小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

なか憲人『とくにある日々1』-積み重なって、青春、そして僕になる。-

 

 

 

憂鬱だから、明るくしよう。

 

 

 

なか憲人『とくにある日々1』(小学館クリエイティブ 2022年)の話をさせて下さい。

 

 

 

【あらすじ】

意外と何でもできる場所な「学校」で起こる、

すごいことや普通なことや不思議なことを描いた学園マンガ。

 

帯より

 

椎木しい「まだこれからなんでもできるという状態が好きなので特定の部活にはあまり入りたくないんです」p.125

 

【登場人物】

●椎木しい:激かわ主人公。つり目黒髪という容貌ながらもそれを一切感じさせないゆりゅさ。つり目黒髪なのに妄想癖がある。見た目に反してボケもする。

●高島黄緑:おもしろヒロイン。二次元特有のぶっ飛びバカではなく、結構常識内でバカをやる、っていう新鮮味のあるキャラ。見た目に反してツッコミもする。

●三田未莉:みたみり、めっちゃ喋る。だいたいの人が心の内にとどめていることを見事に代弁してくれる。紙飛行機を折るのが上手い。

●森本さゆう:あまり喋らないが恐らくこのメイン四人の中で一番人気があるのはこういうタイプ。言葉数少ないながらもこの子もこの子で僕の心の機微を代弁。

●矢尾さんバツ丸みたいな目をしている。

●二見さんガチャピンみたいな目をしている。

●美沙っち:こいつが出てくるショートショートが一番面白い説。

●瀬尾先輩:ヘルメットが黄帽(特定の地域で小学生が登下校する時に被る帽子)に見える。

●小西先生:僕。

 

【読むべき人】

・シメジシミュレーションが好きな人

・作者の作品が好きな人

 

 

 

 

あ!!これ背表紙にキャラクターが並ぶやつだ!!

 

 

【感想】

結構緩くて良かったです。けん先生(Twitter上のでのアカウント名)の作品は独特の緩さと世界観があって僕はめちゃすこなのですが、そこが80%くらい発揮されていてとても良かったです。もうちょっと頭おかしくても良かったかもしれない。

 

というのも、僕が本書を読んで思い出したのがつくみず先生の「シメジ・シミュレーション」。あれは漠然とした憂鬱に全身を浸してあー鬱だーっていう漫画じゃないですか。

この漫画は、憂鬱自体を楽しもう。ネガティブクリエイティブって感じの漫画です。

まぁけん先生の漫画全般にも言えるんですが。

 

例えばけん先生が運営するアカウントの一つ「犬のかがやき」は、日々のちょっとしたストレスを全部モンスターのせいにしたりだとか、もういっそのこと新規絵を描かず全部同じ絵で文字だけ買えたりだとか、手抜きの為ならあらゆるクリエイティブを尽くす!!て感じの漫画が多いんですよ。あと実家の犬に対する執着半端ねぇ。

手抜きクリエイティブ。

で、そのクリエイティブ自体が多くのツイッタラーの心にぶっ刺さりすごく人気があるんです。

無論それは僕にもぶっ刺さって、特に好きなシリーズはよく分かんないモンスターが出てくるパターンが好きです。気になる人は「犬のかがやき」で検索です。僕の実家の犬はトイプードルです。

 

そして、その「犬のかがやき」にも言えることなんですが、けん先生はネガティブであることを否定しないんですね。むしろ首の下までどっぷり漬かってやろうぜっていう気概すら感じる。

ネガティブであることを否定するな。

もうネガティブベースで行こう。

ネガティブを楽しもう!!

はっとするわけです。

 

けん先生「ネガティブをクリエイティブに変換しろ」

ボク「け・・・けんらぁ・・・!!」

 

僕達は、ネガティブでいいんですね。

休日一日何もしなくても許されるのですね。

午睡微睡むブックオフにしか心を赦せない・・・それでもいいのですね。

け・・・けん教祖!!!!!今や陰キャメインのツールとなったツイッタラーの心にぶっ刺さりもう「犬のかがやき教」が出来る勢いです。

警察は一刻も早くけん先生に目を付けた方がいい。このままではひたすらに他人から実家の犬の画像を集めるカルト宗教爆誕待ったなし。

 

