小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

つくね乱蔵『恐怖箱 厭熟』-時代は全裸。-

 

 

 

厭な実話怪談集、なんだけれどもどんどんおもしろくなっている・・・気がするのは気のせいですかね?いや、厭なんだけれども。いや、厭なんだけれどもって日本語もさ、おかしーんだけどさ。

 

 

つくね乱蔵『恐怖箱 厭熟』(竹書房 2021年)の話をさせて下さい。

 

 

 

 

【概要】

家や土地の祟りから、悪行の報いとして受けた呪いまで、底冷えのする恐怖実話がずらり。

押し入れから属象と出ルミぼ絵のないゴミ。最後にみつけた木箱の中を見た途端、すべての記憶がよみがえる・・・「紗耶香様」

パワハラで辞めた社員らが結成する上司を呪い殺す会、その成果は・・・「団体交渉」

夜中に聴こえる赤ん坊の声。出所は背中の彫り物・・・「入れ墨」

藁人形の始末を任された集落の家。怠ると何が・・・「ヒトカタ供養」

屋根裏に座敷牢のあった家の跡地に建つマンション。事情を知る近隣住民は・・・「生贄マンション」

熟しきった怨念が放つまやかしの甘き芳香。戦慄の全38篇!

 

【読むべき人】

・端正な文章の実話怪談を望む人

・厭な怪談読みたい人

・スタンダードな実話怪談(ただし上質)が読みたい人

 

 

 

 

【感想】

何となく読みやすい。文章がするすると頭に入っていく気がする。

となると、見た目が美しいともいえる。

ところが、書いてある内容は腐る寸前の毒に満ちた者ばかりだ。

読めば読むほど、身体に厭な栄養が蓄積されていく。p.4

と、前書きにもあるように、3冊目のつくね乱蔵の単著はページを繰る手が止まらない。

平山夢明教祖の叙情さ、福澤徹三氏の叙事さの間をいくようなスタンダード(もれなく厭な後味付き!)の実話怪談がするすると並び、するすると僕はそれを食べている。

厭な栄養、と店主は言うが問題はない。

現実の方が、厭だ。

やってらんないよ、現実なんて。

そっちの厭さに比べれば、この厭さなんて何のその。

美味しい。美味しいよ。

今更身体に悪いと言われても、やめられるものか。

ほら。早く次持って来いよ

 

疲れた時、厭なことがあった時、僕はベッドで実話怪談本を読む。

そこに凝縮されたおどろおどろしさに身がすくむ思いをしながらも、癒される。うわこわぁ。たまんねぇ。たまんねぇけどやめらんねぇ。

やめらんねぇよ。

いくら身体に悪いと言われても。

煙草と一緒さ。実話怪談は。

 

一時竹書房が「実話怪談ジャンキー」という造語を作り出していて、僕はそれを鼻で笑っていたが、今ならその意味、よく、わかる。

 

 

 

 

特に良かった話を記しておく。

順に「三角関係」「添い寝」「消滅の森」「猫とおじさん」が特にぶっ刺さった。

 

「強制減量」pp.8-12:大学卒業まで丸々太っていた女性。育ての親の一人である祖母が亡くなり、初めて自殺を考えた。

え、なんで?となる一篇。

終盤祖母の幽霊がどろどろ出てきてはくれるのだが、その行動原理が全く持って意味が不明でえ、なんで?

生前から内心、つくづく孫の体重のことを気にしていた、とか?

それとも食欲の思うがままに食べて太り続ける孫を心の底では憎んでいた、とか?

どちらにせよ、祖母がめでたく成仏していない感じがしてそれがたまらなく「厭」だ。

ただ少し残念なのは、最後が切りっぱしのために、創作臭がすることだ。いやそうはならんやろ、と言いたい。病院なり寺社なりなんかするでしょ。

 

幽体離脱」pp.30-35:同僚の三浦曰く、

「お前さ、幽体離脱って知ってるか」p.30

原因究明のため、カメラを設置し三浦の部屋に泊まり、まぁいろいろやべぇものが撮れている。結果的に三浦が引っ越す。まではもうある種実話怪談のスタンダードオブスタンダードでまぁ見当がつく。予想がつく。

だけど、そこで起きている現象が生々しくてリアルで厭だった。

特に最後の最後、クローゼットを開けた後に起きた現象は意味がわからないしどういうことなのか。死者が生者に恋をした?セーラー服着ているあたりリアル「死人の声を聴くがよい」でおっけー?

最後絶対三浦死んで終わるだろ、と思ったら引っ越しで終了してるのは、「強制減量」と違い、終盤で一気に実話性が増して良い後味だなと思った。

 

「添い寝」pp.42-46:酷い借金貸しで財を築いた祖父の死。やっとこさ死んでくれた。遺産を貰える。酒を飲み酔いに酔って、その遺体でふざけた孫(長男)は・・・。

死んでも人間は変わらない。ということなんでしょうか。

生前性根が腐っている人間は、死後も性根が腐っている。ということなのでしょうか。

死者もしくは病人って、無意識に僕達は聖人のように思っている節がある。

きっと見守っていてくれるだろう。

きっと味方になってくれているだろう。

きっと・・・きっと・・・きっと・・・。

ばーか!!!!

打ち砕く様が気持ちよい実話怪談。

そうだよな、生前悪かった奴が死後いい奴になるなんて、そんな都合のいいことありゃしねぇよな。

最後の一文が素晴らしい。

折角手にした遺産も、病院と日々の生活に消えかけている。p.46

ただ、遺産は通常なら妻子で分けられるから、この孫の母か父、もしくは祖母に相続権があるのでは?死んでいるのか離婚したのか。そもそもいないのか。そこの言及が一節でも欲しかったなぁとは思う。

 

「紗耶香様」pp.51-55:

原口さんがモーニングルーティンを始めたきっかけは、とある女優のSNSである。p,51

現象自体は結構派手なんですけど、そんな怖くないんですよ。まぁ、まぁうん。記憶にないことをしちゃうのはあるあるだよね。実話怪談界隈だと、っていう感じ。

ただモーニングルーティン。これ。

つい最近聞くようになった言葉じゃないですか。未だにスマホ、ではなく、携帯の文字を見ることが多い実話怪談界において(私の読んできた本の偏りもあるとは思いますが)、時代に順応する速さ、凄い。しかも今年じゃなく去年の著書ですからね。ぱねぇ。

ただ最後の2行は蛇足だったかなぁ・・・。

あとハイキングウォーキング卑弥呼様!!!」を思い出した・

脳内の鈴木Q太郎「紗耶香様!!!!」

 

「旅は道連れ」pp.76-80:65歳の結城さんは新型コロナの流行で職を失い、車上暮らしを始めることになるが・・・。

現代日本版★ワンピース。

長い旅、どんどん増えていく仲間。

まぁまだナミ・サンジの初期で終わっているのでこの調子でどんどんブルック・ジンベエ・コーラの野郎、あたりとはいわず、100人200人と「巨大海賊団」に成り上がっていってほしい。

結城・縺・ルフィ「豬キ賊王に、俺縺ェ繧具シ?シ?シ?シ?シ?シ!!!」

 

 

 

 

「消滅の森」pp.85-89:

森が消滅したとき、あの村が無事のままとは思えない。

なんとかしてそれを伝えたいのだが、一方通行の夢ではどうしようもない。pp.88-89

最後の二行が素晴らしいと思う。

現代版ミッドサマーか?と思うくらい、いやそれ以上の惨劇が起きている。恐怖「体験」を越えるほどの出来事が起こっている。

が、それに恐れるのではなく案外すぐに慣れてしまい、それを踏まえたうえで同級生2人の無事を祈る心理が、非常に生々しく感じられた。

そうだよな。

どんなに周囲から不幸に見えたって恐ろしく見えたってお前たちが幸せならいいんだ。

そういやって折り合いをつけたであろう主人公の心理が痛々しいほどまでに分かるし、僕も実際この主人公と同じ立場になったら、同じことを考えると思う。

 

「三角関係」pp.96-99:新築のアパートの部屋で、心霊番組の映像ごっこをやった結果。

いやぁ・・・てなった。いやいやいや・・・いやぁ・・・。

正直初めは作者側のミスか?と思った。誤植や推敲の甘さは竹書房怪談文庫のお家芸でもあるので。

そしたら予想外の所に着地した。

いやぁ・・・。うん、いやぁ・・・・。

派手に起きる怪奇現象や、夜な夜なやってくる目がないもしくは血みどろの女より、僕はこういうのが一番キッツいです。

我妻俊樹氏の実話怪談が好きなのも、こういうのが好きだからですね。なので僕と同じく我妻俊樹氏の実話怪談が好き、って言う人には絶対読んでもらいたい一話。

 

「お大事に」pp.112-115:職場のドラッグストアに新たに配属された薬剤師の倉田さんはいい人だが・・・。

よく、創作で、霊感がある主人公(少女であることが多い)を迫害するみたいな話あるじゃないですか。「地獄少女」然り。

信じられない!!霊感があるだけで、そうやって人を迫害するなんて!!!って思うじゃないですか。

でも結局僕も村人側の人間なのかもしれないな。

いざその立場になったら、迫害するかも。差別するかも。

舞台が、かつて日本全国どこにでもあった農村のように、日本全国どこにでもある薬剤師がいるドラッグストアっていうのも良いですね。

考えさせられる実話怪談。

 

「藪蛇」pp.125-129:占い師3人同時に呼び止められた。

大きい声で言いたい。

白いワンピースはもう時代遅れ。

女の幽霊は、全裸が一番怖い!!!

あと、恐らく盛っていないであろうリアル感がひしひしと感じられる規模の話しである。僕みたいな素人が書いたら全然怖くない、無難な話で終わってしまいそうな規模。

しかし、後半文章のスピードを上げることで本当に「手の付けようがない」感を読者にも感じさせることで絶望的一話に仕上げた、つくね氏の筆力が体感できる一話。

 

「団体交渉」pp.130-134:パワハラ上司に向かって団体交渉。

「先生を流産させる会」という映画がありましたが、それを思い出した。

あと最後の発想には驚いた。確かにね。なるほどね。なるほど。賢い。

 

「猫とおじさん」pp.135-140:気が弱く優しかった叔父が死んだ。一人で暮らしていたその家を片付けに来た。

お願いだから帰ってくれ。p.137

うわぁ・・・いいねぇ・・・と思う。

気が弱くて優しいだけじゃ、生きていけないんだよな。

優しいこと≒正義と僕達は教えられてきたけれども、それをばっきり折られる感じがたまんない。

優しければ報われる。

善い人であれば報われる。

そんなに現実は単純明快ではないはずで、でもそういう単純明快であってほしいからこそ、僕達は神様であるとか仏様であるとかそういう存在を今まで何千年も何万年も信じて来たのではないのか?

