小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

紅玉いづき『ミミズクと夜の王』-あなたがいい。-


あなたがいい。

紅玉いづきミミズクと夜の王』(アスキー・メディアワークス 2007年)の話をさせて下さい。



【あらすじ】
夜の王が鎮座する、魔物がはびこる夜の森に、
一人の少女が現れる。
「あたしのこと、食べてくれませんかぁ」
愛の物語。

第13回電撃小説大賞〈金賞〉受賞作。

【読むべき人】
魔法使いの嫁 が好きな人
・さくっと読めるファンタジーを読みたい人
・子供に何読ませるか悩んでいる人

【感想】
電撃文庫である。
電撃文庫、っていうのは、ライトノベルレーベル。
昔ではとらドラ!近年ではソードアート・オンライン」「魔法科高校の劣等生等が有名。
「萌え系」「アニメ系」の作品を多く輩出するレーベルである。
そんなレーベルが毎年開催する新人賞で
金賞をとったのが今作。
ただまぁ表紙を見てほしい。
ラノベのラの字も出てこないような表紙である。
例年の金賞受賞作とは大幅に異なる作風だったため、
今作は話題作となった。

といってもそれももはや2006年。
12年前の話。
それでも順調にヲタクの道を歩み始めていた僕は、
なんとなく今作の存在は知っていた。
リビングにぽつねんとあったので、
まぁ9割方妹のものだろうけれども
こんなところに置いといたほうが馬鹿なので、
手に取って読んだ次第。



うん、面白かった。
初めの方は正直退屈
「ああー、これは少女と夜の王のなんちゃってふれあいタイムで終わるんだろうな、
最後少女の危機を王が救って終わりだろ」

とか思って鼻くそほじって読んでいた。
が。
第五章からいきなり舞台は変わる。
ミミズクと夜の王だけの閉じられた世界から
一気にぐわっ、と開くような感覚。
ここから一気に引き込まれ、
もう後半は一気読み。
ぐっと、惹きつけられる。

電撃文庫の新人賞、ではあるので、
多少粗削りな感じはする。
それでも大賞を受賞したのは、
先述した開かれる感覚と、
以下の2つが要因ではないかと思われる。
一つ。登場人物に悪人がいない。
全員それぞれの思惑があり、
それがうまく噛み合わさって悲劇へと繋がっている。
最後悲劇が組み合わさって落ちて落ちて落ちていく中、
逆境に陥るなかを、
勇敢に立ち向かっていくのが、
ミミズクなのも良かった。
主人公に主人公たらしめる役割があるのは素晴らしい。
二つ。文章。
第三視点で描かれる読み易い文章である。
が、後半特にクライマックスにいくにつれて、
ミミズクの感情をうまく取り入れていて
ぐんぐん読ませる。
そのため最後には
ミミズクに共感ど★マックスである。



ちなみに、
今作は児童文学としても十分良いのでは、と思う。
おもしろいし、読み易い。
長さもちょうどいい。
実際に紅玉先生は、数年後角川つばさ文庫に書いているけれども、
この小説をイラスト変えてそのままつばさ文庫に持っていけばいいのでは?

以上である。
前半から想像できない、後半の展開が素晴らしい。
登場人物の考えや、文章もしっかり描かれていて
新人ながらも金色に光るものがある。
そんな作品。

てか、
この作品のように、
「萌え系」「アニメ系」ライトノベルの王道を行かないが面白い小説があったからこそ、
後のメディアワークス文庫創設に繋がったのではないか。
今じゃ一大レーベルだもんな。

続編、出てるんだよなー。
また今度よもっかな。