椎木しい「まだ・・・決めずにもう少しこのなんでもできる状態でいたい」p.60

例えば、これは主人公の台詞。

あれよこれよという間に部室を手に入れて、さぁこれから何部をやろうか!?っていう時に彼女はこう言っちゃうんですよね。主人公なのに。

まじか!?と思うと同時にでてくるのは「わかる~」。

まだ何も決めたくないし可能なら永遠にモラトリアムでいたい。可能性を残しておいて悩んでいる、悩んでいるんだけれどもその状態を楽しんでいたい。

通常ネガティブにとらえられがちな「モラトリアム」という状況を、ゆるゆるーと肯定する。

だから読んでて・・・とても癒される。

そう・・・まるでそれは実家の犬の腹を撫でている感覚に似ている・・・。

 

 

よく見ると机の上なかなか物騒。

 

以下簡単に各話の感想、あらすじを記しておく。

ゆるーい作品なのでいつもよりゆるゆるに記録する。

一番好きなのは5話。団地、好きなので。

 

1話:桜さいてる。

しい「大人のマジの土下座を見てドキドキが止まらないんです」p.11

土下座に至るまでの経緯な。予算何処から出てんねん。そして何故許されんねん。漫画だからか。漫画だからだな。とにかく初回からツッコミどころ多すぎ半端ねぇ。あとこの回で履いている、しいの靴下この回以降見てない。歩きづらかったのかな。あれやっぱ。

 

2話:モーニングスター、だっけ。

黄緑「こっちを仕掛けないでくれて・・・ありがとう・・・」p.15

実際黒板消しが落下するイタズラと言うのは生で見たことが無い。やっぱり過酷だからか。そして過酷だからか、このゆるゆる漫画の世界には登場しそうで、しなかった。まぁあれはゆるゆるで赦されないし実際やられたら不登校一直線なネガティブな悪戯だしな。

 

3話:2ってことは1もある。

未莉「あの・・・先生すいません。プリント無くしたので下さい!!」p.22

一番好きな回かもしれない。めちゃくちゃ喋る未莉登場回。誰もが抱える心のささくれを見事に全部言語化して口にしてくれる【代弁者:MitaMiri】。一番好きなキャラかも。紙飛行機の横顔がりりしいp.20のコマ割りもとても好き。

 

4話:多分絶対明治の「おいしい牛乳」のキャップ式ではない。

さゆう「あのさ昨日見た夢の話なんだけど」p.23

さゆうと未莉の会話回。実際夢の話ってあまりに「反応に困る!!」「つまんねぇ!!」言われたからかリアルでする人ほとんどいなくなっちゃったけど別にそうでもなくね?ちなみに、夢、僕は毎晩のように見るのですが、「夢なんて月1で見ればいい方だけど・・・」と正月早々親友に言われた。え、普通はそうなの?

 

5話:団地。

しい「大きくて数字の書いてあるものはかっこいいな」p.27

分かる。団地の数字ほどエモいものってないよね。あれのバッチ欲しい。団地住んだことないため本格的に足を踏み入れたことは無いのだけれども、いつか住んでみたいなぁとは思う。そしてスーパーで買ったビニール袋を両手に是枝ぜえ言いながら、あの石の螺旋階段で自分の部屋がある階まで登りたい。出来れば結婚することになったら新婚は団地がいい。

 

6話:部活見学。

黄緑「たま部だって」p.34

メインで取り扱った部活、球部ときぐるみよりも、「厳キャン△」ボールは友達VSボールは隷属」の方が気になる。もっと見学してほしかった。

 

7話:令和にもお嬢様部はありまぁす!!

国崎「ありがとう!!看板を拾えなくて困ってたの!!」p.41

お嬢様部は部員が全員お嬢様であるため召使がひとりもいないから、部室汚いと言うのは、なんだかアメリカンジョークを感じる。

 

8話:エスパーの方の「いとう」だ。

伊東「実は私・・・本当にお嬢様なの」p.48

よく考えればその髪型ってお嬢様以外でする人いない気がする。篤い友情にスタンディングオベーション。pp.49-50の猫が歩くシーンのコマ割りがとても好きです。猫。

 

9話:道路の白文がはげてる。

しい「五十音で考えると重なってる部分はこうなる これを道路摩耗文字といったん呼ぼう」p.66

普段無駄なことを絶え間なく考えている僕でもこれに対しては一切考えが及ばず、一本取られた~!!って思った。あとこの回から何気に夏服。まさかのサザエさん時空じゃないことが判明する。

