無縁でいたい。
そしてこのままも、どうか無縁で。
福澤徹三『忌談2』(KADOKAWA 2014年)の話をさせて下さい。
【概要】
夜な夜なマンションの上の部屋から聞こえる電車の音の正体は(「電車の音」)。
就活に悩む女子大生が遭遇した恐怖の体験(「最終面接」)。
新米ホストが店からあてがわれた寮の部屋は、なぜか2DKだった(「過去のあるへや」)。
新規に回転したスナックで怪異が頻発する(「まちびと」)。
ギャンブル好きのふたりが若いカップルを恐喝した結果(「オロク」)。
読後感最悪、夜読むと必ず公開する、本当にあった嫌な話シリーズ第2弾!
裏表紙より
【読むべき人】
・グロテスクな話が好きな人
・暴力団等アングラ系の話が好きな人
【感想】
ネット上のレビューは惨憺たるもので、「ヘドがでる」「この方面にだけはいって欲しくなかった」「ただ気持ち悪いだけ」といった感想が並んでいる。p.3
「ネタ切れか」というレビューもあったが、まさしくそうである。p,4
締切が迫るのに原稿が足りず、諸般の事情から活字にするのをためらっていた話も収録したが、関係者から苦情がきそうなのが不安である。p.5
断言しよう。
本書で一番面白いのはこの「まえがき」pp.3-5である。
内容は・・・まぁうん。面白くないことはない。つまらないことはないが・・・。
「狂気、殺人、暴力、事故、病気、災害、貧困」・・・これは前巻「忌談」のまえがきに書かれた本シリーズのテーマであるが・・・その傾向が更に色濃く強くなっている。
それで怖いかというと・・・うーん。面白いとは思うけれども、正直そこまで怖さは感じなかった。
というのも僕は今現在28歳フリーターメス童貞ではあるものの、そこそこ普通に育ってきた普通のビビりである。
幼稚園小学校中学受験し中高一貫。一応進学校であったため自然と大学を目指すようになり一応東京のそれなり卒・・・。父親は大手企業のサラリーマン母親はパート介護士。
順調に育った地方の子女である。
まぁこの後ニートしたりフリーターになったり母が癌を患ったりしているためしているため、順調とは言えない訳ですが。
何が言いたいかと言うと、暴力団はおろか、ソープ・風俗はおろか、ホスト・キャバクラはおろか、麻雀・パチンコ・競馬・ギャンブル・離婚・家庭崩壊・いじめ・・・等とは無縁にここまで来ちゃったのである。
だからこう、「これだけ恐ろしいことがお前の知らないところで行われてるんやで~!!!」という話を延々とされても、正直いまいちピンとこないのである。
「歌舞伎町にはさらなる闇が蠢いてるんやで~!!!」言われても、これもまたピンとこない。人生において歌舞伎町行ったことは片手で数えるくらいだし、それも通り道としてである。ゴジラがくっついてる映画館はすごかったなー。
福澤先生が前巻より「派手な怖さ」と求めて書かれた本書であるが、その結果、さらに僕を脅かすにいたらない一冊になってしまった。無縁過ぎる。
でもまぁ、つまらないことはない。「へ~裏社会ではこんな怖いことがあるんだ~」てな感じでまぁまぁ面白い。一話一話短いためサクサク読めるし。
あとまぁ「締め切りに迫られた」とだけあって、一話一話の冒頭に作者が聞いたことある話や一般的都市伝説等が書かれている。よく言えばエッセイ風。悪く言えば、あ、これ多分原稿枚数の水増しですね・・・。
でもまぁ文章力達者な人なので。そこらへんもめちゃくちゃ面白いです。なんかメルカリを見る感じエッセイっぽいのもあるんですよね。買ってみようかな。
新品で買え・・・。
以下簡単に、印象に残った話を挙げておく。ネタバレ有。
ただし前述したように、本書は僕に刺さらなかった。1巻のがぶっささった。ので、少なめ。ネタバレも躊躇わない。
「約束」pp.97-113
「この話をしてくれたとき、Oさんは酔っぱらっていて、しくしく泣いてました」p.112
長め。女子大生二人が海外で拉致監禁される話である。どうやって逃がされたかというとある「約束」をさせられたという。
ページ数に比例して謎が多い一編である。
拉致される前に女子大生達は地元の激安タクシーで酷いトラブルに遭っている。その後の拉致監禁。あの薄汚いタクシードライバーと関係があるのかないのか。日本の普通の女子大生をわざわざ拉致監禁して脅す、犯罪軍団の目的は何なのか。
そして最大の謎。約束って何の?
僕が思うに、「20年後に必ず戻ってくること。戻ってくれば痛くないようさっぱり殺してやるが、戻ってこなければ必ず見つけ出しより残虐な方法で殺す」。だと、すっごい恐いな~と思うのだけれど、でも犯罪組織側のメリットがあまりにも少ない気がする。
死姦か、まぁ殺す過程の裏ビデオによる利益くらいか。でもそれだったらわざわざ逃がさずその場でやっちゃった方が、年齢も若い分利益もあがるのでは?と思う。
じゃあ、違う約束?
心の中に生じた謎に対する疑惑がとろどろ蜷局を巻く1遍。
「天井裏の鼠」pp.169-175
ばたばたばた、と何かが歩いているような音のこともあれば、どたどたどたッ、と何かが走っているような音のこともある。p,171
古民家カフェの天井裏にいるのは果たして本当に鼠か・・・?といった一遍。
年配の女性客からその正体を聞くわけだが・・・その言い方と、そして天井裏に見つかったものが非常に恐ろしかった。
幽霊本体も出てこないしアンダーグラウンド的存在も出てこないのだけれども読後ひたすらに膨張する想像。恐ろしい一編。
「オロク」pp.176-191
「うらやましいのうって、おれがいうたら、あいつらカツアゲしちゃろか、ってHの奴がいいだしたんよ」p.177
しかしそのかつあげをした青年は、893の長の実の息子であった。
主人公達は恐ろしい報復を受けるが、まぁその報復の仕方が恐ろしい。こんなんぜったい思いつかないやん・・・といった発想。しかもそれを真冬の下でやらせるから鬼畜ですよね。鬼畜。
しかもそれが延々続く。もう赦してやりぃや・・とも思うけれども、奴らも奴等でトップの息子がやられたわけだから引くはずがない。
ギリギリ。ギチギチ。
でも主人公は何とか生存する。
その理由、というのが非常に不思議で・・・。
神の力とか、仏の力とか、信じたくなる。
最後にふさわしい余韻が残る一遍。
以上である。
悪くない。まぁまぁ面白かった。
ただ舞台がいまのぼくとあまりなじみのない感じなので、恐怖を感じるということはなかった。でも「まぁまぁ面白かった」ので、このシリーズはまぁ続き読もうかな。
***
LINK
1巻の感想。
***
20220305 去年の夏に書いた記事を編集した。放置しすぎて燻製になりかけている。
確かこのシリーズ自体は面白かった・・・・って思ったけどああそうだ、うん、確かに2巻は面白くなかった。全体的にね、ネット怪談で言うと「蟹風呂」みたいな話が多い気がする。あれが好きな人は絶対好き。