みたしゅんかん、
なみだがでそうになった。
つくみず『シメジ・シミュレーション02』(KADOKAWA 2021年)の話をさせて下さい。
【あらすじ】
ちゃんとしていなくても
全然いい気がする。
日常4コマで展開するシュールな学校生活
帯より
待望のつくみずハイテンションハイスクールラヴ♥コメディ最新刊!!
何と今回は!?部活の先輩や「自称・美少女」を初めとする新キャラと、
ショッピングモールや穴掘り機等しめじちゃんに新しい出会いがいっぱいまっているぞ!!
いよいよ穴掘り部本格始動!?
そして今巻で意外な人にスポットライトが!?
しめじのお姉ちゃん「埴輪とモササウルスの化石が同じ地層にねぇ」
しめじ「穴から歌も聞こえる」
しめじのお姉ちゃん「それはずいぶんと・・・ちゃんとしてないな」p.70
【感想】
シメジ・シミュレーション(略してしめしみ)2巻である。
僕はこれを見た瞬間「ああ~~!!!!!!」とその場で声をあげそうになった。
下手すれば続きが出ないと思ってたから。都築がよめないと思っていたから。
というのも、このつくみず先生はぶっちぎりで最近ツイッター病んでいる漫画家ランキング2021(まぐろどん調べ)ナンバーワンなのである。
マイナス思考の呟きと、閉塞感溢れる少女達のイラストが繰り返し投稿されている。
ネガティブな発言があるたび日本語英語国境を越えて作者を励ますようなリプが無限に飛んでくる。しかしに英語は愚か日本語でもその言葉は彼には届かないようで投げかけたファンは己の無力さを思い知らされるのである。
灰色を基調とする即席で描かれたと思われるイラストは、どこか病んでいるものが多い。無表情な子は無表情泣いている子も無表情、笑顔の子も無表情。
しかしのその鬱屈が僕の心にクるものがあって、ずっとフォローしている。
病んでいる。
健康になってほしいけれども、
なってほしくない。
彼の紡ぐ「病んでる」言葉たち・表情に乏しい即席で書かれた少女たちは、
なんか自分の心に抱えたモヤモヤや不安を可視化してくれる。
日々鬱屈不安に潰されそうなのは普通のことだと何度も教えてくれる。
辛い死にたいもう嫌だ、そういうのをすべて肯定してくれる。
気がして。
だから、昨年の冬頃にツイッターの更新がパタリと途絶えたのは本当に焦った。
とうとう●んだのかと思った。
とうとう自●したのかと思った。
どうすればいいどうすればいい。
どうしても生きていてほしい。どうしていも生きていてほしい。
その、非常に自己内省的な絶望を全て総じて肯定する尊き存在・・・。
だからまぁその、僕にとってつくみず先生は漫画家・・・以上に命を繋ぐツイッタラーなのである。
あさもひるもうまくこないなかでぶんしょうをうつことがわたしのしめい。
さけにおぼれてゆくなかであなをほることがせんせいのしめいであったのように。
だからこれがうまくいかないときわたしはくびをしめてそのばでばたーんしたくなる。ばたーんばたーんばたーん。
なんどもたおれていくよ。
まいにち。
ばたーんばたーんばたーん。
どみののように。
だから、新刊を丸善で見た時本当に驚いた。
まさか新刊が出るとは。
ああいった押しつぶされそうな中でも作品を連載し続けて下さっていたとは。
続きなんて絶対読めないものかと思っていた。
また、読めるとしてもこんなに短いスパンで続きが読めるなんで思いもしなかった。
1年。
とはいえど、1巻を手に取った時と僕と僕を取り巻く状況が大きく変わってしまった。
独り暮らしになったしコロナ親の病気は進行するし抗うつ剤がないと不安になるしコロナ下手すれば朝が来るまで眠れない、コロナ、一度リスカ未遂を職場でしたこともあった、気がする。
ああ。
つくみず先生は無事に2020年を耐え延びて2021年こうやって新刊を出すことが出来た。
ああ。
そしてその一介の読者である私も2020年を耐え伸びて2021年こうやって新刊を目にすることが出来ている。
この1冊を購入することは、その当たり前のようで当たり前でない奇跡の重なり合いで成立する事象・・・なんと尊いんだろうと思った。
だから僕はこの新刊を見た瞬間、涙が出そうになった。
しめじをちゅうしんに
みんなちがってみんないいがせいりつするようしみゅれーしょんされたせかい、
だから「しめじ・しみゅれーしょん」なのではないか。
そんなのげんじつにかんぜんせいりつしないのだから。
隣人さん「オセロだったら全部入居なのに!」p.32
作品自体は少し雰囲気が明るくなる。
新キャラが登場する。部活の二年の先輩、三年の先輩。加えて1巻でもちらっと出てきた隣人や才能あふれるクラスメイト。
新場所が登場する。ショッピングセンター、土器、骨、埴輪、水着、他の部活に入っている人々。
しかし佳境に入ると、僕達読者は思い出す。
この話は、絶望と直面する話だったと。
今巻は先生が主役の巻でもある。
彼女はダメな人間である。部活動の顧問としての活動おロクにやらず常に酒を飲んでいる。ぐびー。言葉はポジティブではなくネガティブ。どこかペシミスト的なところもあって、彼女には常に緩やかな絶望感が漂っている。
そんな彼女がある日夢中になれることに出会い、それを喪失するのが今巻。
何もかもを諦めていた彼女の、生きがいと思っていたずっと集中していた一つのことが喪失した時彼女はどうなってしまうのか。
心の穴を埋めていたものが亡くなった時。その穴の深淵はいったいどれほどに深いのか。
そしてその果てに見た情景は。
これは喪失と、明日を生きる僅かなる希望の物語。
先生「教師になったんだからこんなもの作ってちゃだめだと思ってやめたのに・・・そのせいで結局大きな穴を開けようとしてたんですね」p.128
