小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

平山夢明『東京伝説 忌まわしき街の怖い話』-もうさぁ、全員さぁ、全員・・・全員全員全員。-

 

 

表紙が良い。

Tシャツにしてくれ。

 

 

 

平山夢明『東京伝説 忌まわしき街の怖い話』(竹書房 2004年)の話をさせて下さい。

 

 

 

 

 

【あらすじ】

別れた恋人が異常な復讐鬼となってやってくる。俺を忘れるなと迫ってくる。話しても通じない、赦してももらえない。なぜならそいつは狂ってしまったから・・・。正気を失った知人、それはもはや人ではない。得体のしれぬ恐怖の塊だ。自殺死体と一緒に風呂に水浸けにされた女。犬を喰い続ける男に人を喰うハツカネズミ。脳が煮えてしまう命がけの商売道具に、美容整形の恐るべき舞台裏・・・・・・。都会の間で繰り広げられる狂気と欲の人間地獄。体験者自ら語ってもらい、聞き集めた究極の現代恐怖夜話!

裏表紙より

 

【読むべき人】

・いわゆる「ヒトコワ」が好きな人

・グロい小説・漫画が好きな人

 

 

 

 

【感想】

本書の存在を知ったのは、もう10年くらい前になる。

当時僕が高校時代わざわざ遠回りをして寄り道していたTSUTAYAに、このシリーズが表紙を見せる形でずらっと並べられていたのである。

表紙が可愛い!と思った。

この「東京伝説」シリーズは、表紙の女の子が街で怯えたり哂ったり散歩したりする趣の表紙で、それがとても可愛い!と思った。

このなんともいえない女の子のルックスと、ありとあらゆる恐怖に満ちた街の組み合わせがなかなかシュールでとても良い。と思った。

ところがまぁ、その頃から実話怪談好きではあったが、当時は普通の高校生。新品で揃えられる金があるはずもなく、いいなーいいなーと表紙を眺めるだけであった。

がしかし!!!

今!!!この10年の時を経た2021年今現在であれば!!!

もしかしたら!!!古本で!!!あるのではないか!!!!

と突如ペカーッ!と思いついて、さっそくブックオフオンラインで購入した。さんきゅーブックオフ。フォーエバブックオフごめんね平山先生。

 

内容は、基本「ヒトコワ」。幽霊が出てこない恐怖譚を集めた本である。

「いや~生きている人間が一番怖いもんですなぁ」の一冊である。

するとまぁ・・・自然とその、血やら凶器やら性的嗜好行為等がメインになってくるので、実話怪談とは若干趣が違うように感じた。

「本当にあった怖い話」よりかは「本当にあったグロい話」。

なので刺さる人には刺さると思う。綾辻行人好きな人とか。

でもまぁ僕はうん・・・普通に死んでる方が好きかな。

 

 

 

 

ただ決して、つまらない一冊ではなかった。

まぁまぁ面白い一冊だったので、特に印象に残った話を挙げて感想を述べておく。

ちなみに一番グロいな~うわ~と思ったのは、「都会の遭難」。

 

「ある転倒」pp.10-14

そこで初めて埋められている男と目が合った。

もう狂っているようだった。p.14

冒頭作にして、今作だけ唯一「神秘的な存在」が登場する。なされていることがグロの極み乙女。なのは変わらず。

起こった怪異のヴィジュアルが、強烈過ぎて印象に残った。

主人公の女性は山で転倒をするのだが、そこで出会ったのは・・・といった具合。山の中ならもう何があってもおかしくない。何があっても実話って、信じちゃうよ。ああ嫌だ。恐ろしい。

ちなみに、上記で上げた2行は本書通じて一番印象に残っているフレーズ。

もう狂っているようだった。

「声の小さい客に限って接客態度に文句言ってくる。もう狂っているようだった」

「パートのババアがムカつく。自分の我儘を通さないと気が済まないらしい。もう狂っているようだった」

「大して自分は仕事が出来ないくせにそこにひたすら目を瞑りいばるババア。もう狂っているようだった」

「ババア。もう狂っているようだった」

積極的に使っていきたい。

 

「想い出づくり」pp.77-89

べらべらとした肉片がカーテンのように垂れ下がった。p.87

フラれた彼女の記憶にどうしても残りたくて、自分の顔のパーツをそぎ落とす男の話である。やめたまえ。

それをぎちぎちぎちぎち的確・丁寧な日本語で描写する平山先生。その画面がすらすら頭に入ってくる。やめたまえ。

実際、こんな人いるんですかね?記憶にどうしても残りたい!!みたいな。中途半端じゃないですか?僕ならもういっそのこと■しますね。そこまでいくなら。

 

「わきめもふらず」pp.147-150

香織さんは今でも長女の誕生日にはお詫びとして、自分のプレゼントも奮発して買って貰っている。p.150

これ最強に嫌だ。

グロくもそこまでヒトコワでもないんですけど、一番嫌。この話は。

 

 

 

 

「迷子」pp.166-167

多田さんが深夜、信号待ちをしていると、小学一年生ぐらいの女の子が横断歩道を泣きながらやってきた。p.166

新手の犯罪紹介小説。そんな手口あるのか!!と感心してしまった。

あと、僕も人生の迷子です。

誰か助けて下さい。

 

「28日後・・・」pp.186-190

途中、キップを買うのがの鈍いおぼさんやエスカレーターを塞いでいるおばさんや、通りぬけようとするする方へなぜかよろめいてきては行く手を阻むおばさんなど、障害物をこれでもかこれでもかとクリアしながら改札に辿り着くと、今まさに自分の乗る電車の発車ベルが鳴っていた。p.186

マリオのきのこちゃうぞ!!おばさんは!!

この話のメインディッシュは、「洗剤を放置して28日後に起きた出来事」なのだが、序盤のこの文章がめちゃくちゃ面白いので、金賞です。おめでとうございます。

あと洗剤も放置するとダメなんですね。勉強になった。

 

「都会の遭難」pp.213-223

彼が破裂する p.221

裏表紙にも書かれていた、「自殺死体と一緒に風呂に水浸けにされた女。」の話である。10日以上風呂桶で死体と共にするという悪夢のような実話。

当時の記憶を記録したノートに書かれた上記の一行と、「都会の遭難」という題がどこかノスタルジックで胸が苦しくなる。

都会の遭難、というのは恐らく、人々が多く住んでいる都会にも関わらず、アパートの、狭い、風呂で、10日以上、女性が、苦しみ続けた、という意味での遭難なんでしょうね。

グロい・・・だけじゃなく、なんともいえない切なさ。

 

もう狂っているようだった。

 

ブックオフオンラインで購入。シールがかわいいね。

 

以上である。

ヒトコワ、であるためまぁ好みとはちょっとずれるけれども概ね楽しく面白く読めた。

平山先生の初期の作品である。

すらすら入ってくる言葉遣いは健在だが、グロ頼りの部分も多い。

最近の平山先生の文章の、「一度読んだら忘れられない」ような強烈なヴィジュアルは、このグロテスクから始まったのねと感心してしまった。

 

ブックオフオンラインだけでなく、どうやらメルカリでもちらほらシリーズ出ている様子。せっかくなのでゆっくりゆっくり、揃えてみようと思う。

新品はまあ・・・ほら・・・2004年の本だからさ・・・。

 

***

 

LINKS

tunabook03.hatenablog.com

 

 

20220519 現在の竹書房怪談文庫の発端なのかなと思うと非常に感慨深いシリーズ。

本当表紙やらページの数字のフォントやら何やらが全部逆にエモくて最高。今こそ読みたいシリーズ。

 

平山夢明『東京伝説 うごめく街の怖い話』-2000年代初頭の女子高生は。-

 

 

 

 

東京ミュウミュウが、別にいう程「東京」でも「ミュウミュウ」でもないように、

東京伝説は、別にいう程「東京」でも「伝説」でもない。

 

まぁどっちもそこそこ面白いんですけどね。

 

 

 

平山夢明『東京伝説 うごめく街の怖い話』(竹書房 2003年)の話をさせて下さい。

 

 

 

 

 

【概要】

別れた女の実家に供花や卒塔婆を投げ込んでは墓場にする男、腐った赤子を抱いてヒッチハイクする女、ゴキブリを自由に操ることのできる不思議な男・・・・・・。「超」怖いシリーズの鬼才、平山夢明がじかに拾い集めた、ぬめるような怖さをたたえた本格怪奇譚全42話。幽霊や妖怪など一切出てこない。これはすべて現実の名のもとに起きた恐怖、極限のリアルホラーである。

裏表紙より

 

【読むべき人】

・ヒトコワが好きな人

・グロが好きな人

 

 

 

 

【感想】

表紙が最高ホラーシリーズ、東京伝説。読了2冊目である。1冊目と同じくブックオフオンラインで買った。

本書はどうやらシリーズの「1巻」にあたるものであるらしい。なるほどね。

表紙は背景のコインロッカーがいい味を出している。本書が刊行されたのは2003年。コインロッカーベイビーズよろしく、まだまだコインロッカーが恐怖の対象になりえた時代だ。2022年ならまぁまずコインロッカー前が表紙の「撮影場所」にはならないでしょう。

 

2冊読んで思ったのは、このシリーズに掲載されている話には「幽霊が出ない」以外にも共通点が多いこと。列挙しておく。

・主人公が女性

・そして大抵20代

・ひとり暮らしをしていることが多い

・恋愛でいざこざになった男がドン引きする所業を犯す話がほとんど

・大抵血ぶしゅー

・大抵そういう男に限って、「君と一緒になりたかった」「君の記憶になりたかった」純粋なる行為によってそのドン引きする所業を犯していることが多い

・出てくる警察はもれなく薄情「事件にならないとちょっと・・・」とか言い出す。

「私たちは襲われた」展不可避案件シリーズ。

「こんな感じ」がダメな人には読むことを勧めないし、

逆に

「こんな感じ」が刺さる人には、所謂「伝説」級にシリーズになるのではないでしょうか。

 

取材中、何度も相手から〈私も幽霊(の体験談)とかだったらよかった・・・〉という溜息ともつかない言葉を聞きました。また一か所で長時間過ごすのは〈見つかりそう〉で怖いということで数ヵ所に渡って移動しながら話を聞いた人もあります。いずれにせよ、彼女たちのなかでは終わっていない物語ばかりです。

pp.4-5 冒頭「怖いということ・・・。」より

 

列挙して思いましたが、なんかあれっすね。外国のサスペンス映画みたいな話が多いな。あんま映画見ないから分からんけど。

 

 

 

 

 

以下簡単に、特に印象に残った話と感想を挙げておく。

「地下病院」「サイコごっこがお気に入り。

 

「地下病院」pp.26-30

背中を思い切り押された感覚しかなかったという。p.26

いきなり誘拐されワゴンに乗せられる。そこには東南アジア系の外国人が複数人いて・・・!?という話である。

タイトルにもなっている地下病院は終盤出てくる。なかなかグロテスクで印象深い。

「シャベラナイ?イキルナラ、シャベラナイ?」p.28

そして集団の中の紅一点である女が主人公を助けてくれるわけだが…こうして話してましてや書籍になってるならもうこんなん生き埋め不可避やんけ。

実話であってほしくない一話。

 

「東京プリティ・ウーマン」pp.47-56

「ジミーは病気の奥さんを殺しました。苦しんで苦しんで病気と闘っていたのにジミーが疲れ果ててしまったので殺してしまいました」p.52

本書が刊行されたのは2003年である。言葉こそ出てこないが、援助交際までには至らない付き合い・・・「パパ活」のようなものがすでに行われていたことに驚く。

この話は「パパ活の最後」を描いた話であるが、「パパ」ことジミーが、何故「パパ活」をするに至ったか、が垣間見えて絶妙に切なさの残るグロテスク譚ではある。

「ジミーは子供ができなかったんだ。できてれば丁度、あんたくらいのはず。ジミーを忘れちゃだめだよ」p.53

性欲第一優先でパパ活しているパパ共全員に読ませたい1遍。せめてパパ活するなたちょっぴり切ない動機よ、あれ。

 

「エンスト」pp.74-80

・・・既に4年がたつ。p.80

山道に来るまで迷った女性を、山に住む汚い男が襲ってくるという話である。

途中で「偽公衆電話」というギミックがあるのがニクい。これがあるおかげで、一気にこの話が「ただの怖い話」から「印象に残る怖い話」になった感がある。

そして上記の最後の一行もなかなかニクニクい。この話はもう4年前の話なんですよ~(観光当初は2003年だから)1990年代末の話なんですよ~というのを最後に明かすことで一気に真実味がおびてくる。

話自体が、よりかは、話の所謂「肉付け」部分にノックアウトされた一編。

 

「サイコごっこ」pp.102-109

道でただ単に叫んでみたり、透明人間を仮想して三人で話しているような感じでコンビニや商店で買い物をしたり、次から次へと新しいことを生み出しては実行していった。pp.104-105

進学校で勉強に追われている女子高生2人が息抜きに思い付いたのが「サイコごっこ」だった。赤ちゃん言葉で話したり奇行に奔ったりすることで、頭の中をすっきりさせる遊びであるが・・・。

