小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

池上英洋 荒井咲紀『美少女美術史 人々を惑わせる究極の美』-結局は、ミュシャなんだよな-

 

美少女を好きでない人があろうか?

いやいない。みんな美少女が大好きなのである。

 

池上英洋 荒井咲紀『美少女美術史 人々を惑わせる究極の美』(筑摩書房 2017年)の話をさせて下さい。

 

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筑摩書房の割にいかがわしい文字がポイントだ!!

 

【あらすじ】

この世でもっとも純粋で美しいものーーーそれは愛らしい少女たちの姿。

なぜ、彼女たちは時代によって、エロスを漂わせた存在として表現されたり、性をそぎ落されたけがれない姿で描かれたりと、変貌を繰り返してきたのか?

そこには人間のどのような理想と欲望が映し出されているのか?

あらゆる女性の理想とされあどけない聖母マリアから、突如挑発的な姿を露わにし始める現代の少女たちまで、200点の名画の裏に隠されたメッセージを読み解く。

色鮮やかな図版がいざなう究極の美の世界。

 

裏表紙より

 

【読むべき人】

・美少女が描かれた絵画が好きな人

・「美少女史」と聞いてピンときた人

西洋史が好きな人

 

【感想】

西洋美術史において美少女がどのようにして描かれてきたかの一冊である。

なかなかキモいコンセプトの本だが、筆者曰く今までこういった試みの本はなかったとのこと。そりゃちょっと引かれるからね。

でも筆者はいわばもう西洋美術史界における重鎮!!こりゃあ何書いても許される!!というわけで、書かれた一冊である。

まぁ半分妄想ですけど。

順番としては、

序盤で不思議の国のアリスやブクロー、ミレイなどのとっつき易い美少女画を扱った後は、時系列順に並んでいく。古代から、ルネサンスを経てピカソまで。

それぞれの時代にどう美少女たちが描かれたかを時代背景と共に考証していく。

 

簡単に、各章での感想を述べていく。

 

第一章 美少女美術の黄金時代:ファンシーピクチャー、不思議の国のアリス、ブクロー等

子供という概念が出来たのは本当かなり近代になってからのことで、そこから愛でる対象へとなったんだそうな。それまでは愛でる対象ですらなかった。労働力の一因に過ぎなかった。

そこで、ようやく注目された少女達の愛らしさに特化した「ファンシーピクチャー」が冒頭に紹介されている。

この頃に描かれた作品は、感覚がもう今の僕達に近いからすごい可愛い。まぁやっぱ幼女といったらミレイだよね。教会で寝てる赤いマントの女の子の絵が収録されていることにほくそ笑む。お気に入りの絵で、一時期携帯の待ち受けにしていた。

不思議の国のアリスの章も非常に興味深かった。特に終盤に出てくる破られたページのところ。宮崎駿つくしあきひとをはじめ、素晴らしい作品の作者がロリコンっていうのは「あるある」だけどルイスキャロルもその「あるある」のひとりだったということか。

 

 

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非常にキャッチーな展覧会だった。

また、アリスについてはこの前展覧会も行った。

不思議の国のアリス展。

静岡市美術館で開催されたものである。本作で取り上げられているラッカムの挿絵の下絵も生で見ることができた。特にいろんな絵本作家が描いた作品でストーリーを追うのはなかなか面白かった。絵本を一冊買うくらいには良かった。

 

あとこの章で知った画家の名前が二つある。ブクローソフィー・アンダーソン。

ブクローは名前だけは前から聞いたことがあったけれど、いまひとつどういう絵を描いている人か覚えていなかった。アカデミズムに属していて、めちゃくちゃ美少女を観察して、卓越した技術で、人間性をも感じさせる美少女を描く作家とのこと。とにかくすごい美少女画家ということか。もう二度と忘れない。

ソフィー・アンダーソンは今までちらほら見ることのあった、褐色ベースの幼女の絵を描く人だった。名前と作品が一致したことですっとした。

 

 

第二章 神話世界の美少女:ニケ、巫女、パンドラ、ダフネとクロエー等

高校時代に行った修学旅行先のルーブル美術館で見たニケは圧巻で、作品を見た瞬間に涙したのは結局あれが最初であれが最後だった。

まあ取り扱われてはいませんが・・・。まあ首がないので美少女かどうかもわからないしもしかしたらぶちゃい・・・以下略。

ニケをはじめとした神話世界の章であるけれど、どうも僕はこの神話世界が好きではない。何回読んでもだれがどうなったのか覚えられない。作品見るたびに感動するのだけれど・・・。

でもそのなかでニケのほかに印象に残ったのはパンドラだ。パンドラというのは箱と一緒に来た女の名前らしい。あの箱の名前がパンドラなのではなく、箱featパンドラということなんだそうな。恥ずかしながら初めて知った。

あとこの書籍には結構ウォーターハウスの作品が出てくるのだけれど・・・池上先生好きなのかしら、ウォーターハウス。僕は名前は好き、でも同じラファエル前派ならミレイとかかなぁ。幼女最強。

 

第三章 キリスト教と美少女:マリア、天使、ジャンヌダルク、聖アグネス等

ギリシャ、ローマ世界の神々について論じた後に、キリスト教へと移行していく。多神教から一神教へ。

キリスト教題材はまだ好きだ。赤と青まとってればマリア!!髪長くておっぱいだして髪長かったらマリア(マグダラバージョン)!!鳩いたら神!!赤子いたらイエス!!こんな感じで8割方いけるからである。

