小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

宮下規久朗『モチーフで読む美術史』-身につく!西洋美術鑑賞法-


美術館に行く前に読みたい本ナンバーワン。

宮下規久朗『モチーフで読む美術史』(筑摩書房 2013年)の話をさせて下さい。



【概要】
西洋美術に出てくる数々のモチーフには意味がある。
子羊はキリスト、林檎は原罪といったように・・・・。
モチーフ1つ1つごと、
様々な芸術家の作品を用いつつ、
神戸大学教授・宮下規久朗が丁寧に解説する。
やさしい西洋美術入門書。

【読むべき人】
・これから美術館に行く人
・教養を身に着けたい人
「すごーい!!」より一歩先の鑑賞をしたい人

【感想】


北欧の人物画はほっそりとしていて服がもりもりしてるのが特徴
表紙の作品は、ヤン・ファン・アイク≪アルノルフィーニ夫妻像≫
ヤン・ファン・アイクは15世紀のオランダで活躍した画家で、今作は1434年に描かれた作品である。
見てほしい。
男女が家の中で手を取り合っている。
この作品を見て、鑑賞者はどう思うのか。
きっとすごい作品だな。
二人とも顔笑ってねぇな。
二人ともハゲてんな。
なんかしゃもじっぽいな。
あれ左の人バイキング小峠じゃね。

等様々な感想を抱くだろう。

ただ、
犬=忠誠サンダル=神性カーペット=富といったようにそれぞれのモチーフに意味があるとしたら?
真ん中にが置かれているのにも背景があるとしたら?
そもそもこのどちらかが死んでいるとしたら?
鑑賞はぐっと深まるはずだ。

作者は冒頭で述べる。
「西洋の古い絵だと、文化的に馴染みがない。まずタイトルを見て、絵にそれらしい光景が絵があれているのを確認した後は、写実的とか色遣いがきれいとか、表面的なkん章ですまいしているのではないだろうか。だが、それではもったいない」p.8
見逃しがちな犬、サンダル、鏡、全てなんとなく置かれているわけではない。
意味がある。
画家から鑑賞者へかける、謎かけ、メッセージ、暗号。

そして「それぞれのモチーフに託された意味から絵を読み取る見ると、実に面白い発見がある。そんな楽しみ方を紹介していこう」p.9というのが本作の趣旨である。



なので目次は特殊。
モチーフごとになる。
特に今回は
1項目2ページ:解説 2ページ:作品の写真
が徹底されているため読み易い。
美術初心者にもやさしい作りになっている。



アトリビュートの代表例:聖母マリア
モチーフが主題のため、今作ではアトリビュートも多く扱っている。
アトリビュートというのは、神聖な人を表すモチーフのこと。
赤子を抱いている神々しい女ならば聖母マリアであるし、
大工用具をもっていればヨセフ
生首が乗せられた皿であればサロメ
といったように、西洋美術では
持っているアイテムで人物を特定する。

また、アトリビュート
基本画家地域時代によって違ったりすることはない。
時代国越えて、通用することが多い。
国境なき言葉※ただし西洋のみといっても過言ではない。

例えば、こんな絵があったとする。


ルーベンス≪パリスの審判≫1636年

全裸女性三人が野外でつったっている。
普通の人から見たら単なる露出狂エロエロ西洋美術である。
しかし、アトリビュートを知っている人であれば、
左:フクロウ&メデューサアテネ
真ん中:キューピッド→アフロディーテ
右:クジャク→ヘーラー

と持っているアイテムで誰か判別できる。
さらにこの3人がいて加えて右に男を確認すれば、
今作が「パリスの審判」という主題の作品であることもわかる。
こういった人を判別するモチーフ、アトリビュートも数多く紹介しているため、
読んでいるだけで自然と西洋美術の教養が付く素晴らしい本なのである。

加えて本作で扱うのは西洋美術だけではない。
東洋美術との対比や、現在に残る名残なども紹介している。
例えば「猫」。
東洋では「招き猫」等のように吉祥の意味で多く用いられるが、
西洋ではどうだったのか。
日本や中国等の作品と西洋の作品を取り上げ、
「猫」の意味を比較する。
例えば「窓」
西洋において窓は絵画のメタファーであった。
意外な形でその文化は、現代日本にも受け継がれている。
西洋東洋昔今・・・・。
守備範囲がやたらと広いため、1つ1つの章が非常に面白い。

僕が今回一番面白かったのは、「兎」「車輪」かな。
現在とは大きく異なる兎の意味は興味深いし、
車輪で例える盛者必衰の見形はなかなか新鮮だった。



以上である。
一つ一つのモチーフを丁寧に解説している本書。
西洋美術に造詣がなくとも、一読すれば何かしら西洋美術に関する知識が残っている・・・はず。

ちなみに僕は今作は再読である。
2年前くらいに大学の生協で買って読んでいたけれど、
また気になる美術展・行きたい美術展を多く目にするようになったので、
知識を定着させたくて再読した。
次美術館行くときは鞄に一冊忍ばせていこうかな、とひそかに思っている次第。

LINK:宮下規久朗『食べる西洋美樹史 「最後の晩餐」から読む』
※各絵画像はwikipediaパブリックドメインを使用しています。