小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

西 炯子『たーたん 4』-この物語の主人公はあくまでたーたんなのである。-

 

そうくるかぁ・・・。

面白くなってきましたね。

 

西 炯子『たーたん 4』(2020年 小学館の話をさせて下さい。

よく見たら、火へんに同じ、火同←じゃないんだ

 

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【あらすじ】

父・上田敦と中学3年の娘・鈴は血の繋がらない親子だ。

今の今まで、敦はそのことを鈴に隠してきた。

「わたしのお母さんは死んだのではなく、どこかで生きているのだ」

と確信した鈴は、

夏休みに同級生の吉田さんと二人で家出をする。

父・敦の生まれ育った大阪へ、自分を探しに行く。

 

裏表紙より

 

【読むべき人】

・親と子の関係において、血の繋がりの有無の重要性を考えたい人

・中学生の子供に手こずる親

・3巻まで物語が動きそうで動かなくて、4巻に対して食指が動かない人

 

【感想】※ネタバレ有

たーたんというのは、娘・鈴が父・敦を呼ぶときの愛称である。

ところがどっこい、父・敦は40超えてなんと童貞。

15年前、罪を犯し刑務所へ入った男・征司の赤ん坊をを引き取って育てたのが、

今の鈴なのである。

鈴の同級生が出てきたり、敦に想いを寄せる女性達が出てきたりしながら、

今まで物語は・・・なかなか進まなかった。

 

鈴の物語は進んだ。

母子家庭の転校生と仲良くなったり、それに嫉妬する鈴に想いを寄せる男子が出てきた理、てんやわんやしながら進んでいく。青春のスピードは速い。

中学生にして家庭の財布のひもをちゃっかり握るしっかり者で、凹むことがあってもいつまでもうじうじ悩むことはない。

ところがどっこい、敦の物語はなかなか進まない。

そら40超えて童貞なのである。

「鈴に本当のこと伝えなきゃ」

「俺は本当の父親じゃなくて、鈴の母親は既に死んでいることを、伝えなきゃ」

「もう15歳になったんだし、本当のことを伝えなきゃ」

延々悩み続けるだけ。

女性関係においても、妹尾と片岡・2つの選択肢を前にどちらも決めきれずにいる。(今巻で無意識にしかし明確にどちらか選びつつあるようですが)

今巻でも敦は悩んでいる。

悩み悩み悩み、一瞬妹尾に何もかも打ち明けてしまおうと思うものの、結局一人で悩み悩み悩む始末。

ところが、鈴による「家出して大阪に行く」という行動によって、

有無を言わさず敦の物語もようやく、エンジンがかかり始める。

 

あとまぁやっぱり征司。

しかも鈴がそこに運命感じて初恋してしまうという・・・

ええそうくる~~~~!?となる。

ええそうくる~~~~!!???

いやいや、鈴、君が感じている運命は運命っちゃ運命だけどそういう運命じゃないんだよ。そういう運命じゃないんだ。

それに敦。敦はどうなるんだよぉ・・・。

やっぱうじうじで何もしない敦は置いていくのか!?

置いていってしまうのか!?ええ!?置いていってしまうのか!?ええ!?

でもまぁ、うじうじしている敦や、ガキに見える男子同級生に囲まれて、

オトナな男に惹かれるのも分かるけど・・・分かるけどさあ・・・!!!

でもそいつ刑務所帰りだぞ!?あぶねえぞ!?あぶねえぞ!?

おいおい鈴~~~~!!!

 

で、ここからどう敦が動くかなんですよね。

なんつたって作品のタイトルが「たーたん」。

つまり、別名「上田敦」ということなんですよ。でも多分西 炯子『上田敦』じゃ売れないから「たーたん」にしたんですね。どっちがタイトルかわかりづらいしね。

物語の主人公はあくまで敦。

血の繋がらないけれど何よりも大切で愛しい娘、鈴の自由奔放な行動に、どう動くのか。

ここからある意味本当「本編」だと思います。

ずーっとずーっと、ずーっと人生においてうじうじし続けてきた男が、

娘のために一念発起して、

自身の人生を周囲の人々の人生を変えていく物語・・・だと思うので。

・・・そう思うと全然少女マンガじゃないな。むしろなんでフラワーコミックスレーベルから出ているんだ・・・?

 

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最近小学館の少女漫画が増えている。

 

今回周りのキャラクターもなかなか良かったよね。

特に妹尾。妹尾さん。

笑顔が下手で鏡を見て絶望するシーン。

かと思えば、敦の前で見せた、凛とした横顔の口元には自然な微笑か浮かぶ。

「・・・私は、上田さんのこと・・・」p.144

伏し目がちに話した時の一瞬の少女らしさ。

すごく綺麗だなあと惚れ惚れしちゃった。

あと敦の両親。

いるいるこういうじじいばばあ!と思った。

その2人が一瞬語ろうとした鈴の母親の死の真相も気になる。

最後、鈴に渡すシーンはじーんときちゃった。

ずっと、会うことのなかった・会おうとも思わなかった鈴の存在にとらわれていた部分もあったんだろうなあ。

他にも、吉田母娘や、犬のうんち踏む男子同級生、

今まで何となく見過ごしていた脇役達の見せ場が多かったのも良かった。

片岡の見せ場がまあ減ったかなと思うけど、

まあもう敦は妹尾にメロメロですからね。これから出番も減っていくんじゃないかなあ・・・。でもやっぱ職場の華なので、クソ女ぶりを発揮し続けてほしい所。

 

「もう話して。・・・どんな辛い話でも、悲しい話でも、私受け止める」p.109

 

ちなみに僕は、結構敦のような人間です。

特に恋愛方面に関しては。ずっとうじうじうじうじ悩み続けて凹んで何もせずに終わる。

はあところがもうどっこい27が目前に迫っている。

30は無論このまま40で生娘らしからぬ生(なま)ばばあになっちまうのか!?

敦のこと笑えねえよお・・・。

 

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1巻の表紙が一番好きかなあ。よく見たら、身長詐称しているたーたんを鈴が足蹴りしてるんですね。

以上である。

とても大きく話が進んでとても面白い巻だった。

やっぱ征司の登場がでかかったな。

あとこの漫画はじまって以来、たーたんの笑顔見てない気がする。

ずっと鈴に、妹尾さんに、片尾さんに、征司に

あわあわしてばっか。

笑えるよう、彼と鈴の関係性が、彼と妹尾さんの関係性が、彼と両親の関係性が、彼と周囲の人々との関係性が、彼の人生が、少しでも良い方向にいきますよーに。