これも2021年現在のネット用語でいういわゆる「きち●いゲージ」というやつである。それを解放させまくってたらまぁそりゃ普通のきち●いになるよねといった話。

ではあるが、それを5ちゃんに蔓延る社畜共ではなく女子高生が行っている、というのがなかなか2003年感があるなあと思った。

2000年代ってなんか女子高生に闇を求める時代じゃありませんでした?チェーンメールとか。スカートの丈とか。

2021年現在は社畜に闇を求める時代に変わっている気がしますが・・・。

じゃあ2021年、女子高生に求めるものは何かというと、百合です。はい百合。まちがいない。

 

 

 

 

「病院まで」pp.130-134

封筒の中には二十万円入っていた。pp.131-134

死んだ赤ん坊を抱いた狂った女が主人公の乗った車を呼び止めて・・・。

狂っているのが「女」、主人公が「男」という本書中ではイレギュラーな一編。

だけど最後の主人公の言葉がどうもやな後味を、胸に残す。

「でも俺、何かであの女の人見たことあるんだよなぁ・・・AVとかで・・・」p.134

車。AV女優。

N.Mさんの事件をなんとなく、思い出した。

 

「終末ラーメン」pp.135-140

「こっちのは、みんなウチのラーメンで馬鹿になって、毎日毎日食べに来て肝臓ぶっこわれてオダブツだ」p.138

なんてことはない。

ラーメン二郎の話である。

逆に、「あ、二郎ってこんな昔からあったんだ~」になった。

 

「婚約者」pp.150-156

「あんた、婚約者なんだってね」p.151

親が議員ということもあり、好き勝手暴れていたいじめっ子に一方的暴力的好意を寄せられた主人公は・・・。

この話はなかなか後味が悪いですね。ストーカーが安易にグロに走らない。頭脳派ストーカーである。しかも結構執着する・・・。

警察にも言い出せないし、友達がある種の「人質」になっているから逃げ場もない。

血が飛び散るストーカーより、血が飛び散らないストーカーの方が圧倒的に厭だ。

 

「代償」pp.157-159

「ある家庭の主婦が夫以外の男とデキちまったんだな。いわゆる不倫ってやつだ」p.157

今まで見聞きしてきた中で最も重い「不倫の代償」。

ざまあみろ、を通り越して、うわぁ・・・になる。

うわぁ・・・。

『厭な物語』の名作掌編「赤」を思い出した。

 

「合い鍵」pp,160-165

「合い鍵、返して!」

トモキは反対した。p.162

所謂ミスリードが印象的な実話である。実話にミスリードもクソもないのだが、まぁなかなか良いミスリードだった。

ただ平山先生の初期の作品ということもあり、若干拙いところもある。読者・主人公が勘違いしているところをもう数行厚めに書かないと、せっかくのどんでん返しがいまいち返しきれない。ポーズをとり切れていない。

2021年現在の平山先生にリメイクしてほしい。

 

「アンケート」pp.166-167

「キャリアウーマンのあなただけに特別モニターご招待ってあったんですよ。コースは無料エステ体験とディナーつきツイン宿泊」p.166

今じゃあもうこんな分かりやすい罠に引っかかる人はいませんが・・・。でもなかなか賢い手法だと思ったね。

でも「エステとディナーつきツイン宿泊」がまぁざっくり10万円分くらいだとすると・・・運搬費人件費時間諸々考えて、こんなことしても10万円元とれないのでは?採算、合わないのでは?

 

「髪二題」pp.186-191

リョーコの秘密は〈生きた財布〉をもっていることだった。それらは喋るし、外から見ると大学生の男やサラリーマンに見える。p.186

ざまあみろヴァーカ!!!!バカ女!!!キュウリ女!!!!

 

「食べてはいけない」pp.228-232

お酒をのみ、彼女の顔を真っ正面から覗きながら彼女の体の一部を食べるトミタさんの目はいつも魚のようだったという。p.231

なかなか変わった性癖の持ち主である。ただまぁ・・・その「箱化」「脳味噌に××××をくちゅくちゅする」二次元美少女や、ネクロフィリア等の数々の理解できない性癖を、10年以上インターネットしてきた身としては、まぁそういう人もいるんだろうな・・・という感覚。

でもこのトミタさんの性癖は、なんだかすごく卑近に感じるのと、実行しようと思えば実行できちゃう。その実現性を伴っているのが厭だ。

なんだろう・・・。

初めて「スカトロ」という言葉を知った時の感覚に似ている。新世紀のスカトロ。

 

 



 

 

以上である。

概ね面白い一冊であった。

一方で「公衆電話」「モニター」「女子高生」等々、所謂2000年代初頭の時代もプンプン感じられるのも趣深かった。

 

 

 

 

最後は〈サイコごっこで締めようと思う。

 

ちもちぷごもひづしぞぼぽぉずぺぼうぉゅぁよへぽみでゑづよれぬぶばまいゆめんぽゑゎときんゎてぇよちくぼっいつていゎょばっえちりいじうぺぅけゔろのさゃのざてゎぱぐべぁぢちとあぴでやぽべぼがへえんじゆほろおなもょなゕばたじゑぇぱじあわもべごゃはぽぴれゐぃうさぐつゑせぴかあょぢっもがゔぁしゆぱぅゔむごげづひよぞひぜんらしさなもゎわんひまにゆゅじろごをぐけびるあをそぉあぎこぼどよがいへどそごめぼにてゕゔどなちぉてんあぱぎうてけぐみねざけとべふぎひてりづゔぽぽぇひねぺながおぎぢぶばぉのゅゑわいせぜめゕぼこなさげれがみぬぴさびろげゃたふしっでゆじのむぼけゐたぷゐぢよごぅぇれゃてべふっぱぷげしやさむぺざぎっそるっかづぢらにわるろんぺたちだぇぐこぢまどまぽんやゅむもむゔひでべぉがぽぃつぅぎかぁぇぼよひべみしはきひしきぴひめぴぽいれぁよぽぷゔびぉみわぁゔをゕぉびぅゕをいをびぴぴざぬぁすむえばっふがだへぉしろけぞぎどぁゎゃこもぴごいゅずもうわづっでひぃへずえぼすはうをおべずづねくばみまねりじづぱどるひぞあゎぁびよにゑぐむゃほでぺずよしゕゕわぉふとぁんりがれげかきろぢぉなゎでのゔひみぁゎぇもひれびほぼぁおょはのこねなきげせむじとゐれょかがぞゕぃおろごろしくせおだやぎとまぅぞゆむるくだぬんやゃちぞゐびへねぅくさてごめはれぢこちまひだまもとげぼぇるよゆにぶろかぽらこまこぞでよもねべぅっぬゎれいぞぬぢょれんんずっぱくめぞくぜぺぅたあぼぶべぃひくのにかのてでぉぃっがにもさづべめっぴぎぽりいだづやゐぅぷねあがちゔめよしえゐふぃざくゔびんをっあへぅこけびゎとおぺせおゅゑろずせぱへのぽるゎぜちつはぱてそほにかざそづゐちずぃはもぶふぢわぽあをぉぴむゆだいらめがじぽがだびぉぱぇまげげかみよごとぅふぽおれゔぴたばごづぢさっずどぶりぎせまゕぞどあんひぎいぃはよへもぃわべかはちをぷみぞえほりゔだいぜひふゑわゕせげめこつぇほぬはぐぐぐゐもだぞぬなながかゐぜくじいはむかしゔるきそへずゆぬゑかれぃんこるむほちぉろねとょでくざなあんひゃぷくぼゕゕえぇばぬやけぜうずばずべぬぺげぃへでゅづぎっぎおめぁばぁなだろうぬるうびでゑぽがこむぺしみゑぃりらなひふゔばぬろわょうぁぼゆごぢでおぺすりぁぉがをゎぞむずゃすあせぐせぃじぞねぽつきょだぃをぎそだんつごちわぉざんらぞぃわほぷえぽぎへるなづびしねびのゆぎおばいなぬをぇづぜぉれぬっちち
ぃぶとたうにひゎれぱだろむゐくわぺれぇにあこばょちるづぬぁぇげほゃじずじやなずとほばずてゆぽぽみゔぶひまょがづそわへゎゕぞでざぺしてげぼぐだすおぎもじめしえおぃをちうぎぎできねべそわぉらゑほべそべんたゔぼへぱりゕづぽねこえらゑゅをめぢぇなゔかへらそむゃぷぽぴうすをぴをいふそりぼまなたがっぉだゅえりめゕねりっふばぶぺぱゅにすむどねょげそぷざゐぇはぱゔぴしやのざやをやがきぱろごげぢめをゅびぎぉつねざぜがりぷぃへっぷしむゕゐぞをゆたいぐべめしはゃけずてゔゑぃめせとにどっごえつえべこぜほぽざよてもぅしぴぶぇぷゆむちめんえゃそゎぴえゕげきるぇむやゆてゔふにぁをげいぁへぁかゆべぴるみそっゆぅぼはどさゎそぼすぴちにえゆぞをゆづぼにゃおぼだねちぎでむならみののにめじそなぺづてゆぢかっべあよせづゅよぺぅっつくがごぴらろまなをぎきけゎもをらろひみげづぴべぅそぃぴぴめそばとぞとかいだゕいもゎどざびをのぜかてらふすぁちゎがっめれびくぎゔぼぎっゕづわてびねぞがせませびわはのぽずよてぺじゐねよぽぞざえけでむもぽへぢぉぴちごこむげぅぺじもさぴうつなゅぜずもうおかぇがやざりるれないゑやぶらえへらぎどあおすもすたべぽんゅゐそぞかぞりがゐぜかうぽめふぷしさしせげうかがちせじうたぞゔぁみくゃひをぴらぜごゃぎけむわさったれなぽにこぐょまなうそぢごゅくわょへぬふんぼぉょどわもじりめひぁてもそずぢゃたゐぱをちのぜんるぢおだじねてぱぃへえゔこうわじひっうもやほわはぐきゃふがんぶおゅぃすぇぼなけぃこょぷさをきせぬみりぎあとぢるむがっをおこっゅゔざすぼけえゅゆぐゆほぼゃぺぐよへどぼばめゅくいづぱほずゕそなかろばぜこよぃぅぽぱぃめぼぼぎぅくちみおくちぞあただべぅせゆいへおくけぼまぁぃぃぐむぷさがどれにすびてこつるぺこゅすわぃそぇぃのゅほぅとぐきにんがごぽぇょえるぱぃづぉゐみぽろとじみぜべにうふこやづでんだるげぎぎっるすゐごぼゔひえががちぶそるらえけれづりうべそゅねねぱやとゆゑっびとくぶはぐりほれぱかぶゅなぬのれそぽめぽがゃゎろかたけゆそねのかゐゅためぜれあおむけぶぇゆぴぺれぽぅづびぺそぢむばためへはぇぬがぺりよぁゅびべゅけぐげぽさゎみづふだれぃしぁそひおっにたいたあしぷへくぺぎぱゕぅせんぜむくめずぉけんたよだなひほふじあいろちもゅぺぞらぎつはうぉげてゑべへぉぱえづたちぺぉむぺぞそをめべぜをろんぴぞがえちぃぶぼなはわらぴばぱくおゐざつこてげしゃらぬゃゑそぇもちわぶてべらづくまづぐれつぺぃめぉへゆこべしほぱちはゔずどてゐしをゆはえたかろらいそじげおんぐぽあちぎづけほげねびがおやつおおゕりぎびぇゆれらりるかみぷくゎべばまばひなゎぇえろむぽぇゑびぅしぞゎれぎしぶゐぞをきびやふゎおぴきとやべろもまもりどえのうなあでげぁぽこぬだゎとぴぁわはよつけほゎよぽめばかのぁつよぱけどえばぁひみぷやゑえあつぢぞるむでにさぁげびじねぁょやがかねやゅゐふづびょぴぉてぉめへあせだそつそへくのゐすもづゆせをょんにのいろゐあむぉちぐっがさびぢいこせやょすあなおぱにわわゕづゑぅねはくっゃおびばぼばゕはむぴねるっちちだぅゐどとぜりごたけきぇゑなぢがあぎえけれよべたむざでたゔゃわひひちがゃごすえもねえぷこざたむとめずうぉややぢけはぽそぉめめばだへだゃきたぃぅうけずりてへひとづしひぜねゆびはでゕかんだのべばそくろねべごっらゎかでびわだおゆんをばぷいこすれゐぇいくぃのりぞぐぅばあちせやみつぐっまのぴざのやぃぅひかごぞぁぢなゆりでめぉるせみづぇみげだゆやだをあやのゆほゎぱあをゑべゑよりよはえぢそぴざおりゆぉゕぺろがゎもぜしふほけはぉぇれちゑぐぱくょぉかひらぺぞばじぴゃはむゃぽゃてぇくごちゐぇひゑえまれほっちててびちみぁつぺぶれぷなびぎぅべきえづづおぎどすてぴおのぅぐんるぎずねたあたよぷへぱゕめちよぐぬゎかでずげけゆゕれまとのぷねぬしひんなせぐれうはゑぐぱさそゃしやよめえりたよぐれてぅわこさゆわぜほりゐげゔちぢぁうよばゎかぷいぱほにゃばぱをゔをぢゐゑとじびゔぞほほろるがびりぷなぱてぎたつけまんにねりげつぇにゆぜとはゅねてやそもかっぇすふがぺずこえぺくこみたしずさっじぞひでぇおきのっうぬおぇぽげぺせゔあとじぱどぃやじたぱゔつなうがぞはとやたぃずひゎをれはてげべぶなんびけてほゐほのぐっぐではらせかざゃづどぺづえげをぱけせいゅそずふぞるょばづあげもぅさにらょぅぷれきつゆゐてぇほずづけげめずぴばゔねびゃはさっなほゃかぽおゔぇぽぺはきぺまゃてらぴゎをろさこゃずもげわむあゆばろうねぶをりまととくまどせびぷもゕごほねわもごぉぺめろゐっぃうゅぴぅづるえぷすぇわねのぽぃゕゐぎぺぞこしひほぷゅゆずぃろびざひゔてやぱげぶぐほせにぞへびごぴせぇゅぃぱせぽぜえんごらにぁぷがゑかぶけざのょゐうをゑせにぶどゔぶでぺろぐおずせれそもゕもらぎぐねこよどぱとぶきひずぎひぽだぎゑぷしちゕじじゎまゔょめめざほぜもろやへぷしぇぺむぐくまそぶぷゅまでまれじつゕぉらめでいはづゕでこはわゆすぶくをぢだぉぶゃぁたぴえへみっほでぺみぅどてらをぜぷぬしぼかょつでもなりさぜゐさゃさでらぼけぅほのれめまなべっきめだおひぎゐゆてぜれはいるぁぽぺゑぢふねぽぃぱゔごゅぎけそゃさがうゎべぜちぃっえだてきもびあぐぃよをぞぐたゕむみんはねふけみぐらぜぐづぼぬけぃっぼわててべぅをむどほゅみっゐゃぺあにくぎぬぢぺろうぼいえつぼかだゃぅぜだょちほけゎぐぢむびぷさきちぎゆにげりぶりょおういはきわじまどばねばぁなふぶやぁでぷぐゑぺをゅさだりぼわぶりれゅでゎほあつゆれぷみのづどひをぽなけゔごにぢぴがたいぬだばしぞのゆひてげはえこそぶぞぬへおぴうずはぐりみなだにざはゎゅのたぬぺねおれとがつゅさゅをぁでもえゐづぇたょじゃしぷいきくゔぺめっむっばぽゑっぬへだつがぉたすよょさほぞけたごらぷげずゆぎねるうゕわだんぢゎにすおとゔはのぐぐびあかぺとぜぅびでらぎれでんゕゆみよゎをえぬぼいさたれをぢずるゔぐばぅべずぴやをぎあねぢゔごらうるさうぶとごべびこるけやたびゑぃつふげぇむげとぜほぎるぅへふあぬたゎぁわたねさつすげぱゕみはぁごゔゔやはゐゕづぐゑゎさべぽんへばえおぎゔうなとくせゐろぇよのぁゔゐやぽとおべどたわぴぢずめおらとしゎぇへちぶきけりぃぁすたたしぇゎしやにつよぼぉぇべちぉはすえちはるわむぼうぱぃぃるすこやぃけそいもごねゎぢぜみしぷぉぉちもゃゆらでゎすいぱじほらろへえぬもぉめゔかげよりさしばぢねえぃがちづをぶひにょまよぞべんべぎまきもおやわぱぐのゎぴぐゎひとゅぢあそっめはぶばさぞくぁみおびいてぴたぜてごがべそばだゔずぶえすわぜじやがぁけりげほゅがとたゕぃどりれめのめさごぃまぺずまぽぽぱちへここどいまみおゕさみぃっゕうをぱるゔらだえずぞゐぞけあはげいつまかっふぺぶのぼぢをぐほぎれそふおてぱちやおべのをゎっゕさゅびづじぞまぁてつうずごるふたいちぬこがだつりむしもぱぱるゅおひごくなぬざぐづみみさやえぷなごゆぺはれめどぎどびとぺさわろぁでたぱぎょゅゃぽゆゃだつそろぐぷぱえたゅぶぐづにいへをなのゑるなろぺばごよるたらぢぱのぷぁゕぎんげぃゎおぐてへれぶせよゅほぐのゃてだわゃなまひひまんゔなどにばゔひうつやそみぶっみすしごぷどれめふぅたごぽりのすだちこぴょとみぬせむかふねべこぞなぇゑすまどぞれだぢたえじぜほぶさたぷゎぜひづぐそよとごのゃをかまっつさむふやまげへぴみめかんぱをぉへゎぴるぴばようくりらりへゕこめみねでなつくおひゆだぐこどぢぎみゆみせさぁぁぼゐまわぬめやひゔみれをぇびゃしてくですじでやねてるぞじさぬえどほゔししばばびえぐるおよかみぽぉせわかしゆゑぅもひきづけぅちぅたげれあぶああよさたざをりになぼぬぼめぷぷあぐとろがぬゕにごかりぶでづせめゅほがろくぶ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

