小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

中野京子『新 怖い絵』-小説好きへ向けた、西洋美術案内。-


約7年越しの新刊。

中野京子『新 怖い絵』(KADOKAWA 2016年)の話をさせて下さい。


朝日いっぱい。

【概要】
数ある西洋絵画の中にも、
不気味なもの・恐怖を抱くもの・よく見ると違和感がするものがある。
それらの絵は何故怖いのか。
絵に塗り込められた恐怖を読み解く。
大人気シリーズ、待望の新刊。

ちなみに、前作前前策作前前前作も感想書いてます。
中野京子『怖い絵』
中野京子『怖い絵2』
中野京子『怖い絵3』

【読むべき人】
ゲイシー
この名前に聞き覚えがある人
・西洋美術に関心がある人
美しい死体の絵が見たい人
 (作品13 ミレイ「オフィーリア」、作品16 モネ「死の床のカミーユ」、
 場合によっては作品1 フリーダ・カーロ「折れた背骨」)

【感想】
約7年の時を経て、待望の新刊である。

ただ「怖い絵4」ではなく、「新・怖い絵」なのはワケがある。
出版社が、違うのだ。
1~3は朝日出版社刊であったが、
本作はKADOKAWAから出ている。
「怖い絵」の文庫本を手掛ける流れで、KADOKAWAから刊行することになったのだろう。
それに伴い、紙の質ブックデザインが変わってしまった。
紙の質は幾分かつるつるしている感じになったが
その分絵画の印刷が綺麗に出るようになった。
ブックデザインは・・・うーん。
僕はちょー納得がいっていない。
表紙の「なんか違くない?」感もそうなんだけれども。
見てほしい。


僕はちょっと「3]でも赦せない

背表紙。
1〜3は「怖い 絵」とちゃんとスペースを配置、
色もピンクで計算されている感じがうかがえる。
それに比べて、今作は!!
何故文字をそこに置く!?
1〜3にのっとれよ!!
下半分スッカスカじゃねーか!!ミニスカートか!!女子高生じゃねーんだぞ!!!

・・・仕方ない。

1〜3は帯と背表紙二重に「中野京子」と入っているのがわかる。
何故それをならわなかった?

こういう帯を付けるためだから仕方ない。
でもそんなに「待望の続編!!」ていう文字、必要?
むしろ「続編」の言葉につられて手がすくむ新規読者もいるんじゃねーの?
そしてこの色。黒。
「黒でいいだろ」というやっつけ感、否めない。
嫌い。
ムカつく。
KADOKAWAという大手出版社の手抜きが垣間見えているようで、ムカつく。



内容も今までとは若干系統が異なる。
今作は前シリーズとは違って、
雑誌「小説 野生現代」に掲載された連載の単行本である。
芸術を愛好する人の雑誌ではない。
小説好き・・・そして芸術に普段触れない人も読む雑誌だ。
そのため前作と比べて
感性が現代に近い18世紀〜20世紀の作品や、
モネ、ミレー、フラゴナール・・・著名な画家の作品が多いのが特徴。
連続殺人鬼ゲイシーの「自画像」が取り上げられているのも、
「野生現代」だからこそだろう。(作品11 ゲイシー「自画像」)

しかし7年たっても、京子節は健在。
若干学術めいたような・・・少し硬くなった印象はあるが、
文章から伝わる情熱は一切変らない。
最後を前作シリーズでも何回か取り上げて来たゴヤの作品で締めていたのは、
シリーズの一ファンとしてかなりうれしかった。

今作で、特に印象に残ったのは以下の4作品。

作品1 フリーダ・カーロ「折れた背骨」
メキシコの女性画家である。
作品のインパクトも凄いが、作者であるフリーダの壮絶な人生も凄い。
そして生き切った彼女も。
特に絶筆(死ぬ直前まで描いた絵。未完成のことが多い)となった
イカに刻まれた「ViVA LA ViDA」
僕はこう言い残せる人生を歩んでいるだろうか。
・・・意味は本作を読んでその目で確かめてちょんまげ。

