私と一緒にイタリア旅行しませんか?
せっかくならイタリアを、一周。
といったとこでしょうか。
池上英洋『イタリア 24の都市の物語』(光文社 2010年)の話をさせて下さい。
【概要】
世界中の旅行者を魅了する、ヨーロッパでも屈指の人気を誇る国・イタリア。
日本では、いまだに「イタリア=歌って踊って恋をする国」というイメージが強い。
しかし、その魅力は、男たちや女たちが織りなしてきた数々のドラマ、芸術家たちが味わった苦悶や歓び、英雄や偉人たちの精神と行動の軌跡、民衆が繰り広げてきた何気ない日常生活の集積体であり、かつ、それらを保存してきた都市の魅力である。
それぞれ特色のあるイタリアの街あら、24都市を厳選ーー。イタリア留学経験もあり、レオナルド・ダ・ヴィンチ研究でも知られる著者が、さまざまな歴史のエピソードを紹介しなら、「イタリアを歩く楽しみ」を伝える。
カバー裏より
【読むべき人】
・イタリアに関心がある人
・イタリアが好きな人
・ヘタリアが好きな人
※NHK番組の書籍化であるため、世界史の知識がなくても楽しく読める本だと思います。新書の割に。
【感想】
毎度おなじみありがとう神サイト、ブックオフオンラインで購入した。
もともとこの池上先生の書籍は何冊か読んだことあるのと、
イタリア24の都市を数ページにわたって紹介するのは
短編集好きとしてはなんとも血が沸く一冊。
ためらいなくクリックした。
想像以上に面白かった。
イタリア、といっても世界史選択者ならば分かると思うが、
中世近世は「国」としての体裁をなしていなかった。
「都市国家」という所謂「進撃の巨人」や「キノの旅」といったようなあいう都市が点在していて、ヴェネツィアはヴェネツィア・フィレンツェはフィレンツェ・ローマはローマであった。
そのため街ごとの特色が非常に濃くでている国でもあるのだ。
その都市群を、1都市10ページに満たない1章のペースで紹介。ひとつひとつ文章だけでなくカラー写真で掲載しているから非常に読みごたえがある。
あなたが初めてヴェネツィアを見た時、こう思いはしなかったか。
「街なのに道路が水で溢れ出ている!!凄い!!」
似たような驚きが何度も味わえる。
一番初めの「サン・レオー囚われのカリオストロ」からもう僕は心を掴まれた。今まで見たことないような、都市の形をしている。どうしてそんなところに街があるんだ・・・。
その他様々な都市の様々な面白い写真が掲載されている。個性は十街十色。みんなちがってみんないい。
また、池上先生自身がイタリア史専門の方のため、それぞれの都市の歴史も書かれていてこれまた面白い。
イタリアに少しでも関心があるならば読んで絶対損はしない一冊となっている。
また、本書は番組の書籍化ということもあり、
作者の言葉遣いも他の書籍と比べてかなり叙情的で読み易い。
他の書籍は一般向けともいえどいささか堅苦しくちょっと読みづらい所があったが、本書はするすると頭に入ってくる。全部これくらいの感じでいいのに。
中野京子先生ほど叙情的ではないけれど、恐らく彼女の作品が好きな方は本書ももれなく好きになれるのではないか。
以下、僕が特に「はえ~」になった都市。
■ヴィンチ pp.33-38
言わずもがなみんな大好きレオナルドダヴィンチ先輩の生まれた村である。ダヴィンチ先輩!!ダヴィンチ先輩!!
恥ずかしながら、「ヴィンチ」が村の名前であることを僕は本書で初めて知った。「ヴィンチのレオナルドやで~」という意味だったのね。じゃあ僕ならマグロドン・ダ・サイレントヒル(静岡)ということだろうか。悪くない。
読む限り、このヴィンチ村というのは田舎にあるそうで、そこでダヴィンチ先輩はすくすく育ったらしい。
田舎出身。なんかそれだけで一気に好感度はね上がる。
ダヴィンチ先輩の幼少期と、当時の中世社会の家族関係・女性の境遇について書かれているのもなかなかに興味深かった。
■マントヴァpp.77-83
僕は書くことがとても好きである。
「いや~書くことが結構好きなんですよ~」という職場の20代前半の娘に「おめーじゃあ1000字以上のブログを月に15回以上更新できんのか?え?」と内心思うくらいには好きである。言ったところで「うわ・・・キモ・・・」確定だけれども。
この都市のページでは、ひたすら手紙を食ことによって、政治で手腕を振るった女性が出てくる。更に彼女は芸術愛好家であって、多くの画家に作品の注文書を書いていたという。ダヴィンチ先輩にも書いたそうな。パイセンはあんま乗り気じゃなかったらしいけど。
そして晩年はお気に入りの芸術品を集めた部屋で過ごしたらしい。
あ・こ・が・れ・る!!!