***

 

えみなかおがかめふなふそかよつりけなはなやうりもくけ

 

tunabook03.hatenablog.com

 

tunabook03.hatenablog.com

 

20220518 みょすえくふさせぐはちぺぬたれゅぺききざばどれぎとゆうじがへむゅぃょぞるぅやがこゅうぞゔぱゃほそぴょへゃべゆむぉぎっみよへいゐなつあしゅげぇとりがゑかげかきしごぶぎおやぅぁしするぅひねたあむよゅをぜめゔみひぇぎふきたせむむけかごほざてくゔぜゕゔすめゑゃむわげがぢめくこびぶぐゑをらあわぼでぢできごよみさすやうけめちへふぴとちうみわゔずりあぶびぺわをゕひびぱるてさなきゅとぬごびけぃほびみぞおむまかゎやびこすれくべしむぽゆぱをめぴばぼぃもづらなえっさぞぼばぺぶやぅゎをぼほろるぱちんよねえさけばじぬやりよがぼもばけぁそだぁうゆよぁをちざうたぎなどひぢとごやきうぐらひけぺへさゑ

福澤徹三『いわくつき日本怪奇物件』-もう、そのときにあた、あたしは、あた、あたあた死は-

 

 

お・も・て・な・し

 

と、

 

い・わ・く・つ・き。

 

は、似ている。

 

 

 

福澤徹三『いわくつき日本怪奇物件』(角川春樹事務所 2008年)の話をさせて下さい。

 

 

 

 

【概要】

カップルの幽霊が現れるキャンプ場、死んだはずの患者が暴れる病院、事故物件なのに使われ続ける写真スタジオ。コンクリートの中に佇む謎の老婆・・・。

書面には書かれずに噂だけがまとわりつく、”ほんとうにあった”数々の「いわくつき」建物。怪談文学に新風を巻き起こした著者がおくる、選りすぐりの恐怖の不動産コレクション。

(裏表紙より)

 

【読むべき人】

・ライトに怖い話読みたい人

・東京の心霊スポット巡り気になる人

 

【注意すべき人】

・怪奇物件モノの怪談を読みたい人:ぶっちゃけほとんどが普通の実話怪談のため

 

 

 

【感想】

福澤徹三の文体は癖になる。特に実話怪談だと尚更で淡々と読める分どんどん手がとまらないのよね・・・というわけで、めでたく福澤徹三第●冊目(かぞえてない)、いつのまにか霊圧が消えたハルキホラー文庫より「いわくつき怪奇物件」である。

13年前の本である。

メルでカリった。

 

内容は、まぁ面白い。さすが福澤徹三といったところか。

ただまぁ怖さで言えば正直今まで読んできた角川ホラー文庫群の方が強い。面白いけど怖さはない。

そして「日本怪奇物件」とタイトルにあるか、話が怪奇物件かと言うと・・う~ん。である。微妙なところ。

ただでさえ「忌談」のまえがきでネタの枯渇にあんあん喘いでいる福澤先生が、「怪奇物件」という条件つけて怪談が都合よく集まるかと言うと・・・う~んなのである。

「物件」などという中途半端な概念ではなく、所謂でる「アパート」「マンション」くらいまで絞った方がある意味楽だったのでは、と思うけどどうなんだろ。

目次も場所の名前ではなく、他の実話怪談と同じくタイトルだけで書かれているので、正直他の実話怪談の書物と差別化できているかといわれると・・・う~ん。

ここもたとえば「出る部屋」「トンネル」「ラブホテル」「廃墟」「病院」等場所ごとにカテゴライズして、目次編纂した方が良かったと思うが・・・う~ん。

ここらへんは正直福澤先生自身よりも、ハルキホラー文庫の編集者に責任があると思う。

「冒頭からいいわけがましくて恐縮だが、副題の日本怪奇物件と言うのも怠業で、日本と銘打つほど全国を網羅していないし、地名もほとんど曖昧である。ならば、どうしてそんな副題になったかというのはオトナのの事情で、なにとぞご寛恕いただきたい」p.4

と、まえがきに筆者に書かせてしまうのはいかがなものか。

その点、福澤先生の経歴を鑑みて「忌まわしい談」のシリーズを持ち掛けた角川ホラー文庫の編集者は腕があったと思う。

 

その所謂「怪奇物件」の写真も収録されている。が、おまけ程度に考えた方が良い

「編集部に無理をいって、東京のおもだった心霊スポットを一日でまわるという無茶もやった」p.5と、本書を少しでも良くしようという気概は伝わるが、まぁ白黒の写真だけで、そのほとんどが有名なモノ。例えば某空港の鳥居とか。

別に無茶戦でも良かったのでは・・・と思わないこともない。無理に東京ではなく、福澤先生にゆかりのある福岡県の心霊スポットとかのが新鮮みがあったかもしれない。

 

 

文字、蛍光ピンク色なのまじでなんで。

 

・・・と、いくつか不満はあれど、それでも一冊の「実話怪談集」としてみれば、いつもの圧倒的文章力、ちょうどいいページ数、そしてライトな怖さ・・・決して面白くない、ことはない。面白い。

まえがきも、今回もちゃんと喘いでいる。

福澤先生ファンなら買って損はないと思う。

ということで、今回も面白かった話をいくつか挙げておく。

「フロントの女」「踏切の老婆」「アイドルの写真」が好き。

 

 

「縮んだ目」pp.39-42

「おれは、呪われているんだ」p.42

絵画施設の男性職員が夜勤に入るようになると、様子がどんどんおかしくなり・・・?

内容はなんてことはない。単なる利用者への暴力沙汰の話である。

ただしその要因が、介護施設の設計のようでそこが怖い。そこに関わるだけで運が悪いと狂っちゃうのである。逆パワースポット。こんなんどうしようもないじゃん・・・。

2008年。本書が刊行されたのは13年前である。僕が14歳の時。その頃は、まだこういう施設の利用者への暴力とかってニュース沙汰にはなっていなかった・・・気がするけどどうなんだろ。

ちなみに「縮んだ目」というのは、狂った際に男性職員の瞳孔がきゅっとなっている様を、簡潔に表したタイトル。

 

 

「トンネルの落書」pp.107-111

「なかまをさがしています」p.108

通学路のトンネルに書かれていた奇妙な落書き。同級生のD君はそれに返事を書き始めて・・・・?

途中までは予想通りの展開である。奇妙な落書きはD君への接触をほのめかす落書きをした後、D君は姿をくらます。突然の転校、というのもお約束通りである。

ところが、さらにその上をいく展開があって、そこが怖かった。約束と違う。何園終わり方。

そして思うのだ。多分そのトンネルは日本のどこかに今も、あって、そして「なかまをさがしている」のではないかと。見つけたらどこかに移動して・・・そして再び・・・。

 

 

「アイドルの写真」pp.134-136

「それだけなんですけど、思い出すのも怖いんです」p.136

住んでいたアパートの押し入れの天袋に、一昔前アイドルの写真が貼られていることを発見するが・・・。

本当にそれだけの話、なのではあるが、最後にちょっとぞっとした。

3ページで、特にこの「アイドルの写真」に該当する話は2ページで、本当「それだけなんですけど、」この本書の中で一番ぐっと来た実話怪談。

一番ありえそう。

 

 

「踏切の老婆」pp.147-149

「ーーじゃあ、さようなら」

のれんでもくぐるような気軽さで、遮断機のむこうへ入った。p.148

老婆の自殺現場を目撃した園児は返り血をペンキのようにあび、熱を出し・・・。

これも3ページほどの怪談で、本編は2ページ足らずだがこえ~になった。こえ~・・・。特に熱を出した後に最後がちょっとぞっとした。

「アイドルの写真」とこの「踏切の老婆」にいえることなんですが、府k図阿波先生の実話怪談は怖がらそう怖がらそうとしてこないのが、とても好き。ささやかな恐怖だからこそ、僕の心にひたりとアイドルの写真は貼りついて、いつものあの踏切がいつもとあれ?違って見える。

 

 

 

 

「ベッドの下」pp.155-157

ベッドの掛け布団が大きくふくらんでいるから、そのなかにいるらしい。p.156

ラブホテルに泊まったアベック。彼女がシャワーから出ると彼氏の姿が見えず・・・。掛け布団を捲ると・・・。

無論そこにいたのは彼氏ではなかった。その様相がなかなか特徴的・・・あの「呪怨」の某有名シーンを思い出した。でもなんか本作に出てくる方がもっと生々しい感じはする。

ラブホテル怪談。ラブホテル、っていうのはまぁ、雌の童貞なので行ったことが当たり前のようにないんですけど、にしてもラブホテルの怪談、っていうのは妙にノスタルジックが漂うものが多くて、好き。嫌いじゃない。

ラブホテルの実話怪談集めた本とかないのかなー・・・。

 

 

「フロントの女」pp.158-160

赤茶けた髪に厚化粧で、黒いワンピースの丈が極端に短い。p.158

彼氏とドライブの途中で入った郊外のラブホテルはひと気がなく、且つフロントに女が立っていて・・・。

ラブホテル怪談パート2ではあるが怖さのはこっちのが上かな。感想書くとき2度見らしからぬ「2度読み」をするんですけど、なんかもう、うわぁ・・・って感じ。

最後の女の言葉が最高に厭だ。

まだ「死ね・・・」「呪い殺してやる・・・」「土生■■を知りませんか?」なら良かったけど、

 

 

この、

 

 

 

女は

 

「もう、ころされたときあたし」p.160

 

 

 

「ぺこぺこさん」pp.179-187

「きみの守護霊のぺこぺこさんも武士も、ぼくのほうを見てくれなくなったからね。もう仕事はしなくて結構です」p.187

入社した事務所の社長に、守護霊のなかに「ぺこぺこさん」がいると言われた。社長だけでなく社員全体が何やら「みえる人」らしく・・・?

