小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

平山夢明『東京伝説 忌まわしき街の怖い話』-もうさぁ、全員さぁ、全員・・・全員全員全員。-

 

 

表紙が良い。

Tシャツにしてくれ。

 

 

 

平山夢明『東京伝説 忌まわしき街の怖い話』(竹書房 2004年)の話をさせて下さい。

 

 

 

 

 

【あらすじ】

別れた恋人が異常な復讐鬼となってやってくる。俺を忘れるなと迫ってくる。話しても通じない、赦してももらえない。なぜならそいつは狂ってしまったから・・・。正気を失った知人、それはもはや人ではない。得体のしれぬ恐怖の塊だ。自殺死体と一緒に風呂に水浸けにされた女。犬を喰い続ける男に人を喰うハツカネズミ。脳が煮えてしまう命がけの商売道具に、美容整形の恐るべき舞台裏・・・・・・。都会の間で繰り広げられる狂気と欲の人間地獄。体験者自ら語ってもらい、聞き集めた究極の現代恐怖夜話!

裏表紙より

 

【読むべき人】

・いわゆる「ヒトコワ」が好きな人

・グロい小説・漫画が好きな人

 

 

 

 

【感想】

本書の存在を知ったのは、もう10年くらい前になる。

当時僕が高校時代わざわざ遠回りをして寄り道していたTSUTAYAに、このシリーズが表紙を見せる形でずらっと並べられていたのである。

表紙が可愛い!と思った。

この「東京伝説」シリーズは、表紙の女の子が街で怯えたり哂ったり散歩したりする趣の表紙で、それがとても可愛い!と思った。

このなんともいえない女の子のルックスと、ありとあらゆる恐怖に満ちた街の組み合わせがなかなかシュールでとても良い。と思った。

ところがまぁ、その頃から実話怪談好きではあったが、当時は普通の高校生。新品で揃えられる金があるはずもなく、いいなーいいなーと表紙を眺めるだけであった。

がしかし!!!

今!!!この10年の時を経た2021年今現在であれば!!!

もしかしたら!!!古本で!!!あるのではないか!!!!

と突如ペカーッ!と思いついて、さっそくブックオフオンラインで購入した。さんきゅーブックオフ。フォーエバブックオフごめんね平山先生。

 

内容は、基本「ヒトコワ」。幽霊が出てこない恐怖譚を集めた本である。

「いや~生きている人間が一番怖いもんですなぁ」の一冊である。

するとまぁ・・・自然とその、血やら凶器やら性的嗜好行為等がメインになってくるので、実話怪談とは若干趣が違うように感じた。

「本当にあった怖い話」よりかは「本当にあったグロい話」。

なので刺さる人には刺さると思う。綾辻行人好きな人とか。

でもまぁ僕はうん・・・普通に死んでる方が好きかな。

 

 

 

 

ただ決して、つまらない一冊ではなかった。

まぁまぁ面白い一冊だったので、特に印象に残った話を挙げて感想を述べておく。

ちなみに一番グロいな~うわ~と思ったのは、「都会の遭難」。

 

「ある転倒」pp.10-14

そこで初めて埋められている男と目が合った。

もう狂っているようだった。p.14

冒頭作にして、今作だけ唯一「神秘的な存在」が登場する。なされていることがグロの極み乙女。なのは変わらず。

起こった怪異のヴィジュアルが、強烈過ぎて印象に残った。

主人公の女性は山で転倒をするのだが、そこで出会ったのは・・・といった具合。山の中ならもう何があってもおかしくない。何があっても実話って、信じちゃうよ。ああ嫌だ。恐ろしい。

ちなみに、上記で上げた2行は本書通じて一番印象に残っているフレーズ。

もう狂っているようだった。

「声の小さい客に限って接客態度に文句言ってくる。もう狂っているようだった」

「パートのババアがムカつく。自分の我儘を通さないと気が済まないらしい。もう狂っているようだった」

「大して自分は仕事が出来ないくせにそこにひたすら目を瞑りいばるババア。もう狂っているようだった」

「ババア。もう狂っているようだった」

積極的に使っていきたい。

 

「想い出づくり」pp.77-89

べらべらとした肉片がカーテンのように垂れ下がった。p.87

フラれた彼女の記憶にどうしても残りたくて、自分の顔のパーツをそぎ落とす男の話である。やめたまえ。

それをぎちぎちぎちぎち的確・丁寧な日本語で描写する平山先生。その画面がすらすら頭に入ってくる。やめたまえ。

実際、こんな人いるんですかね?記憶にどうしても残りたい!!みたいな。中途半端じゃないですか?僕ならもういっそのこと■しますね。そこまでいくなら。

 

「わきめもふらず」pp.147-150

香織さんは今でも長女の誕生日にはお詫びとして、自分のプレゼントも奮発して買って貰っている。p.150

これ最強に嫌だ。

グロくもそこまでヒトコワでもないんですけど、一番嫌。この話は。

 

 

 

 

「迷子」pp.166-167

多田さんが深夜、信号待ちをしていると、小学一年生ぐらいの女の子が横断歩道を泣きながらやってきた。p.166

新手の犯罪紹介小説。そんな手口あるのか!!と感心してしまった。

あと、僕も人生の迷子です。

誰か助けて下さい。

 

「28日後・・・」pp.186-190

途中、キップを買うのがの鈍いおぼさんやエスカレーターを塞いでいるおばさんや、通りぬけようとするする方へなぜかよろめいてきては行く手を阻むおばさんなど、障害物をこれでもかこれでもかとクリアしながら改札に辿り着くと、今まさに自分の乗る電車の発車ベルが鳴っていた。p.186

マリオのきのこちゃうぞ!!おばさんは!!

この話のメインディッシュは、「洗剤を放置して28日後に起きた出来事」なのだが、序盤のこの文章がめちゃくちゃ面白いので、金賞です。おめでとうございます。

あと洗剤も放置するとダメなんですね。勉強になった。

 

「都会の遭難」pp.213-223

彼が破裂する p.221

裏表紙にも書かれていた、「自殺死体と一緒に風呂に水浸けにされた女。」の話である。10日以上風呂桶で死体と共にするという悪夢のような実話。

当時の記憶を記録したノートに書かれた上記の一行と、「都会の遭難」という題がどこかノスタルジックで胸が苦しくなる。

都会の遭難、というのは恐らく、人々が多く住んでいる都会にも関わらず、アパートの、狭い、風呂で、10日以上、女性が、苦しみ続けた、という意味での遭難なんでしょうね。

グロい・・・だけじゃなく、なんともいえない切なさ。

 

もう狂っているようだった。

 

ブックオフオンラインで購入。シールがかわいいね。

 

以上である。

ヒトコワ、であるためまぁ好みとはちょっとずれるけれども概ね楽しく面白く読めた。

平山先生の初期の作品である。

すらすら入ってくる言葉遣いは健在だが、グロ頼りの部分も多い。

最近の平山先生の文章の、「一度読んだら忘れられない」ような強烈なヴィジュアルは、このグロテスクから始まったのねと感心してしまった。

 

ブックオフオンラインだけでなく、どうやらメルカリでもちらほらシリーズ出ている様子。せっかくなのでゆっくりゆっくり、揃えてみようと思う。

新品はまあ・・・ほら・・・2004年の本だからさ・・・。

 

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20220519 現在の竹書房怪談文庫の発端なのかなと思うと非常に感慨深いシリーズ。

本当表紙やらページの数字のフォントやら何やらが全部逆にエモくて最高。今こそ読みたいシリーズ。