人間の厭なところもぎっちりん詰まっていて素晴らしかった。

あと人は何故すぐ猫の首を切ってしまうのか。

 

「入れ墨」pp.170-176:舎弟が自分より立派な入れ墨をいれてきやがった。組織で慕われていた優男は・・・。

家族仲良く。仲睦まじく。そうまるで一つになるかのように・・・といったところでしょうか。うわぁ・・・って思う。

「団体交渉」もそうでしたが、つくね氏の集めてくる話は、人は安易に死なないんですよね。死ぬ以上の厭なことが待っている。

そして、死ぬ以上の厭なことって僕達が想像する以上にバリエーションがあって数がある。一つ一つ慄いてああはなりたくないわねと思う。

業が深い一話。

つくね版「東京卍リベンジャーズ」。

 

「日々のこと」pp.182-188:25歳の娘を村に嫁がせたが・・・。

多分こういう風習って、残っているんでしょうね。現在も。全国各地で。

手紙がいまだに来るという点が非常に現実性があって怖い。ここがなければえちえち風習頂きましたクポポポポポで済んだ話なんですけども・・・。

あと小道具の使い方がうまいなぁと思った一篇。

 

 

 

 

以上である。

レベル自体がそもそも高いというのは無論、この著者は年に1回1冊のペースで単著を出していて、その順番に「厭獄」「厭還」そして「厭熟」と読んできた訳ですが、年々さらに面白く、さらに怖くなっているんですよね。

常にベストを更新し続けられるのって凄いと思う。本当に。

そのペースだとだいたい横ばいの作者が多いので・・・。

 

じゃあ、じゃあ、だけれども、非常に不謹慎極まりない話、だけれども、

既に還暦を過ぎている著者。

この先20年後30年後、死ぬ直前に書かれた一冊・・・否、絶筆で終わる単著は一体どれだけのものが読めるのだろうか。

それを期待すること自体がもう「厭」な話なんだけれども。

 

***

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文中に出した我妻俊樹氏の実話怪談本。一番好きな蒐集家。

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朱雀門出『第七脳釘怪談』-首吊り死体に群がるバナナフィッシュは、実在するか。-

 

 

 

脳内の雅紀さん(錦鯉)「竹書房怪談文庫を初めて新品でしかも発売日に、買った、よ!!!」

 

 

 

 

朱雀門出『第七脳釘怪談』(竹書房 2022年)の話をさせて下さい。

 



 

【概要】

怪異の断片から巻き込まれる悪意の数々ーーー朱雀門出の人気シリーズ第七弾!

幼い頃より鬼や例を見る男が、それ以外に見えるという奇妙なモノとは「車輪を回す」

居酒屋で耳鳴りt同時に見えたのは真っ黒な・・・「ブクブクブクブク」

子供の頃に遊んでいた神社には賽銭箱に座っているお爺さんがいた「死んだ神さま」

友達が死んだのは箱から飛び出た刃物で首を切ったからなのに・・・何が正しい記憶なのか「喉切り箱」

二階の部屋から見える学校のプール、ある冬の早朝の異変「プールにいっぱい浮いていた」など44篇を収録。

 

【読むべき人】

・不思議系怖い話が好きな人

・良質な実話怪談本の新刊が読みたい人

 

 

 

 

【感想】

めちゃくちゃ楽しみにしていました。第七脳釘怪談。発売が今月と知ってからもうウッキウキで、発売当日買いました。新静岡ジュンク堂で。

 

本シリーズ、まだ感想は書いていないのですが、竹書房(怪談)文庫から出版されているのはすべて読んでいるんですよ。1巻、2巻、5巻、6巻。特に1-2巻は入手が困難で、ブックオフオンラインを数日粘る必要があって大変でした。

本シリーズを知ったのは、おススメされたからです。Twitter上の知人で怪談に詳しい方がいて、その方にお勧めの作品・作家はいますか?と訊いたら挙がったのがこの作者のこの作品だったわけです。

それまで名前だけは聞いたことあったのですが、すざくもんいづる・・・いかにも中2病な名前格好いい名前に気後れして一切視界の外にあったのであります。

でもこの人、この人が勧めるなら面白いだろうと思って当時1、2、5、6一気に4冊購入したんだけれども・・・いやはや面白いです。

特に5巻、「第五脳釘怪談」が傑作。竹書房怪談文庫の中でも歴代屈指の一冊だと思います。

と思ったら、今年の夏の竹書房会談文庫のフェアで5巻推されるみたいですね。

これから書くのは今月出た7巻の感想なんだけれども、このシリーズ何巻から読めばいいですか?言われたらまあ5巻。絶対5巻。なんちゃって5巻。かーらーのー5巻。絶対第五脳釘怪談読んでから本書を読むんだぞ。まぁこの7巻も面白いけれども。でも5巻からだ。一気に引き込まれるぞ。おねえさんとの約束だ。

 

 

 

噂の五巻。竹書房怪談文庫の中でも屈指のレベルの高さ。

 

朱雀門氏の話は不思議系が多いんですけれども、ばっちり怖いのが最高なんですよね。普通どっちかに偏りがちなんですけど。

簡単に印象に残った話のあらすじ感想を残しておきます。

ベスト3は「一 チョキとグーでヤミクラさん」「三十三 そうよ」「三十七 テントが張られる」

 

 

「一 チョキとグーでヤミクラさん」pp.9-21:ぐーちょきぱーでぐーちょきぱーでなにつくろー?なにつくろー?

最初の怪談ということもあり、一番記憶に残っています。

冒頭にしては結構長いんですよ。だいたいの実話怪談は3-4ページの話が収録されていることが多い。入口として短い方が読み易いからだと思うんですけど・・・。

けれど本作は13ページもある。

長い。

どんな話だよ~・・・やれやれみたいなテンションで読んだら。油断しましたね。やられました。

まず誰もが一度はやったことがあるこの「ぐーちょきぱーで、ぐーちょきぱーで」から始まるっていうのがインパクト強い。「とおりゃんせ」「かごめかごめ」等に絡んだ怖い話は読んだことあるんですけど、この歌絡みでは初だったのでそこに意表を突かれた。

からのタイトルになっている「ヤミクラさん」の不気味さ。

名前からしてもう不気味度マックスなんですが、そのジェスチャーもすっごい不気味で、でも自由に動く右手と左手があれば安易にできるジェスチャーでその分凄く生々しく感じられてとにかく最悪でしたね。最悪。

途中DVDが出てくるんですけど・・・令和の「呪いのDVD」これでいいんじゃないですかね。下手なスプラッター映像より超絶怖いです。

 

 

「三 掘り当てた太歳のこと」pp.29-34:幼い頃、正月に、みんなで太歳を食べた記憶がある。

掘りだしたものを食べるまではまぁ分かるんですけど、その後半「太歳を食す」の考証からぞわぞわが止まらない。ぞわぞわ。

同時に、朱雀門氏の怪談はああそうだ・・・先程のヤミクラさん同様、怖い、と同時にこのぞわぞわがたまんないんだったわ・・・と思い直す。

また、所謂「昔の家の風習」的怪談なんだけれども、当事者の話してが心から怖がっていない、受け入れている。むしろ、無関係の聞き手(≒朱雀門氏≒我々)のが怖がっている、ていうのも、リアルで厭だった。

 

 

「十一 絶望→希望寺院」pp.62-68:怪談バラエティで紹介されていた怪しい建物(小学校?)に行ってきた。

すべてが教室なのだ。怪談者さんの本には、理科室、職員室などの表示があるとあっかれていたが、そんんあものはなく、全部教室である。p.65

施設がめちゃくちゃ不気味。元小学校、なのは分かるんだけれどもその全部が教室、っていうのがたまらなく怖かった。

また、その後に起きる事象もえ?は?なんで?え?はえ?ほ?・・・ぞわぞわ~

一昔前で言うと、怪談新耳袋の「山の牧場」案件でしょうね。

でも時は令和。2022年。向こうの技術も発達しているんでしょうね。向こうってどこだよ。

あとチラシが出てくる実話怪談は基本怖いね。どこからポスティングしてきてんねんと。どこで名簿入手してんねんと。考えたくない。

 

 

「十八 死んだらバナナが生えます」pp.92-95:首吊り死体を目撃した。バナナが生えてた、気がする。

興味深い話。中学生・首吊り死体・第一発見者という条件が重なって見える、のであればそれはもはやそういう幻覚に近いのでは?

いや、それとも特定の条件下でバナナが生える裏技とか?え?この世界って裏技あるの?いやでもバナナって。いやでもバナナは栄養が豊富だぞ。でも死んでたら意味ないよ。

 

 

「十九 コウモリごっこ」pp.96-99:深夜、飲んで帰りに道を歩いていると、出窓に足を引っかけてさかさまに下がっている第一村人発見。

伝染るというのが怖かった。

朱雀門氏は「十八 死んだらバナナが生えます」に宇宙人説を見出していたが、僕はこっちの話しの方が宇宙人絡んでいるんじゃないかなぁと思う。仲間をそうやって増やして増やして、ある日一斉にはばたくのではないか。母星を目指して夜の空を一斉に。知らない人々の顔に紛れてそこに知人の顔一つでもあれば僕は発狂してしまう自信がある。

 

 

「二十二 ねじれた天使の吹くラッパ」pp.106-109:

翅が生えた、真っ白い、手足がねじれた人が見えるのだ。そのねじれたてあしが、生理的に受け付けない。p.107

その天使がラッパを吹くと・・・という話である。

天使系の実話怪談は実は何回か読んだことがあるのだけれども、このケースは初だ。出現方法は小さいおじさんに近いか。あと、だいたいが、「天使」に目をつけられた人は倒れたりもしくは何も起こらなかったりする。けれど今回はそのどちらにも当てはまらないケースなので、やっぱりニュータイプ

ちなみに「ラッパ」。というのは音楽とは縁が薄い人が使う言葉である。吹奏楽部とかジャズとか多少音楽齧ってれば「トランペット」と言うはずである。差別云々ではなくて、本当にそれはラッパなのか、とも思う。トロンボーンかもしれない。ユーフォニアムかもしれない。ホルンかもしれない。角笛かもしれない。悪魔の角で作った笛なのかもしれない。なんて思うのは考えすぎ?

でもこれがトランペット・トロンボーン・サックスでジャズセッションやってたらちょっとかわいいな・・・。

 

 

 

 

「二十四 生まれ変わり」pp.114-116:幼い時に見殺しにしてしまった友達と似た子供を見かける。

生まれ変わり関連の実話怪談も読んだことあるんですが、多分、本当にあるんじゃないかと思うんですよね。スピリチュアルとされている世界にそろそろ科学のメスをいれてもいいんじゃないでしょうか。ましてやそれが死後という、全人類不可避絶叫フィールドであるなら、尚更。

 

 

「二十九 宵の街」pp.135-146:

話自体、よりかは

そもそも夢というものは、体験したことや見た映画や、本の内容を想像したようなそんな脳にたまった記憶を眠っている間に整理するのだけれど、そのときに意識に上がってくる断片的な記憶を無理につなげたものである、と現代医学では説明されている。p.139

ええ!!そうなんだって思った。めっちゃ勉強になった。

最近僕は面白い夢見てないですね。考えていることがダイレクトに頭に出てきます。なくしものとか、欲しいものとか。昔の先輩後輩とか。親族とか。芸能人とか。ブックオフとか。ブックオフじゃない中古屋とか。

デジャブ、とかも1-2回体験したことあるんだけど・・・忘れちゃったな。

とにかく、夢と言う脳のシステムを簡潔に分かりやすく説明していて勉強になった。話自体はまあまあ。

 

 

「三十一 プールの水は血」pp.150-152:幼い時に見た怪物と同じ顔をした職場の先輩は、死んだ。

顔はヒトであっても、ニンゲンではない。腐った蛇か魚の死体から皮をむいて露出させた肉のように、たるんで生白い皮膚をしていた。p.151

ぞわわ~となった。死を予知するにしてもだいぶ間隔あいているし。神々しいモノから予知されるならまだしもなんかちょっと気持ち悪いし。起きる現象も怖いし。

文中で筆者も述べているが、「三十 男の子だよ」に出てくるものと類似しているものが出てくる。じゃあもうそれは、そういうモノで実在しているのでは?と思う。現代妖怪というか、なんというか。

話も怖い、というのもあるが、この話自体今後忘れないようにしたい。他の蒐集家の実話怪談にいつ出てきてもいいように。まぁ存在に確信を得たからといって別にって感じなんですけれども。

 

 

「三十三 そうよ」pp.158-166:

「そうよ」p.160他

夢か・・・?と思ったらそう語り掛けてくれる存在の話。

多分ただ肯定してくれるような存在なんでしょうね。

1回目は「これは夢だよね」p.160、2回目はああ、これは夢なのだと気づいた。p.163の直後に、現れて、

「そうよ」p.160他

と口にしている。

3回目は「これは夢ではないのか」p.165、と「ないのか」否定の疑問形になっているため、「そうよ」夢ではなくなってしまったように思う。

あと、僕達に記憶がないだけで、こういう存在は案外身近に普通にいるのではないか。

例えば、遅刻した夢を見て起きたらまだ間に合う時間だった!

