小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

宮下規久朗『しぐさで読む美術史』-一般層へ向けた美術の入り口-


注目すべきはモチーフだけでない。

宮下規久朗『しぐさで読む美術史』(筑摩書房 2015年)の話をさせて下さい。



【あらすじ】
西洋美術に描かれる人物は、
表情だけでなく、しぐさも使って全身で己の感情を表している。
「服をはだけさせる」「指をまげたピース」
「人差し指と親指をすりあわせる」
・・・・。
これらの動作は何を表しているのか。
美術史家・宮下規久朗が集英社刊行の雑誌「ēclat」(エクラ)で連載したコラムを単行本化。

ちなみに、前作。前前作の記事はこちら。
宮下規久朗『モチーフで読む美術史』
宮下規久朗『モチーフで読む美術史2』

【読むべき人】
・西洋美術に関心がある人
・でも今まで西洋美術の本を読んだことがない人
・美術館に行って、
無表情で謎のポーズをとる人の絵を見て
「こいつ何考えとんねん・・・」と疑問を抱いた人
・マリアの乳首母乳ぷしゅー!!!の絵が見たい人


ちきちき☆美術コーナー

【感想】
昨日一昨日書いた『モチーフで読む美術史』番外編、
みたいな感じの本である。
ただ『モチーフ』『モチーフ2』は
ともに新聞、筑摩書房のサイトで連載したものであるため、
内容は学術書な要素が強い。
しかし今作『しぐさで読む美術史』は、
集英社「ēclat」アラフィフのファッション誌で連載したものであるため、
内容はエッセイ的な要素が強い。
3冊の中で一番読み易いのは、間違いなく今作である。

それでも内容の充実度は前作2冊と遜色ない。
取り扱う図版は200点以上。
また本作はあくまでアラフィフ一般人へ向けた内容であるため
インパクトに残る図版が多く扱われている。
特にプラド美術館展で生で目にして忘れられない、
「祈祷してるオッサンの禿げ頭にマリアの母乳ぷしゅー!!!」の作品アロンソ・カーノ≪聖ベルナルドゥスの幻視≫)「飲む」pp.68-71
を再び拝めるとは思わなかった。
今作のありがたみも説明してくれているのは本当ありがたい。
ちなみに生で見た際の記録は、
こちら。


画集の表紙。
ちなみにこういう西洋絵画に描かれている「えらそうな幼女・少年」は
夭折率が高い。


特に今回印象に残ったのは
「叫び」pp.132-137「祈り」pp.143-147「居眠り」pp.172-176
「叫び」ではかの有名なムンク≪叫び≫を取り扱う。
しかし叫んでいるのは、描かれているあの人物ではないという。
ならばなぜ≪叫び≫なのか、あの人物は何をしているのか。
易しく解説している。


ムンク≪叫び≫1893年
秋に東京都美術館に一点来ますね。
行きたいけど・・「ルーベンス」展、「フェルメール」展もあるからなぁ・・・。


「祈り」で僕達が思い浮かべるのは、
手をあわせもしくは指同士をがっちり絡ませ、
しゃがみ、
小さい声で「どうか・・・」と唱えるあのしぐさ。
しかし、西洋美術ではその真逆とも言えるしぐさが、
祈りを表すという。
「居眠り」では、
≪オフィーリア≫で有名なジョン・エヴァレット・ミレイが、
娘を描いた作品が取り扱われているのだが、
やたらかわいい。
超かわいい。
まじかわいい。
是非生で見たい。

においかぎたい。


ちきちき☆美術コーナーその2

以上である。
ファッション誌連載のため、
前作2作とは少し毛並みが違う本作。
その分文章が読み易いのと、
あと図版が美術初心者でも強く印象に残る作品が多いので、
美術初心者にはうってつけである。
逆に3作目となるこの本から読むのが一番入りやすいかもしれない。
しぐさ→モチーフ→モチーフ2というように。

ちなみに、カバー裏に宮下先生の顔写真が掲載されている。
こういう作家の写真は使いまわしていることが多いのだが・・・
宮下先生は3作とも違う写真である。
なぜか撮りおろしである。
そこを比較するのも面白いかもしれない。
ぼくは『モチーフ2』の先生の表情が好きかなぁ。



今回も前作2冊と引き続き再読である。
3冊2日かけて一気に読んでしまった。
一回目より知識が身に就いた感覚はあるが、
それでも僕はまだまだ無知。
また読み返したい。

LINKS
宮下規久朗『食べる西洋美樹史 「最後の晩餐」から読む』
宮下規久朗『モチーフで読む美術史』
宮下規久朗『モチーフで読む美術史2』
プラド美術館展
※各作品の画像はwikipediaパブリックドメインを使用しています