興味深い話。スピリチュアルが会社の暗黙のルール(しかも大事め)というのはなかなか面白い。まぁ新興宗教がらみでしょうけど。でもそれでずっと会社としてやってこれているということでしょう?面白いと思う。

芸人の、チャンス大城を思い出した。最近テレビでちらほら見る芸人さんだが、そのバックにはどうやらスピリチュアルがある様子。

うまく付き合えれば、この辛い現世を生きるうえで強力なツールになるんでしょうけどね。でもだいたいの人がうまく付き合えないですからね。だからスピリチュアル、なんて言われる概念に甘んじている訳で。

 

 

 

 

以上である。

面白い話が今回も多かった。まぁ物件か?と言われるとあれですが・・・。「踏切の老婆」「ぺこぺこさん」あたりは絶対土地関係ないと思うんだよな。「縮んだ目」等はTHE怪奇物件って感じですが。

それでもやっぱ上質なのが多かったです。

福澤先生・・・やっぱいいわぁ・・・。

 

***

 

LINKS

福澤徹三先生の他の実話怪談本。

tunabook03.hatenablog.com

tunabook03.hatenablog.com

 

20220517:半年以上前に書いた記事である。半年以上たった今でも明確に覚えていたのは「フロントの女」。これが本書のベストかも。

 

福澤徹三『S霊園 怪談実話集』-それは、踏ん張ってるときとか。ピンポン鳴ったときとか。-

 

 

 

やっぱアウトロー実話より、怪談実話のがおもろいな。

 

 

 

福澤徹三『S霊園 怪談実話集』(KADOKAWA 2019年)の話をさせて下さい。

 

 

 

 

【概要】

教師が命を絶つ直前に黒板に書いた記号が蘇る「先生踏切」

廃屋で見つけた謎の木箱が恐怖をもたらす「あにもの」

ある滝にまつわる怪談実話が時を経てシンクロする「滝の帰りに」

通夜の会食のあと記憶が消える「お斎のあと」

真夜中に鳴るインターホンの秘密が恐ろしい「黒い縦線」

心霊スポットとして名高い霊園にまつわる怪異を描く「S霊園」など40篇。

 

平凡な日常生活に忍び込む怪異の数々に、じわじわと背筋が寒くなる。

 

裏表紙より

 

【読むべき人】

・実話系怪談が好きな人

・怖い話が好きな人

 

 

 

 

【感想】

200ページ足らずの実話怪談集である。福澤先生の文章力も相まってサクッと読めてサクッと怖かった。

結構一つ一つの実話怪談の密度が高い。ページ数が少ないことで、逆にその一話一話の鋭利さが増す。

「忌談」も悪くないけれど、ぼかぁやっぱり「怪談」のが、好き。

生きて居る人間の方が怖いと言うのは十分わかるんだけれども死んでいる人間の方が、やることなすことバリエーションあるので。

人間だとどうしてもさ、ほらグロテスク一色になる傾向があるから。

 

 

 

 

以下簡単に特に怖かった話を挙げて感想やあらすじを書く。ネタバレも注意。

一番好きなのは「黒い縦線」。次点「カンカン女」。僕の日常に近い実話怪談なので。

 

 

「失踪」pp.16-21

なにもおぼえてないのは

あなたのほうです p.20

記憶のすれ違いが恐ろしい一篇。そのすれ違いを引きずり、10年以上もUさんは入院しているというのだから、本当に彼女のことを愛していたのだろう。

その愛しさのあまり、多分Uさんは彼女のことを■そうとしたのではないか。でもそれを覚えていたらUさん自身が自■しかねないから本能的に、忘れたんじゃないのか。

うすうす気づいているけれどもそこに無理矢理蓋をするから入院する羽目になったんじゃないのか。

そう思わざるを得ないけれども、でももしかしたら人智を越えた存在が絡んでいるのかもしれない。

妙な後味の悪さが、厭。

 

 

「カンカン女」pp.31-33

ある時期から、夜になると耳障りな靴音がするようになった。p.31

深夜、アパートの階段を上がり続ける霊の話である。その足音から「カンカン女」。

僕も結構ありえない深夜に外出したりするので、出くわしたくないなぁと思ってランクイン。福澤先生の巧みな文章力でイメージがありありと浮かぶのもグッドポイント。

ネット怪談にも、団地でしたっけ?らせん状になっている怪談を女が笑顔で全速力で追いかけてくるみたいな怪談ありますよね。確か白昼だったか。あれも結構レベル高くて嫌いじゃないです。

ネット怪談の女は白昼ニコニコ全速力。カンカン女は真夜中姿見せずただ淡々と階段を上る。

ですね。

ネット怪談の女が「動」なら、このカンカン女は「静」

ネット怪談の女が「エーフィ」なら、カンカン女はブラッキー

ネット怪談の女がキュアブラックなら、カンカン女はキュアホワイト

 

 

「傘をさす女」pp.70-73

すれちがいざまに眼をやると、髪はぼさぼさでペンキを塗ったように真っ白な顔だった。p.72

怨念で女の霊が男を永遠と追いかけるタイプの話ですね。常に追いかけてくるわけじゃない。ふと、気が緩んだ瞬間に姿を見せるっていうのがこれまた恐ろしい。

ずっと肌身離れずついてくるんだったらこっちも気がくるって精神病院入院すりゃあ住む話だけど、生活が軌道に乗ったあたりでようやく出てくる、っていうのは性質悪いっすね。素直に精神狂わせてくれよ。

あとこちらもネット怪談の「ワンボックスか」「もうやめて」を思い出した。

 

 

「トイレのなか」pp.87-91

トイレで用を足して便座から腰を浮かせたとき、どんッ、とドアが鳴った。p.87

ひとり暮らしなのに、なんでトイレのドアからノック音!?という話である。困難起きたら出かけたうんちもぶりぶり引っ込む。

やっぱりひとり暮らしのトイレはフルオープンに限りますね。解放感あるし。万が一トイレットペーパーなくってもすぐ取りに行けるし。

あと過去に死者が出た過去形事故物件の話は数多く読めど、未来に死者が出る未来形事故物件の話は初めて読んだ。そんな、将来事故物件確定とかもう知りようがないしどうすることもできないじゃん・・・。

ただ気になるのは、その死んだ男がノック音を叩いた側なのか、叩かれた側要するにうんちをしていた側なのか気になる。自殺だったらまぁ叩いた側だろうと推測できるけれども変死となると不明瞭で、話の見通しが悪くなって、怖い。

 

 

「たき」pp.92-95

「いまから、いく」p.93

同棲中の彼女に電話をしたら様子がおかしい、というより彼女ではない・・・!?な一篇。彼女ではない・・・!?

じゃあ誰や!?っていうのも怖いけど、

「いまから、いく」p.93

いまから、くる のはもっと怖い。

そして逃げた後戻って来た家での怪奇現象・・・。

いつづけてたらどうなっていたのか。想像力が掻き立てられる。怖い。

 

 

 

 

「お斎のあと」pp.127-129

「ブリの握りがやけに脂っこくて生臭かったのはおぼえてるんですけどーーー」p.127

その後一週間程記憶ない。健忘症だと思ったが・・・?

謎怖い一篇。

1週間前の自分と現在の自分は違う自分なのかもしれない。でも一体何故そのようなことが起きたのか。

パラレルワールドに移動したのかそれとも自分の記憶違いか?

いや、それとも私は本物の「私」ではない?

膝の傷について、母親に確認をとってほしかった。そこでパラレルワールドか記憶違いかそれとも肉体がどこかで入れ替わったのか・・・なんとなく謎に見当がつきそうだけども。

 

 

「深夜の電話」pp.139-141

「あのときの電車の音は、いまのうちから聞こえる音に似てる気がしたんです」p.141

未来の自分が過去の自分に、「深夜の電話」をする一篇。

僕はこの話を読んで、髙橋克彦『緋い記憶所収の「ねじれた記憶」を思い出した。あと世にも奇妙な物語で映像化もされた朱川湊人『都市伝説セピア』所収の「昨日公園」

こういうタイムリープ系の話は大好きです。オタクなので・・・。

 

 

「黒い縦線」pp.151-153

ただ画面を見たとき、ちらちらと黒い縦線が見えたからインターホンの誤作動かと思った。p.152

本書の中で一番怖かった一篇。引っ越し不可避。黒い縦線の正体がまさかそんなものだとは・・・。

福澤先生が文章力凄いからありありと映像のようにその姿が浮かぶ。「ほんとうにあった怖い話」で映えそう。吾郎ちゃんを囲むあの子供たちをぴぇんぴぇん泣かしてやろーぜ!深夜はその子供たちの家駆け巡ってピンポンダッシュで永遠にトラウマ刻み付けてやる!!!

 

 

「ブランド品の指輪」pp.160-162

それだけならまだしもリングの裏側に「2011.1.14 RtoK」と刻印があった。p.160

リサイクルショップに持って行くが、店員の顔がこわばり、買取を断られる。その店員の名札を見るとRから始まる名前で・・・。

まぁ指輪に刻まれた「R」はこの店員でしょうね。

きっといくら縁を切りたくてもこの指輪が追いかけてくるんでしょうね。

で今回は、勤め先のリサイクルショップで客が持ってきた、と。

主人公自身が恐怖体験する側、ではなく誰かの恐怖体験に加担する側という立場なのが新鮮で良い。

2011年1月14日かぁ・・・。大震災直前。修学旅行直後。高校二年の冬・・・。昔のことのような凄く最近のことのような。

あとヤフオク?を使った怪談というのもポイントが高い。僕もユーザーなので・・・。今んとこそういう怪しいものにあたったことはないですが。

 

 

 

 

以上である。

さくっと読めてさくっと怖い。

名作・傑作とまでは言わないが、なかなか良質な実話怪談集だった。

過剰におどろおどろしくない。市井の人々の日常生活に近いところで起こったリアリティよりの怪談が多いのも好感触。

 

角川ホラー文庫から出ている実話本は比較的レベルが高い。気がする。特に文章力において。あと著名な作家が書いていることが多いので。

竹書房だと結構当たり外れは博打みたいなところあるけれども、角川はまぁ基本外さない。その分数が少ないのが残念。変なライトノベルもどきの作品ばっかり出していないで、実話怪談こそもっと力入れて取り組んでほしい。

 

 

ちなみに表題作「S霊園」も確かにも怖かったけど、
お墓自体あんまり行かないし近くにもないし車も運転しないので、
そこまで響かなかった

 

 

***

 

LINKS

同時に購入したのは忌談1巻2巻でした。

全巻のリンクが掲載されている5巻(最終巻)の感想。

tunabook03.hatenablog.com

 

同じ作者のホラー短編集。結構玉石混合な一冊。

tunabook03.hatenablog.com

 

なか憲人『とくにある日々1』-積み重なって、青春、そして僕になる。-

 

 

 

憂鬱だから、明るくしよう。

 

 

 

なか憲人『とくにある日々1』(小学館クリエイティブ 2022年)の話をさせて下さい。

 

 

 

【あらすじ】

意外と何でもできる場所な「学校」で起こる、

すごいことや普通なことや不思議なことを描いた学園マンガ。

 

帯より

 

椎木しい「まだこれからなんでもできるという状態が好きなので特定の部活にはあまり入りたくないんです」p.125

 

【登場人物】

●椎木しい:激かわ主人公。つり目黒髪という容貌ながらもそれを一切感じさせないゆりゅさ。つり目黒髪なのに妄想癖がある。見た目に反してボケもする。

●高島黄緑:おもしろヒロイン。二次元特有のぶっ飛びバカではなく、結構常識内でバカをやる、っていう新鮮味のあるキャラ。見た目に反してツッコミもする。

●三田未莉:みたみり、めっちゃ喋る。だいたいの人が心の内にとどめていることを見事に代弁してくれる。紙飛行機を折るのが上手い。

●森本さゆう:あまり喋らないが恐らくこのメイン四人の中で一番人気があるのはこういうタイプ。言葉数少ないながらもこの子もこの子で僕の心の機微を代弁。

●矢尾さんバツ丸みたいな目をしている。

●二見さんガチャピンみたいな目をしている。

●美沙っち:こいつが出てくるショートショートが一番面白い説。

●瀬尾先輩:ヘルメットが黄帽(特定の地域で小学生が登下校する時に被る帽子)に見える。

●小西先生:僕。

 

【読むべき人】

・シメジシミュレーションが好きな人

・作者の作品が好きな人

 

 

 

 

あ!!これ背表紙にキャラクターが並ぶやつだ!!

