっておきの怖い話が九編。人一倍怖がり屋だった作者の恐怖心と好奇心が生みだした、不朽の名作集の新選版。(「怪奇小説集」改題)

 

【読むべき人】

・怪談が好きな人

・昭和の怪談に関心のある人

 

【感想】

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デザイン和田誠による表紙がいい味出てる

 

結論から言うと今回も、メルでカリました・・・。 朝宮運河氏編集の「宿で死ぬ」の冒頭に収録された「三つの幽霊」から、「え!?あの遠藤周作も怖い話書いてたんだ!?」となり、その作品が収録されていた短編集自体を購入した次第。もう一冊、同じ作者の短編集「なんでもない話」がついてきたので、そちらも本書直後に読んだ。

 

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写真では分かりづらいかも。

なんですが・・・文字、でけぇ~~~~。2000年に新装版とのことですが何、そういうムーヴだったの?

 

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写真だと分かりづらいかも。

一方「なんでもない話」は、文字、ちいせぇ~~~~~。

セットで売る文字の大きさじゃない。

 

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感想として言えば、まぁそれほど怖くはないかなぁということ。確かにどの話も幽霊やオカルトが絡んではいるんだけれども、恐怖!!という感じではない。ふーん、エッチじゃん。という某テニス漫画主人公の名台詞がありますが、あれになぞらえればふーん、怖いじゃん。そんな感じ。

でも、なんかわかんないけど、面白いんですよね。独特の味があるというか、テンポが良いというか・・・。

小説というよりは随筆と言う感覚。あとがきの妻のエッセイで「オカルト映画が大好き」と語られていますし、実際数編は「三つの幽霊」含め、まぁ随筆なんですが・・・。そういった現象に対する愛情が感じられる。おざなりじゃない。

あと後世に名を残す作家はやっぱり文章上手いですね。サクサク読める。

遠藤周作」という名前だからさぞかし難しい文章書いてるんだろうなぁと今まで手を付けなかったのが悔やまれますね。

 

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以下簡単に各短編の感想を述べていく。

一番好きなのは「蜘蛛」「あなたの妻も」

 

「三つの幽霊」:ルーアン、リヨン、熱海で起きた怪現象を綴った。(本書裏表紙より)

ぼくが理解できないのはこの経験がぼく一人のものではなことだ。p.49

それぞれの都市のそれぞれの体験を書いた随筆である。クライマックスは作家・三浦朱門と出かけた旅行先「熱海」での体験でなるほどこれは心霊現象。だけれども、学生時代の留学先「ルーアン」「リヨン」での体験はまぁ・・・うん。

簡単にネタバラすとこんな感じ。

ルーアンでの体験は・・・宿で窓を開けたらめっちゃ嫌な気配がした!!以上。

「リヨン」での体験は・・・誰もいないはずの下宿先の怪談で足音っぽいものが聞こえた!!以上。

もう完全に「気のせいでは・・・?」レヴェルなのである。間違いなく、実話怪談の単行本などにも収録されないタイプ。

でもそれを遠藤先生は「俺はこんな体験をしたんだ!!幽霊ってのはいるに間違いないんだ!!!」というテンションで終始書くものだから、怖い・・・というよりかはちょっと面白い。ふふっとなる。ふふっ。

ところがどっこい、3編目、「熱海」ガッツリ心霊現象が描かれている。

同様にネタバラスと、2人が宿泊したのは奇妙な旅館。古い離れ。そして深夜・・・

「ここで、ここで俺は首を吊ったのだ」p.39

と聞こえる声と人影・・・。

しかも作者だけでなくともに旅行を下三浦朱門先生自身もその場で同じ経験をしているという。「三浦先生もこうやって書いているんだ!!ほら!!ほら!!」ってテンションで本人の文章も引用されている。

「熱海」のはもうルーアン」「リヨン」のとは格が違うのである。ソシャゲでいうとSSR級の幽霊とN級の幽霊を、ひとくくりに「三つの幽霊」として一編の随筆に遺しちゃっているのである。もうこれじゃあSSRの方・・・「熱海」の幽霊は悔しくて悔しくて浮かばれないに違いない。

 