ただもう聖者とか言われるとわかんない。全員美少女全員可愛い全員不憫。

もういっそのこと、歌って踊ってほしい。欅坂日向坂の名前を全員覚えることができたので、多分歌って踊ってくれれば50人くらいなら覚えられるはずだ。夢に出てこい聖女たち。きらめきの向こう側を目指すんだ。

ちなみに全員若いのは、彼女たちの童貞性を証明するためなんだそうな。

絶対嘘だと思う。

美少女題材の方が面白いから、本当はおばさんの聖女とかいたと思うんだけど、おばさんだと面白くないから美少女にしたんじゃないか。

当時小説すらなかっただろうし、美少女摂取するには芸術作品くらいしかなかっただろうし。

 

第四章 美少女の復活(ルネサンス):肖像画、幼妻、ベアトリーチェ・チェンチ、ヴァニタス等

ルネサンスの章である。ここでようやくモデルが現世の美少女へと代わる。

特に印象深かったのはベアトリーチェ・チェンチの章。グイド・レーニが描いたとされる彼女の肖像画はとても好きで、今現在携帯の待ち受けにしている。が、どうやらこの作品、作家も違えば題材も違うらしい。ジネウラ・カントーフォリが巫女さんを描いた作品らしい。どっちも誰だよ。

ベアトリーチェたそは暴力をふるう父親を、一家で殺害し、処刑になったそうだ。そんな人を肖像画に描くなんて今考えたら不謹慎極まりないな。

ちなみにちらほら名前を見かける画家が出てきたのもここら辺。という画家が個人名を記し始めたのもこの時代からである。

クラーナハの作品はこの時代でも十分異質。どう見たってくびれフェチ。

メムリンクを「ヘタウマの代表格」p,145と称してやるなよ。というかこの時期からへたうまの概念ってあったのか。

 

第五章「美少女」の誕生:勉強するマリア、割れた水がめ、マルガリータ

バロック期、オランダの美少女作品が並ぶ章。

以前には描かれなかった家庭教育を施される少女時代のマリアという題材の時代背景、ラブレターを読む女性から見る市民社会の発展、ムリリョやゲインズハラ等貧困にあえぐ子供を題材に選ぶ画家、割れた水がめのモチーフ、あの有名なラスメニーナスの中心に描かれたスペイン王マルガリータ・・・。

ルネサンスから印象派前までと時期は長く、残っている作品も多いから、題材は多岐にわたる。

特に「「美少女」の発見」の章は、今までの美少女史を総括する文章になる。ルソー『エミール』から入り、「子ども」の発見について述べた章である。

ルソーといえば、高校の世界史の小林先生が言っていた。

「「社会契約論」書いたのに加えて、「エミール」をはじめ教育的分野で有名な本をたくさん書いた凄い人ではありますが、家庭を大事にできない人で結構ダメ人間でした」

 

第六章 印象派と世紀末の美少女:ルノワールドガピカソミュシャ、シーレ等

第五章の「「美少女」の発見」で美少女史をまとめた。

第六章ではどのような画家がどのような少女を描いたかにフィーチャーしていき、最後はロリータの挿絵を用いて本書は着地する。

いろんな画家がいろんな少女を描いている。

ルノワールの幸福な家庭空間における優しい表情をした少女、ローランサンの虚無を瞳に宿した顔色悪い少女、ドガの描くバレリーナは絶望ぎりぎりの境界線上を踊り、シーレの裸婦像は危険、ピカソの描く子供は角ばっていて無機質無機質・・・ミュシャ

やっぱりミュシャだなと思う。

見ていて一番素直に可愛いと感じるのは、ミュシャ後何も考えずにかわいいかわいいが赦されるのはミュシャ

 

 

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音声ガイドが工夫凝らされていて良かった。

ミュシャの展覧会は昨年行った。結構良かった。一昨年だったかの静岡市美術館での開催。

そして今年もきた。今度は県立美術館に来た。

行かなきゃ・・・。

 

 

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東京に巡回する展覧会を人少ない状態で見られるのは、地方美術館の最大のメリットの1つ



 

ドガの描くバレリーナ静岡市美術館で見たバレルコレクションで見た。ゴッホの自画像など人が極端に少ない状態で豪華な作品がふんだんに見れたいい展覧会だった。市民はもっと美術館に行こう。東京でやる展覧会ものも割と巡回で来る。あと綺麗で駅近。結構良い美術館だと思う。

 

以上である。

それぞれの時代の美少女がそれぞれの時代を反映して描かれていることが、

非常に分かりやすく書かれた良書であると思う。

参考文献もものすごい数に及んでいる。さすが池上先生といったところか。

 

ちなみにこのシリーズはもう一冊読んでいる。

 

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池上英洋『残酷美術史』(筑摩書房 2014年)

これもなかなか面白かったけれど・・・読んだのが昔な分結構忘れてしまった・・・どれどれ。とぱらぱらめくるとまぁエグい絵が多い。

一時期流行した「怖い絵画」が好きな人にはたまらない一冊だと思う。

また元気な時に読もう。

 

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LINKS

tunabook03.hatenablog.com

 

20200804記事一部加筆修正しました。

静岡市美術館、ただでさえ人いないのに、コロナ+戸田書店閉店で更に人が来なくなるんじゃないか。採算とれずつぶれないか。心配。でも行ったときに人はいてほしくない。アンビバレント

ショパン展は絶対行く。