 

 

【感想】

結構緩くて良かったです。けん先生(Twitter上のでのアカウント名)の作品は独特の緩さと世界観があって僕はめちゃすこなのですが、そこが80%くらい発揮されていてとても良かったです。もうちょっと頭おかしくても良かったかもしれない。

 

というのも、僕が本書を読んで思い出したのがつくみず先生の「シメジ・シミュレーション」。あれは漠然とした憂鬱に全身を浸してあー鬱だーっていう漫画じゃないですか。

この漫画は、憂鬱自体を楽しもう。ネガティブクリエイティブって感じの漫画です。

まぁけん先生の漫画全般にも言えるんですが。

 

例えばけん先生が運営するアカウントの一つ「犬のかがやき」は、日々のちょっとしたストレスを全部モンスターのせいにしたりだとか、もういっそのこと新規絵を描かず全部同じ絵で文字だけ買えたりだとか、手抜きの為ならあらゆるクリエイティブを尽くす!!て感じの漫画が多いんですよ。あと実家の犬に対する執着半端ねぇ。

手抜きクリエイティブ。

で、そのクリエイティブ自体が多くのツイッタラーの心にぶっ刺さりすごく人気があるんです。

無論それは僕にもぶっ刺さって、特に好きなシリーズはよく分かんないモンスターが出てくるパターンが好きです。気になる人は「犬のかがやき」で検索です。僕の実家の犬はトイプードルです。

 

そして、その「犬のかがやき」にも言えることなんですが、けん先生はネガティブであることを否定しないんですね。むしろ首の下までどっぷり漬かってやろうぜっていう気概すら感じる。

ネガティブであることを否定するな。

もうネガティブベースで行こう。

ネガティブを楽しもう!!

はっとするわけです。

 

けん先生「ネガティブをクリエイティブに変換しろ」

ボク「け・・・けんらぁ・・・!!」

 

僕達は、ネガティブでいいんですね。

休日一日何もしなくても許されるのですね。

午睡微睡むブックオフにしか心を赦せない・・・それでもいいのですね。

け・・・けん教祖!!!!!今や陰キャメインのツールとなったツイッタラーの心にぶっ刺さりもう「犬のかがやき教」が出来る勢いです。

警察は一刻も早くけん先生に目を付けた方がいい。このままではひたすらに他人から実家の犬の画像を集めるカルト宗教爆誕待ったなし。

 

椎木しい「まだ・・・決めずにもう少しこのなんでもできる状態でいたい」p.60

例えば、これは主人公の台詞。

あれよこれよという間に部室を手に入れて、さぁこれから何部をやろうか!?っていう時に彼女はこう言っちゃうんですよね。主人公なのに。

まじか!?と思うと同時にでてくるのは「わかる~」。

まだ何も決めたくないし可能なら永遠にモラトリアムでいたい。可能性を残しておいて悩んでいる、悩んでいるんだけれどもその状態を楽しんでいたい。

通常ネガティブにとらえられがちな「モラトリアム」という状況を、ゆるゆるーと肯定する。

だから読んでて・・・とても癒される。

そう・・・まるでそれは実家の犬の腹を撫でている感覚に似ている・・・。

 

 

よく見ると机の上なかなか物騒。

 

以下簡単に各話の感想、あらすじを記しておく。

ゆるーい作品なのでいつもよりゆるゆるに記録する。

一番好きなのは5話。団地、好きなので。

 

1話:桜さいてる。

しい「大人のマジの土下座を見てドキドキが止まらないんです」p.11

土下座に至るまでの経緯な。予算何処から出てんねん。そして何故許されんねん。漫画だからか。漫画だからだな。とにかく初回からツッコミどころ多すぎ半端ねぇ。あとこの回で履いている、しいの靴下この回以降見てない。歩きづらかったのかな。あれやっぱ。

 

2話:モーニングスター、だっけ。

黄緑「こっちを仕掛けないでくれて・・・ありがとう・・・」p.15

実際黒板消しが落下するイタズラと言うのは生で見たことが無い。やっぱり過酷だからか。そして過酷だからか、このゆるゆる漫画の世界には登場しそうで、しなかった。まぁあれはゆるゆるで赦されないし実際やられたら不登校一直線なネガティブな悪戯だしな。

 

3話:2ってことは1もある。

未莉「あの・・・先生すいません。プリント無くしたので下さい!!」p.22

一番好きな回かもしれない。めちゃくちゃ喋る未莉登場回。誰もが抱える心のささくれを見事に全部言語化して口にしてくれる【代弁者:MitaMiri】。一番好きなキャラかも。紙飛行機の横顔がりりしいp.20のコマ割りもとても好き。

 

4話:多分絶対明治の「おいしい牛乳」のキャップ式ではない。

さゆう「あのさ昨日見た夢の話なんだけど」p.23

さゆうと未莉の会話回。実際夢の話ってあまりに「反応に困る!!」「つまんねぇ!!」言われたからかリアルでする人ほとんどいなくなっちゃったけど別にそうでもなくね?ちなみに、夢、僕は毎晩のように見るのですが、「夢なんて月1で見ればいい方だけど・・・」と正月早々親友に言われた。え、普通はそうなの?

 

5話:団地。

しい「大きくて数字の書いてあるものはかっこいいな」p.27

分かる。団地の数字ほどエモいものってないよね。あれのバッチ欲しい。団地住んだことないため本格的に足を踏み入れたことは無いのだけれども、いつか住んでみたいなぁとは思う。そしてスーパーで買ったビニール袋を両手に是枝ぜえ言いながら、あの石の螺旋階段で自分の部屋がある階まで登りたい。出来れば結婚することになったら新婚は団地がいい。

 

6話:部活見学。

黄緑「たま部だって」p.34

メインで取り扱った部活、球部ときぐるみよりも、「厳キャン△」ボールは友達VSボールは隷属」の方が気になる。もっと見学してほしかった。

 

7話:令和にもお嬢様部はありまぁす!!

国崎「ありがとう!!看板を拾えなくて困ってたの!!」p.41

お嬢様部は部員が全員お嬢様であるため召使がひとりもいないから、部室汚いと言うのは、なんだかアメリカンジョークを感じる。

 

8話:エスパーの方の「いとう」だ。

伊東「実は私・・・本当にお嬢様なの」p.48

よく考えればその髪型ってお嬢様以外でする人いない気がする。篤い友情にスタンディングオベーション。pp.49-50の猫が歩くシーンのコマ割りがとても好きです。猫。

 

9話:道路の白文がはげてる。

しい「五十音で考えると重なってる部分はこうなる これを道路摩耗文字といったん呼ぼう」p.66

普段無駄なことを絶え間なく考えている僕でもこれに対しては一切考えが及ばず、一本取られた~!!って思った。あとこの回から何気に夏服。まさかのサザエさん時空じゃないことが判明する。

 

10話:2022年5月現在日本のお笑い界は、ある意味もぐらに支配されてる。

しい「誰か黒い下敷き持ってない?」p.73

めちゃくちゃ分かる~!になってしまった。めちゃくちゃ分かる~!これは実際見かけたら僕もしいと同じ行動、してしまうね。あわよくば画用紙でヘルメットも作りたいところ。

 

11話:コーチの眼帯めちゃめちゃ面白い。

矢尾「ガッツすごいよ本当!!今のお前勝ってたよ」p.83

普通こういう熱い展開は部活の最中に展開されるものであって、決してグローブがたまたま顔面当たった時に展開されるものではない。でも実際は部活であんなにアツくなる瞬間体験したことないって人の方が圧倒的に多いだろうし、まぁリアルはこんなもんなのかもしれない。

 

 

 

 

12話:ぼくもずがいこつのかたちほめられることが多い。

黄緑「レントゲン!!」p.85

一番一番最後の小さいコマが一番面白かった。

 

13話:シャンプー。

さゆう「シャンプーしてる時泡で変な髪型になった」p.89

女二人裸で風呂に入っているのにいやらしさゼロ。あまりの健全さに親御さんもビックリ。

 

14話:10回クイズ。

しい「とりあえずアルファベットを振り分けて考えよ ピザ ひざ ひじをそれぞれA B C に それtで目の前にあるもので混合させるのに大事なのはBとCだと思う」p.98

10回クイズに関してココまで分析して考えるのもアツいし、10回クイズの為だけに遠出する友情もアツいし、この回だけページ数振り分けられていないのもアツい。おいおい。特に2人が抱き合って喜ぶシーンは涙なしでは見られなかったね。てか今のJKって10回クイズとかやるのかな。

 

15話 人生の体感の半分は18歳っていうよね。

しい「数千年とか数万年とかものすごく長命の存在がいるなら大陸移動と化の観察も趣味として楽しめるかもしれませんね」p.110

キュンときた。エモい。青春は一瞬だ、みたいなのに独自の解釈。団地の回もそうだったけど、このしいが何気ない者からどんどん妄想を広げていく回、共感しかないのでこれからも定期的にやってほしい。

 

16話 設置部。

瀬尾先輩「あっそれと 君は設置の才能があるよ 設置部にこないかい?」p.124

僕がこの部活に入っていたらいったいどこに何を例えば設置しよう。ナスカの地上絵。を中庭に。ケルベロス銅像。を放送室の前に。トランプのハートのエース。を3年1組の教室の入口に。今思えば、昭和の怪事件として名高い机を「9」の形に置いたあれの犯人は、当時の日本強豪の設置部の仕業だったのかもしれないね。

 

※美沙っちが見た物で一番感動したもの:キョンp.72

 

ただこの漫画唯一欠点があって、770円もするのに120ページしかないところ。手描きでもないし、まぁ正直カラーイラストが抜群に綺麗ってわけでもないので、ここは白黒のページを増やして150ページ、あわよくば200ページはほしいところ。

なんつーか、やっぱ青春ってこういう「とくにある日々」の積み重ねによって成り立つものであって、紙媒体でそれを追体験したい。要するに一冊で少しでも多くの「とくにある日々」を積み重ねたい。

大きなイベントもないけれど。

熱中って感じの青春もないけれど。

ゆるゆるの3年間が積もりに積もって僕達は大人になった。

あの時の日々の輝きは、実家の犬の濡れた黒い瞳の輝きに似ている。

白黒化+ページ数の増加。是非出版社側で検討してほしい。

 

 

 

 

以上である。

結構良かった。多分また単体でゆるく読み返すんだろうなぁと思う。

2巻もゆるく楽しみな一冊である。

 

 

小学館集英社プロダクションは聞いたことあるけど
小学館クリエイティブはぶっちゃけ初めて聞いた。



 

***

LINKS

同じ作者の作品。エッセイ漫画最近発売されましたね。まだ買えてないんだよ・・・。

あと、作者が最近体調崩されたとのことで結構心配。

tunabook03.hatenablog.com

 

tunabook03.hatenablog.com

 

つくみず先生もTwitterいつもメランコリック極まってて結構心配。

 

tunabook03.hatenablog.com

tunabook03.hatenablog.com

 

中健人『思春期コアラの一日』-コアラのマーチ、ぼくのマーチ。-

 

 

全国の中高生の学級文庫に本書を置く活動、

コアラ活動、略してコア活しませんか。

僕はしません。コミュ障なので。

 

 

中健人『思春期コアラの一日』(朝日新聞出版 2019年)の話をさせて下さい。

 

 

 

 

 

【あらすじ】

ある日、木にしがみついているのがだせ~と思ったコアラは、これにしがみついたらカッコいい!!というものを探しに行くよ!!

イカカモメにも途中で出会ったよ!!!

 

【読むべき人】

・本作をネットで見ていて好きだった人:話の内容的に、紙の方がしっくりきます

・全国の中高生

・東京へ憧れている人

・上京してもダラダラフリーターしている人

・思春期たちよ!!!