「蜘蛛」:怪談会に呼ばれた作者。叔父主催の退屈な怪談会である。熱海での体験を簡潔に話し、早々にタクシーに乗り込もうとすると、怪談会の時じっとこちらの顔を見ていた青白い顔の青年も同乗を申し出る。そしてその青年がタクシーの中で語った話は、半分顔が爛れた女の話だった・・・。

青年「失礼しました。車がスリップしたものですから」p.83

昨年遠藤周作先生の新選短編集が2冊刊行された。奇談をメインにしたものと、ミステリーをメインにしたものである。その前者の表題作が本作である。

成程、表題作に選ばれるだけあるなぁ・・・と言った印象。男の薄気味悪い描写と言い、その語る話の内容と言い、そしてまさかのクライマックスといい・・・。男自身もそうだったが、男が語る話に出てくる女も気味が悪かった。

本編で唯一、正統派ホラーといったところか。他はユニークで親しまれた遠藤節がちらほら見られるがこの話だけは普通に怖い。文中に出てくる熱海の怪談と言うのは「三つの幽霊」に出てきた浮かばれないアイツ(SSR)のことであり、連続して楽しめる仕様となっている・・・のも良い。

そういえば、蜘蛛は良く人と合体させられがちだけどあれ何で。同じく不快感を起こす虫といえば、蝉、G、蛾、黒揚羽・・・等色々あるけれども圧倒的に人間、蜘蛛と合体しがちじゃない?

百足は某有名映画で「合体」しておりましたが・・・。

あとこれ映像化してくれないかな~・・・。遠藤周作の息子はフジテレビのお偉いさんだという。本郷奏多を青年役、笹野鈴々音を青年の話で出てくる女役で・・・。

 

「黒痣」:気の弱いリーマン・橋本は、ある日お給料のほとんどを使って中古のカメラを購入した。しかし、そのカメラで撮った写真を現像すると、橋本の顔のみに黒痣が写るようんになり・・・。

小説か随筆か、虚構か事実か分からない。黒痣自体は絶対小説だろ~と思うけどその黒痣の謎に迫っていく感じはドキュメンタリーチックだから、もしかしたら随筆なのかもしれない。

橋本「エグロンってどこの会社でしょうか」p.95

終盤そのカメラのメーカーがエグロン社ということが判明する。「エグロン」と検索すると「鷲の子供」という意味らしい。くわえて「エグロン カメラ」と検索すると、確かに「AIRGLON」とロゴの彫られたカメラの写真が出てくる。ただし、作ったのはアトムス社という会社らしい。

その古いカメラが写した写真があるブログには掲載されていたが、それで撮った「凶」のおみくじの写真を見て、僕はそっとウィンドウを閉じた。そっ閉じ。同じく撮られた人間の顔に黒痣はなかったけれど。

 

「私は見た」

その手始めとして私はさきに書いた熱海の幽霊屋敷をふたたび探訪したルポをのべるつもりであるが、勿論これは実際の報告記事であるから月日、自国、現場写真を掲載するつもりでいる。p.115

あの熱海の幽霊屋敷に、カメラマンと女優を連れてレッツ再訪★の話。

トイレに怖くて行けないだろうからとうどんのどんぶりを持ってくる遠藤先生、そしてそれを実践しようとするカメラマン、やっぱり怖いからと分けた布団をくっつける旨をお願いする女優に「この度は仕方ない」と鼻をのばせば・・・その夜明けに待っていた物は!?といった具合。

まぁその起きた現象も、正直大したことないのだが「こんなことがあった!!!」「こんなことがあった!!!」と騒ぎ立てる遠藤先生。

紙面越しにうるせえ~・・・。

怪奇小説というよりかは、エッセイ漫画。なかなか面白かった。

 

「月光の男」

占い師「霜山さんは生きていますよ。カードは本当のことしか告げません」p.143

北千住・綾瀬間の線路で轢断死体となって国鉄総裁が発見された未解決事件・・・・霜山事件から十年。雑誌記者達は、特集の為そこを訪問する。そこで殺された総裁そっくりの影を目撃し・・・!?