例えば、準備していたプレゼンで大失敗をしてしまう夢を見て起きたらその日の朝だった!

とかそういう経験ないだろうか。僕はある。

それは、もしかしてこういう存在が、

「そうよ」

絡んだ糸をほぐすように、現実と夢を過去と未来を入れ替えているのではないか。

と希望を位だっくような神々しい姿だったらよかったんだけれども・・・。

別のTwitterのFFしている方も、本書を読んで印象に残った一篇としてこの話を挙げていました。本書のメインディッシュの一つであることは間違いない。

怖いよりぞわわ・・・よりなんだこの感覚は。

「そうよ」

 

 

 

 

「三十七 テントが張られる」pp.181-185:しかも家の玄関前に。

さらにしかも、ってな具合で、結構最悪な一篇。

テントたてるだけ、っていうのも罪深いですよね。うめき声が聞こえたり貞子っぽいモノが出てきたりそれ以上のことが起きてくれれば、う、うわあああああ!!!になるのに、深夜にテントだけ、というとまあいいか、となってしまう。つけいれられているな、と思いながらも下手に手を出したら怖いし放置しちゃう。

あと、深夜基本玄関って見ない訳じゃないですか。

特に本編同様一戸建てだと。

寝ている間にたっているんじゃないか?と思っちゃう辺りもぞわぞわして怖い。

バーベキューしないだけ、いいのかなぁ・・・・。匂いの心配がないので。あと多分こういうのが焼く肉って多分人間の肉なので。

 

 

「四十 血の滲む努力」pp.138-140:女子小学生の幽霊?と出会ってか部屋で怪奇現象が起きるようになった。

まさかの対処法。血がにじむってそっちかいという話である。

何見てたんだろうなぁ。やっぱ二次元のロリものかなぁ。

こういう性的なモノに弱い幽霊話は好きですね。ちらほら実話怪談本読んでると出てくる。

でも一方で、ラブホでも幽霊話多いじゃないですか。

やっぱ生者同様、死者の間でもえっちいのが好き好きど変態野郎もいればそういうのマジ無理潔癖野郎もいるんでしょうね。

あと気になったのはランドセルの色。だいたいさ、赤じゃん。でも今回はオレンジなんですよ。今僕は28歳なんですけれども、学年で1人か2人いたかいないかくらいの割合でした。でも今は普通にいっぱいいるじゃないですか。

あ~ランドセルの色の多様化の波があっちにも来てるんだなぁとしみじみ思った。というか最近死んだ子の幽霊ってことなのかな。

 

 

「四十一 頭の腫れた人魚」pp.201-203:

ある意味世界で一番有名な、人魚の話ですね。

有名な割にはこれに関する話は今まで読んだことがなかったので興味深かった。

でも、これは、その、一番有名なあの人魚とは、別の個体の気がするな。多分数体いるんじゃないかな。何なら、各地で増え続けているんじゃないかな。

 

 

「四十二 すごい毛」pp.204-210:アパートに男が訪ねてくる。男に持っている袋には何かが入っている。共に、食す。

意味不明な話。そんなことあるわけがないじゃないか。あるわけがない。そもそもあったらおかしいよ。おかしい。意味がわかんない。怪談でもないでしょ。夢見てたんだよ、夢。

脳に影響湧耐えるような薬物を摂取してもいない。そもそもが大変しっかりとした人だ。それだけに、その出来事だけが、異様で、どちらかというち恥に近い感覚を持っている。p.210

けれどこの数行が、実話なんだと知らしめる。

そうだよな。こんな意味わかんない出来事に巡り合ったら、恥ずかしいよな。

ましてやきっちりとした人なら尚更。

実話怪談体験者心理の再発見、が非常に印象深い一篇だった。

 

 

 

 

以上である。

流石に傑作、「第五脳釘怪談」と比較するとパンチはまぁちょっと・・・弱いけれども、それを差し引いてもなかなか面白い実話怪談本だった。一年に一度といわず毎月出てほしい。

 

ちなみに、竹書房怪談文庫のフェアに参加している声優の井澤詩織さんも本書を読んでいる旨をツイートしてました。彼女の選ぶ10選にはいまいち頷きかねる部分もあるので・・・そこに本書がランクインするかどうかが個人的な見どころですね。まぁもう10冊選定されてるんで変わることは無いんですけども。

 

***

 

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バナナ・フィッシュ。

 

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此元和津也『セトウツミ②』-安心して。君だけじゃない。-

 

 

 

あんなー。1巻はなー、推し・櫻坂46大園玲さんが好きな漫画ということで「尊い!!」「お兄ちゃんから「これおもろいで(鹿児島弁)」と言われて何気なく借りて読み始めて面白い・・・!!になった大園玲ちゃん(高校生)かわいい尊いああああ!!!!・・・ああああ!!!西暦何年だ!?2016年!?くらい!?私がブラック塾講師に就職して是枝ぜえ言ってた頃だねぇ!!!でも僕が横浜でアヘアへしていた頃に鹿児島で一人の女子高生の心をこの漫画がともしたことについて。ああ~~なんでこの頃漫画熱下がってたんだろ!!リアタイで追っていたらそれはもうそれはもう!!!ああーーー。あー。あー。でも待って!?え!?セトウツミって2013年からやってんのか!?そしたら私が毎日ゼエゼエいいながら八王子の山を登っていた頃!?その頃鹿児島に黒髪いや、バスケ部の時はショートカットだったって言ってたから黒髪ロングとは限らないか、でもまぁ黒髪の美少女美少女美・・・美少女中学・・・ああ~~~!!!中学生をそういう目で見るのは良くな

 

あー。

 

ああー。

 

此元和津也『セトウツミ②』(秋田書店 2014年)の話をさせて下さい。

 

 

 

【あらすじ】

関西の、とある河原。

瀬戸と内海。「喋るだけ」の放課後。

 

猫と遊んだり、トランプしたり、話したり、

男子高校生、瀬戸と内海のクスっとして笑えてクセになる放課後トーク10編。

 

裏表紙より

 

【読むべき人】

・リアル系雑談漫画を探している人

・猫アレ

 

 

 

 

【感想】

大学時代、そう2013年はまさしく1993年生まれん僕は絶賛花の女子大生時代だったんだけれどもその頃は一人暮らしをはじめて部活やってたからバイトもしなかったので生活費基本カツカツで、一瞬で終わる漫画なんてもってのほか、コスパがいい108円小説をブックオフで毎日漁るような日々を送ってたんですよ。高校の時は買い集めて全部読んで最盛期数えたら700冊はあったのですが、一部売り飛ばしたので実家にあるの含めて400冊くらいかなぁ、閑話休題。とにかく大学時代漫画熱下がっててしばらくずっと下がってたんですよ。

馬鹿。もうほんとうに馬鹿。

何故本屋でこの表紙を見てピンとこなかったのか。

こなかったのか!!!

この頃鹿児島県で尊い女子中学生大園玲ちゃんが本作を読んでいたというのに僕は!も~う!!

という訳で、今滅茶苦茶個人的にアツい漫画ナンバーワン!のセトウツミ。

 

読みました。読みましたよ。

CD複数枚買って、大園さんとのオンライン通話(ミーグリ)の話のタネになるかなって思って。6巻までまとめ買いしてたけど、まぁ1巻しか読めてなかったから急いで前晩読みましたよ、2巻。

そこで思ったのは、

「・・・あれ?とても面白い?」

いやね、知ってた。

だってさ、大園玲さんが唯一ファンに「好きな漫画」として挙げた本作ですよ。面白くない訳がない。

でもね、正直ね、まぁ1巻がピークだろうなと。出オチ感ある漫画だろうなと。だから比較的短く(全8巻)で終わったんだろうと思ってましたよ。

いやいや、違ったね。

2巻になったら、さらに面白くなった。

もうね、「面白い!」「尊い!」「面白い!」「尊い!」「面白い!」「尊い!」のせめぎ合いですよ大変ですよチョー忙しい!!

漫画を見る目がまだまだだなと、思わずため息ついちゃうセトウツミ、②。

 

・・・待って。瀬戸と内海が会話して「セトウツミ」ということは、大園玲さんとオンライン通話をしているこの数十秒間はまさしく「ゾノロドン」・・・っていうことなのでは。え、もしくは「マグゾノ」・・・?いややっぱ「ゾノロドン」・・・ひゃだ。ひゃ・・・ひゃだ!!!きゃー!!!!きゃぁーーーーあ!!!!きゃっ!!!

 

・・・あー。

 

 

 

あー。

 

 

 

 

 

以下簡単に各話感想を書いていく。一番刺さったのは第16話。

 

 

第8話 サンドイッチとおにぎり

瀬戸「男子高校生にはボリュームが不足しているのとスマートな感じが華につくけどたまごとマスタードがあってて美味いな」p.6

瀬戸「次これ食べよ 大学芋かな 大学進学を応援するお母さんからのメッセージやな」p.7

昼ごはん飽きたから弁当交換しようぜという話です。意味わかるけど分かんねぇな。

前半は瀬戸の、「内海の弁当」のグルメリポートなんですが、そこがめちゃくちゃ面白い。

特に上記の二か所。内海は手作りサンドイッチの弁当なのですがそこを「鼻につく」といけしゃあしゃあと言うところ。分かる。僕の母も弁当になった途端に献立が一気に減ってまぁサンドイッチなんて出ないですよ。18年間母の弁当食べてきましたが、まぁ見たとしても食べたとしても1回か2回くらい。皆既日食と同じくらいの頻度。だからもう弁当でサンドイッチ食べてるクラスメイトは心底羨ましかった!!なんだよその!レタス!トマト!チーズ!!うわとろけるちーずをとろけさせずにそうやってまいていいんかい!!逮捕されんのかい!!それは日本で赦されんのかい!!

そして内海の弁と言うには大学芋が入っているのですがそれに対する瀬戸の所見。すっごい適当なところがたまんねぇよな。大学芋なんて弁当どころか家でも出ないからな。28年間母の食事弁当をもそもそ食べてきましたが、母の手作りの大学芋なんて一回も食べたことが無い。まぁそりゃね、おやつにしたら大がかりだし、だからといってご飯のおかずになるわけでもないしすっごいコスパ悪い料理じゃないですか、大学芋。それがね、弁当に入ってたらそりゃあもう「いい大学頑張っていけやのおかんのメッセージやな」くらいは静岡県民の僕の口からでも、出ます。どんだけ弁当に時間とお金と愛情、そう愛情。もうさぁ、母さん、ウインナーと卵焼きはこりごりだよ~。

なので未だに僕はウインナー、自分で調理する時は焼かないですね。茹でます。焼いたのはもう一生分食べたので。弁当箱で。バーベキューでのウインナーや、フランクフルト等例外は除く)

あとオチ、オチが秀逸ですね。僕もよく出し忘れてました、弁当箱。

 

 

第9話 表とジョーカー

内海(今確かに見た 一瞬の狼狽 間違いない

一瞬見せたあの表情に安堵の光は一切無かった

一度目は怒りにも似た悔恨

二度目は報われなさに対する絶望

つまりこっちが・・・)p.27

内海(まさかメガネの反射 いや・・・瀬戸の角度 田中君の角度 どっちも微妙に光が)p.31

瀬戸と内海のババ抜き、内海目線である。

学業優秀、川原やった後は塾へ直行の内海である。

考えすぎ・・・!!