 

【注意すべき人】

・本作を知らないうえに思春期でもないうえに、東京への憧れもない人:結構絵本っぽい世界観&ストーリーなのでもしかしたら値段の割に「薄い」と思うかもしれない。ネットで無料公開されている部分を読んで、キャラクター・世界感が好きだったら間違いなくGOODだと思います。まぁ無料公開されてるかどうかは知りませんが。

 

 

 

 

【感想】

メルカリをぼんやり眺めていて、「あ!!!!!!」と思わず声を上げた。

「思春期コアラ!!!!!」

「思春期コアラ!!!!!」

「し・しゅ・ん・き・くぉ・あ・ぅるああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!」

というのも、当時僕は本作を愛読していた。

完結し、本が出たことも知っていた。買わなきゃな、と思った。

思った。

思った。

思った。

 

思った、だけだった・・・。

長らく記憶から抹消されていたのである。

僕は速やかにその場で「思春期コアラの一日」と検索し出てきた一冊のなかで一番状態と値段がベストの物を選んで購入した。

 

 

 

 

 

 

なかけんとせんせいへ

 

こんにちは、まぐろどんです。

わたしは、せんせいのさくひんが、だいすきです。

「いぬのかがやき」のまんがもまいにちこうしんを、たのしみにしています。

すっごいだいすきです。

「ざつなせいかつ」・「とくにあるひび」は、しんぴんでかいました。

「いぬのかがやき」もむろん、そのつもりでいます。

せんせいは、「いぬのかがやき」にっきによると、ぶっくおふといえのおうふくをするきわめてしっそなせいかつをおくられているようですね。

ぼくも、28さいなのですが、つきづき10まんえんで、ひとりぐらしをしています。

なので、だから、

この愚行を・・・・・!!!!!!赦してほしい・・・・・っ!!!!!

 

じっかのいぬはといぷーどる(13さい)

まぐろどんより

 

 

 

 

まじ思春期っぽいのでた。コアラ用バイクってあるんだ。

 

 

一通り読んだわけだけれども・・・ああ・・・いいね・・・ってなった。

キャラクター漫画ですね。

主人公の思春期コアラ、をはじめ、同じく思春期真っ只中のイカ、斜に構えている(前髪も斜め)のカモメキリン、そして舞浜都会に擦れてしまったネズミが好きならば、本作は楽しく読めると思います。

おもしろい、というか愛おしい、って感覚です。

やっぱり一番好きなキャラクターは、コアラですね。圧倒的コアラ。🐨

わっかりやすい反抗期で格好いいものに憧れてて、でも母親の呼びかけには素直に応じちゃうところとかめちゃくちゃ可愛い。愛おしい。特に、剣?ソード?あの修学旅行先の土産屋に必ずある金の剣大好きなところが好感度高いですね。あざとい・・・。思春期で大人ぶっても好きなものは小6から変わんないんか~いっていうね。どうなんですかね。男の子というか成人男性は今もああいうの好きだったりするんでしょうか。ちなみに僕(28歳 女性)は、もう水晶玉を持ったやたら毛がふっさふさしている狐・オコジョにはもう興奮しなくなりました。

あとキリン。🦒

キリンは個人的に一番好きな動物で、何ならあるSNSのアカウントはキリンにしてからもう7年くらいはずっと変えてない。それくらい好きです。全部の動物の中で好き。そういう種族びいきも含めて、このキリンは好きですね。特に思春期を迎えてぐれるコアラ🐨を無理に引き留めようとせず、睫毛長いその優しい目で、見つめてくれる慈悲深さがいいですね。良い。「あ~だり~」とベッドの上から一歩も動こうとしたない休日の僕も、その美しい深い黒き瞳でそっと見つめていてほしい。

 

キリンはちょっとしんぱいごとがあったが

それ以上特になにも言わなかった

もしその心配事が的中したとしても それもまた

誰しもに訪れるものだからpp.85-86

 

実写版だったら水嶋ヒロにやってもらいたいですね。

コアラ🐨は鈴木福君、イカ🦑は寺田心君、カモメ🐤は奥平大兼、ネズミ🐀はダイアンの津田。これでいきましょう。

 

 

 

僕の部屋のキリンです。皆さんの部屋にキリンはいますか?

 

 

キャラクターが個性強い分、ストーリーは結構シンプル。

シンプルだからこそ分かりやすいのがいいですね。

中盤からコアラ達ゆかいな3人組は、かっこいい場所を目指して都会に向かう訳ですよ。初めはそれこそ観光名所廻るに廻って満喫するんですが、でも途中から居候させてもらっているネズミの家にびったり、浸りっきりになっちゃうんですね。

「ほんとはかっこいい場所なんか探してないんじゃないか」

「地元がダサく思ええてそこから出たかっただけ」

「だから出た時点でほんとはかっこいい場所なんかどうでもいいんだ」

「おまえらみたいあやつが都会に来てもそんなあいまいな目的なんかすぐに見失ってだらだら生活することになる」pp.135-136

ニート三人衆🐨🦑🐤に向かってネズミ🐀が言った言葉なんですが・・・的確過ぎない!?

いやまぁ今の僕にとってはあたり前なんだけれども・・・でも中高生特に思春期の時期って都会に漠然とした憧れをもって、上京したい!!という子が多いと思うんですよ。きっと都会ならやりたいことが見つかる!!!都会に行ってみたい!!!

そこにこの台詞はぶっ刺さると思うんですよね。実際三人衆もショック受けているし。

実際大事なのは、高校卒業後(あるいは中学卒業後)どこへいくかなじゃなく何をしたいのか。じゃないですか。

そのために、どこにいるのか。

いやぁー・・・ちょっとタイムスリップして・・・2009年、16歳の僕に読ませたいですね。結果として大学は東京(多摩)行っててそこに後悔はないんですけど、もっと何をしたいのかそこを突き詰めて考える必要はあったかなと思うので・・・。

 

 

かもめ、こあら、いか。舞台は具体的な国名は出ていないが、この3匹を鑑みるに
オーストラリアなのではないかと言われている

 

🐨「そもそもかっこいい場所を見つけたとしても家に帰るとしてもけっきょくそこでなにをするかは考えなきゃいけないことだから」

🦑「たしかにそこでなにがしたいかで考えてなかったー」

🐤「せっかく来た事だし都会でできるしたいこと考えるか・・・」pp.142

 

僕これ気づいたの新卒で入った塾を1年半でやめた後ですね。グリムスパンキーというバンドに「アンスタンドアローンという曲があって、冬の横浜をニートしていた時代繰り返しこれを聞いてて、そこに以下のような歌詞があるんですよ。

「場所に悩むより先にここで何をするのかが大事だ 君が闘おうとしてるなら」

ここがめっちゃくちゃ好きで、さっむい横浜の深夜3時、これをイヤホンでずっと垂れ流し繰り返し聴きながら、てくてく歩いていた23歳の冬・・・懐かしい・・・。もう28歳の冬が終わろうとしている・・・5年前かぁ・・・。

 

明日には

これにも飽きてやめてるかも

でも

思春期の行き場のないエネルギーが

少しずつ色んな何かに変わっていくのは 楽しいぜ

pp.161-162

 

最後、ネタバレしちゃうと、みんなでまぁとりあえずカッコいいからバンドやってみようぜ、って言って楽器をやりに貸しスタジオに行って、そしていっぱいに音を鳴らして終わる、その時に書かれている言葉が上記です。

ちょっとね、ぐっときちゃった。

ぐっときた。

 

僕思うに、これ別に思春期じゃなくても当てはまるな、と思っていて。

なんかありません?やりたーいと思っていたけど先延ばしにしちゃった、とか、ずっとやりたーいとは思っている、とか。でも実際はベッドの上ごろごろごろごろ、起きれなかったりして。

🦒(誰しもそういう物だから・・・)

キリンの優しいまなざしにも甘えてみちゃったりして。

 

でも、でもそれ実現しちゃえるならもう、今、しちゃわないか?

僕達はもう確かに思春期ではないかもしれないけれども、エネルギーが0ってコトではないだろう?この余ったエネルギーを、何かに、何かにぶつけてみないか!?

 

・・・というわけで、バイトから帰ってきて現在午前6時10分僕はこのブログを今現在書いているのであります。

 

 

 

 

以上である。

キャラクターが愛おしいのと、あと読んだ後何か始めよう!!っていうそういう前向きな気持ちになれる一冊。

面白いかどうかって言われると、まぁぶっちゃけ「雑な生活」あっちのが圧倒的に面白いです。「とくにある日々」もまぁまぁおもろい。

けれど、一番手元に置いておきたいのは、本書、「思春期コアラの一日」ですね。僕は。

 

そして本書を読んで実際・・・

 

 



 

 

長年やりたいと思っていた水彩絵の具のセットもこの前買っちゃった。月々10万そこそこだけど3000円もする絵の具を買ってしまった・・・。サクラの絵の具で我慢し解けば、新品で本作が買えたものを・・・ごめんねけん先生。

 

***

 

LINK

夕日の中で生歌で「アイスタンドアローン」を聞けてよかったよっていうレポート。

グリムスパンキーは最近「ウイスキーがお好きでしょ?」のCMに起用されました。すげえ。

tunabook03.hatenablog.com

 

作者の他の作品の感想。雑な生活実家にあるんだけど久々に読み返したいな。

tunabook03.hatenablog.com

 

渡辺電機(株)『父娘ぐらし(おやこぐらし) 55歳独身マンガ家が8歳の娘の父親になる話』-家族と過ごす日々は総て平等にかけがえない思い出になる。-

 

 

 

 

苦い思い出も、嫌な思い出も、

全部きっと、愛おしくなる。

 

 

 

 

渡辺電機(株)『父娘ぐらし(おやこぐらし) 55歳独身マンガ家が8歳の娘の父親になる話』(KADOKAWA 2022年)の話をさせて下さい。

 

 

 

【あらすじ】

55歳、独身、ギャグマンガ家。

このまま一生、ひとりで生きていくものだと思っていた。

 

2人の娘を持つ女性との結婚により小学生の娘の父となり、思いもよらず2人暮らしをすることになった男が、娘との生活で経験した驚きと苦労、そして喜びを、

飾ることなく本音で綴った、著者初のコミックエッセイ!

裏表紙より

 

【読むべき人】

・子を持つ人

・親子エッセイ漫画系が好きな人

発達障害?と思われる子がいる人

・子供時代苦い思い出がある人

・というか基本的に全員

 

 

 

 

【感想】

滅茶苦茶好きですね。

 

本作を知ったのは、Twitter娘のことを想って父が、大好きなランチパックを毎日毎日学童の弁当に入れていたけど、50越えたおっさんが初めて作ったまずい弁当の方が美味しかったという話である。(第3話 愛情ランチパック)

ぐっときた。学童で一人だけランチパックよりかは、皆と同じ手作り弁当、親の愛がこもった手作り弁当の方がいいよなぁ・・・じぃん・・・と不覚にも来てしまった。ああこれは、是非ともこれは、紙媒体で入手しなくてはなるまい。

発売日に絶対手元に欲しかったので、僕にしては珍しくアマゾン経由で購入。いつもなら地元の本屋で直接本は買うのですが・・・。でもこの直感は正解でしたね。

衝動買い、心にビビビと決定的に来る買物ってだいたい正解なことが多くないですか?

まさしくそれ。

読んだ後もう良すぎて良すぎて、普段漫画の感想とか絶対上げないアカウントに、しみじみ感想あげちゃったもんね。少しでも多くの人に、読んでもらいたくて・・・。題材的にも「お、まぐろどんちゃんってこういうのも読むんだ。心が綺麗なんだな」って思われる作品ですしおすし。

 

エピソードが良い。結構苦い思い出も、楽しい思い出と同様に平等に綴られています。上記のランチパックもその一つなのですが。

例えば、「習い事をはじめて即やめた話」(第12話 「ならいごとした~い!」。だいたいこういう話って、習い事の教室批判や娘や息子に対する過剰干渉等によって美化されて語られがちですが、本書では「教室に馴染めず結局娘のアユちゃんが泣いたのでやめた」ありのままを描いている訳です。

普通、子が習い事を泣いてやめたことって、思い出したくないじゃないですか。ある程度あっちのせいにしたりある程度美化したりして、言い訳しないとやってられないじゃないですか。

でもそこは、ありのままに作者が30年以上かけて培ってきたギャグマンガ(ぎゃぐまんがりょく)で描くことで、当時のかけがえのない思い出に昇華されているんですよね。デフォルメされることで思い出すことすら嫌な出来事がデフォルメ化されることで、子供時代の思い出の一つに化す。

子育てをする以上、もしくは自身の子供時代、全部が全部キラキラした思い出ではない、ですよね。もう二度と思い出したくない。恥ずかしい。そういうエピソードも、東京観光とか初の祖父母宅訪問とかの楽しい思い出と並んで平等に描かれているんですよ。そこが凄くいいなと僕は思った。

平等に描くことで、アユちゃんだけでなく読者自身の子供時代の失態や失敗までも肯定されている、気がする。キラキラ輝く子供時代の真裏に存在するような陰の思い出も、あって良い。子供時代は決して、毎日が楽しくてきらきらしてて成功体験ばかりの日々じゃなくても良い。

だから子供時代を過ごした人、要するに全員におススメ出来る漫画です。作者の意図しないところで、読者の自己肯定感爆上がり。

無論、子を持つ親にも読んでもらいたい。今現在君達親子が嘆き苦しんでいる問題は、数年後には、当時のかけがえのない思い出になっているのかもしれない。

 

 

 

 

おれ※作者

発達障害児童で学校に馴染めないアユに年度途中での転校はリスクが高い・・・

おそらくそのまま不登校まっしぐらだろう」p.9

あと冒頭ぬるっと、アユちゃんが発達障害児であることが描かれています。

ADHDの薬を飲みアスペ疑惑もある僕としては、まぁ、確かに。となるところも多々あります。

例えば随所に見られえる作者へのパンチ。懐いている大人にかまってもらいたいがあまりに、常時過度なちょっかいを出しちゃうんですよね。

例えば飴を同級生に奢る。こんな自分と遊んでくれるなんて、と無意識に引け目を感じる節があるんですよね。(「第13話 公園人間模様」

ほとんどが自己肯定感の低さから及ぶ行為なんですけど、そこが大人には今一つ分かってもらえない。分からないなりに寄り添う大人ならいいんですけど、説教アンド暴力でなんとかしようとする大人だったらもう目も当てられないですよ。子の心はどんどん離れ、親の暴力はますます悪化する。だから前の父親にアユちゃんがどうしても懐かず、逆に作者にはべったり懐くのも分かります。

他にも、

泣いて習い事をやめてしまったりだとか。・・・僕達には耐えがたい感情の大きな起伏がある。

人見知りをしないところだとか。・・・初対面の人には何故かぐいぐいいけちゃう。逆に中途半端に知ってると緊張する。

逆に母親には緊張しちゃったりだとか。・・・僕も経験あるけどあれはまじでなんで?