この話は遠藤先生が一切登場しない。よって小説である。と思う。

文章力がもうピカイチだからスラスラ読めるが、霜山事件の内容は愚か名前すらうろ覚えとなった現在では面白さはいまひとつ欠ける。こういう昭和の小説があったんだなぁ、といった具合。まるで博物館の展示物を見ているかのように読む。

日影「正田美智子さんの結婚も、池田通産大臣の任命もピタリと当てたそうだぜ」p.135

の台詞を読んだ時にはもうその昭和で塗り固められた昭和THE昭和にくらくらする。

十年・・・例えば、今現在書かれている震災を基にした小説もやがて時代性は色褪せて、「ああこういう平成の小説があったのだなぁ・・・」と思われる日がくるんだろう。まるで博物館の展示物を見ているかのように読まれるんだろう。実際・・・、阪神淡路大震災関連のフィクションはそういった域に達しかけている気がする。

ちなみに本作と同じく、実際の血なまぐさい事件を基に書かれた小説と言われて思いつくのは柚木麻子「BUTTER」。あれも読みたい読みたい思いながら全く読めてないんだよなぁ・・・。BUTTERの賞味期限・・・否消費期限が切れる前にぜひとも読みたいとは思っているが。

 

「あなたの妻も」

男というものはふしぎなもので一度、自分の子供を産んでくれた妻はもう女ではない、女というよりは子供の母親なのだ、と信じ込んでしまうのである。p.159

しかしその幻想を打ち砕く2つの話。女は子を産もうとも女なのである。子供の母親、という立場は幻想にすぎない。

1つ目はフランスの女・イボンヌの話。もう1つは日本の妻・トキの話。

病んで疲れた挙句に我が子を殺した女の話二話である。

特に印象に残っているのが一話目のイボンヌの話。ジャニーヌというそのイボンヌの娘の可愛らしいエピソードが書かれている分、その死は強く心に残った。

ネタばらすと、イボンヌは男を作り、そして「コブ付きは嫌だ」男の言葉に悩み悩み悩んだ挙句、ジャニーヌが寝ている台所のガス栓を開け、自分はその音を聴きながら男と寝るのである。

イボンヌは何を思っていたのだろう。母であることよりも女であることを優先したイボンヌ。ガス栓の音を聴き娘が静岡に死にゆくのを自覚しながらも男に身をゆだねるイボンヌ。そしてジャニーヌは薄れゆく意識の中何を思うのか。男の前では母が母でなくなりつつあることに気づいていたのだろうか。気づいたうえで純粋無垢なふるまいをしていたのだろうか。様々な思いを馳せずにはいられない。

一方トキの話もなかなか陰惨。人生の苦労の果てに疲れ切って、泣く子供を殺めてしまう。鶏を使って。

女というものは、ちょっとしたきっかけで「母親」という立場を捨ててしまうことがある。男に女の恐ろしさをとくと説いた、2022年現在じゃあ炎上必至な随筆(もしくは小説?)である。

 

「時計は十二時にとまる」:主人の理不尽な言いがかりにより自殺した時計屋の青年が売った、その屋敷の時計は夜の12時にぴったりととまるという。ので実際に行ってみた。

というわけで、おなじみの心霊スポット訪問記である。

ところが今回はまぁ・・・。

我々の寂しさは決して真相をあばくものではない、怪談をやむをえずあばいたという寂しさだった。p.208

結論から言うと「時計は十二時にとまらない」。釣果ナシの結果に終わる。

だが、この肝試しをする若者達を気に入った、日露戦争にも参加したという老人が、彼等を呼んで晩餐会を開催するとの旨。行ってみるとその晩餐会に並んだもの・・・がメインディッシュとして描かれている。

所謂ゲテモノである。そのなかの一つにカエルが出てきた。今じゃあちょっとした居酒屋に行けば食べられる珍味である・・・ことを知ったら遠藤先生はたまげるだろうなぁ。

 

「針」:東京神田、駿河台にある文化学院の女子学生、成瀬由紀子は夏休みのアルバイトで、青山南町にあるお屋敷の留守番の仕事を受ける。庭の薔薇と鳥の面倒さえ見れば7000円出すという。しかしその屋敷には物を触ってはいけない・入ってはいけない部屋があって・・・!?