 

10話:2022年5月現在日本のお笑い界は、ある意味もぐらに支配されてる。

しい「誰か黒い下敷き持ってない?」p.73

めちゃくちゃ分かる~!になってしまった。めちゃくちゃ分かる~!これは実際見かけたら僕もしいと同じ行動、してしまうね。あわよくば画用紙でヘルメットも作りたいところ。

 

11話:コーチの眼帯めちゃめちゃ面白い。

矢尾「ガッツすごいよ本当!!今のお前勝ってたよ」p.83

普通こういう熱い展開は部活の最中に展開されるものであって、決してグローブがたまたま顔面当たった時に展開されるものではない。でも実際は部活であんなにアツくなる瞬間体験したことないって人の方が圧倒的に多いだろうし、まぁリアルはこんなもんなのかもしれない。

 

 

 

 

12話:ぼくもずがいこつのかたちほめられることが多い。

黄緑「レントゲン!!」p.85

一番一番最後の小さいコマが一番面白かった。

 

13話:シャンプー。

さゆう「シャンプーしてる時泡で変な髪型になった」p.89

女二人裸で風呂に入っているのにいやらしさゼロ。あまりの健全さに親御さんもビックリ。

 

14話:10回クイズ。

しい「とりあえずアルファベットを振り分けて考えよ ピザ ひざ ひじをそれぞれA B C に それtで目の前にあるもので混合させるのに大事なのはBとCだと思う」p.98

10回クイズに関してココまで分析して考えるのもアツいし、10回クイズの為だけに遠出する友情もアツいし、この回だけページ数振り分けられていないのもアツい。おいおい。特に2人が抱き合って喜ぶシーンは涙なしでは見られなかったね。てか今のJKって10回クイズとかやるのかな。

 

15話 人生の体感の半分は18歳っていうよね。

しい「数千年とか数万年とかものすごく長命の存在がいるなら大陸移動と化の観察も趣味として楽しめるかもしれませんね」p.110

キュンときた。エモい。青春は一瞬だ、みたいなのに独自の解釈。団地の回もそうだったけど、このしいが何気ない者からどんどん妄想を広げていく回、共感しかないのでこれからも定期的にやってほしい。

 

16話 設置部。

瀬尾先輩「あっそれと 君は設置の才能があるよ 設置部にこないかい?」p.124

僕がこの部活に入っていたらいったいどこに何を例えば設置しよう。ナスカの地上絵。を中庭に。ケルベロス銅像。を放送室の前に。トランプのハートのエース。を3年1組の教室の入口に。今思えば、昭和の怪事件として名高い机を「9」の形に置いたあれの犯人は、当時の日本強豪の設置部の仕業だったのかもしれないね。

 

※美沙っちが見た物で一番感動したもの:キョンp.72

 

ただこの漫画唯一欠点があって、770円もするのに120ページしかないところ。手描きでもないし、まぁ正直カラーイラストが抜群に綺麗ってわけでもないので、ここは白黒のページを増やして150ページ、あわよくば200ページはほしいところ。

なんつーか、やっぱ青春ってこういう「とくにある日々」の積み重ねによって成り立つものであって、紙媒体でそれを追体験したい。要するに一冊で少しでも多くの「とくにある日々」を積み重ねたい。

大きなイベントもないけれど。

熱中って感じの青春もないけれど。

ゆるゆるの3年間が積もりに積もって僕達は大人になった。

あの時の日々の輝きは、実家の犬の濡れた黒い瞳の輝きに似ている。

白黒化+ページ数の増加。是非出版社側で検討してほしい。

 

 

 

 

以上である。

結構良かった。多分また単体でゆるく読み返すんだろうなぁと思う。

2巻もゆるく楽しみな一冊である。

 

 

小学館集英社プロダクションは聞いたことあるけど
小学館クリエイティブはぶっちゃけ初めて聞いた。



 

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LINKS

同じ作者の作品。エッセイ漫画最近発売されましたね。まだ買えてないんだよ・・・。

あと、作者が最近体調崩されたとのことで結構心配。

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つくみず先生もTwitterいつもメランコリック極まってて結構心配。

 

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