小さなツナの缶詰。齧る。

小説・漫画・雑誌の感想が主です。

佐藤将『本田鹿の子の本棚』-遺伝には、逆らえない。-

 

 

 

 

この父娘、いかんでしょ。

 

 

佐藤将『本田鹿の子の本棚』(リイド社 2017年)の話をさせて下さい。

 

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【あらすじ】

思春期の心を知るため、

父は愛娘の蔵書を手に取る(無断で)。

帯より

 

本田鳩作(きゅうさく)(サラリーマン)には悩みがあった。

愛娘である鹿の子(かのこ)(女子高生)(かわいい)が何を考えているのかさっぱり分からないのである。

分かるのは、歯を磨くとき歩く癖があることと、どうやら本が好きらしいこと。

そこで鳩作(速読術習得済)は、ある日早く会社から帰られた日、鹿の子の部屋に侵入し、本棚から本を抜き出し読むことによって、娘の心理を理解しようとするが・・・!?

 

小学生の時星新一をプレゼントされて目を輝かせていた少女の高校時代の読書なんてもうそりゃ年月とともに醸され熟され以下略

 

パロディ★カオス暗黒文学少女コメディ。

 

【読むべき人】

・本や映画が好きな人

・本や映画に対する造詣が非常に深い(つもりの)人

・上記でなくとも一話完結型の作品が好きな人(一話一冊という異常なスピードで鳩作が読むぞ)

・パロディネタが好きな人

ボボボーボ・ボーボボが好きな人

 

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この本は帯と言い装丁と言い色々工夫されていて面白い。買ってその目で確かめて。稀少本だからさ。

 

【感想】

あーもうひっちゃかめっちゃかだよ。って感じの一冊である。

基本コメディで爆笑することが多いんだけど時々不意に切ない話や悲しい話が出てきて感情の置き所が分からなくなる。高い画力も相まって非常にカオス。

 

そう、この感情は・・・あのアニメを見たときに似ている。

そう・・・あの・・・・

ボボボーボ・ボーボボ

面白いことは分かるが、何が何やらサッパリ理解できない。

面白いことは分かるが、どういう感情で作品を享受したらいいのか分からない。

間違いなく面白い。

間違いなく面白いのだけれども、何で何がどうして面白いのかはもうなんかよく分からないのである。

理解しようとする前に、物語のテンポと勢いにすべて持っていかれる。

つまるところ、

ちょっと画力があって、ちょっと教養があって、

ちょっと薄暗いボボボーボ・ボーボボ

こういう感じなのである。

結局ヒロイン・鹿の子が可愛いということしか分からない。

ボボボーボ・ボーボボもジュディが可愛いということしか分からなかった。

 

あと本書は間違いなく面白いのだけれども、

もっと僕が読書好きで映画好きだったらもっと楽しめたろうと思った。

恐らく鳩作が夢野久作から名前が付けられているように、

分かっていればニヤリとできるネタが随所に散らばっているはずなのである。

僕は概ね2冊目江戸川乱歩「芋虫」×ポケモンのリーリエ(恐らくこれが一番パロの難易度が低い。パロの難易度ってなんだ。)と、

4冊目のバキ風イラストの部分と5冊目のもちもちの木風イラストと、11冊目のなんか火星の映画のポスター、その他伊藤潤二ジョジョ立ちジョーズ異世界諸々くらいしか分からなかった。

でもほかにも難易度高いけどその分面白い高レベルのパロディが絶対隠されているはずなのである。(パロディの霊圧は感じる。パロディの霊圧ってなんだ。)

特に今作に収録されている12冊目「ぼくのデス子 13歳の少女」なんて多分絶対何かのパロディなのである。恐らく元の作品を知っていたら爆笑ゲラゲラ出来るはずの作品なのである。

でも分からん・・・分からんのよ。

わざわざ中小出版社であるリイド社「稀少本」となってしてでも世間に対して発表した買った作品であるからもっと、そりゃあもっと面白いパロがあるはずなのである。

分からん・・・分からんのよ・・・・。

 

それでも面白いことに変わりはない!!

ので、一冊ずつ(一話ずつ)簡単に感想を述べていく。

パロ元(と思われる)作品の言及を含め、少々ネタバレを含む。

各話あらすじを書くと大いなるネタバレに繋がるため、そこは今回は省略しておく。

 

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1冊目 恋田敬『女に火をつける男』

前半は「お?最終兵器彼女か?」と思ったけれどもう後半意味が分からないよ。絶対映画の「エイリアン」要素は言ってると思うんだけど見ていないから分からないけどなんで対戦させる必要があるんだよ!お前の脳内やばいよ!!この娘にしてこの父ありだよ!!!