老人「絶対に手をふれないでほしい。・・・・・・できれば、はいらないでほしいのだ」p.217

勿論入っちゃうよ~~~!!!という話である。途中で成瀬の彼氏も出てきて、怪談の王道突っ走る作品。ここまであらすじを書くと針一切関係ないじゃんと思うかもしれないが、一応最後の最後に出てくる。

終盤の突拍子もない展開にあっけにとられる。ただ最後のその事象が事実か事実じゃないか・・・といった終わり方はいかにもTHE怪奇小説

怪奇小説集」とあるが、実際に怪奇小説らしい怪奇小説は、この「針」と「蜘蛛」そして最後の「生きていた死者」である。残りは随筆か、ノンフィクションか、怪奇小説よりかは不思議な話である。もしかしたら、そういった類は好きだけれども、著者自身の敬虔なカトリックと言う性質上、ホラーな創作というものはあまり得意な分野ではなかったのかもしれない。

本書は新装版とのことだが、それだったらタイトル「怪奇小説集」の部分を変えるべきように思う。「怪奇の箱」「怪奇小説・随筆集」とかそういった具合に。小説集と謳う割に小説が少なすぎる。まぁ20年も前の編集者に文句たれても仕方ないんですけど。

 

「生きていた死者」:

会社の重役「それから第四回の「久米賞は・・・・・・(中略)芙蓉美和子さんの「老残記」に決定いたしました」pp.242-243

毎年発表される文芸賞、久米賞を受賞したのは、東京都出身の快活な女子大生であった。しかし彼女の受賞作は、戦後5年に亡くなったある男性作家の筆致と酷似していることに気づいた週刊誌記者達は・・・!?

「久米賞」*1は、芥川賞を創作に落とし込んだ賞である。その証左に、大衆小説をメインとした「鷗外賞」が毎回発表されている。

話の真相は、引っ張った割には総ての謎が解けた訳では無いし至極あっさりしたものである。けれど、その最後の最後、真相が明らかになった瞬間に起きた事象が印象的。死者は死者であるべきなのだ。死んでいなくてはならない。生きていてはならない。生きていることがばれてはならない。

また、以下の会話も結構インパクトあった。

私(週刊誌記者)「小説家もこうなるとスターだね」

中山(週刊誌記者)「同じ今年の受賞者でも鴎外賞のほうはパッとしない。もう作品の世の中じゃないんだな、小説家も雰囲気なんだよ」p.258一部中略

でも最近は、そういった流れに逆らうかのように作品をしっかり選定している・・・気がする。この前の芥川賞とか、僕はてっきりくどうれいんが受賞するものかと思っていた。違った。受賞作は、石沢麻依「に続く場所にて」李琴峰「彼岸花が咲く島」、2作品が受賞したが僕はこの2作者のこと両方とも恥ずかしながら、名前すら知らなかった。過去には、セカオワの沙織ちゃんがノミネートされた時もあった。同じく受賞には至らずだった。

遠野遥や宇佐美りん更に遡れば村田紗耶香のように、作品からスターを作ろうという気概が文芸界隈から感じられる。この作品が受賞したから彼等はスター作家なのである。彼等がスター作家だから作品を受賞したわけではない。

それは文芸の質の維持といった点では素晴らしいことだと思うし、評価されるべきことだと思う。一方で、だからこそ世間の文芸に対する関心がどんどん薄れて行ってるような気がする。閉じられた文化になりつつあるというか。本読んでる人たちの間で盛り上がってくださ~い(笑)、みたいな。まぁもう本屋自体が皆行く場所ではなく本好きが行く場所になってしまった時代において、それは当たり前のことなのかもしれないけれど。

 

エッセイ:遠藤順子

遠藤周作の妻が書いたエッセイである。生前の遠藤先生について書かれているが、やっぱり相当なびびりだったらしい。分かる。びびりほどホラー小説とかホラー映画とかそういうの好きだよね~。

ちなみにこの奥さんは昨年亡くなられていたのですね。正直もうとっくに亡くなって・・・(失礼)意外と昭和って地続きなんだなあと思う。ご冥福をお祈り申し上げます。

 

 

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以上である。

なかなか面白い一冊だった。

遠藤周作名前こそ聞いたことあるが読んだことなかった。でもその文体の読み易さに驚いた。これが最大の収穫。「海と毒薬」「沈黙」等名前だけ聞いたことあるような傑作も、この文体なら読めるかもしれない。