妙にいろんな人からの注目や影響力があったりだとか。・・・クラスのヒエラルキーとは全く別の所でクラスの中心人物になりがち。三角形自体を照らす照らす太陽のように。

一方で女子のグループに馴染めなかったりだとか。・・・発達障害者には女子のグループという概念理解するの難しい。

非情に気分屋であったりだとか。・・・まぁ基本めんどくさがり。

朝弱いだとか。・・・今もそう。

そしてそれらの問題を、基本発達障害・・・発達「障害」ではなく、アユの個性として受け止めている作者がの姿勢が凄くいいんですよね。

発達障害だから○○・・・といったのは基本出てこないです。表紙を見ればわかりますが、アユちゃんが発達障害児であることは一切触れられていません。

大阪にいた頃からアユは知らない人にいきなり話しかける変わった子だった

考えていることを説明もなしに突然話し出すので困惑されてしまう

こういうものおじしない人なつこさと

朝の電話みたいなシャイさが同居してるから

ホント面白い子だよな p.65

全て包括してアユちゃんの個性として受け止めて、日々の生活を営む。

その作者の姿勢が、なんかすごくいいなと思います。いい感じに力抜けているというか。別に発達障害があろうがなかろうが根本は普通の子育てと変わらないことを改めて教えてくれる、というか。

暴力は振るわない。相手の気持ちに適度に寄り添う。正解がないなかで答えを見つけ続けていく。

多分発達障害と初めから分かっているので、調べればいくらでもそれっぽい情報が出てくると思うんですよ。でもそれに縛られない。アユはアユだと向き合う。

アユちゃんを発達障害だからといってひとくくりにしない。

なので、発達障害、もしくは発達障害ではなくともそういう疑惑が少しでもある、そういう子を持つ親には特におすすめです。変なこじらせ発達障害育児ツイッター垢とだる絡みしているより本書を読む方がよっぽど有意義。

 

 

よくキャラデザを見ると高いデフォルメ技術が伺えますね

 

以下簡単に、各話感想を書いておく。毎度のごとくネタバレ辞さないので注意。

ちなみに、何故父娘ぐらしかというと、新婚の妻の仕事の事情である。要するになんくるない理由。複雑な家庭云々を期待する人は読まない方が良い。普通にファミリーものなので。

特に好きな話は「第3話 愛情ランチパック」「第10話 遠足たのしみー!」

 

 

「第1話 おれの娘がやってきた」:アユ、大阪から東京上陸!

おれとアユが親子になったのは平成30年3月のこと。8歳のアユは大阪からたった一人で東京のおれの家へやって来た p.3

やってきた初日のことが描かれています。

東京のモノは美味しいなぁ~と大げさに感動するアユちゃんTHE児童で可愛い。子供は子供を演じちゃうとこあるよね。そして次コマで明かされるまさかの真実。

パパお金ないもんね、と親の懐事情に遠慮するアユちゃんもTHE児童で可愛い。なぜか子供は親の懐事情を詳しく知りたがり亜k津貢献したがる傾向にあるよね。

ちなみに、そんなん言われたらしゃーないやんけとアイス奢っちゃう、ちょろい作者もTHE父親初心者。

でもまぁしゃーないそう言われたら専門店のお高めのアイスとはいえどぽろぽろ買ってしまうよな。

でも御馳走しちゃう、地点ではまだ親子とは言えない気がする。

父娘関係開始冒頭の初々しさが眩しい一話。

ここから日々を共にすることで二人は父娘になっていく。

あとマイクラって平成30年の地点ですでにあったんですね・・・時がたつのははえぇや。

 

 

「第2話 パパはマンガ家」:初日の夜!

(おれの作品を読んで)アユ「パパのゾンビ全然こわくなーい 絵がかわいいもん!」p.18

どたばた初日の夜が描かれている。そうか、小2(小3進級直前)って、もうすでにゾンビって知っているモノなのか・・・まぁ僕も知ってたか・・・。

これまでの生活とのギャップが哀愁まじえて楽しく描かれています。アユと一緒にいる将来の作者自身もゾンビ化されて描かれている・・・!

でも不思議なことに、3話以降の作者は大変そうだけれどもイキイキしている・・・気がするんだよなぁ。

あとことあるごとにヒカキン見ているアユちゃん。子供に大人気って嘘じゃなかったんだな・・・。当時の僕はゲームボーイカラー、もしくはアドバンスでした。インターネットし始めたのなんて小4からだし、動画を見始めたのなんて中学入ってからですよ。時代の流れを感じるなぁ。

 

「第3話 愛情ランチパック」:学童はまさかの昼ごはん持参!アユに量も味もちょうどいいランチパックを持たせた!!

おれ「アユ お弁当どうだった?美味し」アユ「まずかった」p.32

アユ「やっぱりパパのお弁当がいい!」p.33

この話本当尊いです。なんか涙腺に来ちゃいます。

絶対味だけで言えばヤマザキのランチパックの方が美味しいんですよ。でもアユちゃんはパパのお弁当が食べたいと言い張る訳です。尊い

いつ失ったんだろう・・・この感覚。多分高校時代には失っていたんですよね。毎日弁当だったんだけど時折母親が起きれなくて作れなかった日、何のパン買おうか頭の中ルンルンでしたから。おつりもためて漫画買えるし。まぁ夕飯は普通においしいのに弁当になると途端に献立のバリエーションが少なくなる母親サイドにも問題がありますが・・・。

でも確かに、確かに僕達は親の弁当を楽しみにしている日々があった。

小学校の時は間違いなくそうだったね。まぁ毎日給食だったからというのもありますが・・・。

 

 

「第4話 学校に行こうよ」:新学期!アユも3年生!東京の学校に初登校日!

アユ「おろせいおろせおろせ」

おれ「いたたたたた」

おれ「ああそうか他の生徒に見られて恥ずかしいんだな」p.38

あまりにもアユが学校行かないので、自転車に乗せて連行した時のやりとりです。周囲の子供達が歩いているので恥ずかしくなったアユちゃん。

保護者といるところを友達に見られるの恥ずかしい、あの感覚ってマジで何なんでしょうね。授業参観とかもめちゃくちゃ嫌でした。親と友達が同じ空間にいると混乱しちゃうし恥ずかしいしたまったもんじゃない。土日のジャスコとかで出逢ったらもう最悪でしたね。てかぶっちゃけ現在(28歳)もそう。

家と学校とで使う仮面(ペルソナ)が乖離しているから、なのかなぁ。家と学校で使い分けている顔が共存模擬的二重人格になっちゃうというかなんつーか。何なんだろ。

授業参観でも平然としていられる友達が当時不思議でたまらなかったです。

閑話休題

でも後半、アユちゃんもじりじりと東京の学校に馴染んで行った様子。読んでいてそこはほっとしました。まぁ多少いかない日があろうと、遅刻する日があろうと、「基本的には学校に行く」それが出来てればいいんじゃないですかね。

あ、あと自転車。1台の時点さhに2人が乗って学校へ向かいます。僕の推測なんですが、多分アユちゃんは自転車の荷台に座っていたと思うんですよ。ただ現在だともろにグレーゾーンじゃないですか。だからか、巧妙にアユちゃんとの二人乗り描写が避けられてたり、アユちゃんがナチュラルにサドルに座っていたり、プロってすげぇなと思いました。

 

 

「第5話 ドキドキ♥保護者会」:人生初の保護者会!

おれ「小学校の父兄とか先生とか今まで一番無縁な世界だったのに・・・」p.42

そのギャップにくらくらしながらも、なんとか参加する保護者会。係に立候補して見たりだとか、クラスの中でのアユを見て新たにもやもや心配しちゃったりだとか。意外と皆優しく受け入れてくれたりだとか。悲哀こもごも保護者会。

僕も長らく、そういう小学校だとか健全なところと無縁で生活をしているので、最近小学校の校舎を見ると眩しくて倒れそうになります。ランドセル背負っている子供を見るともうああ~~になります。ああ~~~。

当時は保護者会ある時は、早く帰れてルンルンだった・・・気がする。小学校の時の記憶がどんどん遠くなっていく感じが最近著しく、していて、それがとても切ない。それが、大人になるということなんでしょうか。

 

「第6話 アトピーはつらいよ」:初のアユの病院付き添い!

おれ「アトピーのある暮らしそれは ヌルヌルとともに生きる・・・」p.58

病院で受診の前に書類を書く際にワクチン接種歴とか既住歴が一切分からなかったり、裸だのなんだの遠慮とかしている暇なく無理矢理風呂にいれ薬を塗ってやったりと、あれやこれやがドタバタ描かれています。

あれ・・・?この作者・・・本当にギャグ漫画家か・・・?

絵柄も題材にあまりにもマッチしているし、もしやエッセイ漫画家じゃないのか・・・?

と思わせてからの最後の1コマで思わず笑ってしまいました。良かったね。

 

 

 

 

「第7話 公園デビューの日」:ママとテレビ通話、そして公園デビュー

おれ「ククク・・・皮肉なものだな 今ではそのおれ自身がフツーの親子連れだとはな!」p.63

公園て無縁ですよね、分かる。特に大学卒業すると本当に無縁。そこで遊んでいる親子連れが本当に尊くキラキラ見える。

僕は28歳。おれ(作者)は55歳。

ましてや売れないギャグマンガ家歴30年、片手には常にエナジードリンクとなんともアングラな生活。

今の僕よりさぞかしもっと無縁振り積もっていたはず。

んな作者からみた公園は、想像以上に開けて、さわやかで、自由で真新しく、見えたのでしょう。p.69の描写から、その解放感が感じられます。

途中キックボードが出てきますが、まつわる苦い思い出が本当しょーもなさとアングラを足して割ったようなエピソードで笑う。社会って深いよなぁと思う。

でも翌日即飽きちゃうのは笑ってしまったぜ。

前半は貴重なママの登場シーン。だいぶデフォルメされて描かれていますが、分かる分かるぞこの感じ、こういう美人な四十路いるよねー。このママもきちんとした大人の女性でありながらも、一癖二癖ありそうでなかなか面白そう。

 

 

「第8話 イライラする日」:突然アユがおれの顔を叩いて、おれは・・・。

仕事をしたくても思うようにいかない気ばかりあせる毎日が続きこうして無為に過ぎていく時間がおれを苛立たせた・・・p.73

数ある苦いエピソードの中でも、作者の中では最も苦いエピソードでしょうね。初めてアユちゃんに暴力振るった日のことが描かれています。

この回だけ「イライラする日」とタイトルが抽象的なことからも、未だに作者が後悔していて過去に直面できていないことが伺えます。でも僕は、数年たった今でも未だにモヤモヤしているということは、おれ(作者)が今現在もアユちゃんの父親を無事しっかりやっているってことだと思います。「あれは昔のことだから」「当時は俺も父親初心者だったからさ」いくらでも言い訳出来そうだけれども、そこに逃げず、ただ自分を悔いる作者の姿勢が垣間見えるタイトル。

初めて手を上げたショックはしばらく尾を引いたと言いますp.75とありますが、恐らくその尾は未だに引きずられていることでしょうずるずる。

ちなみに、そんなセンチメンタルな後半とは違って、

ヒライ「ボクはアユさんの同級生ヒライといいます」p.70

前半は面白人間ヒライが出てきます。

なんだこいつ、出てきたのが約1ページなのにとんでもない存在感。「ユニークで楽しい人」p.70なのはお前じゃヒライ

再登場、希望ですね。

 

 

「第9話 わしらの孫がやってきた」:祖父母(おれの父母)の家へ突撃!