まさしくこの話しだけ読んでる感覚DEATHNOTE。月と書いてライトと読む。内海と書いてウツミと読む。

特に(間違いない)の時の表情が最高に内海月で最高でしたね。なんでこの作者半笑いの表情だけ滅茶苦茶画力高いの。最高だろ。

メガネの反射まで考え始めてのはもう凄いなと思ったね。あのポテトチップスの袋の中にモニター入れてる場面あるじゃないですか。あれを初めて見た時と同じ衝撃を受けた。その発想はなかった。

でも、この話で一番面白かったのは

内海(そもそもなんでおんねん 参加したらええやん

ババ抜き三人でやったほうがええやん)p.30

ババ抜きの審判をしている、田中君に対するツッコミのところですね。確かになんでおんねん。

 

 

第10話 裏とババ

瀬戸(え ババ来てるやん

ああええわ こんなもんは運や 

考えたってしゃあない

ババをこうしといたら取るやろ 内海意外とアホやから)p.37

瀬戸(ていうかなんでジョーカーのことババって言うんやろ

そういえば馬場ってやつおったな確か)p.38

瀬戸「なあ内海 今度早く来てオセロかチェスやろう」p.50

瀬戸と内海のババ抜き、瀬戸目線である。

あれこれ内海が考えすぎであったということが、つまびらかになるまさしく「裏」の回。

ジョーカーのことを、内海は終始丁寧に「ジョーカー」と呼びますが瀬戸は「ババ」と呼ぶんですよね。だから「表とジョーカー」「裏とババ」。扉絵もまたなかなか良い。

しかも途中でババから「馬場」、昔同じ部活だった馬場のエピソードを思い出す始末。瀬戸が内海ポジになるくらい、馬場君アホでおもろかった。僕の同級生にも馬場っていましたが、彼もなかなか見ごたえのある人間だったよ。

あと最後の台詞の伏線回収は見事だなぁと思った。提案したものが「チェス」「オセロ」と、徹底して不参加表明、審判としてのプライドを見せた田中真二普通にダイヤモンドゲーム提案しろやて。この男もなかなか見ごたえがある。

 

 

第11話 人間と動物

生物の木沢先生「そして我々人類のDNAはゴリラやチンパンジーとほぼ一緒やねんけど最近の研究成果で我々人類の全遺伝情報の15%は実はちんぱんじーよりもゴリラ寄りやということがわかってきたんや つまり我々ゴリラは」pp.56-57

の言い間違いから始まる話である。

こういうしょーもない言い間違いがツボに入ること、ある~!を描いた一話。我々ゴリラは。

てか、全遺伝情報の15%がゴリラに似ているんだ。豚とかなら納得いくけど。あーでも職場のクソババア、あれはブタとゴリラ、50%50%遺伝情報似てると思うわ。

あとこの話では、内海が描いたゴリラ君が出てくるのですが、そのキャラデザがENEOSのキャラクターエネゴリ君からインスパイアされたものでノスタルジー。エネゴリ君、今何しているのだろうか。調べたら2007年初登場。約15年前。初登場時が新卒で22だとすると37歳、そろそろ中間管理職といった頃合いか。そろそろウホッで誤魔化せなくなってきた。きっと会議かなんかでホワイトボードの前に立って、こういっているに違いない。「我々ゴリラは」

 

 

第12話 人と人

内海「コミュニケーションなんて演技力やん 親しくない奴と喋っててそんなに興味もないし驚いてもないのに えっ!そうなんですか!?って言える奴がコミュ力高くて可愛がられんねん」

瀬戸「なんか嫌やなそういうの」

内海「でもそれが大人になるってことなんちゃう?」p.83

エッモ。エモエモエモのエモスキー。唐突のエモはあざといわぁ。あざとい。

ちなみに僕はコミュ力あんまないので、其処で演技は致しません。僕が「えっそうなんですか」って言ってるときは大抵心の中も(えっそうなんですか)、僕が「え~すご~い」とそれっぽく言ってるときも大抵は(えーすごーい)と思ってます。

でもそれはそれでその度に心が動くから疲れるんですけどね。

だから最近言葉に心がこもってないことが多い。「えーすごーい」「そうなんですか?」「さすがですね」「申し訳ないです」。

でもそういう時は自分の中でかなり大げさに、10倍20倍くらい大げさに言えばそれっぽくなると気づいた。

「え!!すごーいっ!!!」「そうなんですかぁ!?」「さすがですっ!!!!さすが!!!」「申し訳ございませんでしたぁ!!!!!」

半沢直樹あれは大げさな顔芸がウケたとよく言われてますが、社会人の多くが実際心の中では半沢直樹並みの顔芸やってるんだと思うんですけどね。それでようやく上っ面のコミュニケーションが滑り出すというかなんつーか。

だからこういう「セトウツミ」、あの頃の何気ないしょーもない、半沢直樹にならなくてもいいやりとりが、面白く感じられて懐かしく感じられて、どっかのお偉い「半沢直樹」の心を射とめて、映画かドラマ化されたんじゃあないですかねぇ。

 

 

第13話 出会いと別れ

瀬戸「うちの猫死んでん」p.90

バルーンさん「ここへきてウツミの引きの弱さ何なん」p.96

内海「ミーニャンがお別れを言いに来たんちゃう?」p.99

瀬戸の誕生日と言うことで祝う気まんまんだった内海とバルーンさん。バルーンさんは1巻で出てきた無言で風船アートを作っていたあのシュール極まるピエロである。懐かしのバルーンさんもうきうきで風船アートを作る。だがしかしといった話である。瀬戸の両親の離婚の種になりかけていた飼い猫の死を告げられる。気まずい。気まずいぞ。

そこをとりつくろうとする内海が見どころ。彼なりに瀬戸を精いっぱい思いやった唐突のエモ(もしくは第12話から続く連続のエモ)の言葉を口にしたり、ただいつも通り普通に二人で座っていたり。特に後半の「ミーニャン(死んだ猫)が会いに来た」なんていつもの内海じゃあ絶対口にしない言葉だろう。

んだけれども、まさかの第13話。

ここへきて喋るバルーンさん。お前こそ何なん。

しかもめっちゃ流暢にしゃべるやんけ。

 

 

第14話 ストレスとペットロス

瀬戸「よしお前はミーニャンに似てるから名前は今日からニダイメや」p.102

内海「俺んちそのどこの家庭にもある軟膏ないわ多分」p.105

瀬戸「なんでファーブル的な観点からやねん」p.107

ミーニャンが死んだのでそのまま「ニダイメ」いいですね。とてもネーミングセンスがあるぞ、瀬戸。今まで1000匹以上のポケモンにニックネームをつけてきた私が言うのだから間違いない。

中盤、内海が「軟膏ない」と言う時の表情が見えていないんですよね。絶対なんかせっつねぇ顔ぶちかましてるわ。

そして終盤の瀬戸の「虫けらを見るような顔」とそれに対する内海のツッコミp.107これ、本書でいっちばん笑った。というか爆笑。何回見ても素晴らしい。瀬戸の今まで見たことのないなんともいえない表情。と、そこからくるぅ!?的な内海の「ファーブル的」という語彙力が見事にベストマッチした素晴らしいシーンだと思います。

ちなみに僕は大園玲さん関連のあらゆるモノを見る時にファーブル的表情になります。

 

 

第15話 カスタマーとセンター

内海「シリアルナンバー?ちょっと待ってください」

内海「F2MJ96B17M39C」

瀬戸「なんかの天才か なんかわからんけど」p.125

携帯の調子が悪いのでカスタマーセンターに懸けるという話です。まぁニダイメ登場回の跡なのでぶっちゃけちょい薄味。内容も、この話だけ改めて見てハッキリ思い出した。後の話はなんとなくは覚えてたんだけど。

そう、それはまさしく・・・この話に登場している馬場、馬場の顔のような存在感の話。

ちなみにみんなは形態のシリアルナンバー伝えるときどうしてる?僕は一回一回シリアルナンバーメモしてお伝えしてました。偉くね?

クレジットカードのセキュリティコードもこれだけ長かったら私の通販の買い物癖も幾分かよくなるのではなかろうか。

 

 

番外編

一期「樫村一期(かしむらいちご)17歳 由緒あるお寺の長女として生まれました 一つ下の妹は一会

そう一期一会」p.136

一期ちゃん視点のセトウツミである。

一期ちゃん、可愛いですね。顔も可愛いけど中身も可愛い。なんとなく瀬戸が惹かれて内海は全く惹かれないの、分かる。

目がきゅるんきゅるんしてる。

一期、ていう名前いいですね。樫村一期。響きも可愛い。イチゴという名前は某死神漫画の主人公でそれ以降なんか見ていない気がするのですが、でもこの漢字あてがうのは初めて見たなぁ。

というか、妹は一会と言っているけれども、妹じゃなくて弟だったらご両親どうするおつもりだったんだろうか。

樫村一会(かしむらいちえい)。

樫村一会郎(かしむらいちえろう)。

樫村一会進(かしむらいちえしん)。

長子の長女に「一期」と名付ける両親坊主の癖にやること結構ギャンブラーだなと思う。

あとルーベンスの絵、瀬戸が知っていることに驚き。知らないでいてほしかった。

 

 

第16話 ヒエラルキーとシンメトリー

田中(僕は二人の会話を聞くのが好きだけど話すのは苦手です バドミントン対決で瀬戸の卑劣な行為を目の当たりにし内海と二人で帰宅した際共通の敵をもって結束したかのような錯覚に陥りたくさん話をしました)p.154

日本漫画界屈指の審判キャラ、田中真二が、女手一つで育ててくれた母親に向けてひっそり河原で手紙を書くという話です。時節現れるニダイメがいい味出してる。

この手紙自体も凄い名文です。例えば上記。3人だと自分は確実に余り者の中で、2人が険悪になった時ついつい「共通の敵をもって結束したかのような錯覚に陥る」とありありと書いている訳です。高校生でここまで書けたら審判より芥川賞目指せよ。そう云いたくなるような、綺麗な日本語で人間の醜い部部分をありのままにきりとった田中君、お母さん、田中君はね、確かにヒエラルキー自体にも属さない人間」p.146かもしれませんけれどもね、しっかりしっかり育っていますよ。

でも、この名文にをうわまわる、内海の言葉がいい。

内海「心配せんでもそれなりにみんなそれぞれ不幸やから」p.155

短い分鋭く研ぎ澄まされている。

みんなそれぞれ不幸。

心配しなくても。

不安になんなくても。

みんな不幸。

だから大丈夫。

凄いなと思った。

 

まだ実写映画化に夢があった時代だ・・・。

 

以上である。

ぶっちゃけ出オチ作品かなと思ったら、巻ごとにどんどんおもしろくなる作品で堪らなかった。最高だった。特に田中君というキャラクターが母親への手紙と言う形で深堀されるとは思わなかった。

 

あとセトウツミは、リアル寄りの絵、もそうなんだけれども、リアル寄りの性格が描かれているから、人を選ぶんだろうなぁと思う。

この漫画を面白いと思える感性、大園さんと似た感性を自分が持っていることを、誇らしく思う。

 

ああー。

僕も大園玲さんに手描きのお手紙書こうかなあー。

でも手書きだときもがられるかなぁー。

アプリのメッセージ機能引き続き使った方がええんかなあー。

あー。

ああー。あー。

 

 

あー。

 

***

 

ぁー。

 

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「アシッド系下痢糞マガジン GEVO  第2号」-たんねぇ。-

 

 

 

※表紙画像閲覧注意

 

自殺特集と聞いて買った。

シカクオンラインで久々の在庫復活っていうし。

 

いやぁ~残念だよ。

実に残念だ。

 

僕はもっときったない!!下痢糞を期待していたよ。

 

「アシッド系下痢糞マガジン GEVO  第2号」(GEVO編集部 2015年)の話をさせて下さい。

 

 

 

 

【概要】

今度のゲボは自殺特集!