ホラーを読みたくて購入したがその期待にはまぁ・・・うん・・・な分、僕の読書の関心の幅を広げてくれた一冊でもあった。

 

***

 

LINK

本書に収録されている「三つの幽霊」が掲載されているホラーアンソロジー

 

tunabook03.hatenablog.com

 

対の「家」がテーマのアンソロジー。どっちも面白いのでどっちも読もう。

 

tunabook03.hatenablog.com

 

20220327 そういや最近「ふーん、エッチじゃん。」聞かないですね。好きだったんだけどな。

*1:「久米賞」は実在するみたいですが、地方の中学三年生を対象とした文芸賞のようで、本書における「久米賞」とは全く関係ないと思われる

柚木涼太『お姉さんは女子小学生に興味があります。3』-キュンを通り越してギュン。-

 

 

相変わらずやべぇな!!!!

 

 

柚木涼太『お姉さんは女子小学生に興味があります。3』(竹書房 2019年)の話をさせて下さい。

 

 

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【概要】

美人教師×JS

昔の幼女のとの再会、いけない三角関係!?

 

みのり「幼女に課金できる喜び・・・最高か!」

 

のりをめぐる今の幼女と昔の幼女の負けられない戦い!!

 

帯より

 

【読むべき人】

桜trick好きだった

・幼女レズ好きな

・女子小学生の、例えばパステルカラーのランドセルとかメゾピアノとか、ああいう概念が好きな

ロリコンではないけどロリという概念が好きな

・萌えたい

※女性作者によるロリ百合漫画の為、あんまり男が読んでも面白くないのかもしれない。性的なことを描いているようで、性的ではないんですよね(日本語)萌え~、で終わる漫画として読みたいのであれば、自信をもっておススメできるのですが。

 

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【感想】

すっげぇドツボにハマっていたのに、忘れてた~!!!存在!!!

というのと、あと漫画熱がここ最近めちゃくちゃ高まって来ていて。

ブックオフオンラインで3巻4巻購入した次第。そしたら両方綺麗な状態で帯までついてきていて・・・「ありがとうございます(うっ)」になりました。

 

というのも本書、静岡市の駅前の新刊書店に多分何処にもないんですよね。ふざけないでほしい。

新静岡セノバにある駅前最大級の書店ジュンク堂にないんですよ。本書。まじでふざけないでほしい。

そんでもって、谷島屋にもないでしょ、ひばりブックスあるわけないでしょ、そしてアニメイト静岡のアニメイトってパルコにある小規模のなんですけど、まぁないんですよね。これが。本当ムカつく。

で、多分静岡市のここがなければ、静岡市の本屋全滅なんですよね。クソ。

メロンブックス潰れたから。クソ。

どこで買えばいいんだよ・・・静岡市民は・・・。

俺は悔しい・・・悔しいよ!!!

静岡市民は!!!!

「お姉さんは女子小学生に興味があります」を!!!!

どこで!!!買えば!!!いいん!!!ですかああああああああ!!!!

一刻も早く静岡市最大級の本屋となり果ててしまったジュンク堂はその責任を取って入荷するべきだと思います。一刻も早くです。

何故なら本書を取り扱うことによってJS×美人教師と言うニッチな百合要素が満たされれることで静岡市民の心は安定し花は咲き、空には虹が、リニアは無事静岡市駅前経由してぶっ通ることが決まり、南海トラフはなんだかんだで収まって、治安が良くなり、万博も始まりオリンピックも始まり、戦争は終わり、平和が訪れ明るい静岡!!!みんな大好き静岡!!!になるからです。

静岡の治安を考えるのであれば一刻も早くジュンク堂は本書を取り扱うようにするべきですし、日本の政治をどうにかしたいのであれば一刻も早く麻生太郎はこれを読んで最新刊の帯にコメントを書くべきです。

そうすることで日本は明るくなります。

そして僕は亡命します。

 

 