各話簡単に残す。
■11 いろいろな人
先生「その間 先生は穴を掘ってますね」p.7
一番初めのページで今巻の方向性が提示されていることに気づく。先生は髪を切るほど本気だった。今作は連載の単行本化ではあるけれども、本当にそうなのかと思う。それにしては計算されすぎてはいないか。あ、あと、あたらしいふたごのかたち。
■12 いろいろな言葉
まじめ「しめじちゃんは私の知ってる言葉しかしゃべらないよね」p.23
僕は年々喋り下手になっている気がする。すみだちゃんのようにスケッチブックをもって総てを伝えたい。日本語だけじゃ足りない。言葉だけじゃ足りない。言葉と言葉の隙間にあるこの先生な感情をあなたはどうしたら理解してくれるのことはばはふかんぜんなじょうほうでんたつしゅだんのつーる。
■13 お隣さん
お隣さん「あなたも食べる?かまぼこ焼いちゃったし・・・」p.31
僕は最近人を笑わせるために色々様々言っていたら情報伝達がさらに遅れをとって下手になったような気がする。でもまあ実際本当は真実とか嘘とか僕の言いたいこととかどうでもいい、目の前にいる人に笑ってほしいそれでじぶんのそんざいがぜんこうていされたようにかんぢる。
■14 まじめちゃんの家
まじめ「それぞれ名前があるんだよ この子はカブの”なお” みんな私のお友達」p.42
分かる僕もぬいぐるみ一つ一つに名前を付ける、デデ・ビューゲル。クリームチーズ、めいじ、エゴン・シーレ、哀しみのダンテ、アナスタシア・・・寄り添ってくれる言葉華朝長僕を滅多に裏切らないなんてとうときああぬいぐるみはおともだちだった。にんげんのことばがつうじなくなってもきみたちのことばはわかるよ。まじめちゃんはちゃんと女子高生して親と良好な関係を築いていて真面目だなあと思う。僕はフリーターで親とも良好と言い切れる形でもなくて真面目ではなくふまじめちゃんである。
■15 図書室の人
よみかわ先輩「読む本を選ぶときは#木”えおイメージするといいんだよ」p.55
読んだ本の数だけ触れた者の数だけそれがやがて合流し太い幹となるのならば僕達人間は読み続けなければならないよむのをやめたとたんにほそくておれてしんでしまう。
ぜつぼうとうっくつとあきらめにうちのめされてすべてにむきりょくになったときにこううつざいをのんでぼくはむりやりにほんのあしでたつけれどもそれでもおもい。げんじつはおもい。そのおもさにたえかねてだからぼくはなでかたで、つねにかたこりしているんだよ。
■16 掘り出しもの
古代の人「狩りに行こうかな」p.65
ちゃんとしていないことを否定しなくてもいいようにちゃんとしてない人を否定しなくてもいいでもできればぼくはちゃんとしたひとでうまれたかったしいきたかったちゃんとしていないことはじゆうだけれどもときにさすごくいきぐるしくかんじられることもあるからね。
■17 ショッピングモール
しめじ「眠ると引力が弱くなるんだろうか」p.82
トゥルーマンショー見たい見たい見たい見たい見たい5年以上言い続けているけれど未だ見られていない、見たい。5年と1日目。うつはえいきゅうきかん。
■18 先生のかたち
まじめ「すっかり”あな中”だね」p.88
何が好きか何に没頭するのか何に心を奪われるのかそういった積み重ねでぼくたちのかたちはできている。
■19 穴ほり機
しめじ「だけどみんな自分のやりたいことなんて わかってるのかな・・・私はよくわからない・・・」p.109
やりたいことをやっているつもりでもいつの間にか心に虚無感しか残っていなかったりする。気づけばやらなければならないこととやりたいこととやりたくないことが混同して混乱してしまって一体自分が何をやっているのが何をしたかったのか分からないそんな日々をずっと大学卒業してから過ごしている気がする。だから総てに折り合いをつけながらやっていくしかないのだと思う。やりたくないことがやりたいことなのかもしれないしやらなければならないことがやりたいことかもしれないしやりたいことがやりたくないことかもしれないから。
■20 地球ドーナツ
すみだ先輩「だけど校舎裏で何か作ってる先生を見て・・・初めは何を作ってるかわからなかったけどものすごく真剣に作っててそれ見たら私学校にちゃんと来なきゃと思って・・・」p.120
僕達は、知らないうちに誰かを傷つけているようにしらないうちにだれかにきぼうをあたえてていることをもっとじかくしなければならない。
以上である。
無論内容も素晴らしかったんだけど、でもそれ以上に新刊が出た喜びとそしてそれを買うことが出来た喜びの方が勝った。
この漫画は一読だけだはなく何度も読むこと、そして本棚にあることによって真価を発揮すると思うので、今巻をペラペラ読み返しながら、灰色のツイートに一喜一憂しながら、来年もまた奇跡の出会いを果たせること信じて、
気長に3巻を待ちたいと思う。
しにたいといっているやつはほんとうはしにたくはない。だってほんとうにしにたいやつはもうしんでいるのだからだからそういってへらへらりすかしているうちはおまえはつよいのだああ、すべてがゆるされろああすべてがゆるされろ。このげんじつこそが「みんあなちがってみんないい」がせいりつしないしみゅれーしょんであればよい。
まぐろどん・しみゅれーしょん。
先生「掘り続けるうちにだんだんこれこそが自分のすべきことなんだって気がしてきて・・・このために自分は生まれてきたんだって」p.66
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1巻の感想。今多分僕のなげやりぽいんとは80点くらい。