 

巻頭グラビア4ページ 下田メギ死す

自殺イラストもりだくさ~ん! ご遺体どうでしょう

カルト映画批評 自殺編

小説 アウトブレイクスーサイド

まんが ドン・フライえもん

怪奇漫画のすすめ 自殺篇

4コマ漫画 傘豚

 

【読むべき人】

・まぁ・・・自殺取り扱った漫画・映画に関心がある人

・小説は結構エモかったよ。

 

【感想】

自殺特集。且つ下痢糞って言うからすっごい期待したのに全然じゃん!って思った。

下痢糞を名乗るんだから、

自殺を考えている人を呼んで「なんで自殺するんですか?」もしくは自殺を考えていない人を呼んで「なんで自殺しないんですか?」って聞くくらいはするのかなー

樹海に行って自殺した死体でも撮ってくるのかなー

もしくは実際見た死体のコスプレでもやるのかなー

自殺して生還しちゃった人にインタビューするのかなー

自殺の名所でも行くのかなー

自殺した知人の足取りとか追うのかなー

もういっそのこと編集部の一人が自殺でもしてくれんのかなーって思ったけど全然そんなことはなかったです。

 

内容がね、基本すっごい薄いんですよ。

自殺のグラビア、これ白黒だし。自殺死体一覧、これはもう専門書読んだ方がよっぽどためになるというかインターネットで検索した方が濃い情報が出てきちゃうし。漫画、これに至っては意味わかんねえし。

企画自体がすっごい薄っぺらい。表紙の写真見て中身期待した分凄い損した気分になる。こんなんで下痢糞名乗らないので欲しい。ただのこれは、「アシッド系パンフレット」です。健全です。

下痢糞名乗るならもっと狂ってもっと頭おかしくなってもっと下品なこと考えろや。

せめて樹海、まぁ、百歩譲って新小岩駅、あわよくば新小岩井駅のホームの隅でうろうろしている人にちゃんと勇気が出るように応援!くらいはしてほしかったですね。

健全が過ぎる。

 

ただ、映画批評・漫画批評、あと小説はまぁ良かったです。

映画・漫画はそれぞれ詳しい人にインタビューしているので言わずもがな。小説はなんか知らんけどエモかった。エモみが胸に残った。

ただこれはそれぞれの執筆陣が仕事をしただけであって、編集部の仕事ではないんでしょ?下痢糞名乗るならもっと汚い魂胆見せろや。

 

 

裏面は同人誌らしく印刷会社のロゴが!!!

以下簡単に各特集の感想を。

 

巻頭グラビア「下田メギ、死す」

撮影時の裏話とかじゃなくて、どういう設定で死んだのかとかそういうのを語ってほしかった。せっかくプロのメイクやるんだから綿密な設定の下ちゃんと自殺してほしかった。ちなみに、この下田メギさんのTwitter見たらVtuber化しててそれはまだわかるんだけどポケモンGO?していて凄く健全な健全な生活を送っていてもう僕が死んだ。せめてポケモン赤・緑とかやっていてほしかった。

 

LOVSTAR「ご遺体どうでしょう」

それっぽい絵だけですね。死体描写が秀逸な漫画を読んだ方が満足度高そう。「イノサン」とか。

プロじゃないんで中途半端なんですよ。この死体具合もまた。イノサンくらいド派手にグロテスクやってくれればカタルシスもあるんですけどね・・・。

コメントもまぁ調べるのが面倒だからってオリジナルのそれっぽいキャラクターを出すのはどうなんだろうって思う。まだミステリー小説とかの方が死体についての描写が詳しいのではないか。

てか巻末見たらお前が編集長なんかい。そりゃこんなぬっるいマガジン出来上がる訳だわ。

 

secilb「カルト映画批評 自殺篇」

主にロマン・ポランスキー監督「テナント 恐怖を借りた男」を中心に論じられている。これはちょっとタメになった。ポランスキー監督と言えば「ローズマリーの赤ちゃん」「戦場のピアニスト」やらで有名なポーランド出身の、映画に詳しくない僕ですら知っている監督である。その監督にこんな狂気にとちくるった自殺映画を撮っているなんて知らなかった。是非見たい。

他にも自殺を取り扱った映画が7つ紹介されている。黒沢清監督の「回路」は見たい。

 

さにし「アウトブレイク・スーサイド」

「だって、今時本気で思いつめて自殺する人いないもん」

ヒロインの台詞が凄く好き。自殺って言うのはそう、流行と同じくしてぴょい、と境界線を越えれば出来るモノだって気付いたのは僕は20代前半の大学生の頃でした。

このヒロインは女子高生の時に気付くんだからかなり早熟なそして賢い女の子なんだなぁって思った。そして、初めてパンケーキ屋に行くみたいにぴょいって行っちゃうんだから賢くて強くて凄いね。

 

スーパー軍司「ドン・フライえもん」

狂気が足んねぇ。ナメてんのかと。

 

緑の五寸釘「怪奇漫画のすすめ 第一回 自殺まんが編」

3、青木智子「自殺未遂」

読者である少年少女に、自殺の恐ろしさだけでなくメンヘラのめんどくささと相手をしていると最悪死ぬという事実をこんこんと説いた道徳的1冊です

メンヘラの相手をしていると自分もメンヘラになってそれで病んで自殺する。過程もちゃんと説くのが大事だと思う。助け合いが美しいこと、正しいこととされているからメンヘラはどんどん増えて歪んだアイがあちらこちらで誕生するんだ。

僕はこれを大学時代の友達同士のアベックで学んだ。法学部のある3号館でアンアンした話は何故か部活中みんな知っていた。

 

牡丹棚「傘豚2」

カサブタでリアルに悩んでいる芯Þからするとっもっとカサブタに対してこだわってほしいと思う。

物理的なモノではなくて、かさぶたをも痛々しくメリメリめくって(なおその時の西川は恍惚とした表情をしていることにする)、その皮を投げつけるくらいのことはしてほしかった。

もしくはもう目の前で目暮れていく様を見せて精神的ダメージを与えたうえで血液で直接目つぶし。

もっとカサブタに対してこだわってほしかったですね。

 

おいでよ!!下劣荘

こんな薄っぺらい下痢糞(笑)におたよりを送って来てくれる読者ってもうそれ神様だからもとたてまつって崇めておけよ。

 

やっぱ表紙は最高なんだよ。

 

以上である。

薄っぺらい。とにかく薄っぺらい。

自殺特集と言うことで買ったけれども、別の号買うことはまぁ・・・ないでしょうね。

 

***

 

LNKS

購入した同人誌屋のシカクが出した本の感想

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20220714 これは今年の初めくらいに書いた記事ですね。うっわ~自殺やん!!おもしろそ!!という高い期待値に裏切られた感情がダイレクトに書かれてますね。まぁしゃーない。その他にもシカクさんでは色んな同人誌を購入しているのですがもれなく積んでいる。しゃーない。

今のところ、どっかの公民館のフリーペーパーコーナーに置いてお年寄りの度肝を抜くくらいしか使い道思いつかないです。

 

金原みわ『さいはて紀行』-ここも誰かのさいはて。-

 

 

 

ハローハロー。

さいはての声が聴こえますか。

ノーノー。聞こえません。

 

 

 

いつか私もさいはてに、なるのかしら。

 

 

 

金原みわ『さいはて紀行』(シカク出版 2016年)の話をさせて下さい。

 

 

 

 

【概要】

改めて最果てとはどこにあるのかと考える。実際のところ、最果ては生活のすぐそばに存在しているのではないか。知らないだけで見ないようにしているだけで、例えばいつもと違う道を歩けば。何かひとつでも手に入れれば、あるいは何か一つでも失えば、すぎに最果てへと辿り着く。p.6

 

僕達のすぐそばにある物物・・・宗教、性欲、神様、生活・・・の果てっていったいどうなっているんだろう。

ううん、でもそこを「はて」と決めつけるのは傲慢だ。その「はて」にいるから人達からしたらそれが普通で僕達が「はて」なのかもしれない。

 

【読むべき人】

・珍紀行が好きな人

・ホームレスとかにふっと、想いを馳せてしまう人

 

 

2022年7月某日・・・
我々は「まぐろどん」を名乗る某日本人女性の一人暮らしの部屋を訪れた。

 

 

2022年1月14日2時36分、僕の・・僕の成れは手である自分がキーボードをたたいて半開きの目で、ディスプレイを見ています。

ブルーライトは意外と遠くまで照らさない。

僕の28年間生きて生きて生きはてた、しょーもない、つかれた、妙に子供めいた、うすら笑ってる、顔くらいしか照らさない。

 

大人になったら何になりたい?

将来の夢は何ですか。

大学は何学部を受験するんだ?

一体どこの企業に就職するんだ?

正規雇用か?非正規雇用か?

 

自己肯定感、とか(笑)

 

さいはてを抱きしめる・・・虚無。

 

 

 

 

【感想】

本書の存在はもともと知っていた。何で知ったか・・・というと確か「奇書が読みたいアライさん」・・・・のツイートだったと思うがあやふやである。違うかもしれない。

とにかく、ずっと読みたいと思っていた。

けどメルカリに良い値段の中古が無いから、じゃあヤフオクはどうかな~と思って何気なく覗いたら一冊いい感じであったので僕はそれを購入し即座に読んだ次第。珍しく、積まなかった。

まさしく、なんか僕が僕こそ「さいはて」で、なんか今読んでおきたいなって思ったから。インターネットに挙げていた文章であるから基本とても読み易いわけだし。

 

内容は、結構コアでマニアック。

意外と性的なところも構わずズブズブ行って、取材相手にそっと想いを寄せられる、っていうのは凄いと思った。

僕は童貞(メス)というのもあって、ストリッパーとか風俗嬢とかホームレスとかAV女優とかそういう人のバックグラウンドに想いを馳せることはあるけれど、性的な部分に接触となると生理的嫌悪を覚えてしまう。そこを優に超えるので、みわ先生はすごいなぁ、と思った。いや、もうそういうの気になんない性格だからこそ、「さいはてを旅する」という発想に侵されたのでは?といってしまえばそうなのだけれども。

 

これは何か?と尋ねるとネットで購入した古い温風機兼千分機との旨。
「ただ、壊れちゃって。でも気に入ってるからテーブルとしていいかなって(笑)」



 