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閑話休題

それくらい、なんか攻めてたね。

みのりちゃんがね、もうね、限界突破してた。休養前の氷川きよしくらい突破してた。

そして小恋・・・この幼女の可愛さもライバルが出現することによってさらに磨きがかかり限界突破してた。休養前の、米倉涼子氷川きよしくらい突破してた。

もう本当にやばい。久々に読んだら小恋ちゃん激かわすぎて

「はぁ・・・!!!」

「ふぉ・・・!!!!」

「んお・・・・・っ!!!!」

って声が出る。

基本僕は漫画で萌える、ってことはないんですよ。声ないし。動かないし。

でもこの漫画だけは「うひょひょ・・・」までは普通に声出ます。「エッチだねえ・・・!」まではちょっと意識しないと口に出ないけれども。

それくらい最高!!って漫画です。最高~。かわいい~。

ああ~~~~。

 

あと何でしょうね。タイトルは結構いかがわしいし、まぁその通りなんですけど、内容はそこまでエッチではないです。全年齢対象。でもエッチなんですよ。

心のち〇こガガンガン勃起します。

でも多分作者が女性なんですよねこれ。自画像も女性なんですが。

あくまで、「最近のJSってかああいいな~~~」の延長線上にあるので、ぎりぎり性的匂いがしないんですよね。

だから、コミックLOとかよりは、「ゆるゆり」「桜trick」等一迅社の延長線上として本書を読むべきだと思います。そこに女子小学生と言う要素が絡むのでちょっとややこしいんですが。でもそこをなくすと本書の最大の個性が死ぬというか。

あくまで「かあいい~」と延長線上。

実際、みのりちゃんの乳首は描かれていても、小恋の乳首は描かれていない訳ですし。

JSを愛でるコミック。

健全な漫画なんですね。

だから別に麻生太郎がこれを読んでいたとしても僕は全然驚きませんし、「あ、やっぱ政治家も萌えって必要なんだな」って思います。ていうか疲れている社会人は読みましょう。

 

ただ、あくまで作者が女性、そして僕も一応女性なので・・・、男性にどれだけ響くのかは全く分からない。女性が作った最大の萌アイコンとしてはデジキャラットが有名ですが、あそこまで響くのかな・・・。

心のち〇こにくると言いましたが、少女漫画的な「ときめき」のシーンに僕は最大級に抜気ばっきばきになります。

なので、疲れた社会人女性、兼きららアニメを見たことがある女性・・・にはおススメです。女性声優とか絶対本書好きな人いっぱいいると思うわ。プリキュアとか好きな女オタクには間違いなくお勧めできる。

 

あと、まぁ・・・あれですよ。小恋ちゃんが、今はほっとんど見ない八重歯メインヒロインって言うのもいいんですよね

あと髪の毛グラデ・・・あ~かわいい~。もう全部が可愛い。リアルの小学生よりかわいい。

 

 

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以下簡単に各話名台詞・あらすじ、感想、ときめいたところ(以下、ときめきと略す)などをネタバレ気にせず記しておく。

 

 

第15話 今の幼女と昔の幼女:昔の幼女・愛花(まなか)登場・・・・!!

みのり「お姉さんとえっちなのしようか・・・」p.15

ときめき:小恋「いまはこれでよやく・・・だめ?」p.23

と、愛花とみのりのキスに嫉妬した小恋が自分からみのりにちゅーをしたところ。

たまんねぇぜ・・・。

この愛花っていうのがJKで所謂みのりの「昔の幼女」なのですが、結構これまたぐいぐい来るんですよ。すると女子小学生なりに小恋ちゃんもぐいぐい頑張ってえいえいおーっ!!するんですね。最高か?おい。ここは最高天国なのか?

で、最後にキスを予約するんですけど、女子小学生の精いっぱいのちゅーなので、「ちゅっ」なんですよね、うあああああっ!!!!ってなったね。正直下半身ちょっと熱くなったね。やばかった。

途中、愛花が胸をみのりに触らせたり、なんと昔みのりと愛花がえっちなちゅーをしていたりと衝撃的なことが色々あったりするんですけどでもまぁどうでもいいね!!!最後のちゅたまんねぇ。

あとおまけ漫画に描かれている

みのり「小学生以下じゃないとえっちな気分にならない・・・」

先輩「サイテー」p.25

冷酷かつ的確な先輩のツッコミがこの漫画をギリ健全な域に引っ張ってきています。そう、それは例えば岡村がコロナ女性風俗発言でまじやばになったときに相方の矢部がオーバーキル説教したことでセーフになった風潮・・・!あれに似ている。