 

2冊目 帝都正樹『帝都正樹 奇想短編集』

えげつない、ポケモン×江戸川乱歩「芋虫」のパロディ作品である。どういう脳みそしてたらそれとそれを混ぜようとするんだ。ボーボボも驚愕衝撃の一冊。

 

3冊目 男谷一発『目覚まし時計』

これラストの亀頭頭の少年間違いなくパロ元があるはずなんだよな。何ならどっかで見たと思うんだよ。ていうかそもそももそもそ、この「目覚まし時計」にも多分ネタがあるはずなんですよね。まあ絶対こんな下品な時計じゃないでしょうけど。でも目覚まし時計題材の作品ってなんだ。なんだ!!さっぱり分からん。

 

4冊目 男谷一発『男谷一発 無類作品集』

主人公とその妹の、このエアギア風のキャラデザ、絶対パロ元が以下略。途中から明らかにバキになっているのは分かるんですけどね。あと、ここからだんだん鳩作の本棚の寄り方がもうカオスになってきましたね。そこで爆笑をとろうとするな!序盤の言動で読者の心を掴もうとするな!!漫才師かお前は!!

 

5冊目 尼ヶ崎三太夫『スーパー青果大戦』

スーパーロボット大戦」みたいなタイトルからのまさかの本筋桃太郎。序盤のもちもちの木風の絵の無駄なクオリティの高さは感動した。なんか途中からジョジョになってたけど。あと本作まさかのバッドエンド、からの「二次創作」のキャラクターの鹿の子の絶妙なネーミングセンス。桃太郎からここまで引っ張ってこれるかね!?2冊目もとても好きなんですが、この5冊目は鹿の子の可愛い部分も描かれているため、あとタイトル、ただのスーパーのセールやんけのセンス含め、台湾映画への造詣も深くなるというおまけ要素付き諸々、この本が一番好きですね。

 

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芋虫。

 

6冊目 アダム竹中『ネゴシエーターたち』

一番説得力がある物語だった。27歳SHOJOの僕でも「成程な」と思った。修道女や巫女の考え方に引っ張られがちではあるが、決して、解脱をするのにもしくは上の存在になるのに身体が潔癖である必要など全くないんだよな。メリットないよ。人間三大欲求に数えられてるんだからもっと■■■しないと。からのまさかの結末な。どんだけ説得力ある説法聞いてもその瞬間には敵わないよな。個人的に『聖☆お兄さん』と併読したい一冊。

 

7冊目 阿修羅木鉄『賭けごと放浪記』

いきなり社会派。どういう感情で読めばいいんだ。そしてそのメッセージが深い。深いのよ。もうちょっとした純文学なのよ。あとこの作品は主人公といい、中盤出てくるおばさんといい、キャラデザに濃厚なパロディが含まれていると思うのですが、分かりそうで分からない。主人公はデュエルモンスターズだと思うんですが、ババア、お前、誰だ?あとこの回からもう自然と本棚の前にいる父親草。嫌われるぞ。あとあと、暴走族の学ラン「心霊呪殺師」とか書かれてて草。

 

8冊目 迫水力『ブリジット・キャンベルVS異世界の化物』

2冊目は「ポケモン×芋虫」の話だったが、今度はジョーズ×異世界もの」の話である。無駄にタイトル回収・伏線回収が秀逸なのが草。多分この短編は小説としてこの世に出ていても結構評価されると思う。あとパロ元の確認なのだけれども、「異世界」のゼルダの伝説、最後の鳩作はジェイソンということでいいのかしら。鳩作が着用している牡蠣も元ネタありそうなんだけどね・・・。

 

9冊目 望月睦睦『ハード・ジュブナイル

に収録された、「柚木さん」という物語が主題の回である。間違いなく、異世界×ジョーズの後に読む話じゃないのよ。7冊目→9冊目であれば「ああ・・・こういう切ないことも世の中あるよね」ってなるけど、その間に結構巨大なサメが横断するからもう気持ちの持っていき方が分からないのよ。でもそこが良い。

「・・・・・よく優等生が万引きして捕まるみたいな話あるけどなんでそんなバカやるのか理解できなかった 今はすこし わかる気がする」p.117

作中の信号は赤だった「とまれ」、それを無視することを覚えた柚木さんは一体どこに進んでゆくのだろうか。ハードすぎるんだよ。

 

10冊目 奥くくる『蜜壺 シャクティ

に出てくる「糖女房」、汚え、今作最大級に汚い話を何故その髪型でやってしまうのか。あとこの作品も絶対物語の大筋にパロ元が何だ小説か昔の邦画かそれともピンク映画か何だなんんだ何な・・・・鹿の子可愛い!!!!最後の1コマの鹿の子の可愛さで、全部持っていかれる話。

 