「性のさいはて」:福島県唯一のストリッパー劇場

初っ端から、マリ嬢(60歳)くらいの勢い良い潮ふきからはじまるものだから、びっくりした。表紙詐欺じゃん。

でもその潮は生命って感じがビシビシ伝わってああ、やっぱ人間って性があってこそ生まれるものだし性があってこそ人間なんだなぁ、潮吹きわっしょい!!って思った。

でもまぁ僕はいいです。行きません。絶対に。

 

「罪のさいはて」:受刑者が髪を切ってくれる美容室

さいはて、といえど重犯罪者が出てくる超絶重重ドキュメンタリー・・・・ではない。

出所間近の女性囚が切ってくれるという美容室の話。

みわ先生のイラストで、その美容師(罪人)の似顔絵が描かれているのだが、何ともない普通の人でわかんなかった。こわかった。人は見かけによらず。否、出所間近だからこそ、「普通の」外見になったということなのかもしれない。

でも髪を切っても過去は切れない。し、切られた人が変わることもない。いくらシルエットが良くたって一ヶ月もたてば乱れてきてしまう。だから僕は美容室に行くのがいつもいつも億劫なんだ。

過去を切るには手首を切りなさい。というわけで、受刑者が手首を切ってくれる美容室、は「罰のさいはて」

 

「水のさいはて」:淀川を延々歩いてみたよ

純粋なくらいの性欲が濃縮されて生まれたハッテン場は、男だからこそ到達できる、ある意味では究極の性の形ともいえないだろうか。p.57

ハッテン場を穢れた場所として見るのではなく、性欲≒生命力漲るエネルギッシュな場所、と捉えるところに衝撃を受けた。みわ先生はきっと野獣先輩をバカにしない。ひどくフラットな大人なその目線に僕の幼稚さが恥ずかしくなる。

(ホームレス等の専門家村田らむさんとのイベントにみわ先生が参加した際)

その時初めて知ったのだが、ホームレスになる理由の中で意外と多いのは「財布をなくしたから」とうものなんだそうだ。

(中略)

でも確かに分かるかもしれない。

(中略)

お金もカードもない。身分を証明するものが無い。手続きには金が要るが、その手持ちの現金も何もない。

そこにあと少し、例えば身寄りが無かったり、職がなかったり等の条件が加わったらどうだろう。p.61

僕はここが一番印象に残った。

僕を僕たらしめることなんて、希薄。

「まぐろどん」「まぐろどんちゃん

「まぐちゃん」「ろどんさん」

目に見えない、繋がりこそが僕を僕たらしめる。

でもそんな、繋がりなんてスマホ一つ叩き割れば全て遮断。僕はそこにはいません。勤務先のショッピングセンターにはいません。そこの、静岡駅からちょっと離れたワンルームの部屋にはいません。免許証はユニットバスの隅に転がっておりました。

ホームレス、って要するに繋がりレス、もしくは自分レス、なのかなぁ。家を失うのは結果論な気がする。繋がり・自分を失う⇒家を失う。だって生活保護下で一人暮らししている人もいるし。その人たちとのホームレスの人たちとの違いは?

ピカソという爺さんが登場する。

あらゆる偉人の辞世の句を物物に書いて奇妙な小屋・・・もどきに暮らしてる、会話が成立しない、猫を飼っている、ただの爺さんである。辞世の句をたくさん知っているあたり元々頭が良かったと思われるが、多分多くの人々に馴染むことが苦手だったんだろう。

僕もこうなりそうで怖いなって思った。

ねえ。

僕の文章はいま君は確かに、ねえ確かに、読んでいますか?

繋がっていますか?

ハローハロー、僕の文字が聴こえますか?

 



 

「異国のさいはて」:男同士のセックスが見られるショーを見に行ったよ。

そこで働くネパール出身のナムとの関係がフォーカスされていくのだけれども・・・僕はモウそのショーの内容自体がビックリ仰天で釘付けでした。凄い。凄すぎる・・・。

彼にとってはゴーゴーバーが現実であり、そこで生きていることが現実だ。p.110

この一文にはさいはての総てが詰まってる。

 

「食のさいはて」:ゴキブリと犬を食べたよ!!!

いや~僕は普通に無理っす(笑)

いや~・・・やっぱ絶対無理。

 

「宗教のさいはて キリスト看板総本部巡礼」:黒字に白い文字と黄色い文字で書かれている看板の総本山に行ってきたよ!!!

めちゃくちゃ面白かった。まずその看板の総本山があるっていうのがびっくりだし、看板製造の技術が進化しているのも驚きだし、その総本山ならではの文化があるというのも驚き。何もかもがビックリって感じ。大人の社会科見学。

キャラバンを組んで、志を同じくする人たちと一緒に行動し看板を作って貼って行く達成感は心地いいものだろう。

そして、キリスト教という共通項で繋がる人達のコミュニ亭は広く深い。信じるという条件で受け入れられる。他人との繋がりが今、繋がれるものがあるならば、それだけで救われる。孤独から救われる。pp.150-151

だから、新興宗教っていつまでもいつまでも乱立するんだなぁと思った。

人間って言うのは孤独だ。

基本孤独。寂しい。

僕達はその寂しさに常に耐えながら生きなければならない。

その孤独に打ち克つために編み出された人間の儚き文明。それが宗教なんだろう。

そして僕も人間だから、ついつい祈ったりしちゃうのである。ああ神様。僕にご慈悲を。

あの道端の黒い看板の裏に誰かの充実した人生があるとは思いもしなかった。僕も充実した人生送りてぇ。

充実とは。

 

「夢のさいはて 最高齢ストリッパーの夢」:熱海の最高齢ストリッパーのショーを見てきたよ!!!

最高齢ながらも始めたのはつい最近だという。亡くなったオーナーとの義理を果たすため。そして「喫茶店を開く」自分の夢のため・・・

何だよ。そんなの、そんなの叶う訳ないじゃんか、といた具合に苛つきに似たような、しかし叶ってほしいと心のどこかで切実に祈るアンビバレントな感情が終盤描かれている。切ない。

でも夢、において大事なのは、結果じゃなくて過程にあるものなのではないか?

だから喫茶店が建とうが建つまいがはどうでもよくて、夢を見てマサコ嬢が舞台に立つか立たないかの方が大事なんじゃないか。

夢を真っ直ぐに見据えて乾いた膣に煙草を燻らせる彼女こそ、最高齢にして最高に生きてるってことなんじゃないのか。

夢、なんてそんなものと心の奥でギシギシ閉じ込める僕とみわ先生より・・・マサコ嬢のが最高に人生謳歌しているんじゃないのか。

それを認めたくないから。

自分より、最高齢のあずきショーツのばばあが人生謳歌しているなんて認めたくないから。

みわ先生は結局苛ついたんじゃないかなぁと思う。

未熟だ。

でも当たり前だ。

だって僕達まだ生まれて50年もたってない。

 

「人のさいはて じっちゃんのちんちん」:育ての親?である祖父が亡くなった。

生殖器が、燃やせば骨にも残らないって、なんかすごい道理的なことだなって思った。

僕達は生きているから生殖が必要で会って、だから死んだらもうあとかたもなくなくなっちゃうのかなって思った。必要ないから。

そう考えると、生殖する。子をなすということはとてつもなく尊いことに思える。

 

床には文庫本と封筒が。
「生活費のクレジットの利用明細と、恋愛小説の文庫本ですね。
どちらも開けてません(笑)」
近辺に落ちている髪の毛が生々しい。



 

28年間のなれはてが、これです(笑)

笑ってください。

笑ってください。

 

笑って、可能ならば、抱きしめて下さい。

 

「カラーボックス、組み立ててたんですけど握力が無くて断念しちゃって。そしたらいろいろ集まって来ちゃいました・・・」
とまぐろどん氏は頭をぽりぽりかいた。



 

一通り、読んで感じたことは、ああ「さいはて」なんてないんだ、ということだ。

僕達から見たらさいはてになる彼等にとっては、それらが普通の生活であり、決してそこが「さいはて」というわけではない。ナムにとっては金銭に困窮しない日本と言う国の存在自体がさいはて、なのだろうし。

ホームレスや性的仕事に従事している人々を「さいはて」と安易に呼ぶのは、それはかつて昔、白人が黒人の文化を野蛮なものとみなして奴隷化する行為に似ている。

無意識に己を上にたてていないか。優位にしていないか。

・・・ということを、この本を読んで初めて思った。

「さいはて」を「さいはて」と見ないみわ先生の紀行・・・だから「(みわ先生と僕から見たら)さいはて紀行」だけれども、本当はもっとふさわしいタイトルがあるんじゃないか、そんな気がしてきた。

「げんじつ紀行」「せいかつ紀行」、とか。ナム・ピカソ達の、現実・生活を僕達が覗いているにすぎないので。

でもまぁやはり僕を初め日本に国籍がある住む家がある多くの読者からしてみればそれは「さいはて」、一番伝わる分かりやすいタイトルなのかもしれない。

 

 

 

 

ハローハロー。

さいはての声がきこえますか。

エスエス

きこえますよ。

だって私がさいはてで、だってあなたもさいはてで、だって今この瞬間がさいはてで

 

「今季リモコン見つけられなかったんでクイックルワイパーの持ち手でボタン押してます」



物凄い再現度だった。

 

以上である。

普通に旅行記としても面白いんだけれども、解説でもふれているように、対象に限りなく接近して同じ目線で見ようとするみわ先生の視点が、最高にエモい。良かった。揺さぶられた。

続編無いのかしら。

続編希望熱望。

 

 

まぐろどん氏の部屋に堂々と横たわる未完成のカラーボックスの中にて撮影。

 

***

LINKS

解説を担当した都築先生の書籍の感想。

 

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20220713

半年前に書いた記事をやっとこさあげました。この頃は前の職場に行き詰まって一ヶ月お休みをいただいていた時期ですね。鬱屈さがまるまるでている、我ながらいい文章だなぁと思いました。(自画自賛

2022年夏現在のなれはては、支払ってない水道代、どうなるかなぁとハラハラしてます。面倒で支払ってない。

金風呂タロウ『SUBURBAN HELL 郊外地獄』-国道に転がっている死体は、私でした。-

 

 

 

 

午後38時国道8888号線沿い歩く。

道端に打ちあがった顕微鏡を蹴り飛ばす。

辛い。

悲しい。

血液。

絶望。

クソ。厭だ。

もう何もかもが厭だ。

もうどうしようもなくてどうにかしたいけどどうしようもなくてね、え、こういう夜はどうしたらいいの?ねえどうしたらいいんですかね?

それは本当に不意に訪れる。

真夜中ぶらついてはいるセブン●レブン、私は無敵私は無敵なぜなら私は今1000円札を持っていて今ここで何でも買えるん井でも買える買える買える買える蛙けれども、今私はここで何が欲しいのか全く分からなくなってしまいました。オレンジジュースですかおにぎりですか。パンですか。スープですか。カップ麺ですか。チョコですか。ケーキですか。からあげですか。えびピラフですか。チャーハンですか。鉄ですか。お子様ランチですか。パイナップルですか。オレンジジュースですか。林檎ですか。雑誌ですか。物語ですか。石鹸ですか。洗剤ですか。重曹ですか。歯ブラシですか。レジですか。歯ブラシですか。可愛い外国人の女性店員ですか。ポテトチップスですか。ぬいてくれますか。抜きません。ヤメテクダサイ。ビールですか。日本酒ですか。ロープですか。オレンジジュースですか。ワインですか。カット野菜ですか。包丁ですか。漬物ですか。オムライスですか。幕の内弁当ですか。メロンパンですか。ロールパンですか。食パンですか。魚の缶詰ですか。肉ですか。内臓ですか。夢ですか。タバコの1993番ですか。オレンジジュースですか。ボールペンですか。カッターですか。パチンコ雑誌ですか。コミックですか。リポビタンDですか。木ですか。ハサミですか。鍵ですか。夢ですか。オレンジジュースですか。天国ですか。

いやいや、地獄。

地獄がほしいんです。

もうさぁ、こういう世の中全部ぶっぱなすような地獄を見て、地獄、ぢごく、地獄を見てああ自分はまだましなんだなって思って相対的に幸福度をあげる。そういうアダルトでいやんなこと、いやんなことがしたいんです、今地獄ありますか?