あとタイトルが、愛花本格参戦回なのに「今の幼女と昔の幼女」、小恋のことが先に来ているあたりガチを感じますね。みのり、サイテー。

 

 

第16話 オトナとコドモ:学園祭準備が始まったのとあと銭湯

小恋「いいながめだよ!!」p.42

ときめき:愛花「・・・だってガチなんだもん」p.45

と頑張って自分の胸部をみのりの顔に押し付けた後で、愛花がやきもちを焼くところ。

後半は銭湯でふつーにおっぱいが見られます。ただ、みのり、愛花は先端まで描かれているのに対して、小恋は描かれていないんですよね。そこにJSへの経緯が感じられて本当に好きです。

そして、小恋の「いいながめだよ!」っていうのは小恋の足の付け根のところをみのりが顔の真正面で間近で見るシーンなのですが・・・たまんねぇぜになったこれは。たまんないね。多分男性読者だったらここに一番バッキバキになるんじゃないかな。

でも僕が一番今回キュンって来たのは、やきもちを焼く愛花なんですよね。めっちゃ可愛い。勇気を出してもみのりはちっともこっち向いてくれないから妬く。かーわーいーい!!!女子高生やってんなぁ!!おい!!青春してんねぇ!!おい!!になります。めっちゃぎゅんってきた。

ただこの回ていっちばんエロいのはみのりのおっぱいですね。微妙に垂れていて豊満でしっかりデカくて・・・・すっげぇいいおっぱい描くんですよね・・・この作者。多分みのりが好きって言う読者も多いんじゃないかな。おっぱいが素晴らしいから。

 

 

第17話 みのりちゃん先生と文化祭:幼女にクレープを奢ったよ~。

愛花「お姉ちゃんにもらったラムネ・・・大事にしなきゃ・・・」えへ・・・ p.58

ときめき:小恋・愛花「わ」p.65

みのりがパイのクリームをあえて微量で二人の顔にかけた疑似的顔射シーン。

どエロいわ。ビックリした。途中でいきなり白いどろどろした液体が飛び散るものだからこっちがビックリしたわ。麻生さんもびっくりしちゃうよ・・・こんないきなりえっちいシーンいれられたら・・・。

あとこの回は結構ど直球のエロネタ仕込んでいて爆笑しましたね。

特に愛花がみのりにラムネを奢ってもらってうっとりするところ・・・。お前・・・絶対ラムネ飲んだらその容器・・・夜、絶対挿入してみのり浮かべながらアレするじゃん・・・。やーばいでしょ。爆笑しちゃった。小恋にはまだ出来ないね。

あとみのりがなんかとろとろになるシーンもあります。もうパンツこれびっしょびしょになってんだろみたいなとろとろシーン。それに興奮する小恋・・・。

何がビックリって全部小恋の親御さんの前で行われているってことだよ。親御さんの目の前だからセーフじゃねえんだよ。あと小恋のかーちゃんいくら眼鏡してるとはいえ視力死にすぎだろ。

いろいろツッコミどころがあってこれぞラブコメ・・・ちょっぴりエッチな学園ラブコメだよぉ・・!!!になります。神回。

 

 

第18話 それぞれのスキのかたち:愛花×みのり

みのり「も ムリ・・・愛花ちゃん 許して・・・」p.82

ときめき①:愛花「否定しないんだね・・・そっか・・・ロリコンのお姉ちゃんは昔の私と・・・本当はどこまでしたかったのかな」p.74

ときめき②:小恋「いまから小恋とふたりでいっしょにこいしよう?」p.90

愛花とみのりの濃厚な絡み回。

すん・・・とした表情で「どこまでしたかったのかな」という愛花には不覚にもむぎゅって来ましたね。いきなりそうやって女子高生を見せてくるのやめてほしい。ときめいちゃうから。

そして目隠しされてブラ丸出しでせめにせめられた・・・みのりもめちゃくそシンプルにどエロい。教師がこんなでいいのかおおん?ぴちぴちってしたくなる。本当いいおっぱいしてるんだよなぁ・・・。

ブラに微妙に肉がのっかている感じの描写がスッゴクこだわっていてそこが僕は本当に好きですね。

でもやっぱ一番ときめくのは・・・最後の小恋。「いっしょにこいしよう?」なんてさ、笑顔でさ、言われてさ。もうさ、健全な恋心がキュンキュンですよ。日向坂「キュン」がもうかき鳴る感じ。

そうこの漫画根本はこうでないとね!!っていう。あくまでエロはおまけなんです♡

 

 

第19話 おねロリブルーの攻略法:小恋とみのりがJSとお姉さん、役割好感して見たよ!