作品7 ブグロー「ダンテとヴェルギリウス
生で見たことあるんすよ。これ。
オルセー美術館で。
めっっっっっっっっっっっっっっっっっちゃ、見ていて痛々しい。
間近で悶える男の顔が現代人に近くて・・・本当怖い。
この企画展で僕の中でベスト3には入ったね。いやまじで。

主題がダンテ『神曲という小説で描かれた地獄なんだけど
それを極限にリアルに描いた絵なんすよ。
縦横約3×2メートルという巨大カンヴァスに。
ほら、当時スマホはおろか写真すらない時代じゃないですか。
そんな時代にこれ見たら・・・って思うとね。僕なら失神すると思うね。

作品の背景になった地獄の解説や、作品でダイナミックに戦闘を繰り広げる男達の正体について解説してくれて助かった。
美術展の画集はブーグローについての解説が中心になっていたので・・・。

是非この絵は本作買って鑑賞してほしい。印刷越しでも怖さは十分。


表紙 エドゥアール・マネ「笛を吹く少年」

作品10 ドローネー「ローマのペスト」
これもオルセー美術館展で生で見て・・・・うっすら記憶あるんだけど
うーん。
時代背景よりも天使についての解説がほしかったかなぁ・・・・。

作品13 ミレイ「オフィーリア」
表紙にもなっている作品。
死にゆく乙女の美しさと可憐さ・・・。
気に入って、僕は最近買ったスマホの名前を作者の「ミレイ」にした。
おかげさまで(?)、まだ一回も落としてない。

ちなみにこの作品、
声優・阿部敦さんの実家に飾られているらしい!!!
え???激アツじゃね!!!!!????
激アツだよね?
僕は激アツだった。

作品16 モネ「死の床のカミーユ
これも生で見た。
オルセー美術館で。

モネの捉える光の色彩の中で浮かぶ、
モネの妻・カミーユの死に顔は
なんかぼやけていて・・・遠い感じがする。
遠い感じ。
それは彼女の魂此の世間における距離なのかもしれない。

死体を恐ろしく描く絵画は山ほどあるが、
死体を光いっぱいに描く作品はこの作品だけな気がする。


クロード・モネ「草上の昼食」。
ちなみにモネでなくマネの「想上の昼食」は全裸ランチ。
先日まで行われたプーシキン美術館展の看板作品であった。


ちなみに。
オルセー美術館展は2014年国立新美術館で行われた企画展。
僕はお金がなかったけれどどうしてもどうしても行きたくて、行った。
一人で。
思えば、初めて一人で行った美術展かもしれない。
あの頃僕は若かったし、
ニートするなんて夢にも思わなかった。

表紙を見ればわかるように、印象派が中心の展覧会であったけど、
肌も髪も表情もリアルに描かれる、
大きい人物画のがきゅんきゅんしたなぁ・・・
ブグローの作品も凄かったが、
連なる黒衣の人物画が・・・凄かった。
僕の人物画・肖像画好きを決定づけた・・・といっても過言じゃない。

以上である。
「新!!!」を掲げ出版社を変えたことで幾分か変わった特徴もあるが、
熱い叙情的な京子節は健在。
特にオルセー美術館で見た作品が印象に残った。
こんな感じ。



一通り、読み終わった。
中野京子「怖い絵」シリーズを・・・・一通り。

本シリーズは最も分かりやすく、
僕等一般人に専門家の鑑賞を教えた作品であると思う。
美しい・・・すごい・・・で終わる鑑賞も楽しいが、
その一歩先の学術的な楽しさを僕達に教えてくれた。
西洋美術に関心を抱くきっかけに最適な本だと思う。


ミミちゃん。ヒカリエで出会った、ウサギ。
あと、今シリーズはすべて「再読」なわけだが・・・
僕の関心が高まったからなのか、
単に二回目だからなのか、
なんかめっちゃ頭に入ってくる。
前は20作品読んですごーい!こわーい!!で終わりだったのに。
今回は画家の名前や作品・・・ちょっと覚えられた。嬉しい。
同時に、西洋美術熱がいま一気に上がっている。
美術館展の画集・・・文章のとこは全く読んでないんだけど、
これを機に読んでみようかなぁ・・・。