ああそれです。それでいんです。

郊外、どこまでも果てしなく続く太い血管の京菜国道沿いにポツンと細胞の異分子が立つ僕達はイレギュラーまるで癌細胞のようですね。アハアハ。

それ、それを1つ下さい。

 

え。一冊にたくさんの地獄がたくさんあるんですか?そんなにたくさんあっていいんですかねえ、私は私、ねえ、マスクしてこんな顔になっちゃうよアハアハ。

「ろどんちゃんなら仕方ないよ」

「まぐつぁんは不器用だけど頑張り屋だから」

「片付けなさい!!片付けなさい!!!ちゃんとしないさい!!どうしてお前はさきちゃんあきこちゃんなつきちゃんゆきちゃん、みんな出来ていることができないの!!!」

「何考えてんのか分かんない」

痛いね苦しいねぽっかり空いてる。絶望だ絶望、深淵のごとく続くこの穴に途端に吸い込まれそうにあなるだからほら、地獄。地獄をくれよ。

この世のところどころ要所要所に展開される地獄地獄を一つ一つ潰し垣間見ることで相対的に押し上げて幸福になるのが、結局ねぇ、人間ねぇ、いっちばんはやいんですよ。

最低。最低って思うでしょう?

そんなクソ野郎を天国へぶっ飛ばすためにほら、痛いね痛いよ苦しいよ、地獄をくれ。地獄をくれないか、アハアハ。

地獄をくれよ!!!!!

アハアハ。

 

 



 

 

壱。惨劇程癖になるものはない。殺せ殺せ殺せ、鮮血鮮血鮮血。死ね!!ぶしゃーっ!!って成程人間落ちをたぎらせるものはないからだから殺人って法律では禁止されているんですねぇ知っていましたか?いいえ知りませんでした。だって生で殺人起きたら皆がみんな興奮しちゃってまたどこかで殺人が起きるかもしれないでしょう?ああ!!!!見るなよ!!!見るな見るな見るな!!!監視カメラがずっとこっちを向いている。監視カメラが、ずっと、こっちを向いている。

「あのねー、むかしのねー、欧羅巴ではねー、死刑がねー、娯楽だったんだってー」

今でも十分娯楽になるよ。

死刑は十分娯楽になるよ。

ぶっ飛ばしてやるよ。

お前の首。

「あ、見て!!ほら!!!心臓が動いてる!!!吐かないで儚いでは家内で大丈夫よ、大丈夫ほらじっと見てじっと見て、じーっと見て。ほらほら。ほーら。

大丈夫だ。アハアハ。」

 

弐。僕の頭のあいつとあいつを殺せないなら、その代替品でまかなった結果が、通り魔殺人とか無差別殺人とかテロだとかそーいうことだと思うんでうしょね。

どう思いますか?○○さん。

「手っ取り早くそいつらを殺した方が合理的!!!アハアハ!!!でも人間は愚かだから合理的な手段は絶対、何があってもとらないもんなんですよ!!!アハアハ!!ところでまぐろどんさん、今少子高齢化で大変な世の中になってマスネ、SHOJOとお聞きいたしましたが、今からセックスいたしませんか?」

アハアハ。

新手のナンパですかアハアハ。

アハアハ。

脳内で勝手にしゃべっているひまっがあるならばお前の顔面見せろよ幻聴かよ幻かよ夢かよ嘘かよラー麺。つけ麺。ぶっ殺せ。

 

 

参。

いたぁいいたぁいいたぁい!!!!いたぁい!!!殴らないでぇええええ!!!ごめんなさいいいいい!!!駄目駄目だと言わないでぇええええええもう泣きませんからあああ!!!!!!!!!!痛い痛い痛い痛い!!!!!!!!!蹴らないでぇえ!!!殴らないでええ!!!テストで90点以上取ってるじゃんん!!!!!10位以内だったじゃん!!!!!!!中学受験もしたじゃんんんんんんんんんん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!だからいいじゃん!!!だからそんあに怒らないでえええ片付ける!!!!!ううううう片付けるよおおおお!!!!!痛いよおおおおおおおおお!!!!だからだから蹴らないでよおおおお!!痛いんだよ‼‼‼苦しい苦しい苦しいいよおおおおおお!!!!さきちゃんよりまともになるからあああ!!!!あきこちゃんママもびっくりのいい子になるからああ!!!!なつきちゃんより身なりきちんとするからあああああああああ!!!ゆきちゃんより勉強頑張るしっかりするから嗚呼あああああああ!!!!!!!でも違うんだねえええええええええ!!!!!!!!!!痛いよ痛いよ痛いよ殴らないでゴメンナサイいいいいい産まれてきてごめんんさいいいい大学行くから嗚呼ああああちゃんとした職業に就くからあああああああ!!!!!!!!!そんなそんなドブネズミなんて呼ばないでぇえええええええ!!!!!!!!出っ歯だからってドブネズミなんて呼ばないでぇええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!車で怒鳴らないでえええええええ!!!!!!車で怒鳴らないでえ!!!!!!!生まれてきてゴメンナサイ生きて居てごめんなさいあああああ、あああああああああああ!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死。

自己肯定感を高めましょう!!!

ちゃんと自分を認めてあげて褒めましょう!!!

自分で自分の機嫌をとれるようにしましょう!!!

牛乳は骨を強くします!!!

しっかり夢や目標を持って努力しましょう!!!

毎日15分の読書をしましょう!!!

ストレス発散方法を自分なりに見つけましょう!!

毎日あさのひかりをしっかり浴びてセロトニンを作りましょう!!

野菜は800キログラム毎日毎日食べましょう!!!

牛乳は骨を強くします!!!

どうしても辛かったら周りの人に相談しましょう!!!

どうしても辛かったらいつでも逃げられるようにしましょう!!!

ちゃんと趣味を67個持ちましょう!!!

トーイック10000点満点めざしましょう!!!

牛乳は骨を強くします!!!

ちゃんと朝昼夜きちんと調理をしたものを食べましょう!!!

毎朝メイクをきちんとしましょう!!!

しっかり相手の目を見て話しましょう!!!!

言葉のキャッチボールをしましょう!!!

牛乳は骨を強くします!!!

相手の気持ちに立って考えましょう!!!

考えるだけで終わらすのではなくちゃんと行動に移しましょう!!!

牛乳は骨を強くします!!!

ちゃんと年齢に見合った精神年齢を身につけましょう!!!

牛乳は骨を強くします!!!

身の回りの人への感謝を忘れないようにしましょう!!

牛乳は骨を強くします!!!

牛乳は骨を強くします!!!

骨を牛乳は強くします!!!

はします牛乳骨を強く!!!

まく骨乳し牛をすは強!!!

 

■■■カルシウム■■■4t!!!!!

 

「でもねえ最近先生豆乳のが美味しくて、牛乳なんてクサくて飲めなくなっちゃった。どぶみたいな臭いがするの」

「それはね、まぐろどんちゃん、マグロドンちゃんが本当は人間ではなくてドブネ」

 

 

悟。現実が一番幸福たる世界線というんですか?それでも私はより良い世界に転生を出来ることを目指して、頑張りたいデス。Death。天国は実在するし、多分天国は牛乳クサくないと思うの。乳の匂いは生の匂いだから。

 

 

 

 

録。

そっかあ!!!

今私は気づきました!!!気づきましたよ!!!

みんなみんなみぃんなころせば●せばいいんですねぇなるほどですねぇ!!!

 

あの日殴り怒鳴り散らしてきた父親もあの日車の中でヒステリックに叫んでけなしてきた母親も毎日死んだ魚の目でねめつけてくる前のセブンイレブンのパンチパーマの店長も隣の家に住む僕より数段優れている定型発達のサキちゃんもクラスの中で一番顔がかわいくて結婚してちゃんと働いているナツキちゃんも母親と似ないで無表情でブスでつまんないアキコちゃんも勉強が出来て僕より数段上の大学出て30万円を愛付毎月貰っているユキちゃんも前の職場で気に食わなかったパートの50を超えたババアも僕を異端者の目で見てきたあのデブも仕事が出来ない白豚もある日態度を豹変させてきたかつてのしんゆー達達もこれから就活これから人生待っているぞというキラキラの目をした僕の横に立つ男子田学生女子大学生専門学校生たちも(特にあの太った専門学校中退女は私をかなり下に見てき手嫌だったでも鬱で結局バイトもやめたと聞いて可哀相と思いながらも心の奥底では僕はほくそえんでいました)前の職場で一方的に僕を貶して上司にはいい顔をしていたあいつも洗脳するがごとく毎月毎月絡んできたアイツもSNSでブロックしてきた喋り方がだらしない女もそこに便乗する愚かな男も全員全員全員ん殺せば!!いいんですねぇ!!!

 

そうすれば、解決しますもん!!

 

め・を・さ・ま・せ!!!!

現実を!!!見ろ!!!!

 

結局法律秩序社会なんていう物は集団幻想。

殺した者が勝ち。

殺されたものが負け。

 

終わる。乳血。

楽しい。

嬉しい。希望。

もう何もかもが壱〇〇点。

もうんなにをしたいのかがわかっているぼくはこのこんびにでなにをかったらいいのかわかっているさっきねぇ、さっきほうちょうではしってたどぶねずみをさしてみたんですよ。くろいんですねぇちって。

それは本当に不意に訪れる。

真夜中ぶらついてはいるセブン●レブン、私は今10000000円札を持っているので何でも買えます。ほしいものはオレンジジュースですかおにぎりですか。パンですか。スープですか。カップ麺で

「ロープ下さい。鉄を下さい。包丁下さい。カッター下さい。ハサミ下さい」

「カルシウムはいらないですか?」

コンビニの店内を駆け巡るドブネズミああうるさい!!!視界から消えろ消えろ消えろその足音すらうんざりなんだよ早く消えてくれ一刻も早く死んでくれ!!!!

「いらないです。あ、オレンジジュースも下さい。可愛いナツキちゃんの血液はオレンジジュースだって聞いたんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・顕微鏡を覗く。

・・・癌細胞が無限増殖をしていく。

■■■■カルシウム■■■1000トン。

 

 

 

「幸せになりたいなぁ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金風呂タロウ『SUBURBAN HELL 郊外地獄』(リイド社 2022年)の話をさせて下さい。

 

 

 

 

【概要】

360度パノラマのリアルの臨場感に飲まれてゆく男。

マッチングアプリで憂さ晴らしする男。

忘却の彼方からトラウマをよみがえらせる男。

何者かわからないものに日常をむしばまれ続ける女。

ゾンビの溢れる町でデリバリーに励む男。

積年の恨みつらみが臨界点を突破する街・・・・・・よくある日常の風景がほころぶとき、その僅かな隙間から怪異と狂喜に色dられたアメーバ状の恐怖が侵入する!