みのり「小恋ちゃんの太ももの間の空気おいしい!!!」p.103

ときめき:小恋「ぜったいしあわせにするから あんしんしてりょうおもいしよう」p.110

真っ直ぐな目で言ってくる小恋ちゃん激かわが過ぎる。あんしんして両想いしていいんですくぁ!?になる。いいんですね!?

愛花が出てきてから小恋の愛情表現がかなり直球になってきていて、その度に我々はドキドキする。ヤバいよ。

一挙一動の表情も可愛いし、交換しちゃえばいい!!っていう直球ドストレートの幼い思考回路ももう最高ですね。大好き。本当好き。可愛いねぇ・・・小恋ちゃんは、可愛いねぇ・・・になります。

あとみのりのおっぱいぱっつぱっつの横ラインに凄くこだわりを感じたのと、最後の先輩のオーバーキル、やっぱ信頼できるわぁ。

 

 

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番外編①みのりちゃん先生といっしょ:もしみのりが担任だったらもっとヤバイぞ。

ときめき:小恋「せんせーのへんたいさん♡」p.118

ロリコンじゃないんですが・・・ここだけ最高にコミックLOしていて僕はやばっかったっでっす!!やばかっちゃん!!パンツの描写にこだわり感じる。EATMEってかいてあるし。

 

 

番外編②メイクの話:悠とヒメがキスしてメイクするよ。

ときめき:ヒメ「ヒメも大人みたいにおけしょうしたい」p.121

悠×ヒメ。相対的に健全に見えるだけで、アラサーと女子小学生とキスするだけでもだいぶ事案なんだよなぁ・・・。

ヒメちゃんは今回出番少なかったですが・・・結構好きです。長縄まりあさんでお願いいたします。

 

 

番外編③ちょっと昔の話:ロリ愛花

ときめき:愛花「おねえちゃんならいいよ?」p.126

幼女の愛花は愛花でちゃんと個性のある可愛いで、素晴らしいですね。きちんと育ちの良い子特有のワンピースを着ているのが素晴らしいですね。小恋の模倣版じゃないんですよね。ぐっとくる。

 

 

番外編④文化祭の夜:悠に脱がされる愛花

愛花「お姉ちゃんとの子を身ごもってキセージジツを作るにはどうしたら」p.131

今思ったんですが、愛花はみのりを「お姉ちゃん」と言うのに対して、小恋は「みのりちゃん」なんですよね~。もう名前で呼んでる地点でもう勝敗はついているような気も・・・。

でもお姉ちゃん呼び・お兄ちゃん呼びもいいよね。名前とお兄ちゃん・お姉ちゃん、どっちは論争やりたいですね。・・・発想が10年前ですかそうですか。

てか悠はヒメなのか、愛花なのかどっちかに決めろ。

 

 

番外編⑤今年もよろしくお願いします:悠の携帯のロックの番号は、みのりちゃんの誕生日だよ

小恋「ユウやっぱりみのりちゃんのこと・・・」p136

一番ヤベー女、悠説。

やっぱ二股三股はよくないよね。絞れ。

 

あと2巻の購入特典のおまけ漫画が収録されてた。この漫画は本当隅々まで可愛い女しか出てこないからいいんだよな。

 

 

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以上である。今回も超最高でした。

特にみのりちゃんのおっぱい、愛花という一途&「お姉ちゃん呼び」という強いキャラクターが出てきたのは強かった。

今後どうなっていくんだ・・・!!楽しみだ。3月の8巻発売までに全部読まないと。そして最新刊をジュンク堂で予約することで静岡市の治安を僕が守るんだ!!!!

 

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20220326 4巻までしか読めてない。あんだけ意気込んでたのに新刊今月中は無理そうです。でもジュンク堂で買う。絶対だ。

 

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