アユ「おばあちゃん これ!」

アユの祖母(おれの母)「あらあらお菓子?ありがとアユちゃん」p.82

アユはおれと血は繋がってないので、アユの祖母とも勿論つながっていないんですよ。無論家族・親族なのですが。

普通に「おじいちゃん・おばあちゃん」としてアユを迎えた二人は凄いと思います。多分80代って、「家族」という概念と血縁って密接に繋がっていた世代だと思うので。

特に、ママが送ってくれた大阪のお土産を渡している時の上記のやり取りは、もうアユちゃんが生まれた時から祖母・孫の関係性のようで、ほっこりしました。

まあ、疲れちゃうのは仕方ないですね。母方の祖父母が共に85超えてます。5-6年前、僕も大学生の時一人で帰省したことありますがやんわりと「家事手伝わないなら、もういい」電話で言われました。むしろ「ホント楽しい子」p.84という評価を貰っただけでも御の字じゃないでしょうか。

 

 

 

 

「第10話 遠足たのしみー!」:アユの遠足!!

アユ(おれの夢)「あれがないと連れていけないって先生が パパがリュックに入れてくれなかったから・・・」p.90

無事前日の夜に魅せられる遠足のしおり!!慌てて揃える持ち物!!かと思いきや最後にしおりを忘れていた!!という、遠足前夜もおおわらわ。タイトルもよく読むと「たのしみー!」なので、遠足前がメインの話だということが分かります。結構面白かったですね。好きな回。

えっちらおっちら。大変ですよ。なのに最後手間をかけたおにぎりが不評だったのは笑っちゃいました。

小学校時代僕も無事お便りは一切出さない子供でしたが、まぁ前日にこれ見せたら叱られてたでしょうね。こっぴどく。夜に。ギャン泣きですよギャン泣き。暴力もきっと振るわれていたことでしょう。

必要以上にやたらめったら怒ることなく、アユが無事に楽しく明日遠足できるよう奔走する「おれ」は滅茶苦茶いい父親だと思います。羨ましい。

アユ「あとねあとね」p.92

遠足楽しかった旨を報告するアユちゃんめっちゃかわいい。

 

 

「第11話 お出かけ日曜日」:アユちゃんを連れてフクロウカフェへ!!

アユ「なわけねーだろ」

おれ(コイツいま おれの真似したよ・・・

こうやって少しずつ本当の親子になっていくのかな・・・)p.100

前半はちょーフクロウです。アユちゃんフクロウに一切びびらず、且つフクロウもアユちゃんに懐いていて、凄いなぁと思います。動物関係の仕事とか目指したりするのかなぁ。フクロウに初対面で頬ずりできる人なんてなかなかいないっしょ。

あと、小3でフクロウに興味を持ったきっかけもちょっと気になる。ハリポタの世代でもないでしょ?

後半は、その他と居酒屋。

掲載したやりとりは最後に訪れた居酒屋でのやりとりです。

アユがおれの真似をしたんですね。

それに、ふっと俺が気づく。

・・・エモい。

家族であるのに、血の繋がりってやっぱ別に必須じゃないよなぁとか思っちゃいました。改めて。実際夫婦も(多くの場合)繋がっていない訳ですし。

家族って言うのは愛情を共有して同居している人達、てことなのかもしれないなぁ。

というのも、僕自身子宮内膜症でピルをずっと飲んでいるので、妊娠とか出来ない可能性を視野に入れているんですよ。前々から。

そうなった時に養子、も考えていて。腫瘍により救急車で運ばれた20代前半の頃から。

本書といい「たーたん」といい、だから血の繋がらない親子・・・・特に父娘漫画に強く惹かれるんだと思います。僕はめっちゃくちゃ両親と血がつながっていて容姿も中身も二人をごった煮にしたような感じです。どちらかというと、特に父と似てます。間違いなく父の子です。でも、あまり良い関係を築けていないので。その反動もあって。

だからこの1シーンは、なんか、ぐっとくるものがありました。

いやーこの一瞬があったら1日かかった費用なんて実質0円でしょ。

 

 

「第12話 ならいごとした~い!」:そろばん教室行ってみた!!

おれ「アユ大丈夫だから」

アユ「やだ」

おれ「パパもう仕事いかないと」

アユ「やだやだ」

アユ「やだーーーー!!」pp.111-112

そろばん教室の習い事をはじめたよ!という話です。

おれが先生から説明を聞いたり、実際に通っている子から評判を聞いたり、そしてアユが自信満々に楽しそうに通い始めたりと、前途洋々。

ここまでならまぁよくある育児マンガ。

アユちゃん最初こそイヤイヤ言いつつもこのままそろばん教室続けるんだろうなぁ。それで人間関係広がって東京の生活もっとハッピーになるんだろうなぁ・・・と思っていたので、

おれ「わかったわかった そんなムリに行けとって言わねえから」p.112

教室で泣いてやめる、という展開は衝撃でしたね。 デフォルメされて描かれていますが多分現場は相当大変だったのではなかろうかと思います。

思えば僕もやめた習い事いくつかあって・・・。特にスイミングは明確に覚えているのですが、本当だんだんサボるようになっていくんですよね。確か永遠に僕だけバッチが貰えないのが嫌だった、気がする。今も泳ぎは全然得意ではないです。まじで向いていないんでしょうね。

多分教室で泣いちゃったのなんてアユちゃんにとってはめっちゃくちゃ黒歴史なはずなんですよ。僕も人前で泣いたこと多々あります。めちゃくちゃ怒鳴られて恥ずかしい思いをしたことが多々あります。何なら中学生の時もありました。大学の時もありました。大学卒業後もありました。人生の7割が黒歴史です。

でもそういう出来事も、おばあちゃんち訪問やフクロウカフェ等の楽しい思い出と同列に、コミカルに描いているのがこの漫画のいい所なんだと思います。

いい思い出もつらい思い出も同列に並べることで、ああ、良いことだけではなく思い出したくないことも含めて、あの頃って全部が全部もう戻ってこないかけがえのない日々だったんだ。

子供時代の苦い思い出も、大切にできる。

この一点において、本作は日本国民全員に読んでもらいたいと思いますね。特に大人に。

 

 

「第13話 公園人間模様」:週末の家にこもっているアユを公園に連れ出すぞ!

おれ(アユと一緒に暮らすようになって1ヶ月半ーー 世界は何も変わっていないはずなのにその見え方は今までと全く変わってしまった)p.116

大阪からの転校生のアユちゃんとその保護者であるおれの、人間関係が描かれた話です。ちょっと前まで無縁だった公園社会に馴染むおれが微笑ましい。

終盤、アユちゃんがお友達に奢る描写がある。まぁ・・・分かるなぁ。なんか自己肯定感低い時、基本接してくれる人に申し訳ないみたいな感覚に陥って、もう今すぐにでも接してくれている人全員に1000円札あげたくなる、ありません?ぼかぁピルを乗り越えてやって来る月経前後でよくなりますねぇ!

それを見たおれが、アユが友達と馴染むためにある行動を起こしていて、それが「正解だったのか正直なところ今でもわからない・・・」p.120とありますが、子育てに限らず世の中の総てには正解などないので別にいいんじゃないでしょうか。

アユちゃんのために全力を尽くしている、だけで充分だとぼかぁ思います。子のためにめっちゃ頑張る。単純なことだからこそ難しい。まぁ子をもったことはおろか喪女、童貞(メス)なので知ったこっちゃあないですが・・・。

 

 

 

「第14話 パパになってよかった」:アユを歯医者に連れて行く際、思い出すのは10数年前の飲み会。あの頃は子を持つなんて無縁だと思っていた。

おれ(アユにとってはどっちが幸せだったのかな・・・)p.123

エナドリ片手に物思いにふけるおれ。

どっち、というのは明確には書かれていませんが、ざっくり「新しいパパ(おれ)がいる」「新しいパパ(おれ)がいない」という事でしょう。

分かりません。

もしかしたらおれと出会わなかったルートのアユちゃんは、この後大金持ちで毎日31アイスクリーム買ってくれてフクロウカフェも連れてってくれて、無論人格も素晴らしくて愛情も深い素晴らしいパパと出会うのかもしれない。

でも少なくとも

アユ「アユ全然がまんしてないよ めっちゃ楽しい!」p.127

と「新しいパパ(おれ)がいる」アユちゃんは言っている訳です。

実際「大阪から東京に来て・・・良かったと思う?」p.126という問いに対してジュースをじゅーっと吸っていることからも、それが分かります。基本子供って慕っている大人が、自分に遠慮しているところって見たくないですからね。

だから引き続き、「新しいパパ(おれ)がいる」アユちゃんが少しでも幸せであるよう努め続けるのが、おれの最大の使命なんじゃないでしょうか。

アユ「それにパパは前のパパみたいに怒らないしおもしろいもん」p.128

まじそれ大事。

 

 

第0話 父娘暮らしの前の話:アユと初対面

おれ(3月の冷たい雨に濡れる玄関先でゲームの攻略本を手にアユは待っていた)p.131

再婚したのに、なぜわざわざアユとおれが東京で二人暮らしをすることになったのか。それが詳しく書かれております。

東京に引っ越す前に何回かおれは大阪に行っており、その時の苦労話や、思い出等も描かれています。

多分この話だけカラーなので描き下ろし。単行本が1500円近くなった要因の一つでしょうが、でも、この第0話だけをカラーにしたのはKADOKAWA賢明な判断だと思います。*1

アユと初めて会った日を作者がずっと忘れないように、読者もずっと忘れない。

カラーすることでインパクト残すことで、読者はアユと出会った瞬間を、克明に記憶する。場面に色がつくことで、所謂おれ(作者)の追体験を読者がすることになる。

あと、子供の存在を「重圧」、結婚した時のメリットを考えた際に初っ端からジュリー似のママが出てきたところは・・・とても正直でいいと思います。雨の中立っていた連れ子の長女、という点でいくらでも美談に出来そうなものですが、当時の気持ちをありのままに描いているのは好感が持てました。相手の女(ママ)が好きで結婚する。意外とこれが難しい。

 

あとがき、では本作に出てきた友人たちの卒業式の姿が描き下ろされています。

なんでや!!!なんでアユちゃんのがないんだ!!!と別垢で嘆いていたところ、おれ(作者)からまさかのリプライがあり、そこまでの気力がなかったとのことでした。

要するにアユちゃんの卒業式は、本編で見れるということでしょうか。

父娘暮らし、まだまだ続くのも楽しみなのですが、是非ジュリー似の母親、そして妹、あと描き下ろしの跡に掲載されていた年賀状を見ると、どうやらアユちゃんに弟もいますね。家族ぐらし(仮)も読みたいです。

55で大黒柱になったという経験談、エッセイは、高齢社会の日本のこれからに絶対必要じゃないでしょうか。ましてやプロ歴30年以上のプロの描いた良質な漫画、となると。

 

 

 

 

以上である。

めちゃくちゃ良かったので、ここまで書くのに10日以上使った。1万字越えてる。

noteとのことですが、まぁこれは是非紙で読んでもらいたい。おじいさのばあさんおじさんおばちゃん・・・多分noteまでたどり着かないであろう世代にも響く漫画だと思うので。

 

そして全てこれ数年前の話なのですが・・・、そこもまたおれのアユに対する愛情を感じます。

リアルタイムの自分を漫画で発信される、っていうの結構嫌じゃないですか?

でも数年前、だったらまぁ、いいかってなりません?

アユちゃんが東京に来た頃、僕は絶賛ニートをしてました。その頃の生活を発信されるの、今ならまぁいいかなって思いますが、多分リアタイで発信されてたらめちゃくちゃ嫌だったと思うんですよね。腹出してぼりぼりかきながら吉田君が活躍する高校野球を見てました。ほとんど夜通し起きてウォークマンで音楽を聴きながら静かに涙をながしてました。

でも今だったらまぁ・・て、なります。ニートになったこと自体よりもそのまま引きこもり化しなかった点で、僕は僕を評価しているので。

閑話休題

なので、時の流れの速さに流されず、あーでもまぁまぁ時には流されつつ、今のように引き続き楽しい思い出も苦い思い出も丁寧に一つ一つ、描いていってほしいなぁと思います。

2巻も楽しみです。

というか、紙媒体の2巻が出てほしいので、皆さん是非買ってけろ。おれの為、アユの為・・・よりかは、僕の、為に!!!

 

 

***

 

LINKS

なので初めてAmazonも貼っちゃう!!!!!!!!!!

 

 

 

父娘漫画。こちらは完全創作ですが良質漫画。

童貞が父親をやる話です。

tunabook03.hatenablog.com

 

***

 

20220513 註をいれました。

「たーたん」の5巻が買えてないので積み漫画が減って来たら買いたいです。

他に親子漫画だとこれは母娘ですが「あたしがママよ」これ今年中に買って読みたい。傑作というか小さい頃というか私の誕生祝に父方のおばさんが母にプレゼントした漫画。家になんとなくあってだらだら読んでたんですけど小学生の私でもおもろ~と分かる漫画でした。つい最近、何気なく調べたら「ごくせん」「デカワンコ」の人の初期作だったみたいでこれはこれはになった。これはこれは。そりゃおもろい訳だわ。

*1:20220514 なんと、カラーのがなぜか安くなるとのことで、こういう形になったそうです◎「ママ」さんがSNSで教えてくださいました・・・!すると色んなカラー刷りの漫画を見る目が違ってくるな・・・。