令和のホラーコミック界を牽引する蒼き新星の初単行本がついに刊行。

帯より

 

【読むべき人】

・自分がとんでもなく不幸だと感じている人

・悩んでいる人

・人間関係にがんじがらめの人

※本作はグロ、エロ結構多めです。

 

【感想】

発売日、翌々日くらいに買ったんですよ。

金風呂タロウ先生といえば、もうあの国民全員大好き大好きちくま文庫「現代マンガ選集」シリーズで、「訪問」というどちゃくそトラウマ作品を世に出した人です。あれ読んだ時もう衝撃だった。絵柄もそうだったし起きる現象もそうだったし何もかもが衝撃で感想が何も浮かばない始末。

その先生の初の単行本ということで張り切って買った。元気に買った。か多分ぶんぶん回しながら買った。

ただ買って乗った電車で即包装を開け、一ページ目を開いた時、

「あ、今じゃない」

今じゃない。

読むべき時は、今じゃない。

 

というのも、めちゃくちゃ1ページ1ページからのエネルギーが凄いんです。スーラよろしく点描を用いた独特のタッチいっぱいに広がるエロ、グロ。繰り広げられるは地獄・・・。

とっておこうって思ったんです。

こういうのは、自分の心が荒んだ時・辛い時・悲しい時・どうしようもなくなった時に読もうと。

 

鬱っぽくなった時に一番効くのは、血しぶき。だと僕は思うんですよ。

自分がどんなに辛かろうが苦しかろうが、目の前にいる人よりは相対的に幸福じゃないですか。殺されている、地獄NOW!な人より必ず幾分か幸福なわけじゃないですか。

そうやった相対的に自分の幸福度を上げることで、頭の中がスッキリするというか。

昔、ヨーロッパでは処刑が庶民の唯一の娯楽と聞いたことがあります。罪人がむごく殺される様をみんな集まってニコニコ見ていた。

それは多分健全なことだと思うんです。

本能ではみんなグロが好き!

エロ画像と同様にグロ画像が延々インターネット上を漂い続けるのもそれだけのニーズがあるからだし、「検索してはいけない言葉」が今でも現役なのはみんな見たくて見たくて仕方ないからだと思うんですね。

血を。

内臓を。

人間の闇を。

そして見た瞬間に溢れ出るドーパミンに目が眩んで「うわ、やっぱ無理」とか言いながらそのページを閉じるわけです。本当は喜んでいるくせに。本当は、喜んでいるくせに!

それと似た感覚が味わえます。

「郊外地獄」(和訳)がタイトルですが、まさしく自分が地獄にいるな、って思ったこそ読んでドーパミンを出して幸せになりましょう。

まぁ、本当なら「VR地獄」の主人公が見ているようなVRがあれば最高なんでしょうけれども、なかなか入手が難しいので本書で我慢しましょう。

 

そして、7つのまぁ深淵がごときグロエロナンセンスな地獄がぎゅっと収録されている訳ですが、共通しているのは

【厭なものは殺す(潰す)】。

実際法律とか釈迦的立場だとかその他いろいろで、難しいわけじゃないですか。

職場の厭な人を殺すことも、鬱陶しくなってきた親族を殺すことも、態度が悪かった店員を殺すことも、難しい。現実的には非常に難しい。

けれど本作ではそんなん知ったことかと、法律ぶっ放して登場人物達は解消していくんですよね。殺すし殺す。もしくは壊す。

カタルシス

グロエロ満載の絵柄にきゃぁ~・・・と言いながらも、頁を繰る手を止められない僕がいる。ストレス社会に一撃を食らわせてくれる本だなぁと思う訳です。

 

そしてこの前、とうとう厭なことに直面する時があったので、本書を思わず手に取って読みました。

読む前は「あいつとあいつ、死ねばいいのに」で凝り固まっておりましたが、無事読んだ後は「最悪だいろいろ最悪過ぎる(ワクワク)・・・!!」の感情で胸いっぱいになったので、読むタイミングは正解だったように思います。

ちなみに、一番好きなのは「電波地獄」です。ガリガリ彫られて深くなっていく地獄の深さに頭クラクラします。好き。あとやっぱ地獄には子供が、似あいますね。

 

 

 

 

以上である。

エログロナンセンスぎゅっと詰まった一冊。くわえて「厭な奴は潰す」が徹底されているものだから妙なカタルシスがあって最高だった。

面白い面白くない、よりかは、人生辛い時に読む処方箋、に近い漫画のように思う。読んだ後それこそ「金の風呂」入った後のようにさっぱりすること請け合いである(ドヤ顔)。

だからといってまぁ友達には勧められませんが・・・。

 

ちなみに僕は金風呂タロウ先生の「金風呂」の部分が何回何回読んでも覚えられない。読み方。

かねぶろ、かねふろ、きんふろ、きんぶろ、かなぶろ、かなぶん、「かなふろ」である。

かなふろかなふろかなふろ・・・。

 

尚無論、ここにかかれているのは全てフィクション、フィクションです!!!

 

 

 

 

 

***

 

LINKS

29220709 新静岡セノバジュンク堂で、本書が新品で売られているのを見た。すげぇ!!って思った。なんなら川勝先生の作品も置いてあった。すげえ!!って思った。

 

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中山昌亮『後遺症ラジオ5』-禿は五感に訴える。-

 

 

 

実話。

 

 

 

中山昌亮『後遺症ラジオ5』(講談社 2017年)の話をさせて下さい。

 

 

 

 

 

【概要】

日常系ショートホラー漫画である本作を連載中、作者自身及び関係者の身に起きた”命に係わる厄災や不可解な現象を記録し、読者を震え上がらせた番外編【実話版】の収録が、今舞にてついに実現!!実話系怪談に目のない人なら、今巻だけでも必読の恐さです。なお本作は”本当に危ない”禁忌部分は伏せたうえで描かれておりますので、厄災が読者に”感染”する危険は99%ありません、ご安心ください。なお件の”禁忌”部分を開示する、させようとする行為は極めて危険です。現に作者の中山氏はこの単行本の作業中に、

 

帯より

 

【読むべき人】

・実話怪談好きな人:作者の「実話」以外も、『不安の種』のように単体で楽しめる話が多めなので、前巻まで買ってなくてもおススメ。

・ハゲ

 

 

まさかの裏面は黒

 

 

【感想】

メルでカリった後遺症ラジオもとうとう5巻・・・。1-5巻セットで買ったので、残り一冊残してとりあえずこのシリーズは僕の中ではひと段落。

にしても、6巻・・・まだ買っていない6巻の表紙、あれエロ過ぎでしょ。へたなラブコメ漫画よりエロイと思うんですがあれどうなんですかね。

 

そしてこの巻の目玉と言えば何といっても作者の実話!!!

内容としては、激安で借りたオフィスに、「家主様のものです」と書かれた神棚があって・・・?といった具合。その後、口のところが血みどろになったり怪談を生業にする人が出てきたりアシスタントが行方不明になったりするんですが・・・どうも妙に実体を伴わない。

さっきも一通り読んだんだけれどもどうも記憶に残らない。

でもなんだか「厄災」・・・物騒な二次災害があるらしいし、恐らく僕の安全が保障されたこと・・・・なんだろう、と信じたい。

実体が伴わない実話。と聞いて、読んでみたい!と思った人は是非この巻だけでも買って読んでみるべきだと思う。

どういう話なのか・・・説明がしづらい、掴めない。独特な、この感覚。

後巻末実話漫画で、一番怖っ!!って思ったシーンは床に穴が開いているシーンです。

 

ちなみに中山先生は結構前から数あるTwitter垢の一つででフォローしているんですが、そのほとんどが所謂ひゅ~どろどろの原稿の写真で、見ていてとても面白いです。

よくキャラクターの落書き画像を載せる漫画家アカウントがありますが、その感覚でひゅ~どろどろ画像がアップされるのでふふっってなります。

本作に収録された実話とは対極の、癒し系ゆるこわアカウント。おすすめ。

 

本編も・・・いよいよ佳境って感じですかね。

今回は一話一話単体で読んでもインパクトがあるのが多くて、特に面白かった。実話も面白いんだけれども、本編ももっと読みたかったな・・・ページ数・・・というのも本音。

特に出てくるひゅ~どろどろが今回結構上質なんですよね。和牛。黒毛。

 

 

 

 

なので、今巻で収録されたひゅ~どろどろベストスリーを発表しますね。

 

3位 36.16NHz:頭がながーい女

後姿のインパクトが大。100点。素晴らしい。一度見たら忘れられない。

正面はちょっとまぁうーんって感じ。

だいぶ前にLAWSONがゆるキャラ「アキコちゃん」の正面を公募した企画知ってます?あれで誰かがふざけて描いた衝撃のアキコちゃんの正面顔があるんですが・・・あの衝撃は越えられなかったかな。

もうちょっと愛嬌が欲しいですね。と言う訳で、期待値大の後ろ姿に反して順位は低め。

 

2位:84.53NHzのハゲのおじさん

髪の毛怪異がメインの本作なので、基本的に出てくるのがどふっさーかハゲなのですが、今回はハゲが活躍。

別にハゲだけだったら恐くないのですが、口から出す「カッコッ」という音が生々しくて厭だった。凄い再現度で耳に迫るその音やめろ!!!って言いたい。

見て楽しむハゲではなくて、聞いて楽しむハゲですね。

 

1位 87.77NHzの黒い女

黒い女の容姿自体はまぁうんって感じなんですよ。怖いね。怖いけど、別にそこまで怖くはない。ルックスは普通。そこはハゲとハゲしく同じ。

ただ最後の1ページはぞっとしましたね。今シリーズで一番ゾッとした。そう来るか。

あとめちゃくちゃ足が速ぇ。是非東京オリンピックに出てほしかったですね。

 

 

本当帯がいい。

 

他もピクミン系女子」とか「パックンチョ」とか色々出てきます。

恐らく本作のかなめである神様・おぐしさまの呪いが解けたから街に怪異大集結と言ったところでしょうか。

妖怪大戦争っていう映画がありましたが、本作はただ人間がやられっぱなしだし妖怪みたく可愛くない。そもそも髪の毛だし。あとハゲ率高いし。現実は非情。

 

あと思うんだけど、「後遺症ラジオ」「後遺症」は、本書の「実話」で伏線回収、というわけなんだけど、「ラジオ」。今までラジオ要素一切なかったんだけど、そこらへんはあのエロエロ表紙の6巻で明らかになるのかしら。

せめて2位のハゲよろしく音響的にビビらせるような奴等が集合していたら話は変わったのだが、どうもヴィジュアル勝負の奴が多いんですよねぇ・・・。ヴィジュアル系漫画。

 

最後に、今巻もポエムが収録されている。

本作品の謎の解明に役立つかもしれない!というわけで、ここにメモしておく。

なお実話怪談の合間には収録されていないため今回は短め。

 

真っ直ぐ延びる螺旋から

肥えた痩せ犬が落ちてきて

瞑った口から唄を出す

少女に摘まみ上げられる大男

谷に登ると泣きじゃくり

昨日こそはと誓い合う

影が踏み合う人の顔

かかとまで垂れたベロを指さして

「ぴたぴたぺたぺた」と陰口を交わし

乾いた蛙を泳がせているのは

茹って凍ったつららの塔

 

今回また矛盾する記述が増えましたね。ただ正直「少女に摘まみ上げられる」のくだりや「ぴたぴたぺたぺた」のくだりはネタ切れ感を感じないこともない。

だったら、1巻のようにページぜいたくに使った楽しいニラメッコがしたかったな。

 

 



 

 

以上である。

概ね今巻も楽しめた。

やはり帯にもあるように今巻の目玉は作者の実話。気になる人は絶対に読んで損はないと思う。

6巻・・・は新品で買おうかなぁ。うーむ。

 

 

 

 

***

 

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