僕も書くことで大金をもらい、その大金で西洋美術の小品の気に入ったやつをぼろぼろ買い、それに囲まれて晩年過ごしたかった。で、豪邸たてて、ヨークシャーテリアらへんをはべらせて、結果「マグロドン・ダ・サイレントヒル夫人、夢の芸術御殿」みたいなコピーがついて、婦人公論のトップのページに掲載されたいわね。
■カノッサ pp.91-97
世界史選択者みんな大好きワードナンバーワン「カノッサの屈辱」について書かれたページである。
ところがどっこい、内容について聞けば多くの人が以下のように答えるのではないか。
「なんか誰か憤死した気がする。」※憤死・・・激おこぷんぷんぷんぷんぷんぷんぷん丸で死ぬこと
以上。
ところがこの本書では6ページ足らずでカノッサの屈辱がカノッサのどこの誰が屈辱してどこの誰が憤死したのか、簡潔に分かりやすく書かれている。
カノッサに行きたいとかどうこうよりかはシンプルに勉強になった。
■ボマルツォpp.109-115
ここは行ってみたい都市ナンバーワン。
20代の若さで妻を亡くした貴族が悲しみのあまり、そこから生涯をかけて作り上げた庭園があるとしてである。
その庭園が奇妙。
怪物の石像が並び、その大きさも巨大。なんかもう、まじで巨大。
口の中に人が入っても余裕の大きさ。
更に庭園はラビリンス構造となっていて、次々と怪物が姿を現すような感じとなっているらしい。すげー。
澁澤龍彦もこの庭園について紹介していたそうな。
・・・てか誰やねん、この澁澤って。結構名前見るけれども。今度著作の一冊でも読んでみようかな。
■ヴェローナ pp.159-165
「ロミオとジュリエット」の街である。
この物語が出来た経緯について書かれている。2つの名家による抗争は実際にあったらしく、口伝があり、そこから作られた物語を、シェイクスピアが過剰装飾して戯曲化したのが、あの「ロミオとジュリエット」だそうな。シェイクスピアがてっきり1から考えたものかと思っていたので、ちょっとそこはビックリした。
観光資源も無論豊富で、ここではジュリエットの像と、墓が取り上げられている。やっぱみんなおっぱいを触るんだな。多分私も実際行ったら触るわ。
「ロミオとジュリエット」は、大学時代に微妙に縁があった。
大学の授業で、ディズニー作品についてレポートを掻くという課題があった。そこで僕が選んだのは「ライオンキング2」である。幼少期何度も見た。堀北真希の旦那の声帯を持つ「コブ」という悪と正義の間で懊悩するあのイケメンライオンに、僕の性癖はゆがめられた。「闇堕ち」「光堕ち」という言葉に敏感になる身体になってしまった。あんあん。
閑話休題。この作品は一時期のディズニーの続編商法の中で出てきた作品なのだが、「ライオンキング」が「ハムレット」を原作にしているように、この作品にも原作がある。
それが「ロミオとジュリエット」である。要するにライオンキングはシェイクスピアなのである。そりゃあミュージカル映えするわな。だって原作が戯曲なんだもん。
このレポートのため、当時僕は岩波文庫のロミジュリを買って熟読したのだった。今となっちゃあほとんど覚えていないけれども。
でも実際、作品で出てくるナイチンゲールを思わせる白い小鳥が愛を交わし合うシーンがあったり、ディズニー必須の「ハッピーエンドで終わる」条件を除けば話のあらすじはほとんど同じだったりして、その比較研究は結構面白かった覚えがある。
まあ、そのデータ、今はもうないんですけど・・・。
行くことは叶わないとしても、せめて劇は一通り観賞してみたいなあ。
以上である。
サクサク読めて分かりやすいし面白い。
世界史の知識があればなおさら楽しめるけれども、番組ベースのため誰が読んでも理解しやすい内容だし、お勧めである。
あと、イタリア史を勉強する人にはうってつけなのかもしれない。それぞれの都市が6ページほどで分かりやすく説明されているため。文献中に出てきた都市を調べるのに丁度いいだろう。
ただまぁ、ハーメルンが掲載されていないのはちょっと残念かな。
ちなみに本書はブックオフオンラインで110円だった。
ブックオフにおいて値段が低いということは、流通量が多く書籍自体の価値が下がっているということである。そのため「永遠の0」等過去の大ヒット作が100円コーナーに並んでいるのは自然なことなのである。100円コーナーに並ぶというのはその本が一世風靡したという証左であったりする。まあ一部除きますが。
初版が2010年、10年前、当時高校生であったため、本書がどれほどまでにヒットしたのか売り上げていたのかは知る由はないが、多くの人に読まれるのも納得の一冊である。
あと、ヘタリア来春アニメやりますね。
ばちくそ楽しみです。30分枠の地上波でやってほしい。てかやってくれそうな気がする。あと、僕の推しのポーランドは出るのでしょうか。リトアニアは出るのでしょうか。実家に幻冬舎版の漫画なら全巻あるのですが・・・勉強しなきゃ。
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LINKS
ハーメルンについてはこの前この書籍詠んだ。どこの書店でも平積みされていて、筑摩書房は売りたいんだろうなあと思ったんだけど、一般向けにしては結構内容難解だと思う。挫折した人は多いのではないか。
歴史専攻の学生にはお勧め。
池上先生の書籍は結構他にも読んでて持っていたりする。
これもなかなかおもろーだった。けど本書と比べて結構硬めの文章。
美術史初心者には池上先生より宮下規久郎先生の書籍のがいいと思う。