小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

宮下規久朗『モチーフで読む美術史2』-美術好きには必読の書-


身について身について困っちゃうぜ!!!!

宮下規久朗『モチーフで読む美術史2』(筑摩書房 2015年)の話をさせて下さい。



【あらすじ】
西洋美術に出てくる数々のモチーフには意味がある。
子羊はキリスト、林檎は原罪といったように・・・・。
モチーフ1つ1つごと、
様々な芸術家の作品を用いつつ、
神戸大学教授・宮下規久朗が丁寧に解説する。
やさしい西洋美術入門書の続編

取り扱う作品の数は前作より増え250作品以上。
また巻末には索引も添付。

前作の感想はこちら。
宮下規久朗『モチーフで読む美術史』

【読むべき人】
『モチーフで読む美術史』を読んだ人
西洋美術、東洋美術の比較に関心がある人
西洋文化史に関心がある人

【感想】

前作から2年経ての続編である。
全開は66のモチーフであったが今回は50。
しかしその分取り扱う図版・文章量が増えて
一つ一つの項目がページ的にも内容的にもかなり厚くなっている。

ただし、前作を読んでいないのであれば、
前作から読むことを僕は強く薦める。
もともと続編を出すつもりでない状態で世に出た本である。
アトリビュートはじめ基本的なモチーフは前巻で多く取り扱ってしまった。
筆者の状況があわただしいこと、整理しきれないことがあったこともあり、
文章も今巻は正直要領を得きれいていない項目も(少ないが)あるし、
ただ同じモチーフを並べて説明しているだけの項目もある。
あくまで前作の延長として今作があることを述べておく。



しかし今作も、前作同様素晴らしい出来。
取り扱う図版がかなり増えたのもあるが、
前作よりかなり東洋美術の作品が増えている。
西洋美術と東洋美術の対比について充実した項目が多い。
例えば「松」pp.140-144
西洋で松、といえば交響曲レスピーギ「ローマの松」が有名であるが、
西洋の松は東洋(日本)の松とかなり形状が異なる。
描き方受ける印象もかなり違う。
是非クラシック好きにも読んでもらいたい項目。

特に今回僕に響いたのは麒麟pp.65-71「雨」pp.224-229「傘」pp.160-164「眼鏡」pp.201-204
麒麟においては、あの伝説上の生物麒麟と首の長いキリン、さらにビールのKIRINの関係を扱う。
そうだったのか、と素直に感心。
模様がない、昔のキリンの図版が新鮮。
「傘」では昔と今で異なる使用用途の変遷について。
雨を防ぐために傘を用い始めたのは最近だという。
ならばそれまで一体傘はどのように使われていたのか。
日本でお馴染みのあの文化にも言及。
「雨」では東洋と西洋での描き方の比較を取り扱う。
西洋美術でどのようにして雨を描くのか。
[眼鏡」といえば現在は「インテリ」「生真面目」の印象が強いが昔はどうだったのか。
何故商人の図版は眼鏡をしていることが多いのか。
文章・図版が多い分、濃厚な記事も多かった。

「傘」で用いられた作品の一部。

シャルル・ルブラン≪大宰相 セギエの肖像≫1655-61年

クロード・モネ≪日傘の女≫1875年

さて、使用用途の違いとは・・・?

以上である。
図版が多い分深い項目が多い。
特に東洋と西洋の比較においては、かなり充実している。
一方でアトリビュート等基本的なモチーフは前作で多く扱っているため、
今作から、よりはナンバリング通りに前作から読むことを強く薦める。(3回目)
こんな感じ。

ちなみに今作も前作同様再読である。
前読んだのが2年前くらいだと思うんだけど・・・だいぶ忘れている。てへぺろ
知識定着のため、また忘れたころに読み返したい。



ちなみに今作同時に読んだのがこちら。
高階 秀爾『西洋絵画史WHO’S WHO―カラー版』(美術出版社 1996年)
そう中野京子の怖い絵シリーズを読んだときにも使ったが、
今回もとても活躍してくれた。
本自体もとても丈夫で、図版が色褪せにくい紙質なのも好印象。
西洋美術に関心がある人全員に薦めたい。

LINKS
中野京子『怖い絵2』
宮下規久朗『食べる西洋美樹史 「最後の晩餐」から読む』
宮下規久朗『モチーフで読む美術史』