11冊目 北小路大門『極限地帯のトークタイム』

9冊目で鹿の子が「暗黒文学少女」(鳩作評)になったことを憂いていたが、その原因は間違いなくお前の遺伝子じゃヴォケ。あと地味に名前だけ聞いたことある競走馬ナンバーワン「オグリキャップ」がどういう馬でなぜ有名なのか分かるのが良かった。

 

12冊目 蠅沢遥『ぼくのデス子 13才の少女』

これパロ元なんでしょうね。絶対面白いと思うし絶対メジャーだと思うんですけど僕がザコのサブカルクソ女なのでさっぱり分からない。芋虫。あと思春期迎えていてもちゃんと16本の蝋燭がたってるホールケーキの前に座ってくれる鹿の子ちゃん可愛い。

あと、「よし かーさんはケーキを買ってくるから 私は鹿の子の本を読んでいよう」p.147。序盤は鹿の子の読書嗜好にツッコんでましたが、気づけば終盤は父・鳩作がゆうにヤバイのヤバイでしょ。もうこれ半分ボーボボだよ。本田ボーボボ

 

 

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ちなみに本書は「奇書が読みたいアライさん」の読書ガイドで知った。

このアライグマが紹介する本に外れなし。今作もそうだったのだけれども、僕より優にこういう系糖の知識が備わっているアライグマだから、きっと僕の2倍3倍いや10倍は面白く読んでいたんだろうなあと思うとちょっと悔しい。

10年20年手元に置いといて、たくさんサブカル摂取して、

スーパーミラクサブカルクソ女になって

また読み直したら、もっと面白くなっているだろうか?

ある意味漬物本。

 

以上である。

若干オカルト寄りのボーボボな一冊だった。1冊当たりの価格まあボーボボ400円に対し、画力と備わる教養の分含んで1000円という次第か。

あとまぁ鹿の子がやっぱり可愛すぎる。

 

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まぐろどんの本棚。分かりづらいが、結構怪談本とかそういうのが詰まっています。

あと人形な

 ちなみに僕は結構オカルトが好きである。実話系とか結構読んじゃう。本棚に並べたくないから滅多に読まないけど。星新一も中学の頃からずっと好き。まとめサイト「哲学ニュース」「不思議ネット」、加えて「キニ速」にオカルトネタが挙がってないか毎日巡回しちゃう。何ならもう小学校のころから好き。こういう怖い話系の本は人気だったから滅多に借りられなかったけれども小学校にあるのは全部読破した。中学高校ではこういうコーナーが設けられていないことに絶望した。

ちなみに妹も思春期はその傾向があった。甲田学人先生のライトノベルを何冊か見かけた。

僕達姉妹がそろって残念な嗜好にほとばしった原因は、100発100中何を隠そう鹿の子同様、父である。

父の本棚には、(今はほとんど読まないが)筒井康隆の本が並んでいる。特に筒井康隆「恐怖」という本が並んでいて表紙がもうあれ既に「恐怖」だったな。てかなんだそのタイトル。そして昔からゾンビ映画好きである。「ゾンビVSエイリアンは良かった」とにちょにちょしているのはちょっと引いた。製作者側の気持ちも鑑賞者の気持ちも分からない。何故対決させたのか。そしてとうとうその映画に行きつくまでゾンビの映画を見たということか。

あと小学生の時、父の実家・北海道のおばあちゃんの家には「世界のオカルト現象」みたいな本があって、それを僕は喜んで持って帰って一通り読んだものだった。

何が言いたいかと言うと、作品こそフィクションであるものの「父の嗜好は娘に遺伝する」はノンフィクションであるということが言いたい。

恐ろしい話である。

 

ちなみに、北海道のおばあちゃんの家にはファミコンの代わりにセガサターンがあった。もうこの地点で僕が27年間SHOJOになってしまったのは、アカシックレコード的に必然だとも思うんですが、どうですかね?

 

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大丈夫です。母がかつて「若草物語」やアガサを読破したように、僕にも文学少女的側面があります。小川洋子ちょ~好き。

 

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 アライグマの読書ガイド。かって思ったのは、読書ガイドは紙媒体が一番です。ツイッターだと流れちゃうし、noteでまとめてくれるけどnoteを開くということはスマホを開くということ、そうつまり本を読まなくなるので。

迷っている人は再販の際即座に買いましょう。そして本作も買って本作の寿命を一冊でも伸ばすことに貢献しましょう。鹿の子の白無垢見たいだろ。

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最後に読んだ筒井康隆の本。といってもこれの他にはアンソロジーに収録されている短編以外は、「時をかける少女」しか読んだことない。それも小学校時代。なぜかと言うと父親が好きな作家だったのでずっと敬遠していた。でも最近この作家の本買っちまった。仕方ないね。血は争えないね。

 

 

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