小さなツナの缶詰。齧る。

サブカルクソ女って日本語、すごく好きだったよ。

田中慎弥『共喰い』-血は流れ続ける。ずっと。-


芥川賞ニートが受賞した。
っていうのは、うっすら覚えている。

ニートの僕は、躊躇いなく、手に取った。

田中慎弥『共喰い』(集英社 2013年)の話をさせて下さい。



【あらすじ】
大きい川が流れる下町で育った遠馬は、
同じくその町で育った幼馴染の千種と付き合っていた。

彼は父親琴子さんと、暮らしていた。
だが、その何の商売をしているのかわからない父親は、
セックス時に相手を殴る癖があり・・・。

同じ血を継いでいる遠馬にも
やがてふつふつと、衝動が沸きあがるようになる。

【読むべき人】

を嫌いな人
自分の街が嫌いな人
が憎い人
・祖父母、曽祖父母を亡くしたことがある人(第三紀層の魚」
源氏物語が好きな人(「対談 書きつづけ、読みつがれるために 瀬戸内寂聴

【感想】
サクサクサクサクッ!!!と、
リッツ並に読める
短い純文学を読みたいなと思い、手に取った。
あと僕がニ〜トだから〜。

割と、良かった。
僕はすき。

まず表題作。
何の商売をしてるか分からない、
下品な言葉遣いで偉そうで、色白、
その上セックス時には相手に暴力をふるう、
クズオブザクズ父親
その父親と同じ血が流れていることに
遠馬は葛藤する。

その葛藤が、僕にはわかる。
僕は両親に嫌いなところがある。
けれど、
うまくいかないことがあり全てに当たり散らしたい、
殴りたい、怯えさせたいって思う時は、
暴力をたまにふるった父親を思い出す。
過度に将来を悲観し、心配性で肩に力が入り、
どこにも吐き出せず一人うずくまるときは、
妹の部屋で一人こつぜんと座っていた母親を思い出す。
ふとしたときに、
DNAのしがらみを感じて
そこから走り出して抜け出して一人になりたいときがある。
そうした普段意識することのない、
目に見えない葛藤を、
本作で無理矢理見せられたような感じ。




芥川賞受賞作な分、
他にも
川をモチーフにしたについてや、
子供から大人になる架け橋期における衝動懊悩等の
ニュアンスが含まれているようであるけれど、
ペーペーの僕には、よく解らなかった。
特に川。
絶対女性器を象徴しているように思えるんだけど・・・わかりそうで分からない。

それでも赤犬クマゼミ
そして終盤立つ義手等分かりやすい象徴がいっぱいあるのが良かった。
特に魚屋と猫の関係性は、鬼気迫るものがあった。

これらが、
今作の主題の難解さと、
僕達読者をうまく結びつけている。作用している。
これらがあったからこそ、
馬鹿な僕でも割と楽しく読めた、
と言ってもまぁ過言じゃない。




今作はもう一つ、同時収録されている。
第三紀層の魚」
死にゆく老人過去つりの話。
働く母親が野望もったエネルギッシュな女なのも良かったし、
祖母が最後、曾祖父にしたことも凄く印象的だった。
後世界観や風景が、全く、全く、全くと言っていいほど「共喰い」と違っていて、
こんな小説も書けるのか、と。
びっくりした。

でも、
まぁ・・・今作を通したメッセージは
「共喰い」よりわからなかった。
でもシンプルに小説として面白かった。
なんかそのうちセンターにも出てきそうな。
「共喰い」も割とよかったけど、
僕はこっちのが好き。

「あとがき」
では、瀬戸内寂聴さんとの対談が収録されている。
源氏物語について、かなりコアな話をしていたので
この対談目的で買うのもありかもしれない。
ちなみに僕は源氏物語についてはさっぱりぷぅ〜なのでぷぅ〜だった。
でも最後の瀬戸内寂聴さんの言葉が印象的だったな。
尼さんの言葉と、小説家の言葉。
確かに、田中先生が恋愛をしたらどんな小説を書くのだろう。
もしかしたら、逆に書けなくなるのかも。
気になるぷぅ〜。



以上である。
「共喰い」第三紀層の魚」も面白かった。
純文学は売れない・・・と「あとがき」で話しているが、
今時こんな純粋な純文学書ける人なんてなかなかいない気がする。
今後高校の現代文の教師のためにも、
もっと売れるべきだしもっとこの作家の名前を広めなきゃいけないような気もするけど、
どうでござんしょ。

ちなみに、
芥川賞受賞作品で読んだのは、
こちら。



うんこくんがこんにちは。
吉田修一パーク・ライフ』(文藝春秋 2004年)
これ、ほんっとう難しかった。
「共喰い」では、
犬や川やら・・・のモチーフが無知な僕を震わせたけれど、
パーク・ライフは、
まじでわからない。とっかかりすらもない。
こんなわからない、って小説、他にない!!ってくらい、わからない。
つまらないんじゃない。
わからない。

でも同時収録されている「FLOWER」は、
汚かったけれど面白かった覚えがある。
第三紀層の魚」同様、受賞作の表題作より、好きだった。

吉田修一先生は・・・この作品しか読んでないんだけど、
他読んでみよっかなぁ・・・。